(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】樹脂成形品および樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020157324
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】グエン・ゴック
(72)【発明者】
【氏名】久津見 洋
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155772(JP,A)
【文献】特開2006-281622(JP,A)
【文献】特開2019-074365(JP,A)
【文献】特開2017-170745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートがインサート成形されてなる、内部に空間を有する樹脂成形品であって、
前記インサートは、第1のインサート部と、前記第1のインサート部の外面に突出して設けられた第2のインサート部とを有し、
前記第2のインサート部は、樹脂に覆われることなく前記空間に露出する部分を有する第1の面と、前記第1の面と反対側の面であって
、前記第1の面に対して、インサート成形時に射出される溶融樹脂の流動方向の下流側に位置して樹脂に覆われる第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを互いに連結する面であって樹脂に覆われる第3の面と、を有し、
前記第2の面と前記第3の面との隅角部の少なくとも一部には、
前記第1の面側から流入する前記溶融樹脂を前記第1の面側から前記第2の面側へ案内する
ように構成された第4の面が設けられている樹脂成形品。
【請求項2】
前記第4の面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向に対して直交する方向において互いに反対側に位置する2つの傾斜面を含み、これら傾斜面は前記第1の面側から前記第2の面側へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜している請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記第2のインサート部は矩形板状であって、
前記2つの傾斜面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向における全長にわたって設けられている請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記第2のインサート部の近傍には、コネクタが嵌合される部分であるコネクタ嵌合部が設けられている請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
内部に空間を有する樹脂成形品の製造方法であって、
インサートを金型の内部にセットする工程と、前記金型の内部に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出する工程と、を有し、
前記インサートは、第1のインサート部と、前記第1のインサート部の外面に突出して設けられた第2のインサート部とを有し、
前記第2のインサート部は、前記金型に接触した状態に維持される部分を有する第1の面と、前記第1の面と反対側の面であって
、前記第1の面に対して前記溶融樹脂の流動方向の下流側に位置して前記金型との間に隙間が形成された状態に維持される第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを互いに連結する面であって前記金型との間に隙間が形成された状態に維持される第3の面と、を有し、
前記第2の面と前記第3の面との隅角部の少なくとも一部には、前記第1の面側から流入する
前記溶融樹脂を前記第1の面側から前記第2の面側へ案内する第4の面が設けられている樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記第4の面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向に対して直交する方向において互いに反対側に位置する2つの傾斜面を含み、これら傾斜面は前記第1の面側から前記第2の面側へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜している請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記第2のインサート部は矩形板状であって、
前記2つの傾斜面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向における全長にわたって設けられている請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記第2のインサート部の近傍には、コネクタが嵌合される部分であるコネクタ嵌合部が設けられる請求項5~請求項7のうちいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品および樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部品などの挿入物であるインサートと合成樹脂とが一体となった複合部品が存在する。このような複合部品は、たとえばインサート成形により製造される。インサート成形とは、開いた状態の金型にインサートを装着し、その後、金型を閉じて射出成形する成形技術をいう。金型の内部において、インサートは金型に注入される溶融樹脂で包み込まれる。この溶融樹脂が冷却固化することにより複合部品が得られる。
【0003】
たとえば特許文献1には、シャフトのトルクおよび回転角を検出するセンサ装置が開示されている。このセンサ装置のハウジングには、円弧状の金属部材(集磁部材)がインサート成形されている。この金属部材の一部分は、ハウジングの内部空間に露出している。金属部材を露出させるためには、インサート成形の際に金属部材と金型(入れ子など)とを隙間なく接触させることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のセンサ装置を含め従来の樹脂成形品をインサート成形する際、インサートと金型との間に寸法公差などに起因して隙間が発生することがある。この場合、インサートと金型との隙間に溶融樹脂が流入することによってバリが発生するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、インサート成形する際の溶融樹脂のはみ出しによるバリの発生を抑制することができる樹脂成形品および樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得る樹脂成形品は、インサートがインサート成形されてなる、内部に空間を有する樹脂成形品である。前記インサートは、第1のインサート部と、前記第1のインサート部の外面に突出して設けられた第2のインサート部とを有している。前記第2のインサート部は、樹脂に覆われることなく前記空間に露出する部分を有する第1の面と、前記第1の面と反対側の面であって、前記第1の面に対して、インサート成形時に射出される溶融樹脂の流動方向の下流側に位置して樹脂に覆われる第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを互いに連結する面であって樹脂に覆われる第3の面と、を有している。前記第2の面と前記第3の面との隅角部の少なくとも一部には、前記第1の面側から流入する前記溶融樹脂を前記第1の面側から前記第2の面側へ案内するように構成された第4の面が設けられている。
【0008】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、第1の面において樹脂成形品の内部の空間に露出させる部分を単に第1の面ということがある。
第2のインサート部の第1の面を樹脂成形品の内部の空間に露出させるためには、インサート成形の際に第1の面と金型とを隙間なく接触させることが好ましい。これは、第1の面と金型との間に隙間が存在する場合、第1の面と金型との隙間に溶融樹脂が流入することによってバリが発生するおそれがあるからである。この点、上記の構成によれば、インサート成形時、第2のインサート部の第1の面側から流入してくる溶融樹脂は第4の面によって第2の面側に案内される。このとき、第2のインサート部に対して、第2の面側に流れ込む溶融樹脂の圧力が第2の面から第1の面へ向かう方向に作用する。このため、第2のインサート部は、第2の面側に流入してくる溶融樹脂の圧力によって金型に押し付けられる。これにより、第1の面と金型との隙間がより減少するため、第1の面と金型との隙間に溶融樹脂が流入することが抑えられる。したがって、インサート成形する際の溶融樹脂のはみ出しによるバリの発生を抑制することができる。
【0009】
上記の樹脂成形品において、前記第4の面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向に対して直交する方向において互いに反対側に位置する2つの傾斜面を含み、これら傾斜面は前記第1の面側から前記第2の面側へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜していてもよい。
【0010】
この構成によれば、第2のインサート部の第1の面側から流入してくる溶融樹脂は2つの傾斜面によって第2の面側に案内される。これにより、溶融樹脂は第1の面側から第2の面側へより流入しやすくなる。
【0011】
上記の樹脂成形品において、前記第2のインサート部は矩形板状であって、前記2つの傾斜面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向における全長にわたって設けられていてもよい。
【0012】
この構成によれば、第2のインサート部の第1の面側から流入してくる溶融樹脂は、2つの傾斜面によって、より効率的に第2の面側に案内される。これにより、溶融樹脂は第1の面側から第2の面側へさらに流入しやすくなる。
【0013】
上記の樹脂成形品において、前記第2のインサート部の近傍には、コネクタが嵌合される部分であるコネクタ嵌合部が設けられていてもよい。
第2のインサート部の近傍にコネクタ嵌合部が設けられる場合、金型における第2のインサート部との接触面側にコネクタ嵌合部との干渉を避けるための空間を設ける必要が生じることがある。この場合、第2のインサート部と金型との間の隙間から金型内部の空間へ溶融樹脂が流入することを防ぐ必要性がより高まる。このため、上記の構成によるように、インサートの構成として、溶融樹脂を第2のインサート部の第1の面側から前記第2の面側へ案内する第4の面を有する構成を採用することが好ましい。
【0014】
上記目的を達成し得る樹脂成形品の製造方法は、内部に空間を有する樹脂成形品の製造方法であって、インサートを金型の内部にセットする工程と、前記金型の内部に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出する工程と、を有している。前記インサートは、第1のインサート部と、前記第1のインサート部の外面に突出して設けられた第2のインサート部とを有している。前記第2のインサート部は、前記金型に接触した状態に維持される部分を有する第1の面と、前記第1の面と反対側の面であって、前記第1の面に対して前記溶融樹脂の流動方向の下流側に位置して前記金型との間に隙間が形成された状態に維持される第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを互いに連結する面であって前記金型との間に隙間が形成された状態に維持される第3の面と、を有している。前記第2の面と前記第3の面との隅角部の少なくとも一部には、前記第1の面側から流入する前記溶融樹脂を前記第1の面側から前記第2の面側へ案内する第4の面が設けられている。
【0015】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、第1の面において金型に接触した状態に維持される部分、あるいは第1の面において樹脂成形品の内部の空間に露出させる部分を単に第1の面ということがある。
【0016】
この製造方法によれば、第1の面は、樹脂に覆われることなく樹脂成形品の内部の空間に露出する。第2のインサート部の第1の面と反対側の面である第2の面、および第1の面と第2の面とを連結する面である第3の面は、それぞれ樹脂で覆われる。これにより、第2のインサート部の第1の面が樹脂成形品の内部の空間に露出した樹脂成形品が得られる。
【0017】
ここで、第2のインサート部の第1の面を樹脂成形品の内部の空間に露出させるためには、インサート成形の際に第1の面と金型とを隙間なく接触させることが好ましい。これは、第1の面と金型との間に隙間が存在する場合、第1の面と金型との隙間に溶融樹脂が流入することによってバリが発生するおそれがあるからである。この点、上記の製造方法によれば、インサート成形時、第2のインサート部の第1の面側から流入してくる溶融樹脂は第4の面によって第2の面側に案内される。このとき、第2のインサート部に対して、第2の面側に流れ込む溶融樹脂の圧力が第2の面から第1の面へ向かう方向に作用する。このため、第2のインサート部は、第2の面側に流入してくる溶融樹脂の圧力によって金型に押し付けられる。これにより、第1の面と金型との隙間がより減少するため、第1の面と金型との隙間に溶融樹脂が流入することが抑えられる。したがって、インサート成形する際の溶融樹脂のはみ出しによるバリの発生を抑制することができる。
【0018】
上記の樹脂成形品の製造方法において、前記第4の面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向に対して直交する方向において互いに反対側に位置する2つの傾斜面を含み、これら傾斜面は前記第1の面側から前記第2の面側へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜していてもよい。
【0019】
この製造方法によれば、第2のインサート部の第1の面側から流入してくる溶融樹脂は2つの傾斜面によって第2の面側に案内される。これにより、溶融樹脂は第1の面側から第2の面側へより流入しやすくなる。
【0020】
上記の樹脂成形品の製造方法において、前記第2のインサート部は矩形板状であって、前記2つの傾斜面は、前記第1のインサート部の外面に対する前記第2のインサート部の突出方向における全長にわたって設けられていてもよい。
【0021】
この製造方法によれば、第2のインサート部の第1の面側から流入してくる溶融樹脂は、2つの傾斜面によって、より効率的に第2の面側に案内される。これにより、溶融樹脂は第1の面側から第2の面側へさらに流入しやすくなる。
【0022】
上記の樹脂成形品の製造方法において、前記第2のインサート部の近傍には、コネクタが嵌合される部分であるコネクタ嵌合部が設けられてもよい。
第2のインサート部の近傍にコネクタ嵌合部が設けられる場合、金型における第2のインサート部との接触面側にコネクタ嵌合部との干渉を避けるための空間を設ける必要が生じることがある。この場合、第2のインサート部と金型との間の隙間から金型内部の空間へ溶融樹脂が流入することを防ぐ必要性がより高まる。このため、上記の製造方法によるように、インサートの構成として、溶融樹脂を第2のインサート部の第1の面側から前記第2の面側へ案内する第4の面を有する構成を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の樹脂成形品および樹脂成形品の製造方法によれば、インサート成形する際の溶融樹脂のはみ出しによるバリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】樹脂成形品をセンサ装置に具体化した一実施の形態の分解斜視図。
【
図2】一実施の形態のセンサ装置をその軸線方向に沿って切断した断面図。
【
図3】一実施の形態のインナーハウジングの斜視図。
【
図4】(a)は一実施の形態のインナーハウジングと固定型の入れ子との位置関係を示す正面図、(b)は一実施の形態のインナーハウジングを固定型の入れ子にセットした状態を示す正面図。
【
図7】一実施の形態のインナーハウジングとスライドコアとの接触状態を示す斜視図。
【
図8】一実施の形態のインナーハウジングとスライドコアとの接触状態を示す正面図。
【
図10】一実施の形態のインナーハウジングを台座側からみた側面図。
【
図11】一実施の形態のインナーハウジングの斜視図。
【
図12】(a)は先の
図9に対応する断面図であって、センサ装置の製造工程において金型にセットされた一実施の形態のインナーハウジングの台座とスライドコアとの間の隙間を示す断面図、(b)は先の
図9に対応する断面図であって、センサ装置の製造工程において一実施の形態のインナーハウジングがセットされた金型のキャビティに射出される溶融樹脂の挙動を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、樹脂成形品をセンサ装置に具体化した一実施の形態を説明する。
図1に示すように、センサ装置10は、検出対象である回転軸11に設けられる。回転軸11は、入力軸12、トーションバー13、および出力軸14を有している。入力軸12と出力軸14とは、トーションバー13を介して互いに連結される。入力軸12、トーションバー13、および出力軸14は、同一の軸線O上に位置している。回転軸11は、たとえば車両の操舵装置を構成するラックアンドピニオン機構のピニオンシャフトである。このピニオンシャフトには、ステアリングシャフトを介してステアリングホイールが連結される。
【0026】
センサ装置10は、ステアリングホイールの操作を通じて回転軸11に加わるトルクを検出するトルク検出機能、および回転軸11の360度を超える多回転にわたる回転角度を検出する回転角検出機能を併せ持つトルクアングルセンサである。
【0027】
センサ装置10は、永久磁石21、磁気ヨーク22、基板23、部分組立品24、センサハウジング25、およびカバー26を有している。
永久磁石21は、円筒状をなしている。永久磁石21は、その周方向に沿ってS極とN極とが交互に着磁されている。永久磁石21は、入力軸12の外周面に固定される。
【0028】
磁気ヨーク22は、円筒状をなしている。磁気ヨーク22の内部には永久磁石21が挿入される。磁気ヨーク22は、磁性体からなる環状の2つのヨーク31,32が合成樹脂材料によりモールドされてなる。2つのヨーク31,32は、回転軸11の軸線Oに沿った方向に沿って並んでいる。磁気ヨーク22の合成樹脂材料により形成された部分は、2つのヨーク31,32の位置関係を保持するホルダ33として機能する。このホルダ33の外周面には、主動歯車34が一体成形されている。磁気ヨーク22は、出力軸14に固定される。
【0029】
2つのヨーク31,32には、それぞれ複数の歯部31a,32aが周方向に沿って等間隔で設けられている。これら歯部31a,32aは、回転軸11の軸線Oに沿った方向において互いに反対側へ向けて延びている。2つのヨーク31,32は、それらの歯部31a,32aが周方向において交互に位置するように保持されている。2つのヨーク31,32は、トーションバー13に捩れ変形が生じていない状態において、歯部31a,32aの周方向における中心が永久磁石21のN極とS極との境界に一致するように設けられている。
【0030】
基板23は、矩形板状をなしている。基板23の中央付近には、3つの支持孔41が一列に並んで設けられている。また、基板23には、複数の端子接続孔42が設けられている。これら端子接続孔42は、基板23の2つの長側縁のうちいずれか一方に沿って二列に並んでいる。基板23の互いに反対側に位置する2つの面のうちいずれか一方の面、たとえば上面には、回転軸11の回転角度を検出するための2つの磁気センサ43,44、および回転軸11に加わるトルクを検出するための2つの磁気センサ45,46が設けられている。これら角度検出用の磁気センサ43,44およびトルク検出用の磁気センサ45,46は、基板23における端子接続孔42と反対側の長側縁に沿って一列に並んでいる。トルク検出用の2つの磁気センサ45,46は、基板23の長側縁に沿った方向において、角度検出用の2つの磁気センサ43,44の間に位置している。角度検出用の磁気センサ43,44およびトルク検出用の磁気センサ45,46としては、たとえばホールセンサが採用される。
【0031】
部分組立品24は、回転軸11の回転角度を検出するための部品、および回転軸11に加わるトルクを検出するための部品をホルダ71に取り付けることによって一体的に扱えるようにしたものである。ホルダ71は、合成樹脂材料によって一側面が開口した直方体状に設けられている。ホルダ71の内部には、回転軸11の回転角度を検出するための部品として2つの従動歯車72,73が回転可能に設けられている。2つの従動歯車72,73の歯数は互いに異なっている。2つの従動歯車72,73の歯部は、ホルダ71の開口部分を介して若干外部に露出している。2つの従動歯車72,73には、それぞれ円板状の永久磁石(図示略)が設けられている。また、ホルダ71には、回転軸11に加わるトルクを検出するための部品として集磁部材であるコア(図示略)が設けられている。コアは樹脂モールドによりホルダ71と一体的に設けられる。
【0032】
センサハウジング25は、合成樹脂材料により一体成形される。センサハウジング25は、アウターハウジング25Aおよび円筒状のインナーハウジング25Bを有している。インナーハウジング25Bは、アウターハウジング25Aにインサート成形されている。センサハウジング25は、回転軸11の軸線Oに対して交わる方向へ向けて開口する部分を有する筒状をなしている。センサハウジング25には、回転軸11が貫通される。また、センサハウジング25の内部には、永久磁石21、磁気ヨーク22、基板23、および部分組立品24が収容される。
【0033】
センサハウジング25は、円形の挿通孔51、円筒状の第1の収容室52、および第2の収容室53を有している。これら挿通孔51、第1の収容室52、および第2の収容室53は、互いに連通している。挿通孔51および第1の収容室52は、それぞれ同一の軸線O上に位置している。挿通孔51の内径は、回転軸11の外径よりも若干大きい値に設定されている。第1の収容室52の内径は、磁気ヨーク22の外径よりも若干大きい値に設定されている。ちなみに、インナーハウジング25Bの内周面は、第1の収容室52の内周面の一部を構成する。第2の収容室53は、軸線Oに対して交わる方向へ向けて開口している。第2の収容室53の開口部53aは、カバー26によって閉塞される。
【0034】
第2の収容室53の内底面には、段付き円柱状の3つの支持突部54が設けられている。3つの支持突部54は、軸線Oに対して直交する方向である第2の収容室53の幅方向に沿って一列に並んでいる。3つの支持突部54は、基板23に設けられた3つの支持孔41に対応している。
【0035】
第2の収容室53の内底面には、複数の端子55が突出して設けられている。複数の端子55は、支持突部54よりも第2の収容室53の開口方向における外側に位置している。複数の端子55は、第2の収容室53の幅方向に沿って二列に並んでいる。複数の端子55は、基板23に設けられた複数の端子接続孔42に対応している。
【0036】
第2の収容室53の外底面には、四角筒状のコネクタ嵌合部56が設けられている。コネクタ嵌合部56は、回転軸11の軸線Oに沿って延びている。コネクタ嵌合部56の内部には、複数の端子55が第2の収容室53の底壁を貫通して露出している。コネクタ嵌合部56には、基板23の端子55と外部機器との間を電気的に接続する配線のコネクタ(図示略)が嵌合される。外部機器は、たとえば操舵装置の制御装置である。
【0037】
センサハウジング25において、第1の収容室52の内周面には、C字状の2つの集磁リング61,62が設けられている。これら集磁リング61,62は、回転軸11の軸線Oに沿った方向において並んでいる。集磁リング61は磁気ヨーク22のヨーク31に対応し、集磁リング62は磁気ヨーク22のヨーク32に対応する。集磁リング61には、2つの集磁突部61a,61bが設けられている。これら集磁突部61a,61bは、第2の収容室53の内部に露出している。また、2つの集磁突部61a,61bは、部分組立品24に設けられる集磁部材であるコアの2つの集磁突部(図示略)に対応する。
【0038】
図2に示すように、センサ装置10が組み立てられた状態において、センサハウジング25は、検出対象である回転軸11を回転可能に支持するハウジング、ここでは車両の操舵装置を構成するラックアンドピニオン機構を収容するギヤハウジング15に取り付けられている。センサハウジング25の第1の収容室52には、回転軸11に取り付けられた磁気ヨーク22が収容されている。また、センサハウジング25の第2の収容室53には、基板23および部分組立品24が収容されている。
【0039】
基板23は、第2の収容室53の内底面に取り付けられている。角度検出用の2つの磁気センサ43,44およびトルク検出用の2つの磁気センサ45,46(図示略)は、基板23の上面、すなわち第2の収容室53の内底面と反対側の面に設けられている。図示は割愛するが、基板23の各支持孔41には、第2の収容室53の内底面に設けられた各支持突部54が貫通されている。これにより、基板23が第2の収容室53の内底面に対して相対的に移動することが規制される。また、基板23の各端子接続孔42には、第2の収容室53の内底面から突出する各端子55が貫通されている。各端子55は、半田付けによって基板23に接合されている。基板23の図示しない配線パターンと各端子55とは電気的に接続されている。
【0040】
部分組立品24は、基板23に重ねられるかたちで第2の収容室53の内部に取り付けられている。部分組立品24のホルダ71から露出する2つの従動歯車72,73は、第1の収容室52内の磁気ヨーク22に設けられた主動歯車34に噛み合っている。このため、回転軸11が回転すると、主動歯車34は一体的に回転し、これに伴って2つの従動歯車72,73もそれぞれ回転する。2つの従動歯車72,73の歯数は互いに異なっている。したがって、回転軸11の回転に連動して主動歯車34が回転した場合、主動歯車34の回転角度に対する2つの従動歯車72,73の回転角度は、それぞれ異なった値となる。
【0041】
従動歯車72,73にそれぞれ設けられた永久磁石72a,73aは、回転軸11の軸線Oに沿った方向において、基板23に設けられた角度検出用の磁気センサ43,44に対向している。磁気センサ43,44は、従動歯車72,73の回転に伴う磁界の変化に応じた電気信号を生成する。操舵装置の制御装置は、磁気センサ43,44により生成される電気信号に基づき、回転軸11の回転角度を検出する。主動歯車34に対する従動歯車72の回転角度と主動歯車34に対する従動歯車73の回転角度とは互いに異なるため、角度検出用の磁気センサ43,44により生成される電気信号の位相は互いに異なる。操舵装置の制御装置は、角度検出用の磁気センサ43,44により生成される電気信号に基づき回転軸11の360°を超える多回転の回転角度を絶対角で演算する。
【0042】
磁気ヨーク22の2つのヨーク31,32の内部には永久磁石21が位置している。回転軸11の軸線Oに沿った方向において、集磁リング61はヨーク31に、集磁リング62はヨーク32に対応した位置に保持されている。集磁リング61はヨーク31の周囲を取り囲み、集磁リング62はヨーク32の周囲を取り囲んでいる。集磁リング61はヨーク31からの磁束を誘導し、集磁リング62はヨーク32からの磁束を誘導する。
【0043】
部分組立品24に設けられたコア74は、回転軸11の軸線Oに沿った方向において、集磁リング62に対応した位置に保持されている。コア74は、所定の輪郭形状を有する金属板材が屈曲されてなる。コア74は、磁気ヨーク22の円周方向に沿って互いに反対側へ向けて延びる2つの腕部(図示略)を有している。これら腕部は集磁リング62の外周面に対して近接した状態に保持されている。コア74は、集磁リング62からの磁束を誘導する。
【0044】
また、コア74は、図示しない第1の集磁突部および第2の集磁突部を有している。これら第1の集磁突部および第2の集磁突部は、回転軸11の軸線Oに対して直交する方向に沿って磁気ヨーク22から離れる方向へ向けて延び、互いに平行をなしている。コア74の第1の集磁突部(図示略)と集磁リング61の集磁突部61aとは、回転軸11の軸線Oに沿った方向において互いに対向している。コア74の第1の集磁突部と集磁リング61の集磁突部61aとの間には、基板23に設けられたトルク検出用の磁気センサ45が介在されている。また、コア74の第2の集磁突部と集磁リング61の集磁突部61bとは、回転軸11の軸線Oに沿った方向において互いに対向している。コア74の第2の集磁突部と集磁リング61の集磁突部61bとの間には、基板23に設けられたトルク検出用の磁気センサ46が介在されている。トルク検出用の磁気センサ45,46は、集磁リング61,62およびコア74に誘導される磁束を検出する。
【0045】
ステアリングホイールの操作を通じて回転軸11の入力軸12にトルクが加わってトーションバー13がねじれ変形すると、入力軸12に加えられたトルクに応じて入力軸12と出力軸14との間に相対的な回転変位が生じる。すると、永久磁石21と磁気ヨーク22との回転方向における相対位置、ならびに永久磁石21と磁気ヨーク22との回転方向における相対位置が変化する。これに伴い、永久磁石21から磁気ヨーク22を通じて集磁リング61,62に誘導される磁束が変化する。トルク検出用の磁気センサ45は、コア74の第1の集磁突部と磁気ヨーク22の集磁突部61aとの間に漏出する磁束に応じた電気信号を生成する。トルク検出用の磁気センサ46は、コア74の第2の集磁突部と磁気ヨークの集磁突部61bとの間に漏出する磁束に応じた電気信号を生成する。トルク検出用の磁気センサ45,46により生成される電気信号は、トーションバー13の捩れ変形、すなわちトーションバー13のねじれ角に応じて変化する。操舵装置の制御装置は、トルク検出用の磁気センサ45,46により生成される電気信号に基づきトーションバー13に作用するトルクを演算する。
【0046】
つぎに、インナーハウジング25Bの構成を説明する。
図3に示すように、インナーハウジング25Bには、集磁リング61,62がインサート成形されている。インナーハウジング25Bは、両端が開口した円筒状の挿入部81および矩形板状の台座82を有している。台座82は、挿入部81の外周面に対して突出して設けられている。また、台座82は、インナーハウジング25Bの軸線方向に対して直交する向きに設けられている。台座82の上面には、2つの集磁突部61a,61bが露出している。
【0047】
挿入部81の周壁には開口部81aが設けられている。開口部81aは、挿入部81の円周方向において台座82に対応する部分に設けられている。また、開口部81aは、挿入部81において台座82を基準とする上側の部分に設けられている。インナーハウジング25Bをその開口部81a側からみて、開口部81aの円周方向における中央には補強部材81bが設けられている。補強部材81bは、開口部81aにおけるインナーハウジング25Bの軸線方向において互いに対向する2つの内壁面を連結するかたちで設けられている。
【0048】
つぎに、センサハウジング25の製造方法を説明する。センサハウジング25は、インナーハウジング25Bをインサートとするインサート成形により製造される。インナーハウジング25Bは、別工程で予め成形される。
【0049】
図4(a)に示すように、インナーハウジング25Bを金型にセットする。具体的には、まず、インナーハウジング25Bを金型における固定型91の上面に設けられた入れ子92に装着する。入れ子92は、挿入部92aおよびフランジ92bを有している。挿入部92aは円柱状をなしている。挿入部92aの外周面には、インナーハウジング25Bの挿入部81が嵌められる。フランジ92bは、挿入部92aにおける基端の外周に設けられた環状の部分であって、固定型91の上面に固定されている。
図4(b)に示すように、インナーハウジング25Bは、その下端がフランジ92bの上面に当接する位置まで挿入部92aに挿入される。インナーハウジング25Bが固定型91にセットされた状態において、インナーハウジング25Bの台座82の下面とフランジ92bの上面との間には隙間が形成されている。
【0050】
つぎに、
図5に示すように、金型を閉じる。すなわち、固定型91に対して可動型93を閉じる。また、固定型91に対する可動型93の開閉方向(
図5中の上下方向)に対して直交する方向(
図5中の左右方向)に沿ってスライドコア94を定められた前進位置まで前進させる。これにより、固定型91、可動型93およびスライドコア94を含む金型が閉じた状態になる。金型が閉じた状態において、金型の内部には、アウターハウジング25Aの外形形状に対応する空間であるキャビティ95が形成される。ちなみに、スライドコア94は、センサハウジング25のコネクタ嵌合部56を含む第2の収容室53を成形するために使用される。
【0051】
図6に示すように、スライドコア94は、第1のコア部101および第2のコア部102を有している。第1のコア部101には、空間部103が設けられている。空間部103は、第1のコア部101の前進方向に沿った先端側および前進方向に対して直交する方向に沿った下側に開放されている。ちなみに、空間部103は、センサハウジング25の成形が完了した後にスライドコア94を後退させる際、第2の収容室53の内底面に突出して設けられた複数の端子55とスライドコア94との干渉を避けるために設けられている。
【0052】
第1のコア部101の先端には、湾曲面104が設けられている。湾曲面104は、インナーハウジング25Bの外周面に対応して湾曲している。湾曲面104は、金型が閉じた状態においてインナーハウジング25Bの開口部81aを閉塞する観点に基づき設けられている。湾曲面104には、補強部材81bが嵌る凹状の部分である凹部104a、および補強部材81bによって2つに分断された開口部81aに嵌って開口部81aを閉塞する閉塞部104b,104bが設けられている。
【0053】
第2のコア部102における第1のコア部101との境界部分には、傾斜面102aが設けられている。傾斜面102aは、センサハウジング25における第2の収容室53の開口端縁の傾斜に対応して設けられている。また、
図7に示すように、第2のコア部102には挿通孔102bが貫通して設けられている。挿通孔102bは、スライドコア94の移動方向に直交する方向であってインナーハウジング25Bの軸線に沿って延びている。挿通孔102bと第1のコア部101の空間部103とは、互いに連通している。挿通孔102bは、複数の端子55を含むコネクタ嵌合部56をアウターハウジング25Aと一体成形するための図示しない可動式の入れ子が挿入される部分である。
【0054】
図7に示すように、金型が閉じた状態において、スライドコア94における第1のコア部101の先端部は、インナーハウジング25Bの外周面に当接した状態に維持される。インナーハウジング25Bの開口部81aは、第1のコア部101の先端部によって覆われている。また、先の
図5に示すように、金型が閉じた状態において、スライドコア94における第1のコア部101の下面は、インナーハウジング25Bの台座82の上面に接触した状態に維持される。
【0055】
つぎに、金型の内部に形成されたキャビティ95に溶融樹脂を射出する。溶融樹脂とは、加熱して溶かした合成樹脂材料をいう。溶融樹脂は、可動型93の上部に設けられたゲート93a(
図5参照)を介してキャビティ95に射出される。キャビティ95に溶融樹脂が充填された後、その充填された溶融樹脂を冷却して凝固させる。この後、スライドコア94を定められた後退位置まで後退させるとともに可動型93を固定型91から離間させることによって金型を開き、樹脂成形品であるセンサハウジング25を取り出す。これにより、先の
図1に示されるセンサハウジング25が得られる。
【0056】
以上で、センサハウジング25の製造が完了となる。
ここで、センサハウジング25の製造過程において、つぎのようなことが懸念される。
図8および
図9に示すように、金型を閉じたとき、インナーハウジング25Bの寸法公差などに起因して、インナーハウジング25Bの台座82の上面とスライドコア94における第1のコア部101の下面との間に隙間δ1が形成されるおそれがある。ただし、
図8および
図9では、説明の便宜上、隙間δ1を誇張して図示している。また、
図9に示すように、台座82の幅(
図9中の左右方向の長さ)は、スライドコア94における第1のコア部101の幅よりも短い長さに設定されている。また、スライドコア94の内部には、コネクタ嵌合部56の端子55との干渉を避けるための空間部103が設けられている。このため、金型の内部のキャビティ95に溶融樹脂を射出したとき、溶融樹脂が隙間δ1を介してスライドコア94の空間部103に漏れ入るおそれがある。
【0057】
そこで、本実施の形態では、インナーハウジング25Bの形状としてつぎの形状を採用している。
図10に示すように、インナーハウジング25Bの台座82は、上面82uおよび下面82lに加え、3つの側面82a,82b,82cを有している。側面82a,82bは、インナーハウジング25Bの軸線方向に対して直交する方向(
図10中の左右方向)において互いに対向している。側面82cは、台座82の挿入部81と反対側の端面である先端面であって、2つの側面82a,82bに対して直交している。また、側面82aと下面82lとの間の隅角部、および側面82bと下面82lとの間の隅角部には、それぞれ傾斜面111が設けられている。これら傾斜面111は、上面82u側から下面82l側へ向かう方向である下方へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜している。
図11に示すように、傾斜面111は、側面82a,82bの全長、換言すれば台座82の挿入部81の外周面に対する突出方向における全長にわたって設けられている。
【0058】
この構成によれば、センサハウジング25の製造時において、つぎの作用が得られる。
図12(a)に示すように、金型の内部において、インナーハウジング25Bの台座82の上面82uとスライドコア94における第1のコア部101の下面との間には隙間δ1が形成されている。ただし、
図12(a)では、説明の便宜上、隙間δ1を誇張して図示している。また、台座82の下面82lと固定型91における入れ子92のフランジ92bとの間にも隙間δ2が形成されている。この状態で、金型の内部に設けられたキャビティ95に溶融樹脂が射出されたとき、溶融樹脂はつぎのような挙動を示す。
【0059】
図12(b)に示すように、インナーハウジング25Bの上部から流入してくる溶融樹脂は、キャビティ95の内部をその上部から下部へ向けて流動する。溶融樹脂の一部は、スライドコア94における第1のコア部101の側部を経てインナーハウジング25Bの台座82の下側のスペース、すなわち台座82と金型における入れ子92のフランジ92bとの間の隙間δ2に流れ込む。このとき、台座82の2つの傾斜面111,111が下方へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜しているため、台座82の上方から下方へ向けて流動する溶融樹脂の一部は、2つの傾斜面111,111によって台座82の下側のスペースである隙間δ2へ向けて案内される。これにより、溶融樹脂は、台座82の下側の隙間δ2により流れ込みやすくなる。そして、この台座82と入れ子92のフランジ92bとの間の隙間δ2に流れ込む溶融樹脂の圧力によって、台座82が第1のコア部101の下面へ向けて押し上げられる。これにより、台座82の上面82uが第1のコア部101の下面に押し付けられることによって、台座82の上面82uと第1のコア部101の下面との間の隙間δ1が解消される。このため、溶融樹脂が隙間δ1を介してスライドコア94の空間部103に漏れ入ることが抑制される。
【0060】
なお、台座82の上面82uは、インサート成形時に溶融樹脂が流入してくる側の面かつ金型に接触した状態に維持される面であって、成形完了時には樹脂に覆われることなくセンサハウジング25の内部空間である第2の収容室53に露出する第1の面を構成する。台座82の下面82lは、台座82の上面82uと反対側の面であって、インサート成形時に金型との間に隙間が形成された状態に維持されて成形完了時には樹脂に覆われる第2の面を構成する。3つの側面82a,82b,82cは、台座82の上面82uと下面82lとを互いに連結する面であって成形完了時には樹脂に覆われる第3の面を構成する。2つの傾斜面111は、インサート成形時に射出される溶融樹脂を上面82u側から下面82l側へ案内する面であって、成形完了時には樹脂に覆われる第4の面を構成する。
【0061】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)センサハウジング25のインサート成形時、金型のキャビティ95に射出される溶融樹脂の圧力を利用してインナーハウジング25Bの台座82をスライドコア94に対して押し付けるかたちで接触させる。これにより、インナーハウジング25Bの台座82とスライドコア94の第1のコア部101との間の隙間δ1がより狭められる。このため、溶融樹脂が隙間δ1を介してスライドコア94の空間部103に漏れ入ることを抑制することができる。また、樹脂成形品であるセンサハウジング25にバリが発生することも抑えられる。このため、バリ取りなどの仕上げ作業を減らすことが可能である。センサハウジング25の品質の維持向上も図られる。
【0062】
(2)インナーハウジング25Bの台座82には、センサハウジング25のインサート成形時、溶融樹脂を台座82の下側の隙間δ2へ流れ込みやすくするための構成として、2つの傾斜面111,111が設けられている。傾斜面111は、台座82の側面と下面との隅角部、すなわち台座82における溶融樹脂の流入方向と反対側の部分に設けられている。2つの傾斜面111,111は、下方へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜しているため、溶融樹脂は2つの傾斜面111,111によって台座82の下側の隙間δ2へ向けて案内される。このため、溶融樹脂は台座82の下側の隙間δ2へ流れ込みやすくなる。
【0063】
(3)傾斜面111は、台座82の挿入部81の外周面に対する突出方向における全長にわたって設けられている。このため、溶融樹脂は台座82の下側の隙間δ2へよりいっそう流れ込みやすくなる。
【0064】
(4)センサハウジング25のインサート成形時、金型のキャビティ95に射出される溶融樹脂の圧力を利用して台座82とスライドコア94との間の隙間δ1が解消される。このため、たとえばインナーハウジング25Bの台座82に溶融樹脂を案内する傾斜面111を設けるだけでよい。したがって、台座82とスライドコア94との間の隙間δ1を解消するための特別な機構を金型に設ける必要がない。
【0065】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・本実施の形態では、台座82の幅(
図12(a),(b)中の左右方向の長さ)はスライドコア94における第1のコア部101の幅よりも短い長さに設定したが、製品仕様などに応じて台座82の幅を第1のコア部101の幅よりも長い長さに設定してもよい。この場合、台座82の第1のコア部101側の面である上面において第1のコア部101からはみ出した部分は樹脂により覆われる。
【0066】
・本実施の形態では、傾斜面111を側面82a,82bの全長にわたって設けたが、側面82a,82bの所定区間にのみ傾斜面111を設けてもよい。
・本実施の形態では、第2の収容室53の外底面にコネクタ嵌合部56を一体成形するようにしたが、センサ装置10の製品仕様によってはコネクタ嵌合部56の形成位置を変更してもよい。また、製品仕様などによって、コネクタ嵌合部を割愛してもよい。
【0067】
・金型の内部において、台座82の下面82lと側面82aとの隅角部および下面82lと側面82aとの隅角部にそれぞれ傾斜面111を設けたが、センサ装置10の製品仕様あるいは金型の構造などによっては、台座82の下面82lと3つの側面との隅角部の全周にわたって傾斜面111を設けてもよい。
【0068】
・本実施の形態では、溶融樹脂をインナーハウジング25Bの台座82の下側の隙間δ2に流れ込みやすくするための構成として台座82に2つの傾斜面111,111を設けたが、これら傾斜面111に代えて曲面を設けてもよい。この場合であれ、2つの曲面は下方へ向かうにつれて互いに近接するように湾曲することが好ましい。
【0069】
・本実施の形態では、樹脂成形品としてセンサハウジング25を一例として挙げたが、インサート成形を利用する他の樹脂成形品であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
25…センサハウジング(樹脂成形品)
25A…アウターハウジング
25B…インナーハウジング(インサート)
53…第2の収容室(空間)
56…コネクタ嵌合部
81…第1のインサート部
82…第2のインサート部
82u…上面(第1の面)
82l…下面(第2の面)
82a,82b,82c…側面(第3の面)
111…傾斜面(第4の面)