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特許7589466絞りロール、液切りユニット、ウェット処理装置および異物発生源の同定方法
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  • 特許-絞りロール、液切りユニット、ウェット処理装置および異物発生源の同定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】絞りロール、液切りユニット、ウェット処理装置および異物発生源の同定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20241119BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G01N21/64 F
B08B3/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020147598
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042256
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菅原 賢太
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044502(JP,A)
【文献】特開2013-098181(JP,A)
【文献】特開2020-019828(JP,A)
【文献】登録実用新案第3052378(JP,U)
【文献】特開2001-102289(JP,A)
【文献】特開2004-163605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0076042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/958
B08B 1/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板やFC-BGA基板の製造工程で使用されるウェット処理装置の液切りユニットで使用する絞りロールであって、
少なくとも、絞りロールの表面には、多孔質材料または繊維構造体からなり、吸液性を備えた弾性体からなる吸液層が形成されており、該吸液層は、紫外線照射により蛍光を発光する蛍光材料を含有している事を特徴とする絞りロール。
【請求項2】
請求項1の前記絞りロールを複数使用した事を特徴とする前記液切りユニット。
【請求項3】
前記複数使用した絞りロールの吸液層が含有する蛍光材料が、識別可能な異なる波長の可視光を発光する事を特徴とする請求項2に記載の液切りユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の液切りユニットを使用したウェット処理装置であって、少なくとも、前記液切りユニットから搬送されてきた基板に紫外線を照射する光源部と、
前記基板の紫外線が照射された部分を撮像し、前記光源部から発せられた紫外線を照射した際に発する蛍光をカラー画像データとして取得可能な撮像部と、
前記絞りロールを設置した場所の情報と蛍光材料の識別名が紐づけられた前記絞りロールの吸液層が含有する蛍光材料が前記光源部から照射された紫外線により発する蛍光色の色データを予め格納したデータベースと、
前記撮像されたカラー画像データから前記蛍光色の色データと同じ色データを示す領域を検出し、検出した部分と前記絞りロールを設置した場所の情報を前記カラー画像データと合成して表示装置上に表示する演算処理部と、を備えることを特徴とするウェット処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウェット処理装置であって、
検査した前記基板上で検出された前記蛍光色の色データの部分の面積が予め設定された閾値を超えた場合、該蛍光色の色データから前記データベースを照会し、前記蛍光材料の識別名、さらに前記絞りロールを設置した場所の情報を得ることで、交換する絞りロールを特定するロール交換要否判定処理部を備えることを特徴とするウェット処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板やFC-BGA(フリップチップ・ボールグリッドアレイ)基板などの製造工程で使用されるウェット処理装置の水切りユニットの中に備えられている絞りロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェット処理装置は、主に、スプレーやシャワーにより基板の表面処理などを行う薬液を基板に供給する、あるいは、基板を薬液中に浸漬して処理する薬液処理ユニットと、処理した薬液や水洗水を基板から取り除く液切りユニットと、基板を乾燥する乾燥処理ユニットなどを備えている。
【0003】
その中で、液切りユニットにおいて行なわれる薬液や水洗水を取り除く方法として、エアナイフを使用したエアーカット処理や、絞りロールにより液切り処理などが行なわれている。
【0004】
エアーカット処理は、ワーク(処理対象の基板)表面にエアーを吹き付けることでワーク表面から処理した薬液や水洗水を取り除く方法であるが、エアーの当たり方を視認することが難しく、ワーク表面から処理した薬液や水洗水を安定して、かつ、完全に取り除くことができないことがある。
この薬液や水洗水を基板上から除去する液切り性を向上させるため、絞りロールによる液切り処理がある。多孔質な構造を有するスボンジロールからなる絞りロールを基板表面に押し付け、スポンジの吸水力を活用することにより、ワーク表面の余分な液体を取り除くと共に、より確実に液切りできるという利点を持つ。これら2つの液切り方法は、ワークの形態及び使用する薬液によってそれぞれ使い分けられている。
【0005】
絞りロールによる液切り処理は、例えば、図5に示した様に、処理対象物であるワーク6が、次々と液切りユニット8中に備えられた複数の、上下一対の絞りロール7の間を通る事によって液切り処理がなされる。
【0006】
絞りロールによる液切り処理においては、吸液性(または吸水性)のあるロールを直接ワークに接触させ、ワークから余分な液体を取り除くという機構上、ロール素材及びロールの状態に依存して液切り状態が大きく変化する場合がある。また、絞りロールの素材は主にスポンジであるが、スポンジは多孔質材料であり、一般的なゴムロール等と比較すると強度が低く、ロールの破損もしくは変形し易い欠点がある。また、ロールが破損した場合はロール表面からロールの構成物質が脱落する為、ワークにはロールに由来する異物が付着したまま、排出される。こうした異物は時間経過とともに固着して取れなくなることが多いため、早い段階で検出、除去が求められていた。
【0007】
また、絞りロールの一部が脱落した部分の液切れが十分に為されないと、その部分に薬液や洗浄水が残り、そのまま乾燥することで水シミとなり、ワークの外観不良となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-102289号公報
【文献】特開2006-104436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の事情に鑑み、本発明は、ウェット処理装置で発生する異物不良が、ウェット処理装置の液切りユニットで使用している絞りロール起因であるかどうかを識別可能な絞りロールと、その絞りロールを使用したウェット処理装置を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、プリント配線基板やFC-BGA基板の製造工程で使用されるウェット処理装置の液切りユニットで使用する絞りロールであって、
少なくとも、絞りロールの表面には、多孔質材料または繊維構造体からなり、吸液性を備えた弾性体からなる吸液層が形成されており、該吸液層は、紫外線照射により蛍光を発光する蛍光材料を含有している事を特徴とする絞りロールである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の前記絞りロールを複数使用した事を特徴とする前記液切りユニットである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記複数使用した絞りロールの吸液層が含有する蛍光材料が、識別可能な異なる波長の可視光を発光する事を特徴とする請求項2に記載の液切りユニットである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液切りユニットを使用したウェット処理装置であって、少なくとも、
前記液切りユニットから搬送されてきた基板に紫外線を照射する光源部と、
前記基板の紫外線が照射された部分を撮像し、前記光源部から発せられた紫外線を照射した際に発する蛍光をカラー画像データとして取得可能な撮像部と、
前記絞りロールを設置した場所の情報と蛍光材料の識別名が紐づけられた前記絞りロールの吸液層が含有する蛍光材料が前記光源部から照射された紫外線により発する蛍光色の色データを予め格納したデータベースと、
前記撮像されたカラー画像データから前記蛍光色の色データと同じ色データを示す領域を検出し、検出した部分と前記絞りロールを設置した場所の情報を前記カラー画像データと合成して表示装置上に表示する演算処理部と、を備えることを特徴とするウェット処理装置である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のウェット処理装置であって、
検査した前記基板上で検出された前記蛍光色の色データの部分の面積が予め設定された閾値を超えた場合、該蛍光色の色データから前記データベースを照会し、前記蛍光材料の識別名、さらに前記絞りロールを設置した場所の情報を得ることで、交換する絞りロールを特定するロール交換要否判定処理部を備えることを特徴とするウェット処理装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の絞りロール及び液切りユニットによれば、絞りロールの吸液層が蛍光物質を含むので、絞りロールが設置された装置内およびその周辺で見つかった異物に紫外線を当てて蛍光を発するかどうかを確認することで、脱落した吸液層の小片が装置周辺のどこまで広がっているかを確認できるという効果が得られる。
【0016】
また、本発明のウェット処理装置によれば、複数の絞りロールのうち、どの絞りロールが劣化しているかが分かるため、選択的かつタイムリーに絞りロールのみ交換できるので、必要以上の絞りロールを使わない効果が得られる。
【0017】
また、劣化した絞りロールを使い続けることがなくなるので、絞りロール由来の異物による処理基板の品質低下を防げるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ウェット処理装置の中における本発明の絞りロールを例示する説明図。
図2】本発明の絞りロールの断面を例示した説明図。
図3】ウェット処理装置の中における本発明の絞りロールと処理された基板上の異物との関係を例示する説明図。
図4】本発明のウェット処理装置の構成例を示す説明図。
図5】ウェット処理装置の中における従来の絞りロールを例示する説明図。
図6】ウェット処理装置の中における従来の絞りロールと処理された基板上の異物との関係を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<絞りロール>
本発明の絞りロールについて、図1図2を用いて説明する。
本発明の絞りロールは、ウェット処理装置の液切りユニットで使用する絞りロールである。
図1は、ウェット処理装置における液切りユニット(以上、図示省略)の中に4つの絞りロール1、2、3、4が配置された場合を概念的に示したものである。
【0020】
処理対象のワーク(図示省略)は、例えば、絞りロール1の上下のロールの間を通り、更に順次、絞りロール2、絞りロール3、絞りロール4を通って、液切りユニットから排出される。その間に、基板の表面に残留している処理液や水洗水などの液体が、絞りロールの吸液層に吸い取られる事で、液切りが行なわれる。
【0021】
絞りロール1、2、3、4には、少なくとも、吸液層が形成されており、該吸液層は、紫外線照射により視認可能な蛍光を発光する蛍光材料を含有している。
【0022】
図2は、絞りロール1が延伸する方向と直交する面における断面を例示した説明図である。絞りロール1が、図2における、上側の絞りロール1-1と、下側の絞りロール1-2と、を備えている場合を示している。絞りロール1-1の断面構造は、通常の絞りロールと同様である。中心部に黒い円形で示したコアがあり、そのコアの表面に吸液層11が形成された構成である。コアとしては、円柱状の鋼鉄製などの軸、または円筒状の軸を使用する事ができる。絞りロール2、3、4も絞りロール1と同様の構成である。
【0023】
また、上下に1個ずつの絞りロールから構成される場合に限定されない。上側に2個、下側に1個であっても良いし、上側に1個、下側に3個であっても構わない。
【0024】
吸液層11としては、樹脂からなるスポンジを好適に使用する事ができるが、これに限定する必要は無く、吸液性がある材料であれば良い。吸液性がある材料とは、例えば多孔質材料(porous medium)や繊維構造体を挙げる事ができる。吸液する物質が水洗水であれば、吸液性とは親水性であり、親水性の材料からなる多孔質材料や繊維構造体を候補として挙げる事ができる。
【0025】
ここで、多孔質材料とは、細孔が高密度に形成された材料を指す。硬い材料から柔らかい材料まで様々な多孔質材料が知られている。また繊維構造体とは、セルロースや合成樹脂の繊維が絡み合って形成された構造体を指す。紙や各種の材料からなる繊維を使用した不織布などを例として挙げる事ができる。いずれも、水などの液体と接触すると、液体が
多孔質材料や繊維構造体の内部に浸透して行く吸液性を備えている。ただし、吸液性が発現するのは、多孔質材料や繊維構造体を構成する材料が、液体と親和性がある場合に限定される。
【0026】
本発明においては、これらの吸液性がある材料として、柔軟性が不可欠である。例えば、珪藻土やモレキュラーシーブの様な多孔質材料は、吸液性は良好であるが、図2に例示した様に、吸液層11は、ワーク6と上下から接触する為、ワーク6より柔軟で無いと、ワーク6の表面が損傷を受ける虞がある。柔軟である事は、ワーク6と吸液層11が接触し、上下の吸液層11の間にワーク6が挟み込まれた時に、吸液層11が復元可能に変形し、ワーク6が破損または損傷を受ける様な過度な応力がワーク6にかからない様にする為に必要な要件である。
【0027】
ここで、柔軟性または柔軟であるとは、吸液層11の表面硬度が処理対象の基板(ワーク)6の表面硬度より小さいだけでなく、寧ろ、吸液層11が柔軟であり、外力が加わった時に容易に変形し、外力が取り除かれると元に戻る、という意味である。即ち、吸液層11は、吸液性が優れた材料であり、且つ弾性体である事が必要である。
【0028】
また、絞りロールが1個(一対)の場合は、1種類の蛍光材料を吸液層に含有させておけばよいが、複数の場合は、それぞれの絞りロールに、異なる蛍光材料を含有させておき、紫外線を照射すると、視認または撮像装置などの色識別可能な装置を用いて、色の識別が可能な強度の蛍光を発する様にしておく。こうしておくことにより、どの絞りロールが異物の発生源であったのかを、同定する事が可能となる。
【0029】
<液切りユニット>
本発明の液切りユニットには、図3に例示した様に、本発明の絞りローラが備えられている。図3は、絞りローラ1、2、3、4の4対の絞りローラが備えられている場合を例示したが、絞りローラは、1対以上備えらえていれば良い。例えば、4対の絞りローラ1、2、3、4が備えられている場合、この液切りユニットによって処理したワーク6には、図3に例示した様に、異物9-1、9-2、9-3、9-4が発見される可能性がある。
【0030】
液切りユニットによって処理したワーク6に紫外線を照射する事により、蛍光が確認された場合は、異物9-1から発光する蛍光の色によって識別する事ができる為、異物9-1は絞りロール1から発生した事が分かる。同様にして、それぞれ蛍光の色を識別する事により、異物9-2は絞りロール2から、異物9-3は絞りロール3から、異物9-4は絞りロール4から、発生したと同定することができる。
【0031】
<ウェット処理装置>
次に、本発明のウェット処理装置10について図4を用いて説明する。
本発明のウェット処理装置10は、水洗ユニット12と検査ユニット13を備えている。
【0032】
(水洗ユニット)
水洗ユニット12は、水洗部14と水切り部15を備えている。
水洗部14においては、ウェット処理の対象物である基板6が、ガイドローラ17の上を移動して、ウェット処理装置10に入ってくると、基板6は、水洗部14に備えられたシャワー16から噴出される洗浄水や洗浄液をかけられ、洗浄が行なわれる。この間も基板6は、ガイドローラ17の上を進行方向に向かって進んで行く。
【0033】
基板6は、水洗部14にて水洗された後、水切り部15に到達する。水切り部15には
、絞りロール7が備えられている。絞りロール7は、上記で説明した本発明の絞りロール1、2、3、4である。水洗部14にて基板6にかけられた洗浄水や洗浄液を、水切り部15にて、絞りロール7を基板6の上下から押し当てる事により、洗浄水や洗浄液を除去する。
なお、水切り部15は、上記で説明した液切りユニットと同じものである。
【0034】
水切り部15にて、基板6の液切り処理が終了すると、基板6はガイドローラ17の上を検査ユニット13に進む。検査ユニット13は、基板6に照明光を照射する光源部18と、光源部18により照明された基板6を撮像する撮像部19を備えている。これらの光源部18と撮像部19は、それらの動作を制御する制御装置20に接続されている。制御装置20は、少なくとも、光源部18と撮像部19の動作を制御するための演算処理部21と、ロール交換要否判定処理部22と、を備えている。ロール交換要否判定処理部22は、撮像部19が取得した基板6の画像データから、基板6の表面から蛍光が発せられているかどうか、および蛍光が発せられている場合には、その色を識別する。更に、識別した蛍光の色から、どの絞りロールから異物が発生しているか、を同定する。
【0035】
なお、制御ユニット20には、表示装置24とDB(データベース)23が接続されている。表示装置24は、制御装置20をオペレータが操作するのに必要な情報や、演算処理部21の演算結果である、異物の発生源の特定結果、などを表示する。DB23には、蛍光の波長データなどの異物の発生源の特定に必要な情報を記憶させておく。また、検査ユニット13の同定結果などの履歴データを保存する。複数の絞りロールが、新品から、ウェット処理装置10の稼働後、何時間で異物を生じたか、などの履歴データを記録しておく事ができる。
【0036】
なお、光源部18は、絞りロール7に添加した蛍光体が蛍光を発する事ができる紫外線を照射できる光源である。更に、撮像部19が撮像するのに十分な強度の紫外線を照射できる光源である。
【実施例
【0037】
次に、本発明のウェット処理装置を使用した異物発生源の同定方法の実施例について説明する。
【0038】
本発明の異物発生源の同定方法は、本発明のウェット処理装置の洗浄ユニットにて洗浄し、液切り処理した基板に紫外線を照射するステップ1と、紫外線が照射された基板から発光する蛍光の色を識別するステップ2と、識別された蛍光の色によって、蛍光を発している異物が水切り部(液切りユニット)のどの絞りロールから生じた異物であるかを同定するステップ3と、を備えている。
【0039】
(ステップ1)
本発明のウェット処理装置の液切りユニットによって処理され、搬出された基板に紫外線を照射するステップである。紫外線を照射する手段は特に限定されないが、例えば、市販されているブラックライトを好適に使用することができる。紫外線を照射する場合、基板をワークステージ上に載置して照射する事でも良い。
【0040】
照射する紫外線の強度は、人が目視によって識別する事を前提に、目視可能な明るさの蛍光を発する程度の紫外線強度に設定されていても良いし、蛍光の色を識別可能な撮像装置が正常に作動することができる蛍光の発光強度が得られる紫外線の強度に設定されていても良い。
【0041】
(ステップ2)
ステップ2では、まず、紫外線が照射された基板から発光する蛍光の色を識別する。識別する手段は、目視によって識別しても良いし、蛍光の色を識別可能な撮像装置を用いて、蛍光の色を識別しても良い。
【0042】
目視による場合は、まずブラックライトなどの紫外線光源を用いて検査対象の基板全体に紫外線を照射すると、絞りロール起因の異物が付着している場合は、蛍光が発せられるので、その蛍光の色の種類を人が目視によって識別する事ができる。異物が付着していない場合は蛍光を視認する事が無い。目視による色の識別能力は、個人差があるが、赤色から青色までの間の数色程度であると考えられる。例えば、赤、緑、青の3色に加え、赤と緑の中間色および緑と青の中間色の5色程度である。
【0043】
撮像装置による場合は、まずブラックライトなどの紫外線光源を用いて検査対象の基板全体に紫外線を照射する事は目視の場合と同じであるが、蛍光の色を識別する能力は、撮像装置の方が優れており、識別可能な色の数を目視による場合より大きくする事ができる。目視においては、赤と緑の識別は容易であり、その中間色では識別が困難となる。例えば1色であれば識別可能であると思われるが、中間色が2色以上になると、識別が容易ではなくなる可能性がある。しかしながら、撮像装置を用いた場合は、更に中間色が増え、目視によって識別不可能な中間色であっても識別することができる。しかしながら、その様な装置を用意する必要があるというデメリットがある。また、目視の場合は、ヒューマンエラーが発生するが、撮像装置を用いた場合は、エラーが発生し難いことに加え、休みなく連続して作動させる事が可能である。
【0044】
(ステップ3)
ステップ3では、識別された蛍光の色によって、蛍光を発している異物が水切りユニットのどの絞りロールから生じた異物であるかを同定する。絞りロールの吸液層に含有させる蛍光材料の蛍光色と、絞りロールと、の対応関係を明確にしておく事により、確認された蛍光色を発する異物がどの絞りロールから出たものであるかを同定可能とすることができる。
【0045】
以上、本発明の異物発生源の同定方法を説明したが、ステップ1~ステップ3は、全て人が行なう事も可能であるが、全て装置を使用して行う事も可能である。
【0046】
例えば、ステップ1は、液切りユニットで処理されて出て来た基板に、人がブラックライトを手で持って基板を照射する事もできるし、液切りユニットの次に、ブラックライトを使用して基板を照射するユニットXが備えられていても良い。
【0047】
また、ステップ2は、ステップ1で紫外線が照射された基板を人が目視で観察しても良いし、ユニットXに撮像装置が備えられていて、基板全体を撮像する事で蛍光の発光点の画像を捉え、その色を識別する事であっても良い。或いは、基板を撮像装置がスキャンして蛍光の発光点を捉える事であっても良い。
【0048】
また、ステップ3は、ステップ2で人が蛍光の色を識別する事で、どの絞りロールから発生した異物であるか、をステップ2と同時に同定する事でも良いし、撮像装置が識別した蛍光の色情報を、コンピュータ装置に送り、コンピュータ装置が、予め記憶した蛍光の色と絞りロールとを対応付ける照合情報に基づき、どの絞りロールから発生した異物であるかを、蛍光の色を用いて同定しても良い。
【符号の説明】
【0049】
1、2、3、4・・・絞りロール
5・・・紫外線
6・・・ワーク(基板)
7・・・絞りロール
8・・・液切りユニット(水切り部15と同じ)
9、9-1、9-2、9-3、9-4・・・異物
10・・・ウェット処理装置
11・・・吸液層
12・・・水洗ユニット
13・・・検査ユニット
14・・・水洗部
15・・・水切り部
16・・・シャワー
17・・・ガイドローラ
18・・・光源部
19・・・撮像部
20・・・制御ユニット
21・・・演算処理部
22・・・ロール交換要否判定処理部
23・・・DB(データベース)
24・・・表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6