(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20241119BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241119BHJP
H02M 7/757 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 M
H02M7/757
(21)【出願番号】P 2020188257
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】ラクスマン マハルジャン
(72)【発明者】
【氏名】丸山 宏二
(72)【発明者】
【氏名】田重田 稔久
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特許第6689472(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/094379(WO,A1)
【文献】特開2000-060142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/757
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統交流電源との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサを有する主回路、前記電力が入出力される一対の入出力端子、及び前記一対の入出力端子を短絡可能に設けられた機械スイッチをそれぞれ有し、前記一対の入出力端子が直列に接続された複数のセル変換器と、
前記複数のセル変換器に設けられたそれぞれの前記主回路及び前記機械スイッチを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記複数のセル変換器のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられた前記機械スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、前記対象セル変換器の交流出力電圧
が反映された電圧指令値に基づいて残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御
し、
前記電圧指令値は、前記複数のセル変換器の交流出力電圧の合計の電圧を追従させる指令値である
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前
記電圧指令値から前記対象セル変換器の交流出力電圧を減算した値に基づいて前記残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御する
請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記対象セル変換器に設けられたコンデンサの直流電圧及び前記複数のセル変換器に流れる電流の極性に応じて、前記切替期間における前記対象セル変換器の交流出力電圧を算出する
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
系統交流電源との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサを有する主回路、前記電力が入出力される一対の入出力端子、及び前記一対の入出力端子を短絡可能に設けられた機械スイッチをそれぞれ有し、前記一対の入出力端子が直列に接続された複数のセル変換器と、
前記複数のセル変換器に設けられたそれぞれの前記主回路及び前記機械スイッチを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記複数のセル変換器のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられた前記機械スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、前記対象セル変換器の交流出力電圧を用いて残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御し、前記対象セル変換器に設けられたコンデンサの直流電圧及び前記複数のセル変換器に流れる電流の極性に応じて、前記切替期間における前記対象セル変換器の交流出力電圧を算出する
電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のセル変換器の交流出力電圧の合計の電圧を追従させる電圧指令値から前記対象セル変換器の交流出力電圧を減算した値に基づいて前記残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御する
請求
項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
系統交流電源との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサを有する主回路、前記電力が入出力される一対の入出力端子、及び前記一対の入出力端子を短絡可能に設けられた機械スイッチをそれぞれ有し、前記一対の入出力端子が直列に接続された複数のセル変換器と、
前記複数のセル変換器に設けられたそれぞれの前記主回路及び前記機械スイッチを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記複数のセル変換器のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられた前記機械スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、前記対象セル変換器の交流出力電圧を用いて残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御し、前記複数のセル変換器の交流出力電圧の合計の電圧を追従させる電圧指令値から前記対象セル変換器の交流出力電圧を減算した値に基づいて
前記残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御す
る
電力変換装置。
【請求項7】
前記切替期間は、前記制御部が前記対象セル変換器に設けられた前記機械スイッチに切り替えを要求してから該機械スイッチの接点が閉じるまでの期間である
請求項1
から6までのいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記切替期間及び該切替期間の後の期間において、前記対象セル変換器に設けられた前記主回路の動作を停止し、
前記残余の前記セル変換器に設けられた前記主回路の動作を継続する
請求項
1から
7までのいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記主回路は、直列に接続された第一半導体スイッチ及び第二半導体スイッチと、直列に接続された第三半導体スイッチ及び第四半導体スイッチとを有し、
前記第一半導体スイッチ及び前記第二半導体スイッチと、前記第三半導体スイッチ及び前記第四半導体スイッチと、前記コンデンサとは、並列に接続され、
前記一対の入出力端子の一方は、前記第一半導体スイッチ及び前記第二半導体スイッチの接続部に接続され、
前記一対の入出力端子の他方は、前記第三半導体スイッチ及び前記第四半導体スイッチの接続部に接続されている
請求項1から
8までのいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記主回路は、前記第一半導体スイッチ、前記第二半導体スイッチ、前記第三半導体スイッチ及び前記第四半導体スイッチのそれぞれに逆並列接続されたダイオードを有する
請求項
9に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に接続された複数のセル変換器を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量・高圧用途に適した次世代トランスレス電力変換器として、モジューラーマルチレベルカスケード変換器(Modular Multilevel Converter:MMC)が注目されている。特許文献1には、MMCが開示されている。MMCは、リアクトルとN台のセル変換器の直列体から構成される。一般的に、MMCの信頼性の向上を目的に、N台のセル変換器のそれぞれがバイパススイッチを有するとともに、N台のセル変換器の中にM台の冗長セル変換器が含まれる。このように、M台の冗長セル変換器を設けることによって、セル変換器のいずれかM台まで故障した場合でも、故障したセル変換器それぞれのバイパススイッチがオン状態とされる。これにより、バイパススイッチに電流が流れるので、故障したセル変換器に電流が流れなくなり、残りの健全なセル変換器のみで電力変換器の定格運転が継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5800154号
【文献】特許第6559387号
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. Rodriguez, P.W. Hammond, J. Pontt, R. Musalem, P. Lezana and M.J. Escobar, “Operation of medium-voltage drive under faulty conditions,” in IEEE Trans. Ind. Electron., vol. 52, no. 4, Aug. 2005, pp. 1080-1085.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示された方法では、セル変換器が故障した場合、MMCが一旦停止する。その後、故障したセル変換器のバイパススイッチがオン状態に切り替えられ、残りの健全なセル変換器のみで運転が再開される。この方法は、MMCが一旦停止されるため、運転再開までの時間が長くなり、セル変換器の故障後すぐに復旧が求められるシステムには適用し難いという問題がある。
【0006】
セル変換器の故障後運転再開までの時間が短い方法として、セル変換器の故障が発生した場合に故障したセル変換器でのスイッチング動作のみ停止し、残りの健全なセル変換器でのスイッチング動作を継続する方法が提案されている(例えば特許文献2)。しかし、この方法では、セル変換器に故障が発生してからバイパススイッチの投入完了までの期間に、故障したセル変換器の交流出力電圧によって電流制御の性能が低下し無効電流補償ができない、又は無効電流補償の性能が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、セル変換器に対するバイパス要求があった場合でも無効電流補償を継続することができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様による電力変換装置は、系統交流電源との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサを有する主回路、前記電力が入出力される一対の入出力端子、及び前記一対の入出力端子を短絡可能に設けられた機械スイッチをそれぞれ有し、前記一対の入出力端子が直列に接続された複数のセル変換器と、前記複数のセル変換器に設けられたそれぞれの前記主回路及び前記機械スイッチを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記複数のセル変換器のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられた前記機械スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、前記対象セル変換器の交流出力電圧が反映された電圧指令値に基づいて残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御し、前記電圧指令値は、前記複数のセル変換器の交流出力電圧の合計の電圧を追従させる指令値である。
また、上記目的を達成するために、本発明の第2態様による電力変換装置は、系統交流電源との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサを有する主回路、前記電力が入出力される一対の入出力端子、及び前記一対の入出力端子を短絡可能に設けられた機械スイッチをそれぞれ有し、前記一対の入出力端子が直列に接続された複数のセル変換器と、前記複数のセル変換器に設けられたそれぞれの前記主回路及び前記機械スイッチを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記複数のセル変換器のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられた前記機械スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、前記対象セル変換器の交流出力電圧を用いて残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御し、前記対象セル変換器に設けられたコンデンサの直流電圧及び前記複数のセル変換器に流れる電流の極性に応じて、前記切替期間における前記対象セル変換器の交流出力電圧を算出する。
さらに、上記目的を達成するために、本発明の第3態様による電力変換装置は、系統交流電源との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサを有する主回路、前記電力が入出力される一対の入出力端子、及び前記一対の入出力端子を短絡可能に設けられた機械スイッチをそれぞれ有し、前記一対の入出力端子が直列に接続された複数のセル変換器と、前記複数のセル変換器に設けられたそれぞれの前記主回路及び前記機械スイッチを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記複数のセル変換器のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられた前記機械スイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、前記対象セル変換器の交流出力電圧を用いて残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御し、前記複数のセル変換器の交流出力電圧の合計の電圧を追従させる電圧指令値から前記対象セル変換器の交流出力電圧を減算した値に基づいて前記残余の前記セル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の各態様によれば、セル変換器に対するバイパス要求があった場合でも無効電流補償を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による電力変換装置の概略構成を示す回路ブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による電力変換装置に備えらえた制御部の概略構成を示すブロック線図である。
【
図3】本発明の一実施形態による電力変換装置の制御部に設けられた電流制御部の概略構成を示すブロック線図である。
【
図4】本発明の一実施形態による電力変換装置及び比較例による電力変換装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】比較例による電力変換装置と系統交流電源との間で入出力される電力に関する電圧及び電流のシミュレーション結果を示している。
【
図6】本発明の一実施形態による電力変換装置と系統交流電源との間で入出力される電力に関する電圧及び電流のシミュレーション結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(電力変換装置の構成)
本発明の一実施形態による電力変換装置について
図1から
図6を用いて説明する。まず、本実施形態による電力変換装置の概略構成について
図1から
図3を用いて説明する。以下、本実施形態による電力変換装置1について、電力系統に連系することができる単相モジュラーマルチレベル変換器(MMC)を例にとって説明する。本実施形態による電力変換装置1は、無効電力補償装置に適用することができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態による電力変換装置1は、系統交流電源9に接続されている。電力変換装置1は、系統交流電源9との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサCを有する主回路301、当該電力が入出力される一対の入出力端子303,304、及び一対の入出力端子303,304を短絡可能に設けられたバイパススイッチ(機械スイッチの一例)302をそれぞれ有し、一対の入出力端子303,304が直列に接続された複数のセル変換器31,32,33,34,35を備えている。セル変換器31,32,33,34,35によって単相クラスタ3が構成されている。電力変換装置1は、複数のセル変換器31~35に設けられたそれぞれの主回路301及びバイパススイッチ302を制御する制御部5を備えている。
【0014】
セル変換器31~35のそれぞれは、セル変換器31~35のうちのいずれか4個の組み合わせによって系統交流電源9との間で交流電力の入出力ができる駆動能力を有している。このため、電力変換装置1は、セル変換器31~35の全てが故障していない健全な状態では、駆動能力を低減させた状態(本実施形態では、最大駆動能力の4/5の駆動能力)でセル変換器31~35を動作させる。また、電力変換装置1は、セル変換器31~35のうちのいずれか1つが故障した場合には、残余のセル変換器を最大の駆動能力で動作させて単相クラスタ3と系統交流電源9との間で交流電力を入出力することができる。このように、セル変換器31,32,33,34,35のうちの1つ(例えばセル変換器35)は、冗長用のセル変換器として設けられている。
【0015】
電力変換装置1は、5個のセル変換器31~35を備えているが、セル変換器の個数は5個に限られず、2個から4個又は6個以上のセル変換器を備えていてもよい。また、電力変換装置1では、複数のセル変換器のうち、2個以上のセル変換器が冗長用のセル変換器として設けられていてもよい。
【0016】
電力変換装置1は、セル変換器31と系統交流電源9との間に配置されたリアクトルLを備えている。リアクトルLは、例えば単相クラスタ3に流れる電流を平滑化するために設けられている。また、リアクトルLは、例えば単相クラスタ3に過電流が流れることを防止するために設けられている。
【0017】
ここで、セル変換器31~35の構成について説明する。セル変換器31~35は、互いに同様の構成を有している。このため、セル変換器31~35の構成についてセル変換器31を例にとって説明する。
【0018】
図1に示すように、セル変換器31に設けられた主回路301は、直列に接続された半導体スイッチQ1(第一半導体スイッチの一例)及び半導体スイッチQ2(第二半導体スイッチの一例)と、直列に接続された半導体スイッチQ3(第三半導体スイッチの一例)及び半導体スイッチQ4(第四半導体スイッチの一例)とを有している。半導体スイッチQ1~Q4は、例えばMOS型電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成されている。
【0019】
半導体スイッチQ1及び半導体スイッチQ2と、半導体スイッチQ3及び半導体スイッチQ4と、コンデンサCとは、並列に接続されている。入出力端子303(一対の入出力端子の一方の一例)は、半導体スイッチQ1及び半導体スイッチQ2の接続部に接続され、入出力端子304(前記一対の入出力端子の他方の一例)は、半導体スイッチQ3及び半導体スイッチQ4の接続部に接続されている。
【0020】
主回路301は、半導体スイッチQ1、半導体スイッチQ2、半導体スイッチQ3及び半導体スイッチQ4のそれぞれに逆並列接続された還流用ダイオードD1,D2,D3,D4(ダイオードの一例)を有している。
【0021】
本実施形態では、半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4は、パワー半導体素子で構成され、例えばn型のSiC-MOSFETで構成されている。半導体スイッチQ1のドレイン端子は、還流用ダイオードD1のカソード端子、半導体スイッチQ3のドレイン端子及び還流用ダイオードD3のカソード端子に接続されている。半導体スイッチQ1のソース端子は、還流用ダイオードD1のアノード端子、半導体スイッチQ2のドレイン端子及び還流用ダイオードD2のカソード端子に接続されている。半導体スイッチQ1のゲート端子は、制御部5に接続されている。これにより、半導体スイッチQ1のゲート端子には制御部5から出力される制御信号Sg1が入力され、半導体スイッチQ1のオン(導通)/オフ(非導通)が制御される。
【0022】
半導体スイッチQ2のソース端子は、還流用ダイオードD2のアノード端子、半導体スイッチQ4のソース端子及び還流用ダイオードD4のアノード端子に接続されている。半導体スイッチQ2のゲート端子は、制御部5に接続されている。これにより、半導体スイッチQ2のゲート端子には制御部5から出力される制御信号Sg2が入力され、半導体スイッチQ2のオン(導通)/オフ(非導通)が制御される。
【0023】
半導体スイッチQ3のソース端子は、還流用ダイオードD3のアノード端子、半導体スイッチQ4のドレイン端子及び還流用ダイオードD4のカソード端子に接続されている。半導体スイッチQ3のゲート端子は、制御部5に接続されている。これにより、半導体スイッチQ3のゲート端子には制御部5から出力される制御信号Sg3が入力され、半導体スイッチQ3のオン(導通)/オフ(非導通)が制御される。
【0024】
半導体スイッチQ4のゲート端子は、制御部5に接続されている。これにより、半導体スイッチQ4のゲート端子には制御部5から出力される制御信号Sg4が入力され、半導体スイッチQ4のオン(導通)/オフ(非導通)が制御される。
【0025】
コンデンサCの一方の電極は、半導体スイッチQ1のドレイン端子、還流用ダイオードD1のカソード端子、半導体スイッチQ3のドレイン端子及び還流用ダイオードD3のカソード端子に接続されている。コンデンサCの他方の電極は、半導体スイッチQ2のソース端子、還流用ダイオードD2のアノード端子、半導体スイッチQ4のソース端子及び還流用ダイオードD4のアノード端子に接続されている。
【0026】
半導体スイッチQ1のソース端子、還流用ダイオードD1のアノード端子、半導体スイッチQ2のドレイン端子及び還流用ダイオードD2のカソード端子は、入出力端子303及びバイパススイッチ302の一端子に接続されている。半導体スイッチQ3のソース端子、還流用ダイオードD3のアノード端子、半導体スイッチQ4のドレイン端子及び還流用ダイオードD4のカソード端子は、入出力端子304及びバイパススイッチ302の他端子に接続されている。このように、入出力端子303,304及びバイパススイッチ302は、半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4の端子同士が接続された接続部のうちのコンデンサCが接続されていない接続部に接続されている。
【0027】
セル変換器31に設けられた入出力端子303及びバイパススイッチ302の一端子は、リアクトルLの一端子に接続されている。リアクトルLの他端子は、系統交流電源9の正極側端子に接続されている。セル変換器31に設けられた入出力端子304及びバイパススイッチ302の他端子は、セル変換器32に設けられた入出力端子303及びバイパススイッチ302の一端子に接続されている。
【0028】
セル変換器32に設けられた入出力端子304及びバイパススイッチ302の他端子は、セル変換器33に設けられた入出力端子303及びバイパススイッチ302の一端子に接続されている。セル変換器33に設けられた入出力端子304及びバイパススイッチ302の他端子は、セル変換器34に設けられた入出力端子303及びバイパススイッチ302の一端子に接続されている。
【0029】
セル変換器34に設けられた入出力端子304及びバイパススイッチ302の他端子は、セル変換器35に設けられた入出力端子303及びバイパススイッチ302の一端子に接続されている。セル変換器35に設けられた入出力端子304及びバイパススイッチ302の他端子は、系統交流電源9の負極側端子に接続されている。
【0030】
図1に示すように、制御部5は、半導体スイッチQ1のスイッチングを制御する制御信号Sg1をセル変換器31~35に設けられた主回路301のそれぞれに個別に出力する。制御部5は、半導体スイッチQ2のスイッチングを制御する制御信号Sg2をセル変換器31~35に設けられた主回路301のそれぞれに個別に出力する。制御部5は、半導体スイッチQ3のスイッチングを制御する制御信号Sg3をセル変換器31~35に設けられた主回路301のそれぞれに個別に出力する。制御部5は、半導体スイッチQ4のスイッチングを制御する制御信号Sg4をセル変換器31~35に設けられた主回路301のそれぞれに個別に出力する。
【0031】
制御部5は、セル変換器31に設けられたバイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd1をセル変換器31に出力する。制御部5は、セル変換器32に設けられたバイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd2をセル変換器32に出力する。制御部5は、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd3をセル変換器33に出力する。制御部5は、セル変換器34に設けられたバイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd4をセル変換器34に出力する。制御部5は、セル変換器35に設けられたバイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd5をセル変換器35に出力する。
【0032】
セル変換器31は、セル変換器31が故障した場合に故障情報信号Sb1を制御部5に出力する。セル変換器32は、セル変換器32が故障した場合に故障情報信号Sb2を制御部5に出力する。セル変換器33は、セル変換器33が故障した場合に故障情報信号Sb3を制御部5に出力する。セル変換器34は、セル変換器34が故障した場合に故障情報信号Sb4を制御部5に出力する。セル変換器35は、セル変換器35が故障した場合に故障情報信号Sb5を制御部5に出力する。セル変換器31~35の故障として例えば、入力される制御信号Sg1~Sg4の信号レベルによらずに半導体スイッチQ1~Q4の少なくとも1つが短絡状態又は開放状態を維持する故障が挙げられる。
【0033】
電力変換装置1は、半導体スイッチQ1~Q4のそれぞれのドレイン・ソース間電圧及びコンデンサCの直流電圧Vc1,Vc2,Vc3,Vc4,Vc5がセル変換器31~35から制御部5に入力されるように構成されている。制御部5は、このドレイン・ソース間電圧を故障情報信号Sb1~Sb5として用いてもよい。この場合、制御部5は、制御信号Sg1~Sg4に基づく制御によって得られる半導体スイッチQ1~Q4のドレイン・ソース間電圧と、セル変換器31~35から入力されるドレイン・ソース間電圧との一致度が規定値を満しているか否かを判定する。制御部5は、当該規定を満たしていないドレイン・ソース間電圧を出力する半導体スイッチが故障していると判定し、当該半導体スイッチを有するセル変換器を故障したセル変換器(以下、「故障セル変換器」と称する場合がある)と認定する。
【0034】
また、制御部5は、コンデンサCの直流電圧Vc1~Vc5を故障情報信号Sb1~Sb5として用いてもよい。この場合、制御部5は、セル変換器31~35のそれぞれに設けられたコンデンサCの直流電圧の指令値と、セル変換器31~35のそれぞれから入力される直流電圧Vc1~Vc5との一致度が規定値を満しているか否かを判定する。制御部5は、当該規定を満たしていない直流電圧のコンデンサが故障していると判定し、当該コンデンサを有するセル変換器を故障セル変換器と認定する。
【0035】
電力変換装置1は、セル変換器31,32,33,34,35のそれぞれに設けられたバイパススイッチ302がオフ状態からオン状態への切り替えが完了したことを示すスイッチ投入完了信号Sss1,Sss2,Sss3,Sss4,Sss5がセル変換器31から制御部5に入力されるように構成されている。スイッチ投入完了信号Sss1は、セル変換器31に設けられたバイパススイッチ302の切り替え完了を示す信号である。スイッチ投入完了信号Sss2は、セル変換器32に設けられたバイパススイッチ302の切り替え完了を示す信号である。スイッチ投入完了信号Sss3は、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302の切り替え完了を示す信号である。スイッチ投入完了信号Sss4は、セル変換器34に設けられたバイパススイッチ302の切り替え完了を示す信号である。スイッチ投入完了信号Sss5は、セル変換器35に設けられたバイパススイッチ302の切り替え完了を示す信号である。
【0036】
図示は省略するが、バイパススイッチ302には、補助接点が設けられている。補助接点は、バイパススイッチ302がオン状態の場合にはオン状態となり、バイパススイッチ302がオフ状態の場合にはオフ状態となる。制御部5は、セル変換器31に設けられたバイパススイッチ302の補助接点の電圧をスイッチ投入完了信号Sss1として用い、セル変換器32に設けられたバイパススイッチ302の補助接点の電圧をスイッチ投入完了信号Sss2として用いるように構成されている。また、制御部5は、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302の補助接点の電圧をスイッチ投入完了信号Sss3として用い、セル変換器34に設けられたバイパススイッチ302の補助接点の電圧をスイッチ投入完了信号Sss4として用いるように構成されている。さらに、制御部5は、セル変換器35に設けられたバイパススイッチ302の補助接点の電圧をスイッチ投入完了信号Sss5として用いるように構成されている。
【0037】
次に、制御部5の要部の構成について
図1を参照しつつ
図2及び
図3を用いて説明する。制御部5は、複数のセル変換器31,32,33,34,35のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられたバイパススイッチ302をオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、当該対象セル変換器の交流出力電圧を用いて残余のセル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御するように構成されている。当該切替期間は、制御部5が当該対象セル変換器に設けられたバイパススイッチに切り替えを要求してから当該バイパススイッチの接点が閉じるまでの期間である。本実施形態では例えば、セル変換器31~35のうちのいずれかが故障した場合に、制御部5は、当該セル変換器に設けられたバイパススイッチをオフ状態からオン状態に切り替えための切り替え要求を当該セル変換器に要求する。
【0038】
ここで、対象セル変換器は、オフ状態からオン状態への切り替えを制御部5から要求されたバイパススイッチ302を有するセル変換器である。本実施形態では、制御部5は、セル変換器31~35のうち、故障したと判定したセル変換器に設けられたバイパススイッチ302に対してオフ状態からオン状態への切り替えを要求する。このため、本実施形態では、セル変換器31~35のうちの故障セル変換器が対象セル変換器となる。
【0039】
図2に示すように、制御部5は、対象セル変換器の交流出力電圧を用いて残余のセル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御するために設けられた構成として、故障情報処理部50、バイパススイッチ駆動部51、スイッチング指令処理部52、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)制御部53、バイパススイッチ状態処理部54、キャリア生成部55、電流制御部56、直流電圧制御部57及び電圧指令生成部58とを有している。
【0040】
故障情報処理部50は、セル変換器31~35のそれぞれから入力される故障情報信号Sb1~Sb5に基づいて、セル変換器31~35の状態を判定する。故障情報処理部50は、セル変換器31~35の状態の判定結果を示す故障判定信号Sbd1,Sbd2,Sbd3,Sbd4,Sbd5をバイパススイッチ駆動部51、スイッチング指令処理部52、キャリア生成部55、電流制御部56及び電圧指令生成部58に出力する。
【0041】
故障情報処理部50は、セル変換器31が故障していると判定した場合には電圧レベルが高レベルの故障判定信号Sbd1を出力し、セル変換器31が故障していない(健全である)と判定した場合には電圧レベルが低レベルの故障判定信号Sbd1を出力する。故障情報処理部50は、セル変換器32が故障していると判定した場合には電圧レベルが高レベルの故障判定信号Sbd2を出力し、セル変換器32が故障していない(健全である)と判定した場合には電圧レベルが低レベルの故障判定信号Sbd2を出力する。故障情報処理部50は、セル変換器33が故障していると判定した場合には電圧レベルが高レベルの故障判定信号Sbd3を出力し、セル変換器33が故障していない(健全である)と判定した場合には電圧レベルが低レベルの故障判定信号Sbd3を出力する。故障情報処理部50は、セル変換器34が故障していると判定した場合には電圧レベルが高レベルの故障判定信号Sbd4を出力し、セル変換器34が故障していない(健全である)と判定した場合には電圧レベルが低レベルの故障判定信号Sbd4を出力する。故障情報処理部50は、セル変換器35が故障していると判定した場合には電圧レベルが高レベルの故障判定信号Sbd5を出力し、セル変換器35が故障していない(健全である)と判定した場合には電圧レベルが低レベルの故障判定信号Sbd5を出力する。
【0042】
スイッチング指令処理部52は、制御部5に入力される運転指令信号Soと、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd1~Sbd5とに基づいて、セル変換器31~35のスイッチング指令信号Ssw1,Ssw2,Ssw3,Ssw4,Ssw5を決定する。スイッチング指令処理部52は、決定したスイッチング指令信号Ssw1~Ssw5をPWM制御部53に出力する。
【0043】
運転指令信号Soは、電力変換装置1の運転の開始又は停止を指令するための信号である。電力変換装置1は、制御部5に接続されたスイッチ(不図示)を備えている。電力変換装置1の運転を操作する操作者が電力変換装置1の運転を開始するために当該スイッチをオン状態とすることにより、電圧レベルが高レベルの運転指令信号Soがスイッチング指令処理部52に入力される。一方、当該操作者が電力変換装置1の運転を停止するために当該スイッチをオフ状態とすることにより、電圧レベルが低レベルの運転指令信号Soがスイッチング指令処理部52に入力される。
【0044】
図2に示すように、スイッチング指令処理部52は、故障判定信号Sbd1が入力される論理否定(NOT)ゲート520と、NOTゲート520の出力信号及び運転指令信号Soが入力される論理積(AND)ゲート521とを有している。ANDゲート521は、NOTゲート520の出力信号及び運転指令信号Soを論理積した信号をスイッチング指令信号Ssw1としてPWM制御部53に出力する。
【0045】
スイッチング指令処理部52は、故障判定信号Sbd2が入力される論理否定(NOT)ゲート522と、NOTゲート522の出力信号及び運転指令信号Soが入力される論理積(AND)ゲート523とを有している。ANDゲート523は、NOTゲート522の出力信号及び運転指令信号Soを論理積した信号をスイッチング指令信号Ssw2としてPWM制御部53に出力する。
【0046】
スイッチング指令処理部52は、故障判定信号Sbd3が入力される論理否定(NOT)ゲート524と、NOTゲート524の出力信号及び運転指令信号Soが入力される論理積(AND)ゲート525とを有している。ANDゲート525は、NOTゲート524の出力信号及び運転指令信号Soを論理積した信号をスイッチング指令信号Ssw3としてPWM制御部53に出力する。
【0047】
スイッチング指令処理部52は、故障判定信号Sbd4が入力される論理否定(NOT)ゲート526と、NOTゲート526の出力信号及び運転指令信号Soが入力される論理積(AND)ゲート527とを有している。ANDゲート527は、NOTゲート526の出力信号及び運転指令信号Soを論理積した信号をスイッチング指令信号Ssw4としてPWM制御部53に出力する。
【0048】
スイッチング指令処理部52は、故障判定信号Sbd5が入力される論理否定(NOT)ゲート528と、NOTゲート528の出力信号及び運転指令信号Soが入力される論理積(AND)ゲート529とを有している。ANDゲート529は、NOTゲート528の出力信号及び運転指令信号Soを論理積した信号をスイッチング指令信号Ssw5としてPWM制御部53に出力する。
【0049】
図2に示すように、バイパススイッチ駆動部51は、セル変換器31,32,33,34,35に設けられたバイパススイッチ302をそれぞれ駆動する駆動部511,512,513,514,515を有している。駆動部511は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd1の例えば電圧レベルに基づいて制御信号Ssd1を生成し、生成した制御信号Ssd1をセル変換器31に設けられたバイパススイッチ302に出力する。駆動部511は、故障判定信号Sbd1の電圧レベルが例えば高レベルの場合(セル変換器31が故障している場合)にバイパススイッチ302をオン状態とする電圧レベル(例えば高レベル)の制御信号Ssd1を生成する。一方、駆動部511は、故障判定信号Sbd1の電圧レベルが例えば低レベルの場合(セル変換器31が故障していない場合)にバイパススイッチ302をオフ状態とする電圧レベル(例えば低レベル)の制御信号Ssd1を生成する。
【0050】
駆動部512は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd2に基づく点を除いて、駆動部511と同様に動作して制御信号Ssd2を生成し、生成した制御信号Ssd2をセル変換器32に設けられたバイパススイッチ302に出力する。駆動部513は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd3に基づく点を除いて、駆動部511と同様に動作して制御信号Ssd3を生成し、生成した制御信号Ssd3をセル変換器33に設けられたバイパススイッチ302に出力する。
【0051】
駆動部514は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd4に基づく点を除いて、駆動部511と同様に動作して制御信号Ssd4を生成し、生成した制御信号Ssd4をセル変換器34に設けられたバイパススイッチ302に出力する。駆動部515は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd5に基づく点を除いて、駆動部511と同様に動作して制御信号Ssd5を生成し、生成した制御信号Ssd5をセル変換器35に設けられたバイパススイッチ302に出力する。
【0052】
図2に示すように、バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器31~35に設けられたバイパススイッチ302が短絡状態及び開放状態のいずれの状態であるのかを示す状態情報信号Ssi1,Ssi2,Ssi3,Ssi4,Ssi5をキャリア生成部55及び電流制御部56に出力する。バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器31から入力されるスイッチ投入完了信号Sss1の例えば電圧レベルに基づいて状態情報信号Ssi1を生成し、生成した状態情報信号Ssi1をキャリア生成部55及び電流制御部56に出力する。バイパススイッチ状態処理部54は、スイッチ投入完了信号Sss1の電圧レベルが例えば高レベルの場合にセル変換器31に設けられたバイパススイッチ302がオフ状態であってスイッチ投入が完了していないと判定する。バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器31に設けられたバイパススイッチ302のスイッチ投入が完了していないと判定すると、当該バイパススイッチ302の投入が完了していないことを示す電圧レベル(例えば高レベル)の状態情報信号Ssi1を生成する。一方、バイパススイッチ状態処理部54は、スイッチ投入完了信号Sss1の電圧レベルが例えば低レベルの場合にセル変換器31に設けられたバイパススイッチ302がオン状態であってスイッチ投入が完了していると判定する。バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器31に設けられたバイパススイッチ302のスイッチ投入が完了していると判定すると、当該バイパススイッチ302の投入が完了したことを示す電圧レベル(例えば低レベル)の状態情報信号Ssi1を生成する。
【0053】
バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器32から入力されるスイッチ投入完了信号Sss2に基づく点を除いて、状態情報信号Ssi1と同様の方法で状態情報信号Ssi2を生成し、生成した状態情報信号Ssi2をキャリア生成部55及び電流制御部56に出力する。バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器33から入力されるスイッチ投入完了信号Sss3に基づく点を除いて、状態情報信号Ssi1と同様の方法で状態情報信号Ssi3を生成し、生成した状態情報信号Ssi3をキャリア生成部55及び電流制御部56に出力する。
【0054】
バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器34から入力されるスイッチ投入完了信号Sss4に基づく点を除いて、状態情報信号Ssi1と同様の方法で状態情報信号Ssi4を生成し、生成した状態情報信号Ssi4をキャリア生成部55及び電流制御部56に出力する。バイパススイッチ状態処理部54は、セル変換器35から入力されるスイッチ投入完了信号Sss5に基づく点を除いて、状態情報信号Ssi1と同様の方法で状態情報信号Ssi5を生成し、生成した状態情報信号Ssi5をキャリア生成部55及び電流制御部56に出力する。
【0055】
図2に示すように、キャリア生成部55は、セル変換器31~35のそれぞれの主回路301に設けられた半導体スイッチQ1~Q4(
図1参照)をPWM制御するための三角波キャリア信号を生成する。キャリア生成部55は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd1~Sbd5及びバイパススイッチ状態処理部54から入力される状態情報信号Ssi1~Ssi5の両方又は片方のみを使用して、セル変換器31~35のうちの健全なセル変換器(以下、「健全セル変換器」と称する場合がある)のための三角波キャリア信号が等間隔になるように位相シフト量を決定する。例えば、セル変換器31~35のいずれも健全な(故障していない)場合には、キャリア生成部55は、セル変換器31~35のための三角波キャリア信号が等間隔となるように位相シフト量を決定する。また例えば、セル変換器33が故障し、セル変換器31,32,34,35が故障していない場合には、キャリア生成部55は、セル変換器31,32,34,35のための三角波キャリア信号が等間隔となるように位相シフト量を決定する。
【0056】
図2に示すように、制御部5は、電流指令値生成部(不図示)から入力される電流指令値Is
*、セル変換器31~35に流れる交流電流Isの実測値及びセル変換器31~35及び系統交流電源9の交流電圧Vsの実測値に基づいて、健全セル変換器が追従される第一指令値Vi
*を生成する電流制御部56を有している。電流制御部56は、第一指令値Vi
*の他に、第一指令値Vi
*を故障セル変換器の交流出力電圧によって補償した電圧指令値Vi
**を生成するように構成されている。電流制御部56は、生成した電圧指令値Vi
**を電圧指令生成部58に出力する。
【0057】
ここで、電流制御部56の具体的な構成の一例について
図3を用いて説明する。
図3は、電流制御部56の概略構成の一例を示すブロック線図である。
図3では、理解を容易にするため、電流制御部56に接続された故障情報処理部50及びバイパススイッチ状態処理部54が併せて図示されている。
【0058】
図3に示すように、電流制御部56は、電流指令値生成部(不図示)から入力される電流指令値Is
*からセル変換器31~35に流れる交流電流Isの実測値を減算する減算部564を有している。また、電流制御部56は、減算部564から出力される電流差分信号ΔIsに比例演算を施して演算結果信号を生成するP制御部565を有している。P制御部565において施される比例演算には、減算部564での演算結果の単位を電流から電圧に変換するパラメータが含まれている。このため、P制御部565から出力される信号は、電圧を単位とする信号との演算が可能になる。
【0059】
図3に示すように、電流制御部56は、P制御部565から入力される演算結果信号と、系統交流電源9の交流電圧Vsの実測値とを加算する加算部566を有している。加算部566は、P制御部565から入力される演算結果信号と、系統交流電源9の交流電圧Vsの実測値とを加算して第一指令値Vi
*を生成する。
【0060】
図3に示すように、電流制御部56は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd1~Sbd5と、バイパススイッチ状態処理部54から入力される状態情報信号Ssi1~Ssi5との論理積を演算して演算結果信号を生成する論理積(AND)ゲート561a,561b,561c,561d,561eを有している。ANDゲート561aの一方の入力端子には故障判定信号Sbd1が入力され、ANDゲート561aの他方の入力端子には状態情報信号Ssi1が入力される。ANDゲート561bの一方の入力端子には故障判定信号Sbd2が入力され、ANDゲート561bの他方の入力端子には状態情報信号Ssi2が入力される。ANDゲート561cの一方の入力端子には故障判定信号Sbd3が入力され、ANDゲート561cの他方の入力端子には状態情報信号Ssi3が入力される。ANDゲート561dの一方の入力端子には故障判定信号Sbd4が入力され、ANDゲート561dの他方の入力端子には状態情報信号Ssi4が入力される。ANDゲート561eの一方の入力端子には故障判定信号Sbd5が入力され、ANDゲート561eの他方の入力端子には状態情報信号Ssi5が入力される。
【0061】
図3に示すように、電流制御部56は、ANDゲート561aから入力される演算結果信号と、セル変換器31の交流出力電圧V1とを積算して積算結果信号S1aを生成する積算部562aを有している。電流制御部56は、ANDゲート561bから入力される演算結果信号と、セル変換器32の交流出力電圧V2とを積算して積算結果信号S2aを生成する積算部562bを有している。電流制御部56は、ANDゲート561cから入力される演算結果信号と、セル変換器33の交流出力電圧V3とを積算して積算結果信号S3aを生成する積算部562cを有している。電流制御部56は、ANDゲート561dから入力される演算結果信号と、セル変換器34の交流出力電圧V4とを積算して積算結果信号S4aを生成する積算部562dを有している。電流制御部56は、ANDゲート561eから入力される演算結果信号と、セル変換器35の交流出力電圧V5とを積算して積算結果信号S5aを生成する積算部562eを有している。
【0062】
制御部5は、故障セル変換器(対象セル変換器の一例)に設けられたコンデンサCの直流電圧及び複数のセル変換器31~35に流れる電流(すなわち単相クラスタ3に流れる交流電流Is)の極性に応じて、当該故障セル変換器に設けられたバイパススイッチ302をオフ状態からオン状態に切り替える切替期間における当該故障セル変換器の交流出力電圧を算出する。制御部5は、セル変換器31~35のそれぞれに設けられたコンデンサCの直流電圧Vc1~Vc5と、単相クラスタ3に流れる交流電流Isの極性に基づいて、セル変換器31~35の交流出力電圧V1~V5を算出し、算出した交流出力電圧V1~V5を電流制御部56に出力するように構成されている。ここで、セル変換器31~35のいずれかのコンデンサCの直流電圧をVcxとし、当該コンデンサCが設けられた折変換器の交流出力電圧をVxとすると、制御部5は、以下の式(1)及び式(2)を用いてセル変換器31~35の交流出力電圧V1~V5を算出する。
Vx=+Vcx (Is>0) ・・・(1)
Vx=-Vcx (Is<0) ・・・(2)
【0063】
電力変換装置1は、コンデンサCの直流電圧Vc1~Vc5及び単相クラスタ3に流れる交流電流Isの極性に応じてセル変換器31~35の交流出力電圧V1~V5を算出することにより、交流出力電圧V1~V5を検知する電圧検知器を用いる必要がない。これにより、電力変換装置1は、小型化及び低価格化を図ることができる。
【0064】
図3に示すように、電流制御部56は、積算部562aから入力される積算結果信号S1aと、積算部562bから入力される積算結果信号S2aとを加算して加算結果信号S12aを生成する加算部563aを有している。電流制御部56は、積算部562cから入力される積算結果信号S4aと、積算部562eから入力される積算結果信号S5aとを加算して加算結果信号S45aを生成する加算部563bを有している。電流制御部56は、積算部562cから入力される積算結果信号S3aと、加算部563aから入力される積算結果信号S1aと、加算部563bから入力される加算結果信号S45aとを加算して加算結果信号Sallを生成する加算部563cを有している。
【0065】
図3に示すように、電流制御部56は、加算部566から入力される第一指令値Vi
*から、加算部563cから入力される加算結果信号Sallを減算して電圧指令値Vi
**を生成する減算部567を有している。
【0066】
例えばセル変換器31~35のいずれも故障していない場合には、故障判定信号Sbd1~Sbd5のそれぞれの電圧レベルは低レベルとなり、状態情報信号Ssi1~Ssi5のそれぞれの電圧レベルは高レベルとなる。このため、ANDゲート561a~561eのそれぞれは、電圧レベルが低レベルの演算結果信号を積算部562a~562eに出力するので、積算部562a~562eのそれぞれは、電圧レベルが低レベルの積算結果信号S1a~S5aを加算部563a,563b,563cに出力する。その結果、加算部563cは電圧レベルが低レベルの加算結果信号Sallを減算部567に出力するので、減算部567は、加算部566から入力される第一指令値Vi
*を電圧指令値Vi
**として電圧指令生成部58(
図2参照)に出力する。
【0067】
例えばセル変換器31,32,34,35が故障しておらず、セル変換器33が故障しており、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302のスイッチ投入が完了していない(オフ状態)場合には、故障判定信号Sbd1,Sbd2,Sbd4,Sbd5のそれぞれの電圧レベルは低レベルとなり、故障判定信号Sbd3のそれぞれの電圧レベルは高レベルとなる。さらに、この場合、状態情報信号Ssi1~Ssi5のそれぞれの電圧レベルは高レベルとなる。このため、ANDゲート561a,561b,561d,561eのそれぞれは、電圧レベルが低レベルの演算結果信号を積算部562a,562b,562d,562eに出力する。一方、ANDゲート561cは、電圧レベルが高レベルの演算結果信号を積算部562cに出力する。
【0068】
これにより、積算部562a,562bのそれぞれは、電圧レベルが低レベルの積算結果信号S1a,S2aを加算部563aに出力し、積算部562d,562eのそれぞれは、電圧レベルが低レベルの積算結果信号S4a,S5aを加算部563bに出力する。一方、積算部562cは、セル変換器33の交流出力電圧V3と、電圧レベルが高レベルの演算結果信号とを積算するので、交流出力電圧V3を積算結果信号S3aとして加算部563cに出力する。その結果、加算部563cは、演算結果信号、すなわちセル変換器33の交流出力電圧V3を加算結果信号Sallとして減算部567に出力するので、減算部567は、加算部566から入力される第一指令値Vi*から、演算結果信号を減算した減算結果信号を電圧指令値Vi**として電圧指令生成部58に出力する。減算部567は、演算結果信号(すなわち交流出力電圧V3)が正の電圧の場合には、第一指令値Vi*から当該演算結果信号を減算して電圧指令値Vi**を生成する。
【0069】
詳細は後述するが、加算結果信号Sallは、セル変換器31~35の中に故障セル変換器が含まれていない場合には0Vとなる。一方、加算結果信号Sallは、セル変換器31~35の中に故障セル変換器が含まれている場合には、故障セル変換器の交流出力電圧の合計の電圧となる。このため、電流制御部56は、セル変換器31~35の中に故障セル変換器が含まれている場合にのみ、故障セル変換器の交流出力電圧によって第一指令値Vi*が補償された電圧指令値Vi**を生成する。
【0070】
図2に戻って、直流電圧制御部57は、セル変換器31~35のうちの健全セル変換器に設けられたコンデンサCの直流電圧が制御部5に設けられた直流電圧指令値(不図示)から入力される直流電圧指令値Vc
*に追従するように制御する。直流電圧制御部57は、健全セル変換器に設けられたコンデンサCの直流電圧を直流電圧指令値Vc
*に追従させるために各健全セル変換器に有効電力の授受を発生させる電圧補正指令値を生成し、生成した電圧補正指令値を電圧指令生成部58に出力する。
【0071】
図2に示すように、電圧指令生成部58は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd1~Sbd5、電流制御部56から入力される電圧指令値Vi
**及び直流電圧制御部57から入力される電圧補正指令値に基づいて、セル変換器31~35の主回路301に設けられた半導体スイッチQ1~Q4をPWM制御するための電圧指令値を生成する。電圧指令生成部58は、生成した電圧指令値をPWM制御部53に出力する。電圧指令生成部58は、セル変換器31~35ごとに電圧指令値を生成する。
【0072】
詳細は後述するが、電力変換装置1は、セル変換器31~35のいずれか1つに故障セル変換器が含まれている場合、故障セル変換器のバイパススイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間おける当該故障セル変換器のコンデンサの直流電圧の上昇を防止するために、当該切替期間では故障セル変換器に電流を流さないように制御する。つまり、セル変換器31~35のいずれか1つに故障セル変換器が含まれている場合には、電圧指令生成部59は、当該切替期間において故障セル変換器に電流を流さない(すなわち単相クラスタ3に電流を流さない)ように健全セル変換器をPWM制御するための電圧指令値を生成する。
【0073】
電圧指令生成部59が生成する電圧指令値は、電流制御部56から入力される電圧指令値Vi**に基づいて生成される。上述のとおり、電圧指令値Vi**には、セル変換器31~35の中に故障セル変換器が含まれている場合にのみ故障セル変換器の交流出力電圧が反映される。したがって、制御部5は、複数のセル変換器31~35の交流出力電圧V1~V5の合計の電圧(単相クラスタ3の交流出力電圧Vi)を追従させる第一指令値Vi*から故障セル変換器(対象セル変換器の一例)の交流出力電圧を減算した値に基づいて残余のセル変換器(すなわち健全セル変換器)のそれぞれの交流出力電圧を制御する。詳細は後述するが、電力変換装置1は、故障セル変換器の交流出力電圧を第一指令値Vi*から減算して得られる電圧指令値Vi**に基づいて複数の健全セル変換器の交流出力電圧のそれぞれの電圧指令値を生成する。これにより、電力変換装置1は、故障セル変換器に設けられたバイパススイッチの切替期間において、単相クラスタの交流出力電圧Viに対する故障セル変換器の交流出力電圧の影響を低減することができる。
【0074】
電圧指令生成部59は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd1~Sbd5に基づいて、セル変換器31~35の中に故障セル変換器が含まれていないと判定した場合には、電流制御部56から入力される電圧指令値Vi**を5等分(セル変換器31~35の個数分)した値をセル変換器31~35のそれぞれの電圧指令値として算出する。一方、電圧指令生成部59は、故障情報処理部50から入力される故障判定信号Sbd1~Sbd5に基づいて、セル変換器31~35の中に故障セル変換器が含まれていると判定した場合には、セル変換器31~35の個数から故障セル変換器の個数を減算した個数(本実施形態では4個)で等分した値をセル変換器31~35のうちの健全セル変換器のそれぞれの電圧指令値として算出する。電圧指令生成部59は、算出した電圧指令値をPWM制御部53に出力する。
【0075】
図2に示すように、PWM制御部53は、セル変換器31~35に対して、電圧指令生成部59から入力される電圧指令値と、キャリア生成部55より入力される三角波キャリア信号とに基づいて、セル変換器31~35それぞれに対する制御信号Sg1~Sg4を生成する。
【0076】
PWM制御部53は、セル変換器31をPWM制御するPWM部531と、セル変換器32をPWM制御するPWM部532と、セル変換器33をPWM制御するPWM部533と、セル変換器34をPWM制御するPWM部534と、セル変換器35をPWM制御するPWM部535とを有している。
【0077】
PWM部531は、キャリア生成部55から入力されてセル変換器31用の三角波キャリア信号と、電圧指令生成部59から入力されてセル変換器31用の電圧指令値とに基づいて、セル変換器31の主回路301に設けられた半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のゲート端子に入力される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4を生成する。PWM部531で生成される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4は、例えばパルス信号である。
【0078】
電力変換装置1が運転中であってセル変換器31が故障していない場合、スイッチング指令処理部52に設けられたANDゲート521から出力されるスイッチング指令信号Ssw1は、電圧レベルが高レベルの信号である。この場合、PWM部531は、セル変換器31の主回路301をPWM制御するために、生成した制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器31に出力する。一方、電力変換装置1が運転中であってセル変換器31が故障している場合、スイッチング指令処理部52に設けられたANDゲート521から出力されるスイッチング指令信号Ssw1は、電圧レベルが低レベルの信号である。この場合、PWM部531は、セル変換器31の主回路301をPWM制御しない(すなわちセル変換器31のスイッチング動作を停止する)ために、生成した制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4ではなく例えば電圧レベルが低レベルで一定の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器31に出力する。これにより、スイッチング指令信号Ssw1は、セル変換器31の動作を規制することができる。
【0079】
PWM部532は、キャリア生成部55から入力されてセル変換器32用の三角波キャリア信号と、電圧指令生成部59から入力されてセル変換器32用の電圧指令値とに基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作してセル変換器32の主回路301に設けられた半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のゲート端子に入力される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4を生成する。PWM部532で生成される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4は、例えばパルス信号である。
【0080】
電力変換装置1が運転中であってセル変換器32が故障していない場合、スイッチング指令処理部52に設けられたANDゲート523から出力されるスイッチング指令信号Ssw2は、電圧レベルが高レベルの信号である。一方、電力変換装置1が運転中であってセル変換器32が故障している場合、ANDゲート523から出力されるスイッチング指令信号Ssw2は、電圧レベルが低レベルの信号である。PWM部532は、ANDゲート523から出力されるスイッチング指令信号Ssw2に基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作する。このため、PWM部532は、セル変換器32が故障していない場合にはパルス状の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器32に出力し、セル変換器32が故障している場合には、例えば電圧レベルが低レベルで一定の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器32に出力する。これにより、スイッチング指令信号Ssw2は、セル変換器32の動作を規制することができる。
【0081】
PWM部533は、キャリア生成部55から入力されてセル変換器33用の三角波キャリア信号と、電圧指令生成部59から入力されてセル変換器33用の電圧指令値とに基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作してセル変換器33の主回路301に設けられた半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のゲート端子に入力される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4を生成する。PWM部533で生成される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4は、例えばパルス信号である。
【0082】
電力変換装置1が運転中であってセル変換器33が故障していない場合、スイッチング指令処理部52に設けられたANDゲート523から出力されるスイッチング指令信号Ssw3は、電圧レベルが高レベルの信号である。一方、電力変換装置1が運転中であってセル変換器33が故障している場合、ANDゲート523から出力されるスイッチング指令信号Ssw3は、電圧レベルが低レベルの信号である。PWM部533は、ANDゲート523から出力されるスイッチング指令信号Ssw3に基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作する。このため、PWM部533は、セル変換器33が故障していない場合にはパルス状の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器33に出力し、セル変換器33が故障している場合には、例えば電圧レベルが低レベルで一定の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器33に出力する。これにより、スイッチング指令信号Ssw3は、セル変換器33の動作を規制することができる。
【0083】
PWM部534は、キャリア生成部55から入力されてセル変換器34用の三角波キャリア信号と、電圧指令生成部59から入力されてセル変換器34用の電圧指令値とに基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作してセル変換器34の主回路301に設けられた半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のゲート端子に入力される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4を生成する。PWM部534で生成される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4は、例えばパルス信号である。
【0084】
電力変換装置1が運転中であってセル変換器34が故障していない場合、スイッチング指令処理部52に設けられたANDゲート525から出力されるスイッチング指令信号Ssw4は、電圧レベルが高レベルの信号である。一方、電力変換装置1が運転中であってセル変換器34が故障している場合、ANDゲート525から出力されるスイッチング指令信号Ssw4は、電圧レベルが低レベルの信号である。PWM部534は、ANDゲート525から出力されるスイッチング指令信号Ssw4に基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作する。このため、PWM部534は、セル変換器34が故障していない場合にはパルス状の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器34に出力し、セル変換器34が故障している場合には、例えば電圧レベルが低レベルで一定の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器34に出力する。これにより、スイッチング指令信号Ssw4は、セル変換器34の動作を規制することができる。
【0085】
PWM部535は、キャリア生成部55から入力されてセル変換器35用の三角波キャリア信号と、電圧指令生成部59から入力されてセル変換器35用の電圧指令値とに基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作してセル変換器35の主回路301に設けられた半導体スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のゲート端子に入力される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4を生成する。PWM部535で生成される制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4は、例えばパルス信号である。
【0086】
電力変換装置1が運転中であってセル変換器35が故障していない場合、スイッチング指令処理部52に設けられたANDゲート525から出力されるスイッチング指令信号Ssw5は、電圧レベルが高レベルの信号である。一方、電力変換装置1が運転中であってセル変換器35が故障している場合、ANDゲート525から出力されるスイッチング指令信号Ssw5は、電圧レベルが低レベルの信号である。PWM部535は、ANDゲート525から出力されるスイッチング指令信号Ssw5に基づく点を除いて、PWM部531と同様に動作する。このため、PWM部535は、セル変換器35が故障していない場合にはパルス状の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器35に出力し、セル変換器35が故障している場合には、例えば電圧レベルが低レベルで一定の制御信号Sg1,Sg2,Sg3,Sg4をセル変換器35に出力する。これにより、スイッチング指令信号Ssw5は、セル変換器35の動作を規制することができる。
【0087】
(電力変換装置の動作)
次に、本実施形態による電力変換装置1の動作について
図1から
図3を参照しつつ
図4から
図6を用いて説明する。電力変換装置1の動作を説明する前に、比較例としての電力変換装置の動作及び当該電力変換装置の問題点について
図4及び
図5を用いて説明する。比較例としての電力変換装置は、制御部に設けられた電流制御部がANDゲート561a~561e、積算部562a~562e、加算部563a~563c,566を有さない点を除いて、電力変換装置1と同様の構成を有している。このため、比較例としての電力変換装置の動作について、
図1から
図3を参照しつつ必要に応じて電力変換装置1に設けられた構成要件と同じ名称及び参照符号を用いて説明する。
【0088】
図4は、本実施形態による電力変換装置1及び比較例としての電力変換装置の動作の一例であって、セル変換器31~35(本比較例では、直列に接続された5個のセル変換器)のうちの例えばセル変換器33(本比較例では、5個のセル変換器うちの中央(3個目)のセル変換器)が故障した場合のタイミングチャートである。
【0089】
図4中の「Sb3」は、セル変換器33の故障情報信号Sb3を示している。
図4中の「Sb1,Sb2,Sb4,Sb5」は、セル変換器31,32,34,35の故障情報信号Sb1,Sb2,Sb4,Sb5を示している。
図4中の「Ssw3」は、セル変換器33のスイッチング動作を規制するスイッチング指令信号Ssw3を示している。
図4中の「Ssw1,Ssw2,Ssw4,Ssw5」は、セル変換器31,32,34,35のスイッチング動作を規制するスイッチング指令信号Ssw1,Ssw2,Ssw4,Ssw5を示している。
【0090】
図4中の「Ssd3」は、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd3を示している。
図4中の「Ssd1,Ssd2,Ssd4,Ssd5」は、セル変換器31,32,34,35に設けられたバイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd1,Ssd2,Ssd4,Ssd5を示している。
図4中の「Sss3」は、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302の投入が完了したことを示すスイッチ投入完了信号Sss3を示している。
図4中の「Sss1,Sss3,Sss4,Sss5」は、セル変換器31,32,34,35に設けられたバイパススイッチ302の投入が完了したことを示すスイッチ投入完了信号Sss1,Sss3,Sss4,Sss5を示している。
【0091】
図4中の「0」は、各信号の電圧レベルのうちの低レベルを示し、
図4中の「1」は、各信号の電圧レベルのうちの高レベルを示している。
図4中の「NOM」は、全てのセル変換器が故障せずに運転されている通常運転モードを示している。
図4中の「Pc」は、故障セル変換器に設けられたバイパススイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間を示している。
図4中の「BOM」は、故障セル変換器以外の健全セル変換器が運転されている故障運転モードを示している。
【0092】
図4を比較例としての電力変換装置の動作タイミングチャートとする場合は、セル変換器31~35の各種波形を当該比較例としての電力変換装置に設けられてセル変換器31~35に相当する5個のセル変換器の各種波形として参照する。例えば、
図3中の「Sb3」は、比較例としての電力変換装置に設けられた5個のセル変換器のうちの中央(3個目)のセル変換器(セル変換器33に相当するセル変換器)の故障情報判定信号を示す。
【0093】
図5は、比較例としての電力変換装置と系統交流電源との間で入出力される電力に関する電圧及び電流のシミュレーション結果を示している。
図5中の「Vs」は、比較例としての電力変換装置に連係された系統交流電源の電圧波形(例えば
図1中に示す交流電圧Vsに相当する)を示している。
図5中の「Vi」は、5個のセル変換器のそれぞれの交流出力電圧(
図1中に示す交流出力電圧V1,V2,V3,V4,V5に相当する)を合計した単相クラスタの交流出力電圧(例えば
図1中に示す単相クラスタ3の交流出力電圧Viに相当する)を示している。
図5中の「Is」は、5個のセル変換器に流れる交流電流、すなわち単相クラスタに流れる交流電流(
図1中に示す交流電流Isに相当する)を示している。
【0094】
図5中の「V0」は、各信号の基準電圧レベル(例えば0V)を示している。
図5中の「I0」は、交流電流Isの基準電流レベル(例えば0A)を示している。
図5中の「NOM」、「Pc」及び「BOM」は、
図4中の「NOM」、「Pc」及び「BOM」と同内容を示している。
【0095】
図4に示すように、比較例としての電力変換装置の通常運転モードNOMかつ5個のセル変換器に故障が発生していない期間(時刻t1よりも前の期間)では、全てのセル変換器の故障判定信号Sbd1~Sbd5の電圧レベルは、セル変換器に故障が発生していないことを示す低レベルである。また、当該期間では、5個のセル変換器に設けられた主回路のスイッチング動作が規制されていないため、5個のセル変換器のそれぞれに対応するスイッチング指令信号Ssw1~Ssw5の電圧レベルは、高レベルである。また、当該期間では、セル変換器に故障が発生していないため、バイパススイッチのスイッチングを制御する制御信号Ssd1~Ssd5の電圧レベルは低レベルであり、バイパススイッチのスイッチ投入完了信号Sss1~Sss5の電圧レベルも低レベルである。
【0096】
このため、
図5に示すように、比較例としての電力変換装置の通常運転モードNOMかつ5個のセル変換器に故障が発生していない期間(時刻t1よりも前の期間)では、比較例としての電力変換装置に設けられた単相クラスタ(
図1中に示す単相クラスタ3に相当する)のすべてのセル変換器がPWM制御される。
図5に、当該期間の系統交流電源の交流電圧Vs、当該単相クラスタの交流出力電圧Vi及び交流電流Isの一例を示す。
【0097】
時刻t1において、3個目のセル変換器が故障するとする。ここで、3個目のセル変換器の半導体スイッチQ1~Q4のいずれか開放故障すると仮定する。すると、3個目のセル変換器の故障情報信号Sb3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わる。これにより、制御部(
図1中に示す制御部5に相当する)は、3個目のセル変換器(
図1中に示すセル変換器33に相当する)のスイッチング動作(より具体的には、当該セル変換器に設けられた主回路(
図1中に示すセル変換器33の主回路301に相当する)のスイッチング動作)を規制するためにスイッチング指令信号Ssw3の電圧レベルを高レベルから低レベルに切り替える。その結果、当該セル変換器のスイッチング動作が停止する。
【0098】
さらに、当該制御部は、当該セル変換器に設けられたバイパススイッチ(
図1中に示すセル変換器33のバイパススイッチ302に相当する)をオフ状態からオン状態に切り替えるための切り替え要求として、当該バイパススイッチのスイッチングを制御する制御信号Ssd3の電圧レベルを低レベルから高レベルに切り替える。これにより、バイパススイッチをオフ状態からオン状態に切り替える切替期間Pcが開始される。故障判定信号Sbd3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わってから制御信号Ssd3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わるまでの間には、所定の遅延時間が生じるが、当該遅延時間は、切替期間Pcの時間と比較して極めて短い。このため、
図4では、当該遅延時間の図示は省略され、故障情報信号Sb3の電圧レベルの切り替わりの開始から制御信号Ssd3の電圧レベルの切り替わりの終了までの動作が、時刻t1において実行されているように図示されている。
【0099】
切替期間Pcが開始された後も4個の健全セル変換器は、通常運転モードNOMの時と同様にPWM制御によって動作している。
【0100】
切替期間Pcが開始された後も4個の健全セル変換器が動作しているため、当該単相クラスタと系統交流電源との間で交流電流が入出力される。ただし、当該期間は故障セル変換器の入出力端子に現れる交流電圧が電力変換器の電流制御において外乱となり、電流制御の性能が低下する。このため、
図4に示すように、電力変換器に流れる電流は、通常運転モードNOMの時とは異なる電流波形となる場合がある。
【0101】
時刻t2において3個目のセル変換器に設けられたバイパススイッチがオン状態となってスイッチ投入が完了すると、当該バイパススイッチのスイッチ投入完了信号Sss3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わる。これにより、比較例としての電力変換装置は、時刻t2以降では故障運転モードBOMで動作する。
【0102】
故障運転モードBOMでは、3個目のセル変換器(故障セル変換器)に設けられた主回路のスイッチング動作がなされず、かつ当該セル変換器に設けられたバイパススイッチがオン状態となっている。このため、故障運転モードBOMでは、系統交流電源との間での電力の入出力は、3個目のセル変換器を除く4個の健全なセル変換器によって制御される。すなわち、故障運転モードBOMでは、単相クラスタに流れる交流電流Isは、3個目のセル変換器に設けられた主回路には流れず、3個目のセル変換器に設けられたバイパススイッチを流れる。比較例としての電力変換装置に設けられた制御部は、当該4個の健全なセル変換器を制御できる。このため、
図5に示すように、当該単相クラスタに流れる交流電流Is(すなわち4個の健全なセル変換器に流れる交流電流)は、通常運転モードNOMの時とほぼ同じ電流となる。同様に、4個のセル変換器のそれぞれの交流出力電圧(
図1中に示す交流出力電圧V1,V2,V4,V5に相当する)を合計した単相クラスタの交流出力電圧Viは、通常運転モードNOMの時とほぼ同じ電圧となる。
【0103】
故障セル変換器の半導体スイッチQ1~Q4のいずれかが切替期間Pc以降において故障している。このため、比較例としての電力変換装置に設けられた制御部は、故障した半導体スイッチを制御できない。しかしながら、セル変換器が故障した後にバイパススイッチがオフ状態からオン状態に切り替り替わる切替期間Pc、すなわちセル変換器が故障してからバイパススイッチの投入が完了するまでの期間では、還流用ダイオードD1~D4を介して故障セル変換器にも交流電流Isが流れる。これにより、故障セル変換器は、切替期間Pcにおいて交流出力電圧を出力する。切替期間における、故障セル変換器のこの交流出力電圧は電力変換器の電流制御において外乱となる。
【0104】
その結果、比較例としての電力変換装置は、セル変換器の故障からバイパススイッチの投入完了までの期間(切替期間)において、故障セル変換器の交流出力電圧によって電流制御の性能が低下し、切替期間での無効電流補償ができない、又は無効電流の補償性能が低下するという問題を有している。
【0105】
次に、本実施形態による電力変換装置1の動作について
図4及び
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態による電力変換装置1と系統交流電源9との間で入出力される電力に関する電圧及び電流のシミュレーション結果を示している。
図6中の「Vs」は、電力変換装置1に連係された系統交流電源9の交流電圧Vsを示している。
図6中の「Vi」は、セル変換器31~35のそれぞれの交流出力電圧V1,V2,V3,V4,V5を合計した単相クラスタ3の交流出力電圧Viを示している。
図6中の「Is」は、セル変換器31~35に流れる交流電流、すなわち単相クラスタ3に流れる交流電流Isを示している。
図6中の「V0」、「I0」、「NOM」、「Pc」及び「BOM」は、
図5中の「V0」、「I0」、「NOM」、「Pc」及び「BOM」と同内容を示している。
【0106】
図4に示すように、電力変換装置1の通常運転モードNOMかつセル変換器31~35に故障が発生していない期間(時刻t1よりも前の期間)では、セル変換器31~35の故障情報信号Sb1~Sb5の電圧レベルは、セル変換器31~35に故障が発生していないことを示す低レベルである。また、当該期間では、セル変換器31~35に設けられた主回路301のスイッチング動作が規制されていないため、セル変換器31~35のそれぞれに対応するスイッチング指令信号Ssw1~Ssw5の電圧レベルは、高レベルである。また、当該期間では、セル変換器31~35に故障が発生していないため、バイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd1~Ssd5の電圧レベルは低レベルであり、バイパススイッチ302のスイッチ投入完了信号Sss1~Sss5の電圧レベルも低レベルである。
【0107】
このため、
図6に示すように、電力変換装置1の通常運転モードNOMかつセル変換器31~35に故障が発生していない期間(時刻t1よりも前の期間)では、電力変換装置1に設けられた単相クラスタ3のすべてのセル変換器31~35がPWM制御される。
図6に、当該期間の系統交流電源9の交流電圧Vs、電力変換器1に設けられた単相クラスタ3の交流出力電圧Vi及び交流電流Isの一例を示す。
【0108】
時刻t1において、セル変換器33が故障するとする。ここで、3個目のセル変換器の半導体スイッチQ1~Q4のいずれか開放故障すると仮定する。すると、セル変換器33の故障情報信号Sb3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わる。これにより、制御部5は、セル変換器33のスイッチング動作(より具体的には、セル変換器33に設けられた主回路301のスイッチング動作)を規制するためにスイッチング指令信号Ssw3の電圧レベルを高レベルから低レベルに切り替える。その結果、セル変換器33のスイッチング動作が停止する。
【0109】
さらに、制御部5は、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302をオフ状態からオン状態に切り替えるための切り替え要求として、当該バイパススイッチ302のスイッチングを制御する制御信号Ssd3の電圧レベルを低レベルから高レベルに切り替える。これにより、当該バイパススイッチ302をオフ状態からオン状態に切り替える切替期間Pcが開始される。故障判定信号Sbd3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わってから制御信号Ssd3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わるまでの間には、所定の遅延時間が生じる。しかし、当該遅延時間は、切替期間Pcの時間と比較して極めて短い。このため、
図4が電力変換装置1の動作のタイミングチャートを図示する場合も、
図4では、当該遅延時間の図示は省略され、故障判定信号Sbd3の電圧レベルの切り替わりの開始から制御信号Ssd3の電圧レベルの切り替わりの終了までの動作が、時刻t1において実行されているように図示されている。
【0110】
切替期間Pcが開始されてセル変換器33の故障情報信号Sb3の電圧レベルが高レベルになると、故障情報処理部50(
図3参照)は、セル変換器33の故障判定信号Sbd3の電圧レベルを低レベルから高レベルに切り替える。また、制御部5に設けられたバイパススイッチ状態処理部54(
図3参照)は、切替期間Pcが終了するまで、セル変換器33に設けられたバイパススイッチ302の状態情報信号Ssi3の電圧レベルを高レベルに維持する。このため、電流制御部56に設けられたANDゲート561c(
図3参照)は、高レベルの演算結果信号を積算部562cに出力する。一方、健全なセル変換器31,32,34,35の故障判定信号Sbd1,Sbd2,Sbd4,Sbd5の電圧レベルは低レベルである。このため、電流制御部56に設けられたANDゲート561a,561b,561d,561eは、電圧レベルが低レベルの演算結果信号を積算部562a,562b,562d,562eに出力する。
【0111】
これにより、加算部563cは、故障したセル変換器33の交流出力電圧V3を加算結果信号Sallとして減算部567(
図3参照)に出力する。その結果、電流制御部56は、第一指令値Vi
*に交流出力電圧V3を減算して得られた電圧指令値Vi
**を電圧指令生成部58(
図3参照)に出力する。電圧指令生成部58は、電圧指令値Vi
**を4等分した電圧指令値をPWM制御部53に設けられたPWM部531,532,534,535(
図2参照)に出力する。PWM部531,532,534,535は、電圧指令生成部58から入力される電圧指令値に基づく制御信号Sg1~Sg4によってセル変換器31,32,34,35をそれぞれ制御する。
【0112】
電圧指令値Vi**は、故障セル変換器の交流出力電圧の分だけ第一指令値Vi*に対して減算した値である。このため、電圧指令値Vi**に基づく制御信号Sg1~Sg4によって動作するセル変換器31,32,34,35の交流出力電圧V1,V2,V4,V5の合計の電圧は、第一指令値Vi*に基づく制御信号Sg1~Sg4によってセル変換器31,32,34,35が動作した場合の交流出力電圧V1,V2,V4,V5の合計の電圧に対して減算した値となる。しかしながら、切替期間Pcでは、故障したセル変換器33も交流出力電圧V3を出力している。この交流出力電圧V3の電圧値は、電圧指令値Vi**を算出する際に第一指令値Vi*から減算された加算結果信号Sallの電圧値とほぼ同じである。
【0113】
このため、制御部5によって制御されて動作する健全なセル変換器31,32,34,35の交流出力電圧V1,V2,V4,V5と、故障により無制御状態のセル変換器33の交流出力電圧V3との合計は、第一指令値Vi*に基づく制御信号Sg1~Sg4によってセル変換器31,32,34,35が動作した場合の交流出力電圧V1,V2,V4,V5の合計とほぼ同じ値となる。
【0114】
第一指令値Vi*に基づく制御信号Sg1~Sg4によってセル変換器31,32,34,35が動作した場合の交流出力電圧V1,V2,V4,V5の合計の電圧は、電流指令値Is*、単相クラスタ3に流れる交流電流Isの実測値及び系統交流電源9の交流電圧Vsに基づいて得られる所望の電圧である。したがって、制御部5によって制御されて動作する健全なセル変換器31,32,34,35の交流出力電圧V1,V2,V4,V5と、故障により無制御状態のセル変換器33の交流出力電圧V3との合計の電圧は、当該所望の電圧とほぼ同じ値となる。これにより、電力変換装置1は、切替期間Pcにおいても通常運転モードNOMの時とほぼ同じく無効電流を補償することができる。
【0115】
時刻t2においてセル変換器33に設けられたバイパススイッチ302がオン状態となってスイッチ投入が完了すると、当該バイパススイッチ302のスイッチ投入完了信号Sss3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わる。これにより、電力変換装置1は、時刻t2以降では故障運転モードBOMで動作する。
【0116】
切替期間Pcが終了すると、故障セル変換器であるセル変換器33に対応するスイッチ投入完了信号Sss3の電圧レベルが低レベルから高レベルに切り替わる。これにより、バイパススイッチ状態処理部54は、電圧レベルが低レベルの状態情報信号Ssi3をANDゲート561cに出力する。このため、ANDゲート561cは、電圧レベルが低レベルの演算結果信号を加算部563cに出力する。ANDゲート561a,561b,561d,561eは、故障運転モードBOMでも切替期間Pcと同様に動作する。これにより、加算部563cは、電圧レベルが低レベルの加算結果信号Sallを減算部567に出力する。その結果、減算部567は、加算部566から入力される第一指令値Vi*を電圧指令値Vi**として電圧指令生成部58に出力する。
【0117】
電圧指令生成部58は、電圧指令値Vi
**を4等分した電圧指令値をPWM制御部53に設けられたPWM部531,532,534,535(
図2参照)に出力する。PWM部531,532,534,535は、電圧指令生成部58から入力される電圧指令値に基づく制御信号Sg1~Sg4によってセル変換器31,32,34,35をそれぞれ制御する。
【0118】
電圧指令値Vi**は、第一指令値Vi*と同じ指令値であるため、電圧指令値Vi**に基づく制御信号Sg1~Sg4によってセル変換器31,32,34,35が動作する場合、交流出力電圧V1,V2,V4,V5の合計の電圧(すなわち単相クラスタ3の交流出力電圧Vi)は、第一指令値Vi*に追従する電圧となる。このため、故障運転モードBOMにおける単相クラスタ3の交流出力電圧Vi(すなわちセル変換器31,32,34,35の交流出力電圧V1,V2,V4,V5の合計の電圧)の基本波は、通常運転モードNOMにおける単相クラスタ3の交流出力電圧Viの基本波とほぼ同じくなる。その結果、故障運転モードBOMにおける単相クラスタ3に流れる交流電流Is(すなわち、セル変換器31,32,34,35に流れる交流電流)は、通常運転モードNOMにおける単相クラスタ3に流れる交流電流Isとほぼ同じくなる。
【0119】
このように、制御部5は、切替期間Pc及び切替期間Pcの後の期間(故障運転モードBOMの期間)において、対象セル変換器(
図4及び
図6に示す例では故障セル変換器であるセル変換器33)に設けられた主回路301のスイッチング動作を停止し、残余のセル変換器(
図5及び
図6に示す例では健全なセル変換器31,32,34,35)に設けられた主回路301のスイッチング動作を継続するように構成されている。制御部5は、切替期間Pcにおいて、故障セル変換器の交流出力電圧を第一指令値Vi
*にフィードバックすることによって、単相クラスタ3の交流出力電圧Viに対して外乱となる当該故障セル変換器の交流出力電圧の影響を低減することができる。これにより、電力変換装置1は、切替期間Pcにおける電流制御の性能低下を抑制し、切替期間Pcにおける無効電流補償の維持することができ、又は無効電流補償の性能低下を防止できる。
【0120】
以上、説明したように、本実施形態による電力変換装置1は、系統交流電源9との間で入出力する電力を生成するためのコンデンサCを有する主回路301、当該電力が入出力される一対の入出力端子303,304、及び一対の入出力端子303,304を短絡可能に設けられたバイパススイッチ302をそれぞれ有し、一対の入出力端子303,304が直列に接続された複数のセル変換器31,32,33,34,35と、複数のセル変換器31,32,33,34,35に設けられたそれぞれの主回路301及びバイパススイッチ302を制御する制御部5とを備え、制御部5は、複数のセル変換器31,32,33,34,35のうちの少なくとも1つである対象セル変換器に設けられたバイパススイッチ302をオフ状態からオン状態に切り替える切替期間において、当該対象セル変換器の交流出力電圧を用いて残余のセル変換器のそれぞれの交流出力電圧を制御する。
【0121】
本実施形態では、電力変換装置1の運転中に直列接続されたセル変換器31~35のうちの少なくとも1台(本実施形態では1台)が故障した場合、電力変換装置1の運転を停止せずに残余のセル変換器(健全セル変換器)で運転が継続される。電力変換装置1は、この運転の継続中において、故障セル変換器の故障検知から故障セル変換器のバイパススイッチの投入完了までの切替期間中に、故障セル変換器の交流出力電圧を用いて残余の交流出力電圧を制御することができる。これにより、電力変換装置1は、当該切替期間中での電流制御能力の低下を防止できるので、セル変換器に対するバイパス要求があった場合でも無効電流補償を継続することができる。
【0122】
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
上記実施形態では、無効電力補償装置に適用される電力変換装置を例にとって説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、電力変換装置は、インバータやコンバータにも適用できる。
【0123】
上記実施形態による電力変換装置は、単相クラスタを備えているが、本発明はこれに限られない。電力変換装置は、複数(例えば三相)のクラスタを備え、各クラスタが上記実施形態における単相クラスタ3と同様の構成を有していてもよい。この場合、電力変換装置に設けられた制御部は、クラスタごとに単相クラスタ3と同様に制御する。
【0124】
上記実施形態では、セル変換器に対するバイパス要求として、セル変換器が故障した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、複数のセル変換器のうちのいずれかをメンテナンスする場合のバイパス要求における切替期間にも、本発明を適用できる。
【0125】
上記実施形態では、半導体スイッチQ1~Q4は、MOS型電界効果トランジスタで構成されているが、本発明はこれに限られない。半導体スイッチQ1~Q4は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)やバイポーラトランジスタで構成されていてもよい。
【0126】
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0127】
1 電力変換装置
3 単相クラスタ
5 制御部
9 系統交流電源
31,32,33,34,35 セル変換器
50 故障情報処理部
51 バイパススイッチ駆動部
52 スイッチング指令処理部
53 PWM制御部
54 バイパススイッチ状態処理部
55 キャリア生成部
56 電流制御部
57 直流電圧制御部
58 電圧指令生成部
301 主回路
302 バイパススイッチ
303,304 入出力端子
511,512,513,514,515 駆動部
520,522,524,526,528 NOTゲート
521,523,525,527,529,561a,561b,561c,561d,561e ANDゲート
531,532,533,534,535 PWM部
562a,562b,562c,562d,562e 積算部
563a,563b,563c,566 加算部
564,567 減算部
565 P制御部
C コンデンサ
D1,D2,D3,D4 還流用ダイオード
Is 交流電流
Is* 電流指令値
L リアクトル
Pc 切替期間
Q1,Q2,Q3,Q4 半導体スイッチ
S1a,S2a,S3a,S4a,S5a 積算結果信号
S12a,S45a、Sall 加算結果信号
Sb1,Sb2,Sb3,Sb4 故障情報信号
Sbd1,Sbd2,Sbd3,Sbd4,Sbd5 故障判定信号
Sg1,Sg2,Sg3,Sg4,Ssd1,Ssd2,Ssd3,Ssd4,Ssd5 制御信号
So 運転指令信号
Ssi1,Ssi2,Ssi3,Ssi4,Ssi5 状態情報信号
Sss1,Sss2,Sss3,Sss4,Sss5 スイッチ投入完了信号
Ssw1,Ssw2,Ssw3,Ssw4,Ssw5 スイッチング指令信号
V1,V2,V3,V4,V5,Vi 交流出力電圧
Vc* 直流電圧指令値
Vc1,Vc2,Vc3,Vc4,Vc5 直流電圧
Vi* 第一指令値
Vi** 電圧指令値
Vs 交流電圧