(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241119BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G03G15/08 229
G03G15/08 235
G03G9/08 381
G03G9/08
(21)【出願番号】P 2020167480
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉木 友浩
(72)【発明者】
【氏名】中植 隆久
(72)【発明者】
【氏名】川口 弘達
(72)【発明者】
【氏名】石野 正人
(72)【発明者】
【氏名】太田 有香里
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-338311(JP,A)
【文献】特開平11-052609(JP,A)
【文献】特開2020-060750(JP,A)
【文献】特開2008-170892(JP,A)
【文献】特開2006-258544(JP,A)
【文献】特開2015-079166(JP,A)
【文献】特開2017-097253(JP,A)
【文献】特開2017-076087(JP,A)
【文献】特開2001-166533(JP,A)
【文献】特開2002-132041(JP,A)
【文献】特開2003-302827(JP,A)
【文献】特開2008-293002(JP,A)
【文献】特開2019-045582(JP,A)
【文献】特開2010-160325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187808(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0010684(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成される像担持体と、
前記像担持体を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面を露光して帯電を減衰させた静電潜像を形成する露光装置と、
トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する現像容器と、
外周面に前記トナーを保持するローラー部と、前記ローラー部の軸中心に沿って配置される回転軸と、を有し、前記像担持体に所定の押圧力で押圧される現像剤担持体と、
前記現像剤担持体における前記ローラー部の外周面に面接触して前記ローラー部の外周面に形成されるトナー層の層厚を規制する規制ブレードと、
を有し、前記静電潜像が形成された前記像担持体に前記トナーを供給する現像装置と、
前記現像容器を前記像担持体に近づく方向に押圧する押圧機構と、
を備えた画像形成装置において、
前記現像剤担持体は、前記像担持体に前記トナーを供給するとともに、前記像担持体上に残留した前記トナーを回収可能であり、
前記トナーは粉砕法により製造され、中心粒径が6.0~8.0μm、円形度が0.93~0.97、90℃ における溶融粘度が10,000~200,000Pa・sであり、
前記現像剤担持体は、前記ローラー部のアスカーC硬度が65°以上73°以下であり、前記押圧力をX[N]、前記像担持体と前記現像剤担持体との周方向の接触幅であるニップ幅をY[μm]とするとき、3.0≦X≦8.0および550≦Y≦700であり、且つ、以下の式(1)、(2)を満たすことを特徴とする画像形成装置。
Y≧31.0X+393.2 ・・・(1)
Y≦47.0X+450.1 ・・・(2)
【請求項2】
前記現像剤担持体に印加する現像電圧をVdc、前記像担持体の前記表面電位をV0、露光後電位をVLとするとき、以下の式(3)、(4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
V0-Vdc≧2(Vdc-VL) ・・・(3)
Vdc-VL≧100 ・・・(4)
【請求項3】
前記現像剤担持体の表面自由エネルギーが5mj/m
2以上27mj/m
2以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関し、特に、非磁性一成分現像方式の現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置において使用される現像装置は、現像剤にトナーとキャリアとを使用した二成分現像方式、キャリアを使用せずにトナーのみを使用した一成分現像方式のものが知られている。
【0003】
非磁性一成分現像方式の現像装置では、トナーが現像ローラーの表面に設けられた微細な凹凸によって搬送され、余分なトナーは規制ブレードですり切られることでトナー薄層が形成される。また、規制ブレードの下をトナーが通過する際に現像ローラーの表面とトナーが摩擦帯電する。そして、感光体と現像ローラーを接触回転させ、現像ローラーの表面のトナーは電界により感光体に現像される。
【0004】
非磁性一成分現像方式は、二成分現像方式のようなマグネットや金属スリーブ、キャリアなどのデバイスが不要になるとともに直流電圧のみで十分な現像が可能である。すなわち、シンプルで低コストな構成でありながら安定した現像性能が得られるため、主に低速コンパクト機に積極的に採用されている。
【0005】
上述したような非磁性一成分現像方式においては、現像電圧は目標の画像濃度を得られ、且つクリーニング不良が発生しない電圧に調整することになる。画像濃度は感光体の露光後電位と現像電圧との関係、クリーニング不良は感光体の表面電位と現像電圧との関係でそれぞれ決まるため、目標濃度を確保しつつクリーニング不良も発生しない使用可能範囲 (OW)が存在する。感光体の表面電位のバラつきやトナー劣化、環境(温湿度)による現像感度の変動を考慮すると、一定幅(約120V)のOWが必要である。非磁性一成分現像方式においては、このOWをいかに広くとれるかが重要となる。
【0006】
そこで、目標濃度を確保しつつクリーニング不良を軽減する方法が提案されており、例えば特許文献1には、静電潜像保持体に対するトナー担持体の単位長さ当りの当接力Pと静電潜像保持体表面又はトナー担持体表面の当接方向の変形量δとの比P/δが2~200である構成が開示されている。具体的には、当接力Pを1gf/mm以上、所定の長さ範囲に直交する方向の接触幅(ニップ幅)Sを2mm以上としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、ニップ幅、ニップ圧、現像ローラーの変形量を規定する構成であり、ニップ幅の範囲を2mm以上に設定している。しかし、ニップ幅が2mm以下となるような高硬度の現像ローラーを用いる場合、ニップ圧が高くなりすぎてドットの輪郭が不明瞭になる傾向がある。そのため、高硬度の現像ローラーに適した技術ではなかった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、非磁性一成分現像方式における画像の白抜けやクリーニング不良を効果的に抑制可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、押圧機構と、を備えた画像形成装置である。像担持体は、表面に感光層が形成される。帯電装置は、像担持体を所定の表面電位に帯電させる。露光装置は、帯電装置により帯電された像担持体の表面を露光して帯電を減衰させた静電潜像を形成する。現像装置は、トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する現像容器と、外周面にトナーを保持するローラー部と、ローラー部の軸中心に沿って配置される回転軸と、を有し、像担持体に所定の押圧力で押圧される現像剤担持体と、現像剤担持体におけるローラー部の外周面に面接触してローラー部の外周面に形成されるトナー層の層厚を規制する規制ブレードと、を有し、静電潜像が形成された像担持体にトナーを供給する。押圧機構は、現像容器を像担持体に近づく方向に押圧する。現像剤担持体は、ローラー部のアスカーC硬度が65°以上73°以下であり、押圧力をX[N]、像担持体と現像剤担持体との周方向の接触幅であるニップ幅をY[μm]とするとき、3.0≦X≦8.0および550≦Y≦700であり、且つ、以下の式(1)、(2)を満たす。
Y≧31.0X+393.2・・・(1)
Y≦47.0X+450.1・・・(2)
【0011】
本発明の第1の構成によれば、現像剤担持体のアスカーC硬度、像担持体に対する押圧力、ニップ幅を上記範囲とすることで、トナーの現像性とクリーニング性のバランスが担保され、画像の白抜けやクリーニング不良が発生しない適正な範囲とすることができ、さらに押圧力の変化に対するロバスト性を高めて画像品質の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図
【
図2】本実施形態の画像形成装置1の画像形成部30の概略構成を示す側面断面図
【
図3】感光体ドラム31と現像部33の現像ローラー331との接触部周辺を上方から見た平面図
【
図4】現像部33における現像ローラー331と規制ブレード334との接触部分周辺の拡大断面図
【
図5】現像ローラー331に印加する現像電圧と画像濃度との関係を示すグラフ
【
図6】感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力を変化させたときの現像電圧と画像濃度との関係を示すグラフ
【
図7】現像ローラー331の硬度を変化させたときの現像ローラー331の押圧力とニップ幅との関係を示すグラフ
【
図8】現像ローラー331の表面自由エネルギーを変化させたときの現像ローラー331に印加する現像電圧と画像濃度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.画像形成装置1の全体構成)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図である。なお、
図1において右側を画像形成装置1の前側、左側を後側とする。
【0014】
画像形成装置1(ここではモノクロプリンター)は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10、本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30および定着部40を含む。本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。画像形成部30および定着部40の各ユニットは、後カバー12が開放されることで、本体ハウジング10の後面側から出し入れ可能となる。また、本体ハウジング10の上面には、画像形成後のシートが排出される排紙部13が備えられている。尚、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパーや画像形成処理を受ける他のシート材料を意味する。
【0015】
給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面から更に前方に突出している。給紙カセット21のうち、本体ハウジング10内に収容されている部分の上面は、給紙カセット天板21Uによって覆われている。給紙カセット21には、シートの束が収容される用紙収容空間、シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部には用紙繰出部21Aが設けられている。この用紙繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
【0016】
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー像(現像剤像)を形成する画像形成動作を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31と、感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電部32、露光部35、現像部33および転写ローラー34を含む。
【0017】
感光体ドラム31(像担持体)は、回転軸と、回転軸周りに回転する外周面(ドラム本体)と、を備える。感光体ドラム31の外周面には、例えば公知の有機(OPC)感光体で構成され、外周面に電荷発生層、電荷輸送層等で構成される感光層が形成される。感光層は、後述する帯電部32により均一に帯電された後、露光部35により光照射されて帯電を減衰させた静電潜像が形成され、現像部33により静電潜像を顕在化したトナー像が担持される。
【0018】
帯電部32(帯電装置)は、感光体ドラム31の外周面に対して所定の間隔を置いて配置され、感光体ドラム31の外周面を非接触の状態で均一に帯電させる。具体的には、帯電部32は、チャージワイヤー321およびグリッド電極322(いずれも
図2参照)を有する。チャージワイヤー321は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる線状の電極であり、感光体ドラム31との間でコロナ放電を発生させる。グリッド電極322は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる格子状の電極であり、チャージワイヤー321と感光体ドラム31との間に配設される。帯電部32は、チャージワイヤー321に所定の電流値の電流を流すことでコロナ放電を発生させ、且つ、グリッド電極322に所定電圧を印加することで、グリッド電極322に対向する感光体ドラム31の外周面を、所定の表面電位に一様に帯電させる。
【0019】
露光部35(露光装置)は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の外周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づき変調された光を照射する。これにより、露光部35は、感光体ドラム31の外周面に、画像データに基づく画像に対応する静電潜像を形成する。
【0020】
現像部33(現像装置)は、本体ハウジング10に着脱可能であり、感光体ドラム31の外周面に非磁性一成分のトナー(現像剤)を供給することにより、感光体ドラム31の外周面に形成された静電潜像を現像する。静電潜像を現像するとは、静電潜像を顕在化したトナー像(現像剤像)を形成することを示す。現像部33の詳細な構成については後述する。
【0021】
転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーである。具体的には、転写ローラー34は、軸周りに回転し、感光体ドラム31の回転方向における現像ローラー331よりも下流側の位置で、感光体ドラム31の外周面と対向する外周面を有する。転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面との間のニップ部を通過するシートに、感光体ドラム31の外周面に担持されているトナー像を転写する。当該転写の際、転写ローラー34にはトナーと逆極性の転写電圧が印加される。
【0022】
定着部40は、シートに転写されたトナー像を、シート上に定着させる定着処理を行う。定着部40は、定着ローラー41と加圧ローラー42とを有する。定着ローラー41は、加熱源を内部に備え、シートに転写されたトナーを所定温度で加熱する。加圧ローラー42は、定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する。トナー像が転写されたシートが定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱および加圧ローラー42による押圧によりシート上に定着される。
【0023】
本体ハウジング10内には、シートを搬送するための主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20の用紙繰出部21Aから画像形成部30および定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
【0024】
主搬送路22Fは、感光体ドラム31および転写ローラー34によって形成される転写ニップ部を、下方から上方に向かって通過するように延設される。また、主搬送路22Fの、転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで転写ニップ部に送り出される。主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されている。排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
【0025】
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。尚、反転ユニット25の内側面には、転写ローラー34およびレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12および反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてジャム(紙詰まり)が発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像部33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
【0026】
(2.画像形成部30の構成)
図2は、本実施形態の画像形成装置1における画像形成部30の断面図である。
図3は、感光体ドラム31と現像部33の現像ローラー331との接触部周辺を上方から見た平面図である。
図4は、現像部33における現像ローラー331と規制ブレード334との接触部分周辺の拡大断面図である。
【0027】
図2および
図3に示すように、現像部33は、現像ハウジング330(現像容器)と、現像ローラー331(現像剤担持体)と、供給ローラー332と、攪拌パドル333と、規制ブレード334と、を備える。
【0028】
現像ハウジング330は、内部にトナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容すると共に、現像ローラー331、供給ローラー332、規制ブレード334等を収容する。現像ハウジング330は、攪拌された状態の現像剤を収容する攪拌室335を備える。
【0029】
攪拌室335は、攪拌された状態の非磁性一成分現像剤を収容する。攪拌室335には攪拌パドル333が配置される。攪拌パドル333は、トナー供給装置(図示せず)により攪拌室335に供給された現像剤を攪拌する。
【0030】
現像ローラー331は、回転軸331aと、ローラー部331bを備える。回転軸331aは、現像ハウジング330の軸受部(不図示)に回転可能に支持される。ローラー部331bは、回転軸331aの外周面に積層される円筒状の部材であり、基材ゴム(例えばシリコーンゴム)の表面にウレタン等の凹凸のあるコーティング材によってコート層を積層した構成である。ローラー部331bは、回転軸331aの回転に伴って回転軸331aと一体的に回転する。ローラー部331bの表面には、所定厚さのトナー層(現像剤層)が形成される。トナー層は、後述する規制ブレード334により層厚が規制(所定厚さに均一に調整)される。トナー層は、規制ブレード334との当接により生じる静電気により帯電する。
【0031】
現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置において、感光体ドラム31の回転方向(
図2の時計回り方向)における上流側から下流側に向かう方向(
図2の反時計回り方向)に回転する。つまり、現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置では、感光体ドラム31と同方向に回転する。
【0032】
供給ローラー332は、現像ローラー331に対向して配置される。供給ローラー332は、攪拌室335に収容された現像剤を外周面に保持する。また、供給ローラー332は、外周面に保持した現像剤を現像ローラー331に供給する。
【0033】
供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置において、現像ローラー331の回転方向(
図2の反時計回り方向)における下流側から上流側に向かう方向(
図2の反時計回り方向)に回転する。つまり、供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置では、現像ローラー331と逆方向に回転する。
【0034】
現像ローラー331は、供給ローラー332から現像剤の供給を受けると共に、外周面にトナー層を保持する。そして、現像ローラー331は、感光体ドラム31に現像剤を供給する。現像ローラー331および供給ローラー332の軸方向(
図2の紙面と直交する方向)の長さは、感光体ドラム31の軸方向長さと略同一である。現像ローラー331から感光体ドラム31にトナーを効率的に移動させるために、現像ローラー331に所定の現像電圧を印加することが好ましい。
【0035】
画像形成部30には、現像ハウジング330を挟んで感光体ドラム31と反対側(
図2の右下側、
図3の下側)に、押圧部材361と押圧バネ362から成る押圧機構36が配置されている。押圧機構36は、現像ハウジング330の長手方向の2箇所(感光体ドラム31の軸方向中央からそれぞれ85mmの位置)に配置されている。画像形成部30に現像部33を装着すると、現像ハウジング330に押圧部材361が圧接されて感光体ドラム31に近づく方向(
図2の左上方向、
図3の上方向)に押圧され、現像ローラー331が感光体ドラム31に所定の押圧力で押圧される。なお、現像部33および感光体ドラム31には現像ローラー331と感光体ドラム31との間の距離を規制する機構、即ち、感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力を規制する機構は存在しない。
【0036】
規制ブレード334は、金属製の薄板状の部材である。規制ブレード334は、基端部334aが現像ハウジング330に固定され、先端部334bが自由端となるよう構成される。規制ブレード334は、感光体ドラム31と現像ローラー331とが対向する位置よりも現像ローラー331の回転方向における上流側の位置で現像ローラー331の外周面に接触する。
【0037】
規制ブレード334は撓み変形可能であり、現像ローラー331の周方向において規制ブレード334と現像ローラー331の接触部分(ニップ)が存在する。規制ブレード334は、所定の規制圧およびニップ幅Wで現像ローラー331(ローラー部331b)の外周面に当接する。
【0038】
規制ブレード334の材質はSUS304であり、自由長を10mmとした。規制ブレード334の先端部334bには曲げ加工が施され、湾曲部分334cが形成される。この湾曲部分334cが現像ローラー331の外周面に当接する。湾曲部分334cの曲率半径は0.1mm以上である。
【0039】
図4に示すように、規制ブレード334が一定の規制圧(接触線圧)で現像ローラー331に当接するので、現像ローラー331の外周面に担持されたトナー層が均一な厚さに調整される。これにより、規制ブレード334は、現像ローラー331の外周面トナーの量を規制する。また、規制ブレード334は、現像ローラー331の外周面に担持されたトナーを摩擦することで、トナーを帯電させる。規制ブレード334の現像ローラー331に対する接触線圧とは、規制ブレード334と現像ローラー331の外周面との接触位置における規制ブレード334の単位長さ当たりの接触圧である。
【0040】
(3.現像ローラー331の構成)
以下、本実施形態の画像形成装置100の特徴部分である、現像ローラー331の硬度、感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力およびニップ幅(周方向の接触幅)について説明する。前述したように、画像の白抜けやクリーニング不良の発生は、現像ローラー331の硬度、感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力およびニップ幅と密接な関連がある。
【0041】
図5は、現像ローラー331に印加する現像電圧と画像濃度(1D;イメージデンシティ)との関係(現像感度特性)を示すグラフである。
図5において、トナーの使用初期を●、耐久および環境変動(高温高湿環境への変動)後を□で示している。
図5に示すように、現像電圧Vdcが所定値(350V)以下であると耐久、環境変動後において目標の画像濃度(1D=1.3)を得られなくなる。一方、現像電圧Vdcが所定値(550V)以上になると感光体ドラム31からのトナーの回収不良が発生し、クリーニング不良が発生する。使用可能領域OWは350V以上550V以下の範囲であり、ΔOW=550-350=200Vとなって120V以上のΔOWを確保している。
【0042】
図6は、感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力を変化させて100%ベタ画像を形成したときの現像電圧と画像濃度(ID)との関係を示すグラフである。
図6において、現像ローラー331の押圧力が弱い場合(3N)を■、押圧力が中程度の場合(6N)を△、押圧力が強い場合(9N)を◇で示している。
図6に示すように、トナーの現像性(現像感度)は現像ローラー331の押圧力により変化する。具体的には、現像ローラー331の押圧力が強すぎると現像感度が低下し、ベタ画像の白抜けが発生する。一方、現像ローラー331の押圧力が弱すぎると感光体ドラム31上の残留トナーを回収できず、クリーニング不良が発生する。
【0043】
実際の画像形成装置100においては、押圧バネ362のバネ荷重を変えることで感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力を調整することができる。押圧バネ362の取り付け位置は駆動側と反駆動側の2点で構成されており、画像の軸方向端部における押圧力が変化しやすい構成となっている。適切なバネ荷重を選択しなければ、上述したような画像の白抜けやクリーニング不良が画像端部に発生してしまう。以上より、押圧力の変化に対してロバスト性を高めることが画像品質の安定化に繋がる。
【0044】
そこで、現像ローラー331の硬度および押圧力と画像の白抜けおよびクリーニング不良の発生との関係について調査した。試験方法としては、現像ローラー331のアスカーC硬度および押圧バネ362のバネ荷重を変化させたときの、画像の白抜けおよびクリーニング不良の発生の有無を調査した。現像ローラー331のアスカーC硬度は55°、60°、65°、70°、73°の5段階に変化させ、押圧バネ362のバネ荷重は2~9Nまで1Nずつ8段階に変化させた。
【0045】
評価方法は、画像の白抜けについては25%ハーフ画像を1枚印字し、画像濃度計(ID測定器)で画像濃度(1D)を測定し、最大値と最小値の差分ΔIDが0.2よりも大きい場合に白抜け有りと判定した。クリーニング不良については20mm×20mmのベタパッチ画像を、現像ローラー331の軸方向の左、中央、右の3箇所に形成して用紙上に転写し、転写後の用紙において感光体ドラム31が1周した位置にトナー付着が認められた場合にクリーニング不良有りと判定した。
【0046】
現像ローラー331は、基材層として層厚3.5mmのシリコーンゴム層にウレタンコーティグを施した外径13mm、軸方向長さ232mm、抵抗値7.1[logΩ]のローラー部331bと、シャフト径6mmの回転軸331aとを有し、アスカーC硬度が55°、60°、65°、70°、73°である5種類のローラー(NICK社製)を用い、現像ローラー331の線速を195mm/secとした。アスカーC硬度は定圧荷重器(CL-150、高分子計器社製)を用いて測定した。抵抗値は現像ローラー311を金属ローラーに接触させて回転させ、100Vの直流電圧を印加して測定した。
【0047】
規制ブレード334の材質はSUS304であり、自由長を10mmとした。規制圧(接触線圧)は、規制ブレード334の現像ローラー331への食い込み量と厚みを変更することで調整した。
【0048】
感光体ドラム31は、外径24mm、感光層膜厚22μmの正帯電単層OPC感光体ドラム(京セラドキュメントソリューションズ社製)を用い、帯電部10はスコロトロン式コロナ帯電装置を用いた。
【0049】
トナーは、中心粒径6.8μm、円形度0.96、90℃における溶融粘度が200,000Pa・sである、粉砕法により製造したポリエステル製トナーを用いた。中心粒径は粒度分布計(LS-230、ベックマンコールター社製)を用いて測定した。円形度は湿式フロー式粒子径・形状分析装置(FPIA-3000、シスメックス社製)を用いて測定した。溶融粘度はフローテスター(CFT-500EX、島津製作所社製)を用いて測定した。結果を表1、表2および
図7に示す。
【0050】
【0051】
表1は、現像ローラー331のアスカーC硬度および押圧バネ362のバネ荷重を変化させた際の画像の白抜け、クリーニング不良の発生の有無をまとめたものである。表1において、画像の白抜けおよびクリーニング不良の両方が発生しなかった場合を○、画像の白抜けまたはクリーニング不良のいずれかが発生した場合を×とした。表1より、現像ローラー331のアスカーC硬度に応じて適切なバネ荷重が変化し、現像ローラー331が高硬度であるほど、画像不良が発生しないバネ荷重の範囲が広いことがわかる。
【0052】
【0053】
表2は、表1に示した現像ローラー331のアスカーC硬度および押圧バネ362のバネ荷重の各条件における現像ローラー331と感光体ドラム31のニップ幅をまとめたものである。表1において画像不良が発生しない条件(表2のハッチング部分)におけるニップ幅に着目すると、いずれも550~700μmの範囲に収まっていることがわかる。
【0054】
以上より、トナーの現像性とクリーニング性のバランスが担保できる適正なニップ幅が存在し、そのニップ幅を実現できる押圧力(バネ荷重)を設定することが必要である。このとき、硬度が高い現像ローラー331の方が押圧力の変化に対するニップ幅の変化が小さく、ロバスト性が高いと考えられる。3N以下の押圧力では、現像部33に駆動力が入力された際に現像ローラー331への駆動入力カップリングが芯ずれを起こしてしまうおそれがあること、バネ荷重の公差が±15%程度あることを考慮すると、現像ローラー331のアスカーC硬度は65°以上とすることが望ましい。
【0055】
ただし硬度が上がりすぎると、規制ブレード334と現像ローラー331のニップ部でトナーが受ける機械的ストレスが大きくなり、トナーの現像性低下が促進される。よってアスカーC硬度の上限は73°とするのが望ましい。また9N以上の押圧力では現像部33のトルク過多に伴う現像ローラー331の駆動不良が生じることより、押圧力の範囲は3~8Nが望ましい。
【0056】
図7は、現像ローラー331のアスカーC硬度を変化させたときの現像ローラー331の押圧力とニップ幅との関係を示すグラフである。
図7において、アスカーC硬度が55°の場合を●のデータ系列(近似直線Y=31.0X+393.2)、60°の場合を○のデータ系列(近似直線Y=36.9X+409.5)、65°の場合を▲のデータ系列(近似直線Y=47.0X+450.1)、70°の場合を△のデータ系列(近似直線Y=59.0X+470.2)、73°の場合を□のデータ系列(近似直線Y=67.3X+508.8)で示している。
【0057】
図7に示すように、X軸に押圧力X[N]、Y軸にニップ幅Y[μm]を取ると、表1および表2示した画像不良が発生しない範囲(
図7のハッチング領域)は、3.0≦X≦8.0および550≦Y≦700であり、且つ、以下の不等式(1)、(2)を満たす範囲となる。
Y≧31.0X+393.2・・・(1)
Y≦47.0X+450.1・・・(2)
【0058】
また、従来はニップ幅が2mm以下となるような高硬度の現像ローラー331ではニップ圧が高くなり、ドットの輪郭が不明瞭になる傾向があった。この欠点は、白地部(余白部)に相当する感光体ドラム31上の非露光部にトナーが付着したまま現像ローラー331に回収されないことや、一旦感光体ドラム31上の所定位置に現像されたトナーが現像ニップで移動してしまうことが原因である。従って、上記の不具合は感光体ドラム31から現像ローラー331への回収電界(V0-Vdc)を強くすることで防ぐことができる。
【0059】
具体的には、現像電圧Vdc、表面電位V0、露光後電位VLを以下の不等式(3)、(4)の範囲に設定し、回収電界(V0-Vdc)を現像電界(Vdc-VL)の2倍以上、且つ現像電界(Vdc-VL)を100V以上とすることで、上述した550~700μmのニップ幅において明瞭なドットを得ることができる。
V0-Vdc≧2(Vdc-VL)・・・(3)
Vdc-VL≧100 ・・・(4)
【0060】
(4.その他の構成)
図8は、現像ローラー331の表面自由エネルギーを変化させたときの現像ローラー331に印加する現像電圧と画像濃度(1D)との関係を示すグラフである。表面自由エネルギー(surface free energy)とは、固体における液体での表面張力に当たるもので、固体の表面自体がもつ分子のエネルギーのことである。
図8において、現像ローラー331の表面自由エネルギーが12mJ/m
2の場合を◇のデータ系列、21mJ/m
2の場合を□のデータ系列、30mJ/m
2の場合を△のデータ系列で示している。
【0061】
図8に示すように、現像ローラー331の表面自由エネルギーが高くなるほど現像電圧の使用可能領域OWは狭くなる傾向にある。これは、現像ローラー331の表面自由エネルギーが高くなるにつれてハーフトーン画像の白抜けが発生する現像ローラー331の押圧力の上限値が低下するためである。現像ローラー331の表面自由エネルギーは5mj/m
2以上27mj/m
2以下が好ましい。
【0062】
また、規制ブレード334によって規制されるトナーの量は、現像ローラー331の外周面の接触面積率によっても変化する。現像ローラー331の外周面の接触面積率とは、現像ローラー331の外周面の面積に対する当該外周面における凹部(非接触部)を除いた領域の面積の占める割合である。つまり、現像ローラー331の周面の接触面積率は、現像ローラー331の外周面と規制ブレード334との見掛け上の接触面積に対する、真の接触面積を表すものである。接触面積率は4.5~10%が好ましく、6~8%がより好ましい。
【0063】
規制ブレード334の規制圧は10~60N/mが好ましく、15~25N/mがより好ましい。なお、現像ローラー331の製法は特に限定されず、現像ローラー331の表面粗さは粒子を含むコート層をコーティングして調整してもよいし、研磨のみで粗さを調整してもよい。
【0064】
また、本実施形態では粉砕法により製造されたトナー(粉砕トナー)を使用したが、重合法により製造されたトナー(重合トナー)を使用することもできる。重合トナーは円形度が高い真球形状のため付着力が低く、現像性が良いため使用可能領域OWが広い。そのため、本発明は重合トナーに比べて低コストである粉砕トナーを用いる非磁性一成分現像方式において特に有効である。
【0065】
また、本実施形態ではトナーの中心粒径を6.8μmとしたが、表1、表2および
図7に示した結果は中心粒径が6.0~8.0μmの範囲で同様の結果が得られることを確認している。中心粒径の範囲の選択理由は、中心粒径が6.0μmより小さくなるとトナーの製造コストアップにつながり、8.0μmより大きいとトナー消費量が増えて定着性が悪化し、好ましくないためである。
【0066】
また、本実施形態ではトナーの円形度を0.96としたが、表1、表2および
図7に示した結果は円形度が0.93~0.97の範囲で同様の結果が得られることを確認している。円形度が0.93以下の場合は画像品質が低下する傾向にある。円形度が0.97以上である場合は製造コストが大幅にアップするため、それぞれ好ましくない。
【0067】
また、本実施形態ではトナーを構成するメインレジンであるポリエステルとして、90℃における溶融粘度が200,000Pa・sのものを使用したが、表1、表2および
図7に示した結果は90℃における溶融粘度が10,000~250,000Pa・sの範囲で同様の結果が得られることを確認している。溶融粘度が250,000Pa・s以上である場合はトナーの定着性が悪くなるため、省エネルギーの観点から好ましくない。
【0068】
また、感光体ドラム31と現像ローラー331の線速差は1.1~1.6倍(現像ローラー331のほうが感光体ドラム31よりも表面速度が速い)の範囲で同様の結果が得られることを確認している。線速差が1.1倍より小さくなると白地部にトナーが付着するカブリが発生するため好ましくない。一方、線速差が1.6倍以上では現像部33の駆動トルクや振動、トナーの機械的ストレスが増加するため、装置の寿命の観点から好ましくない。
【0069】
また、感光体ドラム31の表面電位V0は500~800V、露光後電位VLは70~200Vの範囲で同様の結果が得られることを確認している。
【0070】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、画像形成装置1の例として、モノクロプリンターについて説明したが、例えば、タンデム方式やロータリー式のカラープリンターにも適用できる。また、複写機、ファクシミリ或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用できる。ただし、感光体ドラム31と、非磁性一成分現像方式の現像部33を備える必要はある。
【0071】
また、上記実施形態における感光体ドラム31は、支持体として円筒状の素管を利用したが、他の形状の支持体を利用しても良い。他の形状としては、板状、無端ベルト状であってもよい。また、上記実施形態における感光体ドラム31は、感光層としてアモルファスシリコンを利用したが、例えば、支持体からの電荷の注入を阻止する電荷注入阻止層を有しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、非磁性トナーを用いた非磁性一成分現像方式の現像装置を備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、非磁性一成分現像方式における画像の白抜けやクリーニング不良を効果的に抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
30 画像形成部
31 感光体ドラム(像担持体)
32 帯電部(帯電装置)
33 現像部(現像装置)
330 現像ハウジング(現像容器)
331 現像ローラー(現像剤担持体)
332 供給ローラー
334 規制ブレード
35 露光部(露光装置)
36 押圧機構
361 押圧部材
362 押圧バネ