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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】移動式足場及び足場構造
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20241119BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20241119BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B66F9/06 P
E21D11/00 Z
B66F9/06 M
B66F11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020143323
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038701
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富井 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】青木 峻二
(72)【発明者】
【氏名】丈達 康太
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172722(JP,A)
【文献】特開2018-131285(JP,A)
【文献】特開2011-051750(JP,A)
【文献】特開2019-011159(JP,A)
【文献】実開平04-122589(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/06
E21D 11/00
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台上に設けられ、高所作業時に展開し移動時に折り畳みの可能な移動式足場であって、
前記車両の走行方向に延在する中央足場板と、
前記荷台に着脱自在に設置され、上面に前記中央足場板が設けられるフレーム材と、
展開時に、該フレーム材の一方の側面側から車幅方向に張り出す下段足場板及び他方の側面側から車幅方向に張り出す上段足場板と、を備え、
前記中央足場板が、前記車両の車幅方向で複数に分割されているとともに、
分割された前記中央足場板がそれぞれ、前記フレーム材に昇降自在に支持され、
前記下段足場板は、前記フレーム材の側面に、鉛直面内で回転自在に設けられ
前記上段足場板は、前記中央足場板の上面を車幅方向に移動自在に設けられて
4段の階段状足場をなすことを特徴とする移動式足場。
【請求項2】
請求項に記載の移動式足場において、
少なくとも前記中央足場板に、落下物を捕捉する落下物捕捉部材が設けられていることを特徴とする移動式足場。
【請求項3】
請求項に記載の移動式足場において、
前記落下物捕捉部材が、集水シートよりなり、
該集水シートが、少なくとも前記中央足場板の下面側に設けられていることを特徴とする移動式足場。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の移動式足場において、
少なくとも前記中央足場板に、前記車両の走行方向に向けて張り出す延長足場部材が接続されることを特徴とする移動式足場。
【請求項5】
車両の荷台上に設けられ、高所作業時に展開し移動時に折り畳みの可能な移動式足場で
あって、
前記車両の走行方向に延在する中央足場板と、
前記荷台に着脱自在に設置され、上面に前記中央足場板が設けられるフレーム材と、
前記中央足場板の下面側に設けられる集水シートと、
を備え、
前記中央足場板が、前記車両の車幅方向で複数に分割されているとともに、
分割された前記中央足場板がそれぞれ、前記フレーム材に昇降自在に支持され
前記集水シートは、集水ホースの一端が接続される集水ますを備えた排出口を設けられていることを特徴とすることを特徴とする移動式足場。
【請求項6】
縦列配置された請求項1から5のいずれか1項に記載の複数の移動式足場と、
隣り合う前記移動足場に架け渡される延長足場部材と、
を備えることを特徴とする足場構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業に用いる移動式足場及び移動式足場を利用した足場構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルの補修や点検といった高所作業を実施する際には、作業領域を確保するべくトンネル内の道路上に特許文献1で開示されているような、枠組足場を組立てる場合が多い。
【0003】
このため、高所作業期間中のトンネル内は、車線減少等の交通規制をかけることになるが、雨天時等には交通規制の解除を要請される場合がある。また、寒冷地区などで冬場に上記のような作業を実施する場合にも同様に、気象状況によって交通規制の解除を要請される。しかし、枠組足場の撤去作業は多大な手間を要することから、これらの要請に対して迅速に対応することができない。
【0004】
また、補修や点検等の作業を実施する予定距離が長大な場合には、枠組足場の設置及び撤去を幾度も繰り返しつつ高所作業を進めざるをえない。このため、交通開放を求められる作業現場では、枠組足場を採用することができない。
【0005】
このような中、枠組足場に替わる手段として、例えば特許文献2で開示されているような高所作業車や、特許文献3で開示されているような、トラックの荷台に設置可能な足場等が採用されている。
【0006】
特許文献2は、車体の荷台にジャッキ(アウトリガー)と旋回台を設けるとともに、旋回台にブームを設け、ブームの先端にブラケットを介して高所作業用の作業台を取り付けている。そして、高所作業を実施する際には、ジャッキを張り出して車体を安定に支持した状態で旋回台の回転やブームの伸縮を行い、作業員を載せた作業台を上下及び左右方向に位置移動させる。
【0007】
一方、特許文献3は、トラックの荷台に足場を備えた作業架台を設置している。作業架台は、荷台に固定される下部フレームと、主たる足場を支持する上部フレームと、上部フレームと下部フレームとの間に介装された油圧式のピストンロッドを備える。また、作業架台の上部フレームに主たる足場が設けられ、主たる足場には、車両の幅方向に伸縮及び展開する補助的な足場が連結されている。
【0008】
そして、高所作業を実施する際には、作業架台に備えた油圧式のピストンロッドを伸長もしくは短縮することにより上部フレームを昇降させる。これにより、上部フレームに支持された主たる足場及び主たる足場に連結された補助的な足場を昇降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6357960号
【文献】特開2001-97700号公報
【文献】特開2002-284492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2で示すような高所作業車の作業台は、足場が狭いことから一度に実施できる作業範囲も限定されるため、作業が進捗するごとに旋回台やブーム等を適宜作動させて作業台の位置移動を行う頻度が多く、作業性に課題が生じる。また、作業予定位置がブームを伸縮させるなどの手段で作業台を移動可能な範囲を超えた場合には、車体を移動させることとなるが、ジャッキを収納して車体の移動し、移動後にはジャッキを再度展開して車体を据え付けなければならず、車体の移動作業も煩雑となりやすい。
【0011】
このように、高所作業車を利用した作業は、足場が狭く一度に実施できる作業範囲が限定されるだけでなく、高所作業車の操作が煩雑であるため、急速施工への対応が困難となりやすい。また、作業台の積載重量には制限があることから、同時に作業を行う作業員数や搭載する作業機器に制約を生じる場合が多く、作業性に欠ける。
【0012】
一方、特許文献3で示すようなトラックの荷台に足場を備えた作業架台を設置する構造は、高所作業車と比較して足場を広く確保できるとともに、足場の位置移動も迅速に行うことが可能である。しかし、特許文献3では、作業架台の上部フレームを昇降する構成であることから、主たる足場及びこれに連結する補助的な足場は常時、同じ高さ位置に配置される。
【0013】
このため、高所作業の対象となる領域の高さ位置が、トンネルの内壁面のように一様ではない場合には、これらに沿うような形状に足場を形成することができず、また、足場の一部分を高さ調整することもできない。したがって、主たる足場及び補助的な足場全体の高さを、作業しようとする高さ位置に応じてその都度調整せざるを得ず、作業の効率性に課題を生じる。
【0014】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、高所作業の作業効率を向上させることの可能な、移動式足場及び移動式足場を利用した足場構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、本発明の移動式足場は、車両の荷台上に設けられ、高所作業時に展開し移動時に折り畳みの可能な移動式足場であって、前記車両の走行方向に延在する中央足場板と、前記荷台に着脱自在に設置され、上面に前記中央足場板が設けられるフレーム材と、展開時に、該フレーム材の一方の側面側から車幅方向に張り出す下段足場板及び他方の側面側から車幅方向に張り出す上段足場板と、を備え、前記中央足場板が、前記車両の車幅方向で複数に分割されているとともに、分割された前記中央足場板がそれぞれ、前記フレーム材に昇降自在に支持され、前記下段足場板は、前記フレーム材の側面に、鉛直面内で回転自在に設けられ前記上段足場板は、前記中央足場板の上面を車幅方向に移動自在に設けられて4段の階段状足場をなすことを特徴とする。
【0016】
本発明の移動式足場によれば、車両の走行方向に向けて延在する中央足場板が、車両の車幅方向で複数に分割され、それぞれがフレーム材に昇降自在に支持されている。これにより、車両の全長に相当する長さの階段状足場を、容易に形成することができる。したがって、高所作業の予定領域が長大である場合に、移動式足場の移動及び据え付け作業の回数を低減できるだけでなく、高さ位置が一様でない場合にもこれに沿った形状に階段状足場を形成でき、効率よく高所作業を実施することが可能となる。
【0017】
また、中央足場板を昇降させる簡略な構造であることから、迅速に足場の設置及び撤去作業を実施でき、交通開放を求められる現場にも対応することが可能となる。さらに、トンネルの補修や点検等の作業に採用すると、不測の事態により作業時に実施されるトンネル内の交通規制に解除要請があった場合にも、これに迅速に対応することが可能となる。
【0020】
本発明の移動式足場によれば、フレーム材の側面に支持される下段足場板と、中央足場板に備える上段足場板とをそれぞれ、車両の車幅方向であって相反する方向に張り出して展開できる。これにより、移動式足場を展開することにより、車両の全長に相当する長さと、車両の車幅方向より広い幅とを有する、広大な床面を有する階段状足場を形成することが可能となる。
【0021】
また、車両の車幅方向に高さの異なる複数段の足場を形成できるため、作業予定の高所位置がアーチ状をなす場合に、階段状足場をこれに沿った形状に形成できる。したがって、トンネルの補修や点検等の作業に採用すると、トンネルの側部からクラウン部に至る広い範囲を一度に作業でき、これら補修や点検作業の効率を大幅に向上することが可能となる。
【0022】
本発明の移動式足場は、少なくとも前記中央足場板に、落下物を捕捉する落下物捕捉部材が設けられていることを特徴とする。また、本発明の移動式足場は、前記落下物捕捉部材が集水シートよりなり、該集水シートが、少なくとも前記中央足場板の下面側に設けられていることを特徴とする。さらに、本発明の移動式足場は、車両の荷台上に設けられ、高所作業時に展開し移動時に折り畳みの可能な移動式足場であって、前記車両の走行方向に延在する中央足場板と、前記荷台に着脱自在に設置され、上面に前記中央足場板が設けられるフレーム材と、前記中央足場板の下面側に設けられる集水シートと、を備え、前記中央足場板が、前記車両の車幅方向で複数に分割されているとともに、分割された前記中央足場板がそれぞれ、前記フレーム材に昇降自在に支持され、前記集水シートは、集水ホースの一端が接続される集水ますを備えた排出口を設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明の移動式足場によれば、例えば、高所で補修作業を行うことにより発生する粉塵や、洗浄液等のような液体を使用する洗浄工により発生する排水等の落下物の多くを、効率よく回収し別途処理することができる。これにより、高所作業により発生する落下物をを作業領域周辺に投下もしくは流下させることを防止でき、作業領域周辺の環境に配慮しつつ、高所作業を実施することが可能となる。
【0024】
本発明の移動式足場は、少なくとも前記中央足場板に、前記車両の走行方向に向けて張り出す延長足場部材が接続されることを特徴とする。
【0025】
本発明の移動式足場によれば、荷台に移動式足場を設置した車両を、走行方向に縦列停車させることで、延長用足場部材を介して隣り合う移動式足場の中央足場板どうし連結することができる。これにより、トンネルの補修や点検等のような、作業対象となる高所位置が長距離にわたって連続する場合に、連結する移動式足場の数量に調整して、車両の走行方向の長さを自在に延長し、一度に作業できる距離を増大させることができる。こうすると、トンネルの補修や点検作業時に実施される、トンネル内の交通規制期間の短縮化に貢献することも可能となる。
【0026】
本発明の足場構造は、縦列配置された本発明の複数の移動式足場と、隣り合う前記移動足場に架け渡される延長足場部材と、を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の足場構造によれば、移動式足場を利用して、作業対象となる高所位置の延長に対応させた全長を有する足場を、容易に設置及び撤去することができ、常時交通開放の要請に応じることができる状態で急速施工に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、車両の走行方向に向けて延在する中央足場板が、車両の車幅方向で複数に分割され、それぞれがフレーム材に昇降自在に支持されることから、車両の全長に相当する長さの階段状足場を容易に形成でき、高所作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態におけるトラックの後方からみた移動式足場を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるトラックの側方からみた移動式足場を示す図である(助手席側)。
図3】本発明の実施の形態におけるトラックの側方からみた移動式足場を示す図である(運転手側)。
図4】本発明の実施の形態におけるトラックの上方からみた移動式足場を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における移動式足場を折り畳んだ状態を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における移動式足場に設けた集水設備を示す図である。
図7】本発明の実施の形態におけるトラックの側方からみた複数の移動式足場を連結した様子を示す図である(助手席側)。
図8】本発明の実施の形態におけるトラックの走行方向からみた複数の移動式足場を連結した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、作業対象となる高所位置が長距離にわたって連続し、かつ高さ位置が一様でない場合に好適な、階段状足場に展開することの可能な移動式足場である。以下に、移動式足場を利用して2車線トンネルの追い越し車線側で覆工コンクリートの補修作業を実施する場合を事例に挙げ、その詳細を図1図8を参照しつつ説明する。
【0031】
≪≪移動式足場≫≫
移動式足場100は、図1及び図2で示すように、トラック200の荷台210に載置されており、フレーム材110、中央足場板120、下段足場板130、及び上段足場板140を備えている。
【0032】
フレーム材110は、トラック200の走行方向に延在する鉄骨造の枠体であり、荷台210に載置できるよう、荷台長及び荷台幅より短小な長さと幅に形成されている。その構造はいずれでもよいが、本実施の形態では、図2で示すように、荷台210上に複数の設置台115が間隔を設けて配置されるとともに、その上面に複数の柱材111が設置されている。そして、図1及び図2で示すように、この柱材111と、梁材112、桁材113及び斜材114を用いて方形枠状に組み立てた構造を有している。
【0033】
このような構成のフレーム材110は、荷台210に対して着脱自在に固定されており、その固定手段はいずれでもよいが、例えば、レバーブロック(登録商標)を利用して設置台115を荷台210に固定するとよい。こうして荷台210に固定されたフレーム材110には、図1で示すように、その上部に中央足場板120が設置されるとともに、運転席側の側面(トラック200の車幅方向の側面)に下段足場板130が設置されている。
【0034】
下段足場板130は、図3及び図4(a)で示すように、トラック200の走行方向に延在し、その長さは荷台長と同程度に形成されている。また、この長手方向の側面とフレーム材110の側面とが、図1で示すように、ヒンジ部材161を介して接続されている。
【0035】
これにより、下段足場板130は、展開時において、図1で示すように取外し式方杖164を介してフレーム材110に支持されて、トラック200の運転席側の側面より張り出すように配置される。また、収納時において、ヒンジ部材161を介して鉛直面内で回転し、図5(b)のように、板面がフレーム材110の側面と略平行な状態に収納される。
【0036】
中央足場板120は、図1で示すように、トラック200の車幅方向に分割されて、助手席側足場板121と運転席側足場板122とにより構成されている。助手席側足場板121及び運転席側足場板122はともに、荷台幅の1/2程度の幅に形成され、図1で示すように、昇降装置123を介してフレーム材110に支持されている。
【0037】
なお、トラック200の走行方向に延在する部材長は、両者ともに同じ長さに形成してもよいが、本実施の形態では異ならせており、図4(a)で示すように、運転席側足場板122はその長さを、荷台長より略短小な長さに形成している。一方、助手席側足場板121は、荷台長より長くトラック200の全長より略短小な長さに形成している。
【0038】
昇降装置123は、図1で示すように、助手席側足場板121及び運転席側足場板122の各々に対して複数が、長手方向に間隔を設けて配置されている。本実施の形態では、図2で示すように、パンタグラフジャッキを例示しているが、昇降機構を備えるものであれば、油圧ジャッキ等いずれを昇降装置123に作用してもよい。
【0039】
これにより、中央足場板120は、助手席側足場板121及び運転席側足場板122の高さ位置を、それぞれ自在に調整することができる。これにより、前述した下段足場板130とともに、トラック200の車幅方向に高さの異なる階段状足場を形成することが可能となる。そして、助手席側足場板121にはさらに、上段足場板140が設けられている。
【0040】
上段足場板140は、図1及び図4(a)で示すように、助手席側足場板121の幅と同等もしくは略短小な幅と、助手席側足場板121の部材長と略同様な長さに形成され、また、助手席側足場板121からトラック200の車幅方向に向かって張り出しが可能に設けられている。具体的には、図1で示すように、助手席側足場板121の板面上に設けられたスライド機構163を介して、上段足場板140が助手席側足場板121からトラック200の車幅方向にスライド移動可能に設けられている。
【0041】
スライド機構163はいずれの構成を用いてもよいが、例えば、上段足場板140の下面にローラーを設けるとともに、助手席側足場板121にローラーの移動方向を規定するレールを設ける等するとよい。
【0042】
これにより、上段足場板140は、展開時において、図1で示すように伸縮式方杖162を介してフレーム材110に支持されて、トラック200の助手席側側面より張り出すように配置される。また、収納時において、スライド機構163を介して助手席側足場板121の上面をスライドし、図5(b)で示すように、助手席側足場板121に積層する状態に収納される。
【0043】
これら上段足場板140、中央足場板120及び下段足場板130には、図1で示すように、いずれもその上面に、着脱自在な手すり部材151が設けられている。また、中央足場板120には、作業員が運転席側足場板122と助手席側足場板121との間を移動するための昇降階段152が着脱自在に設けられている。
【0044】
そして、手すり部材151や昇降階段152等の足場付属部品150は、適宜取り外しフレーム材110の内方に形成されている収納空間116に収納することができる。この収納空間116には、その他高所作業に用いる動力機器等の設備を収納してもよい。
【0045】
したがって、高所作業位置への搬入時及び高所作業終了時には、足場付属部品150を取り外した状態で、図5(a)で示すように、昇降装置123を短縮させて中央足場板120の高さを下げる。また、図5(b)で示すように、上段足場板140をスライド機構163を介して助手席側足場板121の上面にスライドさせ、助手席側足場板121に積層する。さらに、ヒンジ部材161を介して下段足場板130鉛直面内で回転させ、板面をフレーム材110の側面と略平行にする。
【0046】
こうして折り畳まれた移動式足場100は、図5(a)(b)で示すように、その長さ、幅、高さが、道路交通法で定められたトラック200の積載物の規制内に収められている(幅2490mm×高さ3750mm)。したがって、一般車両と同様に道路を通行して移動式足場100をトンネルT内の高所作業予定領域に搬出入することができる。また、一般車両と同様に道路を通行して高所作業予定領域に搬入されたのち、即時に階段状足場として展開できる状態で、トレーラー200に積載することができる。
【0047】
そして、高所作業予定領域に搬入されると移動式足場100は、車線減少等の車線規制が実施された状態のトンネルT内における道路上で、上段足場板140、中央足場板120及び下段足場板130が上記のとおり展開される。すると、移動式足場100は、高さの異なる4段の階段状足場となり、その高さ形状は、図1で示すように、トンネルTの側面からクラウン部に至る範囲に沿った形状となる。また、図4(a)で示すように、トラック200の全長に相当する長さと、車幅方向より広い幅とを有する、広大な床面が形成される(例えば、延長12m×幅4.5m)。
【0048】
これにより、トンネルTの補修作業を実施するにあたり、トンネルTの軸線方向及び軸線直交方向の広い範囲に対して、一度に高所作業を実施することができる。したがって、、トンネルTの補修作業予定位置が長距離にわたる場合であっても、移動式足場100の移動及び据え付け作業の回数を低減しつつ、効率よく高所作業を実施することが可能となる。また、急速施工を求められる場合にも、容易にこれ対応することが可能となる。
【0049】
さらに、移動式足場100の設置及び撤去作業に手間を要しないため、不測の事態により作業時に実施されるトンネルT内の交通規制に解除要請があった場合にも、これに対して迅速に対応することが可能となる。
【0050】
また、フレーム材110がトラック200の荷台210に着脱自在に設置されることから、トラック200の荷台210に設置可能な範囲で、作業現場に応じた大きさの足場を自在に形成することが可能となる。なお、移動式足場100の設置には特別な装備が不要であるため、トラック200に限定されることなく、例えばトレーラー等、荷台210を有する工事車両であれば、いずれにも移動式足場100を設置することが可能となる。
【0051】
≪≪集水設備≫≫
上記の移動式足場100は、例えばトンネルT内のすす洗浄工のような洗浄液等の液体を使用した高所作業に備えて、図6で示すように、落下物捕捉部材として集水シート171を採用し、この集水シート171を利用した集水設備170を着脱自在な態様でさらに備える構成としてもよい。以下に、作業員が洗浄液を用いてトンネルTの内壁面をなすアーチ状の覆工コンクリートを洗浄する洗浄工を実施する場合を事例に挙げて、集水設備170の詳細を説明する。
【0052】
集水設備170としては、上段足場板140、中央足場板120及び下段足場板130に対して着脱できるものが好適であり、例えば、集水シート171と、集水ホース172と、貯留タンク173と、排水ポンプ内蔵タンク174と、集水ます175とを備えている。
【0053】
集水シート171は、トンネルTの覆工コンクリートに洗浄液を吹き付けて洗浄する際、洗浄作業中に移動式足場100に向けて降下する使用済みの洗浄液Wを捕捉できる位置に設けられている。図6では、例えば、下段足場板130及び助手席側足場板121各々の下面側と、運転席側足場板122と下段足場板130の下面側を覆う位置にそれぞれ、集水シート171を配置している。
【0054】
集水シート171には、集水した使用済みの洗浄液Wを排出するための排出口(図示せず)を設けるとともに、この排出口に集水ます175を設けて集水ホース172の一端を接続している。また、集水ホース172の他端は、フレーム材110の内方に設けられた収納空間116に設置した貯留タンク173に挿入されている。
【0055】
したがって、集水シート171で捕捉した使用済みの洗浄液Wは、集水ます175及び集水ホース172を介して貯留タンク173に貯留される。なお、集水ホース172を流下した使用済みの洗浄液Wは、排水ポンプ内蔵タンク174を介して貯留タンク173に貯留させてもよい。
【0056】
これにより、移動式足場100を利用してトンネルTの覆工コンクリートの洗浄工を実施した場合に、作業により発生する使用済みの洗浄液Wの多くを、貯留タンク173に回収し別途処理することができる。これにより、使用済みの洗浄液Wを作業領域周辺の側溝Gに流下させることを防止でき、周辺環境への影響に配慮した高所作業を実施することが可能となる。なお、上記の集水設備170は、必ずしも移動式足場100に設けなくてもよい。
【0057】
≪≪移動式足場を利用した足場構造≫≫
上記の移動式足場100はさらに、複数を縦列配置してその長さを長大化することも可能である。図7及び図8に、足場構造300に2台の移動式足場100を用いた場合を事例に挙げて、その詳細を説明する。
【0058】
図7(a)で示すように、足場構造300は2台の移動式足場100と延長用足場部材180とにより構成されている。2台の移動式足場100はそれぞれ、縦列停車された2台のトラック200に搭載された状態で、延長用足場部材180を介して連結されている。延長用足場部材180は、上段用連結床181、中段用連結床182、下段用連結床183を備え、これらはいずれもトラック200の走行方向に延在するように配置されている。なお、延長用足場部材180は、あらかじめ移動式足場100に接続されているものでもよいし、足場構造300を形成する際に別途準備する部材であってもよい。
【0059】
図7(b)で示すように、上段用連結床181は、トラック200の走行方向に隣り合う上段足場板140どうし及び助手席側足場板121どうしを連結している。また、中段用連結床182は、運転席側足場板122どうしを連結し、下段用連結床183は下段足場板130どうしを接続している。
【0060】
これらは、機械的に接続してもよいし、例えば、前方に位置する移動式足場100の後端からトラック200の走行方向に向けて張り出すようにして、上段用連結床181、中段用連結床182、下段用連結床183の一端のみを接続してもよい。この場合には、これらの他端を、後方に位置する移動式足場100にかけ渡すように載置すればよい。
【0061】
これにより、作業者は移動式足場100の2台分、つまりはトラック200の全長の2倍の距離を連続して歩行移動することができることから、トンネルTの軸線方向に連続して実施する高所作業をより効率よく実施することが可能となる。
【0062】
本実施の形態では、トラック200の走行方向に隣り合う下段足場板130の間にビティ足場184を配置し、ビティ足場184の足場板を下段用連結床183として利用しているが、ビティ足場184は必ずしも採用しなくてもよい。
【0063】
また、延長用足場部材180として、上段用連結床181、中段用連結床182、下段用連結床183を採用しているが、必ずしもこれらすべてを採用しなくてもよい。隣り合う移動式足場100の間を往来できれば、例えば、中段用連結床182のみを採用して中央足場板120を構成する運転席側足場板122どうしのみを連結してもよい。
【0064】
さらに、連結する移動式足場100の数量は2台に限定するものではなく、現場の作業領域の長さに応じて、3台以上を連結する構成としてもよい。
【0065】
なお、上段用連結床181、中段用連結床182及び下段用連結床183には、上段足場板140、中央足場板120、下段足場板130各々に設置されている手すり部材151と連結可能な延長用手すり部材185を設置し、安全対策を施している。
【0066】
上記の通り、荷台210に移動式足場100を設置したトラック200を、走行方向に縦列停車させ、延長用足場部材180を介して隣り合う移動式足場100どうし連結した足場構造300を構成することで、トラック200の走行方向に連続する長大な階段状足場を迅速に構築することができる。
【0067】
これにより、トンネルTの補修や点検等のような、作業対象となる高所位置が長距離にわたって連続する場合に、連結する移動式足場100の数量に調整して、トラック200の走行方向の長さを自在に延長し、一度に作業できる距離を増大させることができる。こうすると、トンネルTの補修や点検作業時に実施される、トンネルT内の交通規制期間の短縮化に貢献することも可能となる。
【0068】
このように、移動式足場100を利用して、作業対象となる高所位置の延長に対応させた全長を有する足場を、容易に設置及び撤去することができ、常時交通開放の要請に応じることができる状態で急速施工に対応することが可能となる。
【0069】
本発明の移動式足場100は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、本実施の形態では、トンネルTが2車線トンネルである場合に、追い越し車線側で覆工コンクリートの補修作業を実施する場合を事例に挙げた。トンネル走行車線側で同じ作業を実施する場合には、移動式足場100を前後を入れ替え、下段足場板130がトラック200の助手席側に配置されるようにして荷台210に設置するとよい。
【0071】
もしくは、下段足場板130をフレーム材110に対して着脱自在な構成にするとともに、中央足場板120の助手席側足場板121および運転席側足場板122の両者にスライド機構163を設け、上段足場板140を両者に付け替え自在としてもよい。こうすると、トラック200に対してフレーム材110を据え付けたまま、下段足場板130のフレーム材110の助手席側側面に付け替え、また、上段足場板140を運転席側足場板122に付け替えることで、走行車線側の高所作業に用いる足場として採用することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態では、高所作業の対象領域として、トンネルTの内壁面をなすアーチ状の覆工コンクリートを例示したが、これに限定するものではなく、対象領域は、トンネルT以外の構造物であってもよいし、構造物の内外いずれであってもよい。
【0073】
さらに、本実施の形態では、移動式足場100に落下物捕捉部材として集水シート171を採用したが、これに限定するものではない。例えば、トンネル覆工面のリニューアル工事では、既設の覆工面に対してウォータジェットによる目荒らしや、ディスクサンダーによるケレン作業等を行う。したがって、このような作業を高所で実施することにより、移動式足場100およびその近傍に落下する粉塵や汚水を、捕捉し回収するべく好適なシート材等を落下物捕捉部材として採用すると、作業領域周辺の環境に配慮しつつ、高所作業を実施することが可能となる。
【0074】
なお、落下物捕捉部材は、中央足場板120等の下面側だけでなく、移動式足場100に対して着脱可能もしくは折畳み収納可能な構造を有していれば、組立足場に設置する朝顔のように、移動式足場100から張出して設けてもよい。
【0075】
加えて、本実施の形態では、移動式足場100に落下物捕捉部材として採用した集水シート171を利用した集水設備170を設けたが、これに限定するものではなく、移動式足場100の展開および収納の障害にならない範囲で、高所作業時に必要な他の設備や機器を搭載してもよい。
【0076】
例えば、移動式足場100には、覆工コンクリートの補修作業時における温度管理(湿度管理を含む)用のシート材を設けてもよい。具体的には、補修作業時に使用する材料によっては、施工可能温度に規定が設けられている場合がある。例えば、プライマー、エポキシ系、セメント系等の材料は、施工可能温度領域が5℃~40℃と規定されている。
【0077】
このような場合に、作業空間となる移動式足場100と覆工コンクリートとの間の空間を囲うようにシート材が配置されていると、これら作業空間における温度や湿度の管理が容易となる。したがって、適用する材料に好適な温度及び湿度下で補修作業を実施でき、温度や湿度管理に起因する品質低下を防止することが可能となる。
【0078】
また、本実施の形態では、中央足場板120が、助手席側足場板121と運転席側足場板122を備える構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、トラック200の車幅方向に3分割された構成としてもよいし、これらをさらにトラック200の走行方向に複数分割した構成とし、各々の高さを変更自在な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 移動式足場
110 フレーム材
111 柱材
112 梁材
113 桁材
114 斜材
115 設置台
116 収納空間
120 中央足場板
121 助手席側足場板
122 運転席側足場板
123 昇降装置
130 下段足場板
140 上段足場板
150 足場付属部品
151 手すり部材
152 昇降階段
161 ヒンジ部材
162 伸縮式方杖
163 スライド機構
164 取外し式方杖
170 集水設備
171 集水シート(落下物捕捉部材)
172 集水ホース
173 貯留タンク
174 排水ポンプ内蔵タンク
175 集水ます
180 延長用足場部材
181 上段用連結床
182 中段用連結床
183 下段用連結床
184 ビティ足場
185 延長用手すり部材
200 トラック(車両)
300 足場構造
210 荷台
T トンネル
G 側溝
W 洗浄液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8