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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20241119BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K3/50 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020188260
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077408
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 国士
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】実公昭14-006732(JP,Y1)
【文献】特開2020-078118(JP,A)
【文献】特開2020-167780(JP,A)
【文献】実開昭55-062178(JP,U)
【文献】特開2020-089224(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106803711(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K3/30-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸に沿って配置されるシャフトと、
前記シャフトに取り付けられるステータと、
前記ステータに電気的に接続されるリード線と、を備え、
前記シャフトは、
径方向の一方側から他方側に延びる孔部と、
前記孔部の少なくとも一部に配置される封止部材と、を有し、
前記孔部は、
前記シャフトの前記一方側に開口する第1孔と、
前記シャフトの前記他方側に開口し、前記第1孔に繋がる第2孔と、を有し、
前記封止部材は、前記第1孔の内部に配置され、
前記リード線は、前記第1孔の内部および前記第2孔の内部に配置され、
前記シャフトは、前記中心軸に沿って筒状に延びるカバー部材を有し、
前記カバー部材の内周面は、前記第1孔の開口と対向し径方向外方に凹む第1凹部を有し、
前記第1凹部は、
前記カバー部材の上端が開口する開口と、
前記カバー部材の下端が前記シャフトに向かって閉じる底面と、
を有し、
前記封止部材は、前記第1凹部の内部に配置される第1封止部を有し、
前記第1封止部は、前記第1孔の開口を覆う、モータ。
【請求項2】
前記第1封止部の上端部である第1上端部は、前記カバー部材の上端よりも下方に位置する、請求項に記載のモータ。
【請求項3】
前記カバー部材は、配線孔を有し、
前記配線孔は、前記カバー部材の径方向内方から径方向外方に貫通し、
前記配線孔の開口は、前記第1孔の開口と重なり、
前記リード線は、前記カバー部材の径方向内方および前記カバー部材の径方向外方に配置される、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
上下に延びる中心軸に沿って配置されるシャフトと、
前記シャフトに取り付けられるステータと、
前記ステータに電気的に接続されるリード線と、を備え、
前記シャフトは、
径方向の一方側から他方側に延びる孔部と、
前記孔部の少なくとも一部に配置される封止部材と、を有し、
前記孔部は、
前記シャフトの前記一方側に開口する第1孔と、
前記シャフトの前記他方側に開口し、前記第1孔に繋がる第2孔と、
前記シャフトの外周面に開口し、前記第1孔に繋がる第3孔と、
を有し、
前記封止部材は、前記第1孔および前記第3孔の内部に配置され、
前記リード線は、前記第1孔の内部および前記第2孔の内部に配置され、
前記シャフトは、前記中心軸に沿って筒状に延びるカバー部材を有し、
前記カバー部材の内周面は、前記第1孔を覆う、モータ。
【請求項5】
前記第3孔の開口は、前記カバー部材の上端よりも下方に位置し、
前記カバー部材の内周面は、前記第3孔を覆う、請求項に記載のモータ。
【請求項6】
前記シャフトは、前記第1孔の開口が位置するフランジ部を有し、
前記フランジ部は、前記シャフトの外周面から径方向外方に突出し、
前記第3孔の開口は、前記フランジ部に位置する、請求項またはに記載のモータ。
【請求項7】
前記封止部材は、前記シャフトの外周面と前記カバー部材の内周面との間に配置される第2封止部を有し、
前記第2封止部は、前記第3孔の開口を覆う、請求項4~6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記カバー部材の内周面は、径方向外方に凹む第2凹部を有し、
前記第2凹部は、前記第3孔の開口と対向し、
前記第2封止部は、前記第2凹部の内部に配置される、請求項に記載のモータ。
【請求項9】
前記第2凹部は、前記カバー部材の上端に開口を有し、前記カバー部材の上端から下端に向かって延びる、請求項に記載のモータ。
【請求項10】
前記第2封止部の上端部である第2上端部は、前記カバー部材の上端よりも下方に位置する、請求項に記載のモータ。
【請求項11】
前記カバー部材の外周面は、径方向外方に突出する突出部を有し、
前記カバー部材の内周面は、前記突出部の径方向内方に前記第2凹部を有する、請求項8~10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
上下に延びる中心軸に沿って配置されるシャフトと、
前記シャフトに取り付けられるステータと、
前記ステータに電気的に接続されるリード線と、を備え、
前記シャフトは、
径方向の一方側から他方側に延びる孔部と、
前記孔部の少なくとも一部に配置される封止部材と、を有し、
前記孔部は、
前記シャフトの前記一方側に開口する第1孔と、
前記シャフトの前記他方側に開口し、前記第1孔に繋がる第2孔と、を有し、
前記封止部材は、前記第1孔の内部に配置され、
前記リード線は、前記第1孔の内部および前記第2孔の内部に配置され、
前記シャフトは、前記中心軸に沿って筒状に延びるカバー部材を有し、
前記カバー部材の内周面は、前記第1孔を覆い、
前記カバー部材は、配線孔と、隙間部と、を有し、
前記配線孔は、前記カバー部材の径方向内方から径方向外方に貫通し、
前記配線孔の開口は、前記第1孔の開口と重なり、
前記隙間部は、前記カバー部材の上端から下端に延びるとともに、前記カバー部材の径方向内方から径方向外方に貫通し、
前記リード線は、前記カバー部材の径方向内方および前記カバー部材の径方向外方に配置される、モータ。
【請求項13】
前記隙間部は、前記カバー部材の上端から前記配線孔を経由して前記カバー部材の下端に延びる請求項12に記載のモータ。
【請求項14】
前記ステータは、ステータホルダを有し、
前記ステータホルダは、前記中心軸に沿って筒状に延びるシャフト固定部を有し、
前記シャフト固定部の内周面は、前記シャフトの外周面に固定され、
前記カバー部材の下端は、前記シャフト固定部の上端であるホルダ上端に接触する、請求項1~13のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項15】
前記シャフトの外周面は、第1の表面粗さを有する領域と、前記第1の表面粗さよりも大きい第2の表面粗さを有する領域と、を有し、
前記カバー部材は、前記第2の表面粗さを有する領域に配置される、請求項1~14のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定軸を備えたモータが知られている。従来では、固定軸にステータが固定される。ステータには、リード線が連結される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-311702公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、貫通孔を有する固定軸が用いられる。貫通孔には、リード線が挿入される。ここで、貫通孔を有する固定軸を用いる構成では、貫通孔を介して、モータの外部から内部に異物が侵入する可能性がある。
【0005】
本発明は、モータの外部から内部に異物が侵入することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、上下に延びる中心軸に沿って配置されるシャフトと、シャフトに取り付けられるステータと、ステータに電気的に接続されるリード線と、を備える。シャフトは、径方向の一方側から他方側に延びる孔部と、孔部の少なくとも一部に配置される封止部材と、を有する。孔部は、シャフトの一方側に開口する第1孔と、シャフトの他方側に開口し、第1孔に繋がる第2孔と、を有する。封止部材は、第1孔の内部に配置される。リード線は、第1孔の内部および第2孔の内部に配置される。シャフトは、中心軸に沿って筒状に延びるカバー部材を有する。カバー部材の内周面は、第1孔を覆う。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的なモータによれば、モータの外部から内部に異物が侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るモータの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るモータの内部を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るシャフトの斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るシャフトを一方側から見た場合での斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るシャフトを他方側から見た場合での斜視図である。
図6図6は、実施形態に係るシャフトの部分断面図である。
図7図7は、実施形態に係るカバー部材の斜視図である。
図8図8は、実施形態に係るカバー部材およびその周辺の拡大斜視図である。
図9図9は、変形例に係るカバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
本明細書では、モータ100の中心軸CAに平行な方向を「軸方向」と呼び、軸方向を上下方向として各部の形状および位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義がモータ100の使用時の向きおよび位置関係を限定するものではない。
【0011】
また、本明細書では、中心軸CAに直交する方向を「径方向」と呼び、中心軸CAを中心とする周方向を「周方向」と呼ぶ。径方向において、中心軸CAに近づく向きを「径方向内方」と呼び、中心軸CAから離れる向きを「径方向外方」と呼ぶ。
【0012】
また、本明細書では、図6の左右方向をモータ100の左右方向として各部の形状および位置関係を説明する。ただし、この左右方向の定義がモータ100の使用時の向きおよび位置関係を限定するものではない。本明細書では、図6の中心軸CAに対して径方向の右側を「一方側」と呼び、図6の中心軸CAに対して径方向の左側を「他方側」と呼ぶ。
【0013】
<1.モータの概要>
図1は、本実施形態に係るモータ100の斜視図である。図2は、本実施形態に係るモータ100の内部を示す斜視図である。
【0014】
本実施形態に係るモータ100は、電動バイクの後輪に一体化される。すなわち、モータ100は、インホイールモータである。モータ100は、リム110を備える。リム110には、タイヤが取り付けられる。
【0015】
リム110は、軸方向に延びる筒状である。リム110は、上方および下方にそれぞれ開口を有する。リム110の上方の開口は、第1カバー111によって覆われる。リム110の下方の開口は、第2カバー112によって覆われる。第1カバー111および第2カバー112は、それぞれ、リム110に固定される。第1カバー111の径方向の中心部には、ベアリング101が固定される。第2カバー112の径方向の中心部には、不図示のベアリングが固定される。
【0016】
また、リム110の内周面には、不図示の複数のマグネットが配置される。複数のマグネットは、周方向に配列される。
【0017】
なお、以下の説明では、リム110の径方向内方の領域内をモータ100の内部と定義し、リム110の径方向内方の領域外をモータ100の外部と定義する。すなわち、リム110、第1カバー111および第2カバー112によって囲まれる領域内をモータ100の内部と定義し、リム110、第1カバー111および第2カバー112によって囲まれる領域外をモータ100の外部と定義する。
【0018】
モータ100は、シャフト1と、ステータ2と、リード線3と、を備える。シャフト1は、上下に延びる中心軸CAに沿って配置される。たとえば、第1カバー111のベアリング101および第2カバー112のベアリング(図示せず)には、シャフト1が挿入される。第1カバー111および第2カバー112は、シャフト1の軸周りに回転する。また、リム110は、第1カバー111および第2カバー112と共に、シャフト1の軸周りに回転する。
【0019】
ステータ2は、シャフト1に取り付けられる。ステータ2は、リム110の径方向内方に配置される。すなわち、ステータ2は、モータ100の内部に配置される。ステータ2の外周面は、リム110の内周面に配置される複数のマグネットと径方向に対向する。ステータ2は、リム110を回転させる。
【0020】
ステータ2は、ステータホルダ200を有する。ステータホルダ200は、中心軸CAに沿って筒状に延びるシャフト固定部210を有する。また、ステータホルダ200は、ホルダ本体部220を有する。さらに、ステータホルダ200は、コア保持部230を有する。
【0021】
ホルダ本体部220は、中心軸CAを中心とする円盤状であり、径方向に広がる。ホルダ本体部220は、径方向の中心部に開口を有する。シャフト固定部210は、ホルダ本体部220の径方向内縁から上方に延びる。シャフト固定部210の内周面は、シャフト1の外周面に固定される。コア保持部230は、筒状であり、ホルダ本体部220の径方向外縁から上方に延びる。
【0022】
また、ステータ2は、不図示のステータコアと、インシュレータ201と、コイル202と、を有する。ステータコアは、中心軸CAを中心とする環状の磁性体であり、電磁鋼板が軸方向に複数積層された積層体である。ステータコアは、コア保持部230によって保持される。インシュレータ201は、樹脂などを用いた絶縁部材である。インシュレータ201は、ステータコアの少なくとも一部を覆う。コイル202は、インシュレータ201を介してステータコアに導線が巻かれることによって形成される。
【0023】
ステータ2は、回路基板203をさらに有する。回路基板203は、インシュレータ201に取り付けられる。回路基板203は、コイル202に接続される。
【0024】
リード線3は、ステータ2に電気的に接続される。具体的には、ステータ2には、複数本のリード線3が接続される。複数本のリード線3は、1本の線に束ねられる。そして、一部のリード線3は、回路基板203に接続され、他のリード線3は、コイル202に接続される。すなわち、リード線3は、モータ100の内部に配置される部分を有する。
【0025】
また、リード線3は、モータ100の内部から外部に引き出される。すなわち、リード線3は、モータ100の外部に配置される部分を有する。リード線3は、モータ100の外部において、不図示のPDU(Power Drive Unit)に接続される。PDUは、モータ100の駆動を制御する。また、PDUは、モータ100への電力供給を制御する。
【0026】
<2.シャフト>
図3は、本実施形態に係るシャフト1の斜視図である。図3には、孔部10にリード線3が通された状態を図示する。図4は、本実施形態に係るシャフト1を一方側から見た場合での斜視図である。図5は、本実施形態に係るシャフト1を他方側から見た場合での斜視図である。図4および図5では、封止部材20およびカバー部材30を省略する。図6は、本実施形態に係るシャフト1の部分断面図である。図6には、中心軸CAを含む平面でシャフト1を切断した場合でのシャフト1の断面構造を図示する。また、図6には、孔部10にリード線3が通された状態を図示する。図7は、本実施形態に係るカバー部材30の斜視図である。図8は、本実施形態に係るカバー部材30およびその周辺の拡大斜視図である。
【0027】
シャフト1は、孔部10と、封止部材20と、を有する。さらに、シャフト1は、カバー部材30を有する。
<2-1.孔部>
【0028】
孔部10は、径方向の一方側から他方側に延びる。孔部10は、第1孔11と、第2孔12と、を有する。また、孔部10は、第3孔13を有する。
【0029】
第1孔11は、シャフト1の一方側に開口する。第1孔11の開口は、フランジ部40に位置する。すなわち、シャフト1は、第1孔11の開口が位置するフランジ部40を有する。フランジ部40は、シャフト1の外周面から径方向外方に突出する。すなわち、フランジ部40は、シャフト1のうちフランジ部40に対して軸方向に隣接する部分の直径よりも大きい直径を有する。
【0030】
なお、フランジ部40は、モータ100の内部に位置する。したがって、第1孔11の開口は、モータ100の内部に位置する。
【0031】
第2孔12は、シャフト1の他方側に開口する。第2孔12は、第1孔11に繋がる。すなわち、孔部10は、径方向の一方側から他方側に貫通する。リード線3は、第1孔11の内部および第2孔12の内部に配置される。
【0032】
第2孔12は、シャフト1のうち、第1孔11の開口位置よりも上方の位置に開口を有する。具体的には、第2孔12は、第1孔11から屈曲して上方に延びる。そして、第2孔12の開口は、シャフト1のうち、モータ100の外部に突出する部分に位置する。すなわち、第1孔11の開口は、モータ100の内部に位置するのに対し、第2孔12の開口は、モータ100の外部に位置する。これにより、孔部10を介して、リード線3をモータ100の内部から外部に引き出すことができる。
【0033】
たとえば、第2孔12の周方向の開口位置は、第1孔11の周方向の開口位置に対して周方向に約180°ずらされる。ただし、第1孔11の開口と第2孔12の開口との周方向の位置関係は特に限定されない。第1孔11の周方向の開口位置に対して周方向に180°よりも小さい角度ずれた位置を第2孔12の周方向の開口位置としてもよい。
【0034】
第3孔13は、シャフト1の外周面に開口する。具体的には、第3孔13は、第2孔12と同様、シャフト1の他方側に開口する。ただし、第3孔13の開口は、第2孔12の開口よりも下方に位置し、モータ100の内部に位置する。また、第3孔13は、第1孔11に繋がる。
【0035】
たとえば、第3孔13は、第1孔11を封止部材20で封止する封止工程において、樹脂の注入孔となる。また、たとえば、第3孔13は、封止工程において、第1孔11における樹脂の充填状態を確認するために用いられる。たとえば、第1孔11に樹脂が十分に充填されると、第1孔11の内部から第3孔13の内部に樹脂が溢れ出る。これにより、第3孔13の内部に溢れ出る樹脂の状態を目視で確認することにより、第1孔11における樹脂の充填状態を確認できる。
【0036】
<2-2.封止部材>
封止部材20の構成材料は、樹脂を含む。封止部材20には、シリコン樹脂が用いられる。たとえば、封止部材20の構成材料は、熱硬化性樹脂である。なお、封止部材20として樹脂を用いることは例示である。封止部材20としては、接着剤など幅広く採用できる。封止部材20は、孔部10の少なくとも一部に配置される。具体的には、封止部材20は、第1孔11の内部に配置される。
【0037】
封止部材20は、第1孔11の内部において、第1孔11の内周面とリード線3の外面との隙間を塞ぐ。具体的には、封止部材20は、第1孔11の内周面に接触する。また、封止部材20は、第1孔11の内部において、リード線3の外面に接触し、リード線3を覆う。これにより、モータ100の外部に位置する第2孔12の開口から孔部10に異物が侵入しても、モータ100の内部に位置する第1孔11の開口から異物が漏れ出ることを抑制できる。すなわち、モータ100の外部から内部に異物が侵入することを抑制できる。なお、異物は、水などの液体を含む。また、異物は、土埃などの塵を含む。
【0038】
また、封止部材20は、第3孔13の内部に配置される。封止部材20は、第3孔13の内周面に接触し、第3孔13を塞ぐ。これにより、モータ100の外部に位置する第2孔12の開口から孔部10に異物が侵入しても、モータ100の内部に位置する第3孔13の開口から異物が漏れ出ることを抑制できる。すなわち、モータ100の外部から内部に異物が侵入することを抑制できる。
【0039】
<2-3.カバー部材>
<2-3-1.カバー部材の概要>
カバー部材30は、中心軸CAに沿って筒状に延びる。カバー部材30は、たとえば、ゴム製であり、シャフト1に後付けされる。ただし、これに限定されず、カバー部材30が樹脂成型品であってもよい。また、カバー部材30を有するシャフト1を単一素材から削り出してもよい。
【0040】
カバー部材30は、フランジ部40に配置される。カバー部材30は、フランジ部40の外周面を径方向外方から覆う。カバー部材30の内周面は、全周にわたって、フランジ部40の外周面に接触する。ただし、詳細は後述するが、カバー部材30の内周面とフランジ部40の外周面との間の一部には、封止部材20が配置される。
【0041】
第1孔11は、フランジ部40に開口を有する。このため、第1孔11は、カバー部材30によって径方向外方から覆われる。すなわち、カバー部材30の内周面は、第1孔11を覆う。これにより、第1孔11の内部に配置される封止部材20が剥離することを抑制できる。その結果、モータ100の外部から内部に異物が侵入することを確実に抑制できる。また、第1孔11の内部に位置する封止部材20の移動がカバー部材30によって堰き止められるので、封止部材20による第1孔11の封止を確実に維持できる。
【0042】
また、硬化することで封止部材20となる溶融樹脂を第3孔13から第1孔11に注入するとき、第1孔11から径方向外方への溶融樹脂の流動をカバー部材30によって堰き止めることができる。さらに、第1孔11から径方向外方への溶融樹脂の流動をカバー部材30によって堰き止めることができるので、封止部材20を第1孔11の開口に配置できる。すなわち、カバー部材30を配置することにより、封止部材20の位置決めを行うことができる。
【0043】
また、第3孔13の開口は、カバー部材30の上端30aよりも下方に位置する。そして、カバー部材30の内周面は、第3孔13を覆う。これにより、第3孔13の内部に配置される封止部材20が剥離することを抑制できる。その結果、モータ100の外部から内部に異物が侵入することを確実に抑制できる。また、第3孔13の内部に位置する封止部材20の移動がカバー部材30によって堰き止められるので、封止部材20による第3孔13の封止を確実に維持できる。
【0044】
また、硬化することで封止部材20となる溶融樹脂を第3孔13から第1孔11に注入するとき、第3孔13から径方向外方への溶融樹脂の流動をカバー部材30によって堰き止めることができる。さらに、第1孔11から径方向外方への溶融樹脂の流動をカバー部材30によって堰き止めることができるので、封止部材20を第3孔13の開口に配置できる。すなわち、カバー部材30を配置することにより、封止部材20の位置決めを行うことができる。
【0045】
なお、第3孔13の開口は、フランジ部40に位置する。たとえば、第3孔13の軸方向の開口位置は、第1孔11の軸方向の開口位置と略同じである。これにより、容易に、第1孔11および第3孔13の両方を単一のカバー部材30で覆うことができる。また、カバー部材30の軸方向の長さを小さくできる。
【0046】
カバー部材30は、配線孔310を有する。配線孔310は、カバー部材30の径方向内方から径方向外方に貫通する。また、配線孔310の開口は、第1孔11の開口と重なる。たとえば、第1孔11の開口に対して、配線孔310の開口の全域が径方向に対向する。配線孔310には、リード線3が通される。すなわち、リード線3は、カバー部材30の径方向内方およびカバー部材30の径方向外方に配置される。言い換えると、リード線30は、配線孔310を介して、カバー部材30の径方向内方から径方向外方に突出する。これにより、第1孔11の開口と配線孔310の開口との間において、リード線3が屈曲することを抑制できる。その結果、リード線3が断線することを抑制できる。また、カバー部材30がリード線3に引っ掛かった状態となるので、カバー部材30の軸方向の位置ずれを抑制できる。
【0047】
また、カバー部材30の下端30bは、シャフト固定部210の上端であるホルダ上端210aに接触する(図2参照)。これにより、カバー部材30の軸方向の位置ずれをより抑制できる。
【0048】
<2-3-2.第1凹部の詳細>
封止部材20は、シャフト1の外周面とカバー部材30の内周面との間に配置される第1封止部21を有する。第1封止部21は、シャフト1の外周面に接触する。また、第1封止部21は、カバー部材30の内周面に接触する。第1封止部21は、第1孔11の開口を覆う。これにより、確実に、第1孔11を塞ぐことができる。また、カバー部材30の内周面が第1封止部21に対して径方向外方から接触するので、第1封止部21がシャフト1の外周面から剥離することを抑制できる。また、シャフト1の外周面とカバー部材30の内周面との間において、第1封止部21がリード線3の外面に接触するので、リード線3が固定される。これにより、リード線3が移動することを抑制できる。
【0049】
なお、シャフト1の外周面は、第1の表面粗さを有する領域と、第1の表面粗さよりも大きい第2の表面粗さを有する領域と、を有する。具体的には、フランジ部40の外周面が第2の表面粗さを有する。すなわち、カバー部材30は、第2の表面粗さを有する領域に配置される。この構成では、第1封止部21は、シャフト1の外周面のうち、第2の表面粗さを有するフランジ部40の外周面に接触する。これにより、第2の表面粗さを有するフランジ部40の外周面の凹凸に第1封止部21が入り込むため、アンカー効果が大きくなる。その結果、第1封止部21が剥離することをより抑制できる。
【0050】
ここで、カバー部材30の内周面は、径方向外方に凹む第1凹部31を有する。第1凹部31は、第1孔11の開口と対向する。たとえば、第1凹部31は、第1孔11の開口の全域と径方向に対向する。
【0051】
第1封止部21は、第1凹部31の内部に配置される。第1孔11を封止部材20で封止する封止工程では、第1凹部31に樹脂が充填されるまで、第3孔13から樹脂が注入される。その後、樹脂を硬化させることにより、第1凹部31の内部の硬化樹脂によって第1孔11の開口が覆われる。第1凹部31の内部の硬化樹脂は、封止部材20のうちシャフト1の外周面とカバー部材30の内周面との間に配置される部分である。すなわち、第1凹部31の内部の硬化樹脂が第1封止部21となる。これにより、容易に、第1封止部21を有する封止部材20を形成することができる。
【0052】
さらに、第1凹部31の内部に第1封止部21を配置することにより、第1封止部21の径方向の厚みを大きくできる。これにより、第1封止部21の強度が増大し、第1封止部21が破損することを抑制できる。その結果、確実に、第1孔11を第1封止部21で塞ぐことができる。
【0053】
たとえば、第1凹部31は、第1孔11の開口の全域を径方向外方から覆う。ただし、これに限定されず、第1孔11の開口の少なくとも一部が第1凹部31と径方向に対向すればよい。すなわち、第1凹部31の周方向の中心位置が第1孔11の開口中心に対して周方向にずれてもよい。
【0054】
第1凹部31は、カバー部材30の上端30aに開口を有する。そして、第1凹部31は、カバー部材30の上端30aから下端30bに向かって延びる。これにより、第1凹部31の内部をカバー部材30の上端30a側から目視で確認できる。ここで、第1孔11を封止部材20で封止する封止工程において、第3孔13から注入される樹脂が第1孔11に十分に充填されるまでは、第1孔11の開口を視認できる。一方で、第1孔11に樹脂が十分に充填されると、第1孔11の開口が隠れるほど、第1凹部31の内部の樹脂量が増大する。その結果、カバー部材30の上端30a側から第1凹部31の内部を目視することにより、容易に、第1孔11における樹脂の充填状態を確認できる。
【0055】
第1凹部31の形状は特に限定されない。たとえば、第1凹部31は、上方から見て、径方向内方から径方向外方に向かって切り欠かれた形状を有する。すなわち、第1凹部31は、上方から見て、カバー部材30の他の部分よりも肉厚が小さい部分である。
【0056】
<2-3-3.第2凹部の詳細>
封止部材20は、シャフト1の外周面とカバー部材30の内周面との間に配置される第2封止部22を有する。第2封止部22は、シャフト1の外周面に接触する。また、第2封止部22は、カバー部材30の内周面に接触する。第2封止部22は、第3孔13の開口を覆う。これにより、確実に、第3孔13を塞ぐことができる。また、カバー部材30の内周面が第2封止部22に対して径方向外方から接触するので、第2封止部22がシャフト1の外周面から剥離することを抑制できる。
【0057】
また、第2封止部22は、シャフト1の外周面のうち、第2の表面粗さを有するフランジ部40の外周面に接触する。これにより、第2の表面粗さを有するフランジ部40の外周面の凹凸に第2封止部22が入り込むため、アンカー効果が大きくなる。その結果、第2封止部22が剥離することをより抑制できる。
【0058】
ここで、カバー部材30の内周面は、径方向外方に凹む第2凹部32を有する。第2凹部32は、第3孔13の開口と対向する。たとえば、第2凹部32は、第3孔13の開口の全域と径方向に対向する。
【0059】
第2封止部22は、第2凹部32の内部に配置される。第1孔11を封止部材20で封止する封止工程では、第2凹部32にも樹脂が充填される。その後、樹脂を硬化させることにより、第2凹部32の内部の硬化樹脂によって第3孔13の開口が覆われる。第2凹部32の内部の硬化樹脂は、封止部材20のうちシャフト1の外周面とカバー部材30の内周面との間に配置される部分である。すなわち、第2凹部32の内部の硬化樹脂が第2封止部22となる。これにより、容易に、第2封止部22を有する封止部材20を形成することができる。
【0060】
さらに、第2凹部32の内部に第2封止部22を配置することにより、第2封止部22の径方向の厚みを大きくできる。これにより、第2封止部22の強度が増大し、第2封止部22が破損することを抑制できる。その結果、確実に、第3孔13を第2封止部22で塞ぐことができる。
【0061】
たとえば、第2凹部32は、第3孔13の開口の全域を径方向外方から覆う。ただし、これに限定されず、第3孔13の開口の少なくとも一部が第2凹部32と径方向に対向すればよい。すなわち、第2凹部32の周方向の中心位置が第3孔13の開口中心に対して周方向にずれてもよい。
【0062】
第2凹部32は、カバー部材30の上端30aに開口を有する。そして、第2凹部32は、カバー部材30の上端30aから下端30bに向かって延びる。たとえば、第1孔11を封止部材20で封止する封止工程では、樹脂を吐出する注入ノズルが用いられる。この場合、カバー部材30の上端30a側から第2凹部32の内部に注入ノズルを差し込んで樹脂を吐出することにより、容易に、樹脂を注入できる。
【0063】
たとえば、第2凹部32は、カバー部材30の外周面の一部を径方向外方に突出させることで得られる。具体的には、カバー部材30の外周面は、径方向外方に突出する突出部33を有する。そして、カバー部材30の内周面は、突出部33の径方向内方に第2凹部32を有する。これにより、第2凹部32の凹みを大きくとることができる。言い換えると、第2凹部32の径方向の凹み量をカバー部材30の肉厚よりも大きくできる。たとえば、第1凹部31の形状では、径方向の凹み量がカバー部材30の肉厚よりも小さい。一方で、第2凹部32の形状では、径方向の凹み量を第1凹部31よりも大きくできる。これにより、容易に、注入ノズルを挿入可能な第2凹部32を得ることができる。
【0064】
なお、フランジ部40の外周面とカバー部材30との間に全周にわたって間隔を設けてもよい。そして、フランジ部40の外周面とカバー部材30との間の全域に封止部材20を配置してもよい。すなわち、フランジ部40の外周面が全周にわたって封止部材20で覆われてもよい。
【0065】
<2-3-4.カバー部材の上端位置>
カバー部材30は、フランジ部40に配置される。ただし、フランジ部40は、カバー部材30から露出した部分を有する。具体的には、カバー部材30の上端30aは、フランジ部40の上端40aよりも下方に位置する。すなわち、フランジ部40の上端40aがカバー部材30から露出する。これにより、シャフト1のうちフランジ部40に対して上方に隣接する部分に他の部材が配置されても、カバー部材30の上端30aが他の部材に接触することを抑制できる。たとえば、フランジ部40の上方には、ベアリング101が配置される。この構成では、カバー部材30の上端30aがベアリング101に接触することを抑制できる。
【0066】
第1封止部21の上端部である第1上端部21aは、カバー部材30の上端30aよりも下方に位置する。すなわち、第1上端部21aは、フランジ部40の上端40aよりも下方に位置する。これにより、シャフト1のうちフランジ部40に対して上方に隣接する部分に他の部材が配置されても、第1上端部21aが他の部材に接触することを抑制できる。
【0067】
たとえば、シャフト1のうちフランジ部40に対して上方に隣接する部分には、ベアリング101が配置される(図2参照)。ベアリング101は、内輪101aおよび外輪101bを有する。内輪101aは、シャフト1の外周面に固定される。外輪101bは、第1カバー111に固定される。内輪101aは、回転しない。外輪101bは、内輪101aに対して回転する。ここで、ベアリング101の軸方向の位置決めは、フランジ部40の上端40aに内輪101aを接触させることによって行われる。この構成では、第1封止部21の第1上端部21aがベアリング101の外輪101bに接触することを抑制できる。これにより、ベアリング101の動作不良を抑制できる。
【0068】
また、第2封止部22の上端部である第2上端部22aは、カバー部材30の上端30aよりも下方に位置する。すなわち、第2上端部22aは、フランジ部40の上端40aよりも下方に位置する。これにより、第2上端部22aがベアリング101の外輪101bに接触することも抑制できる。
【0069】
<2-3-5.カバー部材の隙間部>
カバー部材30は、隙間部320を有する。隙間部320は、カバー部材30の上端30aから下端30bに延びるとともに、カバー部材30の径方向内方から径方向外方に貫通する。具体的には、カバー部材30は、周方向に対向する一対の端面32aおよび32bを有する。そして、端面32aおよび32bの間の領域が隙間部320となる。すなわち、カバー部材30は、隙間部320によって周方向に分断される。ここで、カバー部材30は、ゴム製であり、弾性変形可能である。これにより、隙間部320の間隔を広げることができるので、隙間部320を介して、カバー部材30をフランジ部40に嵌めることができる。その結果、カバー部材30をフランジ部40に嵌めるときの作業性が向上する。
【0070】
たとえば、端面32aおよび32bは、互いに接触する。ただし、これに限定されず、端面32aおよび32bの間に間隔が設けられてもよい。
【0071】
<2-3-6.カバー部材の変形例>
図9は、変形例に係るカバー部材30の斜視図である。
【0072】
変形例では、カバー部材30は、隙間部320を有する。隙間部320は、カバー部材30の上端30aから配線孔310を経由してカバー部材30の下端30bに延びるとともに、カバー部材30の径方向内方から径方向外方に貫通する。隙間部320は、周方向に対向する一対の端面32aおよび32bの間の領域である。具体的には、隙間部320は、上端30aから延びる第1隙間部321と、下端30bから延びる第2隙間部322と、を有する。そして、第1隙間部321および第2隙間部322は、それぞれ、配線孔310に繋がる。
【0073】
変形例では、隙間部320の間隔を広げることができるので、隙間部320を介して、カバー部材30をフランジ部40に嵌めることができる。その結果、カバー部材30をフランジ部40に嵌めるときの作業性が向上する。さらに、隙間部320の間隔を広げることにより、配線孔310が2つに分割される。これにより、たとえば、フランジ部40に位置する第1孔11の開口からリード線3が突出した状態であっても、フランジ部40にカバー部材30を嵌めることができる。すなわち、作業手順の自由度が向上する。
【0074】
<3.その他>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態は適宜任意に組み合わせることができる。
【0075】
たとえば、上述の実施形態では、電動バイクのインホイールモータに本発明を適用したが、電動アシスト自転車など、種々の用途に利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、たとえば、電動バイクのインホイールモータなどとして利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 シャフト
2 ステータ
3 リード線
10 孔部
11 第1孔
12 第2孔
13 第3孔
20 封止部材
21 第1封止部
21a 第1上端部
22 第2封止部
22a 第2上端部
30 カバー部材
30a 上端
31 第1凹部
32 第2凹部
33 突出部
40 フランジ部
100 モータ
200 ステータホルダ
210 シャフト固定部
210a ホルダ上端
310 配線孔
320 隙間部
CA 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9