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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20241119BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
F25B47/02 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020177156
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068466
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】茅野 健太
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 邦義
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】牧原 正径
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104670(JP,A)
【文献】特開2013-217506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
空調対象空間を暖房する暖房運転に際して、前記圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる暖房用熱交換器(12)を有し、高圧冷媒を熱源として前記空調対象空間に送風される送風空気を加熱する加熱部(30)と、
前記暖房運転に際して外気から吸熱する外気熱交換器(19、43)を有する外気用熱交換部(25X)と、
制御部(70)と、を有し、
前記制御部は、
熱源からの熱によって前記外気熱交換器に付着した霜を融解させる除霜運転を実行する除霜実行部(70a)と、
前記除霜運転による霜の融解に伴って生じた水分を、前記水分に作用する重力を利用して前記外気熱交換器の表面から排水する排水期間を設定する排水期間設定部(70b)と、
前記排水期間設定部にて設定された前記排水期間を経過した場合に、前記外気熱交換器における外気からの吸熱を伴う空調運転を再開する運転制御部(70e)と、を有し、
前記排水期間設定部(70b)は、前記除霜運転に際して前記外気熱交換器に投入した熱量と、前記除霜運転に要した時間を用いて、前記外気熱交換器に付着している水分量を推定する水分量推定部(70c)を有し、
前記水分量推定部にて推定された水分量に応じて、前記排水期間を設定する空調装置。
【請求項2】
前記排水期間設定部(70b)は、前記除霜運転及び前記排水期間にて前記熱源である熱源装置(36)の作動に要する除霜用動力と、前記除霜運転の後に再開した場合の空調運転に要する動力を合算した必要総動力が最も小さくなるように、前記排水期間を設定する請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記排水期間設定部(70b)は、重力を利用した前記外気熱交換器の表面からの排水速度(Vd)が予め定められた基準排水速度(KVd)よりも遅くなった場合に、前記排水期間を終了する請求項1又は2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記制御部(70)は、前記除霜運転及び前記排水期間において、前記外気との熱交換による前記水分の再凍結を防止する為に、前記外気熱交換器に対する前記外気の流入を制限する流入調整制御部(70f)を有している請求項1ないし3の何れか1つに記載の空調装置。
【請求項5】
前記外気熱交換器に対して前記外気を送風する外気送風機(19a)を有し、
前記流入調整制御部(70f)は、前記排水期間において、前記外気熱交換器に付着した前記水分の状態が排水を促進可能な状態である場合、前記排水期間の間における前記外気送風機による前記外気熱交換器への前記外気の流入を許容する請求項4に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外気熱交換器を有する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房運転時に、外気熱交換器(例えば、LTラジエータ)にて外気から吸熱する空調装置が存在する。このような空調装置に関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1の車両用空調装置では、暖房運転時における低温外気からの吸熱に起因して着霜した外気熱交換器を除霜するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6399060号公報
【発明の概要】
【0004】
ここで、特許文献1の技術では、外気熱交換器の除霜に際し、水冷コンデンサ等の熱源で生じた熱を、冷却水を介して外気熱交換器に伝達している。これにより、特許文献1では、熱源で生じた熱を用いて、外気熱交換器に着霜した霜を融解させることができる。
【0005】
この時、霜の融解によって生じた水分は、何等の措置も講じなければ、外気熱交換器の表面に残留したままの状態となる。外気が低温である環境において、外気熱交換器の表面に水分が残留した状態で暖房運転を行うと、外気熱交換器での吸熱に伴って、残留していた水分が再凍結してしまう。
【0006】
又、除霜運転時において、外気熱交換器表面に水分が残留する場合、除霜運転と暖房運転を繰り返すことによって、再凍結で生じる氷の量が蓄積していくことになる為、外気熱交換器の熱交換性能を累積的に低下させてしまうことが想定される。外気熱交換器の熱交換性能の低下は、空調装置における暖房性能を低下させる要因となり、暖房性能を維持する為には、消費エネルギを増大させる必要が生じてしまう。
【0007】
本開示は、上記点に鑑み、外気熱交換器を有する空調装置に関し、除霜に伴い生じた水分の再凍結による外気熱交換器の熱交換性能の低下を抑制可能な空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本開示の一態様に係る空調装置は、圧縮機(11)と、加熱部(30)と、外気用熱交換部(25X)と、制御部(70)と、を有している。圧縮機は冷媒を圧縮して吐出する。加熱部は、暖房用熱交換器(12)を有し、高圧冷媒を熱源として空調対象空間に送風される送風空気を加熱する。暖房用熱交換器は、空調対象空間を暖房する暖房運転に際して、圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる。外気用熱交換部は、暖房運転に際して外気から吸熱する外気熱交換器(19、43)を有する。
【0009】
制御部は、除霜実行部(70a)と、排水期間設定部(70b)と、運転制御部(70e)と、を有する。除霜実行部は、熱源からの熱によって外気熱交換器に付着した霜を融解させる除霜運転を実行する。排水期間設定部は、除霜運転による霜の融解に伴って生じた水分を、水分に作用する重力を利用して外気熱交換器の表面から排水する排水期間を設定する。運転制御部は、排水期間設定部にて設定された排水期間を経過した場合に、外気熱交換器における外気からの吸熱を伴う空調運転を再開する。そして、排水期間設定部(70b)は、水分量推定部(70c)を有し、水分量推定部にて推定された水分量に応じて、排水期間を設定する。水分量推定部は、除霜運転に際して外気熱交換器に投入した熱量と、除霜運転に要した時間を用いて、外気熱交換器に付着している水分量を推定する。
【0010】
空調装置によれば、除霜運転によって、外気熱交換器に付着した霜を融解させた場合には、排水期間が設けられる為、重力を利用して、外気熱交換器の表面から水分を排水することができる。又、排水期間を経過した後に、外気からの吸熱を伴う空調運転が再開される為、融解した水分が外気熱交換器の表面で再凍結することを防止することができ、外気熱交換器の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0011】
尚、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
図2】第1実施形態における外気用熱交換部の構成を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る室内空調ユニットの模式的な構成図である。
図4】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
図5】車両用空調装置における除霜制御プログラムのフローチャートである。
図6】第1実施形態における基準排水速度に関する説明図である。
図7】第1実施形態における排水期間の設定に関する説明図である。
図8】通常時における除霜運転から空調運転再開までの動作に関する説明図である。
図9】排水期間を中断した場合における除霜運転から空調運転再開までの動作に関する説明図である。
図10】第2実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0014】
(第1実施形態)
本開示における第1実施形態について、図1図9を参照して説明する。第1実施形態では、本開示に係る空調装置を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車の車両用空調装置1に適用している。車両用空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調やバッテリBの温度調整を行う。
【0015】
そして、車両用空調装置1は、車室内の空調を行う空調運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除湿暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0016】
又、車両用空調装置1は、空調運転モードの状態によらずに、バッテリBの冷却の有無を切り替えることができる。従って、車両用空調装置1の運転モードは、空調運転モードの状態及びバッテリBの冷却の有無の組み合わせによって定義することができる。この為、車両用空調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードの7つの運転モードが含まれる。
【0017】
単独冷却モードは、車室内の空調を行うことなく、バッテリBの冷却を行う運転モードである。冷却冷房モードは、車室内の冷房を行うと共に、バッテリBの冷却を行う運転モードである。冷却暖房モードは、車室内の暖房を行うと共に、バッテリBの冷却を行う運転モードである。冷却除湿暖房モードは、車室内の除湿暖房を行うと共に、バッテリBの冷却を行う運転モードである。
【0018】
尚、車両用空調装置1の冷凍サイクル装置10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
【0019】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、図1図4を参照して説明する。第1実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10と、加熱部30と、低温側熱媒体回路40と、室内空調ユニット60と、制御装置70を有している。
【0020】
初めに、車両用空調装置1における冷凍サイクル装置10を構成する各構成機器について説明する。冷凍サイクル装置10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。先ず、圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。圧縮機11は車両ボンネット内に配置されている。
【0021】
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0022】
そして、圧縮機11の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器12における冷媒通路12aの入口側が接続されている。熱媒体冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が有する熱を、加熱部30の高温側熱媒体回路31を循環する高温側熱媒体に放熱し、高温側熱媒体を加熱する熱交換器である。
【0023】
熱媒体冷媒熱交換器12は、冷凍サイクル装置10の冷媒を流通させる冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路31の高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路12bを有している。熱媒体冷媒熱交換器12は、伝熱性に優れる同種の金属(第1実施形態では、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材は、ロウ付け接合によって一体化されている。
【0024】
これにより、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒と熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体は、互いに熱交換することができる。熱媒体冷媒熱交換器12は、高圧冷媒の有する熱を放熱させる凝縮器の一例であり、後述する加熱部30の一部を構成する。即ち、熱媒体冷媒熱交換器12は、暖房用熱交換器の一例に相当する。
【0025】
熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、三方継手構造の第1接続部13aが接続されている。第1接続部13aでは、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。つまり、第1接続部13aは、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した液相冷媒の流れを分岐する分岐部である。
【0026】
第1接続部13aの一方の冷媒流出口には、第1膨張弁14aを介して、空調用蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部の他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bを介して、チラー16の冷媒入口側が接続されている。
【0027】
第1膨張弁14aは、少なくとも送風空気を冷却する運転モード時において、第1接続部13aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第1膨張弁14aは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。第1膨張弁14aは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されている。
【0028】
第1膨張弁14aの弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。第1膨張弁14aは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0029】
又、第1膨張弁14aは、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁14aは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。
【0030】
そして、第1膨張弁14aは、冷媒通路を閉塞することで、空調用蒸発器15に対する冷媒の流入を遮断できる。即ち、第1膨張弁14aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。又、第1膨張弁14aは、冷媒通路に対する絞り開度を調整することで、空調用蒸発器15に流入する冷媒流量を調整することができる。従って、第1膨張弁14aは、空調用流量調整部の一例に相当する。
【0031】
第1膨張弁14aの出口には、空調用蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。図3に示すように、空調用蒸発器15は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。空調用蒸発器15は、少なくとも送風空気を冷却する運転モード時に、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒と送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気を冷却する蒸発器である。
【0032】
図1に示すように、第1接続部13aにおける他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bが接続されている。第2膨張弁14bは、少なくとも暖房モード時において、第1接続部13aの他方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。
【0033】
第2膨張弁14bは、第1膨張弁14aと同様に、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第2膨張弁14bは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能を有している。
【0034】
つまり、第2膨張弁14bは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、第2膨張弁14bは、冷媒通路を閉塞することで、チラー16に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第2膨張弁14bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。第2膨張弁14bは冷却用流量調整部の一例である。
【0035】
第2膨張弁14bの出口には、チラー16の冷媒入口側が接続されている。チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。
【0036】
チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路16aと、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路16bとを有している。従って、チラー16は、冷媒通路16aを流通する低圧冷媒と熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体との熱交換によって、低圧冷媒を蒸発させて低温側熱媒体から吸熱する蒸発器である。即ち、チラー16は冷却用蒸発器の一例に相当し、第2膨張弁14bは冷却用減圧部の一例に相当する。
【0037】
図1に示すように、空調用蒸発器15の冷媒出口には、第2接続部13bの一方の冷媒入口側が接続されている。又、チラー16の冷媒出口側には、第2接続部13bの他方の冷媒入口側が接続されている。ここで、第2接続部13bは、第1接続部13aと同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒入口とし、残りの1つを冷媒出口としている。
【0038】
従って、第2接続部13bは、空調用蒸発器15から流出した冷媒の流れとチラー16から流出した冷媒の流れとを合流させる合流部である。そして、第2接続部13bの冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0039】
次に、車両用空調装置1における加熱部30について説明する。加熱部30は、冷凍サイクル装置10における高圧冷媒を熱源として、空調対象空間に供給される送風空気を加熱する為の構成である。
【0040】
第1実施形態に係る加熱部30は、高温側熱媒体回路31によって構成されている。高温側熱媒体回路31は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体回路であり、高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
【0041】
図1に示すように、高温側熱媒体回路31には、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12b、高温側ポンプ32、ヒータコア33、高温側外気熱交換器34、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36等が配置されている。
【0042】
上述したように、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bでは、高温側熱媒体が、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒との熱交換によって加熱される。即ち、高温側熱媒体は、冷凍サイクル装置10で汲み上げられた熱を用いて加熱される。
【0043】
熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける入口側には、高温側ポンプ32の吐出口が接続されている。高温側ポンプ32は、高温側熱媒体回路31にて高温側熱媒体を循環させる為に圧送する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ32は、制御装置70から出力される制御電圧により、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0044】
熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける出口側には、高温側流量調整弁35の流入口が接続されている。高温側流量調整弁35は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
【0045】
高温側流量調整弁35の一方の流出口には、電気ヒータ36が接続されている。電気ヒータ36は、電力を供給されることによって発熱し、電気ヒータ36の熱媒体通路を流れる高温側熱媒体を加熱する。電気ヒータ36は熱源装置の一例に相当する。
【0046】
電気ヒータ36としては、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを用いることができる。電気ヒータ36は、制御装置70から出力される制御電圧によって、高温側熱媒体を加熱する為の熱量を任意に調整することができる。
【0047】
電気ヒータ36における熱媒体通路の出口側には、ヒータコア33の流入口が接続されている。ヒータコア33は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と空調用蒸発器15を通過した送風空気とを熱交換させ、送風空気を加熱する熱交換器である。図3に示すように、ヒータコア33は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。
【0048】
そして、高温側流量調整弁35における他方の流出口には、高温側外気熱交換器34の流入口が接続されている。高温側外気熱交換器34は、後述する複合型熱交換器25の一部を構成している。高温側外気熱交換器34は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と外気ファン19aで送風された外気OAとを熱交換させて、高温側熱媒体の有する熱を外気OAに放熱させる。高温側外気熱交換器34は、後述する外気用熱交換部25Xを構成する。
【0049】
高温側外気熱交換器34は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。上述した外気ファン19aの作動に伴って、外気OAは、車両前方側から後方へ流れ、高温側外気熱交換器34の熱交換部を通過する。又、車両走行時には、車両前方側から後方に向かって高温側外気熱交換器34に走行風を当てることができる。
【0050】
そして、高温側外気熱交換器34の流出口及びヒータコア33の流出口には、三方継手構造の高温側合流部が接続されている。高温側合流部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流出口とし、残りの2つを流入口としている。従って、高温側合流部は、高温側外気熱交換器34を通過した高温側熱媒体の流れと、ヒータコア33を通過した高温側熱媒体の流れとを合流させることができる。そして、高温側合流部における流出口には、高温側ポンプ32の吸込口が接続されている。
【0051】
このように、第1実施形態の高温側熱媒体回路31において、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bを通過する高温側熱媒体の流れに関して、高温側外気熱交換器34と、ヒータコア33及び電気ヒータ36は並列に接続されている。そして、高温側流量調整弁35は、高温側熱媒体回路31において、ヒータコア33側へ流入する高温側熱媒体の流量と、高温側外気熱交換器34に流入する高温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整することができる。
【0052】
つまり、高温側流量調整弁35の動作を制御することで、高温側外気熱交換器34にて外気OAに放熱される高温側熱媒体の熱量と、ヒータコア33にて送風空気に放熱される高温側熱媒体の熱量とを調整することができる。
【0053】
続いて、車両用空調装置1における低温側熱媒体回路40について説明する。低温側熱媒体回路40は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体回路31における高温側熱媒体と同様の流体を採用できる。
【0054】
低温側熱媒体回路40には、チラー16の熱媒体通路16b、低温側ポンプ41、機器用熱交換部42、低温側外気熱交換器43、低温側流量調整弁44、機器側熱媒体回路50等が配置されている。チラー16における熱媒体通路16bの流入口には、低温側ポンプ41の吐出口側が接続されている。
【0055】
低温側ポンプ41は、低温側熱媒体回路40において、チラー16の熱媒体通路16bへ低温側熱媒体を圧送する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ41の基本的構成は、高温側ポンプ32と同様である。
【0056】
チラー16の熱媒体通路16bにおける流出口には、低温側流量調整弁44が接続されている。低温側流量調整弁44は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。図1に示すように、低温側流量調整弁44における一方の流入口には、機器用熱交換部42の熱媒体通路42aの入口側が接続されており、低温側流量調整弁44の他方の流入口には、低温側外気熱交換器43の流入口側が接続されている。
【0057】
この為、低温側流量調整弁44は、チラー16の熱媒体通路16bを通過した低温側熱媒体の流れに関して、低温側外気熱交換器43を通過する低温側熱媒体の流量と、機器用熱交換部42を通過する低温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整できる。即ち、低温側熱媒体回路40は、低温側流量調整弁44の作動を制御することで、低温側熱媒体の流れを切り替えることができる。
【0058】
ここで、車両用空調装置1では、機器用熱交換部42の熱媒体通路42aに低温側熱媒体を通過させて熱交換させることで、バッテリBで生じた熱を低温側熱媒体に吸熱させて、バッテリBの温度調整を行っている。即ち、機器用熱交換部42は、低温側熱媒体回路40にて低温側熱媒体により冷却可能に接続されており、予め定められた温度範囲内にバッテリBの温度を維持するように構成されている。
【0059】
図4に示すように、バッテリBは、車両の各種電気機器に電力を供給するもので、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)が採用される。バッテリBは、充放電に際して発熱する。バッテリBは、複数の電池セルを積層配置し、これらの電池セルを電気的に直列或いは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。この種のバッテリBは、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。
【0060】
この為、バッテリBの温度は、バッテリBの充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(例えば、10℃以上かつ40℃以下)に維持されている必要がある。この為、車両用空調装置1では、低温側熱媒体の流量等を制御することで、バッテリBの温度を適切に調整している。
【0061】
そして、低温側外気熱交換器43は、低温側ポンプ41から吐出された低温側熱媒体と、外気ファン19aにより送風された外気OAとを熱交換させる熱交換器である。低温側外気熱交換器43は、低温側熱媒体回路40において、チラー16の熱媒体通路16bから流出した低温側熱媒体の流れに関して、機器用熱交換部42と並列に接続されている。
【0062】
又、低温側外気熱交換器43は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、低温側外気熱交換器43に走行風を当てることができる。従って、図2に示すように、低温側外気熱交換器43は、高温側外気熱交換器34等と一体的に形成されており、複合型熱交換器25及び外気用熱交換部25Xの一部を構成する。
【0063】
そして、機器用熱交換部42における熱媒体通路42aの流出口側と、低温側外気熱交換器43の熱媒体流出口側には、三方継手構造の合流部が接続されている。合流部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の2つを流入口とし、残りの1つを流出口としている。合流部における流出口には、低温側ポンプ41の吸込口側が接続されている。
【0064】
従って、合流部は、機器用熱交換部42から流出した低温側熱媒体の流れと、低温側外気熱交換器43から流出した低温側熱媒体の流れとを合流させて、低温側ポンプ41へ導くことができる。
【0065】
このように構成された低温側熱媒体回路40では、低温側流量調整弁44の作動を制御することで、低温側熱媒体の流れを切り替えることができる。例えば、低温側熱媒体回路40では、チラー16側の流入出口と機器用熱交換部42側の流入出口を連通させ、低温側外気熱交換器43側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁44を制御することができる。この場合、低温側熱媒体の流れは、チラー16を通過した低温側熱媒体の全量が機器用熱交換部42の熱媒体通路42aを通過するように切り替えられる。
【0066】
この態様によれば、チラー16で冷却された低温側熱媒体を、機器用熱交換部42に供給することができるので、バッテリBを冷却することができる。換言すると、バッテリBの冷却に伴って吸熱したバッテリBの廃熱を、チラー16における熱交換によって、冷凍サイクル装置10の低圧冷媒に吸熱させることができる。
【0067】
又、低温側熱媒体回路40において、チラー16側の流入出口と低温側外気熱交換器43側の流入出口を連通させ、機器用熱交換部42側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁44を制御することができる。この場合、低温側熱媒体の流れは、チラー16を通過した低温側熱媒体の全量が低温側外気熱交換器43を通過するように切り替えられる。
【0068】
この態様によれば、チラー16で冷却された低温側熱媒体を、低温側外気熱交換器43に供給することができるので、低温側熱媒体の温度が外気温よりも低ければ、外気OAから吸熱させることができる。これにより、送風空気を加熱する為の熱源として、外気OAを利用することができる。
【0069】
即ち、車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路40を利用することで、バッテリBの冷却や温度調整を行うことができる。又、車両用空調装置1は、低温側外気熱交換器43を利用することで、外気OAを熱源として利用することができる。
【0070】
又、低温側熱媒体回路40には、機器側熱媒体回路50が接続されている。機器側熱媒体回路50は、電気自動車に搭載された発熱機器の温度を調整すると共に、発熱機器に生じる熱を活用する為の熱媒体回路である。機器側熱媒体回路の熱媒体としては、上述した高温側熱媒体回路31、低温側熱媒体回路40等と同様の熱媒体を採用できる。
【0071】
機器側熱媒体回路50は、発熱機器51、機器側ポンプ53、機器側三方弁54を、機器側熱媒体流路によって環状に接続して構成されている。機器側熱媒体流路の一端は、低温側流量調整弁44と低温側外気熱交換器43の熱媒体入口側を接続する熱媒体流路に接続されている。そして、機器側熱媒体流路の他端は、低温側外気熱交換器43の熱媒体出口側と、低温側熱媒体回路40の合流部を接続する熱媒体流路に接続されている。
【0072】
機器側熱媒体回路50において、機器側熱媒体流路には、発熱機器51、機器バイパス流路52、機器側ポンプ53、機器側三方弁54が配置されている。低温側流量調整弁44と低温側外気熱交換器43の熱媒体入口側の間から伸びる機器側熱媒体流路には、機器側三方弁54の流入出口の1つが接続されている。
【0073】
機器側三方弁54は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。機器側三方弁54における別の流入出口には、発熱機器51における熱媒体通路の出口側が接続されている。一方、機器側三方弁54の更に別の流入出口には、機器バイパス流路52が接続されている。
【0074】
発熱機器51は、電気自動車に搭載された車載機器の内、走行等を目的とした作動に伴って付随的に発熱する機器によって構成されている。発熱機器51は、熱源装置の一例に相当する。換言すると、発熱機器51は、発熱とは異なる目的の作動によって発熱し、その発熱量の制御が困難な機器である。
【0075】
従って、発熱機器51は、発熱を目的として作動して、任意の熱量を発生させる電気ヒータ36のような加熱装置ではない。発熱機器51としては、インバータ、モータジェネレータが採用されている。そして、発熱機器51の熱媒体通路は、熱媒体を流通させることで、それぞれの構成機器を冷却できるように形成されている。
【0076】
インバータは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。そして、モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。
【0077】
尚、発熱機器51として、トランスアクスル装置を採用することも可能である。トランスアクスル装置は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギア(デフギア)を一体化した装置である。
【0078】
そして、発熱機器51の熱媒体通路における入口側には、機器側ポンプ53の吐出口側が接続されている。機器側ポンプ53は、機器側熱媒体流路の熱媒体を発熱機器51における熱媒体通路の入口側へ圧送する。機器側ポンプ53の基本的構成は、高温側ポンプ32等と同様である。
【0079】
図1に示すように、機器バイパス流路52の一端は、機器側三方弁54における更に別の流入出口に接続されている。そして、機器バイパス流路52の他端は、低温側外気熱交換器43の流出口側から伸びる機器側熱媒体流路に接続されている。従って、機器バイパス流路52は、発熱機器51及び機器側ポンプ53を通過した熱媒体の流れに関して、低温側外気熱交換器43に並列に接続されている。
【0080】
これにより、機器側熱媒体回路50は、機器側三方弁54の作動を制御することで、機器側熱媒体回路50における熱媒体の流れを切り替えることができる。従って、機器側熱媒体回路50において、発熱機器51及び機器側三方弁54から流出した熱媒体の流れに関して、機器バイパス流路52を介して循環させ、発熱機器51の廃熱を機器側熱媒体回路50の熱媒体に蓄熱しておくことができる。
【0081】
続いて、車両用空調装置1における外気用熱交換部25Xの構成について、図2を参照して説明する。外気用熱交換部25Xは、複合型熱交換器25と、シャッター装置55を有して構成されている。複合型熱交換器25は、高温側熱媒体回路31における高温側外気熱交換器34と、低温側熱媒体回路40における低温側外気熱交換器43とを熱的に接続して構成されている。
【0082】
上述したように、複合型熱交換器25は、駆動装置室内の前方側に配置されている。そして、低温側外気熱交換器43は、高温側熱媒体回路31に対して車両前方側に配置されている。換言すると、低温側外気熱交換器43は、外気OAの流れに関して、高温側熱媒体回路31の上流側に配置されている。
【0083】
又、複合型熱交換器25には、外気ファン19aが、高温側外気熱交換器34及び低温側外気熱交換器43に対して外気OAを送風するように配置されている。外気ファン19aは、制御装置70から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機であり、外気送風機の一例に相当する。
【0084】
即ち、外気ファン19aは、複合型熱交換器25に対する外気の風速(風量)を調整することができるので、後述する流入調整制御部70fの制御対象となる機器である。複合型熱交換器25は、外気ファン19aによって送風される外気OAや、電気自動車の走行に伴って送風される外気OAとの熱交換を行うことができる。
【0085】
そして、高温側外気熱交換器34及び低温側外気熱交換器43は、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造になっている。タンクアンドチューブ型の高温側外気熱交換器34は、高温側熱媒体を流通させる複数のチューブ34tと、複数のチューブ34tを流通する高温側熱媒体の分配或いは集合を行う為のタンク等を有している。
【0086】
高温側外気熱交換器34は、一定方向に互いに間隔を開けて積層配置されたチューブ34tを流通する高温側熱媒体と、隣り合うチューブ34tの間に形成された空気通路を流通する空気とを熱交換させる構造になっている。
【0087】
又、タンクアンドチューブ型の低温側外気熱交換器43は、低温側熱媒体を流通させる複数のチューブ43tと、複数のチューブ43tを流通する低温側熱媒体の分配或いは集合を行う為のタンク等を有している。
【0088】
低温側外気熱交換器43は、一定方向に互いに間隔を開けて積層配置されたチューブ43tを流通する低温側熱媒体と、隣り合うチューブ43tの間に形成された空気通路を流通する空気とを熱交換させる構造になっている。
【0089】
図2に示すように、高温側外気熱交換器34におけるチューブ34tの間に形成される空気通路と、低温側外気熱交換器43におけるチューブ43tの間に形成される空気通路には、熱交換フィン25fが配置されている。熱交換フィン25fは、一つの薄板状の金属部材により構成されている。熱交換フィン25fは、高温側外気熱交換器34における高温側熱媒体と外気OAとの熱交換を促進させると共に、低温側外気熱交換器43における低温側熱媒体と外気OAとの熱交換を促進させる部材である。
【0090】
そして、複合型熱交換器25では、複数の熱交換フィン25fが、高温側外気熱交換器34のチューブ34tと、低温側外気熱交換器43のチューブ43tの双方にろう付け接合されている。つまり、高温側外気熱交換器34と低温側外気熱交換器43は、複数の熱交換フィン25fによって熱的に連結されている。これにより、複合型熱交換器25においては、熱交換フィン25fを介して、高温側外気熱交換器34側の高温側熱媒体と、低温側外気熱交換器43側の低温側熱媒体との間における熱の伝達を可能にしている。
【0091】
図2に示すように、複合型熱交換器25の車両前方側には、シャッター装置55が配置されている。シャッター装置55は、枠状のフレームの開口部に、複数のブレードを回転可能に配置して構成されている。複数のブレードは、図示しない電動アクチュエータの作動によって連動して回転し、フレームの開口部における開口面積を調整する。
【0092】
これにより、シャッター装置55は、複合型熱交換器25を通過する外気OAの流量を調整することができ、複合型熱交換器25における熱交換能力を調整することができる。従って、シャッター装置55は、後述する流入調整制御部70fの制御対象となる機器である。
【0093】
次に、車両用空調装置1を構成する室内空調ユニット60について、図3を参照して説明する。室内空調ユニット60は、車両用空調装置1において、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット60は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0094】
室内空調ユニット60は、その外殻を形成するケーシング61の内部に形成される空気通路に、送風機62、空調用蒸発器15、ヒータコア33等を収容して構成されている。ケーシング61は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。ケーシング61は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0095】
図3に示すように、ケーシング61の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置63が配置されている。内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
【0096】
内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0097】
内外気切替装置63の送風空気流れ下流側には、送風機62が配置されている。送風機62は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機62は、内外気切替装置63を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機62は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
【0098】
送風機62の送風空気流れ下流側には、空調用蒸発器15及びヒータコア33が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、空調用蒸発器15は、ヒータコア33よりも送風空気流れ上流側に配置されている。従って、車両用空調装置1の室内空調ユニット60では、空調用蒸発器15を通過した送風空気の少なくとも一部を、ヒータコア33によって加熱することができる。
【0099】
又、ケーシング61内には、冷風バイパス通路65が形成されている。冷風バイパス通路65は、空調用蒸発器15を通過した送風空気を、ヒータコア33を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
【0100】
空調用蒸発器15の送風空気流れ下流側であって、且つ、ヒータコア33の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア64が配置されている。エアミックスドア64は、空調用蒸発器15を通過後の送風空気のうち、ヒータコア33を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整する。
【0101】
エアミックスドア64は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号により、その作動が制御される。
【0102】
そして、ヒータコア33の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、ヒータコア33にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路65を通過してヒータコア33にて加熱されていない送風空気とが混合される。
【0103】
更に、ケーシング61の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
【0104】
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面の窓ガラスにおける内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0105】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0106】
従って、エアミックスドア64が、ヒータコア33を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
【0107】
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、デフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
【0108】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0109】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の制御系について、図4を参照して説明する。制御装置70は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0110】
そして、制御装置70は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。従って、制御装置70は制御部の一例に相当する。
【0111】
制御対象機器には、圧縮機11、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b、外気ファン19a、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36、低温側ポンプ41、低温側流量調整弁44が含まれている。更に、制御対象機器には、発熱機器51、機器側ポンプ53、機器側三方弁54、シャッター装置55、送風機62等が含まれている。
【0112】
図4に示すように、制御装置70の入力側には、制御対象機器の作動を制御する為の制御用センサ群が接続されている。制御用センサ群は、内気温センサ72a、外気温センサ72b、日射センサ72c、高圧センサ72d、蒸発器温度センサ72e、合流部圧力センサ72fを含んでいる。
【0113】
内気温センサ72aは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ72bは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ72cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ72dは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14a或いは第2膨張弁14bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
【0114】
蒸発器温度センサ72eは、空調用蒸発器15における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。合流部圧力センサ72fは、冷凍サイクル装置10の第2接続部13bにおける冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出部である。合流部圧力は、冷凍サイクル装置10の低圧側における冷媒圧力を示す。
【0115】
更に、制御用センサ群は、バッテリ温度センサ73a、送風空気温度センサ73b、吸込空気温度センサ73cを含んでいる。バッテリ温度センサ73aは、バッテリBの温度であるバッテリ温度TBAを検出するバッテリ温度検出部である。
【0116】
バッテリ温度センサ73aは、複数の温度検出部を有し、バッテリBにおける複数の箇所の温度を検出している。この為、制御装置70では、バッテリBの各部の温度差を検出することもできる。更に、バッテリ温度TBAとしては、複数の温度検出部における検出値の平均値を採用している。
【0117】
そして、送風空気温度センサ73bは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する送風空気温度検出部である。吸込空気温度センサ73cは、空調用蒸発器15に対して流入する送風空気の温度である吸込空気温度を検出する吸込空気温度検出部である。吸込空気温度センサ73cは、室内空調ユニット60のケーシング61内部において、空調用蒸発器15に対して送風空気流れの上流側に配置されている。
【0118】
そして、制御装置70の入力側には、高温側熱媒体回路31、低温側熱媒体回路40及び機器側熱媒体回路50の各熱媒体回路における熱媒体の温度を検出する為に、複数の熱媒体温度センサが接続されている。複数の熱媒体温度センサには、第1熱媒体温度センサ74a~第5熱媒体温度センサ74eが含まれている。
【0119】
第1熱媒体温度センサ74aは、電気ヒータ36の熱媒体通路における出口部分に配置されており、電気ヒータ36から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。第2熱媒体温度センサ74bは、高温側外気熱交換器34の出口部分に配置されており、高温側外気熱交換器34を通過した高温側熱媒体の温度を検出する。第3熱媒体温度センサ74cは、ヒータコア33の入口部分に配置されており、ヒータコア33に流入する高温側熱媒体の温度を検出する。
【0120】
第4熱媒体温度センサ74dは、チラー16の熱媒体通路16bにおける出口部分に配置されており、チラー16から流出する低温側熱媒体の温度を検出する。第5熱媒体温度センサ74eは、低温側外気熱交換器43の出口部分に配置されており、低温側外気熱交換器43から流出する低温側熱媒体の温度を検出する。制御装置70には、これらの制御用センサ群の検出信号が入力される。
【0121】
そして、車両用空調装置1は、第1熱媒体温度センサ74a~第5熱媒体温度センサ74eの検出結果を参照して、加熱部30の高温側熱媒体回路31、低温側熱媒体回路40及び機器側熱媒体回路50における熱媒体の流れを切り替える。これにより、車両用空調装置1は、高温側熱媒体、低温側熱媒体を用いて、車両における熱を管理することができる。
【0122】
更に、制御装置70の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル71が接続されている。操作パネル71には、複数の操作スイッチが配置されている。従って、制御装置70には、この複数の操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル71における各種操作スイッチとしては、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。
【0123】
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定或いは解除する際に操作される。エアコンスイッチは、空調用蒸発器15にて送風空気の冷却を行うことを要求する際に操作される。エアコンスイッチは、その入力操作によって、送風空気の冷却の有無を切り替えるように構成されている。風量設定スイッチは、送風機62の風量をマニュアル設定する際に操作される。そして、温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。
【0124】
尚、制御装置70では、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されているが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。例えば、制御装置70のうち、車室内の暖房に伴って着霜した低温側外気熱交換器43の除霜運転を実行する構成は、除霜実行部70aを構成している。
【0125】
そして、制御装置70のうち、除霜運転に伴って低温側外気熱交換器43の表面に付着した水分を、重力を利用して排水する排水期間の長さを設定する構成は、排水期間設定部70bを構成している。又、制御装置70のうち、除霜運転中に要した熱量等に基づき、低温側外気熱交換器43に付着している水分量を推定する構成は、水分量推定部70cを構成している。
【0126】
又、制御装置70のうち、低温側外気熱交換器43の着霜量等に基づいて、排水期間にて、低温側外気熱交換器43の表面から水分が排水される排水速度を推定する構成は、排水速度推定部70dを構成している。そして、制御装置70のうち、除霜運転及び排水期間の終了後において、除霜運転に移行する前の空調運転に復帰させる構成は、運転制御部70eを構成している。更に、制御装置70のうち、除霜運転及び排水期間において、低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入量を調整する構成は、流入調整制御部70fを構成している。
【0127】
続いて、第1実施形態における車両用空調装置1の作動について説明する。上述したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置70に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
【0128】
より具体的には、制御プログラムでは、空調制御用のセンサ群によって検出された検出信号および操作パネル71から出力される操作信号に基づいて、車室内へ送風させる送風空気の目標吹出温度TAOを算出する。
【0129】
具体的には、目標吹出温度TAOは、以下数式F1によって算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×As+C…(F1)
尚、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(車室内設定温度)、Trは内気温センサ72aによって検出された内気温、Tamは外気温センサ72bによって検出された外気温、Asは日射センサ72cによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0130】
そして、制御プログラムにおいては、操作パネル71のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている際には、空調運転モードを冷房モードに切り替える。
【0131】
又、制御プラグラムでは、操作パネル71のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを除湿暖房モードに切り替える。更に、エアコンスイッチが投入されていない状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを暖房モードに切り替える。
【0132】
(a)冷房モード
冷房モードは、冷凍サイクル装置10を利用したバッテリBの冷却を行うことなく、空調用蒸発器15により送風空気を冷却して車室内に送風する運転モードである。冷房モードでは、制御装置70は、第1膨張弁14aを予め定められた絞り開度で開き、第2膨張弁14bを全閉する。
【0133】
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順で流れる冷媒の循環回路が構成される。
【0134】
そして、このサイクル構成で、制御装置70は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置70は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14aの絞り開度、送風機62の送風能力、エアミックスドア64の開度等を制御する。
【0135】
又、冷房モードの高温側熱媒体回路31では、制御装置70は、高温側ポンプ32及び高温側流量調整弁35を、冷房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、高温側外気熱交換器34、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
【0136】
尚、冷房モードの低温側熱媒体回路40では、チラー16に低圧冷媒が流入していない為、低温側熱媒体回路40における低温側熱媒体の循環を停止させた状態にすることも可能である。
【0137】
従って、冷房モードの車両用空調装置1では、空調用蒸発器15にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
【0138】
(b)暖房モード
暖房モードは、冷凍サイクル装置10を用いたバッテリBの冷却を行うことなく、ヒータコア33により送風空気を加熱して車室内に送風する運転モードである。暖房モードでは、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態にし、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開く。従って、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0139】
このサイクル構成で、制御装置70は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置70は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第2膨張弁14bの絞り開度、外気ファン19aの送風能力、シャッター装置55の開度、送風機62の送風能力、エアミックスドア64の開度等を制御する。
【0140】
そして、暖房モードの高温側熱媒体回路31について、制御装置70は、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36を、暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
【0141】
又、暖房モードの低温側熱媒体回路40に関し、制御装置70は、低温側熱媒体の循環径路が暖房モードに適した状態になるように、低温側ポンプ41及び低温側流量調整弁44を制御する。これにより、低温側熱媒体回路40において、低温側熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー16、低温側流量調整弁44、低温側外気熱交換器43、低温側ポンプ41の順で循環する。
【0142】
そして、暖房モードの機器側熱媒体回路50に関して、制御装置70は、熱媒体の循環径路が暖房モードに適した状態になるように、機器側ポンプ53及び機器側三方弁54を制御する。これにより、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ53、発熱機器51、機器側三方弁54、機器バイパス流路52、機器側ポンプ53の順で循環する。
【0143】
この態様によれば、機器側熱媒体回路50を循環する熱媒体に対して、発熱機器51の排熱を蓄熱しておくことができ、低温側外気熱交換器43を除霜する際の熱源として利用することができる。尚、機器側熱媒体回路50に関して、機器側ポンプ53の作動を停止して、機器側熱媒体回路50における熱媒体の循環を停止した状態にすることも可能である。
【0144】
暖房モードの車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路40の低温側外気熱交換器43にて外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル装置10で汲み上げて、高温側熱媒体回路31を介して、送風空気の加熱に利用した暖房運転を行うことができる。
【0145】
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、冷凍サイクル装置10を利用したバッテリBの冷却を行うことなく、空調用蒸発器15で冷却された送風空気をヒータコア33で加熱して車室内に送風する運転モードである。除湿暖房モードでは、制御装置70は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
【0146】
従って、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。つまり、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、空調用蒸発器15及びチラー16が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
【0147】
このサイクル構成で、制御装置70は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を除湿暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置70は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bの絞り開度、外気ファン19aの送風能力、シャッター装置55の開度、送風機62の送風能力、エアミックスドア64の開度等を制御する。
【0148】
そして、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路31について、制御装置70は、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36を、除湿暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
【0149】
又、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路40に関し、制御装置70は、除湿暖房モードに適した状態になるように、低温側ポンプ41及び低温側流量調整弁44を制御する。この結果、低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー16、低温側流量調整弁44、低温側外気熱交換器43、低温側ポンプ41の順で循環する
そして、除湿暖房モードの機器側熱媒体回路50に関して、制御装置70は、熱媒体の循環径路が除湿暖房モードに適した状態になるように、機器側ポンプ53及び機器側三方弁54を制御する。これにより、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ53、発熱機器51、機器側三方弁54、機器バイパス流路52、機器側ポンプ53の順で循環する。
【0150】
この態様によれば、機器側熱媒体回路50を循環する熱媒体に対して、発熱機器51の排熱を蓄熱しておくことができ、低温側外気熱交換器43を除霜する際の熱源として利用することができる。尚、機器側熱媒体回路50に関して、機器側ポンプ53の作動を停止して、機器側熱媒体回路50における熱媒体の循環を停止した状態にすることも可能である。
【0151】
これにより、除湿暖房モードの車両用空調装置1は、低温側熱媒体回路40にて外気OAから吸熱した熱を冷凍サイクル装置10で汲み上げて、冷却された送風空気を、高温側熱媒体回路31を介して加熱する除湿暖房を実現することができる。
【0152】
第1実施形態に係る車両用空調装置1における運転モードは、空調運転モードと、バッテリBの冷却の有無を示す運転モードの組み合わせによって定められる。具体的に、制御プログラムでは、バッテリ温度TBAに応じて、バッテリBの冷却の有無を切り替える。具体的には、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった際には、電池冷却要求を出力して、バッテリBの冷却を実行する運転モードに切り替える。
【0153】
例えば、車室内の空調が行われていない状態で、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった場合は、車両用空調装置1の運転モードは、車室内空調を行うことなく、バッテリBを冷却する単独冷却モードに切り替えられる。
【0154】
又、車室内の空調が行われている状態で、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった場合は、車室内空調(即ち、暖房、冷房、除湿暖房)を継続した状態でバッテリBを冷却する運転モードに切り替えられる。
【0155】
この為、車両用空調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードが含まれている。ここで、単独冷却モードについて説明する。
【0156】
(d)単独冷却モード
単独冷却モードは、車室内の空調運転を行うことなく、冷凍サイクル装置10を用いたバッテリBの冷却を行う運転モードである。この単独冷却モードでは、制御装置70は、第1膨張弁14aを全閉状態にし、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開く。
【0157】
従って、単独冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0158】
このサイクル構成で、制御装置70は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を単独冷却モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置70は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第2膨張弁14bの絞り開度、エアミックスドア64の開度等を制御する。
【0159】
又、単独冷却モードの高温側熱媒体回路31に関して、制御装置70は、単独冷却モードに適した状態になるように、高温側ポンプ32及び高温側流量調整弁35を制御する。これにより、高温側熱媒体回路31では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、高温側外気熱交換器34、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
【0160】
そして、単独冷却モードの低温側熱媒体回路40については、制御装置70は、単独冷却モードに適した状態になるように、低温側ポンプ41及び低温側流量調整弁44を制御する。これにより、低温側熱媒体回路40において、低温側熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー16、低温側流量調整弁44、機器用熱交換部42、低温側ポンプ41の順に流れて循環する。
【0161】
この結果、単独冷却モードの車両用空調装置1は、チラー16における低圧冷媒との熱交換によって冷却された低温側熱媒体を、機器用熱交換部42の熱媒体通路42aに流通させることができるので、冷凍サイクル装置10を利用してバッテリBを冷却できる。
【0162】
そして、車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10にて、チラー16で吸熱した熱を汲み上げて、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体回路31の高温側熱媒体に放熱することができる。更に、車両用空調装置1は、高温側熱媒体が有する熱を、高温側外気熱交換器34にて外気OAへ放熱させることができる。
【0163】
尚、冷却冷房モードは、上述した冷房モードと、単独冷却モードを組み合わせることで実現され、冷却暖房モードは、暖房モードと単独冷却モードを組み合わせることで実現される。そして、冷却除湿暖房モードは、除湿暖房モードと単独冷却モードを組み合わせることによって実現される。
【0164】
各空調運転モードに対して単独冷却モードを組み合わせる際に、冷凍サイクル装置10の冷媒循環回路として、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で循環する経路を含むように組み合わせられる。又、低温側熱媒体回路40における低温側熱媒体の循環径路として、低温側ポンプ41、チラー16、低温側流量調整弁44、機器用熱交換部42、低温側ポンプ41の順に流れる循環径路を含むように組み合わせられる。
【0165】
上述のように構成された車両用空調装置1において、低温側外気熱交換器43にて外気OAから吸熱する運転モード(例えば、暖房モードや除湿暖房モード)で運転を行った場合、外気OAの状態によっては、低温側外気熱交換器43が着霜する場合がある。例えば、外気OAが低温高湿度である状態において、低温側外気熱交換器43にて、外気OAから低温側熱媒体へ吸熱させた場合、外気OAに含まれている水分等に起因して、低温側外気熱交換器43の表面が着霜する。
【0166】
低温側外気熱交換器43の表面が着霜してしまうと、低温側外気熱交換器43における低温側熱媒体と外気OAとの熱交換能力が低下して、外気OAからの吸熱量が低下してしまう。外気OAから吸熱した熱を熱源として利用して空調を行う場合、低温側外気熱交換器43における吸熱量が低下すると、空調性能に影響を及ぼし、車室内の快適性を低下させてしまう。
【0167】
この点に鑑みて、車両用空調装置1では、低温側外気熱交換器43の除霜運転が行われ、低温側外気熱交換器43の表面に付着した霜を融解させる。霜の融解に伴って生じた水分を適切に処理しなければ、除霜運転後に空調運転を再開させると、表面に付着している水分が再凍結してしまい、低温側外気熱交換器43における吸熱量を低下させてしまう。
【0168】
第1実施形態に係る車両用空調装置1において、制御装置70は、低温側外気熱交換器43の除霜運転に関する事後処理を適切に行い、水分の再凍結を抑制する為に、図5に示す制御プログラムを実行する。図5に示す制御プログラムは、制御装置70のROMに記憶されており、適宜読み出されて実行される。
【0169】
先ず、ステップS1では、空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネル71からの操作信号に基づいて、運転モードが選定され、選定された運転モードに基づく空調運転が実行される。これにより、車両用空調装置1では、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードの何れかが実行される。
【0170】
ステップS2では、外気OAを対象とする吸熱器である低温側外気熱交換器43が着霜しているか否かが判定される。換言すると、低温側外気熱交換器43に対する除霜運転の必要性があるか否かが判定される。上述したように、低温側外気熱交換器43は、暖房モード、除湿暖房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードを実行する際に、外気OAから吸熱する吸熱器として機能する。
【0171】
本実施形態では、第5熱媒体温度センサ74eで検出される低温側外気熱交換器43の流出口側における低温側熱媒体の温度が、予め定められた着霜基準温度以下である場合に、低温側外気熱交換器43が着霜していると判定する。低温側外気熱交換器43が着霜していると判定された場合、ステップS3に進む。低温側外気熱交換器43が着霜していないと判定された場合、ステップS1に処理を戻し、現在の運転モードで空調運転を継続する。
【0172】
ステップS3に移行すると、低温側外気熱交換器43に関する除霜運転が実行される。ステップS3を実行する際の制御装置70は除霜実行部70aの一例に相当する。除霜運転に際して、制御装置70は、先ず、圧縮機11の作動を停止する。これにより、冷凍サイクル装置10における冷媒の循環が停止する為、低温側外気熱交換器43における着霜の進行を抑制することができる。
【0173】
又、除霜運転における高温側熱媒体回路31においては、制御装置70は、電気ヒータ36を発熱させて高温側熱媒体を加熱する。又、制御装置70は、除霜運転に適した循環径路となるように、高温側ポンプ32及び高温側流量調整弁35を制御する。
【0174】
これにより、除霜運転の高温側熱媒体回路31では、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。同時に、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、高温側外気熱交換器34、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。
【0175】
この結果、電気ヒータ36にて加熱された高温側熱媒体が、高温側外気熱交換器34を流通することになる為、複合型熱交換器25の熱交換フィン25fを介して、電気ヒータ36の熱を低温側外気熱交換器43に伝達することができる。即ち、低温側外気熱交換器43に付着している霜を、電気ヒータ36を熱源として利用して融解させて除霜することができる。
【0176】
そして、除霜運転における低温側熱媒体回路40に関して、制御装置70は、除霜運転に適した態様となるように、低温側ポンプ41及び低温側流量調整弁44を制御する。具体的には、制御装置70は、低温側ポンプ41の作動を停止すると共に、チラー16側の流入出口と機器用熱交換部42側の流入出口を連通させると共に、低温側外気熱交換器43側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁44を制御する。
【0177】
更に、除霜運転における機器側熱媒体回路50について、制御装置70は、除霜運転に適した態様となるように、機器側ポンプ53及び機器側三方弁54を制御する。具体的には、制御装置70は、機器側ポンプ53を作動させると共に、発熱機器51側の流入出口と低温側外気熱交換器43側の流入出口を連通させ、機器バイパス流路52側の流入出口を閉塞させるように、機器側三方弁54を制御する。
【0178】
これにより、機器側熱媒体回路50において、熱媒体は、機器側ポンプ53、発熱機器51、機器側三方弁54、低温側外気熱交換器43、機器側ポンプ53の順に流れて循環する。この結果、発熱機器51の排熱で加熱された熱媒体が低温側外気熱交換器43に流入することになる為、発熱機器51の排熱を低温側外気熱交換器43に伝達することができる。即ち、低温側外気熱交換器43に付着している霜を、発熱機器51の排熱を熱源として利用して融解させて除霜することができる。
【0179】
又、除霜運転において、制御装置70は、外気ファン19aの送風態様及びシャッター装置55の開度を、除霜運転に適した態様になるように制御する。具体的には、制御装置70は、外気ファン19aの作動を停止し、シャッター装置55の開度を下げて、閉塞状態にする。
【0180】
換言すると、制御装置70は、低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入量が最小になるように、外気ファン19a及びシャッター装置55を制御する。この場合の制御装置は、流入調整制御部70fの一例に相当する。これにより、熱が外気OAによって奪われることが少なくなる為、低温側外気熱交換器43に加えられた熱を霜の融解に効率よく利用することができる。
【0181】
尚、除霜運転の開始に際して、制御装置70は、制御装置70を構成するCPUのクロック数をカウントして、除霜運転に要した所要時間を測定する。
【0182】
ステップS4に移行すると、ステップS3の除霜運転によって、低温側外気熱交換器43の除霜を完了したか否かが判定される。ここで、低温側外気熱交換器43における除霜の完了とは、低温側外気熱交換器43に付着した霜の全てが融解している状態を意味する。低温側外気熱交換器43に付着した霜の大部分が融解している状態をもって、除霜の完了としても良い。
【0183】
具体的に、ステップS4では、第5熱媒体温度センサ74eで検出される低温側外気熱交換器43の出口側における低温側熱媒体の温度が、予め定められた除霜完了基準温度以上である場合に、低温側外気熱交換器43の除霜が完了していると判定される。除霜完了基準温度は、低温側外気熱交換器43に付着した霜の全てが融解している状態における低温側外気熱交換器43の出口側の低温側熱媒体の温度を示す。
【0184】
低温側外気熱交換器43の除霜が完了していると判定された場合は、ステップS5に進む。一方、低温側外気熱交換器43の除霜が完了していないと判定された場合、ステップS3に処理を戻して、低温側外気熱交換器43の除霜を継続する。
【0185】
ステップ5においては、除霜運転に伴って、重力を利用して、低温側外気熱交換器43の表面に付着した水分を排水する排水期間が設定される。排水期間の長さは、除霜運転及び排水期間を経て、空調運転を再開した場合に消費されるエネルギ量に相当する必要総動力が最小になるように定められる。ステップS5を実行する制御装置70は、排水期間設定部70bの一例に相当する。排水期間の設定に関する具体的な内容については、後に図面を参照して説明する。
【0186】
ステップS6に移行すると、排水期間が開始される。この時、制御装置70は、除霜運転の状態から、機器側ポンプ53の作動を停止すると共に、発熱機器51側の流入出口と機器バイパス流路52側の流入出口を連通させ、低温側外気熱交換器43側の流入出口を閉塞させるように、機器側三方弁54を制御する。
【0187】
そして、排水期間における冷凍サイクル装置10、高温側熱媒体回路31の状態は、上述した除霜運転の状態と同様である。従って、排水期間の冷凍サイクル装置10は、冷媒の循環を停止したままの状態である。又、排水期間における高温側熱媒体回路31では、電気ヒータ36が予め定められた発熱量で発熱している。尚、排水期間の開始に際して、制御装置70は、CPUのクロック数をカウントして、排水期間の開始からの経過時間を測定する。
【0188】
更に、制御装置70は、低温側外気熱交換器43を取り巻く環境に応じて、外気ファン19a及びシャッター装置55の作動を制御する。低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入を許容した場合でも、水分を再凍結させることなく、送風される外気OAによって水分を排水することができる場合は、外気ファン19aを作動させると共に、シャッター装置55の開度を上げる。
【0189】
例えば、外気温センサ72bで検出される外気OAの温度、低温側外気熱交換器43の表面に付着している水分量等に応じて、外気ファン19aの送風量及びシャッター装置55の開度が制御される。外気温が0℃よりも高い場合、シャッター装置55の開度を上げて、外気ファン19aによる送風量を大きくしても、付着している水分が再凍結する可能性は低いと考えられる。又、付着している水分には、重力に加えて、送風される外気OAが作用する為、より迅速に排水することができると考えられる。
【0190】
ステップS7においては、低温側外気熱交換器43から水分が排水される排水速度Vdが予め定められる基準排水速度KVdよりも大きいか否かが判定される。排水速度Vdは、排水速度推定部70dによって、除霜運転開始時における低温側外気熱交換器43の着霜量等と、実験式によって推定される。
【0191】
具体的には、排水速度推定部70dは、除霜運転開始時における低温側外気熱交換器43の着霜量と、外気温センサ72bで検出される外気温と、低温側外気熱交換器43に流入する外気OAの風量等を用いて、実験式に基づいて算出される。
【0192】
又、基準排水速度KVdは、必要総動力の低減という観点において、低温側外気熱交換器43の表面に付着している水分の排水が及ぼす影響の大きさを評価する為の指標を意味している。
【0193】
ここで、基準排水速度KVdの決定方法について、図6を参照して説明する。図6には、除霜運転及び排水期間を経過した後、空調運転を所定期間継続して行った場合における車両用空調装置1の消費動力である期間設定時動力Pcdに関して、排水期間における排水速度Vdが及ぼす影響を示すグラフである。
【0194】
上述したように、除霜運転及び排水期間では、電気ヒータ36が発熱する為、排水速度Vdが速く、排水期間が短くなるほど、電気ヒータ36による消費動力は小さくなっていく。換言すると、排水速度Vdが遅いほど、排水期間が長くなる為、電気ヒータ36による消費動力が大きくなる。
【0195】
又、排水速度Vdが速く、排水期間が短くなるほど、熱交換能力が回復した低温側外気熱交換器43を用いた空調運転が行われることになる。この為、空調運転時における動力低減の効果を大きく受けることができる。
【0196】
これらより、期間設定時動力Pcdは、図6に示すように、排水速度Vdが遅い程、大きな値を示し、排水速度Vdが速くなるほど小さくなる傾向を示す。そして、基準排水速度KVdは、基準排水速度KVdが非排水時動力KPc以下となる時点の排水速度Vdとして定められる。
【0197】
ステップS7において、排水速度Vdが基準排水速度KVdよりも大きい場合、排水期間を設定した方が排水期間を設けない場合に比べて、必要総動力を低減することができると考えられる。この為、ステップS8に進み、排水期間を進行させる。
【0198】
一方、排水速度Vdが基準排水速度KVd以下である場合、排水期間中に消費される電気ヒータ36の消費動力が、排水期間における排水に伴って、低温側外気熱交換器43の熱交換能力の回復に起因する動力低減の効果よりも大きくなる。
【0199】
この為、排水速度Vdが基準排水速度KVd以下である場合には、その時点で排水期間を終了して、ステップS1に処理を戻す。その後、除霜運転前に実行していた空調運転に復帰させる。これにより、状況に応じて適切に排水期間の長さを調整することができ、無駄な消費動力の抑制と、除霜運転後の水分の再凍結防止とを両立させることができる。
【0200】
ステップS8においては、ステップS5で設定された排水期間を経過したか否かが判定される。具体的には、ステップS6で開始されたCPUのクロック数に基づいて、排水期間を経過したか否かが判定される。排水期間を経過している場合、ステップS9に処理を進める。一方、排水期間を経過していない場合、ステップS7に処理を戻し、排水期間が経過するまで処理を待機する。
【0201】
ステップS9に移行すると、除霜運転及び排水期間を経過したため、除霜運転に移行する前の空調運転へ復帰させる為の空調運転再開処理を実行する。具体的には、制御装置70は、冷凍サイクル装置10に関して、圧縮機11の作動を再開させる。又、高温側熱媒体回路31について、制御装置70は、電気ヒータ36に対する通電を停止する。即ち、ステップS9を実行する制御装置70は運転制御部70eの一例に相当する。
【0202】
又、空調運転再開処理において、制御装置70は、空調運転の再開に適した状態になるように、外気ファン19a及びシャッター装置55を制御する。具体的には、制御装置70は、外気ファン19aを作動させて、低温側外気熱交換器43に対する外気OAの送風を再開させる。
【0203】
又、制御装置70は、シャッター装置55の開度を、除霜運転に移行する前の状態に戻し、低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入を許容する。従って、この制御を行う制御装置70は、流入調整制御部70fの一例に相当する。空調運転再開処理を終了すると、ステップS1に処理を戻し、除霜運転に移行する前の空調運転を再開させる。
【0204】
ここで、ステップS5における排水期間の設定について、図7を参照して説明する。ステップS5において、排水期間は、上述したように必要総動力が最小になるように定められる。必要総動力は、除霜運転及び排水期間にて電気ヒータ36の作動に要する動力である除霜用動力と、除霜運転及び排水期間の後に、空調運転を再開した場合に要する再開後空調用動力を合算して求められる。
【0205】
上述したように、除霜運転及び排水期間においては、車両用空調装置1の動力として、電気ヒータ36の発熱に要する動力が消費されており、圧縮機11等は停止している為、その他の用途に動力は消費されていない。この為、除霜用動力は、電気ヒータ36
除霜用動力は、単位時間あたりの電気ヒータ36の消費動力に対して、除霜運転の期間と排水期間の和を乗算して求められる。
【0206】
又、再開後空調用動力は、除霜運転及び排水期間を経過した後の空調運転を再開し、予め定められた期間の間、継続して行う場合に要する動力である。再開後空調用動力は、再開後の空調運転における単位時間あたりの圧縮機11の消費動力と、効率悪化係数Ceと、再開後の空調運転における圧縮機11の稼働時間の積によって算出される。
【0207】
ここで、効率悪化係数Ceとは、低温側外気熱交換器43における吸熱能力の低下の度合を示しており、低温側外気熱交換器43に付着している水分の量に応じて変化する係数である。図7に示すように、効率悪化係数Ceは、排水期間における電気ヒータ36の消費動力を積算したヒータ積算動力Phtが大きくなるほど、小さな値を示すように定められる。
【0208】
上述したように、水分量推定部70cは、除霜運転前の空調運転による低温側外気熱交換器43の着霜量と、除霜運転に際して霜の融解に投入された総エネルギ量とを用いて、排水期間移行時に低温側外気熱交換器43表面に付着している水分量を推定する。具体的には、水分量推定部70cは、除霜運転時における電気ヒータ36の消費動力等に基づいて、霜の融解に投入した総エネルギ量を算出する。総エネルギ量の算出に際して、風速等による放熱ロスを考慮することも可能である。
【0209】
そして、水分量推定部70cは、算出された総エネルギ量を、単位重量当たりの氷の融解熱(例えば、約334kj/kg)で除算することで、除霜運転時に融解した霜の総量である水分量を推定することができる。
【0210】
このように、水分量推定部70cによって推定された水分量を用いて、効率悪化係数Ceが定められる。低温側外気熱交換器43に付着している水分量が多い程、低温側外気熱交換器43における吸熱能力が低下する為、効率悪化係数Ceは大きな値に定められる。
【0211】
排水期間設定部70bは、除霜用動力と再開後空調用動力の和から必要総動力を求める式に基づいて、必要総動力が最小になるように、低温側外気熱交換器43の排水特性に見合った排水期間を設定する。これにより、消費動力の無駄を抑えた態様で、低温側外気熱交換器43の吸熱能力を回復させることができ、再開後の空調運転に関する効率を向上させることができる。
【0212】
このように構成された車両用空調装置1の除霜運転、排水期間、再開後の空調運転について、図8を参照して説明する。上述したように、ステップS2において、低温側外気熱交換器43が着霜して除霜運転が必要と判定されると、除霜運転が開始される。図8に示すように、除霜運転の開始時点で、低温側外気熱交換器43の表面には霜Wfが付着している為、低温側外気熱交換器43の熱交換効率は、最も低下した状態になる。
【0213】
ステップS3にて除霜運転の実行を開始すると、電気ヒータ36に対する電力供給が開始され、低温側外気熱交換器43に対して、電気ヒータ36で生じた熱が伝達される。これにより、除霜運転の継続に伴って、低温側外気熱交換器43に付着していた霜Wfが融解して、液体としての水分Wlになる。
【0214】
除霜運転の進行に伴って、低温側外気熱交換器43の表面において、霜Wfの量が減少していき、水分Wlの量が増加していく。又、低温側外気熱交換器43の表面において、霜Wfが融解して水分Wlとなることによって、低温側外気熱交換器43における熱交換効率は徐々に回復していく。
【0215】
低温側外気熱交換器43に付着した霜Wfが全て融解して水分Wlになった時点で、ステップS4の判断処理に基づいて、除霜運転が終了される。その後、ステップS5にて、必要総動力が最小になるように、排水期間が設定される。
【0216】
ステップS6にて、排水期間が開始されると、電気ヒータ36を発熱させた状態で、圧縮機11の作動を停止する。排水期間においては、低温側外気熱交換器43の表面に付着している水分Wlには重力が作用する為、低温側外気熱交換器43表面から落下して排水されていく。
【0217】
これにより、低温側外気熱交換器43表面に付着している水分Wlは徐々に減少していくことになり、低温側外気熱交換器43の熱交換効率も、水分Wlの減少に伴って回復していく。
【0218】
図8に示す場合、低温側外気熱交換器43に付着した水分Wlが全て排水されるまで、排水期間は継続される。従って、排水期間が終了した段階で、低温側外気熱交換器43の熱交換効率は100%に回復する。又、除霜運転及び排水期間の間、電気ヒータ36には一定の電力が供給されている為、除霜運転及び排水期間の長さが長い程、ヒータ消費動力Phは増加する。
【0219】
排水期間が経過した後、ステップS8において、除霜運転前の運転モードで空調運転が再開される。排水期間の経過によって、低温側外気熱交換器43の熱交換性能が100%に回復している為、再開後の空調運転では、最も効率の良い状態で、圧縮機11等を稼働させることができる。この場合における再開後の空調運転に関する圧縮機11の消費動力を圧縮機消費動力Pcという。
【0220】
図8に示すように、車両用空調装置1によれば、除霜運転終了後に排水期間を設けることで、霜Wfの融解により発生した水分Wlを、重力によって低温側外気熱交換器43の表面から排水することができる。これにより、排水期間を経過させることによって、低温側外気熱交換器43の表面から、全ての水分Wlを排水することができるので、低温側外気熱交換器43の熱交換効率を100%に回復させることができる。
【0221】
又、排水期間終了後に空調運転を再開した場合、低温側外気熱交換器43の熱交換効率が100%に回復している為、再開後の空調運転を、最も効率が良い状態で実行することができ、再開後の空調運転における消費動力を低く抑える。
【0222】
そして、車両用空調装置1は、除霜運転、排水期間及び再開後の空調運転を通じて、低温側外気熱交換器43表面における水分Wlの再凍結を抑え、低温側外気熱交換器43の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0223】
続いて、車両用空調装置1の除霜運転、排水期間、再開後の空調運転に関して、低温側外気熱交換器43における排水が完了する前に排水期間を終了する場合について、図9を参照して説明する。
【0224】
尚、除霜運転開始前の状態については、図8に示す例と同様である為、再度の説明を省略する。又、図9における再開後の空調運転における圧縮機消費動力Pcにおいて、図8の場合の圧縮機消費動力Pcを破線で示している。
【0225】
この場合も、ステップS3にて除霜運転の実行を開始すると、電気ヒータ36に対する電力供給が開始され、低温側外気熱交換器43に対して、電気ヒータ36で生じた熱が伝達される。除霜運転の進行に伴って、低温側外気熱交換器43の表面において、霜Wfが融解して水分Wlとなる為、低温側外気熱交換器43における熱交換効率は徐々に回復していく。
【0226】
低温側外気熱交換器43に付着した霜Wfが全て融解して水分Wlになった時点で、ステップS4の判断処理に基づいて、除霜運転が終了される。その後、ステップS5にて、必要総動力が最小になるように、排水期間が設定される。
【0227】
ステップS6にて、排水期間が開始されると、電気ヒータ36を発熱させた状態で、圧縮機11の作動を停止する。排水期間においては、低温側外気熱交換器43の表面に付着している水分Wlには重力が作用する為、低温側外気熱交換器43表面から落下して排水されていく。
【0228】
これにより、低温側外気熱交換器43表面に付着している水分Wlは徐々に減少していくことになり、低温側外気熱交換器43の熱交換効率も、水分Wlの減少に伴って回復していく。
【0229】
ここで、図9に示す場合においては、排水速度推定部70dで推定された排水速度Vdが基準排水速度KVd以下であると判定された場合について説明する。上述したように、排水速度Vdが基準排水速度KVd以下になる場合とは、重力による排水速度が遅すぎ、排水期間が長期化してしまう為、排水期間を継続させるよりも排水期間を終了して空調運転を再開した方が、必要総動力が小さくなる場合を意味する。
【0230】
従って、図9に示すように、排水速度Vdが基準排水速度KVd以下になった時点で、排水期間を終了して、空調運転が再開される。この場合、排水期間の終了時点において、低温側外気熱交換器43の表面には、水分Wlが残存している。この為、低温側外気熱交換器43の熱交換効率も100%まで回復することはなく、残存する水分Wlの量に応じて、100%よりも低い値を示す。
【0231】
この場合においても、除霜運転及び排水期間の間、電気ヒータ36には一定の電力が供給されている。図9に示す場合、上述した図8の場合と比較して、排水期間が短い為、ヒータ消費動力Phも図8の場合よりも少なくなる。
【0232】
ステップS7の判断処理によって、排水期間を途中で終了して、空調運転を再開する場合、残存している水分Wlが、空調運転の再開に伴って再凍結して氷Wiになる場合が想定される。又、低温側外気熱交換器43の表面に水分Wlが残存した状態で、外気OAから吸熱する為、残存している水分に加えて、外気OAに含まれる水に由来する霜Wfが付着することが考えられる。この為、低温側外気熱交換器43の熱交換効率は、空調運転再開時における100%より低い値から、空調運転の実行に伴って低下していく。
【0233】
又、この場合の空調運転の再開時点では、低温側外気熱交換器43の熱交換効率は、100%まで回復していない為、空調運転に際して、外気OAを熱源として十分に利用することができない。つまり、この場合の圧縮機消費動力Pcは、破線で示す図8の場合の圧縮機消費動力Pcよりも多くの動力を必要とする。
【0234】
この為、図8図9に示すように、ステップS7の判定処理により排水期間を途中で終了する場合には、除霜運転及び排水期間におけるヒータ消費動力Phは、図8の場合よりも少なくなる。そして、再開後の空調運転における圧縮機消費動力Pcは、図8の場合よりも多くなる。このように、ステップS7の判定処理により排水期間を途中で終了する場合、ヒータ消費動力Ph及び圧縮機消費動力Pcが変動する為、この場合における必要総動力が、できるだけ小さくなるように調整することができる。
【0235】
図9に示すように、車両用空調装置1によれば、除霜運転終了後に排水期間を設けることで、霜Wfの融解により発生した水分Wlを、重力によって低温側外気熱交換器43の表面から排水することができる。これにより、排水期間を経過させることによって、低温側外気熱交換器43の表面から水分Wlを排水することができるので、低温側外気熱交換器43の熱交換効率を回復させることができる。
【0236】
又、S7の判定処理により排水期間を途中で終了して空調運転を再開した場合、排水期間を継続して長期化させる場合よりも、必要総動力を少なくすることができる。これにより、車両用空調装置1は、除霜運転、排水期間及び再開後の空調運転を通じて、低温側外気熱交換器43表面における水分Wlの再凍結をできるだけ抑え、低温側外気熱交換器43の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0237】
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1によれば、運転モードとして、低温側外気熱交換器43にて外気OAから吸熱した熱を熱源として、送風空気を加熱して車室内に送風する暖房モード等を実現することができる。
【0238】
又、低温側外気熱交換器43における外気OAからの吸熱によって、低温側外気熱交換器43が着霜した場合、車両用空調装置1は、除霜運転を実行して、電気ヒータ36の熱等を利用して、付着した霜を融解させることができる。
【0239】
そして、車両用空調装置1によれば、ステップS3の除霜運転によって、低温側外気熱交換器43に付着した霜を融解させた場合、ステップS6にて排水期間が設けられ、重力を利用して、低温側外気熱交換器43の表面から水分を排水することができる。
【0240】
又、ステップS7~ステップS9にて、排水期間を経た後には、外気OAからの吸熱を伴う空調運転が再開される為、融解により生じた水分が少ない状態で、低温側外気熱交換器43における外気OAからの吸熱が行われる。この為、車両用空調装置1は、融解した水分が低温側外気熱交換器43の表面で再凍結することを防止することができ、低温側外気熱交換器43の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0241】
そして、排水期間を開始する前に、ステップS5にて排水期間が設定される。ステップS5では、除霜用動力と再開後空調用動力を合算して求められる必要総動力が最小になるように、排水期間が定められる。
【0242】
この結果、車両用空調装置1によれば、ステップS5における排水期間の設定に関し、除霜運転、排水期間及び再開後の空調運転を通じて必要となる必要総動力が最小となるように設定される為、融解した水分の再凍結を効率よく防止することができる。これにより、車両用空調装置1は、効率よく、低温側外気熱交換器43の熱交換性能の低下を抑制し、再開後の空調運転の効率を向上させることができる。
【0243】
又、車両用空調装置1によれば、ステップS7において、排水速度Vdが基準排水速度KVd以下になった場合には、排水期間を終了して、除霜運転前の運転モードで空調運転を再開させる。ここで、排水速度が遅くなるほど、低温側外気熱交換器43に付着した水分の排水を完了するまでに時間を要することになる。この為、排水期間における電気ヒータ36の消費動力が必要以上にかかり、必要総動力を増大させる要因になることが想定される。
【0244】
この点、ステップS7にて、排水速度Vdが基準排水速度KVd以下になった場合、排水期間を終了して、空調運転を再開させる為、車両用空調装置1は、必要総動力の増大をできるだけ抑えて、融解した水分の再凍結を効率よく防止することができる。
【0245】
又、車両用空調装置1は、ステップS3の除霜運転及び排水期間に際して、外気ファン19aの作動を停止すると共に、シャッター装置55を閉塞させて、低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入を制限する。
【0246】
低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入を制限することで、除霜運転及び排水期間にて低温側外気熱交換器43へ伝達された熱が、外気OAによって奪われることを抑制することができる。換言すると、車両用空調装置1は、除霜運転及び排水期間にて、外気OAの流入による影響を低減して、低温側外気熱交換器43に伝達された熱を有効に活用することができる。
【0247】
更に、車両用空調装置1は、排水期間において、低温側外気熱交換器43に付着している水分が排水を促進可能な状態である場合に、排水期間中における外気ファン19aの作動を許容すると共に、シャッター装置55を開放状態に制御する。
【0248】
この場合、排水期間中において、低温側外気熱交換器43に対する外気の流入が許容される為、低温側外気熱交換器43の表面に付着した水分には、重力に加えて、外気ファン19aによる送風空気の流れが作用する。この為、車両用空調装置1は、外気の流入を許容することで、排水期間を短縮して、必要総動力を低減させることも可能となる。
【0249】
又、車両用空調装置1によれば、ステップS5の排水期間の設定に際して、除霜運転時に低温側外気熱交換器43に投入した熱量と、除霜運転に要した時間を用いて、低温側外気熱交換器43に付着している水分量が推定される。そして、車両用空調装置1は、推定された水分量に応じた排水期間を設定する為、低温側外気熱交換器43における水分の付着状況に応じた排水期間を、適切に設定することができる。
【0250】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態と異なる第2実施形態について、図10を参照して説明する。第2実施形態では、冷凍サイクル装置10の構成が第1実施形態と相違している。車両用空調装置1を構成する加熱部30、低温側熱媒体回路40等の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0251】
図10に示すように、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10、高温側熱媒体回路31、低温側熱媒体回路40、機器側熱媒体回路50、室内空調ユニット60等を備えている。
【0252】
第2実施形態に係る冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される送風空気を冷却する機能、および高温側熱媒体回路31を循環する高温側熱媒体を加熱する機能を果たす。更に、冷凍サイクル装置10は、バッテリBを冷却するために、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を冷却する機能を果たす。
【0253】
又、冷凍サイクル装置10は、例えば、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路等を切替可能に構成されている。さらに、冷凍サイクル装置10は、空調用の各運転モードにおいて、バッテリBを冷却する運転モードとバッテリBの冷却を行わない運転モードとを切り替えることができる。
【0254】
図10に示すように、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置10には、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14c、冷房用膨張弁14d、冷却用膨張弁14e、複合型熱交換器25、空調用蒸発器15、チラー16等が接続されている。
【0255】
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し圧縮して吐出する。第2実施形態に係る圧縮機11として、第1実施形態と同様の構成を採用することができる。圧縮機11の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの入口側が接続されている。
【0256】
熱媒体冷媒熱交換器12は、第1実施形態と同様に、冷媒通路12aと、熱媒体通路12bとを有している。熱媒体冷媒熱交換器12は、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒と、熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱することができる。
【0257】
熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手構造の第1接続部13aの流入口側が接続されている。更に、冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2接続部13b~第6接続部13fを備えている。これらの第2接続部13b~第6接続部13fの基本的構成は、第1接続部13aと同様である。
【0258】
第1接続部13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14cの入口側が接続されている。第1接続部13aの他方の流出口には、冷媒バイパス通路22aを介して、第2接続部13bの一方の流入口側が接続されている。冷媒バイパス通路22aには、除湿用開閉弁17aが配置されている。
【0259】
除湿用開閉弁17aは、第1接続部13aの他方の流出口側と第2接続部13bの一方の流入口側とを接続する冷媒バイパス通路22aを開閉する電磁弁である。さらに、冷凍サイクル装置10は、後述するように、暖房用開閉弁17bを備えている。暖房用開閉弁17bの基本的構成は、除湿用開閉弁17aと同様である。
【0260】
除湿用開閉弁17aおよび暖房用開閉弁17bは、冷媒通路を開閉することで、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、除湿用開閉弁17aおよび暖房用開閉弁17bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部である。除湿用開閉弁17aおよび暖房用開閉弁17bは、制御装置70から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0261】
暖房用膨張弁14cは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aから流出した高圧冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整する暖房用減圧部である。暖房用膨張弁14cは、第1実施形態における第1膨張弁14a等と同様の構成である。
【0262】
更に、冷凍サイクル装置10は、後述するように、冷房用膨張弁14d及び冷却用膨張弁14eを備えている。冷房用膨張弁14d及び冷却用膨張弁14eの基本的構成は、暖房用膨張弁14cと同様である。
【0263】
暖房用膨張弁14c、冷房用膨張弁14d及び冷却用膨張弁14eは、全開機能及び全閉機能をそれぞれ有している。従って、暖房用膨張弁14c、冷房用膨張弁14d及び冷却用膨張弁14eは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。
【0264】
暖房用膨張弁14cの出口には、室外熱交換器19の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器19は、暖房用膨張弁14cから流出した冷媒と、外気ファン19aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器19は、駆動装置室内の前方側に配置されている。この為、車両走行時には、室外熱交換器19に走行風を当てることができる。室外熱交換器19は、外気熱交換器の一例に相当する。
【0265】
室外熱交換器19は、冷房モード時等において、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する。又、暖房モード時等においては、室外熱交換器19は、暖房用膨張弁14cにて減圧された低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。そして、第2実施形態の外気ファン19aは、室外熱交換器19に対しても外気を送風するように配置されている。
【0266】
室外熱交換器19の冷媒出口には、第3接続部13cの流入口側が接続されている。第3接続部13cの一方の流出口には、暖房用通路22bを介して、第4接続部13dの一方の流入口側が接続されている。暖房用通路22bには、この冷媒通路を開閉する暖房用開閉弁17bが配置されている。
【0267】
第3接続部13cの他方の流出口には、第2接続部13bの他方の流入口側が接続されている。第3接続部13cの他方の流出口側と第2接続部13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁18が配置されている。逆止弁18は、第3接続部13c側から第2接続部13b側へ冷媒が流れることを許容し、第2接続部13b側から第3接続部13c側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0268】
第2接続部13bの流出口には、第5接続部13eの流入口側が接続されている。第5接続部13eの一方の流出口には、冷房用膨張弁14dの入口側が接続されている。第5接続部13eの他方の流出口には、冷却用膨張弁14eの入口側が接続されている。
【0269】
冷房用膨張弁14dは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、第5接続部13eを通過した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷房用減圧部である。
【0270】
冷房用膨張弁14dの出口には、空調用蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。空調用蒸発器15は、冷房用膨張弁14dにて減圧された低圧冷媒と送風機62から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する。
【0271】
冷却用膨張弁14eは、少なくともバッテリBの冷却を行う運転モード時に、第5接続部13eを通過した冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷却用減圧部である。
【0272】
冷却用膨張弁14eの出口には、チラー16の冷媒通路16aの入口側が接続されている。チラー16は、冷却用膨張弁14eにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路16aと、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路16bとを有している。
【0273】
そして、チラー16は、冷媒通路16aを流通する低圧冷媒と、熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器である。チラー16の冷媒通路16aの出口には、第6接続部13fの他方の流入口側が接続されている。
【0274】
そして、空調用蒸発器15の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁20の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁20は、空調用蒸発器15の着霜を抑制するために、空調用蒸発器15における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁20は、空調用蒸発器15の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。
【0275】
これにより、蒸発圧力調整弁20は、空調用蒸発器15における冷媒蒸発温度を、空調用蒸発器15の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。蒸発圧力調整弁20の出口には、第6接続部13fの一方の流入口側が接続されている。そして、第6接続部13fの流出口には、第4接続部13dの他方の流入口側が接続されている。
【0276】
第4接続部13dの流出口には、アキュムレータ21の入口側が接続されている。アキュムレータ21は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ21の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0277】
以上の説明から明らかなように、第5接続部13eは、複合型熱交換器25から流出した冷媒の流れを分岐する分岐部として機能する。また、第6接続部13fは、空調用蒸発器15から流出した冷媒の流れとチラー16から流出した冷媒の流れとを合流させて、圧縮機11の吸入側へ流出させる合流部である。
【0278】
そして、空調用蒸発器15およびチラー16は、冷媒流れに対して互いに並列的に接続されている。さらに、冷媒バイパス通路22aは、熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒を、分岐部の上流側へ導いている。暖房用通路22bは、複合型熱交換器25から流出した冷媒を、圧縮機11の吸入口側へ導いている。
【0279】
尚、上述したように、第2実施形態に係る加熱部30は、高温側熱媒体回路31によって構成されており、高温側熱媒体回路31、高温側ポンプ32、ヒータコア33、高温側外気熱交換器34、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36等を有している。
【0280】
又、第2実施形態に係る低温側熱媒体回路40は、第1実施形態と同様に、低温側ポンプ41、機器用熱交換部42、低温側外気熱交換器43、低温側流量調整弁44、機器側熱媒体回路50を有している。そして、第2実施形態に係る機器側熱媒体回路50は、発熱機器51、機器バイパス流路52、機器側ポンプ53、機器側三方弁54等を有している。従って、第2実施形態に係る高温側熱媒体回路31、低温側熱媒体回路40及び機器側熱媒体回路50について、制御装置70は、第1実施形態と同様の制御を行うことができる。
【0281】
次に、第2実施形態に係る車両用空調装置の作動について説明する。車両用空調装置1は、車室内の空調及びバッテリBの冷却を行うために、冷媒回路を切替可能に構成されている。
【0282】
具体的に、車両用空調装置1は、車室内の空調を行うために、暖房モードの冷媒回路、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路等に切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、予め制御装置70に記憶されている空調制御プログラムが実行されることによって行われる。
【0283】
空調制御プログラムは、操作パネル71のオートスイッチが投入(ON)されると実行される。空調制御プログラムでは、各種制御用センサの検出信号および操作パネルの操作信号に基づいて、運転モードを切り替える。
【0284】
第2実施形態において、外気OAを熱源として利用して、送風空気を加熱する運転モードの一つとして、第1暖房モードを挙げることができる。第1暖房モードでは、低温側熱媒体回路40に配置された低温側外気熱交換器43にて外気OAから吸熱し、冷凍サイクルで汲み上げることによって、高温側熱媒体回路31側で送風空気の加熱に利用する。換言すると、第1暖房モードは、第1実施形態における暖房モードと同様の構成となる。
【0285】
具体的には、第1暖房モードでは、制御装置70は、暖房用膨張弁14c及び冷房用膨張弁14dを全閉し、冷却用膨張弁14eを絞り状態にする。又、制御装置70は、除湿用開閉弁17aを開き、暖房用開閉弁17bを閉じる。
【0286】
これにより、第1暖房モードの冷凍サイクル装置10では、冷媒は、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、除湿用開閉弁17a、冷却用膨張弁14e、チラー16、アキュムレータ21、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0287】
又、第1暖房モードの高温側熱媒体回路31について、制御装置70は、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36を、第1暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
【0288】
又、第1暖房モードの低温側熱媒体回路40に関し、制御装置70は、低温側熱媒体の循環径路が第1暖房モードに適した状態になるように、低温側ポンプ41及び低温側流量調整弁44を制御する。これにより、低温側熱媒体回路40において、低温側熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー16、低温側流量調整弁44、低温側外気熱交換器43、低温側ポンプ41の順で循環する。
【0289】
そして、第1暖房モードの機器側熱媒体回路50に関して、制御装置70は、熱媒体の循環径路が第1暖房モードに適した状態になるように、機器側ポンプ53及び機器側三方弁54を制御する。これにより、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ53、発熱機器51、機器側三方弁54、機器バイパス流路52、機器側ポンプ53の順で循環する。
【0290】
このように、第2実施形態に係る車両用空調装置1の第1暖房モードによれば、低温側外気熱交換器43で外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル装置10で汲み上げて、車室内に送風される送風空気を加熱する熱源として利用することができる。
【0291】
ここで、第2実施形態に係る車両用空調装置1においては、外気OAを熱源として利用して送風空気を加熱する運転モードの一つとして、第2暖房モードを実行することができる。第2暖房モードでは、室外熱交換器19にて外気OAから吸熱し、高温側熱媒体回路31側で送風空気の加熱に利用する。
【0292】
具体的には、第2暖房モードでは、制御装置70は、暖房用膨張弁14cを絞り状態として、冷房用膨張弁14d及び冷却用膨張弁14eを全閉状態とする。又、制御装置70は、暖房用開閉弁17bを開き、除湿用開閉弁17aを閉じる。
【0293】
これにより、第1暖房モードの冷凍サイクル装置10では、冷媒は、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14c、室外熱交換器19、暖房用開閉弁17b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0294】
又、第2暖房モードの高温側熱媒体回路31について、制御装置70は、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36を、第2暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
【0295】
そして、第2暖房モードに係る冷凍サイクル装置10において、冷媒は、冷却用膨張弁14e及びチラー16を流通していない。この為、第2暖房モードの低温側熱媒体回路40に関しては、制御装置70は、低温側熱媒体の循環が停止するように、低温側ポンプ41の作動を停止させる。
【0296】
第2暖房モードの機器側熱媒体回路50に関して、制御装置70は、熱媒体の循環径路が第2暖房モードに適した状態になるように、機器側ポンプ53及び機器側三方弁54を制御する。これにより、機器側熱媒体回路50の熱媒体は、機器側ポンプ53、発熱機器51、機器側三方弁54、機器バイパス流路52、機器側ポンプ53の順で循環する。
【0297】
このように、第2実施形態に係る車両用空調装置1の第2暖房モードによれば、室外熱交換器19で外気OAから吸熱した熱を、車室内に送風される送風空気を加熱する熱源として利用することができる。
【0298】
上述したように、車両用空調装置1の第1暖房モードでは、低温側外気熱交換器43にて外気から吸熱し、外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用している。一方、第2暖房モードでは、室外熱交換器19にて外気から吸熱し、外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用している。
【0299】
従って、外気が低温高湿度である場合の第1暖房モードでは、複合型熱交換器25の低温側外気熱交換器43の表面に着霜が生じ、低温側外気熱交換器43における熱交換性能を低下させてしまう。一方、外気が低温高湿度である場合の第2暖房モードでは、室外熱交換器19の表面に着霜が生じ、室外熱交換器19における熱交換性能を低下させてしまう。
【0300】
この為、第2実施形態に係る車両用空調装置1では、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転と、室外熱交換器19を対象とした除霜運転が行われる。先ず、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転について説明する。
【0301】
低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転の場合、制御装置70は、先ず、圧縮機11の作動を停止する。これにより、冷凍サイクル装置10における冷媒の循環が停止する為、低温側外気熱交換器43における着霜の進行を抑制することができる。
【0302】
又、高温側熱媒体回路31においては、制御装置70は、電気ヒータ36を発熱させて高温側熱媒体を加熱する。そして、制御装置70は、除霜運転に適した循環径路となるように、高温側ポンプ32及び高温側流量調整弁35を制御する。
【0303】
これにより、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転において、高温側熱媒体回路31の高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、電気ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。同時に、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、高温側外気熱交換器34、高温側ポンプ32の順に流れて循環する。
【0304】
この結果、電気ヒータ36にて加熱された高温側熱媒体が、高温側外気熱交換器34を流通することになる為、複合型熱交換器25の熱交換フィン25fを介して、電気ヒータ36の熱を低温側外気熱交換器43に伝達することができる。即ち、低温側外気熱交換器43に付着している霜を、電気ヒータ36を熱源として利用して融解させて除霜することができる。
【0305】
そして、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転における低温側熱媒体回路40では、制御装置70は、この除霜運転に適した態様となるように、低温側ポンプ41及び低温側流量調整弁44を制御する。具体的には、制御装置70は、低温側ポンプ41の作動を停止すると共に、チラー16側の流入出口と機器用熱交換部42側の流入出口を連通させると共に、低温側外気熱交換器43側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁44を制御する。
【0306】
更に、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転の機器側熱媒体回路50に関し、制御装置70は、機器側ポンプ53を作動させる。同時に、制御装置70は、発熱機器51側の流入出口と低温側外気熱交換器43側の流入出口を連通させ、機器バイパス流路52側の流入出口を閉塞させるように、機器側三方弁54を制御する。
【0307】
これにより、機器側熱媒体回路50において、熱媒体は、機器側ポンプ53、発熱機器51、機器側三方弁54、低温側外気熱交換器43、機器側ポンプ53の順に流れて循環する。この結果、発熱機器51の排熱で加熱された熱媒体が低温側外気熱交換器43に流入することになる為、発熱機器51の排熱を低温側外気熱交換器43に伝達することができる。即ち、低温側外気熱交換器43に付着している霜を、発熱機器51の排熱を熱源として利用して融解させて除霜することができる。
【0308】
又、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転において、制御装置70は、外気ファン19aの作動を停止し、シャッター装置55の開度を下げて、閉塞状態にすることで、低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入量が最小になるように制御する。これにより、熱が外気OAによって奪われることが少なくなる為、低温側外気熱交換器43に加えられた熱を霜の融解に効率よく利用することができる。
【0309】
つまり、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転に関しては、図5に示す制御プログラムと同様の内容を実行することで、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0310】
次に、室外熱交換器19を対象とした除霜運転について説明する。室外熱交換器19を対象とした除霜運転として、第2実施形態に係る車両用空調装置1では、ホットガス除霜モードが採用されている。ホットガス除霜モードは、圧縮機11の圧縮仕事等によって、室外熱交換器19へ流入する気相冷媒の温度を上昇させることによって除霜を行う運転モードである。
【0311】
ホットガス除霜モードにおいて、制御装置70は、除湿用開閉弁17aを閉じ、暖房用開閉弁17bを開く。又、制御装置70は、暖房用膨張弁14cを絞り状態として、冷房用膨張弁14d及び冷却用膨張弁14eを全閉状態にする。
【0312】
これにより、ホットガス除霜モードの場合の冷凍サイクル装置10では、冷媒は、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14c、室外熱交換器19、暖房用開閉弁17b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に流れて循環する。
【0313】
又、ホットガス除霜モードにおいて、制御装置70は、低温側ポンプ41及び高温側ポンプ32を何れも停止させた状態にしておく。更に、ホットガス除霜モードにおいても、制御装置70は、外気ファン19aの作動を停止し、シャッター装置55の開度を下げて、閉塞状態にすることで、低温側外気熱交換器43に対する外気OAの流入量が最小になるように制御する。
【0314】
従って、室外熱交換器19には、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が殆ど放熱することなく流入する。この為、室外熱交換器19に対して、圧縮機11の圧縮仕事によって加えられた高圧冷媒の有する熱を伝達することができ、室外熱交換器19の除霜を行うことができる。
【0315】
第2実施形態に係る車両用空調装置1では、室外熱交換器19を対象とするホットガス除霜運転が完了した場合も、低温側外気熱交換器43を対象とする場合と同様に、排水期間を設定する。
【0316】
これにより、ホットガス除霜によって融解した水分が重力によって、室外熱交換器19表面から排水される為、除霜運転及び排水期間を経過した後に、室外熱交換器19の表面に付着している水分が少ない状態にすることができる。
【0317】
又、室外熱交換器19を対象とする場合でも、除霜運転及び排水期間を経過した後は、外気OAからの吸熱を伴う空調運転が再開される為、融解により生じた水分が少ない状態で、室外熱交換器19における外気OAからの吸熱が行われる。この為、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、融解した水分が室外熱交換器19の表面で再凍結することを防止することができ、室外熱交換器19の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0318】
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル装置10の構成が異なる場合であっても、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
【0319】
又、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、室外熱交換器19に対する除霜運転を行った場合も、除霜運転の終了後に排水期間を設け、排水期間を経過した後に空調運転を再開させる。従って、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、室外熱交換器19についても、除霜に伴い融解した水分の再凍結を防止することができ、室外熱交換器19の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0320】
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。
【0321】
(1)上述した実施形態において、低温側外気熱交換器43を対象とした除霜運転に際しては、圧縮機11の作動を停止して、圧縮機11の冷媒吐出能力を0にしていたが、この態様に限定されるものではない。低温側外気熱交換器43を対象とした除霜を行う場合の圧縮機11の冷媒吐出能力が空調運転時よりも低くなっていれば、除霜運転時に圧縮機11を作動させておくことも可能である。このように構成することで、圧縮機11の制御性を向上させることができる。
【0322】
(2)又、上述した実施形態においては、図2に示すように、高温側外気熱交換器34と低温側外気熱交換器43を、熱交換フィン25fにて熱的に接合して、複合型熱交換器25を構成していたが、この態様に限定されるものでない。例えば、高温側外気熱交換器34と、低温側外気熱交換器43をそれぞれ独立した外気熱交換器として構成することも可能である。この場合において、高温側外気熱交換器34から低温側外気熱交換器43への熱の伝達方法として、高温側外気熱交換器34と低温側外気熱交換器43の間を流れる空気を利用しても良い。
【0323】
(3)上述した実施形態においては、ステップS5における排水期間の設定に際して、除霜用動力と再開後空調用動力を合算した必要総動力が最小になるように、排水期間を定めていたが、この態様に限定されるものではない。排水期間の長さとして、車両用空調装置1の設計点や実験等によって予め定められた長さにすることも可能である。
【0324】
(4)上述した実施形態では、ステップS2やステップS4の判定処理において、低温側外気熱交換器43の流出口側における低温側熱媒体の温度を、第5熱媒体温度センサ74eで検出して用いていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、低温側外気熱交換器43の表面にサーミスタを配置して、サーミスタを用いて判定処理を行っても良い。
【0325】
(5)又、上述した実施形態では、図8図9に示すように、排水期間の経過から空調運転を再開する際に、電気ヒータ36をオフにするように構成していたが、この態様に限定されるものではない。空調運転を再開する際に、電気ヒータ36の出力を、時間の経過と共に徐々に下げるように制御することも可能である。これにより、再開後の空調運転における吹出温度の制御性を向上させることができる。
【0326】
(6)そして、上述した実施形態の高温側熱媒体回路31、低温側熱媒体回路40及び機器側熱媒体回路50では、熱媒体の循環径路を切り替える構成として、高温側流量調整弁35等の三方流量調整弁を採用していたが、この態様に限定されるものではない。高温側熱媒体回路31等において、熱媒体の循環径路を切り替えることができれば、種々の構成を採用することができ、例えば、複数のシャット弁等を組み合わせても良いし、2つ分の三方流量調整弁の機能を統合した五方弁を採用しても良い。
【0327】
(7)上述した実施形態では、熱媒体回路の熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用した例を説明したが、熱媒体はこれに限定されない。例えば、ジメチルポリシロキサン、或いはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を、熱媒体として採用することができる。
【符号の説明】
【0328】
1 車両用空調装置
10 冷凍サイクル装置
11 圧縮機
12 熱媒体冷媒熱交換器
30 加熱部
43 低温側外気熱交換器
70 制御装置
70a 除霜実行部
70b 排水期間設定部
70e 運転制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10