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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 12/00 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
G06F12/00 550Z
G06F12/00 597U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020196105
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084311
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 史義
(72)【発明者】
【氏名】中元 克磨
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-234458(JP,A)
【文献】特開平09-116717(JP,A)
【文献】特開2006-331076(JP,A)
【文献】特開2020-006605(JP,A)
【文献】特開2012-078634(JP,A)
【文献】特開2018-049381(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122332(WO,A1)
【文献】特開2008-186295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 12/00
G06F 3/06-3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ、第1メモリ、及び第2メモリを備え、
前記プロセッサは、
前記第1メモリの状態を示す状態情報に基づいて、前記第1メモリの書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合に、自装置に入力された処理命令に係るデータを前記第1メモリに代えて前記第2メモリに書き込
前記第1メモリの書き込み寿命が、前記第1寿命閾値よりも長い寿命を示す第2寿命閾値未満、且つ、前記第1寿命閾値以上である場合は、前記処理命令に係るデータのデータ容量を示す前記処理命令の属性情報において第1属性値を有する前記処理命令に係る第1データを前記第1メモリに書き込み、前記属性情報において前記第1属性値よりもデータのデータ容量が大きくなることを示す第2属性値を有する前記処理命令に係る第2データを前記第2メモリに書き込み、
前記第1メモリの書き込み寿命が前記第1寿命閾値未満となった場合は、前記第1データ及び前記第2データを前記第2メモリに書き込む、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2メモリは、書き込み寿命を有さないメモリである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2メモリは複数設けられ、
前記プロセッサは、
複数の前記第2メモリの空き容量に基づいて、複数の前記第2メモリの中から、前記データの書き込み先となる前記第2メモリを決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1メモリの書き込み寿命が第1閾値未満である場合であっても、前記第2メモリの空き容量が空き容量閾値未満である場合には、当該データを前記第1メモリに書き込む、
ことを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
第1メモリ及び第2メモリを備えるコンピュータに、
前記第1メモリの状態を示す状態情報に基づいて、前記第1メモリの書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合に、自装置に入力された処理命令に係るデータを前記第1メモリに代えて前記第2メモリに書き込ませ、
前記第1メモリの書き込み寿命が、前記第1寿命閾値よりも長い寿命を示す第2寿命閾値未満、且つ、前記第1寿命閾値以上である場合は、前記処理命令に係るデータのデータ容量を示す前記処理命令の属性情報において第1属性値を有する前記処理命令に係る第1データを前記第1メモリに書き込ませ、前記属性情報において前記第1属性値よりもデータのデータ容量が大きくなることを示す第2属性値を有する前記処理命令に係る第2データを前記第2メモリに書き込ませ、
前記第1メモリの書き込み寿命が前記第1寿命閾値未満となった場合は、前記第1データ及び前記第2データを前記第2メモリに書き込ませる、
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な種類のメモリが提供されているが、その中に、書き込み寿命を有するメモリがある。書き込み寿命とは、メモリに対してデータを書き込むことができなくなるまでの間の、当該メモリに対してデータを書き込む回数、又は、当該メモリに対して書き込むデータの総容量などに応じて決まるパラメータである。書き込み寿命を有するメモリの代表的な例としてNAND型メモリがある。
【0003】
また、従来、書き込み寿命を有するメモリを備える画像処理装置が提案されている。例えば、特許文献1には、データの書き込み回数に応じた書き込み寿命を有するフラッシュROMを備えた画像処理装置であって、フラッシュROMへのデータの書き込み回数が所定の閾値以上となった場合に、利用者に対して警告を出力する画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-152661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
書き込み寿命を有するメモリを備えた画像処理装置において、当該メモリの書き込み寿命が尽きるまでの期間をできるだけ延ばしたい場合がある。当該期間を延ばすことで、例えば、当該メモリの書き込み寿命が尽きるまでの間に当該メモリを交換するなどの対処をすることが可能となる。
【0006】
本発明の目的は、画像処理装置が有するメモリに対して処理命令に係るデータを全て書き込む場合に比して、当該メモリの書き込み寿命が尽きるまでの期間を延長することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、プロセッサ、第1メモリ、及び第2メモリを備え、前記プロセッサは、前記第1メモリの状態を示す状態情報に基づいて、前記第1メモリの書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合に、自装置に入力された処理命令に係るデータを前記第1メモリに代えて前記第2メモリに書き込前記第1メモリの書き込み寿命が、前記第1寿命閾値よりも長い寿命を示す第2寿命閾値未満、且つ、前記第1寿命閾値以上である場合は、前記処理命令に係るデータのデータ容量を示す前記処理命令の属性情報において第1属性値を有する前記処理命令に係る第1データを前記第1メモリに書き込み、前記属性情報において前記第1属性値よりもデータのデータ容量が大きくなることを示す第2属性値を有する前記処理命令に係る第2データを前記第2メモリに書き込み、前記第1メモリの書き込み寿命が前記第1寿命閾値未満となった場合は、前記第1データ及び前記第2データを前記第2メモリに書き込む、ことを特徴とする画像処理装置である。
請求項2に係る発明は、前記第2メモリは、書き込み寿命を有さないメモリである、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項3に係る発明は、前記第2メモリは複数設けられ、前記プロセッサは、複数の前記第2メモリの空き容量に基づいて、複数の前記第2メモリの中から、前記データの書き込み先となる前記第2メモリを決定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置である
求項に係る発明は、前記プロセッサは、前記第1メモリの書き込み寿命が第1閾値未満である場合であっても、前記第2メモリの空き容量が空き容量閾値未満である場合には、当該データを前記第1メモリに書き込む、ことを特徴とする請求項に記載の画像処理装置である。
請求項に係る発明は、第1メモリ及び第2メモリを備えるコンピュータに、前記第1メモリの状態を示す状態情報に基づいて、前記第1メモリの書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合に、自装置に入力された処理命令に係るデータを前記第1メモリに代えて前記第2メモリに書き込ませ、前記第1メモリの書き込み寿命が、前記第1寿命閾値よりも長い寿命を示す第2寿命閾値未満、且つ、前記第1寿命閾値以上である場合は、前記処理命令に係るデータのデータ容量を示す前記処理命令の属性情報において第1属性値を有する前記処理命令に係る第1データを前記第1メモリに書き込ませ、前記属性情報において前記第1属性値よりもデータのデータ容量が大きくなることを示す第2属性値を有する前記処理命令に係る第2データを前記第2メモリに書き込ませ、前記第1メモリの書き込み寿命が前記第1寿命閾値未満となった場合は、前記第1データ及び前記第2データを前記第2メモリに書き込ませる、ことを特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1又はに係る発明によれば、画像処理装置が有するメモリに対して処理命令に係るデータを全て書き込む場合に比して、当該メモリの書き込み寿命が尽きるまでの期間を延長することができる。
請求項2に係る発明によれば、第2メモリの書き込み寿命が尽きるのを防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、本来第1メモリに書き込むべきデータを第2メモリに書き込むことよって、当該第2メモリの空き容量が無くなってしまうことを抑制することができる
求項に係る発明によれば、1つの処理要求に係るデータが分割されてメモリに記憶されてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る画像処理装置の構成概略図である。
図2】第1メモリの書き込み寿命とジョブの属性情報との組み合わせに対する、当該ジョブのデータの書き込み先のメモリを示す表である。
図3】本実施形態に係る画像処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置10の構成概略図である。画像処理装置10は、利用者(ユーザ)から入力された処理命令としてのジョブに応じて、当該ジョブに係る処理を実行する装置である。画像処理装置10の代表例は、プリント(印刷)機能、スキャン(画像読取)機能、コピー機能、FAX送信機能などを備える複合機であるが、画像処理装置10は、入力されたジョブに係る処理を実行する限りにおいてどのような装置であってもよい。また、本実施形態では、ジョブに係るデータが画像データである例について説明するが、ジョブに係るデータは画像データに限るものではない。
【0011】
通信インターフェース12は、例えばネットワークアダプタなどを含んで構成される。通信インターフェース12は、LAN(Local Area Network)などの通信回線を介して他の装置(例えばユーザが使用するユーザ端末)と通信する機能を発揮する。
【0012】
特に、通信インターフェース12は、ユーザ端末から、処理対象となるデータを含むジョブを受信する。そのようなジョブとしては、例えば、画像処理装置10に印刷処理を行わせるためのプリントジョブなどがある。プリントジョブには、印刷処理に関する属性を示す属性情報、及び、当該プリントジョブに係る(印刷処理の対象となる)画像データが含まれる。属性情報には、プリントジョブの設定を示す設定情報や、プリントジョブに係る画像データの属性(特に論理ページ数など)を示す情報が含まれている。プリントジョブに係る設定情報には、例えば印刷色設定(カラー/白黒)を示す情報が含まれる。
【0013】
入出力インターフェース14は、例えばタッチパネルあるいはボタンなどの入力インターフェース、及び、ディスプレイあるいはスピーカなどの出力インターフェースを含んで構成される。
【0014】
入力インターフェースは、ユーザが画像処理装置10に種々の指示を入力するために用いられる。例えば、ユーザは、画像処理装置10が有する用紙トレイ(不図示)に紙原稿をセットした上で、画像処理装置10にスキャン処理を行わせるためのスキャンジョブを入力インターフェースから入力することができる。スキャンジョブには、スキャン処理に関する属性を示す属性情報が含まれる。属性情報には、スキャンジョブの設定を示す設定情報や、スキャンジョブに係る紙原稿の属性(特に枚数など)を示す情報が含まれる。スキャンジョブに係る設定情報には、例えば、スキャン色(カラー/白黒)や読取解像度などを示す情報が含まれる。後述のスキャナ16は、当該スキャンジョブに応じて、用紙トレイにセットされた紙原稿を光学的に読み取って、当該スキャンジョブに係る画像データを取得する。同様に、ユーザは、入力インターフェースから、画像処理装置10にコピー処理(紙原稿をスキャンして得られた画像データを印刷媒体に印刷する処理)を行わせるためのコピージョブや、画像処理装置10にFAX送信処理(紙原稿をスキャンして得られた画像データをFAX送信する処理)を行わせるためのFAXジョブを入力インターフェースから入力することができる。コピージョブやFAXジョブの属性情報にも、スキャンジョブと同内容の情報が含まれる。
【0015】
出力インターフェースは、画像処理装置10がユーザに対して種々の情報を出力するために用いられる。例えば、出力インターフェースとしてのディスプレイには、種々の画面が表示される。
【0016】
スキャナ16は、例えば光源及びCCD(Charge Coupled Device)などから構成される。スキャナ16は、紙原稿を光学的に読み取って、当該紙原稿に応じた画像データを生成する。上述のように、スキャナ16は、ユーザがスキャンジョブ、コピージョブ、又はFAXジョブを画像処理装置10に入力した場合、用紙トレイにセットされた紙原稿を光学的に読み取って、ジョブに係る画像データを取得する。
【0017】
プリンタ18は、例えば帯電装置、感光ドラム、トナー、あるいは印刷媒体搬送装置などを含んで構成される。プリンタ18は、ユーザがプリントジョブを画像処理装置10に入力した場合、当該プリントジョブに係る画像データに基づいて、印刷媒体上に画像を形成(すなわち印刷)する。また、プリンタ18は、ユーザがコピージョブを画像処理装置10に入力した場合、当該コピージョブに応じてスキャナ16が取得した画像データに基づいて、印刷媒体上に画像を形成する。
【0018】
第1メモリ20は、不揮発性のメモリであり、書き込み寿命を有するメモリである。第1メモリ20は、書き込み寿命を有するメモリであればどのような種類のメモリであってもよい。例えば、第1メモリ20はNAND型メモリであってよい。NAND型メモリとしては、例えば、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi Media Card)、あるいはSDカードなどがある。
【0019】
上述の通り、書き込み寿命とは、第1メモリ20に対してデータを書き込むことができなくなるまでの間の、第1メモリ20に対してデータを書き込む回数、又は、第1メモリ20に対して書き込むデータの総容量などに応じて決まるパラメータである。すなわち、第1メモリ20にデータを書き込む度に、第1メモリ20の書き込み寿命が短くなっていく。また、第1メモリ20に書き込むデータのデータ容量がより大きい程、当該データを書き込むことによって第1メモリ20の書き込み寿命がより短くなる。
【0020】
第1メモリ20は、後述のプロセッサ24の求めに応じて、第1メモリ20の状態を示す状態情報を発行することができる。このような状態情報の例としては、SMART情報が挙げられる。第1メモリ20が発行する状態情報には、第1メモリ20の書き込み寿命を示す寿命情報が含まれる。例えば、第1メモリ20は、これまでの第1メモリ20に対するデータの書き込み回数、及び、これまでの第1メモリ20に書き込まれた総データ容量(換言すれば延べデータ容量)の少なくとも一方に基づいて、自らの書き込み寿命を算出し、算出された寿命を示す情報が寿命情報となる。本実施形態では、状態情報としてのSMART情報には、第1メモリ20の書き込み寿命が0~100%の数値で表される。第1メモリ20に対して未だにデータが書き込まれていない状態(すなわち使用前の状態)においては、書き込み寿命が100%であり、書き込み寿命が尽きた状態が0%である。
【0021】
第1メモリ20には、画像処理装置10に入力されたジョブに係るデータが書き込まれる。例えば、画像処理装置10にプリントジョブが入力された場合、当該プリントジョブに含まれる画像データが第1メモリ20に書き込まれる。また、画像処理装置10にスキャンジョブ、コピージョブ、又はFAXジョブが入力された場合、当該ジョブに応じてスキャナ16が紙原稿を読み取って取得した画像データが第1メモリ20に書き込まれる。
【0022】
また、第1メモリ20には、画像処理装置10の各部を動作させるための画像処理プログラムが記憶される。
【0023】
第2メモリ22は、第1メモリ20とは別個に設けられるメモリである。本実施形態では、第2メモリ22は、揮発性メモリであり、書き込み寿命を有さないメモリである。また、第2メモリ22の記憶可能容量は、第1メモリ20に比して小さいものであってよい。第2メモリ22の代表的な例はDRAMである。
【0024】
しかしながら、第2メモリ22としては、不揮発性のメモリであってもよく、また、書き込み寿命を有するメモリであってもよい。その場合、第2メモリ22としては、第1メモリ20同様、例えば、SSD、eMMC、あるいはSDカードなどのNAND型メモリを用いることができる。第2メモリ22が書き込み寿命を有するメモリである場合、第2メモリ22は、第1メモリ20同様、第2メモリ22の書き込み寿命を示す寿命情報を含む状態情報を発行可能となっていてもよい。
【0025】
また、図1には、1つの第2メモリ22のみが示されているが、画像処理装置10は、複数の第2メモリ22を有していてもよい。
【0026】
第2メモリ22にも、画像処理装置10に入力されたジョブに係るデータが書き込まれる。このように、画像処理装置10には、ジョブに係るデータが書き込まれるメモリとして、第1メモリ20及び第2メモリ22が設けられているが、ジョブに係るデータがどのメモリに書き込まれるかは、後述のプロセッサ24(より詳しくは書き込み処理部26)により決定される。
【0027】
プロセッサ24は、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)など)、及び、専用の処理装置(例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいは、プログラマブル論理デバイスなど)の少なくとも1つを含んで構成される。プロセッサ24としては、1つの処理装置によるものではなく、物理的に離れた位置に存在する複数の処理装置の協働により構成されるものであってもよい。図1に示す通り、プロセッサ24は、第1メモリ20に記憶された画像処理プログラムにより書き込み処理部26としての機能を発揮する。
【0028】
書き込み処理部26は、画像処理装置10に入力されたジョブに係るデータを第1メモリ20又は第2メモリ22に書き込む処理を実行する。詳しくは、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命に応じて、ジョブに係るデータの書き込み先を決定する。
【0029】
まず、書き込み処理部26は、ジョブに係るデータのメモリへの書き込み処理に先立って、第1メモリ20の書き込み寿命を取得する。具体的には、書き込み処理部26は、画像処理装置10がユーザからジョブを受け付けると、第1メモリ20に対して状態情報の発行を依頼して、第1メモリ20から状態情報を受け取る。書き込み処理部26は、第1メモリ20から受け取った状態情報に含まれる寿命情報を参照することで、第1メモリ20の書き込み寿命を取得する。上述のように、本実施形態では、第1メモリ20の書き込み寿命は「XX%」という形で表現される。
【0030】
1つの実施形態では、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値以上である場合、ジョブに係るデータを第1メモリ20に書き込み、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合、ジョブに係るデータを第1メモリ20に代えて第2メモリ22に書き込む。ここでの第1寿命閾値は、例えば画像処理装置10の管理者などによって予め設定される。例えば、第1寿命閾値が「1%」に設定されていたとすると、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命が1%以上である場合には、ジョブに係るデータを第1メモリ20に書き込み、第1メモリ20の書き込み寿命が1%未満である場合には、ジョブに係るデータを第2メモリ22に書き込む。
【0031】
これにより、第1メモリ20の書き込み寿命が短くなった場合(具体的には第1寿命閾値未満となった場合)には、第1メモリ20にはジョブに係るデータが書き込まれないから、第1メモリ20の書き込み寿命が尽きるまでの期間を延長することができる。この間は、ジョブに係るデータが第2メモリ22に書き込まれるので、ユーザは、通常通り画像処理装置10を利用することができる。そして、画像処理装置10の管理者は、この間に、第1メモリ20を交換することが可能となる。
【0032】
また、プロセッサ24は、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満となった場合に、画像処理装置10の管理者に対して通知を出力するようにしてもよい。例えば、入出力インターフェース14から通知を出力してもよいし、通信インターフェース12から管理者が使用する端末に対して通知信号を送信して当該端末に通知を出力させてもよい。これにより、管理者に第1メモリ20の交換を促すことができる。
【0033】
画像処理装置10に複数の第2メモリ22が設けられている場合は、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合、複数の第2メモリ22の空き容量を取得し、複数の第2メモリ22の空き容量に基づいて、複数の第2メモリ22の中から、ジョブに係るデータの書き込み先となる第2メモリ22を決定する。例えば、書き込み処理部26は、複数の第2メモリ22のうち、空き容量が最も大きい第2メモリ22に、ジョブに係るデータを書き込む。
【0034】
複数の第2メモリ22において、書き込み寿命を有する第2メモリ22と書き込み寿命を有さない第2メモリ22が混在している場合は、書き込み処理部26は、書き込み寿命を有する第2メモリ22に優先して、書き込み寿命を有さない第2メモリ22に、ジョブに係るデータを書き込むようにしてもよい。
【0035】
画像処理装置10に複数の書き込み寿命を有する第2メモリ22が設けられている場合、書き込み処理部26は、各第2メモリ22から寿命情報を含む状態情報を受け取り、複数の第2メモリ22の書き込み寿命に基づいて、ジョブに係るデータの書き込み先の第2メモリ22を決定するようにしてもよい。例えば、複数の第2メモリ22のうち、書き込み寿命が最も大きい第2メモリ22にジョブに係るデータを書き込むようにしてもよい。
【0036】
また、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合であっても、第2メモリ22(第2メモリ22が複数設けられている場合には1つの第2メモリ22)の空き容量が空き容量閾値未満である場合には、当該データを第1メモリ20に書き込むようにしてもよい。ここで、空き容量閾値は、画像処理装置10の管理者などによって予め定められる。空き容量閾値は、例えば、画像処理装置10に入力されることが想定される1つのジョブに係るデータのデータ容量よりも大きい値が設定される。空き容量閾値は、画像処理装置10の仕様、例えば、カラー印刷が可能であるか、白黒印刷のみ可能かなどに応じて定められてよい。
【0037】
複数の第2メモリ22のうちの空き容量が比較的大きい第2メモリ22にジョブに係るデータを書き込むこと、あるいは、第2メモリ22の空き容量が空き容量閾値未満の場合にジョブに係るデータを第1メモリ20に書き込むようにすることで、1つのジョブに係るデータの全部を1つの第2メモリ22に書き込むことができる可能性を高めることができる。換言すれば、1つのジョブに係るデータが分割されて複数のメモリに書き込まれるのを抑制することができる。1つのジョブに係るデータが分割されて複数のメモリに書き込まれる、とは、データの一部が第2メモリ22に書き込まれて残りの一部が第1メモリ20に書き込まれる、又は、データが分割されて複数の第2メモリ22にそれぞれ書き込まれるなどの態様がある。いずれの態様であっても、当該ジョブを実行する際に、当該ジョブに係るデータの読み出し先が変わることとなり、ジョブの実行が遅延してしまう場合がある。したがって、1つのジョブに係るデータが分割されて複数のメモリに書き込まれるのを抑制することで、当該データに係るジョブの実行に遅延が生じるのを抑制することができる。
【0038】
また、書き込み処理部26は、ユーザによって画像処理装置10に入力されたジョブの属性情報に基づいて、当該ジョブに係るデータの書き込み先を第1メモリ20及び第2メモリ22から選択するようにしてもよい。上述のように、属性情報は、ジョブの設定情報や、ジョブに係るデータの属性を示す情報を含んでいる。属性情報は、特に、ジョブに係るデータのデータ容量を示す情報である。
【0039】
ジョブの属性情報は、ジョブに係るデータ容量を示すものであり、後述のように、書き込み処理部26は、ジョブの属性情報から推定された当該ジョブに係るデータのデータ容量に基づいて、当該データの書き込み先のメモリを決定することができる。ここで、書き込み処理部26がジョブに係るデータを解析して、当該データのデータ容量を直接取得することも考えられる。しかしながら書き込み処理部26は、データのデータ容量に基づいて、当該データの書き込み先のメモリを決定することから、書き込み処理部26は、ジョブに係るデータをメモリに書き込む前に、当該データのデータ容量を取得する必要がある。ここで、ジョブに係るデータを解析して当該データのデータ容量を取得するには、当該データを一旦メモリに書き込む必要があるため、メモリに書き込む前にデータを解析することは不可能である。したがって、書き込み処理部26は、ジョブに係るデータを解析せずに、ジョブに含まれるジョブの属性情報に基づいて、当該ジョブに係るデータのデータ容量を推定する。
【0040】
例えば、プリントジョブの設定情報における印刷色設定がカラーであれば、当該プリントジョブに係る画像データがカラー画像である可能性が高く、印刷色設定が白黒であれば、当該プリントジョブに係る画像データが、カラー画像よりもデータ容量が小さい白黒画像である可能性が高い。つまり、プリントジョブの印刷色設定がカラーということは、印刷色設定が白黒である場合に比して、画像データのデータ容量が大きいことを示すと言える。また、画像データの論理ページ数が多い程、当該画像データのデータ容量が大きくなるから、プリントジョブの設定情報における論理ページ数も、当該プリントジョブに係る画像データのデータ容量を示すものであると言える。
【0041】
また、スキャンジョブ、コピージョブ、又はFAXジョブの設定情報におけるスキャン色設定がカラーであれば、当該ジョブに係る画像データがカラー画像となり、スキャン色設定が白黒であれば、当該ジョブに係る画像データが白黒画像となる。つまり、スキャン色設定がカラーということは、スキャン色設定が白黒である場合に比して、画像データのデータ容量が大きくなることを示している。また、設定情報における読取解像度が大きい程、当該プリントジョブに係る画像データの解像度が大きくなるから、読取解像度も、当該ジョブのデータ容量を示すものであると言える。また、スキャンジョブ、コピージョブ、又はFAXジョブの紙原稿の枚数が事前に取得できるのであれば、紙原稿の枚数は、当該ジョブに係る画像データの論理ページ数を示すものになると言える。
【0042】
ジョブの属性情報に基づくデータの書き込み先の選択方法としては、例えば、ジョブの色設定(印刷色設定あるいはスキャン色設定)が白黒である場合は、第1メモリ20の書き込み寿命に関わらず、当該ジョブに係るデータの書き込み先を第1メモリ20とすることができる。一方、ジョブの色設定がカラーである場合は、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値以上であれば当該ジョブに係るデータを第1メモリ20に書き込み、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満であれば当該ジョブに係るデータを第2メモリ22に書き込むことができる。すなわち、比較的データ容量の大きいデータのみを第2メモリ22に書き込むようにすることができる。
【0043】
また、ジョブに係る処理の高速化の観点から、例えば、ジョブに係るデータの論理ページが複数ページである場合は、第1メモリ20の書き込み寿命に関わらず、当該ジョブに係るデータの書き込み先を第1メモリ20とし、ジョブに係るデータの論理ページが1ページである場合は、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値以上であれば当該ジョブに係るデータを第1メモリ20に書き込み、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満であれば当該ジョブに係るデータを第2メモリ22に書き込むようにしてもよい。第2メモリ22の記憶可能容量が小さめであることが多いこと、及び、上述のようにジョブに係るデータが複数のメモリに分割して書き込まれると、当該ジョブの処理速度が低下することから、論理ページが1ページであるデータのみを第2メモリ22へ書き込むことで、なるべくデータ容量が小さいと推定される、換言すれば、データ全部を1つの第2メモリ22に書き込むことができると推定されるデータを、第2メモリ22に書き込むようにすることができる。
【0044】
また、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命に応じて、第2メモリ22にデータを書き込む対象となるジョブの属性情報を変更するようにしてもよい。特に、第1メモリ20の書き込み寿命が短くなる程、よりデータ容量が小さいことを示す属性情報を有するジョブに係るデータも第2メモリ22へ書き込む対象に含めるようにしてもよい。
【0045】
詳しくは、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命が、第1寿命閾値よりも長い寿命を示す第2寿命閾値未満、且つ、第1寿命閾値以上である場合は、属性情報において第1属性値を有するジョブに係る第1データを第1メモリ20に書き込み、属性情報において第1属性値よりもデータのデータ容量が大きくなることを示す第2属性値を有するジョブに係る第2データを第2メモリ22に書き込むようにしてもよい。さらに、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満となった場合は、上記第1データ及び上記第2データを第2メモリ22に書き込むようにしてもよい。
【0046】
図2を参照しながら、具体的に説明する。図2は、第1メモリ20の書き込み寿命とジョブの属性情報との組み合わせに対する、当該ジョブのデータの書き込み先のメモリを示す表である。図2の例では、第1寿命閾値は「1%」であり、第2寿命閾値は「5%」となっている。また、第1属性値は、ジョブの設定情報のうちの色設定に対する値「白黒」であり、第2属性値は、色設定に対する値「カラー」である。
【0047】
まず、第1メモリ20の書き込み寿命が第2寿命閾値である「5%」以上である場合、書き込み処理部26は、全てのジョブに係るデータを第1メモリ20に書き込む。次に、第1メモリ20の書き込み寿命が第2寿命閾値未満且つ第1寿命閾値以上になると、すなわち、第1メモリ20の書き込み寿命が「5%」未満「1%」以上になると、書き込み処理部26は、色設定として第1属性値である「白黒」を有するジョブの第1データは第1メモリ20に書き込み、色設定として第2属性値である「カラー」を有するジョブの第2データを第2メモリ22に書き込む。さらに、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値である「1%」未満になると、書き込み処理部26は、色設定として第1属性値である「白黒」を有するジョブの第1データ、及び、色設定として第2属性値である「カラー」を有するジョブの第2データの両方を第2メモリ22に書き込む。
【0048】
なお、図2の例の色設定は第1属性値及び第2属性値の一例であり、第1属性値及び第2属性値としては、例えば読取解像度や画像データの論理ページ数などであってもよい。
【0049】
前提として、第1メモリ20の書き込み寿命に達するまでの期間はできるだけ延長したいのではあるが、第2メモリ22は、第1メモリ20に比して記憶可能容量が小さいところ、1つのデータが複数のメモリに分割して記憶されてしまう可能性を低減するために、ジョブに係るデータはできるだけ第1メモリ20に書き込みたい。したがって、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命が、第2寿命閾値未満ではあるが第1寿命閾値以上である場合は、一部のジョブ(特に第1メモリ20の寿命をより短くするデータ容量が大きいと推定されるデータを有する、色設定が「カラー」のジョブ)のみを第2メモリ22に書き込むこととし、いよいよ第1メモリ20の書き込み寿命が短くなって第1閾値未満となると、全てのジョブを第2メモリ22に書き込むこととしている。
【0050】
本実施形態に係る画像処理装置10の概要は以上の通りである。以下、図3に示すフローチャートに従って、画像処理装置10の処理の流れについて説明する。
【0051】
ステップS10において、ユーザから画像処理装置10にジョブが入力されると、書き込み処理部26は、第1メモリ20に状態情報の発行を依頼し、第1メモリ20から受け取った状態情報に含まれる寿命情報に基づいて、第1メモリ20の書き込み寿命を取得する。
【0052】
ステップS12において、書き込み処理部26は、ステップS10で取得した第1メモリ20の書き込み寿命が第2寿命閾値(例えば「5%」)以上であるか否かを判定する。第1メモリ20の書き込み寿命が第2寿命閾値以上であればステップS14に進む。
【0053】
ステップS14において、書き込み処理部26は、ステップS10で入力されたジョブに係るデータを第1メモリ20に書き込む。
【0054】
ステップS12で、第1メモリ20の書き込み寿命が第2寿命閾値未満である場合、ステップS16に進む。
【0055】
ステップS16において、書き込み処理部26は、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値(例えば「1%」)未満であるか否かを判定する。第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満である場合はステップS20に進み、第1メモリ20の書き込み寿命が第1寿命閾値未満でない場合、すなわち、第1メモリ20の書き込み寿命が第2寿命閾値未満、且つ、第1寿命閾値以上である場合はステップS18に進む。
【0056】
ステップS18において、書き込み処理部26は、ステップS10で入力されたジョブの属性情報を参照する。ここでは、ジョブの設定情報の色設定を参照することとする。ジョブの色設定がカラーである場合はステップS20に進み、ジョブの色設定が白黒である場合はステップS14に進む(つまり書き込み処理部26は、当該データを第1メモリ20に書き込む)。
【0057】
ステップS20において、書き込み処理部26は、第2メモリ22の空き容量を取得し、第2メモリ22の空き容量が空き容量閾値以上であるか否かを判定する。第2メモリ22の空き容量が空き容量閾値未満である場合はステップS14に進む(つまり書き込み処理部26は、当該データを第1メモリ20に書き込む)。第2メモリ22の空き容量が空き容量閾値以上である場合はステップS22に進む。
【0058】
ステップS22において、書き込み処理部26は、ステップS10で入力されたジョブに係るデータを第2メモリ22に書き込む。
【0059】
ステップS24において、プロセッサ24は、第1メモリ20又は第2メモリ22に書き込まれたデータを読み出して、当該ジョブに係る処理をスキャナ16あるいはプリンタ18に実行させる。
【0060】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 画像処理装置、12 通信インターフェース、14 入出力インターフェース、16 スキャナ、18 プリンタ、20 第1メモリ、22 第2メモリ、24 プロセッサ、26 書き込み処理部。
図1
図2
図3