(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】カラーフィルタおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/858 20230101AFI20241119BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20241119BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241119BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241119BHJP
G09F 9/302 20060101ALI20241119BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20241119BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20241119BHJP
【FI】
H10K50/858
G02B3/00 A
G02B5/20 101
G09F9/30 349B
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
G09F9/302 C
H10K59/35
H10K59/38
(21)【出願番号】P 2020111962
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】山内 淳
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108665862(CN,A)
【文献】特開2020-013695(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0017397(KR,A)
【文献】特開2011-060611(JP,A)
【文献】特開2010-231010(JP,A)
【文献】特開平11-074072(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080022(WO,A1)
【文献】特開2004-127662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
G02B 3/00
H10K 50/0-102/20
G09F 9/30
G09F 9/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー表示の単位画素を形成する領域において、互いに異なる透過波長域を有する複数の副画素と、
前記複数の副画素のそれぞれに対向して配置され、前記複数の副画素を透過する光を集光する複数のレンズと、
を備え、
前記複数の副画素のうち少なくとも1つの副画素は、前記光が透過する厚さ方向から見て、短手方向の長さに対する長手方向の長さの比が1よりも大きい細長画素であり、
前記複数のレンズのうち、前記細長画素を透過する前記光を集光するレンズは、前記長手方向に沿って2以上配置されている、
カラーフィルタ。
【請求項2】
前記比は、1.5以上であり、
前記細長画素に対向する前記レンズの個数は、前記比の小数第1位を四捨五入した数に等しい、
請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記複数のレンズは、前記長手方向に密に配列されている、
請求項1または2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
前記複数の副画素は、赤色、緑色、および青色の互いに異なる透過波長域を有する3つの副画素を含んでおり、
前記3つの副画素は、いずれも前記細長画素であって、前記短手方向に並列に配置されており、前記長手方向の長さが互いに等しい、
請求項1~3のいずれか1項に記載のカラーフィルタ。
【請求項5】
前記複数の副画素は、
矩形状であり、赤色、緑色、および青色のいずれかの第1透過波長域を有する第1副画素と、
矩形状であり、前記赤色、前記緑色、および前記青色のうち前記第1透過波長域と異なる第2透過波長域を有する第2副画素と、
前記比が前記第1副画素および前記第2副画素のそれぞれにおける短手方向の長さに対する長手方向の長さの比よりも大きい前記細長画素であって、前記赤色、前記緑色、および前記青色のうち前記第1透過波長域および前記第2透過波長域と異なる第3透過波長域を有する第3副画素と、
を含んでおり、
前記第1副画素および前記第2副画素は、いずれも前記第3副画素の前記短手方向において前記第3副画素と隣り合っており、前記第3副画素の前記長手方向において互いに隣り合って、配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のカラーフィルタ。
【請求項6】
前記複数の副画素のうち互いに隣り合う副画素の間および前記互いに隣り合う副画素の境界線上の少なくとも一方に配置された遮光壁を、さらに備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載のカラーフィルタ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のカラーフィルタと、
前記複数の副画素にそれぞれ対向する複数の発光素子と、
を備える、表示装置。
【請求項8】
前記発光素子は、有機EL素子である、
請求項7に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置等の表示装置においては、カラー表示を行う1つの画素領域に、それぞれ、白色光を発生する有機EL素子が複数配置され、各有機EL素子の上方に着色フィルタとレンズとがそれぞれ配置された構成が知られている。
例えば、特許文献1には、1つの画素領域に白色光を発生する3つの有機EL素子が配置されており、それぞれの上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の光を透過する着色フィルタと、各着色フィルタ上に配置されたレンズと、が設けられた有機EL表示装置が開示されている。
例えば、特許文献2には、1つの画素領域に白色光を発生する凹状に形成された有機層を含む発光素子が配置されており、それぞれの上に、R、G、Bの各色の光を透過する着色フィルタと、各着色フィルタ上に配置されたレンズと、が設けられた表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-2880号公報
【文献】特開2019-133816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術には以下のような問題がある。
特許文献1、2におけるレンズは、発光素子からの光の正面輝度を向上するために設けられている。
特許文献1では、正方形の有機EL素子から出射し、着色フィルタを透過した光を集光することによって正面輝度を向上している。特許文献1では、1つの画素領域に発光域の形状が同一の3つの有機EL素子が三角形状に配置されており、着色フィルタも同様に配置されている。加えて、レンズの平面視形状が円形である。このため、1つの画素において、R、G、Bの波長成分の表示光をそれぞれ形成する副画素の間に隙間が大きくなっている。このような構成では、解像度を高めると副画素が小さくなりすぎるので、カラーフィルタの製造が難しくなり、高解像度化できないおそれがある。
特許文献2では、凹状の有機層から出射した光を内部レンズで集光した後、着色フィルタに透過させ、最外部に配置されたオンチップマイクロレンズを通して外部に出射する。このような構成では、解像度が高めても着色フィルタが小さくなりすぎることはないが、有機層が小さくなりすぎるので、高輝度化がむずかしくなるおそれがある。
【0005】
例えば、副画素として、1つの画素領域を一方向に3分割することも考えられる。例えば、有機EL素子、着色フィルタ、およびレンズを、画素の一辺を三等分する矩形状に配置することが考えられる。この場合、平面視において、副画素は短手方向の幅に対して長手方向の長さが3倍の細長い矩形になる。
このような構成によれば、画素領域に隙間なく副画素が配置できるので、高解像度化に適する。
しかし、一方向に長いレンズでは、長手方向および短手方向に必要な屈折力の異方性が大きくなるので、良好な光取り出し効率を有する微小なレンズを製作できないという問題がある。例えば、短手方向の曲率半径に比べて長手方向の曲率半径が大きくなりすぎるため、シリンドリカルレンズに近いレンズ性能になり、長手方向における集光性能が低下する。この結果、正面輝度が低下するとともに、長手方向において斜めに見た時の視認性が低下しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、単位画素領域における副画素が一方向に長くても、正面輝度と、視認性と、が良好になるカラーフィルタおよび表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様のカラーフィルタは、カラー表示の単位画素を形成する領域において、互いに異なる透過波長域を有する複数の副画素と、前記複数の副画素のそれぞれに対向して配置され、前記複数の副画素を透過する光を集光する複数のレンズと、を備え、前記複数の副画素のうち少なくとも1つの副画素は、前記光が透過する厚さ方向から見て、短手方向の長さに対する長手方向の長さの比が1よりも大きい細長画素であり、前記複数のレンズのうち、前記細長画素を透過する前記光を集光するレンズは、前記長手方向に沿って2以上配置されている。
【0008】
上記カラーフィルタにおいては、前記比は、1.5以上であり、前記細長画素に対向する前記レンズの個数は、前記比の小数第1位を四捨五入した数に等しくてもよい。
【0009】
上記カラーフィルタにおいては、前記複数のレンズは、前記長手方向に密に配列されていてもよい。
【0010】
上記カラーフィルタにおいては、前記複数の副画素は、赤色、緑色、および青色の互いに異なる透過波長域を有する3つの副画素を含んでおり、前記3つの副画素は、いずれも前記細長画素であって、前記短手方向に並列に配置されており、前記長手方向の長さが互いに等しくてもよい。
【0011】
上記カラーフィルタにおいては、前記複数の副画素は、矩形状であり、赤色、緑色、および青色のいずれかの第1透過波長域を有する第1副画素と、矩形状であり、前記赤色、前記緑色、および前記青色のうち第1透過波長域と異なる第2透過波長域を有する第2副画素と、前記比が前記第1副画素および前記第2副画素のそれぞれにおける短手方向の長さに対する長手方向の長さの比よりも大きい前記細長画素であって、前記赤色、前記緑色、および前記青色のうち前記第1透過波長域および前記第2透過波長域と異なる第3透過波長域を有する第3副画素と、を含んでおり、前記第1副画素および前記第2副画素は、いずれも前記第3副画素の前記短手方向において前記第3副画素と隣り合っており、前記第3副画素の前記長手方向において互いに隣り合って、配置されていてもよい。
【0012】
上記カラーフィルタにおいては、前記複数の副画素のうち互いに隣り合う副画素の間および前記互いに隣り合う副画素の境界線上の少なくとも一方に配置された遮光壁を、さらに備えてもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の表示装置は、上記カラーフィルタと、前記複数の副画素にそれぞれ対向する複数の発光素子と、を備える。
【0014】
上記表示装置においては、前記発光素子は、有機EL素子であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカラーフィルタおよび表示装置によれば、単位画素領域における副画素が一方向に長くても、正面輝度と、視認性と、が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【
図2】
図1におけるF2-F2線に沿う断面図である。
【
図3】
図1におけるF3-F3線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るカラーフィルタの作用を説明する模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るカラーフィルタの作用を説明する模式図である。
【
図6】比較例の表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【
図7】
図6におけるF7-F7線に沿う断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【
図9】
図8におけるF9-F9線に沿う断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態の第1変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【
図11】
図10におけるF11-F11線に沿う断面図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態の第2変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態の第3変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態の第4変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【
図16】
図15におけるF15-F15線に沿う断面図である。
【
図17】
図15におけるF16-F16線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るカラーフィルタおよび表示装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
図2は、
図1におけるF2-F2線に沿う断面図である。
図3は、
図1におけるF3-F3線に沿う断面図である。
【0019】
図1に示す有機EL表示装置100(表示装置)は、画像信号に基づいてカラー画像を表示する。有機EL表示装置100の用途は特に限定されない。例えば、有機EL表示装置100は、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイ、電子ビューファインダなどの電子機器用の表示装置として利用することができる。
図1には、本実施形態の有機EL表示装置100の平面視における単位画素Pの構成が示されている。ここで、平面視とは、有機EL表示装置100の表示画面から発光素子に向かって見ることを意味している。平面視は、後述するフィルタ部3の厚さ方向から見ることでもある。
【0020】
単位画素Pは、カラー表示を行う最小の領域である。例えば、有機EL表示装置100は、
図1に示す単位画素Pが、図示の左から右に向かうx方向と、図示の下から上に向かうy方向と、に、それぞれ多数隣り合って配列されている。z方向は、x方向およびy方向に直交する方向のうち、図示の紙面の奥から前に向かう方向である。z方向は、平面視の方向と反対の方向である。
有機EL表示装置100の単位画素Pの全体で形成される表示画面の外形は、x方向およびy方向に辺を有する矩形である。単位画素Pのx方向の幅はWx、y方向の幅はWyである。WxとWyとは、互いに等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。
以下、簡単のため、領域、部材などのx方向の幅をx幅、y方向の幅をy幅と称する場合がある。
単位画素Pは第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3を有する。第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3は、x方向においてこの順に配列されている。第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3は、単位画素Pをx方向において三等分している。
有機EL表示装置100において、各単位画素Pの構成はいずれも同一なので、以下では、単一の単位画素Pの例で説明する。
【0021】
第1副画素域P1は、平面視では、x幅がWx/3、y幅がWyの矩形である。第1副画素域P1は、例えば、赤色の表示を行う。
第2副画素域P2は、平面視では、x幅がWx/3、y幅がWyの矩形である。第2副画素域P2は、例えば、緑色の表示を行う。
第3副画素域P3は、平面視では、x幅がWx/3、y幅がWyの矩形である。第3副画素域P3は、例えば、青色の表示を行う。
【0022】
図2に示すように、有機EL表示装置100は、本体部9と、カラーフィルタ10と、を有する。
【0023】
本体部9は、基板6、発光素子5、および平坦化膜4を有する。
基板6の平面視形状は、有機EL表示装置100の表示画面よりも大きい。基板6は、例えば、シリコン基板で形成される。
【0024】
発光素子5は、白色光を発光する。例えば、発光素子5としては、有機EL素子が用いられてもよい。有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、発光層に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子が失活する際の光の放出を利用して発光する。
発光素子5は、第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3にそれぞれ設けられている。
図1に示すように、各発光素子5の平面視形状は、それぞれが配置された第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3の外形よりもわずかに小さい矩形状である。
図1に示す例では、各発光素子5のx幅はWx/3よりもわずかに狭く、y幅はWyよりもわずかに狭い。
発光素子5は、例えば、半導体製造プロセスを用いてシリコン基板上に製造される。
【0025】
各発光素子5における電極は、基板6に形成された配線を通して図示略の駆動回路に接続されている。駆動回路は、画像信号に基づいて、各発光素子5の点灯および消灯を制御する。
【0026】
図2に示すように、平坦化膜4は、少なくとも各単位画素Pにおける基板6および発光素子5を被覆しており、z方向の表面に平坦面4aを形成する。平坦面4aは、有機EL表示装置100における表示領域全体に延びる平面である。
平坦化膜4は、発光素子5を覆うことにより発光素子5を保護する。例えば、平坦化膜4は、水分、酸素などが発光素子5に触れないようにすることで、発光素子5の劣化を抑制する。
平坦化膜4の材料は、可視光に対する透過率が良好な透明樹脂材料からなる。平坦化膜4の材料には、水分および酸素の少なくとも一方に対するバリア性が高い材料を用いられることがより好ましい。
平坦化膜4における発光素子5上の膜厚は、例えば、0.1μmである。
【0027】
カラーフィルタ10は、z方向において、フィルタ部3と、平坦化層2と、レンズ1と、をこの順に有する。
【0028】
フィルタ部3は、上面3aおよび下面3bを有する厚さ一定の層状部である。フィルタ部3の厚さは、特に限定されない。例えば、フィルタ部3の厚さは1.2μmであってもよい。
フィルタ部3は、下面3bが平坦面4aと密着した状態で、平坦化膜4を覆っている。
フィルタ部3は、平坦化膜4を経由して各発光素子5から入射する光の透過波長を規制する。
【0029】
フィルタ部3は、第1着色層31(副画素、細長画素)、第2着色層32(副画素、細長画素)、および第3着色層33(副画素、細長画素)からなる。
第1着色層31は、第1副画素域P1に重ねられている。第1着色層31は、例えば、赤色の透過波長域を有する副画素を形成する。
第2着色層32は、第1着色層31のx方向に隣り合って配置されている。第2着色層32は、第2副画素域P2に重ねられている。第2着色層32は、例えば、緑色の透過波長域を有する副画素を形成する。
第3着色層33は、第2着色層32のx方向に隣り合って配置されている。第3着色層33は、第3副画素域P3に重ねられている。第3着色層33は、例えば、青色の透過波長域を有する副画素を形成する。
【0030】
本実施形態では、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33の厚さ方向から見た各平面視形状は、y方向に細長い矩形であり、それぞれ第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3と同形である。このため、3つの副画素を形成する第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33は、単位画素Pをx方向において三等分する形状に形成されている。
矩形における短手方向の長さに対する長手方向の長さの比をアスペクト比と称する。矩形が正方形の場合のアスペクト比は1とする。
本実施形態では、各副画素の短手方向の長さがWx/3、長手方向の長さがWyなので、各副画素のアスペクト比は、3×Wy/Wxである。特に、単位画素Pが正方形の場合(Wx=Wy)には、各副画素のアスペクト比は3である。
アスペクト比が1よりも大きい副画素を、特に細長画素と称すると、本実施形態では、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33は、いずれも細長画素である。
【0031】
フィルタ部3は、透明樹脂に、それぞれの透過波長域に対応する色材を分散させた樹脂組成物を固化させて形成される。
【0032】
平坦化層2は、フィルタ部3の上面3aに積層された厚さ一定の層状部である。平坦化層2の上面2aは、フィルタ部3の下面3bと平行な平面である。
平坦化層2の材料は、可視光に対する透過率が良好な透明樹脂材料である。
【0033】
レンズ1は、平坦化層2を挟んで、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33のそれぞれの厚さ方向(z方向)に対向して配置され、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33を透過する光をそれぞれ集光する。集光された光は、z方向に延びる各レンズ1の光軸を中心として、カラーフィルタ10の外部に出射する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態では、レンズ1は、第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3のそれぞれの長手方向に3つずつ並んで配置されている。
本実施形態では、各レンズ1は、平面視の外縁の一部が、x方向およびy方向において隙間なく配置されている。このため、各レンズ1は、第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3の各長手方向に密に配置されている。さらに、本実施形態では、第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3の各短手方向においても密に配置されている。
ただし、必要な光取り出し効率が得られれば、各レンズ1の外縁の間に隙間が形成されていてもよい。光取り出し効率を向上するためには、レンズ1は密に配置されていることがより好ましい。例えば、好ましい密の配置は、隙間の最小値が、隙間の幅方向のレンズの大きさの20%以下となる配置である。例えば、y方向におけるレンズ1の間に隙間を設ける場合、y方向の隙間の幅は、y方向のレンズ外径をDyとして、0.20×Dy以下であることがより好ましい。
第1副画素域P1における各レンズ1は、x方向において第1副画素域P1の短手幅と同じ幅を有し、y方向において第1副画素域P1の長手幅を三等分する幅を有する。各レンズ1の平面視形状は、x方向の長さがWx/3、y方向の長さがWy/3の矩形の四隅が円弧状に丸められた形状を有する。特にWx=Wyの場合、各レンズ1の平面視形状は円であってもよい。
第2副画素域P2および第3副画素域P3における各レンズ1の平面視形状も同様である。
【0035】
平面視における各レンズ1の対角方向には、隙間が空いている。各レンズ1の対角方向の隙間には、平坦化層2の上面2aからなる平面部Fが形成されている。各レンズ1は平面部Fを除いて平坦化層2を覆っている。
【0036】
レンズ1の材料は、可視光に対する透過率が良好な透明樹脂材料である。レンズ1の材料は、平坦化層2と同一材料でもよいし、異なる材料でもよい。レンズ1の材料が平坦化層2の材料と異なる場合、互いの屈折率が異なっていてもよい。
図2、3に示す例において、各レンズ1は、z方向において、平面1bと、凸レンズ面1aと、を、この順に有する。ここで、平面1bは、平坦化層2との界面である。ただし、レンズ1および平坦化層2が同一材料で形成される場合にはレンズ1と平坦化層2との間に界面が形成されないので、平面1bは仮想面である。レンズ1および平坦化層2との屈折率が同一の場合には、平面1bが形成されたとしても、平面1bが屈折面および反射面として機能することはない。
以下では、特に断らない限り、レンズ1および平坦化層2が同一材料で形成されており、レンズ1および平坦化層2の屈折率が互いに等しい場合の例で説明する。
【0037】
各レンズ1は、凸レンズ面1aが正の屈折力を有する凸レンズである。
各凸レンズ面1aの形状は、レンズ1の集光性能および光取り出し効率を考慮した適宜形状が用いられる。例えば、各凸レンズ面1aは、z方向に凸の半球状であってもよい。ここで、半球状とは、半球面の場合と、球欠高さが半径よりも小さい球欠面の場合と、これらの半球面および球欠面に近い非球面の場合と、を含む。
このような形状を有することにより、各レンズ1は、発光素子5が出射する放射光を集光することができる。各レンズ1の光軸Oは、各レンズ1の中心を通りz方向に延びている。
図2に示すように、各光軸Oは、各発光素子5のx方向における幅(短手幅)の中心に位置している。
【0038】
有機EL表示装置100は、半導体製造プロセスを用いて基板6上に発光素子5を形成し、基板6および発光素子5に平坦化膜4を積層して本体部9を形成し、平坦面4a上に、フィルタ部3、平坦化層2、およびレンズ1を形成することによって製造できる。
例えば、フィルタ部3は、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33を形成する色材を感光性樹脂に分散させた樹脂組成物をそれぞれ準備し、パターンマスクを介して露光、現像する、フォトリソグラフィー法によって、平坦面4a上に各樹脂組成物の硬化層を形成することで形成できる。
例えば、レンズ1は、フィルタ部3上に平坦化層2およびレンズ1を形成する樹脂層を形成した後、エッチバック方式により樹脂層の表面に各レンズ1の凸レンズ面1aと、平面部Fと、の形状を形成することによって形成できる。樹脂層のうち、エッチングされない層状部によって、平坦化層2が形成される。
【0039】
有機EL表示装置100の作用について、カラーフィルタ10の作用を中心に説明する。
図4、5は、本発明の第1の実施形態に係るカラーフィルタの作用を説明する模式図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係るカラーフィルタの作用を説明する模式図である。
【0040】
有機EL表示装置100においては、第1着色層31に対向する発光素子5は赤色成分の画像信号(以下、R信号)に基づいて発光制御される。同様に、第2着色層32に対向する発光素子5は緑色成分の画像信号(以下、G信号)に、第3着色層33に対向する発光素子5は青色成分の画像信号(以下、B信号)に基づいて、それぞれ発光制御される。
単位画素Pにおいては、R信号で駆動された発光素子5からの光が第1着色層31を透過して外部に出射し、G信号で駆動された発光素子5からの光が第2着色層32を透過して外部に出射し、B信号で駆動された発光素子5からの光が第3着色層33を透過して外部に出射することによって、画像信号に忠実な色が表示される。
【0041】
例えば、レンズ1の開口数によっては、R信号で駆動された発光素子5からの赤色光が、第2副画素域P2または第3副画素域P3から漏れて出射する場合がある。このような赤色光の漏れ光は、レンズ1によって、正面側に集光されるので、単位画素Pにおける色味の変化を起こすことはない。
これに対して、R信号で駆動された発光素子5からの赤色光が、第2着色層32を透過して、第2副画素域P2から漏れて出射する場合がある。この場合、R信号に基づいて発光した漏れ光が第2着色層32を透過することで、漏れ光のうちの緑色光成分が外部に漏れる。この結果、R信号に基づく緑色光成分が増えることで単位画素Pの色味が変化してしまう。レンズ1の集光性能にもよるが、漏れ光も光軸Oに対する傾斜が大きくなりやすいので、特に単位画素Pを斜め方向から見るほど、色味の変化が増大してしまうおそれがある。
【0042】
図4には、y方向に直交する断面における光束が模式的に示されている。
発光素子5が点灯されると、各発光素子5に対向するレンズ1の各光軸Oと交わる点Aからは、光軸Oを中心に放射状に拡がって、z方向に対向する凸レンズ面1aに向かう光束L0Ax(実線矢印参照)が出射する。
平坦化膜4、フィルタ部3、および平坦化層2は屈折力を有しないので、各光束L0Axは、内部で拡がりながら、z方向において各発光素子5に対向する凸レンズ面1aに到達する。各凸レンズ面1aでは、各光束L0Axは、それぞれの屈折力に応じて集光されて、平行光束に近い光束L1Axとして、レンズ1の外部に出射する。
同様に、発光素子5におけるx方向の端部の点Bxから放射される光束L0Bx(破線矢印参照)は、凸レンズ面1aに到達すると、凸レンズ面1aの屈折力に応じて集光されて、平行光束に近い光束L1Bxとして、レンズ1の外部に出射する。このとき、光束L1Bxは、凸レンズ面1aの集光性能によっては、光軸Oに対する点Bxの距離に応じた斜め方向に出射するが、凸レンズ面1aが存在しない場合に比べると、凸レンズ面1aの屈折力に応じて、光軸Oに近づく方向に出射する。
図4には、第2着色層32における点Bxから出射する例を示しているが、第1着色層31および第3着色層33からも図示略の同様の光束が出射する。
【0043】
例えば、第2着色層32における点Bxからの光は、二点鎖線で示す光束L0Dxのように、z方向において第3着色層33と対向する凸レンズ面1aに向かう方向にも出射する。光束L0Dxの多くは、第2着色層32および第3着色層33を透過するので緑色光とは異なる。ただし、第2着色層32および第3着色層33の透過波長域が異なるため、透過光量は光束L0Bxに比べると低い。z方向において第3着色層33と対向する凸レンズ面1aに到達した光束L0Dxは、x方向に向かう斜め方向に向かう平行光束に近い光束L1Dxとして、レンズ1の外部に出射する。
しかし、光束L0Bx、L0Dxは、発光素子5の外縁からの放射光束なので、中心部に比べると光量自体が低い。光束L1Dxの大部分は第3着色層33を透過することで青味を帯びるが、低光量なので混色の影響は少ない。
【0044】
見易さのため図示を省略するが、各発光素子5におけるx方向と反対方向の端部の点Cxから放射され、凸レンズ面1aから出射する光束は、光軸Oに関して光束L0Bx、L0Dx、L1Bx、L0Dxと対称な光束になる。
y方向に直交する断面におけるレンズ1からの出射光束は、各発光素子5とz方向に対向する凸レンズ面1aの光軸Oを中心としており、各発光素子5からの放射光束よりも拡がり角が小さい光束になる。各凸レンズ面1aからの出射光束の色は、各凸レンズ面1aが対向するフィルタ部3の透過波長域に対応している。
【0045】
このため、第1着色層31に対向する発光素子5からの白色光の大部分は、第1着色層31を透過することにより赤色の波長成分を有する赤色光として、第1着色層31に対向するレンズ1からレンズ1の前方(図示上側)に出射する。
同様に、第2着色層32に対向する発光素子5からの白色光の大部分は、第2着色層32を透過することにより緑色の波長成分を有する緑色光として、第2着色層32に対向するレンズ1からレンズ1の前方に出射する。
同様に、第3着色層33に対向する発光素子5からの白色光の大部分は、第3着色層33を通って、青色の波長成分を有する青色光おして、第3着色層33に対向するレンズ1からレンズ1の前方に出射する。
【0046】
図5には、第2着色層32に対向する発光素子5の点Aを通り、x方向に直交する断面における光束が模式的に示されている。
図4と対比しやすいように、
図4の点A、Bx、Cxと同様な位置に、点A、By、Cyが記されている。光束L0Ay、L1Ay、L0By、L1By、L0Dy、L1Dyは、点A、Bxから放射される光束である以外は、
図4における光束L0Ax、L1Ax、L0Bx、L1Bx、L0Dx、L1Dxと同様の光束である。
x方向に直交する断面におけるレンズ1からの出射光束は、発光素子5とz方向に対向する各凸レンズ面1aの光軸Oを中心としており、発光素子5からの放射光束よりも拡がり角が小さい光束になる。各凸レンズ面1aからの出射光束の色は、いずれも、発光素子5に対向するフィルタ部3の透過波長域、
図4の例では、第2着色層32の透過波長域に対応している。
図5では、例えば、光束L0Dy、L1Dyは、第2着色層32を透過するだけなので、光量が減少することなく、緑色光として、出射する。このため、光束L1Dyは混色の原因にはならない。
【0047】
このように、本実施形態のレンズ1は、y方向に長い各副画素の上方に、複数配置されているので、x方向同様、y方向における光束の拡がりを抑制する作用がある。このため、単位画素Pにおける正面輝度が向上する。
この点について、
図6、7に示す比較例と対比して説明する。
図6は、比較例の表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
図7は、
図6におけるF7-F7線に沿う断面図である。
【0048】
図6、7に示すように、比較例の有機EL表示装置110は、有機EL表示装置100のレンズ1に代えて、レンズ111を有する以外は、有機EL表示装置100と同様に構成される。以下、本実施形態と異なると異なる点を中心に説明する。
【0049】
図7に示すように、レンズ111は、平坦化層2を挟んで、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33のそれぞれに対向して配置され、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33を透過する光をそれぞれ集光する。
図6に示すように、レンズ111は、第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3のそれぞれの長手方向に1つずつ配置されている。
第1副画素域P1におけるレンズ111は、x方向において第1副画素域P1の短手幅と同じ幅を有し、y方向において第1副画素域P1の長手幅と同じ幅を有する。レンズ111の平面視形状は、矩形の四隅が円弧状に丸められた形状を有する。
第2副画素域P2および第3副画素域P3における各レンズ111の平面視形状も同様である。
【0050】
各レンズ111におけるy方向に直交する断面における形状は、同断面の凸レンズ面1aの形状と同様である。
各レンズ111におけるx方向に直交する断面における形状は、
図7に示すように、z方向において、平面111bと、レンズ面111aと、が、この順に形成されている。
平面111bは、平坦化層2との境界面によって形成されている。
レンズ面111aは、レンズ111の長手方向の両端部に形成された凸面111aBと、各凸面11aBに挟まれた領域にx方向に延びるシリンドリカル面111aAと、を有する。
シリンドリカル面111aAは、凸レンズ面1aにおけるx方向に直交する断面の形状が、x方向に延ばされて形成される。
凸面111aBは、シリンドリカル面111aAに滑らかに接続する四分球状である。
【0051】
レンズ面111aは、y方向に直交する断面では凸レンズ面1aと同様の屈折力を有するが、x方向に直交する断面では凸面111aBを除いて屈折力を有しない。
このため、
図7に実線および破線で示すように、発光素子5からの放射光束のうち、シリンドリカル面111aAを透過する光束は、x方向に集光されることなく、レンズ111から出射する。
この結果、本実施形態に比べると、光束の拡がりに対応して、y方向に直交する断面における視野角は広がるが、同断面における各観察方向における輝度は本実施形態よりも低下する。
すなわち、比較例の有機EL表示装置110では、正面輝度が低下するとともに、y方向に直交する断面において斜め方向から見た時の観察角度に応じた輝度も低下する。この結果、画像が暗くなるため視認性が低下する。
【0052】
これに対して、本実施形態の有機EL表示装置100は、各副画素の長手方向に複数のレンズ1を配置したカラーフィルタ10を有するので、正面輝度と、視認性と、が良好になる。
【0053】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るカラーフィルタおよび表示装置について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
図9は、
図8におけるF9-F9線に沿う断面図である。
【0054】
図8、9に示すように、本実施形態の有機EL表示装置100A(表示装置)は、第1の実施形態のカラーフィルタ10に代えて、本実施形態のカラーフィルタ10Aを備える。カラーフィルタ10Aは、フィルタ部3に代えて、フィルタ部3Aを備える。
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0055】
フィルタ部3Aは、フィルタ部3において、可視光を遮光する遮光壁7Aをさらに備える。
遮光壁7Aは、x方向に隣り合う単位画素Pにおいてx方向に隣り合う副画素の間と、単位画素P内でx方向に互いに隣り合う副画素の間と、に、それぞれ配置されている。
遮光壁7Aの形状は、x方向に隣り合う副画素に跨がって透過する光の少なくとも一部を遮光できれば特に限定されない。
例えば、
図8、9に示す例では、各遮光壁7Aのx幅はt、y方向の長さはWyである。各遮光壁7Aのz方向の高さは、各副画素の厚さに等しい。遮光壁7Aの上面7aは、フィルタ部3Aの上面3aと同一平面上に位置する。
遮光壁7Aのx幅tは、必要な遮光特性が得られる適宜の大きさとされる。ただし、tは小さい方がより好ましい。例えば、tは、Wx/3の30%以上40%以下であってもよい。
遮光壁7Aの材料は、可視光を遮光できれば、特に限定されない。例えば、遮光壁7Aの材料として、可視光の透過率が0%以上20%以下の材料が用いられてもよい。遮光壁7Aは、例えば、カーボンなどの黒色の色材が分散された樹脂材料で形成されてもよい。
【0056】
本実施形態における第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33は、x幅がwxである以外は、第1の実施形態の各副画素と同様である。wxの大きさは、(Wx/3-t)である。このため、本実施形態における各副画素のアスペクト比は、Wy/wxである。
例えば、Wy=Wxの場合、アスペクト比は3よりも大きい。特に、遮光壁7Aの幅tが上述の範囲の場合には、アスペクト比は、4.2以上、5以下である。
【0057】
フィルタ部3Aは、遮光壁7Aを形成する樹脂組成物を準備し、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33の形成方法と同様のフォトリソグラフィー法によりパターニングすることによって製造できる。
【0058】
本実施形態の有機EL表示装置100Aによれば、各副画素の長手方向に複数のレンズ1を配置したカラーフィルタ10Aを有するので、第1の実施形態と同様、正面輝度と、視認性と、が良好になる。
特にカラーフィルタ10Aにおけるフィルタ部3Aは、副画素間に遮光壁7Aを有するので、副画素間の境界を経由して、レンズ1から出射する光束を遮光できる。
例えば、
図9に示すように、第1着色層31に入射しx方向に進むにつれてz方向に進む光線R1、R2、R3を考える。
発光素子5におけるx方向と反対側の端部から出射する光線R1、R2は、遮光壁7Aよりも図示上側の平坦化層2を透過して第2着色層32に対向するレンズ1から外部に出射する。一方、光線R2よりもx方向の位置に入射する光は、例えば、光線R3のように、遮光壁7Aで吸収されるので、外部に出射しない。
このため、混色による色味の変化を第1の実施形態よりも抑制することができる。
【0059】
[第1変形例]
本発明の第2の実施形態の第1変形例に係るカラーフィルタおよび表示装置について説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態の第1変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
図11、
図10におけるF11-F11線に沿う断面図である。
【0060】
図10に示すように、本変形例の有機EL表示装置100B(表示装置)は、第2の実施形態のカラーフィルタ10Aに代えて、本実施形態のカラーフィルタ10Bを備える。カラーフィルタ10Bは、フィルタ部3Aに代えて、フィルタ部3Bを備える。
以下、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0061】
フィルタ部3Bは、フィルタ部3Aにおける遮光壁7Aに代えて、遮光壁7Bを備える。
遮光壁7Bは、z方向に延びる柱状に形成されており、延在方向における上面7aB(
図11参照)が各平面部Fと対向する位置に設けられている。
このため、遮光壁7Bは、x方向に隣り合う単位画素Pにおいてx方向に隣り合う副画素の間と、単位画素P内でx方向に互いに隣り合う副画素の間と、において、x方向およびy方向に互いに離れて格子状に配置されている。
遮光壁7Bの形状は、発光素子5から平面部Fに向かう光の少なくとも一部を遮光できれば特に限定されない。
例えば、
図10、11に示す例では、各遮光壁7Bのx幅はtx、y幅はtyである。各遮光壁7Bのz方向の高さは、各副画素の厚さに等しい。遮光壁7Bの上面7aBは、フィルタ部3Bの上面3aと同一平面上に位置する。
遮光壁7Bのx幅tx、tyは、必要な遮光特性が得られる適宜の大きさとされる。例えば、tx、tyは、平面視にて平面部Fを70%以上100%以下の範囲で覆うことができる大きさであってもよい。
遮光壁7Bの材料は、遮光壁7Aと同様の材料が用いられる。
【0062】
本実施形態における第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33は、x方向に対向する遮光壁7Bで挟まれる部分のx幅wFが、(Wx/3-tx)に縮幅している以外は、第1の実施形態の各副画素と同様である。
本実施形態のように、副画素の形状が矩形と異なる場合には、副画素の短手方向の最大長さに対する長手方向の最大長さの比をアスペクト比と定義する。このため、本実施形態における各副画素のアスペクト比は、第1の実施形態と同様である。
【0063】
カラーフィルタ10Bは、遮光壁7Bの平面視の形成領域が、遮光壁7Aと異なる以外は、第2の実施形態のカラーフィルタ10Aと同様にして製造できる。
【0064】
本実施形態の有機EL表示装置100Bによれば、各副画素の長手方向に複数のレンズ1を配置したカラーフィルタ10Bを有するので、第1の実施形態と同様、正面輝度と、視認性と、が良好になる。
特にカラーフィルタ10Bにおけるフィルタ部3Bは、副画素間に遮光壁7Bを有するので、副画素間の境界を経由して、平面部Fから出射する光束の一部を遮光できる。
例えば、
図11に示すように、第1着色層31に入射しx方向に進むにつれてz方向に進む光線R4、R5を考える。
発光素子5におけるx方向と反対側の端部から出射する光線R4は、遮光壁7Bよりも図示上側の平坦化層2を透過し平面部Fから外部に出射する。
一方、発光素子5におけるx方向の端部から出射する光線R5は、遮光壁7Bで吸収されるので、外部に出射しない。
平面部Fからの漏れ光が生じると、レンズ1によって集光されないので、光軸Oに対する傾斜が大きい方向に漏れ光が出射する。このため、単位画素Pを斜め方向から見たときに色味が変化してしまう。
本変形例によれば、平面部Fからの漏れ光を低減できるので混色による色味の変化を第1の実施形態よりも抑制することができる。
【0065】
[第2変形例]
本発明の第2の実施形態の第2変形例に係るカラーフィルタおよび表示装置について説明する。
図12は、本発明の第2の実施形態の第2変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【0066】
図12に示すように、本変形例の有機EL表示装置100C(表示装置)は、第2の実施形態のカラーフィルタ10Aに代えて、本実施形態のカラーフィルタ10Cを備える。カラーフィルタ10Cは、フィルタ部3Aに代えて、フィルタ部3Cを備える。
以下、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
フィルタ部3Cは、フィルタ部3Aにおける遮光壁7Aに代えて、遮光壁7Cを備える。
遮光壁7Cは、平坦面4aから上面7aCまでの高さhCが各副画素の厚さよりも低い以外は、第2の実施形態の遮光壁7Aと同様である。
hCの大きさは、必要な遮光範囲に合わせた適宜の大きさにすることができる。例えば、hCは、各副画素の厚さの半分よりも大きいことがより好ましい。
【0068】
カラーフィルタ10Cは、遮光壁7Cの高さが遮光壁7Aと異なる以外は、第2の実施形態におけるカラーフィルタ10Aと同様にして製造できる。ただし、本変形例では、遮光壁7Cを形成した後、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33を形成する。
【0069】
本実施形態の有機EL表示装置100Cによれば、遮光壁7Cによる遮光範囲が第2の実施形態よりも狭い以外は、第2の実施形態と同様な作用を備える。
本変形例によれば、例えば、
図12に示す光線R6のように、遮光壁7Cよりも図示上側において第1着色層31と第2着色層32との境界を透過する場合、遮光壁7Cによって遮光されない。このため、光線R6は、平坦化層2を透過して第2着色層32に対向するレンズ1から外部に出射する。
しかし、遮光壁7Cの高さhCが、副画素の厚さの半分以上であって、例えば、光線R6の光軸Oに対する傾斜が45°以下の場合、光線R6が第1着色層31を通過する光路の長さよりも、第2着色層32を通過する航路の長さの方が短くなる。この場合、光線R6は赤味を帯びているので、光線R6が緑色光に変換される場合に比べると、混色による色味の変化は少ない。
【0070】
[第3変形例]
本発明の第2の実施形態の第3変形例に係るカラーフィルタおよび表示装置について説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態の第3変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【0071】
図13に示すように、本変形例の有機EL表示装置100D(表示装置)は、第2の実施形態のカラーフィルタ10Aに代えて、本実施形態のカラーフィルタ10Dを備える。カラーフィルタ10Dは、平坦化層2、フィルタ部3Aに代えて、平坦化層2C、フィルタ部3Dを備える。
以下、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0072】
本変形例は、第2の実施形態における遮光壁7Aを平坦化層2の内部まで延ばした例になっている。
フィルタ部3Dは、フィルタ部3Aにおける遮光壁7Aに代えて、遮光壁7Dを備える。
遮光壁7Dは、平坦面4aから上面7aDまでの高さhDが各副画素の厚さよりも大きく、各副画素の厚さと平坦化層2Cの厚さとの和以下である以外は、第2の実施形態の遮光壁7Aと同様である。
平坦化層2Cは、内部に遮光壁7Dが延びている以外は、第2の実施形態の平坦化層2と同様である。
【0073】
カラーフィルタ10Dは、遮光壁7Dの高さが遮光壁7Aと異なる以外は、第2の実施形態のフィルタ部3Aと同様にして製造できる。
【0074】
本実施形態の有機EL表示装置100Dによれば、遮光壁7Cによる遮光範囲が第2の実施形態よりも広い以外は、第2の実施形態と同様な作用を備える。
本変形例によれば、例えば、光線R3など隣り合う副画素の境界面を横切る光線を遮光できることに加えて、平坦化層2Cを透過して隣の副画素に対向するレンズ1から出射する光の少なくとも一部をも遮光できる。
例えば、hDの大きさを適宜設定することで、
図9に示す光線R1に相当する光線R7も遮光できるようにすれば、第1着色層31を透過して隣り合う副画素に対向する凸レンズ面1aから外部に出射する光をすべて遮光できる。
【0075】
[第4変形例]
本発明の第2の実施形態の第4変形例に係るカラーフィルタおよび表示装置について説明する。
図14は、本発明の第2の実施形態の第4変形例に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【0076】
図14に示すように、本変形例の有機EL表示装置100E(表示装置)は、第2の実施形態のカラーフィルタ10Aに代えて、本実施形態のカラーフィルタ10Eを備える。カラーフィルタ10Eは、平坦化層2、フィルタ部3Aに代えて、平坦化層2E、フィルタ部3を備える。フィルタ部3は、第1の実施形態と同様の層状部であり、遮光壁は設けられていない。
以下、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0077】
平坦化層2Eは、内部に遮光壁7Eが形成されている以外は、第2の実施形態の平坦化層2と同様である。
遮光壁7Eは、各副画素の境界上の上面3aから平坦化層2Eの内部に延びている。
【0078】
カラーフィルタ10Eは、第1の実施形態と同様にしてフィルタ部3を形成した後、第2の実施形態と同様に、上面3a上に遮光壁7Eを形成し、上面3aおよび遮光壁7E上に、平坦化層2Eおよびレンズ1を形成することによって製造できる。
【0079】
本実施形態の有機EL表示装置100Eによれば、遮光壁7Eによって、平坦化層2Eの一部を透過する光を遮光する以外は、第2の実施形態と同様な作用を備える。
本変形例によれば、例えば、光線R8、R9のように、各副画素の境界よりも上側を透過してx方向に隣り合う副画素に対向する凸レンズ面1aから出射する光を遮光できる。
本変形例によれば、フィルタ部3を形成した後、遮光壁7Eを別に形成するので、遮光壁7Eを併せて形成する場合に比べると、フィルタ部3の製造が容易になる。
【0080】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るカラーフィルタおよび表示装置について説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
図16は、
図15におけるF15-F15線に沿う断面図である。
図17は、
図15におけるF16-F16線に沿う断面図である。
【0081】
図15に示す本実施形態の有機EL表示装置100F(表示装置)は、第1の実施形態の有機EL表示装置100の単位画素Pのそれぞれに代えて、平面視矩形状の単位画素P10を備える。有機EL表示装置100Fの用途は特に限定されない。例えば、有機EL表示装置100Fは、有機EL表示装置100と同様、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイ、電子ビューファインダなどの電子機器用の表示装置として利用することができる。
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0082】
単位画素P10のx幅はWx、y幅はWyである。特にWx=Wyの場合、単位画素P10の平面視形状は、正方形である。
単位画素P10は、第1副画素域P11、第2副画素域P12、および第3副画素域P13を有する。第2副画素域P12と第1副画素域P11とは、y方向にこの順に配列されている。第3副画素域P13は、第1副画素域P11および第2副画素域P12のそれぞれのx方向側に隣り合って配置されている。
【0083】
第1副画素域P11は、平面視では、x幅がWx/2、y幅がWy/2の矩形である。第1副画素域P11は、例えば、赤色の表示を行う。
第2副画素域P12は、平面視では、x幅がWx/2、y幅がWy/2の矩形である。第2副画素域P12は、例えば、緑色の表示を行う。
第3副画素域P13は、平面視では、x幅がWx/2、y幅がWyの細長い矩形である。第3副画素域P13は、例えば、青色の表示を行う。
【0084】
図16に示すように、有機EL表示装置100Fは、本体部19と、カラーフィルタ10Fと、を有する。
【0085】
本体部19は、第1の実施形態における本体部9の発光素子5に代えて、発光素子15を有する。
発光素子15は、平面視形状が異なる以外は、第1の実施形態における発光素子5と同様である。発光素子15は、第1副画素域P11および第2副画素域P12に設けられた発光素子15Aと、第3副画素域P13に設けられた発光素子15Bと、を有する。例えば、発光素子15としては、有機EL素子が用いられてもよい。
図16に示すように、各発光素子15Aの平面視形状は、それぞれが配置された第1副画素域P11および第2副画素域P12の外形よりもわずかに小さい矩形状である。
発光素子15Bの平面視形状は、それぞれが配置された第3副画素域P13の外形よりもわずかに小さい矩形状である。
【0086】
カラーフィルタ10Fは、第1の実施形態におけるカラーフィルタ10のフィルタ部3に代えて、フィルタ部13を有する。
【0087】
フィルタ部13は、フィルタ部3の第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33に代えて、第1着色層41(副画素、第2副画素)、第2着色層42(副画素、第2副画素)、および第3着色層43(副画素、細長画素、第1副画素)を有する。
【0088】
第1着色層41は、第1副画素域P11に重ねられている。第1着色層41は、例えば、赤色の透過波長域を有する副画素を形成する。
図15に示すように、第2着色層42は、y方向に沿って第1着色層41と隣り合って配置されている。第2着色層42は、第2副画素域P12に重ねられている。第2着色層42は、例えば、緑色の透過波長域を有する副画素を形成する。
第1着色層41および第2着色層42の平面視形状は、x幅がWx/2、y幅がWy/2の矩形である。
【0089】
第3着色層43は、第3副画素域P13に重ねられている。第3着色層33は、例えば、青色の透過波長域を有する副画素を形成する。
第3着色層43の長手方向の一辺には第1着色層41および第2着色層42が隣接している。第3着色層43の平面視形状は、x幅がWx/2、y幅がWyの、y方向に細長い矩形である。このため、第3着色層43のアスペクト比は、2×Wy/Wxであり、1より大きい。このため、第3着色層43は細長画素である。例えば、単位画素Pが正方形の場合(Wx=Wy)には第3着色層43のアスペクト比は、2である。
これに対して、第3着色層43と隣り合う第1着色層41および第2着色層42のアスペクト比は第3着色層43のアスペクト比の半分であり、第3着色層43よりも小さい。
【0090】
このようにフィルタ部13における3つの副画素のうち、第1着色層41および第2着色層42は、それぞれ第1副画素および第2副画素を形成している。第1副画素および第2副画素は、矩形状であり、赤色、緑色、および青色のうちの2つの第1透過波長域および第2透過波長域を有する副画素である。
第3着色層43は、第3副画素を形成している。第3副画素は、第1副画素および第2副画素の各アスペクト比より大きなアスペクト比を有する細長画素であって、赤色、緑色、および青色のうち、第1透過波長域および第2波長域と異なる第3波長域を有する副画素である。
【0091】
フィルタ部13は、副画素の平面視形状および配置が異なる以外は、フィルタ部3と同様にして形成される。
【0092】
本実施形態におけるレンズ1は、単位画素P10内に4つ配置されている以外は、第1の実施形態におけるレンズ1と同様である。
このため、本実施形態におけるレンズ1は、第1副画素域P11および第2副画素域P12にそれぞれ1つずつ、第3副画素域P13に2つ配置されている。
各レンズ1は、それぞれ平坦化層2を挟んで第1着色層41、第2着色層42、および第3着色層43と対向するように配置されている。特に、第3着色層43に対向する2つのレンズ1は、第3着色層43の長手方向であるy方向に並んで配置されている。
各レンズ1は、隣り合うレンズ1との間に隙間が形成されていてもよいが本実施形態では、第1の実施形態と同様、外縁の一部が互いに接するように、密に配置されている。
各レンズ1の対角方向には、第1の実施形態と同様の平面部Fが形成されている。
【0093】
本実施形態のカラーフィルタ10Fは、細長画素に対向して、2つのレンズが配置されている例になっている。
本実施形態の有機EL表示装置100Fは、第3着色層43の長手方向に複数のレンズ1を配置したカラーフィルタ10Fを有するので、第1の実施形態と同様、正面輝度と、視認性と、が良好になる。
【0094】
なお、上記各実施形態および各変形例では、細長画素のアスペクト比が、3または2に等しいか、これに近い例で説明した。しかし細長画素のアスペクト比は、1より大きければ特に限定されない。
細長画素に対向するレンズの個数は、細長画素の長手方向において密に配列できれば、特に限定されない。ただし、細長画素のアスペクト比が1.5以上の場合、レンズの個数は、アスペクト比の小数第1位を四捨五入して得られる個数にすることがより好ましい。この場合、平面視におけるレンズの短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比を1に近い値にすることができるので、集光性能の異方性を低減しやすい。
【0095】
上記各実施形態および変形例では、発光素子が有機EL素子の場合で説明した。しかし、発光素子の種類は、有機EL素子には限定されない。例えば、発光素子の例としては、無機LED素子などが挙げられる。
【0096】
上記各実施形態および変形例では、第1副画素域、第2副画素域、および第3副画素域に、それぞれ、赤色、緑色、および青色の副画素が配置された例で説明した。しかし、単位画素においてカラー表示できれば、副画素の色と、配置位置は、これには限定されない。
【実施例】
【0097】
第1および第3の実施形態のカラーフィルタおよび表示装置の実施例1、2について比較例1、2とともに説明する。下記[表1]に実施例1、2、および比較例1、2の構成と、評価結果と、を示す。
【0098】
【0099】
[実施例1]
実施例1は、第1の実施形態に対応する実施例である。
実施例1の単位画素Pの大きさは、Wx=Wy=9(μm)であり、第1副画素域P1、第2副画素域P2、および第3副画素域P3のx幅×y幅は、それぞれ、3μm×9μmであった。
[表1]に示すように、第1着色層31([表1]の副画素R)、第2着色層32([表1]の副画素G)、および第3着色層33([表1]の副画素B)のx幅×y幅は、それぞれ、3μm×9μmであった。
各レンズ1は、各副画素に対向して3つずつ設けられた。各レンズ1のx幅×y幅は、3μm×3μmであった。
【0100】
実施例1の有機EL表示装置100を製造するため、シリコン基板にスパッタ法やエッチング法等の公知の方法を用いてTFT層を形成した。さらに、TFT層上に蒸着法等の公知の方法を用いて白色有機EL素子を形成後、CVD法により窒化シリコンを被覆して有機EL素子基板を形成した。
ここで、シリコン基板および白色有機EL素子は、それぞれ、基板6および発光素子5に相当する。
【0101】
フィルタ部3を製造するため、下記[表2]に示す組成を有する赤色、緑色、および青色の感光性着色組成物RR-1、GR-1、BR-1を準備した。
【0102】
【0103】
[表2]における「樹脂」は、バインダー、「モノマー」は硬化剤である。開始剤は、硬化剤をラジカル重合反応させるための添加剤である。連鎖移動剤は、ラジカル重合を促進させるための添加剤である。
【0104】
感光性着色組成物RR-1に用いた赤色の着色材料R-1は以下のようにして調製した。
下記組成の混合物MRを均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いたサンドミルで、混合物MRを5時間分散した。この後、混合物MRを5μmのフィルタで濾過して赤色の着色材料R-1を得た。
混合物MRにおいて、C.I. Pigment Red 254としては、イルガーフォーレッド B-CF(商品名;BASF社製)を用いた。C.I. Pigment Yellow 139としては、Paliotol(登録商標) Yellow L 2146HD(商品名;BASF社製)を用いた。
【0105】
(混合物MRの組成)
赤色顔料:C.I. Pigment Red 254 78重量部
黄色顔料:C.I. Pigment Yellow 139 22重量部
アクリルワニス(固形分20%) 215重量部
【0106】
感光性着色組成物GR-1に用いた緑色の着色材料G-1は、混合物MGに代えて、下記組成の混合物MGを用いた以外は、着色材料R-1と同様にして作成した。
混合物MGにおいて、C.I. Pigment Green 58としては、FASTOGEN(登録商標) GREEN A110(商品名;DIC(株)製)を用いた。C.I. Pigment Yellow 185としては、Paliotol(登録商標) Yellow L 1155(商品名;BASF社製)を用いた。
【0107】
(混合物MGの組成)
緑色顔料:C.I. Pigment Green 58 65重量部
黄色顔料:C.I. Pigment Yellow 185 35重量部
アクリルワニス(固形分20%) 215重量部
【0108】
感光性着色組成物BR-1に用いた青色の着色材料B-1は、混合物MGに代えて、下記組成の混合物MBを用いた以外は、着色材料R-1と同様にして作成した。
混合物MBにおいて、C.I. Pigment Blue 15:6としては、LIONOL(登録商標) BLUE ES(商品名;トーヨーカラー(株)製)を用いた。C.I. Pigment Violet 23としては、LIONOGEN(登録商標) VIOLET RLUE ES(商品名;トーヨーカラー(株)製)を用いた。
【0109】
(混合物MBの組成)
青色顔料:C.I. Pigment Blue 15:6 63重量部
紫色顔料:C.I. Pigment Violet 23 37重量部
アクリルワニス(固形分20%) 215重量部
【0110】
レンズ1および平坦化層2は、感光性着色組成物RR-1、GR-1、BR-1から着色用の色材を除いた透明材料を用いて形成可能である。例えば、色材の代わりに屈折率調整材としてシリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム分散体などの無機成分を含有させることで、屈折率の調整が可能である。屈折率調整材の種類、含有率を調整することにより、例えば、1.5~1.65の範囲の屈折率を得ることが可能である。
本実施例では、レンズ1および平坦化層2の材料として、感光性着色組成物RR-1、GR-1、BR-1から着色用の色材を除いた透明材料に、屈折率が1.6になるように酸化チタンを含有させて用いた。
【0111】
本実施例の有機EL表示装置100は、以下のように製造した。
上述の有機EL素子基板上に平坦化膜4を形成する透明樹脂組成物を、硬化仕上がりの膜厚が0.1μmになるようにスピンナーで塗布した。その後、加熱オーブンを用いて100℃、10分間加熱して、透明樹脂組成物を硬化させて、平坦化膜4を形成した。これにより、本体部9が形成された。
本体部9上に、緑色の感光性樹脂組成物GR-1を、硬化仕上がりの膜厚が1.2μmになるようにスピンナーで塗布した。この後、パターンマスクを介して紫外線露光、アルカリ現像、水洗および乾燥工程を行って、各第2副画素域P2に、緑色の副画素である第2着色層32を仮形成した。各第2着色層32におけるx幅×y幅は、3μm×9μmであった。この後、加熱オーブンを用いて80℃、10分間加熱して、仮形成した第2着色層32を硬化させた。
【0112】
この後、赤色の感光性樹脂組成物RR-1を用いて第1副画素域P1に形成する以外は、第2着色層32の形成方法と同様にして、第1着色層31を形成した。
この後、青色の感光性樹脂組成物BR-1を用いて第3着色層33に形成する以外は、第2着色層32の形成方法と同様にして、第3着色層33を形成した。
以上で、実施例1の本体部9上にフィルタ部3が形成された。
【0113】
フィルタ部3を形成した後、レンズ1および平坦化層2を形成する材料を、硬化仕上がりの膜厚が3μmとなるようにスピンナーで、フィルタ部3上に塗布した。この後、塗膜全体に紫外線露光し、その後、加熱オーブンを用いて80℃、10分間加熱して、塗膜を硬化させ、透明樹脂層を形成した。
この後、エッチバック方式により、透明樹脂層の表面に、高さが1.5μm、x方向およびy幅が3μmとなる、凸形状のレンズ1を形成した。レンズ1は、第1着色層31、第2着色層32、および第3着色層33の上方に、それぞれ3つずつ形成した。
【0114】
この後、レンズ1の表面に、封止剤であるストラクトボンド(登録商標)XMF-T107(商品名;三井化学(株)製)を用いてカバーガラスと貼り合せた。これにより、実施例1の有機EL表示装置100が製造された。
【0115】
[実施例2]
実施例2は、第3の実施形態に対応する実施例である。
実施例2の単位画素P10の大きさは、単位画素Pと同様であった。第1副画素域P11および第2副画素域P12のx幅×y幅は、それぞれ、4.5μm×4.5μmであった。第3副画素域P13のx幅×y幅は、4.5μm×9μmであった。
[表1]に示すように、第1着色層41([表1]の副画素R)および第2着色層42([表1]の副画素G)のx幅×y幅ば、それぞれ、4.5μm×4.5μmであった。第3着色層43([表1]の副画素B)のx幅×y幅は、4.5μm×9μmであった。
各レンズ1は、第1着色層41および第2着色層42に対向して、1つずつ設けられた。第3着色層43に対向して2つ設けられた。各レンズ1のx幅×y幅は、4.5μm×4.5μmであった。
実施例2の有機EL表示装置100Fは、各副画素と、各レンズ1との大きさおよび配置が異なる以外は、実施例1と同様にして製造された。
【0116】
[比較例1]
比較例1は、
図6、7に示す有機EL表示装置110の例である。
[表1]に示すように、比較例1の有機EL表示装置110は、平面視のレンズ111のx幅×y幅が、3μm×9μmであった以外は、実施例1と同様であった。
【0117】
[比較例2]
[表1]に示すように、比較例2の有機EL表示装置は、第3着色層43に対向して、レンズのx幅×y幅が、3μm×9μmのレンズを1つ配置した以外は、実施例2と同様であった。
【0118】
[評価]
実施例1、2、および比較例1、2の視認性評価を行った。
本評価においては、実施例1、2、および比較例1、2の有機EL表示装置を白色点灯し、正面(z方向)および斜め方向から観察し、目視による明るさに基づいて視認性を評価した。
正面視の視認性は、画面の明るさが見やすいかどうかで判定した。
画面が見やすい場合、良好([表1]ではAと表記)、画面が暗くて見にくい場合、不良([表1]ではBと表記)とした。
斜め方向からの視認性は、x方向に直交する平面内において、正面を0°として、0°~45°まで観察角度を変えたときの明るさの変化に基づいて判定した。
明るさの変化が許容できる程度であった場合、良好([表1]ではAと表記)、明るさの変化が許容できなかった場合、不良([表1]ではBと表記)とした。
【0119】
[評価結果]
[表1]に示すように、実施例1、2では、正面の視認性と、斜め方向の視認性と、は、いずれも良好であった。このため、実施例1、2の有機EL表示装置は、視認性に優れていた。
比較例1、2では、正面の視認性と、斜め方向の視認性と、は、いずれも不良であった。
比較例1、2では、正面輝度が、実施例1、2に比べると低下しており見にくかった。また、斜め方向から観察した場合、実施例1、2に比べると観察する角度による明るさの変動が大きかった。
比較例1、2はy方向に細長いレンズを配置したことにより、y方向の集光性能が低下していたためであると考えられる。
【0120】
以上、本発明の好ましい各実施形態および各変形例を各実施例とともに説明したが、本発明は各実施形態、各変形例、および各実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、第2の実施形態およびその変形例における遮光壁は、第3の実施形態のカラーフィルタに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 レンズ
1a 凸レンズ面
2、2C、2E 平坦化層
3、3A、3B、3C、3D、13 フィルタ部
4 平坦化膜
5、15、15A、15B 発光素子
6 基板
7A、7B、7C、7D、7E 遮光壁
9、19 本体部
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F カラーフィルタ
31 第1着色層(副画素、細長画素)
32 第2着色層(副画素、細長画素)
33 第3着色層(副画素、細長画素)
41 第1着色層(副画素、第1副画素)
42 第2着色層(副画素、第2副画素)
43 第3着色層(副画素、細長画素、第3副画素)
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F 有機EL表示装置(表示装置)
F 平面部
O 光軸
P、P10 単位画素
P1、P11 第1副画素域
P2、P12 第2副画素域
P3、P13 第3副画素域