(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241119BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G03G15/08 320
G03G15/08 235
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020152059
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100187492
【氏名又は名称】新保 元啓
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】兼古 志郎
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 広佳
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-189790(JP,A)
【文献】特開2019-207346(JP,A)
【文献】特開2010-139707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、
少なくともトナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有する現像装置と、
前記現像剤担持体から前記像担持体へ前記トナーを移動させるように前記現像剤担持体にバイアス電圧を印加する電圧印加部と、
前記現像剤担持体から前記像担持体へ移動した前記トナーの単位面積当たりの重量を示すトナー現像量を測定する第1測定部と、
前記現像剤担持体と前記像担持体との間に流れる現像電流を測定する第2測定部と、
前記トナー現像量と前記現像電流との間の
直線回帰モデルにおける推定値の分散を標本値
である前記第1測定部で測定された前記トナー現像量の分散で割った値を示す決定係数の値を算出し、前記決定係数の値に応じて前記トナーの劣化状態を推定する推定部と
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記決定係数の値を算出する前に、前記バイアス電圧に含まれる直流バイアスを少なくとも3つの値に変化させて、前記トナー現像量の測定結果と前記現像電流の測定結果との少なくとも3つの組み合わせを取得する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記決定係数の値と第1閾値とを比較し、前記決定係数の値が前記第1閾値よりも小さくない場合には、前記トナーの帯電量を回復させるエージング動作が実行されるように制御する、請求項
1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記決定係数の値と前記第1閾値よりも大きい第2閾値とを比較し、前記決定係数の値が前記第2閾値よりも小さくない場合には、前記エージング動作に代えて前記トナーを強制的に消費する動作が実行されるように制御する、請求項
3に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の画像形成装置は、感光体ドラムと、現像ローラーと、供給ローラーと、制御部とを備える。現像ローラーは、感光体ドラムへトナーを供給する。供給ローラーは、現像ローラーへトナーを供給する。制御部は、供給ローラーと現像ローラーとの間に流れる電流の電荷密度と、現像ローラーと感光体ドラムとの間に流れる電流の電荷密度との差を所定値以下に保つことにより、画像かぶりの発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像形成装置では、トナーの劣化による帯電量分布の変化に起因した画像かぶりの発生を抑制できなかった。
【0005】
本発明は、トナーの劣化状態を推定することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、現像装置と、電圧印加部と、第1測定部と、第2測定部と、推定部とを備える。前記像担持体は、静電潜像を担持する。前記現像装置は、少なくともトナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有する。前記電圧印加部は、前記現像剤担持体から前記像担持体へ前記トナーを移動させるように前記現像剤担持体にバイアス電圧を印加する。前記第1測定部は、前記現像剤担持体から前記像担持体へ移動した前記トナーの単位面積当たりの重量を示すトナー現像量を測定する。前記第2測定部は、前記現像剤担持体と前記像担持体との間に流れる現像電流を測定する。前記推定部は、前記トナー現像量と前記現像電流との間の回帰モデルにおける推定値の分散を標本値の分散で割った値を示す決定係数の値を算出し、前記決定係数の値に応じて前記トナーの劣化状態を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現像剤中のトナーの劣化状態を推定することができる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】現像装置の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。
【
図3】画像形成装置の回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】決定係数の値の予測曲線の一例を示す図である。
【
図8】トナー現像量と現像電流との相関の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
図1を参照して、実施形態に係る画像形成装置100について説明する。
図1は、画像形成装置100の一例を示す概略断面図である。画像形成装置100は、例えばカラープリンターである。
図1において、便宜上、左から右への向きをX軸の正の向き、手前から奥への向きをY軸の正の向き、下から上への向きをZ軸の正の向きとする。
【0011】
図1に示されるように、画像形成装置100は、操作部2、給紙部3、搬送部4、トナー補給部5、画像形成部6、転写部7、定着部8、及び排出部9を備える。
【0012】
操作部2は、ユーザーからの指示を受け付ける。操作部2は、液晶ディスプレー21と、複数の操作キー22とを含む。液晶ディスプレー21は、例えば、各種処理結果を表示する。操作キー22は、例えば、テンキー、及びスタートキーを含む。
【0013】
給紙部3は、給紙カセット31と、給紙ローラー群32とを有する。給紙カセット31は、複数枚の用紙Pを収容可能である。給紙ローラー群32は、給紙カセット31に収容された用紙Pを1枚ずつ搬送部4へ給紙する。
【0014】
搬送部4は、ローラー及びガイド部材を備える。搬送部4は、給紙部3から排出部9まで延在する。搬送部4は、画像形成部6及び定着部8を経由するように、給紙部3から排出部9まで用紙Pを搬送する。
【0015】
トナー補給部5は、画像形成部6にトナーを補給する。トナー補給部5は、第1装着部51Y、第2装着部51C、第3装着部51M、及び第4装着部51Kを備える。
【0016】
第1装着部51Yには、第1トナーコンテナ52Yが装着される。同様に、第2装着部51Cには第2トナーコンテナ52Cが、第3装着部51Mには第3トナーコンテナ52Mが、第4装着部51Kには第4トナーコンテナ52Kが装着される。第1装着部51Y~第4装着部51Kの構成は、装着されるトナーコンテナの種類が異なるのみで他の構成は同様である。
【0017】
第1トナーコンテナ52Y、第2トナーコンテナ52C、第3トナーコンテナ52M、及び第4トナーコンテナ52Kには、トナーがそれぞれ収容される。本実施形態において、第1トナーコンテナ52Yには、イエロートナーが収容される。第2トナーコンテナ52Cには、シアントナーが収容される。第3トナーコンテナ52Mには、マゼンタトナーが収容される。第4トナーコンテナ52Kには、ブラックトナーが収容される。
【0018】
画像形成部6は、露光装置61、第1画像形成ユニット62Y、第2画像形成ユニット62C、第3画像形成ユニット62M、及び第4画像形成ユニット62Kを備える。
【0019】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々は、帯電装置63、現像装置64、及び感光体ドラム65を有する。感光体ドラム65は、「像担持体」の一例に相当する。
【0020】
帯電装置63及び現像装置64は、感光体ドラム65の周面に沿って配置される。本実施形態において、感光体ドラム65は、
図1の矢印R1で示す方向(時計回り)に回転する。
【0021】
帯電装置63は、放電によって感光体ドラム65を所定の極性に均一に帯電させる。本実施形態において、帯電装置63は、感光体ドラム65を正の極性に帯電させる。露光装置61は、帯電した感光体ドラム65にレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム65の表面に静電潜像が形成される。
【0022】
現像装置64は、感光体ドラム65の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。現像装置64には、トナー補給部5からトナーが補給される。現像装置64は、トナー補給部5から補給されたトナーを感光体ドラム65の表面に供給する。この結果、感光体ドラム65の表面にトナー像が形成される。
【0023】
本実施形態において、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64は、第1装着部51Yと接続する。したがって、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64には、イエロートナーが補給される。第1画像形成ユニット62Yが有する感光体ドラム65の表面には、イエロートナー像が形成される。
【0024】
第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64は、第2装着部51Cと接続する。したがって、第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64には、シアントナーが補給される。第2画像形成ユニット62Cが有する感光体ドラム65の表面には、シアントナー像が形成される。
【0025】
第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64は、第3装着部51Mと接続する。したがって、第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64には、マゼンタトナーが補給される。第3画像形成ユニット62Mが有する感光体ドラム65の表面には、マゼンタトナー像が形成される。
【0026】
第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64は、第4装着部51Kと接続する。したがって、第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64には、ブラックトナーが補給される。第4画像形成ユニット62Kが有する感光体ドラム65の表面には、ブラックトナー像が形成される。
【0027】
転写部7は、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kが有する各感光体ドラム65の表面に形成された各トナー像を用紙Pに重ねて転写する。本実施形態において、転写部7は、二次転写方式によって各トナー像を用紙Pに重ねて転写する。詳しくは、転写部7は、4つの一次転写ローラー71、中間転写ベルト72、駆動ローラー73、従動ローラー74、及び二次転写ローラー75を有する。
【0028】
中間転写ベルト72は、4つの一次転写ローラー71、駆動ローラー73、及び、従動ローラー74に張架された無端ベルトである。中間転写ベルト72は、駆動ローラー73の回転に応じて駆動する。
図1において、中間転写ベルト72は、反時計回りに周回する。従動ローラー74は、中間転写ベルト72の駆動に応じて回転駆動する。
【0029】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面の駆動方向Dに沿って、中間転写ベルト72の下面と対向して配置される。本実施形態において、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面の駆動方向Dの上流側から下流側に向けて第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの順で配置される。
【0030】
各一次転写ローラー71は、中間転写ベルト72を介して各感光体ドラム65に対向して配置され、各感光体ドラム65に向けて押圧されている。このため、各感光体ドラム65の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト72に順次転写される。本実施形態において、中間転写ベルト72には、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像がこの順で重ねて転写される。
【0031】
二次転写ローラー75は、中間転写ベルト72を介して駆動ローラー73に対向して配置される。二次転写ローラー75は、駆動ローラー73に向けて押圧されている。これにより、二次転写ローラー75と駆動ローラー73との間に転写ニップが形成される。用紙Pが転写ニップを通過すると、中間転写ベルト72上の積層されたトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは、搬送部4によって定着部8へ向けて搬送される。
【0032】
定着部8は、加熱部材81と、加圧部材82とを備える。加熱部材81及び加圧部材82は、互いに対向して配置され、定着ニップを形成する。画像形成部6から搬送された用紙Pは、定着ニップを通過することにより所定の定着温度で加熱されながら、加圧される。この結果、トナー像が用紙Pに定着する。用紙Pは、搬送部4によって定着部8から排出部9へ向けて搬送される。
【0033】
排出部9は、排出ローラー対91及び排出トレイ93を有する。排出ローラー対91は、排出口92を介して排出トレイ93へ用紙Pを搬送する。排出口92は、画像形成装置100の上部に形成される。
【0034】
次に、
図1及び
図2を参照して、現像装置64の詳細構成について説明する。
図2は、現像装置64の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。なお、
図2では、帯電装置63の図示が省略されている。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態において、現像装置64は、二成分現像剤を収容する現像容器640を有する。現像装置64は、現像容器640の内部に現像ローラー641、第1攪拌スクリュー643、第2攪拌スクリュー644、及びブレード645を有する。詳しくは、現像ローラー641は、第2攪拌スクリュー644と対向して配置される。ブレード645は、現像ローラー641と対向して配置される。
【0036】
現像容器640は、仕切壁640cによって第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとに区画される。仕切壁640cは、現像ローラー641の軸方向(Y軸方向)に延びる。第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとは、仕切壁640cの長手方向の両端の外方において連通している。
【0037】
第1攪拌室640aには、第1攪拌スクリュー643が配置される。第1攪拌室640aには、磁性体キャリアが収容されている。第1攪拌室640aには、非磁性体のトナーがトナー補給口640hを介して補給される。
【0038】
第2攪拌室640bには、第2攪拌スクリュー644が配置される。第2攪拌室640bには、磁性体のキャリアが収容されている。
【0039】
トナーは、第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644によって攪拌されてキャリアと混合される。この結果、キャリア及びトナーからなる二成分現像剤が構成される。二成分現像剤は、「現像剤」の一例に相当する。
【0040】
第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644は、第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとの間で現像剤を循環させて攪拌する。この結果、トナーが所定の極性に帯電する。本実施形態において、トナーは、正の極性に帯電する。
【0041】
現像ローラー641は、非磁性の回転スリーブ641aと、マグネット体641bとによって構成される。マグネット体641bは、回転スリーブ641aの内部に固定して配置される。マグネット体641bは、複数の磁極を含む。現像剤は、マグネット体641bの磁力によって、現像ローラー641に吸着する。この結果、現像ローラー641の表面に磁気ブラシが形成される。
【0042】
本実施形態において、現像ローラー641は、
図2の矢印R2(反時計回り)で示す方向に回転する。現像ローラー641は、回転することによって磁気ブラシをブレード645と対向する位置まで搬送する。ブレード645は、現像ローラー641との間にギャップ(隙間)が形成されるように配置されている。したがって、磁気ブラシの厚さがブレード645によって規定される。ブレード645は、現像ローラー641と感光体ドラム65とが対向する位置よりも現像ローラー641の回転方向の上流側に配置される。
【0043】
現像ローラー641には、所定の電圧が印加される。これにより、表面に形成された現像剤層が感光体ドラム65と対向する位置まで搬送され、現像剤中のトナーが感光体ドラム65に付着する。
【0044】
感光体ドラム65に付着したトナーの重量を測定するために、光センサー646が設けられている。光センサー646は、現像ローラー641と感光体ドラム65とが対向する位置よりも感光体ドラム65の回転方向の下流側に配置される。また、光センサー646は、一次転写ローラー71と感光体ドラム65とが対向する位置よりも感光体ドラム65の回転方向の上流側に配置される。
【0045】
光センサー646は、発光素子と、受光素子とを有する。発光素子は、感光体ドラム65の表面に光を照射する。受光素子は、感光体ドラム65の表面からの反射光を検知する。受光素子が受ける反射光量は、感光体ドラム65の表面に存在するトナー重量に応じて変化する。したがって、反射光量からトナー重量が知られる。
【0046】
次に、
図2及び
図3を参照して、画像形成装置100の回路構成について説明する。
図3は、画像形成装置100の回路構成の一例を示すブロック図である。
【0047】
図3に示されるように、画像形成装置100は、感光体ドラム65、現像ローラー641、及び光センサー646に加えて、制御部10、記憶部11、及び高電圧印加基板12を備える。
【0048】
記憶部11は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶部11は、半導体メモリーのような主記憶装置と、ハードディスクドライブのような補助記憶装置とを含む。
【0049】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含み、記憶部11に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、画像形成装置100の各構成を制御する。具体的には、制御部10は、記憶部11に記憶されたコンピューターを実行することにより、第1測定部101、第2測定部102、及び推定部103として機能する。
【0050】
高電圧印加基板12は、電圧印加部121と、電流検知部122とを有する。電圧印加部121は、現像ローラー641から感光体ドラム65へトナーを移動させるように現像ローラー641にバイアス電圧を印加する。バイアス電圧は、DC(直流)バイアスにAC(交流)バイアスを重畳した電圧である。電流検知部122は、現像ローラー641と感光体ドラム65との間に流れる現像電流Idを測定するための電流計である。
【0051】
第1測定部101は、光センサー646の発光素子及び受光素子の動作を制御して、現像ローラー641から感光体ドラム65へ移動したトナーの単位面積当たりの重量を示すトナー現像量Mを測定する。
【0052】
第2測定部102は、電圧印加部121及び電流検知部122の動作を制御して、現像電流Idを測定する。制御部10は、トナー現像量M及び現像電流Idの測定モードにおいて、所定の面積を有する矩形のパッチパターンを表す静電潜像が感光体ドラム65の上に形成されるように露光装置61を制御する。
【0053】
推定部103は、トナー現像量Mと現像電流Idとの間の回帰モデルにおける推定値の分散を標本値の分散で割った値を示す決定係数R2の値を算出し、決定係数R2の値に応じてトナーの劣化状態を推定する。一般に、決定係数R2の値が1.0に近いほど、回帰モデルが線形に近いと言える。
【0054】
更に、推定部103は、決定係数R2の値を算出する前に、バイアス電圧に含まれるDCバイアスを少なくとも3つの値に変化させて、トナー現像量Mの測定結果と現像電流Idの測定結果との少なくとも3つの組み合わせを取得する。
【0055】
更に、推定部103は、決定係数R2の値の経時変化の予測を示す予測曲線Cを生成し、予測曲線Cに基づいてトナーの次の状態推定タイミングを決定する。
【0056】
更に、推定部103は、予測曲線Cを生成した後に得られた決定係数R2の値が予測曲線Cから乖離している場合に予測曲線Cを更新する。
【0057】
更に、推定部103は、決定係数R2の値と第1閾値X1とを比較し、決定係数R2の値が第1閾値X1よりも小さくない場合には、トナーの帯電量を回復させるエージング動作が実行されるように制御する。
【0058】
更に、推定部103は、決定係数R2の値と第1閾値X1よりも大きい第2閾値X2とを比較し、決定係数R2の値が第2閾値X2よりも小さくない場合には、エージング動作に代えてトナーを強制的に消費する動作が実行されるように制御する。
【0059】
次に、
図1~
図4を参照して、制御部10の処理について説明する。
図4は、制御部10の処理の一例である測定サブルーチンを示すフローチャートである。
【0060】
ステップS101:
図4に示されるように、制御部10は、ACバイアスを所定値Vacに設定する。ステップS101の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS103へ進む。
【0061】
ステップS103:制御部10は、繰り返し処理を制御するための変数nを1に初期化する。ステップS103の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS105へ進む。
【0062】
ステップS105:制御部10は、DCバイアスを特定値Vdc_nに設定する。特定値Vdc_nは、変数nの値に応じて異なる。ステップS105の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS107へ進む。
【0063】
ステップS107:制御部10は、現像ローラー641へのバイアス印加を電圧印加部121に実行させて、バイアスVdc_n+Vacで現像電流Id及びトナー現像量Mを取得する。現像電流Idは電流検知部122から、トナー現像量Mは光センサー646からそれぞれ取得される。ステップS107の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS109へ進む。
【0064】
ステップS109:制御部10は、変数nの値を1だけ加算するように更新する。ステップS109の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS111へ進む。
【0065】
ステップS111:制御部10は、変数nの値が3より大きいか否かを判定する。変数nの値が3より大きいと制御部10が判定した場合(ステップS111でYes)には、制御部10の処理がステップS113へ進む。変数nの値が3より大きくないと制御部10が判定した場合(ステップS111でNo)には、制御部10の処理がステップS105へ戻る。
【0066】
ステップS113:制御部10は、トナー現像量Mの値が所定値Mtより大きいか否かを判定する。所定値Mtは、画像形成装置100の通常の印刷時に想定されるトナー現像量Mの値に設定されることが望ましい。トナー現像量Mの値が所定値Mtより大きいと制御部10が判定した場合(ステップS113でYes)には、制御部10の処理がステップS115へ進む。トナー現像量Mの値が所定値Mtより大きくないと制御部10が判定した場合(ステップS113でNo)には、制御部10の処理がステップS105へ戻る。
【0067】
ステップS115:制御部10は、トナー現像量Mの測定結果と現像電流Idの測定結果との少なくとも3つの組み合わせから、決定係数R2の値を算出する。制御部10は、前ステップまでに、DCバイアスを少なくとも3つの値に変化させて、トナー現像量Mの測定結果と現像電流Idの測定結果との少なくとも3つの組み合わせを取得している。しかも、少なくとも3つの組み合わせは、所定値Mtより大きいトナー現像量Mの測定結果を含んでいる。ステップS115の処理が完了すると、制御部10の測定サブルーチンの処理が終了する。
【0068】
次に、
図1~
図5を参照して、制御部10の処理について更に説明する。
図5は、制御部10の処理の一例である初期化処理を示すフローチャートである。初期化処理は、例えば、画像形成装置100の工場出荷時に一度だけ実行される。
【0069】
ステップS201:
図5に示されるように、制御部10は、測定サブルーチンを実行する。その結果、制御部10は、初期トナーに関するトナー現像量Mの測定結果と現像電流Idの測定結果とに基づく決定係数R
2の値を取得する。ステップS201の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS203へ進む。
【0070】
ステップS203:制御部10は、ステップS201で取得した決定係数R2の値を初期値R0として記憶する。ステップS203の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS205へ進む。
【0071】
ステップS205:制御部10は、決定係数R2の値の経時変化の予測を示す予測曲線Cを生成する。ステップS205の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS207へ進む。
【0072】
ステップS207:制御部10は、状態推定の実行間隔Tpの値を初期値T0に設定する。ステップS207の処理が完了すると、制御部10の初期化処理が終了する。
【0073】
次に、
図1~
図6を参照して、制御部10の処理について更に説明する。
図6は、制御部10の処理の一例である状態推定処理を示すフローチャートである。
【0074】
ステップS301:
図6に示されるように、制御部10は、状態推定の実行間隔Tpが経過したか否かを判定する。状態推定の実行間隔Tpが経過したと制御部10が判定した場合(ステップS301でYes)には、制御部10の処理がステップS303へ進む。状態推定の実行間隔Tpが未だ経過していないと制御部10が判定した場合(ステップS301でNo)には、制御部10の状態推定処理が終了する。
【0075】
ステップS303:制御部10は、測定サブルーチンを実行する。その結果、制御部10は、画像の印刷に供されたトナーに関するトナー現像量Mの測定結果と現像電流Idの測定結果とに基づく決定係数R2の値を取得する。ステップS303の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS305へ進む。
【0076】
ステップS305:制御部10は、ステップS303で取得した決定係数R2の値が第1閾値X1より小さいか否かを判定する。決定係数R2の値が第1閾値X1より小さいと制御部10が判定した場合(ステップS305でYes)には、制御部10の処理がステップS307へ進む。決定係数R2の値が第1閾値X1より小さくないと制御部10が判定した場合(ステップS305でNo)には、制御部10の処理がステップS313へ進む。
【0077】
ステップS307:制御部10は、ステップS303で取得した決定係数R2の値が予測曲線Cから乖離しているか否かを判定する。決定係数R2の値が予測曲線Cから乖離していると制御部10が判定した場合(ステップS307でYes)には、制御部10の処理がステップS309へ進む。決定係数R2の値が予測曲線Cから乖離していないと制御部10が判定した場合(ステップS307でNo)には、制御部10の状態推定処理が終了する。
【0078】
ステップS309:制御部10は、ステップS303で取得した決定係数R2の値に適合するように予測曲線Cを更新する。ステップS309の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS311へ進む。
【0079】
ステップS311:制御部10は、状態推定の実行間隔Tpの値を所定値T1(T1<T0)に変更する。つまり、予測曲線Cに基づいてトナーの次の状態推定タイミングが決定される。ステップS311の処理が完了すると、制御部10の状態推定処理が終了する。
【0080】
ステップS313:制御部10は、ステップS303で取得した決定係数R2の値が第2閾値X2(>X1)より小さいか否かを判定する。決定係数R2の値が第2閾値X2より小さいと制御部10が判定した場合(ステップS313でYes)には、制御部10の処理がステップS315へ進む。制御部10の処理がステップS315へ進む場合は、決定係数R2の値が不等式X1≦R2<X2を満たす場合である。決定係数R2の値が第2閾値X2より小さくないと制御部10が判定した場合(ステップS313でNo)には、制御部10の処理がステップS319へ進む。
【0081】
ステップS315:制御部10は、第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644を空回しすることによってトナーの帯電量を回復させるエージング動作が実行されるように制御する。ステップS315の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS317へ進む。
【0082】
ステップS317:制御部10は、状態推定の実行間隔Tpの値を所定値T1に変更する。つまり、予測曲線Cに基づいてトナーの次の状態推定タイミングが決定される。ステップS317の処理が完了すると、制御部10の状態推定処理が終了する。
【0083】
ステップS319:制御部10は、劣化したトナーを強制的に消費するトナー強制消費動作が実行されるように制御する。トナー強制消費動作では、感光体ドラム65の上に移動した全てのトナーが、現像容器640に戻ることなく廃棄される。ステップS319の処理が完了すると、制御部10の状態推定処理が終了する。
【0084】
図6の状態推定処理によれば、決定係数R
2の値に応じてエージング動作又はトナー強制消費動作が選択され、かつ状態推定の実行間隔Tpが適切な値に調整されるので、余分なトナー消費や状態推定によるダウンタイムが削減される。
【0085】
次に、
図1~
図7を参照して、予測曲線Cについて説明する。
図7は、決定係数R
2の値の予測曲線Cの一例を示す図である。
図7において、横軸は画像形成装置100の駆動時間を、縦軸は決定係数R
2の値をそれぞれ示す。
【0086】
図7に示されるように、駆動時間「0」における決定係数R
2の値は、初期値X0である。決定係数R
2の値が予測曲線Cから乖離しない限り、状態推定の実行間隔Tpの初期値T0毎に
図6の状態推定処理が実行される。以後、決定係数R
2の値が不等式X1≦R
2<X2を満たすほどトナーが劣化した場合には、エージング動作が実施される。更に、決定係数R
2の値が不等式R
2≧X2を満たすほどトナーが更に劣化した場合には、トナー強制消費動作が実行される。
【実施例】
【0087】
続いて、本発明の実施例について説明する。実施例の駆動条件、バイアス条件、トナー条件、及び劣化条件は、以下の通りである。なお、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0088】
[駆動条件]
印字速度:60枚/分
感光体周速:280mm/秒
現像剤担持体線速:504mm/秒
[バイアス条件]
現像DCバイアス:50V~110V
現像ACバイアス:1200Vpp
現像AC周波数:8000Hz
現像ACデューティー比:50%
露光後感光体表面電位:20V
[トナー条件]
トナー粒径:6.8μm
トナー極性:正帯電性
[劣化条件]
初期トナー:印字なし
劣化トナーA:10%印字20分(1200枚相当)
劣化トナーB:0%印字30分(1800枚相当)
【0089】
「初期トナー」は、画像形成装置100の工場出荷時のトナーに相当する。「劣化トナーA」は高濃度印字で劣化したトナーを、「劣化トナーB」は低濃度印字で劣化したトナーにそれぞれ相当する。
【0090】
次に、
図8を参照して、実施例におけるトナー現像量Mと現像電流Idとの相関について説明する。
図8は、トナー現像量Mと現像電流Idとの相関の例を示す図である。
図8において、横軸はトナー現像量M[g/m
2]を、縦軸は現像電流Id[μA]をそれぞれ示す。
【0091】
図8に示されるように、初期トナーに関するグラフは、小さい傾きを示す第1部分(4.2≦M<5.3)と、大きい傾きを示す第2部分(5.3≦M<5.7)とを有する。初期トナーの場合の決定係数R
2の値は0.87であった。大きい傾きを示す第2部分は、初期トナーが有する帯電量分布のうち比較的高い帯電量側に位置する急峻なピークを反映しているものと推測される。
【0092】
劣化トナーAに関するグラフは、初期トナーの場合よりも直線に近付いている。劣化トナーAの場合の決定係数R2の値は0.951であった。
【0093】
劣化トナーBに関するグラフは、劣化トナーAの場合よりも直線に近付いている。劣化トナーBの場合の決定係数R2の値は0.989であった。初期トナーに比べて決定係数R2の値が大きくなることは、トナーの劣化が進行するにつれて、帯電量分布のピークが低帯電量側にシフトし、かつピークがなだらかになったことを反映しているものと推測される。
【0094】
実施形態によれば、現像剤中のトナーの劣化状態を推定することができる画像形成装置100が提供される。
【0095】
現像容器640の中に劣化トナーが存在した状態でトナー補給部5から新たなトナーが供給された場合に、画像かぶりが発生しやすい。ところが、実施形態によれば、トナーの劣化状態を推定することができるので、例えば、適切なタイミングでエージング動作又はトナー強制消費動作が実行されることによって、画像かぶりの発生が抑制され得る。
【0096】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の個数等は、図面作成の都合から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0097】
実施形態では、画像形成装置100がカラープリンターであったが、これに限られない。画像形成装置100は、電子写真方式で画像を形成する装置であればよい。
【0098】
また、実施形態では、現像剤が二成分現像剤であったが、これに限られない。現像剤は、一成分現像剤であってもよい。
【0099】
また、実施形態では、感光体ドラム65に付着したトナーの重量を直接測定するため、感光体ドラム65の近傍に光センサー646が設けられたが、これに限られない。中間転写ベルト72又は用紙Pの上に転写されたトナーの濃度を検出する濃度センサーを用いて、現像ローラー641から感光体ドラム65へ移動したトナーの単位面積当たりの重量を示すトナー現像量Mを間接的に測定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、画像形成装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0101】
64 現像装置
65 感光体ドラム(像担持体)
100 画像形成装置
101 第1測定部
102 第2測定部
103 推定部
121 電圧印加部
122 電流検知部
641 現像ローラー(現像剤担持体)
646 光センサー