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特許7589479樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241119BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241119BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241119BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
C08J5/18 CFF
B32B27/30 A
B32B27/40
C08G81/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020163366
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055764
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑矢
(72)【発明者】
【氏名】八尋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】石田 康之
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 信康
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/033610(WO,A1)
【文献】特開2019-171838(JP,A)
【文献】特開2019-025739(JP,A)
【文献】特開2008-197494(JP,A)
【文献】特開昭59-199249(JP,A)
【文献】特開2008-208324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
B32B 1/00- 43/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08F 2/00- 2/60、 6/00-301/00
C08G 59/00- 59/72、 81/02
C08C 19/00- 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件1から3のすべておよび条件Pを満たし、化学式1の構造および化学式4に示す構造を含む、樹脂フィルム。
条件1:樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
条件2:樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
条件3:樹脂フィルムが単層から構成され、原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F1(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F2(MPa)が、式1を満たす。
式1:F1/F2≦0.9
【化1】
なお、化学式1のR は、水素またはメチル基を指す。
【化2】
なお、化学式4のR は、以下のいずれかを指す。
・置換または無置換のアルキレン基、
・置換または無置換のアリーレン基。
条件P:以下の樹脂フィルムの投錨性評価方法により求めた、粘着フィルムを樹脂フィルムから180度剥離したときの抵抗値が6N以上。
(樹脂フィルムの投錨性評価方法)
株式会社オリエンテック製の引張試験機“テンシロン”(登録商標)UCT-100を用いて、粘着フィルムを樹脂フィルムから180度剥離したときの抵抗値(N)で評価する。樹脂フィルムを短冊状(25mm×120mm)に切り出した後、樹脂フィルムに、粘着フィルム(パナック株式会社製“パナプロテクト”(登録商標)(品番:HUCB Type2、サイズ:20mm×100mm))の粘着層側の面を貼合する。次いで、樹脂フィルムのもう一方の面に、Nitto製両面テープ(品番:5000NS)を貼合し、両面テープの支持基材を剥離し、ステンレス板に貼合する。最後に、粘着フィルムの粘着層/樹脂フィルム界面の一部を剥離し、ロードセルにテープで固定し、下記の条件で測定を行う。
測定距離 : 50mm以上
試験片幅 : 20mm
剥離速度 : 300mm/min(引張速度:600mm/min)
剥離角度 : 180°
【請求項2】
以下の条件を満たす、請求項1に記載の樹脂フィルム。
条件4:原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の散逸量Q1(eV)と、厚み方向中央部の散逸量Q2(eV)が、式2を満たす。
式2:Q1/Q2≧1.2
【請求項3】
以下の条件を満たす、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
条件5:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における、1620cm-1以上1640cm-1以下の吸光度の最大値A1と、厚み方向中央部の1620cm-1以上1640cm-1以下の吸光度の最大値A2が、式3を満たす。
式3:1.2≦A1/A2≦2.0
【請求項4】
以下の条件を満たす、請求項1からのいずれかに記載の樹脂フィルム。
条件6:樹脂フィルムの弾性率について、一方の表面から、厚み方向に深さ0%~5%、5%~10%、95~100%、90%~95%の原子間力顕微鏡による弾性率をそれぞれF3、F4、F5、F6としたとき、式4と式5、および/または、式6と式7を満たす。
式4:F4/F2≦0.9
式5:F3/F4≦0.8
式6:F6/F2≦0.9
式7:F5/F6≦0.8
【請求項5】
条件7から9のすべておよび条件Pを満たし、化学式1の構造および化学式4に示す構造を含む、樹脂フィルムと、少なくとも別の層を有する積層体であって、前記別の層が支持基材を含み、支持基材が多層構成であり、支持基材が樹脂フィルム側に重合禁止剤を含む層を有する、積層体
条件7:別の層を除去した後の樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
条件8:別の層を除去した後の樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
条件9:別の層を除去した後の樹脂フィルムが単層であり、別の層を除去した後の樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F7(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F8(MPa)が、式8を満たす。
式8:F7/F8≦0.9
【化3】
なお、化学式1のR は、水素またはメチル基を指す。
【化4】
なお、化学式4のR は、以下のいずれかを指す。
・置換または無置換のアルキレン基、
・置換または無置換のアリーレン基。
条件P:以下の樹脂フィルムの投錨性評価方法により求めた、粘着フィルムを樹脂フィルムから180度剥離したときの抵抗値が6N以上。
(樹脂フィルムの投錨性評価方法)
株式会社オリエンテック製の引張試験機“テンシロン”(登録商標)UCT-100を用いて、粘着フィルムを樹脂フィルムから180度剥離したときの抵抗値(N)で評価する。樹脂フィルムを短冊状(25mm×120mm)に切り出した後、樹脂フィルムに、粘着フィルム(パナック株式会社製“パナプロテクト”(登録商標)(品番:HUCB Type2、サイズ:20mm×100mm))の粘着層側の面を貼合する。次いで、樹脂フィルムのもう一方の面に、Nitto製両面テープ(品番:5000NS)を貼合し、両面テープの支持基材を剥離し、ステンレス板に貼合する。最後に、粘着フィルムの粘着層/樹脂フィルム界面の一部を剥離し、ロードセルにテープで固定し、下記の条件で測定を行う。
測定距離 : 50mm以上
試験片幅 : 20mm
剥離速度 : 300mm/min(引張速度:600mm/min)
剥離角度 : 180°
【請求項6】
前記別の層が粘着層を含む、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
工程1、2、及び3をこの順に行い、かつ、条件10を満たす、請求項に記載の積層体の製造方法。
工程1:支持基材の上に、化学式2のセグメントを含む樹脂前駆体と溶媒を含む塗料組成物を塗布し、塗布層を形成する工程。
【化5】
工程2:前記塗布層から溶媒を除去する工程。
工程3:活性エネルギー線を照射して、前記樹脂前駆体を架橋させる工程。
条件10:工程3において、活性エネルギー線照射時における雰囲気の酸素濃度が5体積%以上。
【請求項8】
前記工程3の後に工程4を行う、請求項に記載の積層体の製造方法。
工程4:粘着層を形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い柔軟性と復元性を維持しつつ、粘着層との投錨性を有した樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、形を自由自在に変形可能なフレキシブルデバイスの開発が盛んに行われている。例えば、ディスプレイでは、折り曲げや、巻き取りが可能なものが実用化されており、また、ウェアラブルセンサーでは、微少な圧力・歪み変化に高感度で応答可能なものが、産業用や医療用を初めとする様々な分野で開発が進められている。昨今、これらのデバイスを、日常生活の様々な物に取り付けられるようになり、膨大なデータ収集とそれらを用いたアラーム、アドバイスにより、私たちの生活を根底から変えることが期待されている。
【0003】
これらのデバイスの支持基材として、これまで、様々な樹脂フィルムが用いられてきた。しかし、従来の材料は、例えばポリイミドのような剛直な化学結合や強い結晶性を有するフィルムであり、自由に曲げることはできるが、伸縮させることはできないものであった。そのため、支持基材として、引き延ばしが容易で、かつ、瞬時に復元ができる材料が求められている。さらに、支持基材をモジュール化する際には、他部材と貼り合わせる場合がある。この場合、他部材との間に粘着層を設けることが多いが、支持基材と粘着層との間で剥離しない程の密着性、いわゆる、「投錨性」も求められている。
【0004】
このような高い柔軟性と復元性を有した樹脂フィルムの代表例として、特許文献1に記載の「柔軟性と高い復元性を維持しつつ、耐湿熱性と後加工適性を両立した樹脂フィルム」が提案されている。
【0005】
また、柔軟性を上げた例として、特許文献2に記載の「基材に対する粘着剤の投錨性を向上させた延伸剥離テープ」が提案されている。
【0006】
さらに、柔軟層を積層させた例として、特許文献3に記載の「化学薬品、添加剤がほとんど飛散せず、屈曲、伸縮時の追随性が改善され、かつ安定な薬効が確保でき、さらに剥がす時に粘着剤層の糊残りがない、新規な多層積層フィルム」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-151815号公報
【文献】特開2010-189660号公報
【文献】特開2017-13306号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】中前勝彦:樹脂―金属間の接着・接合のメカニズムの界面化学的考察,表面技術,66 巻,8 号(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のディスプレイやセンサーに使用される、樹脂フィルムでは、「自由な曲げ伸ばし」を行った際に樹脂フィルム/粘着層間で剥離しないことが重要である。ここで、「自由な曲げ伸ばし」とは、弱い力で大きく伸ばし、ほぼ完全に復元することが0℃以下の温度で、かつ毎秒1回を超える早い周期で行えることを指す。繰り返しの伸縮動作に耐えうるに十分な程、樹脂フィルムと粘着層間で強い投錨力を発揮することが求められる。つまり、樹脂フィルムの特性として、「柔軟性」、「復元性」、「投錨性」の3項目全てを高水準で満たす必要がある。
【0010】
以上のような要望に対し、本発明者らが前述の観点について確認したところ、特許文献1に提案されている材料は、確かに柔軟性や復元性は優れるが、投錨性に性能向上の余地があった。
【0011】
また、特許文献2に提案されている材料について、柔軟性、投錨性は優れているが、復元性は不十分であった。
【0012】
また、特許文献3に提案されている材料について、投錨性は優れているが、柔軟性や復元性は不十分であった。また、特許文献1に提案されている材料に対して、特許文献3に提案されている柔軟層をコーティングした多層積層体については、柔軟性と復元性は優れているが、投錨性に性能向上の余地があった。
【0013】
以上の点から、本発明の課題は、高い柔軟性と復元性を維持しつつ、粘着層との投錨性を有した樹脂フィルム、積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明の樹脂フィルム、積層体、積層体の製造方法の好ましい一態様は以下の通りである。
(1)以下の条件1から3のすべてを満たす、樹脂フィルム。
【0015】
条件1:樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
【0016】
条件2:樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
【0017】
条件3:樹脂フィルムが単層から構成され、原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F1(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F2(MPa)が、式1を満たす。
【0018】
式1:F1/F2≦0.9
(2)以下の条件を満たす、(1)に記載の樹脂フィルム。
【0019】
条件4:原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の散逸量Q1(eV)と、厚み方向中央部の散逸量Q2(eV)が、式2を満たす。
【0020】
式2:Q1/Q2≧1.2
(3)
化学式1の構造およびウレタン結合を含む、(1)または(2)に記載の樹脂フィルム。
【0021】
【化1】
【0022】
なお、化学式1のRは、水素またはメチル基を指す。
(4)以下の条件を満たす、(3)に記載の樹脂フィルム。
【0023】
条件5:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における、1620cm-1以上1640cm-1以下の吸光度の最大値A1と、厚み方向中央部の1620cm-1以上1640cm-1以下の吸光度の最大値A2が、式3を満たす。
【0024】
式3:1.2≦A1/A2≦2.0
(5)以下の条件を満たす、(1)から(4)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【0025】
条件6:樹脂フィルムの弾性率について、一方の表面から、厚み方向に深さ0%~5%、5%~10%、95~100%、90%~95%の原子間力顕微鏡による弾性率をそれぞれF3、F4、F5、F6としたとき、式4と式5、および/または、式6と式7を満たす。
【0026】
式4:F4/F2≦0.9
式5:F3/F4≦0.8
式6:F6/F2≦0.9
式7:F5/F6≦0.8
(6)条件7から9のすべてを満たす樹脂フィルムと、少なくとも別の層を有する積層体。
【0027】
条件7:別の層を除去した後の樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
【0028】
条件8:別の層を除去した後の樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
【0029】
条件9:別の層を除去した後の樹脂フィルムが単層であり、別の層を除去した後の樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F7(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F8(MPa)が、式8を満たす。
【0030】
式8:F7/F8≦0.9
(7)前記別の層が支持基材を含む、(6)に記載の積層体。
(8)支持基材が多層構成であり、支持基材が樹脂フィルム側に重合禁止剤を含む層を有する、(7)に記載の積層体。
(9)前記別の層が粘着層を含む、(6)~(8)のいずれかに記載の積層体。
(10)工程1、2、及び3をこの順に行い、かつ、条件10を満たす、(7)に記載の積層体の製造方法。
工程1:支持基材の上に、化学式2のセグメントを含む樹脂前駆体と溶媒を含む塗料組成物を塗布し、塗布層を形成する工程。
【0031】
【化2】
【0032】
工程2:前記塗布層から溶媒を除去する工程。
工程3:活性エネルギー線を照射して、前記樹脂前駆体を架橋させる工程。
条件10:工程3において、活性エネルギー線照射時における雰囲気の酸素濃度が5体積%以上。
(11)前記工程3の後に工程4を行う、(10)に記載の積層体の製造方法。
工程4:粘着層を形成する工程。
【発明の効果】
【0033】
高い柔軟性と復元性を維持しつつ、粘着層との投錨性を有した樹脂フィルムや積層体、積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図2】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図3】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図4】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図5】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図6】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図7】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図8】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図9】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図10】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図11】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図12】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図13】本発明における積層体の一例を示す断面図である。
図14】本発明におけるコンセプトを示す断面図である。
図15】本発明におけるコンセプトを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を実施するための形態を述べる前に、本発明者らは、従来技術にて本発明の課題の解決が難しい理由について、以下のように考えている。
【0036】
まず、一般的な異種材料を接着する際の投錨力について、関与する因子から考察する。投錨性に関与する因子は、異種材料の界面相互作用、接触表面積(アンカー効果)、内部応力差、の3つに分けることができる。非特許文献1によると、「見かけの接着力=真の接着力―残留応力」と記載されている。実際の接着力は、界面相互作用とアンカー効果に由来した「真の接着力」から、異種材料において弾性変形を復元するために発生した内部応力の差に由来した「残留応力」を差し引いた値となる。つまり、異種材料を強く接着させるためには、異種材料を貼合する際の弾性変形に伴って各材料で生じた内部応力の差をできる限り小さくすることが求められる。
【0037】
次に、本発明のような樹脂フィルムと粘着層における接着について、上記の内部応力の差から考察する。本用途における粘着層は、アクリル系粘着、ウレタン系粘着、ゴム系粘着、シリコーン系粘着より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、アクリル系粘着、ウレタン系粘着より選ばれる1種以上であることがより好ましい。これらの粘着層は、樹脂フィルムとくらべて、柔軟であり、弾性変形を復元するための内部応力が小さい材料である。一方、本用途で求められる樹脂フィルムは、柔軟性が高いことで弾性変形が起こりやすく、さらに、復元性が高いことで内部応力が高い。そのため、柔軟性と復元性が高い樹脂フィルムは、粘着層との内部応力の差が大きく、残留応力による投錨力の損失が大きいことから、投錨力を上げることが難しい材料であると考えられる。
【0038】
特許文献1に記載の材料は、ウレタンアクリレートを使用しており、ハードセグメント間の凝集による物理架橋に頼らず、アクリレートの架橋による強固な化学架橋を、フィルム内で低密度に形成することで、柔軟性が高く、かつ復元性が高い材料である。そのため、この材料の投錨性に改善の余地がある理由は、上記の考察のような、樹脂フィルム・粘着層の内部応力の差が大きいからであると推定している。
【0039】
また、特許文献2に記載の材料は、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂)とSEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)の混合組成である。凝集力としてはスチレンのπ-π相互作用に依存しており、また、柔軟なオレフィン系を用いていることから、特許文献1に記載の材料と比べ、柔軟性が高く、復元性は低い材料である。そのため、この材料の投錨性が高かった理由は、樹脂フィルムの復元性が低いことで、粘着層との内部応力の差が小さくなったことに基づくと推定している。
【0040】
さらに、特許文献3に記載の材料は、剛直なPET基材の上に、薄膜で柔軟なEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)層をコーティングした多層積層体である。基材が剛直であるので、樹脂フィルム全体の柔軟性や復元性は低いが、粘着層を貼合した際の弾性変形が発生しにくく、かつ、粘着層との接着界面が、柔軟で復元率が低い薄膜層であるので、投錨力は高かったと推定している。
【0041】
また、特許文献1のような、高い柔軟性・復元性を有したメイン材料の上に、特許文献3に記載の柔軟な薄膜層をコーティングした場合、柔軟な薄膜層の厚みによって、復元性と投錨性が変化するが、トレードオフの関係にあり、また、投錨性は本用途に必要なレベルではなく不十分であった。その理由は、表面層と中央層の界面があることで、積層体内で内部応力の差が発生し、柔軟表面層が持つポテンシャルを発揮できなかったからであると推定している。
【0042】
これに対し、本発明者らは、前述の課題を解決する方法として、高い柔軟性・復元性を有した樹脂フィルムの内部に界面を作らず、単層で厚み方向表面側に対して徐々に弾性率を下げることで、界面での投錨力を低下させずに、かつ、樹脂フィルム/粘着層界面での内部応力の差を小さくすることを着想した。そして、この方法により、課題である、高い柔軟性と復元性を維持しつつ、粘着層との投錨性を付与させることができると明らかとなり、本発明に至った。以下、本発明の詳細について記載する。
【0043】
本発明の樹脂フィルムは、以下の条件1~3すべてを満たすことが重要である。
【0044】
条件1:樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
【0045】
条件2:樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
【0046】
条件3:樹脂フィルムが単層から構成され、原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F1(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F2(MPa)が、式1を満たす。
【0047】
式1:F1/F2≦0.9
(条件1、2)
本発明の樹脂フィルムは、温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下であることが重要である。貯蔵弾性率が0.5MPa以上であることにより、タックが強すぎて取り扱いが困難となることを抑制でき、50MPa以下であることにより、樹脂フィルムを容易に変形可能なものとすることができる。同様の観点から、1.0MPa以上、25MPa以下であることが好ましく、3.0MPa以上、10MPa以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明の樹脂フィルムは、25℃における損失正接が0.5以下であることが重要である。損失正接を0.5以下とすることにより、樹脂フィルムとして用いたときに、十分な復元性を得ることができる。同様の観点から樹脂フィルムの25℃における損失正接は0.2以下が好ましく、0.05以下がより好ましい。
【0049】
貯蔵弾性率、および、損失正接は、DMA(動的粘弾性測定)法により測定された値を指し、その測定方法は後述する。
【0050】
樹脂フィルムの貯蔵弾性率、損失正接を上記範囲とする方法は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールより選ばれる1種以上の高分子ポリオールと、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(1,5-ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、PPDI(パラフェニレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)より選ばれる1種以上の2官能イソシアネートと、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)、4HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレ-ト)より選ばれる1種以上のアクリル原料とを、モル比1:(1~2):(0.4~1.0)の仕込み比で反応させ、熱または活性エネルギー線で重合する方法を好ましくとることができる。ここで、仕込みモル比率について高分子ポリオールの仕込み量を1とした際、1,6-ヘキサンジオールや、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどの分子量500g/mol以下の低分子ポリオールの仕込み量は0.1以下であることが好ましい。また、仕込みモル比率について2官能イソシアネートの仕込み量を1とした際3官能以上のイソシアネートの仕込み量は0.1以下であることが好ましい。加えて、樹脂フィルム100質量%中に含まれる灰分の含有量は1質量%以下であることが好ましい。ここで、灰分とは窒素下500℃で1時間加熱した際の成分をいう。また、活性エネルギー線で重合する方法をとる場合、重合時における雰囲気の酸素濃度を5体積%未満とするか、または重合開始剤の含有量を、樹脂全体100質量部に対して1質量部以上添加することが好ましい。
【0051】
また、樹脂フィルムは望ましい貯蔵弾性率、損失正接とするため、前記高分子ポリオール由来のモノマー単位の含有量を1モルとしたとき、前記2官能イソシアネート由来のモノマー単位の含有量が1~2モル、前記アクリル原料由来のモノマー単位の含有量が0.4~1.0モル、前記低分子量ポリオール由来のモノマー単位の含有量が0.1モル以下、前記3官能以上のイソシアネート由来のモノマー単位の含有量が0.2モル以下であることが好ましい。各モノマー単位の定性・定量は、樹脂フィルムをアルカリ加水分解した後、核磁気共鳴分光法、GC-MS、サイズ排除クロマトグラフィ、飛行時間型質量分析を組み合わせることで行うことができる。
【0052】
(条件3)
本発明の樹脂フィルムは、単層から構成され、原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F1(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F2(MPa)の比(F1/F2)が、0.9以下となることが重要である。ここで、単層から構成される、とは、走査型電子顕微鏡(SEM)法で断面観察した際に不連続な境界面が観測されないものをいう。具体的な観察方法として実施例に記載の方法を好ましくとることができる。
【0053】
F1/F2は、樹脂フィルム内部と表面の弾性率の比を表すパラメーターであり、この値が小さいほど、樹脂フィルムの内部に対して表面がより柔軟であることを示す。すなわち、F1/F2を0.9以下にすることで、樹脂フィルムの表面のみを柔軟にし、樹脂フィルム表面の、粘着層への濡れ広がりを維持でき、投錨力を向上することができる。同様の観点から、F1/F2は0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。
【0054】
本用途で求められる樹脂フィルムは、柔軟性と復元性を維持しつつ、粘着層との高い投錨性を有した樹脂フィルムである。条件1と2はそれぞれ柔軟性と復元性に関する条件であり、これらを満たすことで、柔軟性と復元性は高い水準で有することができる。一方で、前述のように柔軟性と復元性が高い樹脂フィルムは、弾性変形を復元する際に発生する内部応力が大きく、粘着層との内部応力差が大きい。この場合、樹脂フィルムと粘着層の界面で濡れ広がりが不十分となり、投錨力にロスが生じ、材料同士の界面相互作用や、アンカー効果に基づく本来の接着力を発揮することができていない。
【0055】
その対策として、樹脂フィルムと粘着層の内部応力差を小さくするために、樹脂フィルムの表層に柔軟かつ内部応力のちいさな薄膜層を設けた材料が提案されてきたが、樹脂フィルムと薄膜層の間に界面が生まれ、この界面で投錨力のロスが生じてしまっていた。
【0056】
本発明では、条件1,2に加え、条件3を満たすことで、樹脂フィルムが柔軟性と復元性を有し、かつ、単層で厚み方向表面側に対して徐々に柔軟な構造となっている。この構造により、従来の柔軟薄膜層による多層構成とは異なり樹脂フィルム内部に界面を持たず、投錨力のロスを抑えることができる。さらに、樹脂フィルム表面のみが柔軟で内部応力が小さいことで、粘着層と樹脂フィルム界面での内部応力差に基づく投錨性のロスをできる限り抑えることができ、柔軟性と復元性を維持しつつ、粘着層との投錨力を本来あるべき姿で発揮することができる。
【0057】
つまり、従来の復元性の高いフィルムと被付着物とを、図14に示すようなロールなどによる加圧によって貼り付ける場合、図14に示すように、復元性の高いフィルムには伸びる力がかかることから、貼り合わせた後において復元性の高いフィルムには、図15に示すように、復元するための内部応力がかかり、図15に示すような剥がれがおきる可能性があることがあることから、本発明の樹脂フィルムは、条件1、2に加えて条件3を満たすことにより、前述のような伸縮フィルムの高い復元性に起因した、被付着物から剥がれようとする内部応力を緩和することができるため、被付着物との投錨性を優れたものとすることができる。
【0058】
また、F1/F2は0.01以上であることが好ましい。0.01以上であることにより、表面と中央部の弾性率の違いによる材料破壊を防ぐことができる。同様の観点から、0.1以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
【0059】
樹脂フィルムの原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの表面の弾性率F1(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F2(MPa)の比(F1/F2)は、具体的にはAFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施し、得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、得られたDMTModulusデータの平均値から求めることができる。
【0060】
具体的には、以下の方法により求めることができる。
【0061】
樹脂フィルムを凍結ミクロトーム法により断面を切り出し、当該断面が測定面となるよう、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)にセットする。
【0062】
PeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の校正を行った後、下記の条件にて測定を実施する。
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 2(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 1Hz
押し込み荷重 : 4(nN)。
【0063】
測定は、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面部分(一方の表面から、厚み方向に深さ0%の部分)から、厚み方向全体に対して深さ5%までの部分における任意の30か所(ただし、なるべく厚み方向の深さ0~5%の部分に対して満遍なく測定範囲をとるようにして)測定する。
【0064】
各測定範囲の測定結果に対し、得られたDMTModulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのImage Raw Meanの値をその測定範囲の弾性率として採用し、30か所の弾性率の平均値を、一方の表面の弾性率(f1a)とする。
【0065】
上記と同様の方法により、もう一方の表面(前記一方の表面から、厚み方向に深さ100%の部分)から、厚み方向全体に対して深さ95%までの部分において弾性率を測定し、もう一方の表面の弾性率(f1b)とする。
【0066】
さらに、上記と同様の方法により、厚み方向に深さ45%の部分から、55%までの部分において弾性率を測定し、厚み方向中央部の弾性率(F2)とする。
【0067】
なお、測定サンプルを取り付けたら、f1a、f1b、F2の一連の測定を同じサンプル・カンチレバーにて行い、サンプルを途中で取り外したり、カンチレバーを交換したりしないようにする。
【0068】
そして、例えばf1a/F2の値、f1b/F2の値のいずれかが0.9以下であれば、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F1(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F2(MPa)の比(F1/F2)が、0.9以下である、とする。
【0069】
条件3を満たすための具体的方法は、活性エネルギー線による架橋時に意図的に酸素濃度を上げ、架橋阻害を起こす方法や、重合禁止剤を含む支持基材に塗料組成物を塗布し、重合禁止剤を塗料組成物の支持基材側表面に移行させた状態で乾燥と架橋を行う方法を好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
【0070】
(条件4)
本発明の樹脂フィルムは、条件4を満たすことが好ましい。
【0071】
条件4:原子間力顕微鏡による、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の散逸量Q1(eV)と、厚み方向中央部の散逸量Q2(eV)が、式2を満たす。
【0072】
式2:Q1/Q2≧1.2
ここで、Q1/Q2は、樹脂フィルム内部と表面の粘性項の比を表すパラメーターである。すなわち、この値を大きくすることで、樹脂フィルムの表面のみを粘性的にし、樹脂フィルム/粘着層界面での内部応力の差を小さくし、投錨力を向上することができる。同様の観点から、Q1/Q2は1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
【0073】
樹脂フィルムの原子間力顕微鏡による表面散逸量は、具体的には上述の弾性率や厚み方向中央部の弾性率の比の測定方法と同様に、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施し、得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、得られたDispilationデータの平均値より求めることができる。一方の表面の散逸量をq1a、もう一方の表面の散逸量をq1bとし、q1a/Q2の値、q1b/Q2の値のいずれかが1.2以上であれば、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の散逸量Q1(eV)と、厚み方向中央部の散逸量Q2(eV)の比(Q1/Q2)が、1.2以上である、とする。
【0074】
条件4を満たすための具体的方法は、活性エネルギー線による架橋時に意図的に酸素濃度を上げ、架橋阻害を起こす方法や、重合禁止剤を含む支持基材に塗料組成物を塗布し、重合禁止剤を塗料組成物の支持基材側表面に移行させた状態で乾燥と架橋を行う方法を好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
前記条件3では、樹脂フィルムの表面の弾性率が低く、表面の弾性的な復元挙動を抑制できることに着目していた。一方で、条件4は、表面のみが粘性的となり、樹脂フィルムに粘着層を接着させることで生じた内部応力を緩和し、小さくすることに着目している。よって、条件1~3に加え、条件4を満たすことで、粘着層と樹脂フィルム界面での内部応力差を小さくすることができ、投錨性のロスをより抑えることが可能となる。
【0075】
(素材・構造・結合)
本発明の樹脂フィルムは、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、より選ばれる1種以上を含むことが、適度な伸縮性を得られる観点から好ましい。
【0076】
なかでも、本発明の樹脂フィルムは、化学式1の構造およびウレタン結合を含むことが好ましい。
【0077】
【化3】
【0078】
なお、化学式1のRは、水素またはメチル基を指す。
【0079】
樹脂フィルムが、上記の構造や結合を含むことは、様々な分析方法により調べることが可能であるが、FT-ATR-IR(フーリエ変換全反射赤外分光光度法)や熱分解GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析法)による方法が簡便である。また、樹脂フィルムを形成する原料から判断することもできる。
【0080】
樹脂フィルムが、上記の構造を有することで、強固な化学架橋構造を形成し、強い復元性を付与することができる。また、ウレタン結合を含むことで、水素結合による弱い物理架橋を形成することで、柔軟性を保ちつつ、復元性を付与できる。
【0081】
前記化学式1の構造は、化学式3の構造を含むことがより好ましい。
【0082】
【化4】
【0083】
なお、化学式3のRは、水素またはメチル基を指す。
【0084】
化学式3のRは、以下のいずれかを指す。
・置換または無置換のアルキレン基、
・置換または無置換のアリーレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基、
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
【0085】
前記ウレタン結合によるセグメントは、化学式4に示す構造を含むことが好ましい。
【0086】
【化5】
【0087】
なお、化学式4のRは、以下のいずれかを指す。
・置換または無置換のアルキレン基、
・置換または無置換のアリーレン基。
【0088】
加えて、本発明の樹脂フィルム100質量%中、アクリルウレタン系樹脂を30質量%以上含むことが柔軟性と復元性を高水準で得る観点で好ましい。
【0089】
(条件5)
本発明の樹脂フィルムは、条件5を満たすことが好ましい。
【0090】
条件5:樹脂フィルムの少なくとも一方の表面における、1620cm-1以上1640cm-1以下の吸光度の最大値A1と、厚み方向中央部の1620cm-1以上1420cm-1以下の吸光度の最大値A2が、式3を満たす。
【0091】
式3:1.2≦A1/A2≦2.0
ここで、A1/A2は、樹脂フィルム全体に対する表面のアクリル残基量を示すパラメーターであり、この値が、1.2以上2.0以下が好ましく、1.4以上1.8以下がより好ましい。
【0092】
A1/A2を1.2以上にすることで、表面のみのアクリル基由来のUV硬化を抑制し、投錨力を向上することができる。また、A1/A2を2.0以下にすることで、高い復元性を有することができる。
【0093】
表面における吸光度とは、凍結ミクロトーム法によって断面を切り出し、一方の表面から厚み方向に深さ0%~5%、または、95%~100%の領域に対してKBr法によるFT-IRスペクトルの測定を行うことで得た吸光度であり、厚み方向中央部の吸光度とは、厚み方向の深さ45%~55%の領域に対してKBr法によるFT-IRスペクトルの測定を行うことで得た吸光度である。具体的には実施例の方法にて測定することができる。
【0094】
一方の表面の吸光度の最大値をa1a、もう一方の表面の吸光度の最大値をa1bとし、a1a/A2の値、a1b/A2の値のいずれかが1.2以上2.0以下であれば、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の吸光度の最大値A1と、厚み方向中央部の吸光度の最大値A2の比(A1/A2)が、11.2以上2.0以下である、とする。
【0095】
条件5を満たすための具体的方法は、活性エネルギー線による架橋時に意図的に酸素濃度を上げ、架橋阻害を起こす方法や、重合禁止剤を含む支持基材に塗料組成物を塗布し、重合禁止剤を塗料組成物の支持基材側表面に移行させた状態で乾燥と架橋を行う方法を好ましく挙げることができ、これらの方法についての詳細は後述する。
【0096】
(条件6)
本発明の樹脂フィルムは、条件6を満たすことが好ましい。
【0097】
条件6:樹脂フィルムの弾性率について、一方の表面から、厚み方向に深さ0%~5%、5%~10%、95~100%、90%~95%の原子間力顕微鏡による弾性率をそれぞれF3、F4、F5、F6としたとき、式4と式5、および/または、式6と式7を満たす。
【0098】
式4:F4/F2≦0.9
式5:F3/F4≦0.8
式6:F6/F2≦0.9
式7:F5/F6≦0.8
ここで、F3、F4、F5、F6、は、樹脂フィルム表面の弾性率を更に細分化したものであり、F3の方が、F4よりも、F6の方が、F5よりも、表面に近接する箇所の弾性率を表すパラメーターである。すなわち、式4と式5、および/または、式6と式7を満たすことは、厚み方向表面側に対して弾性率が連続して変化し、徐々に柔軟な構造となることを示す。その効果として、厚み方向で弾性率が急激に変化する境界面を持たず、内部応力の差に由来した「残留応力」を発生させることなく、粘着層との投錨力を本来あるべき姿で発揮することができる。同様の観点から、F4/F2は0.8以下、F3/F4は0.75以下であることが好ましく、F4/F2は0.75以下、F3/F4は0.70以下であることがより好ましい。また、F5/F2は0.8以下、F6/F5は0.75以下であることが好ましく、F5/F2は0.75以下、F6/F5は0.70以下であることがより好ましい。なお、各測定はF1/F2の測定の方法と同様の方法にて行うことができる。
【0099】
(条件3~6を満たすための具体的方法の例1:酸素濃度)
条件3を満たすための具体的方法として、活性エネルギー線による架橋時に意図的に酸素濃度を上げ、架橋阻害を起こす方法を好ましくとることができる。具体的には、活性エネルギー線による架橋成分を含む処方のものを、活性エネルギー線で、酸素濃度5体積%~20体積%の範囲で架橋を行う方法を挙げることができる。処方としては、反応効率の観点から化学式1のような構造を有することが好ましく、アクリル基を有することがより好ましい。活性エネルギー線は、汎用性の観点から電子線(EB)および/または紫外線(UV)であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100~3,000(mW/cm)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mW/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mW/cm)、となる条件で紫外線照射を行うことがよく、紫外線の積算光量が、100~3,000(mJ/cm)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mJ/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mJ/cm)となる条件で紫外線照射を行うことがよい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。活性エネルギー線照射時の酸素分圧は、ジルコニア式酸素濃度計で測定を行う。また、酸素分圧の調整は、活性エネルギー線照射環境における不活性ガスの分圧を調整することで行う。
【0100】
(条件3~6を満たすための具体的方法の例2:重合禁止剤)
条件3を満たすための具体的方法として、重合禁止剤を含む支持基材に塗料組成物を塗布し、重合禁止剤を塗料組成物の支持基材側表面に移行させた状態で乾燥と架橋を行う方法を好ましくとることができる。重合禁止剤は、具体的には、4-メトキシフェノール、4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、4-メトキシ-1-ナフトール、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル、2,2-ビス{[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイルビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネートなどが挙げられる。ヒドロキシ基を有するものが好ましく、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンがより好ましい。これらを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。ヒドロキシ基を有した重合禁止剤は、樹脂フィルムのウレタン基と水素結合を形成しやすいことから、樹脂フィルム表面への移行性が高く、アクリル基のUV硬化反応を効率良く阻害できる。
【0101】
重合禁止剤は、樹脂フィルム表面への移行性を上げるために支持基材の樹脂層に添加させることが好ましく、シリコーンを含む樹脂層である、離型層に添加することがさらに好ましい。添加量は、支持基材の樹脂層中の樹脂100質量部に対して、20質量部~40質量部であることが好ましい。
【0102】
(別の層)
本発明の積層体は、条件7から9のすべてを満たす樹脂フィルムと、少なくとも別の層を有する積層体であることが好ましい。
条件7:別の層を除去した後の樹脂フィルムの温度25℃周波数1Hz条件における貯蔵弾性率が0.5MPa以上50MPa以下。
条件8:別の層を除去した後の樹脂フィルムの25℃における損失正接が0.5以下。
条件9:別の層を除去した後の樹脂フィルムが単層であり、別の層を除去した後の樹脂フィルムの少なくとも一方の表面の弾性率F7(MPa)と、厚み方向中央部の弾性率F8(MPa)が、式8を満たす。
【0103】
式8:F7/F8≦0.9
ここで、別の層とは、任意の層であり、当該別の層が条件7~9を満たすものであってもよい。
【0104】
当該別の層は、後工程内での加工性や搬送性を確保するための支持基材や、異種材料と接着させるための粘着層や接着層、樹脂フィルム表面特性や光学特性を変えるための粒子層や着色層や意匠層、樹脂フィルムに加工を施すための電子回路層、印刷層なども含むものである。
【0105】
別の層の除去する方法としては、ケミカルエッチング法、凍結ミクロトーム法・凍結研磨法などが挙げられるが、凍結研磨法が簡易性の観点で好ましい。また、別の層が除去できているかの確認は、走査型電子顕微鏡(SEM)法で断面観察した際に不連続な境界面が観測されないかで確認を行う。
【0106】
(支持基材)
本発明の積層体は、樹脂フィルムと支持基材を含む積層体であることが好ましい。その一例を図1に示す。
【0107】
ここで、支持基材とは、後述する樹脂フィルム形成用塗料組成物をその表面に展開することが可能な、面内方向に平坦な物品である。
【0108】
本発明の積層体において支持基材を設けるとよい理由は、後述する樹脂フィルムの製造方法において、支持基材上に液体の塗料組成物を塗布して、架橋させることで樹脂フィルムを形成するために加え、樹脂フィルムが加工される後工程内での加工性や搬送性を確保するためである。
【0109】
樹脂フィルムを支持基材から剥離し、単体として後加工する場合は、図2のように積層体4が樹脂フィルム5との間に離型層6を含む支持基材7を有することが好ましい。
【0110】
積層体をロール状に巻き取って中間製品とする場合、ロールの巻き姿を安定化させるため、図3のように積層体8が、樹脂フィルム9とは反対側に離型層10を含む支持基材11を有してもよい。無論、図4のように積層体12が、樹脂フィルム13との間に離型層14を、反対側に離型層15を含む支持基材16を有してもよい。この場合、離型層14と離型層15は同一でもよいが、ロールから積層体を巻き出す時の樹脂フィルム9と、離型層15間での剥離力と、後工程で樹脂フィルムと13と離型層14の間の剥離力を調整する必要があるため、異なる方が好ましい。
【0111】
樹脂フィルムの工程内での搬送性向上や傷つき防止のため、図5にように積層体17が、樹脂フィルム18の一方の面に剥離可能な支持基材19を、もう一方の面に剥離可能な保護材料20を有してもよい。この保護材料と支持基材は同一であってもよいが、図6のように積層体21が、樹脂フィルム22との間に離型層23を含む支持基材24と、保護材料25とを有してもよく、図7のように積層体26が、樹脂フィルム27との間に離型層28を含む支持基材29と、離型層30を含む保護材料31とを有してもよく、図8のように積層体32が、樹脂フィルム33との間に離型層34を含む支持基材35と、粘着層36を含む保護材料37とを有してもよい。積層体が、粘着層を有する保護材料を有するか、離型層を用いる保護材料を有するかは、後工程の適性や樹脂フィルムの物性から適宜選択される。
【0112】
また、樹脂フィルムを支持基材から剥離させずに、支持基材と樹脂フィルムの積層体のまま後加工する場合は、図9のように積層体38が樹脂フィルム39との間に後述する粘着層40を含む支持基材41を有することが好ましい。
【0113】
積層体をロール状に巻き取って中間製品とする場合、ロールの巻き姿を安定化させるため、図10のように積層体42が、樹脂フィルム43と支持基材との間に粘着層44を有し、支持基材の樹脂フィルム反対側に離型層45を含む支持基材46を有してもよい。
【0114】
樹脂フィルムの工程内での搬送性向上や傷つき防止のため、図11にように積層体47が、樹脂フィルム48の一方の面に粘着層49を有した支持基材50を、もう一方の面に剥離可能な保護材料51を有してもよい。この保護材料と支持基材は同一であってもよいが、図12のように積層体52が、樹脂フィルム53との間に粘着層54を含む支持基材55と、離型層56を含む保護材料57とを有してもよく、図13のように積層体58が、樹脂フィルム59との間に粘着層60を含む支持基材61と、粘着層62を含む保護材料63とを有してもよい。積層体が、粘着層を有する保護材料を有するか、離型層を用いる保護材料を有するかは、後工程の適性や樹脂フィルムの物性から適宜選択される。
【0115】
(重合禁止剤を含む支持基材)
本発明の積層体は、支持基材が多層構成であり、樹脂フィルム側に、重合禁止剤を含む層を有することが好ましい。本態様とすることで、樹脂フィルムの支持基材側表面の投錨性を上昇させることができる。
【0116】
本発明で用いる重合禁止剤は、具体的には、4-メトキシフェノール、4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、4-メトキシ-1-ナフトール、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキ シ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペン チルフェニル、アクリル 酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル- 5-メチルベンジル)フェニル、2,2-ビス{[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイルビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネートなどが挙げられる。ヒドロキシ基を有するものが好ましく、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンがより好ましい。
これらを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。ヒドロキシ基を有した重合禁止剤は、樹脂フィルムのウレタン基と水素結合を形成しやすいことから、樹脂フィルム表面への移行性が高く、アクリル基のUV硬化反応を効率良く阻害できる。
重合禁止剤は、樹脂フィルム表面への移行性を上げるために樹脂層に添加させることが好ましく、シリコーンを含む樹脂層である、離型層に添加することがさらに好ましい。添加量は、樹脂100質量部に対して、20質量部~40質量部であることが好ましい。なかでも、重合を過度に阻害しないよう、添加量は20質量部~30質量部であることが好ましい。
【0117】
(粘着層)
また、本発明の積層体は、樹脂フィルムと粘着層を含むことが好ましい。ここで、粘着層とは、23℃における、剥離速度300mm/分、剥離角度180度での、SUS304板に対する粘着力が3N/20mm以上である層をいい、高く伸縮した際や加工工程での剥離を抑制できる観点から粘着層は、アクリル系粘着、ウレタン系粘着、ゴム系粘着、シリコーン系粘着より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、アクリル系粘着、ウレタン系粘着より選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0118】
また、本発明の樹脂フィルムの製造方法は、工程1、2、及び3をこの順に行い、かつ、条件10を満たすことが好ましい。
工程1:支持基材の上に、化学式2のセグメントを含む樹脂前駆体を含む塗料組成物を塗布し、塗布層を形成する工程
【0119】
【化6】
【0120】
は、水素またはメチル基を指す。
は、以下のいずれかであることが好ましく、nは3以上の整数であることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
は、以下のいずれかであることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
工程2:前記塗布層から溶媒を除去する工程。
工程3:活性エネルギー線を照射して、前記樹脂前駆体を架橋させる工程
条件10:工程3において、活性エネルギー線照射時における雰囲気の酸素濃度が5体積%以上。
【0121】
樹脂前駆体として上記の構造を有し、活性エネルギー線照射時における雰囲気の酸素濃度を5体積%以上にすることで、表面のみに対して架橋反応の酸素阻害を意図的起こし、表面の弾性率を下げ、投錨性を向上することができる。
【0122】
支持基材は、搬送性向上や傷つき防止のための基材であり、離型層や粘着層を含む多層積層体でも良い。離型層を含むことで、支持基材から剥離することが可能となり、樹脂フィルム単体で後加工することができる。また、粘着層を含むことで、支持基材と強く密着し、支持基材と樹脂フィルムの積層体として後加工することができる。
【0123】
条件10において、活性エネルギー線照射時における雰囲気の酸素濃度は10体積%以上であることがより好ましく、20体積%以上であることがさらに好ましい。酸素濃度を10体積%以上にすることで、活性エネルギー線による硬化反応を意図的に阻害でき、樹脂フィルムの支持基材反対側の投錨性を上昇させることができる。
【0124】
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
【0125】
[樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、単層で膜状の構造を成り立たせているものである。ここで層とは、厚み方向に向かって、隣接する部位と区別可能な境界面を有し、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記樹脂フィルムの断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。樹脂フィルムの厚み方向に組成が変わっていても、その間に前述の境界面がない場合には、単層として取り扱う。
【0126】
本発明の樹脂フィルムは、その課題である、柔軟性、復元性、投錨性の他に、隠蔽性、光沢性、耐指紋性、成型性、意匠性、耐傷性、防汚性、耐溶剤性、反射防止、帯電防止、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、電磁波遮蔽、易接着等の他の機能を有してもよく、さらに1つ以上の層を形成して積層体としてもよい。例えば機能層、粘着層、電子回路層、印刷層、光学調整層等や他の機能層を設けてもよい。
【0127】
前記樹脂フィルムの厚みは特に限定はなく、その用途によって適宜選択される。樹脂フィルムの厚みの下限は、樹脂フィルム自身の弾性率、破断伸度、支持基材と樹脂フィルム間の剥離力や剥離角度などの影響を受けるため、一概には定まらないが、後述する積層体の製造方法を用いて、一般的な柔軟材料同等の物性を実現する場合には、数μm程度が下限である。
【0128】
[積層体]
本発明の積層体の好ましい態様は上述のとおりだが、前述の物性を示す樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、支持基材を有する積層体であることが好ましく、積層体が平面状態であっても、又は成形された後の3次元形状のいずれであってもよい。
【0129】
[支持基材]
本発明の積層体に用いられる支持基材は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。支持基材を構成する樹脂は、成形性が良好であれば好ましく、その点から熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0130】
支持基材に好適に用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。
【0131】
支持基材に好適に用いられる熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性・透明性の観点から、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、もしくはメタクリル樹脂であることがより好ましい。
【0132】
支持基材に好適に用いられるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが特に好ましい。
【0133】
また支持基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
【0134】
さらに支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
【0135】
また、支持基材の表面には、本発明の樹脂フィルムとは別に易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層、離型層などの機能性層をあらかじめ設けることも可能であり、本発明の積層体においては、支持基材と樹脂フィルム間の剥離力を低下させるため、離型層を有することが好ましい。離型層の詳細については後述する。
【0136】
離型層が設けられた支持基材の例として、東レフィルム加工株式会社製の“セラピール”(登録商標)、ユニチカ株式会社製の“ユニピール”(登録商標)、パナック株式会社製の“パナピール”(登録商標)、東洋紡株式会社製の“東洋紡エステル”(登録商標)、帝人株式会社製の“ピューレックス”(登録商標)などを挙げることができ、これらの製品を利用することもできる。
【0137】
支持基材の表面には、前記樹脂フィルムを形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0138】
[離型層]
本発明の積層体において、樹脂フィルム単体で後加工する場合は、前述のように支持基材に離型層を有することが好ましい。離型層を有する支持基材は、離型フィルムとも呼ばれる。離型層は、密着性や帯電防止性、耐溶剤性等を付与する観点から複数の層から構成されていてもよく、支持基材の両面にあってもよい。
【0139】
離型層の組成や厚みは、離型層の面内均一性、外観品位、剥離力の面から10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることがより好ましい。
【0140】
[保護材料]
本発明の積層体は,前述の図5のように樹脂フィルムの支持基材とは反対側の面に保護材料を有していてもよい。保護材料と支持基材の区別は、積層体の製造方法において、塗料組成物を塗工するものを支持基材とし、樹脂フィルム形成後に貼合されたものを保護材料とする。保護材料は、前述の支持基材と同じものでも、異なるものでもよいが、後工程の使用において、前述の支持基材と、剥離力に差を有することが好ましい。保護材料と支持基材の樹脂フィルムからの剥離力の大小関係は、後工程での使用方法に応じて適宜選択される。そのため、保護材料は、前述の図7、12のように離型層を有しても良く、図8、13のように粘着層を有してもよく、図6、11のように層を有さなくてもよい。
【0141】
[樹脂フィルムの製造方法]
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、支持基材上に、化学式2のセグメントを含む樹脂前駆体を含む塗料組成物を塗布して、塗布層を形成し(工程1)、次いで塗布層から溶媒を除去して乾燥し(工程2)、活性エネルギー線を照射して、樹脂前駆体を架橋させる(工程3)ことで積層体を作製することが好ましい。
【0142】
工程1の支持基材上への塗料組成物の塗布方法は、支持基材上に塗料組成物を塗布し、面内均一な塗布層を形成できれば、特に限定されない。フィルム上への塗布方法としては、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などから適宜、選択できる。ここで塗布層とは、塗布工程により形成された「液体の層」を指す。
【0143】
工程2の溶媒を除去する方法、つまり乾燥方法は、支持基材上に形成された塗布層から、溶媒を除去することができれば、特に限定されない。乾燥方法としては、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)によりなどが挙げられるが、この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
【0144】
工程3の架橋方法は、乾燥後、溶媒を除去した塗布層に対して活性エネルギー線を照射することにより、反応させ、塗膜を架橋させるものである。
【0145】
活性エネルギー線による架橋は、汎用性の点から電子線(EB)および/または紫外線(UV)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100~3,000(mW/cm)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mW/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mW/cm)、となる条件で紫外線照射を行うことがよく、紫外線の積算光量が、100~3,000(mJ/cm)が好ましく、より好ましくは200~2,000(mJ/cm)、さらに好ましくは300~1,500(mJ/cm)となる条件で紫外線照射を行うことがよい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
活性エネルギー線照射時の酸素分圧は、ジルコニア式酸素濃度計で測定を行う。また、酸素分圧の調整は、活性エネルギー線照射環境における不活性ガスの照射分圧を調整することで行う。
【0146】
[樹脂前駆体]
樹脂前駆体は、架橋させることができる部位を有する化合物であれば、特に限定されないが、
化学式2の構造を含む樹脂前駆体が好ましく、化学式5の構造を含む樹脂前駆体がより好ましい。
【0147】
【化7】
【0148】
【化8】
【0149】
およびRは、水素またはメチル基を指す。
、R、およびR10は、以下のいずれかであることが好ましく、nは3以上の整数であることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有するアリーレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアルキレン基。
・内部にエーテル基、エステル基、またはアミド基を有する無置換のアリーレン基。
、Rは、以下のいずれかであることが好ましい。
・置換または無置換のアルキレン基。
・置換または無置換のアリーレン基。
【0150】
化学式2および5の構造は、前述のように、図中のXで示される(メタ)アクリル基が末端にあり、この末端にある(メタ)アクリル基(X)が、架橋させることができる部位に相当する。さらに、(メタ)アクリル基(X)は、図中のYで示されるポリイソシアネート残基と隣接している。さらに化学式2のセグメントは、Yで示されるポリイソシアネート残基のもう一端と、化学式5中のZで示されるポリオール残基(Z)が隣接していることを意味している。
【0151】
化学式2および5のポリイソシアネート残基(Y)は、好ましくは、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(1,5-ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、PPDI(パラフェニレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)等のポリイソシアネートの残基である。
【0152】
化学式5のポリオール残基は、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールである。
【0153】
[塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法にて用いられる「塗料組成物」は、支持基材上に面内均一に塗布でき、本発明の特性を示す樹脂フィルムを形成することができれば特に限定されないが、前述の積層体の製造方法に適した塗料組成物であることが好ましい。具体的には、前述の樹脂前駆体と、後述する溶媒、その他の成分を加えて、塗料組成物とすることが好ましい。
【0154】
[溶媒]
本発明の積層体の製造方法に用いられる塗料組成物は溶媒を含んでもよく、塗布層を面内に均一に形成するためには、溶媒を含む方が好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下、特に好ましくは1種類以上4種類以下である。ここで「溶媒」とは、前述の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
【0155】
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2-プロパノールと、n-プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
【0156】
[塗料組成物中のその他の成分]
本発明の積層体の製造方法に用いられる塗料組成物は,酸化防止剤、重合開始剤、硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、樹脂フィルムの架橋を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0157】
酸化防止剤は、その作用機構から、ラジカル連鎖開始防止剤、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤に大別され、高温条件下での劣化抑制に対してこれらのいずれでも本発明の効果は得られるが、ラジカル捕捉剤、または過酸化物分解剤がより好ましく ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系のラジカル捕捉剤、またはホスファイト系、チオエーテル系の過酸化物分解剤がより好ましい。
【0158】
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、ウレタン結合の形成反応を促進させる架橋触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどが挙げられる。
【0159】
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物、または、アシルフォスフィンオキサイド系化合物を使用することが好ましい。さらに、耐湿熱性の点から、ヒドロキシエトキシ基を導入したアルキルフェノン系化合物を使用することがより好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、およびこれらの材料を高分子量化したものが挙げられる。これらを単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
【0160】
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、樹脂フィルムを形成するために用いる塗料組成物にレベリング剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、樹脂フィルムはレベリング剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。
【0161】
レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
【0162】
[用途例]
本発明の樹脂フィルムは、光学特性、柔軟性、伸縮性、搬送性、外観品位に優れるといった利点を活かし、特に高い柔軟性や伸縮性が求められる用途に好適に用いることができる。
【0163】
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。これら材料は本発明の樹脂フィルムを用いることで、その品位を優れたものとすることができる。
【実施例
【0164】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0165】
「樹脂前駆体の合成」
樹脂前駆体の合成において、使用する原材料は以下の通りである。
【0166】
「ジイソシアネート」
・IPDI: イソホロンジイソシアネート
「ポリオール」
・PBAA-1: ポリブチレンアジペート 東ソー株式会社製 ニッポラン3027(重量平均分子量2500)
「ヒドロキシアクリレート(HEA)」
・4HBA: 4-ヒドロキシブチルアクリレ-ト
[樹脂前駆体A]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ジイソシアネートとしてIPDI、ポリオールとしてPBAA-1、及びトルエンを入れた。このとき、ジイソシアネートとポリオールのモル比が0.43:0.29となるようにし、固形分濃度が60質量%になるようにした。90℃で反応させ、未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が1.4質量%となった時点で温度を70℃に下げ、ヒドロキシアクリレート(HEA)を加えた。このとき、未反応時におけるジイソシアネートとポリオールとヒドロキシアクリレートのモル比が0.43:0.29:0.29となるようにした。未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が0.3質量%となった時点で加熱を止めて反応を終了し、トルエンを追加して固形分濃度を60質量%に調整して、樹脂前駆体Aのトルエン溶液を得た。
【0167】
[樹脂前駆体B]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ジイソシアネートとしてIPDI、ポリオールとしてPBAA-1、及びトルエンを入れた。このとき、ジイソシアネートとポリオールのモル比が0.48:0.32となるようにし、固形分濃度が60質量%になるようにした。90℃で反応させ、未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が1.4質量%となった時点で温度を70℃に下げ、ヒドロキシアクリレート(HEA)を加えた。このとき、未反応時におけるジイソシアネートとポリオールとヒドロキシアクリレートのモル比が0.48:0.32:0.20となるようにした。未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が0.3質量%となった時点で加熱を止めて反応を終了し、トルエンを追加して固形分濃度を60質量%に調整して、樹脂前駆体Bのトルエン溶液を得た。
【0168】
[樹脂前駆体C]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ジイソシアネートとしてIPDI、ポリオールとしてPBAA-1、及びトルエンを入れた。このとき、ジイソシアネートとポリオールのモル比が0.38:0.27となるようにし、固形分濃度が60質量%になるようにした。90℃で反応させ、未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が1.4質量%となった時点で温度を70℃に下げ、ヒドロキシアクリレート(HEA)を加えた。このとき、未反応時におけるジイソシアネートとポリオールとヒドロキシアクリレートのモル比が0.38:0.27:0.35となるようにした。未反応時における残存イソシアネート基を100質量%としたとき、反応により残存イソシアネート基が0.3質量%となった時点で加熱を止めて反応を終了し、トルエンを追加して固形分濃度を60質量%に調整して、樹脂前駆体Cのトルエン溶液を得た。
【0169】
[塗料組成物の調合]
[塗料組成物1]
以下の材料とメチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度40質量%の樹脂フィルム形成用塗料組成物1を得た。
・樹脂前駆体A :100質量部
・光重合開始剤“IRGACURE”(登録商標)184(BASFジャパン株式会社製):3質量部。
・フッ素系レベリング剤 “フタージェント”(登録商標)650AC (株式会社ネオス製) : 0.03質量部。
【0170】
[塗料組成物2~6の調合]
前記塗料組成物1の調合に対し、樹脂前駆体種、光重合開始剤量、固形分濃度を表1に記載の組み合わせに変えて、塗料組成物2~6を調合した。
【0171】
【表1】
【0172】
[塗料組成物の7の調合]
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(“S.O.E.”(登録商標) S1606 旭化成株式会社製)を、トルエンで溶解し、固形分濃度40質量%の塗料組成物7を得た。
【0173】
[塗料組成物の8の調合]
EVOH樹脂(“エバール”(登録商標)EP-E105 クラレ株式会社製)を、35%含水ノルマルプロパノール溶液で溶解し、固形分濃度10質量%の塗料組成物8を得た。
【0174】
[離型層用塗料組成物]
下記材料を混合し、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度5質量%の離型層用塗料組成物を得た。
・側鎖型カルビノール変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4015信越化学工業(株) 固形分濃度:100質量%):5質量部
・両末端型ポリエーテル変性反応型シリコーンオイル
(X-22-4952信越化学工業(株) 固形分濃度:100質量%):5質量部
・アクリル変性アルキド樹脂溶液
(ハリフタール KV-905 ハリマ化成株式会社 固形分濃度 53質量%):100質量部
・イソブチルアルコール変性メラミン樹脂溶液
(“メラン”(登録商標)2650L 日立化成株式会社 固形分濃度 60質量%):20質量部
・パラトルエンスルホン酸:5質量部。
【0175】
また、上記の材料を離型層用塗料組成物の基本材料とし、場合によって下記に記載の添加剤を30質量部加えた。
「添加剤」
・重合禁止剤A:キノン系重合禁止剤 “キノパワー”(登録商標)QS-20(川崎化成株式会社製)(2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)
・重合禁止剤B:アクリレート基含有フェノール系重合禁止剤“SUMILIZER”(登録商標) GM(住友化学株式会社製)(アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル- 5-メチルベンジル)フェニル)
[積層体、樹脂フィルムの製造方法]
[離型層付き支持基材の形成]
小径グラビアコーターを有する塗布装置を用い、厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R75X)に、離型層用塗料組成物を離型層厚みが、約200nmになるように、グラビアロールの線数、グラビアロールの周速、離型層用塗料組成物固形分濃度を調整して塗布し、次いで熱風温度140℃にて30秒保持することで、乾燥と架橋を行い、離型層付き支持基材1~4を得た。添加剤の組み合わせは表2の通りとした。
【0176】
【表2】
【0177】
[積層体の形成方法]
(工程1)
支持基材として、前述の離型層付き支持基材を使用し、スロットダイコーターによる連続塗布装置を用い、前述の塗料組成物を、前述の支持基材の離型層上に、架橋後の樹脂フィルムの厚みが指定の膜厚になるように、吐出流量を調整して塗布し、塗布層を形成した。
【0178】
(工程2)
工程1にて形成した塗布層を、下記の条件で乾燥させて、溶媒を除去した。
【0179】
送風温度 : 温度:50℃、
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
(工程3)
工程2にて、溶媒を除去して得られた塗布層(未架橋の樹脂フィルム)に、下記の条件で活性エネルギー線を照射して架橋させ、支持基材、離型層および樹脂フィルムからなる積層体を得た。
【0180】
照射光源 : 高圧水銀灯
照射出力 : 400W/cm
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 0.1体積%、2体積%、5体積%、または、21体積%
樹脂フィルムを多層構成にする場合は、工程3で作製した支持基材、離型層および樹脂フィルムからなる積層体の上から、連続塗布装置を用いて前述の塗料組成物を再度塗布し、工程1~3を行い、多層樹脂フィルム積層体を得た。
【0181】
また、比較例11、12は、厚み50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R75X)に各種塗料組成物を塗布し、工程1~3を行うことで得られた積層体を多層樹脂フィルムとしてみなして評価を行った。
【0182】
以上の方法により実施例1~13、比較例1~10の積層体および樹脂フィルムを作成した。各実施例、比較例に対応する樹脂フィルム形成用塗料組成物、離型層付き支持基材種、積層体の形成方法、およびそれぞれの樹脂フィルムの厚みは、表3に記載した。
【0183】
【表3】
【0184】
[樹脂フィルムの評価]
樹脂フィルムについて、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表4に示す。
積層体が樹脂フィルムと支持基材からなり、樹脂フィルムから支持基材を容易に剥がせる場合は、剥離して測定サンプルを得た。また、積層体が樹脂フィルムと別の層からなり、別の層が容易に剥がせない場合は、液体窒素で凍結させ、別の層を研磨したサンプルをいくつか作製し、後述する樹脂フィルムの厚みと層数の観察の欄に記載の方法で樹脂フィルムが単層であるサンプルを、測定サンプルとした。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0185】
[樹脂フィルムの貯蔵弾性率、損失正接の測定]
測定サンプルを10mm幅の矩形に切り出し試験片とした。
【0186】
JIS K7244-4(1999)の引張振動-非共振法に基づき(これを動的粘弾性法とする)、セイコーインスツルメンツ株式会社製の動的粘弾性測定装置DMS6100を用いて樹脂フィルムの貯蔵弾性率、損失正接を求めた。
測定モード:引張
チャック間距離:20mm
試験片の幅:10mm
周波数:1Hz
歪振幅:10μm
最小張力:20mN
力振幅初期値:40mN
測定温度:-100℃から200℃まで
昇温速度:5℃/分
[樹脂フィルムの弾性率、散逸量の測定]
測定サンプルを凍結ミクロトーム法により断面を切り出し、当該断面が測定面となるよう、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)にセットした。
【0187】
PeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の校正を行った後、下記の条件にて測定を実施した。
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST-AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 2(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 1Hz
押し込み荷重 : 4(nN)。
【0188】
測定は、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面部分(一方の表面から、厚み方向に深さ0%の部分)から、厚み方向全体に対して深さ5%までの部分における任意の30か所(ただし、なるべく厚み方向の深さ0~5%の部分に対して満遍なく測定範囲をとるようにして)測定した。
【0189】
各測定範囲の測定結果に対し、得られたDMTModulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのImage Raw Meanの値をその測定範囲の弾性率として採用し、30か所の弾性率の平均値を、一方の表面の弾性率(f1a)とした。
【0190】
上記と同様の方法により、もう一方の表面(前記一方の表面から、厚み方向に深さ100%の部分)から、厚み方向全体に対して深さ95%までの部分において弾性率を測定し、もう一方の表面の弾性率(f1b)とした。
【0191】
さらに、上記と同様の方法により、厚み方向に深さ45%の部分から、55%までの部分において弾性率を測定し、厚み方向中央部の弾性率(F2)とした。
【0192】
また、同様の方法にて、Dispilationチャンネルのデータを用いることで各散逸量を求めた。
[樹脂フィルムの赤外吸収スペクトルの測定]
樹脂フィルムの表面、および厚み方向中央部に対して、KBr法によるFT-IRスペクトルの測定を行った。
【0193】
樹脂フィルムの一方の表面から厚み方向に深さ0%~5%の部分をスライスし、その後凍結粉砕させる。その後、KBr粉末と混ぜ合わせ、錠剤状に成型して測定サンプルを得た。
【0194】
測定装置、測定条件は以下の通りである。
【0195】
測定装置: Varian社製 FT-IR Varian-670
測定条件: 光源 特殊セラミックス
検出器 DTGS
分解能 4cm-1
積算回数 128回
測定波数範囲 4,000~680cm-1
【0196】
同様に、厚み方向に深さ45~55%の部分を用いて測定した。加えて、厚み方向に深さ95~100%の部分を用いて測定した。
【0197】
得られたスペクトルから、1620cm-1以上1640cm-1以下の透過率の最小値(樹脂フィルム表面:A1、樹脂フィルム厚み方向中央部:A2)を求めた。
【0198】
[樹脂フィルムの厚みと層数の観察]
樹脂フィルムの厚みと層数の観察は、日本電子株式会社製のSEM JSM-6700Fを用いたフィルムの断面SEM観察により行った。断面SEM観察用の試験片の作製手順は下記の通りで行った。
【0199】
1.樹脂フィルムをUV硬化性樹脂で包埋した。
【0200】
2.樹脂フィルムの厚み方向に対する断面が得られるよう日本ミクロトーム株式会社製のロータリーミクロトームRMSを用いて、包埋した樹脂ごと樹脂フィルムを切削した。
【0201】
3.日本電子株式会社製のオートファインコータJFC-1600を用いて、切削したサンプルの断面に対して、白金を約10μm蒸着(条件:30mA×20秒×2回)し、試験片とした。
【0202】
断面SEM観察の条件は下記の通りで行った。
・測定モード:LEIモード
・倍率:5000倍
・加速電圧:3kV
・WD(試料距離):8.0mm
樹脂フィルムの厚みは、得られた断面SEM画像における、前述の包埋樹脂間の垂直方向距離から計算し、その算術平均値を採用した。また、樹脂フィルムの層数は、断面SEM画像における包埋樹脂間の垂直方向の不連続な境界面の数から算出した。
【0203】
[樹脂フィルムの柔軟性の評価]
樹脂フィルムを10mm幅×150mm長の矩形に切り出し試験片とした。なお、それぞれ150mm長の方向を樹脂フィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度300mm/minに設定し、測定温度23℃で引張試験を行った。
【0204】
チャック間距離が、a(mm)のときのサンプルにかかる荷重b(N)を読み取り、以下の式から、ひずみ量x(%)と応力y(N/mm)を算出した。ただし、試験前のサンプル厚みをk(mm)とする。
ひずみ量:x=((a-50)/50)×100
応力:y=b/(k×10)。
【0205】
上記で得られたデータのうち、歪み量5%での応力を5%歪み応力とし、5MPa以下を合格とした。
【0206】
なお、長手方向が分からない場合は任意の方向にサンプリングし、その後60度、120度回転させてサンプリングし、合計3サンプルの測定結果の平均値をもって評価した。
【0207】
[樹脂フィルムの復元性の評価]
樹脂フィルムを10mm幅×150mm長の矩形に切り出し試験片とした。なお、それぞれ150mm長の方向を樹脂フィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(登録商標)UCT-100)を用いて、測定温度23℃において、復元性の優劣を見るため、変形速度の異なる2条件で評価を行った。
【0208】
条件A: 初期チャック間距離50mm、引張速度50mm/min 歪み量100%までサンプルを伸長後、サンプルへの引っ張り荷重解放し、測定前に初期試長として印をつけていた距離を測定してLmmとして、以下の式から弾性復元率z(%)と、せん断速度s(s-1)を算出した。
【0209】
弾性復元率z=(1-(L-50)/100)×100 (%)。
【0210】
せん断速度s=(50/60)/10=0.08(s-1
条件B: 初期チャック間距離50mm、引張速度300mm/min 歪み量100%までサンプルを伸長後、サンプルへの引っ張り荷重を解放し、測定前に初期試長として印をつけていた距離を測定してLmmとして、以下の式から、弾性復元率z%を算出した。
【0211】
弾性復元率z=(1-(L-50)/100)×100 (%)。
【0212】
せん断速度s=(50/60)/10=0.08(s-1
上記の評価において、条件Aが90%以上で、条件Bが70%以上を、合格とした。
【0213】
[樹脂フィルムの投錨性評価]
投錨性は、株式会社オリエンテック製の引張試験機“テンシロン”(登録商標)UCT-100を用いて、粘着フィルムを伸縮性フィルムから180度剥離したときの抵抗値(N)で評価した。樹脂フィルムを短冊状(25mm×120mm)に切り出した後、樹脂フィルムの評価対象とする面に、粘着フィルム(パナック株式会社製 “パナプロテクト”(登録商標)(品番:HUCB Type2、サイズ:20mm×100mm))の粘着層側の面を貼合した。次いで、樹脂フィルムのもう一方の面に、Nitto製両面テープ(品番:5000NS)を貼合し、両面テープの支持基材を剥離し、ステンレス板に貼合した。最後に、粘着フィルムの粘着層/樹脂フィルム界面の一部を剥離し、ロードセルにテープで固定し、下記の条件で測定を行った。6N以上を合格とした。
【0214】
測定距離 : 50mm以上
試験片幅 : 20mm
剥離速度 : 300 mm/min(引張速度: 600 mm/min)
剥離角度 : 180°
表4、5に樹脂フィルムの化学式1の構造およびウレタン結合、および、化学式2の含有/非含有、および、前述の条件1から条件6の評価結果を、表6に樹脂フィルムの柔軟性、復元性、投錨性の結果をまとめた。
【0215】
【表4】
【0216】
【表5】
【0217】
【表6】
【0218】
表4において、化学式1の構造の欄の「含む」の意味は、各々の実施例等が化学式1の構造を含むことを意味し、「含まない」の意味は、各々の実施例等が化学式1の構造を含まないことを意味する。ウレタン結合についても、同様である。
【符号の説明】
【0219】
1、4、8、12、17、21、26、32、38、42、47、52、58、64、71:積層体
2、5、9、13、18、22、27、33、39、43、48、53、59、65、72:樹脂フィルム
6、10、14、15、23、28、30、34、45、56:離型層
3、7、11、16、19、24、29、35、41、46、50、55、61、66、73:支持基材
20、25、31、37、51、57、63、68、75:保護材料
36、40、44、49、54、60、62、67、74:粘着層
69:貼合用ロール
70、76:内部応力
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明の樹脂フィルムは、光学特性、柔軟性、伸縮性、搬送性、外観品位に優れるといった利点を活かし、特に高い柔軟性や伸縮性が求められる用途に好適に用いることができる。
【0221】
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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