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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】熱音響装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
F25B9/00 311
F25B9/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020149702
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044191
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-08-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 達磨
(72)【発明者】
【氏名】武井 智行
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049221(WO,A1)
【文献】特開平08-215513(JP,A)
【文献】特開2007-187136(JP,A)
【文献】特開2020-122604(JP,A)
【文献】特開2019-190718(JP,A)
【文献】特開2013-234823(JP,A)
【文献】特開2011-127870(JP,A)
【文献】特開2000-130636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱音響装置であって、
熱エネルギーを供給されて音波を発生させる原動機と、
音波を供給されて冷却対象を冷却する冷凍機と、
前記音波を前記原動機から前記冷凍機に伝播させる流体を収容した管と、
前記管に交換可能に取り付けられる1以上の膜ユニットであって、前記膜ユニットが前記管に取り付けられた状態において前記管内において、前記流体を通過させず、前記流体の振動によって振動されることができる振動膜をそれぞれ備える1以上の膜ユニットと、を備え、
前記管は、
前記振動膜を備える前記膜ユニットの一つを受け入れる開口と、
前記開口とともに前記膜ユニットの前記一つを受け入れる他の開口と、
前記管の一部を構成する支持部であって、前記管の中心軸の方向について、前記開口が位置する範囲にわたって設けられている支持部と、を備え、
前記熱音響装置は、さらに、前記振動膜を備える前記膜ユニットの一つが前記管に取り付けられた状態において前記開口を塞ぐ閉塞部を備え、
前記支持部は、前記管の中心軸の方向について、前記開口および前記他の開口が位置する範囲にわたって設けられており、
前記閉塞部は、前記膜ユニットの一つが前記管に取り付けられた状態において、前記管を囲んだ状態で、前記開口および前記他の開口を塞ぐ、熱音響装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱音響装置であって、
前記閉塞部は、前記管の素材よりも弾性変形しやすい素材で少なくとも一部が構成され前記開口を密閉する密閉部を備える、熱音響装置。
【請求項3】
熱音響装置であって、
熱エネルギーを供給されて音波を発生させる原動機と、
音波を供給されて冷却対象を冷却する冷凍機と、
前記音波を前記原動機から前記冷凍機に伝播させる流体を収容した管と、
前記管に交換可能に取り付けられる1以上の膜ユニットであって、前記膜ユニットが前記管に取り付けられた状態において前記管内において、前記流体を通過させず、前記流体の振動によって振動されることができる振動膜をそれぞれ備える1以上の膜ユニットと、を備え、
前記管は、
前記膜ユニットの一つを受け入れる開口と、
前記管の一部を構成する支持部であって、前記管の中心軸の方向について、前記開口が位置する範囲にわたって設けられている支持部と、を備え、
前記熱音響装置は、さらに、前記膜ユニットの一つが前記管に取り付けられた状態において前記開口を塞ぐ閉塞部を備え、
前記1以上の膜ユニットは、互いに異なる位置に前記振動膜が取り付けられている複数の膜ユニットである、熱音響装置。
【請求項4】
請求項3記載の熱音響装置であって、
前記閉塞部は、前記管の素材よりも弾性変形しやすい素材で少なくとも一部が構成され前記開口を密閉する密閉部を備える、熱音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度差に起因するエネルギーと、気体の振動による音響エネルギーとの間で、エネルギーの変換を行うことができる熱音響装置が存在する。特許文献1の熱音響温調システムにおいては、環状配管部の端部と、3方向配管継手の接続端部と、の間に、遮断膜サブアッセンブリが配される。遮断膜サブアッセンブリは、遮断膜と、遮断膜を両面側から挟むように保持する一対の環状の保持部材と、からなる。遮断膜は、作動気体の通過を禁止する一方で、作動気体の振動に伴って振動可能である。
【0003】
特許文献1の熱音響温調システムにおいては、環状配管部内において音響エネルギーが最小となる位置に遮断膜が配される。その結果、遮断膜の耐久性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再公表WO2019/049221
【文献】特開2016-217586
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱音響装置においては、構成を変更することにより、冷凍機の冷却能力を調整することが求められる場合がある。たとえば、工場の廃熱を与えられて動作する熱音響装置においては、遮断膜の位置を調整することにより、熱音響装置に与えられる熱の量は一定のまま、冷凍機の冷却能力を調整することができる。また、目標とする性能を冷凍機に発揮させるために、遮断膜の位置を調整することがある。しかし、熱音響装置において遮断膜の位置を調整するためには、遮断膜の前後の配管を分解して、新たな位置に遮断膜が配された配管を組み立てる必要がある。その作業は繁雑である。また、配管の分解および組み立てにより、熱音響装置の各部の寸法や遮断膜の張力が意図せずに変化して、想定した性能が得られなくなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、熱音響装置が提供される。この熱音響装置は、熱エネルギーを供給されて音波を発生させる原動機と、音波を供給されて冷却対象を冷却する冷凍機と、前記音波を前記原動機から前記冷凍機に伝播させる流体を収容した管と、1以上の膜ユニットと、を備える。1以上の膜ユニットは、前記管に交換可能に取り付けられる1以上の膜ユニットであって、振動膜をそれぞれ備える。振動膜は、前記膜ユニットが前記管に取り付けられた状態において前記管内において、前記流体を通過させず、前記流体の振動によって振動されることができる。前記管は、前記膜ユニットの一つを受け入れる開口と、前記管の一部を構成する支持部であって、前記管の中心軸の方向について、前記開口が位置する範囲にわたって設けられている支持部と、を備える。前記熱音響装置は、さらに、前記膜ユニットの一つが前記管に取り付けられた状態において前記開口を塞ぐ閉塞部を備える。
このような態様とすれば、開口を通じて膜ユニットを取り外し、取り付けることにより、熱音響装置において、振動膜の前後の管を分解することなく、振動膜の位置を調整することができる。また、支持部によって、管の中心軸の方向について、膜ユニットの両側の管の構成部分の相対位置が固定されているため、膜ユニットの取り外しによって、熱音響装置の各部の寸法が変化する可能性が低い。さらに、閉塞部によって開口が塞がれるため、管内において、音波を原動機から冷凍機に効率的に伝播させることができる。
(2)上記形態の熱音響装置において、前記閉塞部が、前記管の素材よりも弾性変形しやすい素材で少なくとも一部が構成され前記開口を密閉する密閉部を備える、態様とすることができる。
このような態様とすれば、密閉部によって開口が密閉されるため、管内において、音波を原動機から冷凍機に効率的に伝播させることができる。
(3)上記形態の熱音響装置において、前記1以上の膜ユニットが、互いに異なる位置に前記振動膜が取り付けられている複数の膜ユニットである、態様とすることができる。
このような態様とすれば、複数の膜ユニットを交換することにより、熱音響装置において、容易に振動膜の位置を調整することができる。
本開示は、熱音響装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、配管、膜の取り付け構造、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の熱音響装置TAの概略構成を示す説明図である。
図2】ヒートポンプHP近傍のループ管LT1の構成を示す斜視図である。
図3】ループ管LT1および膜ユニット10の断面図である。
図4】閉塞部15の断面図である。
図5】ループ管LT1に膜ユニット10および閉塞部15が取り付けられる際の処理を示す断面図である。
図6】膜ユニット10,13を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
A1.熱音響装置TAの構成:
図1は、実施形態の熱音響装置TAの概略構成を示す説明図である。なお、図1は、熱音響装置TAの各構成要素の形状を正確に示すものではない。熱音響装置TAは、ループ管型の熱音響装置である。熱音響装置TAは、熱源HSと冷却対象COとに接続されている。熱音響装置TAは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、冷却対象COを冷却することができる。
【0010】
熱音響装置TAは、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1,LT2と、膜ユニット10と、閉塞部15と、を備える。原動機PMの一端とヒートポンプHPの一端とは、ループ管LT1によって接続されている。原動機PMの他端とヒートポンプHPの他端とは、ループ管LT2によって接続されている。膜ユニット10および閉塞部15は、ループ管LT1に取り付けられている。その結果、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1,LT2と、膜ユニット10と、閉塞部15とは、輪状の配管構造PAを構成している。この輪状の配管構造PA内には、流体FL1が満たされている。本実施形態において、流体FL1は、空気である。輪状の配管構造PAは、膜ユニット10以外の部位において、内部の流体FL1が、輪状の配管構造PA内を流通可能であるように構成されている。
【0011】
原動機PMは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、音波を発生させる(図1の下段左部参照)。原動機PMは、第1熱交換器40と、第2熱交換器20と、蓄熱器30と、を備える。
【0012】
図1において、第1熱交換器40と、蓄熱器30と、第2熱交換器20と、が並ぶ方向を、Z軸方向として示す。Z軸方向は、第1熱交換器40、蓄熱器30、および第2熱交換器20の中心軸CAの方向と一致する。また、Z軸方向に垂直な2方向であって互いに垂直な2方向を、図1において、X軸方向およびY軸方向として示す。図2以降において示すX軸、Y軸、Z軸は、図1において示したX軸、Y軸、Z軸と対応する。
【0013】
第1熱交換器40は、原動機PMの一端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されている(図1の下段左部参照)。第1熱交換器40は、さらに、熱源HSに接続されている。本実施形態において、熱源HSは、具体的には、抵抗加熱方式の棒状のヒータである。第1熱交換器40は、第1熱交換器40の外部の構成である熱源HSから熱を供給されて、配管構造PA内の流体FL1であって、第1熱交換器40に接する流体FL1に、熱を付与する。
【0014】
第2熱交換器20は、原動機PMの他端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されている(図1の下段左部参照)。第2熱交換器20は、図示しないチラーを備える。第2熱交換器20は、チラーによって温度を一定に保たれている。第2熱交換器20は、配管構造PA内の流体FL1であって、第2熱交換器20に接する流体FL1を、あらかじめ定められた温度に制御する。
【0015】
蓄熱器30は、配管構造PAのうち、第1熱交換器40と第2熱交換器20との間の部位に設置されている(図1の下段左部参照)。具体的には、蓄熱器30は、第1熱交換器40と第2熱交換器20とを接続する配管の内部に収容されている。
【0016】
蓄熱器30は、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、流体FL1を流通させる流路32を構成する。蓄熱器30は、流体FL1を流通可能であるように第1熱交換器40および第2熱交換器20と接続されている。蓄熱器30は、温度勾配を形成されて、配管構造PAのループ管LT1内に音波を発生させる。
【0017】
原動機PMは、以下のように動作する。第1熱交換器40によって加熱された流体FL1が、蓄熱器30の一端38およびその近傍の部分に熱を与えることにより、蓄熱器30の一端38の近傍が高温となる。第2熱交換器20によって、蓄熱器30の他端39の近傍が、蓄熱器30の一端38に対して低温となる。その結果、蓄熱器30に、温度勾配が形成される。すると、蓄熱器30は、熱音響自励振動を起こし、配管構造PA内に定常波を発生させる。蓄熱器30が発生させた音響エネルギーは、ループ管LT1内に収容された流体FL1を介して、原動機PMの一端からヒートポンプHPの一端に伝播する(図1の矢印K1参照)。本実施形態において、配管構造PAの配管長は約3mである。定常波の波長は配管長と同じである。
【0018】
ヒートポンプHPは、原動機PMから音波を供給されて、冷却対象COを冷却する(図1の上段右部参照)。ヒートポンプHPは、原動機PMと略同様の構成を有する。ヒートポンプHPは、第3熱交換器90と、第4熱交換器70と、蓄熱器80と、を備える。
【0019】
第3熱交換器90は、ヒートポンプHPの一端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されている(図1の上段右部参照)。第3熱交換器90は、図示しないチラーを備える。第3熱交換器90は、チラーによって流体を流通されて、温度を一定に保たれている。第3熱交換器90は、配管構造PA内の流体FL1であって、第3熱交換器90に接する流体FL1を、あらかじめ定められた温度に制御する。
【0020】
第4熱交換器70は、ヒートポンプHPの他端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されている(図1の上段右部参照)。第4熱交換器70は、さらに、冷却対象COに接続されている。第4熱交換器70は、配管構造PA内の流体FL1であって、第4熱交換器70に接する流体FL1から熱を奪われて、冷却対象COから熱を奪う。その結果、冷却対象COが冷却される。
【0021】
蓄熱器80は、配管構造PAのうち、第4熱交換器70と第3熱交換器90との間の部位に設置されている(図1の上段右部参照)。具体的には、蓄熱器80は、第4熱交換器70と第3熱交換器90とを接続する管の内部に収容されている。
【0022】
蓄熱器80は、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、流体FL1を流通させる流路82を構成する。蓄熱器80は、流体FL1を流通可能であるように第4熱交換器70および第3熱交換器90と接続されている。蓄熱器80は、ループ管LT1内の流体FL1によって伝達される定常波の音波によって、温度勾配を形成される。
【0023】
ヒートポンプHPは、以下のように動作する。蓄熱器80の流路82内において、流体FL1は定常波で振動する。流体FL1の微小部分が蓄熱器80の一端88から他端89に向かう向きに移動する際に、流体FL1は断熱膨張する。そして、流体FL1の微小部分の温度は低下する。流体FL1の微小部分は、蓄熱器80の構造から熱を奪う。一方、流体FL1の微小部分が蓄熱器80の他端89から一端88に向かう向きに移動する際に、流体FL1は断熱圧縮される。そして、流体FL1の微小部分の温度は上昇する。流体FL1の微小部分は、蓄熱器80の構造に熱を与える。その結果、流体FL1の振動によって、蓄熱器80の流路82内において、蓄熱器80の他端89から一端88に向かう向きに、熱の移動が生じる。よって、蓄熱器80において、温度勾配が形成される。
【0024】
一方、第3熱交換器90によって、蓄熱器80の一端88の近傍の温度は、一定に保たれている。すなわち、第3熱交換器90に加えられた熱は、チラーを介して、外部に排出される。その結果、流体FL1の振動による熱の移動によって、蓄熱器80の他端89の近傍は、冷却される。すると、第4熱交換器70を介して、冷却対象COが冷却される。
【0025】
膜ユニット10は、ループ管LT1に交換可能に取り付けられている(図1の中段右部参照)。より具体的には、膜ユニット10は、ループ管LT1において、原動機PMの第1熱交換器40よりもヒートポンプHPの第3熱交換器90に近い位置に配される。膜ユニット10は、ループ管LT1内を封止する振動膜12を備える。振動膜12は、弾性を有する素材で構成された薄膜である。振動膜12は、具体的には、ポリイミドで設けられている。振動膜12は、膜ユニット10がループ管LT1に取り付けられた状態において、ループ管LT1内において、流体FL1を通過させず、流体FL1の振動によって振動されることができる。膜ユニット10の詳細な構造については、後に説明する。
【0026】
ループ管LT1に可能に取り付けられる膜ユニットとしては、膜ユニット10に加えて膜ユニット13が用意される。膜ユニット10,13においては、互いに異なる位置に振動膜12が取り付けられている。膜ユニット13の他の点は、膜ユニット10と同じである。膜ユニット13については、後に説明する。
【0027】
ループ管LT1,LT2内において、振動膜12の位置が、おおよそ、定常波における媒体の速度の節となり、媒体の圧力の腹となる。すなわち、振動膜12の位置の近傍において、媒体の速度は0となり、圧力は最大となる。このため、ヒートポンプHPの蓄熱器80に対するループ管LT1の中心軸CAの方向の振動膜12の位置を調整することにより、蓄熱器80内の振動の状態を調整することができる。その結果、熱源HSから原動機PMに投入される熱エネルギーが一定である条件下でも、ヒートポンプHPの冷却能力を調整することができる。
【0028】
A2.ヒートポンプHP近傍の配管構造PAの構成:
図2は、ヒートポンプHP近傍のループ管LT1の構成を示す斜視図である。図2においては、ヒートポンプHP近傍のループ管LT1の一部が切り出して示されている。ループ管LT1は、ヒートポンプHP近傍において、開口O1,O2と、支持部TS1,TS2と、を備える。
【0029】
開口O1,O2は、ループ管LT1において、ループ管LT1の中心軸CAに対して垂直な方向に開口している。図2において、開口O1は、X軸正方向に開口している。開口O2は、X軸負方向に開口している。開口O1,O2は、膜ユニット10,13のうちの一つを受け入れる。
【0030】
支持部TS1,TS2は、ループ管LT1の一部を構成する。支持部TS1,TS2を含むループ管LT1は、ステンレスで設けられる。支持部TS1は、開口O1,O2に対してY軸正方向側に位置する。支持部TS2は、開口O1,O2に対してY軸負方向側に位置する。支持部TS1,TS2の中心軸CAと向かい合う面は、中心軸CAに平行であり、かつ互いに平行な二つの平面である。支持部TS1,TS2の外面は、ループ管LT1の外面の円柱側面の一部を構成する。支持部TS1,TS2は、ループ管LT1の中心軸CAの方向、すなわち、Z軸方向について、開口O1,O2が位置する範囲にわたって設けられている。その結果、開口O1,O2が設けられている部位において、膜ユニット10または膜ユニット13が挿入されていない状態においても、ループ管LT1の形状は、支持部TS1,TS2によって維持されている。
【0031】
図3は、ループ管LT1および膜ユニット10の断面図である。膜ユニット10は、外殻11と、振動膜12とを備える(図3の右部参照)。外殻11は、略円筒状の構造を備える。外殻11は、ステンレスで設けられている。外殻11の内部には、円筒の中心軸CAmに垂直な向きに振動膜12が張られている。より具体的には、振動膜12は、その外周端を外殻11の内面に溶着されている。
【0032】
外殻11の外面の一部は、円筒の中心軸CAmに平行であり、かつ互いに平行な二つの平面である。膜ユニット10は、これらの平面がZX平面と平行になる向きで、X軸負方向に沿って、ループ管LT1内に挿入される(図3の矢印Ai参照)。ループ管LT1内において、膜ユニット10は、膜ユニット10の中心軸CAmがループ管LT1の中心軸CAと一致する位置に配される。
【0033】
図4は、閉塞部15の断面図である。閉塞部15は、膜ユニット10,13がループ管LT1に取り付けられた状態においてループ管LT1の開口O1,O2を塞ぐ。閉塞部15は、第1部材15Lと、第2部材15Rと、蝶番18と、固定具19と、を備える。
【0034】
第1部材15Lと、第2部材15Rとは、円筒を、中心軸を含む平面で2分割することによって得られる概略形状を、それぞれ有する。第1部材15Lと、第2部材15Rとは、それぞれ外殻16と密閉部17とを有する。外殻16は、半円筒形状の外形を有する。外殻16は、ステンレスで設けられている。密閉部17は、各外殻16の半円筒形状の内面に、一定の厚さで配される。密閉部17は、ループ管LT1の素材よりも弾性変形しやすい素材で構成される。より具体的には、密閉部17は、シリコンゴムで構成される。
【0035】
第1部材15Lと、第2部材15Rとは、一端において、蝶番18を介して開閉可能に接続されている(図4の下段右部参照)。第1部材15Lと、第2部材15Rとは、他端において、固定具19によって、固定される(図4の上段中央部参照)。固定具19は、第1部材15Lと、第2部材15Rとを開放することもできる。
【0036】
ループ管LT1を囲んだ状態で第1部材15Lと第2部材15Rとが固定具19によって固定されることにより、閉塞部15は、ループ管LT1に固定される。その結果、ループ管LT1内に配された膜ユニット10も、ループ管LT1に対して固定される。閉塞部15は、その状態において、ループ管LT1の開口O1,O2を塞ぐ。その際、密閉部17は、外殻16によってループ管LT1の開口O1,O2に押しつけられる。その結果、密閉部17は、開口O1,O2の端面に密着し、開口O1,O2を密閉する。
【0037】
一方、ループ管LT1を囲んだ状態で第1部材15Lと第2部材15Rとが固定具19によって固定されている状態から、固定具19が開放されることにより、閉塞部15は、ループ管LT1に対して取り外されることができる。その結果、ループ管LT1内に配された膜ユニット10も、ループ管LT1の開口O1を介して、ループ管LT1から取り出し可能となる。
【0038】
熱音響装置TAが閉塞部15を備えることにより、開口O1,O2が塞がれることができる。このため、膜ユニット10および閉塞部15を取りつけた状態において、ループ管LT1内において、音波を原動機PMからヒートポンプHPに効率的に伝播させることができる。より具体的には、密閉部17によって開口O1,O2が密閉されるため、ループ管LT1内において、音波を原動機PMからヒートポンプHPに効率的に伝播させることができる。
【0039】
図5は、ループ管LT1に膜ユニット10および閉塞部15が取り付けられる際の処理を示す断面図である。まず、膜ユニット10は、X軸負方向に沿って、ループ管LT1の開口O1,O2内に挿入される。次に、ループ管LT1の開口O1,O2は、蝶番18を介して開かれた第1部材15Lと第2部材15Rとに挟まれる。その後、第1部材15Lと第2部材15Rとは、固定具19によって固定される(図4参照)。その結果、ループ管LT1の開口O1,O2は、閉塞部15によって塞がれる。
【0040】
本実施形態においては、振動膜12によって、ループ管LT1、LT2内の音波の状態を調整することができる(図1の上段右部参照)。また、開口O1を通じて膜ユニット10を取り外し、取り付けることにより、熱音響装置TAにおいて、振動膜12の前後のループ管LT1を分解することなく、振動膜12の位置を調整することができる(図5参照)。このため、ループ管LT1の分解によって、熱音響装置TAの各部の寸法や遮断膜12の張力が意図せずに変化して、想定した性能が得られなくなる事態を、回避することができる。
【0041】
本実施形態においては、支持部TS1,TS2によって、ループ管LT1の中心軸CAの方向について、膜ユニット10の両側の管の構成部分の相対位置が固定されている(図2および図5参照)。このため、膜ユニット10の取り外しによって、熱音響装置TAの各部の寸法が変化する可能性が低い。その結果、振動膜12の位置を調整した後も、目標とする熱音響装置TAの性能を発揮させやすい。
【0042】
図6は、膜ユニット10,13を示す断面図である。膜ユニット13は、外殻11内において振動膜12が取り付けられている位置が、膜ユニット10の外殻11内において振動膜12が取り付けられている位置とは異なる。より具体的には、膜ユニット13においては、振動膜12は、中心軸CAmの方向について、膜ユニットのより中央に近い位置に配されている。膜ユニット13の他の点は、膜ユニット10と同じである。
【0043】
本実施形態においては、振動膜12は、蓄熱器80の中心軸CAの方向についての中心の位置から、原動機PMに向かって20~30cmの位置に配される(図1の中段右部参照)。すなわち、振動膜12は、中心軸CAの方向について約10cmの範囲内でその位置を調整される。膜ユニット13の振動膜12は、中心軸CAmの方向について、膜ユニットの中央から2.5cmずれた位置に配されている。膜ユニット10の振動膜12は、中心軸CAmの方向について、膜ユニットの中央から5cmずれた位置に配されている。
【0044】
このような構成とすることにより、複数の膜ユニット10,13を交換することによって、熱音響装置TAにおいて、容易に振動膜12の位置を調整することができる。
【0045】
本実施形態におけるヒートポンプHPを「冷凍機」とも呼ぶ。ループ管LT1を「管」とも呼ぶ。
【0046】
B.他の実施形態:
B1.他の実施形態1:
(1)上記実施形態において、ループ管LT1は、開口O1,O2を備える(図2および図3参照)。しかし、ループ管LT1は、開口O2を備えない態様とすることができる。すなわち、管は、膜ユニットの一つを受け入れる1個の開口を備え、中心軸を挟んで開口とは逆の側は管を構成する壁となっている態様とすることもできる。
【0047】
(2)上記実施形態において、ループ管LT1は、支持部TS1,TS2を備える(図2および図3参照)。しかし、ループ管LT1は、支持部TS1,TS2の一方を備えない態様とすることができる。また、ループ管LT1は、3以上の支持部を備えることもできる。すなわち、管は、管の中心軸の方向について、開口が位置する範囲にわたって設けられている1以上の支持部を備える態様とすることができる。
【0048】
(3)上記実施形態において、ループ管LT1は、ステンレスで設けられる(図1参照)。しかし、管は、塩化ビニールなど、他の素材で構成することもできる。
【0049】
(4)上記実施形態において、ループ管LT1は、一定の外径を有する円管として示されている(図1図3参照)。しかし、管の外径は、管の部位によって異なっていてもよい。ただし、管の内径は、一定であることが好ましい。
【0050】
(5)上記実施形態において、熱音響装置TAは、2個の膜ユニット10,13を備える(図6参照)。しかし、熱音響装置TAは、5個、7個など、3個以上の膜ユニットを備える態様とすることもできる。複数の膜ユニットは、互いに異なる位置に振動膜が取り付けられていることが好ましい。
【0051】
(6)上記実施形態において、膜ユニット13の振動膜12は、中心軸CAmの方向について、膜ユニットの中央から2.5cmずれた位置に配されている(図6参照)。膜ユニット10の振動膜12は、中心軸CAmの方向について、膜ユニットの中央から5cmずれた位置に配されている。しかし、膜ユニット13において、振動膜12は、他の位置に設けられていてもよい。ただし、複数の膜ユニット同士の振動膜の位置の相違の刻み幅は、5cm以下とすることが好ましい。そのような態様とすれば、十分な精度で冷凍機の出力を調整することができる。複数の膜ユニット同士の振動膜の位置の相違の刻み幅は、3cm以下とすることがより好ましい。
【0052】
(7)上記実施形態において、膜ユニット10は、膜ユニット10の中心軸CAmがループ管LT1の中心軸CAと一致する位置に配される(図3および図5参照)。膜ユニット10は、Z軸方向について、向きを反転させて取り付けられるように、構成されることができる。そのような態様とすれば、互いに異なる位置に振動膜が取り付けられているN個(Nは1以上の整数)の膜ユニットによって、2N通りの位置に、振動膜を取り付けることができる。たとえば、図6の態様においては、膜ユニット10,13により、膜ユニットの中央からヒートポンプHP側に2.5cmずれた位置、膜ユニットの中央からヒートポンプHP側に5cmずれた位置、膜ユニットの中央から原動機PM側に2.5cmずれた位置、膜ユニットの中央から原動機PM側に5cmずれた位置、の通りの位置に、振動膜を取り付けることができる。
【0053】
(8)上記実施形態において、振動膜12は、ポリイミドで設けられている。(図3および図6参照)。しかし、振動膜は、ポリフェニレンサルファイド(PPK)樹脂や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂など、他の素材で構成することもできる。ただし、振動膜は、管内の流体を通過させず、流体の振動によって振動されることができるように構成されることが好ましい。
【0054】
(9)上記実施形態において、ループ管LT1を囲んだ状態で第1部材15Lと第2部材15Rとが固定具19によって固定されることにより、閉塞部15は、ループ管LT1に固定される(図4参照)。しかし、閉塞部は、蝶番を介してループ管LT1の外面に取り付けられており、開口を塞ぐように構成されている態様など、他の態様とすることもできる。
【0055】
(10)上記実施形態において、密閉部17は、シリコンゴムで構成される(図4および図5参照)。しかし、密閉部17は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂など、他の素材で構成されることができる。ただし、密閉部は、管の壁部を構成する素材よりも弾性変形しやすい素材で構成されることが好ましい。
【0056】
B2.他の実施形態2:
上記実施形態において、閉塞部15は、ループ管LT1の素材よりも弾性変形しやすい素材で構成される密閉部17を備える。しかし、閉塞部はそのような構成を備えない態様とすることもできる。たとえば、管が、管壁を構成する素材よりも弾性変形しやすい素材で構成される密閉部を、開口の外周に備える態様とすることもできる。また、管壁の外面形状と閉塞部の内面形状を高精度に一致させ、管壁の外面と閉塞部の内面とを密着させることにより、開口を密封してもよい。
【0057】
B3.他の実施形態3:
上記実施形態においては、ループ管LT1に可能に取り付けられる膜ユニットとして、膜ユニット10に加えて膜ユニット13が用意される。しかし、ループ管LT1に可能に取り付けられる膜ユニットとして、一つの膜ユニット10のみが用意されてもよい。そのような態様としても、開口O1を通じて膜ユニット10を取り外し、膜ユニット10にける振動膜12の位置を変更した後、再度、膜ユニット10をループ管LT1に取り付けることができる。その結果、熱音響装置TAにおいて、振動膜12の前後のループ管LT1を分解することなく、振動膜12の位置を調整することができる(図5参照)。このため、熱音響装置TAの各部の寸法や遮断膜12の張力が意図せずに変化して、想定した性能が得られなくなる事態を、回避することができる。
【0058】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…膜ユニット、11…外殻、12…振動膜、13…膜ユニット、15…閉塞部、15L…第1部材、15R…第2部材、16…外殻、17…密閉部、18…蝶番、19…固定具、20…第2熱交換器、30…蓄熱器、32…流路、38…一端、39…他端、40…第1熱交換器、70…第4熱交換器、80…蓄熱器、82…流路、88…一端、89…他端、90…第3熱交換器、Ai…膜ユニットの挿入方向を示す矢印、CA…中心軸、CAm…中心軸、CO…冷却対象、FL1…流体、HP…ヒートポンプ、HS…熱源、LT1…ループ管、LT2…ループ管、O1…開口、O2…開口、PA…配管構造、PM…原動機、TA…熱音響装置、TS1…支持部、TS2…支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6