(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/06 20150101AFI20241119BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20241119BHJP
A63B 60/04 20150101ALI20241119BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20241119BHJP
【FI】
A63B53/06 C
A63B53/04 E
A63B60/04
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2020172632
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-22
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・リップ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・クーパー
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-509748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0344976(US,A1)
【文献】米国特許第9868036(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/06
A63B 53/04
A63B 60/04
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、基準位置に向けられたときに、
40度以上のロフトと、
本体であって、
トップライン部、
前記トップライン部の反対側のソール部、
ヒール部、
前記ヒール部の反対側のトウ部、
フェース平面を画定し、前記トップライン部と前記ソール部との間、及び前記ヒール部と前記トウ部との間で横方向に延びる打撃フェースで、フェースセンターを含む前記打撃フェース、及び、
前記打撃フェースの反対側の後面を含む前記本体と、
前記フェース平面に対して少なくとも部分的に非平行であり、
前記後面に設けられ、かつ、前記後面に沿って延びるトラック部材と、
前記トラック部材に沿って移動可能なウエイト部材であって、前記ゴルフクラブヘッドが、第1の構成では、前記ウエイト部材が前記トラック部材に沿った第1の位置にあるときに、第1のCG深度を定義する第1の重心(CG)を有し、第2の構成では、前記ウエイト部材が、前記第1の位置よりも前記打撃フェースから遠い前記トラック部材に沿った第2の位置にあるときに、第2のCG深度を定義する第2の重心(CG)を有するような前記ウエイト部材と、を含み、
前記第2のCG深度が前記第1のCG深度よりも大きく、
前記CG深度は、正の深度が前記フェース平面の後方の位置に対応し、負の深度が前記フェース平面の前方の位置に対応するように、前記フェース平面に垂直に測定される、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1のCG深度は負の値であり、前記第2のCG深度は正の値である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1のCG深度と前記第2のCG深度の差は、少なくとも3mmである、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1のCG深度と前記第2のCG深度の差は、5mmから10mmの間である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記ゴルフクラブヘッドは、前記第1の構成における第1のIzzと、前記第2の構成における第2のIzzとを有し、
前記第2のIzzは、前記第1のIzzよりも少なくとも250g*cm
2大きい、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記ゴルフクラブヘッドは、前記第1の構成における第1のIzzと、前記第2の構成における第2のIzzとを有し、
前記第2のIzzは、前記第1のIzzよりも、500g*cm
2から1000g*cm
2大きい、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記ゴルフクラブヘッドは、さらに、前記後面の前記トウ部から前記ヒール部に向かって延びる第2トラック部材と、前記第2トラック部材に沿って移動可能な第2ウエイト部材とを含み、
前記第2トラック部材に沿った前記第2ウエイト部材の第1の位置では、前記ゴルフクラブヘッドは第1のCGオフセットを有し、
前記第2トラック部材に沿った前記第2ウエイト部材の第2のよりトウ側の位置では、前記ゴルフクラブヘッドは、前記第1のCGオフセットよりも小さい第2のCGオフセットを有する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第1のCGオフセットと前記第2のCGオフセットの絶対値差として定義されるCG水平距離は、少なくとも4mmである、請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記CG水平距離は、最大20mmである、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記ウエイト部材は、15gと40gの間の質量を含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
ゴルフクラブヘッドであって、基準位置に向けられたときに、
40度以上のロフトと、
本体であって、
フェース平面を画定し、かつ、フェースセンターを含む打撃フェース、
前記打撃フェースの反対側の後面、
トップライン部、
前記トップライン部の反対側のソール部で、前記後面から後方に延びる後部を含む前記ソール部、
ヒール部、及び
前記ヒール部の反対側のトウ部、を含む前記本体と、
前記ソール部の表面に沿って後方に延在し、少なくとも部分的に、前記フェース平面に対して非平行であるトラック部材と、
前記トラック部材に沿って移動可能なウエイト部材であって、前記ゴルフクラブヘッドが、第1の構成では、前記ウエイト部材が前記トラック部材に沿った第1の位置にあるときに、第1のCG深度を定義する第1の重心(CG)を有し、第2の構成では、前記ウエイト部材が、前記第1の位置よりも前記打撃フェースから遠い前記トラック部材に沿った第2の位置にあるときに、第2のCG深度を定義する第2の重心(CG)を有するような前記ウエイト部材と、を含み、
前記第2のCG深度が前記第1のCG深度よりも大きく、
前記CG深度は、正の深度が前記フェース平面の後方の位置に対応し、負の深度が前記フェース平面の前方の位置に対応するように、前記フェース平面に垂直に測定される、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記第1のCG深度は負の値であり、前記第2のCG深度は正の値である、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記第1のCG深度と前記第2のCG深度の差は、少なくとも3mmである、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記後部の表面は、上向きの表面である、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記ゴルフクラブヘッドは、前記第1の構成における第1のIzzと、前記第2の構成における第2のIzzとを有し、
前記第2のIzzは、前記第1のIzzよりも少なくとも250g*cm
2大きい、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記ゴルフクラブヘッドは、前記第1の構成における第1のIzzと、前記第2の構成における第2のIzzとを有し、
前記第2のIzzは、前記第1のIzzよりも、500g*cm
2から1000g*cm
2大きい、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記ゴルフクラブヘッドは、さらに、前記後面の前記トウ部から前記ヒール部に向かって延びる第2トラック部材と、前記第2トラック部材に沿って移動可能な第2ウエイト部材とを含み、
前記第2トラック部材に沿った前記第2ウエイト部材の第1の位置では、前記ゴルフクラブヘッドは第1のCGオフセットを有し、
前記第2トラック部材に沿った前記第2ウエイト部材の第2のよりトウ側の位置では、前記ゴルフクラブヘッドは、前記第1のCGオフセットよりも小さい第2のCGオフセットを有する、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
前記第1のCGオフセットと前記第2のCGオフセットの絶対値差として定義されるCG水平距離は、少なくとも4mmである、請求項17に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
前記CG水平距離は、最大20mmである、請求項18に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
前記ウエイト部材は、15gと40gの間の質量を含む、請求項19に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整可能な重心を備えたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
[0001] ゴルフ業界における技術の進歩により、ユーザーがカスタマイズしたゴルフ用具が大幅に増加している。例えば、ゴルファーは、スイングトラッキングツールとボールトラッキングツールを使用してゴルフスイングの傾向を学習し、そのようなデータを使用して購入する特定の道具を選択することができる。ゴルファーが特定のプレースタイル又はスキルレベルに合わせるために行うことができる典型的な道具の選択には、ゴルフボールの組成、ゴルフクラブのシャフトの剛性、シャフトの長さ、ゴルフクラブのヘッド質量、及びヘッドの慣性モーメントが含まれる。
【0003】
[0002] ゴルフクラブの製造業者は、ゴルフ用品をカスタマイズしたいというゴルファーのこの願望を長い間認識しており、そのようなカスタマイズ性を実装するためのさまざまな方法を導入してきた。例えば、ウエイトが交換可能なゴルフクラブを使用するゴルファーは、クラブの質量特性を調整することができる場合がある。調整可能なゴルフクラブを使用して望ましくないスイング傾向を修正することに加えて、ゴルファーは、ゴルフクラブの調整を行って、異なるプレー条件に対応することができる。製造業者にとって、調整可能なゴルフクラブは、個別に設計及び製造する必要があるモデルの数を減らして、幅広い機能を可能にする。
【0004】
[0003] カスタマイズ可能な重心位置を提供する調整機能は特に重要である。意図しないスピンは、ゴルフクラブヘッドの「スイートスポット」(すなわち、ゴルフクラブヘッドの重心のゴルフクラブフェースへの垂直な投影)からの打撃点のオフセットによる既知の結果であり、クラブヘッドのフェースのスイートスポットに対して低い位置での打撃ショットは、より低く打ち出し、バックスピンが増加し、より高い位置での打撃ショットは、より高く打ち上げ、バックスピンを減らし、トウ側の打撃ショットは、右に打ち出し、ドロー又はフックスピンを増やし、また、ヒール側の打撃ショットは、左に打ち出し、フェード又はスライススピンを増やす。ゴルフクラブにCG調整機能を提供することにより、ゴルファーのフェースの特定の領域に影響を与える傾向を、所望のショット軌道に合わせることができる。
【0005】
[0004] ゴルフクラブに調整機能を提供する商業的努力は、主にウッドタイプのゴルフクラブ、特にドライバーに焦点を合わせてきた。構造と機能の違いにより、アイアンタイプとウエッジタイプのゴルフクラブに調整機能を提供することは、ウッドタイプのゴルフクラブには適用できない可能性がある課題を提示する。例えば、ウッドタイプのゴルフクラブヘッドは、アイアンタイプ又はウエッジタイプのゴルフクラブのヘッドよりも、体積当たりの重量が軽く、ロフトが低く、体積が大きい。したがって、ウッドタイプのゴルフクラブヘッドでは、個別のウエイトを提供する方が簡単である。さらに、ウエッジタイプのゴルフクラブは、一般に、ウッドタイプのゴルフクラブよりも短距離のピッチショット、チップショット、フロップショットに好まれている。したがって、ウッドタイプ又はアイアンタイプのゴルフクラブに提供されるカスタマイズオプションは、ウエッジタイプのゴルフクラブには適さない場合がある。
【発明の概要】
【0006】
[0005] 発明者らは、ウエッジタイプのゴルフクラブヘッドの質量特性をカスタマイズ及び調整するための便利な方法を提供することに努力した。ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの後ろにある移動可能なウエイトを使用してゴルフクラブヘッドの重心の三次元位置を正確に制御することにより、ゴルファーはゴルフクラブヘッドの質量特性を簡単に調整して、ゴルフショットの弾道に望ましい効果を提供できる。
【0007】
[0006] 本開示の1つ又は複数の態様では、ウエッジタイプのゴルフクラブは、基準位置に向けられたとき、打撃フェースを有する本体を含むゴルフクラブヘッドと、前記本体の少なくとも一部に沿って延びる前記打撃フェースの後方のトラック部材と、前記トラック部材に沿って移動可能なウエイト部材とを含む。前記ウエイト部材は、前記トラック部材に沿った前記ウエイト部材の第1の位置において、前記ゴルフクラブヘッドが第1のCG深さを規定する第1の重心(CG)を有するように配置され得る。前記ウエイト部材は、前記第1の位置とは異なる前記トラック部材に沿った前記ウエイト部材の第2の位置で、前記ゴルフクラブヘッドが第1のCG深度とは異なる第2のCG深度を定義する第2のCGを有するように配置され得る。前記第1のCG深度と前記第2のCG深度との間の差は、約1mmから約20mmの間であり得る。ここで、CG深度は、正のCG深度がフェース平面の前方の位置に対応し、負のCG深度がフェース平面の後方の位置に対応するように、前記フェース平面に垂直に測定される。
【0008】
[0007] CG深度調整可能ウエッジタイプゴルフクラブの1つ又は複数の実施形態によれば、第1のCG深度は負の値であり、第2のCG深度は正の値である。第1のCGの深さは-1mm~-10mmであり、第2のCGの深さは1mm~10mmである。
【0009】
[0008] 本開示の1つ又は複数の態様によれば、CG深度調整可能なウエッジタイプのルフクラブは、約0である第1のCG深度と、絶対値が1mmから20mmである第2のCG深度とを備える。
【0010】
[0009] 本開示の1つ又は複数の態様の一例では、CG深度調整可能なウエッジタイプのゴルフクラブは、前記ゴルフクラブヘッドの本体の後面の少なくとも一部を横切って延びるトラック部材を含む。前記トラック部材は、打撃フェースによって規定されるフェース平面に対して非平行であってもよく、ウエイト部材は、前記トラック部材に沿って移動することができる。別の例では、CGの深さ調節可能なウエッジタイプのゴルフクラブは、上面及び下面を有するソール部を有する本体を含む。前記トラック部材は、前記上面及び前記下面のうちの1つに沿って前記ソール部の少なくとも一部を横切って延びることができる。
【0011】
[0010] 本開示の1つ又は複数の態様の一例では、ウエッジタイプのゴルフクラブは、基準位置に向けられたとき、打撃フェースを有する本体と、前記打撃フェースの後方の本体の少なくとも一部に沿って延びるトラック部材と、前記トラック部材に沿って移動可能なウエイト部材とを含む。前記ウエイト部材は、前記ゴルフクラブヘッドの前記本体と同じかそれ以上の密度を有する材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】例示的なゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図1B】例示的なゴルフクラブヘッドのヒール側の側面図である。
【
図2】ヒールからトウの方向に調整可能な重心を有する例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図3】ソールからトップライン方向に調整可能な重心を有する例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図4】2つの方向に調整可能な重心を有する例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図5】2つの方向に調整可能な重心を有する別の例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図6】ヒール低所からトウ高所の方向に調整可能な重心を備えた例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図7】ヒール高所からトウ低所の方向に調整可能な重心を備えた例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図8】深度軸に沿って調整可能な重心を有する例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図9】深度軸に沿って調整可能な重心を有する別の例示的なゴルフクラブヘッドのヒール側の側面図である。
【
図10】インパクト時にゴルフボールに与えられるスピンをシミュレートするゴルフクラブフェースの領域の等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0022] 以下に開示される、本発明によるゴルフクラブヘッドの1つ又は複数の新規かつ非自明な態様及び特徴の代表的な例は、いかなる方法でも限定することを意図するものではない。さらに、本発明の様々な態様及び特徴は、単独で、又は様々な新規で非自明な組み合わせ及び相互のサブコンビネーションで使用することができる。
【0014】
[0023]
図1A及び1Bを参照すると、ゴルフクラブ10のゴルフクラブヘッド100は、トウ部110、ヒール部120、トップライン部130及びソール部140を含む。また、ゴルフクラブヘッド100は、ゴルフクラブヘッド100のヒール部120に近接するホーゼル150を含む。ホーゼル150は、ゴルフクラブシャフト11を受け入れるための開放端を含むことができる。
図1Aに示されるように、ゴルフクラブヘッド100は、従来のゴルフボールを打つように適合された打撃フェース160を含む。打撃フェース160には、打撃時に、ゴルフボールに追加のスピンを与える1つ又は複数の溝又はスコアラインを設けることができる。打撃フェース160は、
図1Bに示されるように、フェース平面162を規定し、また、フェースセンター163を含む。
【0015】
[0024] 本明細書で使用される場合、「フェースセンター」、例えば、フェースセンター163は、ゴルフクラブヘッドの打撃フェース上のポイントを表し、これは、打撃フェースのスコアラインのヒールからつま先までの範囲の中間と、打撃フェースのソールからトップラインまでの範囲の中間である。
【0016】
[0025] ゴルフクラブヘッド100は、重心(CG)も含み、それは、質量重心とも呼ばれ得る。ゴルフクラブヘッド100が、
図1A及び
図1Bのように、基準位置に向けられると、ゴルフクラブヘッド100は、本明細書において、地面20からのゴルフクラブヘッドの重心CGの垂直距離として定義されるCG高さCGH、及び、フェース平面への投影として測定されたゴルフクラブヘッドの重心CGのフェースセンターからの水平(ヒール-トウ)変位の測定値として定義されるCGオフセットCGOとを含む。ここで、負のCGO値は、フェースセンターのトウ側のCG位置を示し、正のCGO値は、フェースセンターのヒール側のCG位置を示す。例えば、
図1Aに示される実施形態の構成では、ゴルフクラブヘッド100は、フェースセンターのヒール側のCG位置及びその対応する正のCGO値を有する。
【0017】
[0026]
図1Bを参照すると、ゴルフクラブヘッドのCGは、フェース平面162に垂直であるCG深度軸170に沿ってある。ゴルフクラブヘッド100は、本明細書では、CG深度軸170に沿ったフェース平面162とCGとの間の変位の尺度として定義されるCG深度CGDを含む。正のCGD値は、フェース平面162の後方にあるCG位置を示す。ゴルフクラブのヘッドの質量分布に応じて、そのCG位置は、フェース平面162の前方であり得、その対応するCGD値は負になる場合があり得る。
図1Bに示される実施形態では、ゴルフクラブヘッド100は、フェース平面162の後方のCG位置及び正のCGD値を有する。
【0018】
[0027]
図1Bに示されるように、ゴルフクラブヘッド100は、ホーゼル150の中心を通って軸方向に延びるホーゼル軸152を含む。ホーゼル軸152は、仮想垂直ホーゼル平面153内にある。これにより、ゴルフクラブヘッドのロフトは、前方から後方の垂直面に投影されたときに(例えば、
図1Bに示されるような紙面内で)、そのホーゼル平面153とフェース平面162とによって形成される角度になる。ゴルフクラブセットは、通常、さまざまなロフトのヘッドを持つゴルフクラブで構成されており、ロフトの高いゴルフクラブは、一般的に短い距離を対象としている。さらに、ウエッジタイプのゴルフクラブは、ピッチショット、ロブショット、又はチップショットに合わせた約44度から約64度の範囲のロフトを備えている場合があり得る。以下でより詳細に説明する調整可能なCG配置は、ロフトが約40度以上のゴルフクラブヘッドに特に有利である可能性がある。
【0019】
[0028] 本明細書で使用される場合、「基準位置」は、スコアラインが水平であり、仮想垂直ホーゼル平面がスコアラインに平行であるように、ソールが仮想地面にあるゴルフクラブヘッドの向きを表す。特に明記しない限り、本開示の様々な実施形態の全てのパラメータは、基準位置にあるゴルフクラブヘッドで特定される。
【0020】
[0029] 有利には、本開示の様々な実施形態による移動可能なウエイト部材は、例えば、ゴルフクラブのヘッドのCGを調整するために、ユーザーが動かすことができる。例えば、
図1Bは、ゴルフクラブヘッド100の後面164に配置された移動可能なウエイト部材180を示す。移動可能なウエイト部材180は、後面164に沿って動かすことができ、それにより、CG位置を変化させ得る。
【0021】
[0030]
図1Bに示されるように、ソール部140の一部は、ソールキャビティ142を規定し得る。1つ又は複数の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、後面の周辺の少なくとも一部に形成された周辺重み付け要素を含むことができ、それによって、その内側又は中央に後壁キャビティを画定する。代替的に、ゴルフクラブヘッドは、周辺重み付け要素がなく、ソールキャビティがない従来のマッスルバックウエッジであるか、又は、後面の輪郭が、周辺重み付けではなくマッスルブレード構成によって支配されている場合がある。以下に記載される実施形態は、見やすくするために、後方に延びるソールなしで、
図2-9に示されるが、ゴルフクラブヘッドは後方に延びるソールを含み得ることを理解されたい。
【0022】
[0031]
図2を参照すると、ゴルフクラブヘッド200は、その後面264にトラック部材290を含む。トラック部材290は、トウ部210からヒール部220まで延在し、概してヒールからトウ方向に細長く延びている。トラック部材290は、60mmまでの長さを有する。好ましくは、トラック部材290は、長さが少なくとも30mmである。ゴルフクラブヘッド200は、トラック部材290に沿って移動可能であるウエイト部材280を含む。トラック部材290は、約4cmから約8cmの長さを有することができ、移動可能なウエイト部材280は、トラック部材290に沿った任意の点に配置され得る。ゴルフクラブヘッド200は、ヒールからトウの方向に調整可能なCGを含む。したがって、ゴルフクラブヘッド200は、可変のCGオフセットCGOを含む。トラック部材290に沿ったウエイト部材280の位置に応じて、CGオフセットの大きさは、0(横方向に整列されたCG及びフェースセンター)から約2cmの範囲であり得る。上記のように、CGオフセットは、CGオフセットは、CGがフェースセンターのトウ側で負になり、CGがフェースセンターのヒール側で正になる。
【0023】
[0032]
図2のゴルフクラブヘッド200は、ウエイト部材280がトラック部材290に沿った第1の位置にある第1のCGO、ウエイト部材280aがトラック部材290に沿った第2の位置にある第2のCGO、及び、CG水平距離が少なくとも4mmを含む。ここで、CG水平距離は、第1のCGオフセットと第2のCGオフセットとの間の差である。好ましい実施形態では、CG水平距離は、少なくとも4mmであり、かつ、20mm未満であり、より好ましくは8mmから16mmの間である。この範囲は、クラブヘッドが適度に完全な軌道のずれのスペクトルにわたって調整できることを最も確実にするが、クラブヘッドの構造的完全性と包括的な質量関連の要件に必要な裁量的なヘッド質量を不当に拘束するものではない。
【0024】
[0033] 好ましい実施形態では、ゴルフクラブヘッド200が基準位置にあるとき、トラック部材290は実質的に水平である。そのような実施形態では、ウエイト部材280がトラック部材290に沿って移動されるとき、ゴルフクラブヘッド200のCG高さCGHは実質的に一定のままである。この実施形態では、ゴルフクラブヘッドのCG位置は、しばしば望ましくないスライス又はフックショットをもたらすヒールからトウ方向へのミスに関連するスイング傾向を修正するように移動され得る。
【0025】
[0034]
図2に示されるように、ゴルフクラブヘッド200は、後面264の後部キャビティ領域を規定する周囲重み付け要素266を含むことができる。そのような周囲重み付け要素は、アイアンタイプのゴルフクラブの一般的な特徴であり、一般的に、よりハンディキャップの高いプレーヤーのためにゴルフクラブにより高い慣性モーメントを提供するために含まれている。
図2-10に示す実施形態では、トラック部材及び移動可能なウエイト部材が、このような後部キャビティ領域に設けられている。しかしながら、ブレード型ゴルフクラブヘッドの後面にも、クラブヘッドのCG位置を調整するためのトラック部材及び移動可能なウエイト部材を設けてもよい。
【0026】
[0035]
図3を参照すると、ゴルフクラブヘッド300は、その後面364にトラック部材390を含む。トラック部材390は、トップライン部330からソール部340に向かって延びる。ゴルフクラブヘッド300は、トラック部材390に沿って移動可能であるウエイト部材380を含む。トラック部材390は、約20mmから40mmの間の長さを有し、移動可能なウエイト部材380は、トラック部材390に沿った位置に移動させることができる。ゴルフクラブヘッド300は、トップラインからソール方向に調整可能なCGを含む。したがって、ゴルフクラブヘッド300は、非永久的又は非塑性的に変形可能な方法で変化するCG高さCGHを提供する。トラック部材390に沿ったウエイト部材380の位置に応じて、CGHは、それがフェース中心の高さと実質的に同じであるか、又はフェース中心の高さより2cmまで高い、又は、低くなるように調整可能であり得る。このような調整機能は、プレーの条件(例えば、コースの湿り具合、風速など)を一致させ、スピン特性とダイナミックロフティングを最適化するのに役立つ。
【0027】
[0036]
図3のゴルフクラブヘッド300は、ウエイト部材380がトラック部材390に沿った第1の位置にある第1のCGH、及び、ウエイト部材380aがトラック部材390に沿った第2の位置にある第2のCGHを含む。第1CGHと第2CGHとの差は、少なくとも1mmである。好ましくは、CG高さの差は1mm~10mmの間である。
【0028】
[0037]
図4を参照すると、ゴルフクラブヘッド400は、その後面464にトラック部材490を含む。トラック部材490は、ヒール部420とトウ部410との間に延びるヒール-トウ部を含む。トラック部材490は、トップライン部430とソール部440との間に延びるトップライン-ソール部をさらに含む。トップライン-ソール部及びヒール-トウ部は、接合部で交差することが好ましい。移動可能なウエイト部材480は、トラック部材490に結合される。トラック部材490に沿った移動可能なウエイト部材480の位置を変更して、クラブヘッドのCG位置を調整することができる。特に、トラック部材490及びウエイト部材480は、ウエイト部材480が取り外されることなく、トップライン-ソール部とヒール-トウ部との間でスライド可能に移動され得るように構成され得る。
【0029】
[0038]
図4のゴルフクラブヘッド400は、トラック部材490のヒール-トウ部分に沿った第1の位置にウエイト部材480を有する第1のCGO、ウエイト部材480aがトラック部材490のヒール-トウ部分に沿った第2の位置にある第2のCGO、及び、4mm以上のCG水平距離を含む、ここで、CG水平距離は、第1のCGオフセットと第2のCGオフセットとの間の差である。好ましい実施形態では、CG水平距離は、少なくとも4mmであり、また、20mm未満である。
【0030】
[0039]
図4のゴルフクラブヘッド400は、ウエイト部材480がトラック部材490のトップライン-ソール部に沿った第1の位置にある第1のCGH、及び、ウエイト部材480bがトラック部材490のトップライン-ソール部に沿った第2の位置にある第2のCGHを含む。第1のCGHと第2のCGHの差は、少なくとも1mmである。好ましくは、CG高さの差は1mm~10mmの間である。
【0031】
[0040] 別の実施形態では、
図5に示すように、ゴルフクラブヘッド500は、その後面564上に第1のトラック部材590及び第2のトラック部材592を含む。第1のトラック部材590は、ヒール部520とトウ部510との間を延びる。第2のトラック部材592は、トップライン部530とソール部540との間を延びる。この実施形態では、第1の移動可能なウエイト部材580及び第2の移動可能なウエイト部材582は、それぞれ第1のトラック部材590及び第2のトラック部材592に結合され、移動可能なウエイト部材580と582の位置が変更され、クラブヘッドのCG位置が調整される。
図5では、ゴルフクラブヘッド500は、第1のウエイト部材580が第1のトラック部材590に沿った第1の位置にあり、第2のウエイト部材582が第2のトラック部材592に沿った第1の位置にある第1のCGO及び第1のCGHを有する。ゴルフクラブヘッド500は、ウエイト部材580aが第1のトラック部材590に沿って第2の位置に移動されるとき、第2のCGOを有する。第2のウエイト部材582aが第2のトラック部材592に沿って第2の位置に移動されるとき、ゴルフクラブヘッドは第2のCGHを有する。有利には、この実施形態では、CGO及びCGHの一方は、第1のウエイト部材580又は第2のウエイト部材582を選択的に移動させることによって調整され得る。代替的に、ゴルフクラブヘッド500のCGO及びCGHは、2つのウエイト部材580及び582をトラック部材590及び592に沿って移動させることにより、様々な程度に関連して調整されてもよい。
【0032】
[0041]
図2~5は、ゴルフクラブヘッドのCG高さ及び/又はその横方向CG位置を調整するために使用できる移動可能なウエイト部材を備えた1つ又は複数のトラック部材を有するゴルフクラブヘッドの実施形態を示すが、1つ又は複数のトラック部材の構成は、必ずしもそのように制限されているわけではない。例えば、
図6は、ゴルフクラブヘッド600がその後面664にトラック部材690を含む実施形態を示している。トラック部材690は、後面664に沿って斜めに延在し、第1の端部691及び第2の端部692を含み、第1の端部691は、第2の端部692よりもゴルフクラブヘッド600のヒール部620及びソール部640に向かって配置される。そのような実施形態では、トラック部材690に取り付けられた移動可能なウエイト部材680は、ゴルフクラブヘッド600の第1のCGO及び第1のCGHを有する第1のCG位置に関連付けられる。ウエイト部材680aがトラック部材690のよりトウ610の側の第2の位置にあるとき、ゴルフクラブヘッド600は、第2のCG位置が第1のCGHよりも大きい第2のCGH及び第1のCGOよりも負である第2のCGOを有する。
【0033】
[0042] 有利には、本明細書で論じられる実施形態は、ターゲットユーザに適合するように調整されてもよい。例えば、「ゲームの向上」に使用することを目的としたゴルフクラブ(熟練度の低いゴルファー向け)では、対象の消費者がスライスやフックの修正に関心があるため、水平方向のシフトが垂直方向よりも重要になる場合があり得るが、一方、より熟練したゴルファーに販売することを意図したウエッジでは、スピン調整がより重要な関心事である。
【0034】
[0043] ゴルフクラブヘッド600はまた、スイングウエイトニュートラルであるように調整可能であり得る。本明細書において、「スイングウエイトニュートラル」は、任意にCG位置を含む質量特性を変化させることができるが、スイングウエイトが実質的に一定に維持されるような方法のウエイト調整機能を指す。例えば、その特徴は、意図されたシャフト軸(それは、ホーゼル軸と一致すると見なされ得る)に対してCGの特定の位置を実質的にシフトさせない方法で質量の再配置を特に可能にし得る。スイングウエイトニュートラルのゴルフクラブヘッドとは、一定のシャフト長のゴルフクラブの一部として提供された場合、ウエイトメンバーが後部表面に配置されたトラック部材に沿って移動してもスイングウエイトが実質的に変化しないゴルフクラブヘッドを指す。本明細書では、「スイングウエイト」とは、ロリスミックスケール(Lorythmic scale)の単位で、スイングウエイトスケールで測定されたゴルフクラブの重量分布に関連する一般的なゴルフクラブのフィッティング変数を指す。スイングウエイトニュートラルゴルフクラブヘッドは、例えば、移動可能なウエイト部材がゴルフクラブヘッドのトラック部材の任意の位置に配置されているとき、「D4」のスイングウエイトを有し得る。言い換えれば、スイングウエイトニュートラルゴルフクラブヘッドを有するゴルフクラブは、1.75インチオンス未満で変動するスイングウエイト、好ましくは0.75インチオンス未満で変動するスイングウエイトを有する。トラック部材690は、適切に重み付けされたシャフト及びグリップを備えたゴルフクラブの一部として提供されるとき、ゴルフクラブヘッドがスイングウエイトニュートラルであるように構成される。
【0035】
[0044] 別の実施例では、スイングウエイトニュートラル調整機能は、それらの間で交換されたウエイトが、一定の長さのシャフトに関連付けられたときに、クラブヘッドの実質的に一定のスイングウエイト又は期待されるスイングウエイトをもたらすような方法で、互いに相対的に配向された複数のウエイトポートを有するゴルフクラブを構成してもよい。他の実施例では、クラブヘッドについての異なる位置の複数のウエイトポートと、異なる質量の複数のウエイト要素とが、実質的に一定のスイングウエイトをもたらす予め定められた公知の方法で配置されていてもよい。そのような特定の場合には、所望のスイングウエイトを維持する方法でウエイトを組み立てる方法をユーザーに導くために、指示部又は印が提供されるのが好ましい。この特徴は、従来のシャフト長が短い場合にスイングウエイトの維持が大きな懸念事項となり、ウエイト要素がクラブヘッド全体の質量のより大きな割合を構成する可能性があるウエッジタイプのクラブヘッドに特に適している。
【0036】
[0045] ゴルフクラブのスイングウエイトを変更することなく、ゴルフクラブヘッドのトラック部材に沿ってウエイト部材を単に移動させることによって、ゴルフクラブヘッドのCG位置を調整する能力は、特定のスイングウエイトのための好みを有するゴルファーにとって有利であり得る。多くの場合、スイングウエイトは、ゴルフスイング中にゴルフクラブがゴルファーにどのように感じるかに関連しているため、スイングウエイトを変更すると、ゴルフクラブのパフォーマンスとゴルファーの信頼に悪影響を及ぼす可能性がある。同時に、ゴルファーは、例えば、ゴルフクラブフェースのトウ側でボールを打撃する傾向を最適化するために、ゴルフクラブヘッドのCGをよりクラブヘッドのトウ側に向けて配置することを好むかもしれない。
図6のゴルフクラブヘッド600によって例示されるようなスイングウエイトニュートラルゴルフクラブヘッドは、ゴルファーが、クラブのスイングウエイトの変化を補償することなく、ゴルフクラブのCGの位置(すなわち、CGO)を横方向に調整することを可能にする。
図6に示されるように、ウエイト部材680は、クラブヘッドのホーゼル軸652に垂直な仮想平面654内に実質的に完全に位置するトラックに沿って移動することが許容され、そして、クラブヘッド600が使用状態で一定長さの従来のシャフトに関連付けられている場合には、意図されたシャフト軸に沿ってシャフト軸を回転させる。ウエイトトラックの他の構成も可能であるが、好ましくは、スイングウエイトニュートラルであるために、ホーゼル軸に垂直な仮想平面に実質的に制限される。
【0037】
[0046] 本開示の他の実施形態では(又は、上記実施形態のいずれかの追加的な特徴として)、ゴルフクラブのヘッドのトラック部材に沿って移動可能なウエイト部材の位置を調整することは、ゴルファーがゴルフクラブのスイングウエイトを好ましいスイングウエイトに調整することを可能にする。これらの実施形態では、トラック部材は、ゴルフクラブヘッドの後面の上部ヒール部から下部トウ部まで延びている。ウエイト部材がトラック部材の上部ヒール端に配置されているとき、ゴルフクラブは、第1のスイングウエイトを有し、それは、ウエイト部材がトラック部材の下部トウ端に配置されているときの第2のスイングウエイトよりも実質的に低い。好ましくは、第1のスイングウエイトは、第2のスイングウエイトよりも少なくとも1.75インチオンス小さい。さらに好ましくは、第1のスイングウエイトは、第2のスイングウエイトよりも少なくとも3.50インチオンス小さい。有利には、ウエイト部材は、ゴルファーがゴルフクラブのスイングウエイトを微調整することを可能にするために、トラック部材に沿った他の位置に配置されてもよい。
【0038】
[0047] 1つの実施形態では、ゴルフクラブは、ウエイト部材がトラック部材の最もヒール方向の範囲に配置されたときに、最小のスイングウエイトを有する。ウエイト部材がトラック部材の中央位置に配置されたときに、ゴルフクラブは、第2のスイングウエイトを有し、それは、第1のスイングウエイトよりも少なくとも1.75インチオンス大きい。前記ゴルフクラブは、前記ウエイト部材が前記トラック部材の最もトウ側の範囲に配置されたときに、前記第1のスイングウエイトよりも少なくとも3.50インチオンス大きく、また、前記第2のスイングウエイトよりも大きい第3のスイングウエイトを有する。
【0039】
[0048]
図7は、調整可能なスイングウエイトを備えた例示的なゴルフクラブヘッド700を示す。ゴルフクラブヘッド700は、第1の端部791及び第2の端部792を備えたトラック部材790を有し、第1の端部791は、第2の端部792よりもゴルフクラブヘッド700のヒール部720及びトップライン部730に向かって配置されている。そのような実施形態では、トラック部材790に取り付けられた移動可能なウエイト部材780は、ゴルフクラブヘッド700の第1のCGO及び第1のCGHを有する第1のCG位置に関連付けられる。ウエイト部材780aがトラック部材790のよりトウ710の側の第2の位置にあるとき、ゴルフクラブヘッド700は、第1のCGHよりも低い第2のCGH及び第1のCGOよりも負の第2のCGOを有する第2のCG位置を有する。
【0040】
[0049] また、ゴルフクラブヘッド700の後面764又はトラック部材790は、スイングウエイトの変化に相関するトラック部材に沿った位置を示すために、グラデーション又は他の印(図示せず)によって表示されてもよい。ゴルフクラブのスイングウエイトを調整する機能は、ゴルファーに大きなメリットをもたらす。一般に、ゴルファーは、ゴルフクラブを希望のスイングウエイトに合わせるために、ある程度の鉛テープをゴルフクラブのヘッド又はグリップに貼り付ける。ただし、鉛テープはプレー中に簡単に剥がれる可能性があり、視覚的に気が散ったり、美的に不快な場合がある。さらに、テープ配置の長さと位置を最適化する必要がある。これは、スイングウエイトスケールにアクセスして使用しないと煩雑になる場合があり得る。上述のスイングウエイト調整可能なゴルフクラブヘッドの実施形態は、鉛テープのそのような使用を不要にする。
【0041】
[0050]
図8を参照すると、ゴルフクラブヘッド800は、後面864から後方に延び、ソールキャビティ842を画定する後面843を含む、後方に延びるソール部840を含む。トラック部材890は、ソール部840に沿って後面864から一般的に後方に向かって上向きの表面に沿って延びている。トラック部材890の少なくとも一部は、後面864に対向する打撃フェースによって定義されるゴルフクラブヘッド800のフェース平面に対して非平行である。トラック部材890に取り付けられた移動可能なウエイト部材880は、ゴルフクラブヘッド800のCGDを調整するために使用される。ユーザーがウエイト部材880をトラック部材890に沿ってより後方に移動させると、ゴルフクラブヘッド890の関連するCGDが増加する(すなわち、より正の値になる)。したがって、ウエイト部材880が後面864から離れて配置されている場合、関連するCGDは、ウエイト部材880が後面864により隣接して配置されている場合よりも正の値になる。他の実施形態では、トラック部材は、ソール部の下面に沿って延びる。
【0042】
[0051] トラック部材890は、長さが30mmまでである。好ましい実施形態では、トラック部材890は、長さが15mmから25mmの間である。CGDの大きさは、最大10mmまで調整可能である。ウエイト部材を移動させることによる最大CGDの変化は、少なくとも3mmである。1つ又は複数の実施形態では、最大CGD変化は少なくとも5mmである。
【0043】
[0052] 一つ又は複数の実施形態では、CGDは、ウエイト部材の後方への変位に伴って直線的に増加する。そのような実施形態では、トラック部材は、ゴルフクラブヘッドの深度軸と平行に延びる。
【0044】
[0053]
図9は、ソール部940に向かって配置されたマッスル部分944と、クラブヘッドのトップ部分を構成するブレード部945とを有する例示的なゴルフクラブヘッド900を示している。トラック部材990は、マッスル部分944の表面に沿って一般的に下向きに延びている。トラック部材990に取り付けられた移動可能なウエイト部材980は、ゴルフクラブヘッド900のCGDを調整するために使用される。ユーザーがウエイト部材980をトラック部材990に沿ってゴルフクラブヘッドのブレード部から遠ざけるように移動させると、ゴルフクラブヘッド900の関連するCGDが増加する(すなわち、より正の値になる)。したがって、ウエイト部材980がブレード部945から離れて配置されている場合、関連するCGDは、ウエイト部材980がブレード部945により隣接して配置されている場合よりも正の値となる。
【0045】
[0054]
図8及び
図9に示すような、CGの深さが調節可能である本開示の実施形態では、ウエイト部材が後面に隣接して配置されているときに、CGの位置がゴルフクラブヘッドの打撃フェースの前方に位置することが可能である。ウエイト部材が後面から離れた位置に配置されている場合、ゴルフクラブヘッドのCG位置を打撃面の後方にシフトさせることができる。言い換えれば、1つ以上の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、移動可能にトラックに取り付けられたウエイト部材をゴルフクラブヘッドの後面からより近く又はより遠くにそれぞれ位置決めすることによって、負の値から正の値に反転させることができるCGDを有する。
【0046】
[0055] CGD調整可能なゴルフクラブヘッドの1つ又は複数の実施形態では、トラック部材の少なくとも一部は、ゴルフクラブヘッドのフェース平面に対して非平行である。例えば、
図8のゴルフクラブヘッド800が基準位置にあるとき、トラック部材890の少なくとも一部は、水平方向に延びてもよい。他の実施形態では、トラック部材890はまた、上述のようにCGOの調整可能性を提供するために、ヒールからトウ方向に横方向に延びてもよい。CGD調整可能なゴルフクラブヘッドのさらに他の実施形態では、第2のトラック部材は、横方向のCGオフセットでCGを調整するために、第2のトラック部材に沿って移動可能な第2のウエイト部材を備えて、後面のトウ部からヒール部に向かって延びていてもよい。この点において、本明細書に開示されたトラック部材のうちの1つ又は複数のトラック部材は、本開示のゴルフクラブヘッドにおいて、別のトラック部材を備えていてもよい。例えば、
図2から
図7に示されたトラック部材の配置のいずれかが、
図8のトラック部材890と協働して使用されてもよい。
【0047】
[0056] 別の例として、
図9のゴルフクラブヘッド900が基準位置にあるとき、トラック部材990の少なくとも一部は、垂直方向に延びてもよい。他の実施形態では、トラック部材990はまた、上述したようにCGOの調整可能性を提供するために、ヒールからトウ方向に横方向に延びてもよい。
【0048】
[0057] ゴルフクラブヘッドのCG位置を効果的に変化させるためには、十分に密度の高い部材が必要である。上述した実施形態に従った移動可能なウエイト部材は、ゴルフクラブヘッドの本体の密度と等しいか、又はそれよりも大きい密度を有することができる。好ましい実施形態では、重量密度は、7,750kg/m3より大きい。例えば、移動可能なウエイト部材は、主にステンレス鋼、タングステン、又はタングステン合金から構成され得る。いくつかの実施形態では、ウエイト部材は、2つ以上の材料からなり、ウエイト部材の一方の側面は、ウエイト部材の回転がCG調整可能性の追加の度合いを提供するように、他方の側面よりも重いものであってもよい。
【0049】
[0058] 移動可能な錘部材は、50gまでの質量を有することができ、少なくとも5gである。好ましくは、質量は15gから40gの間であり、この特定の範囲は、スライス又はドローの一般的な程度を打ち消すのに有効な方法でクラブヘッドの重心位置を変化させるのに十分な質量であることを保証し、インパクトされたゴルフボールにスピンのかなりの減少又は追加を効果的に与え、及び/又は少なくとも1つの標準的なスイングウエイトの間隔でスイングウエイトを増加させることを保証する。ウエイト部材は、円形であってもよいし、別の形状であってもよい。ウエイト部材を非円形の平面形状、例えば四角や六角形のような多角形の形状を示すように構成することにより、ウエイト部材は、それが配置されているトラック部材に対して相対的に回転を阻害する属性を内蔵していてもよく、それによりウエイト部材の確実な配置が追加されてもよい。
【0050】
[0059] いくつかの実施形態によれば、トラック部材は、溝又はリブからなる。一つ又は複数の実施形態では、トラック部材は、ウエイト部材の表面が平らになるように、周囲の表面から凹んでいる。移動可能な錘部材は、錘部材がトラック部材に保持され、錘部材がトラック部材に沿った任意の点に移動することを可能にする連結部材からなる。例えば、トラック部材は、T字形の断面を有するリブを備えてもよく、結合部材は、適合可能な形状の溝を備えてもよい。
【0051】
[0060]
USGA規則によると、ゴルフクラブヘッドの全ての部分は固定されていなければならない。言い換えれば、ゴルフクラブヘッドのどの部分も、外力を受けたときに、その他の部分に対して相対的な動きを示すことはできない。上記の実施形態では、止めねじなどの締結部材は、ゴルフクラブヘッドが使用されているときにウエイト部材が静止しているように、ウエイト部材をトラック部材のある位置に固定する。締結部材は、分離している必要はなく、移動可能なウエイト部材の一部として一体化されていてもよい。
【0052】
[0061] 限られた数の固定ウエイトポートに交換可能なウエイト部材を組み込んだような他の質量調整可能なゴルフクラブとは対照的に、ゴルフクラブヘッドの後側にある1以上のトラック部材への1以上の移動可能なウエイト部材の連結によって調整可能なCG位置を提供することによって、ゴルファーは、ゴルフクラブヘッドの質量分布を、構成の範囲内の任意の点に調整することができる。そうすることにより、ゴルファーは、例えば、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメント(例えば、ゴルフクラブヘッドのCGを通る垂直軸について、Izz、又はフェースに平行なゴルフクラブヘッドのCGを通る水平軸について、Ixx)を最適化して、自分のスイング傾向及びスイング速度に一致させることができ、それにより、スイング中のゴルフクラブヘッドのフィーリングを最適化することができる。ウエイト部材が一般的に横方向に移動するゴルフクラブヘッドの実施形態では、Izzは、最大1,200g*cm2まで調整することができる。ウエイト部材が一般的にトップラインからソール方向に移動している実施形態では、Ixxは、最大500g*cm2まで調整することができる。
【0053】
[0062] 例えば、表1は、横方向に(すなわち、ヒールからトウの方向に)移動可能である後面トラック搭載ウエイト部材を有する例示的なゴルフクラブヘッドの物理的特性を列挙している。ウエイト部材の質量は35gで、表示されているデータのトラック部材の中央、ヒール端、又はトウ端に配置されている。重要なのは、ウエイト部材を移動すると、CGOが横方向にシフトし、CGを通る垂直軸周りのMOIが最大852g*cm2変化するのに対し、CGを通る水平軸周りのMOI(面に平行)は、殆ど変化しない。
【0054】
【0055】
[0063] 1つ又は複数の実施形態では、トラックに取り付けられたウエイト部材を有するウエッジタイプのゴルフクラブヘッドは、調整可能なCGD及び調整可能なMOIを有する。これらの実施形態では、ウエイト部材を移動させてCGDを増加させることにより、ゴルフクラブヘッドのIzzを最大で1,000g*cm2まで効果的に増加させる。好ましくは、そのようなCGD調節可能なゴルフクラブヘッドの最大のIzzの変化は、少なくとも250g*cm2である。さらに、より好ましくは、最大のIzzの変化は、少なくとも500g*cm2である。
【0056】
[0064] ゴルファーは、プレーの状況を考慮して、ゴルフクラブのヘッドのCG位置を調整したほうがよい場合もある。例えば、コースの水分レベルや風速などの要素は、特定のレベルのスピンを有するゴルフショットを好む可能性がある。有利には、CG調節可能なウエッジタイプのゴルフクラブは、例えば、鉛テープを貼る必要なしに、そのようなカスタマイズを提供する。
【0057】
[0065]
図10に示す等高線図は、ウエッジタイプのゴルフクラブヘッドからのゴルフショットにおけるCGDの重要性を示している。プロットでは、ロフトが56度のゴルフクラブヘッドからの横方向中心(つまり、クラブヘッドのCGに揃えられる)のゴルフショットによって与えられるスピンをシミュレートする。CGDの正の値を持つクラブヘッドからのショットはギア効果を示し、そのスピンはフェースのより高い位置での打撃ほど減少する。CGDの値が負のクラブヘッドからのショットは、リバースギア効果を示し、そのスピンは、フェースのより高い位置での打撃ほど増加する。したがって、CGD調整可能なゴルフクラブヘッドを使用することにより、スピンの好みをスイング傾向に合わせることが可能である。この特定の関係、つまりCGDとその結果のスピン生成は、ウエッジタイプのクラブヘッドの場合に特に役立つ。これは、ショットの分散とカップと言う近接性が重要な関心事であるためである。したがって、本明細書で論じられる関連するウエイトトラック構成は、ウエッジタイプのクラブヘッド、たとえば、ロフトが44°を超えるアイアンタイプのクラブヘッドに特に適していると考えることができる。
【0058】
[0066] 図面に示されたトラック部材は直線的に延びているが、曲線的なトラック部材は、ゴルフクラブヘッドの様々な形状、表面輪郭、及び重量分布に対応することも可能であり、したがって、本開示の精神から逸脱していると考えられることなく、最適な配向からある程度変化してもよい。
【0059】
[0067]
図1~9に示され、上記の実施形態で説明されたゴルフクラブヘッドは、ウエッジタイプのゴルフクラブヘッドとしての従来の使用に関して論じられているが、これらのゴルフクラブヘッドは、ミッドアイアン又はショートアイアンタイプのゴルフクラブヘッドのような別のタイプのゴルフクラブヘッドであってもよい。また、図示されたゴルフクラブヘッドは、右利きのゴルフクラブヘッドとして描かれているが、ゴルフクラブヘッド上の任意の位置への言及は、ミラーリングされ、左利きのゴルフクラブヘッドに適用されてもよい。
【0060】
[0068] 本明細書に示された特定の態様は、例示的な議論を目的としたものであり、本開示の様々な実施形態の原理及び概念的側面の最も有用で容易に理解されると考えられる説明を提供するために提示されたものではない。この点で、様々な実施形態の様々な特徴を基本的に理解するために必要な以上の詳細を示すことは試みられておらず、図面を用いた説明は、これらが実際にどのように実施され得るかを当業者には明らかにするものである。
【符号の説明】
【0061】
10 ゴルフクラブ
100 ゴルフクラブヘッド
110 トウ部
120 ヒール部
130 トップライン部
140 ソール部
160 打撃フェース
162 フェース平面
163 フェースセンター
164 後面
180 ウエイト部材
290 トラック部材