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特許7589524ウェアラブル端末及びビーコン送信制御方法
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  • 特許-ウェアラブル端末及びビーコン送信制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ウェアラブル端末及びビーコン送信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/50 20180101AFI20241119BHJP
   H04W 76/18 20180101ALI20241119BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20241119BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20241119BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20241119BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H04W76/50
H04W76/18
H04W88/04
G08B21/10
G08B25/10 D
A61B5/00 102A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020198335
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086377
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】野村 一夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 利一
(72)【発明者】
【氏名】▲すけ▼川 達弘
(72)【発明者】
【氏名】上村 真史
(72)【発明者】
【氏名】小林 建
(72)【発明者】
【氏名】崔 丁珠
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131319(JP,A)
【文献】特開2013-251718(JP,A)
【文献】特開2016-167750(JP,A)
【文献】特開2007-104506(JP,A)
【文献】特開2017-088157(JP,A)
【文献】特開2018-005366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 76/50
H04W 76/18
H04W 88/04
G08B 21/10
G08B 25/10
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体情報を測定する生体センサと、
前記ユーザの位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記生体センサが測定した生体情報を外部装置に送信する通信端末と通信する通信部と、
前記通信端末が、前記生体情報を前記外部装置に送信できない通信不可の状態であるか否かを判定する通信可否判定部と、
前記生体情報または他の情報に基づいて、前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したか否かを検出する変化検出部と、
ビーコン信号を送信するビーコン送信部と、
記ビーコン送信部を制御するビーコン送信制御部と、
マイクロホンと、
前記マイクロホンが収音した音声が特定音であるか否かを判定する特定音判定部と、
を備え
前記ビーコン送信制御部は、
前記通信可否判定部が通信不可の状態であると判定し、前記変化検出部が前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したと判定したとき、前記生体情報を含まず、前記位置情報を含む1次ビーコン信号を送信するよう前記ビーコン送信部を制御し、
前記特定音判定部が、前記マイクロホンが収音した音声が特定音であると判定したとき、前記生体情報を含む2次ビーコン信号を送信するよう前記ビーコン送信部を制御する
ェアラブル端末。
【請求項2】
速度センサをさらに備え、
前記マイクロホンが収音した音声の音声データと前記加速度センサが検出した加速度の検出値とのうちの少なくとも一方を前記他の情報とする
請求項1に記載のウェアラブル端末。
【請求項3】
前記特定音は特定の周波数を含むか特定のパターンを有し、
前記特定音判定部は、前記特定の周波数または前記特定のパターンを示す特定音情報に基づいて、前記マイクロホンが収音した音声が前記特定音であると判定する
請求項1または2に記載のウェアラブル端末。
【請求項4】
ウェアラブル端末が有する生体センサがユーザの生体情報を測定し、
前記ウェアラブル端末が有する位置情報取得部が前記ユーザの位置情報を取得し、
前記ウェアラブル端末が有する通信可否判定部が、前記生体センサが測定した生体情報を外部装置に送信する通信端末が、前記生体情報を前記外部装置に送信できない通信不可の状態であるか否かを判定し、
前記ウェアラブル端末が有する変化検出部が、前記生体情報または他の情報に基づいて、前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したか否かを検出し、
前記ウェアラブル端末が有する特定音判定部が、前記ウェアラブル端末が有するマイクロホンが収音した音声が特定音であるか否かを判定し、
前記通信可否判定部が通信不可の状態であると判定し、前記変化検出部が前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したと判定したとき、前記ウェアラブル端末が有するビーコン送信制御部が、前記生体情報を含まず、前記位置情報を含む1次ビーコン信号を送信するようビーコン送信部を制御し、
前記特定音判定部が、前記マイクロホンが収音した音声が特定音であると判定したとき、前記ビーコン送信制御部が、前記生体情報を含む2次ビーコン信号を送信するよう前記ビーコン送信部を制御する
ビーコン送信制御方法。
【請求項5】
前記特定音は特定の周波数を含むか特定のパターンを有し、
前記特定音判定部は、前記特定の周波数または前記特定のパターンを示す特定音情報に基づいて、前記マイクロホンが収音した音声が前記特定音であると判定する
請求項4に記載のビーコン送信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブル端末及びビーコン送信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人の健康状態を監視して、身体に異常が発生したときに監視センタに通報することが記載されている。特許文献2及び3には、患者に装着されたセンサによって検出した生体情報を管理サーバに送信することが記載されている。特許文献4には、対象者から送信されるビーコン信号を用いて対象者を発見することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-155749号公報
【文献】特開2007-209436号公報
【文献】特開2009-95570号公報
【文献】特開2016-38895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一例として人が地震または土砂崩れ等の災害に巻き込まれた場合のように人が環境の変化に遭遇したときに、環境の変化に遭遇した人を発見したり救助したりすることを補助することができるウェアラブル端末の登場が望まれている。また、環境の変化に遭遇した人を発見したり救助したりするための補助となるビーコン信号を自動的に送信することができるビーコン送信制御方法の登場が望まれている。特許文献1~4に記載の技術では、これらの要望に対応することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ユーザの生体情報を測定する生体センサと、前記ユーザの位置情報を取得する位置情報取得部と、前記生体センサが測定した生体情報を外部装置に送信する通信端末と通信する通信部と、前記通信端末が、前記生体情報を前記外部装置に送信できない通信不可の状態であるか否かを判定する通信可否判定部と、前記生体情報または他の情報に基づいて、前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したか否かを検出する変化検出部と、ビーコン信号を送信するビーコン送信部と、記ビーコン送信部を制御するビーコン送信制御部と、マイクロホンと、前記マイクロホンが収音した音声が特定音であるか否かを判定する特定音判定部とを備え、前記ビーコン送信制御部は、前記通信可否判定部が通信不可の状態であると判定し、前記変化検出部が前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したと判定したとき、前記生体情報を含まず、前記位置情報を含む1次ビーコン信号を送信するよう前記ビーコン送信部を制御し、前記特定音判定部が、前記マイクロホンが収音した音声が特定音であると判定したとき、前記生体情報を含む2次ビーコン信号を送信するよう前記ビーコン送信部を制御するウェアラブル端末を提供する。
【0006】
本発明は、ウェアラブル端末が有する生体センサがユーザの生体情報を測定し、前記ウェアラブル端末が有する位置情報取得部が前記ユーザの位置情報を取得し、前記ウェアラブル端末が有する通信可否判定部が、前記生体センサが測定した生体情報を外部装置に送信する通信端末が、前記生体情報を前記外部装置に送信できない通信不可の状態であるか否かを判定し、前記ウェアラブル端末が有する変化検出部が、前記生体情報または他の情報に基づいて、前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したか否かを検出し、前記ウェアラブル端末が有する特定音判定部が、前記ウェアラブル端末が有するマイクロホンが収音した音声が特定音であるか否かを判定し、前記通信可否判定部が通信不可の状態であると判定し、前記変化検出部が前記ユーザまたは前記ユーザが位置する環境に変化が発生したと判定したとき、前記ウェアラブル端末が有するビーコン送信制御部が、前記生体情報を含まず、前記位置情報を含む1次ビーコン信号を送信するようビーコン送信部を制御し、前記特定音判定部が、前記マイクロホンが収音した音声が特定音であると判定したとき、前記ビーコン送信制御部が、前記生体情報を含む2次ビーコン信号を送信するよう前記ビーコン送信部を制御するビーコン送信制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウェアラブル端末及びビーコン送信制御方法によれば、環境の変化に遭遇した人の位置に関する情報を含むビーコン信号を自動的に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のウェアラブル端末を示すブロック図である。
図2】一実施形態のウェアラブル端末による動作の第1の例を示すフローチャートである。
図3】一実施形態のウェアラブル端末による動作の第2の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態のウェアラブル端末及びビーコン送信制御方法について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1において、スマートフォン20の所有者(以下、ユーザ)は、ウェアラブル端末10を身に付けている。ウェアラブル端末10は一例として腕時計型である。スマートフォン20は通信端末の一例である。一点鎖線の両矢印線で示すように、ウェアラブル端末10とスマートフォン20とは互いに無線通信するように接続されている。ウェアラブル端末10とスマートフォン20とが有線で接続されていてもよい。ウェアラブル端末10は、後に詳述するように、ユーザの生体情報及び位置情報を取得してスマートフォン20に送信する。
【0011】
一点鎖線の両矢印線で示すように、スマートフォン20は、携帯電話回線を介してネットワーク30に接続されている。ネットワーク30は典型的にはインターネットである。スマートフォン20は、ネットワーク30を介して、消防署40、病院50、保険会社60のうちの少なくとも1つと接続されている。
【0012】
消防署40は救急隊を含む組織である。消防署40、病院50、保険会社60とは、それぞれの組織が運営しているか利用しているサーバであってもよい。消防署40、病院50、保険会社60またはそれらのサーバは、スマートフォン20に対する外部装置の例である。
【0013】
ユーザの健康状態が悪化したり、ユーザに自動車事故が発生したり、自動車事故に巻き込まれたりする場合がある。このような状況が発生したことは、ユーザの生体情報の変化によって把握することができる。スマートフォン20は、ユーザが身に付けているウェアラブル端末10が取得したユーザの生体情報及び位置情報を消防署40、病院50、保険会社60のうちの少なくとも1つに送信する。
【0014】
消防署40がウェアラブル端末10から送信された生体情報及び位置情報を取得してユーザの生体情報の変化を把握するような体制が構築されていれば、消防署40は即座に救急隊を派遣することが可能となる。消防署40の代わりに民間の救急隊またはセキュリティ会社とした場合も同様である。
【0015】
病院50がウェアラブル端末10から送信された生体情報及び位置情報を取得してユーザの生体情報の変化を把握するような体制が構築されていれば、病院50は即座に医師または医療隊を派遣することが可能となる。保険会社60がウェアラブル端末10から送信された生体情報及び位置情報を取得してユーザの生体情報の変化を把握するような体制が構築されていれば、保険会社60は即座にユーザの元へと駆け付けることが可能となる。
【0016】
ウェアラブル端末10は、一例として災害に巻き込まれた場合のようにユーザが環境の変化に遭遇したときに、ユーザを発見したり救助したりすることを補助するための構成を備える。ウェアラブル端末10は、ユーザが災害に巻き込まれたときに、ユーザを発見したり救助したりするための補助となるビーコン信号を自動的に送信するように構成されている。災害が発生していない通常時に、ウェアラブル端末10がユーザの生体情報を取得して消防署40、病院50、保険会社60等に送信するような体制が構築されていれば、ユーザは災害が発生していない通常時であってもウェアラブル端末10を積極的に身に付ける。
【0017】
ユーザが通常時にウェアラブル端末10を身に付けていれば、突然の災害発生時に、ユーザは、ウェアラブル端末10が備える上記の構成によって、発見されたり救助されたりしやすくなる。即ち、ウェアラブル端末10はユーザを発見したり救助したりすることを補助するための構成(ビーコン信号を自動的に送信する構成)を備えるから、ユーザは常時ウェアラブル端末10を身に付けるのがよい。
【0018】
ここで、ウェアラブル端末10の具体的な構成を説明する。図1に示すように、ウェアラブル端末10は、制御部11、通信部12、記憶部13、生体センサ14、マイクロホン15、加速度センサ16、GNSS受信部17、不揮発性メモリ18、ビーコン送信部19を備える。制御部11は、マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータによって構成できる。制御部11は、機能的な構成として、通信可否判定部111、生体情報取得部112、異常検出部113、位置情報取得部114、ビーコン送信制御部115、特定音判定部116を有する。異常検出部113は、ユーザまたはユーザが位置する環境の変化を検出する変化検出部の一例である。
【0019】
通信部12は、近距離無線通信または無線LANによってスマートフォン20と通信する。典型的には、近距離無線通信はブルートゥース(登録商標)であり、無線LANはIEEE 802.11規格に準拠する。生体センサ14は、ユーザの生体情報の例として脈拍数または心拍数を測定する。生体センサ14は、ユーザの体温または血中酸素濃度を測定してもよい。生体情報取得部112は、生体センサ14が測定した脈拍数、心拍数、体温、血中酸素濃度のうちの少なくとも1つである生体情報を取得し、記憶部13に記憶させる。記憶部13は最新の生体情報を記憶してもよいし、所定時間前から最新までの生体情報を記憶してもよい。
【0020】
GNSS受信部17は、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)用の3つ以上の衛星からの電波を受信する。GNSSは、一例としてGPS(Global Positioning System)である。位置情報取得部114は、GNSS受信部17が受信した3つ以上の衛星からの電波を受信したGNSS信号に基づいて位置情報を算出することにより、ウェアラブル端末10の位置情報(即ち、ユーザの位置情報)を取得する。
【0021】
通信部12は、生体情報取得部112によって記憶部13から読み出された生体情報と、位置情報取得部114が取得したウェアラブル端末10の位置情報とを、ウェアラブル端末10(またはユーザ)を一意に識別する識別情報(ID)と対応付けてスマートフォン20に送信する。通信部12は、生体情報取得部112が取得した生体情報を直接、スマートフォン20に送信してもよい。通常時、ウェアラブル端末10はIDと対応付けられたユーザの生体情報及び位置情報をスマートフォン20に送信し、スマートフォン20は、受信したIDと対応付けられた生体情報及び位置情報を、ネットワーク30を介して消防署40、病院50、保険会社60等に送信する。
【0022】
災害が発生して携帯電話の基地局が被害を受けて、スマートフォン20が生体情報及び位置情報を送信できなくなることがある。また、ユーザが災害に巻き込まれ、スマートフォン20が通信不可の状態となったり、スマートフォン20がユーザから離れてしまって近距離無線通信または無線LANが切断されたりすることがある。通信可否判定部111は、スマートフォン20が生体情報及び位置情報を外部装置へと送信できない通信不可の状態であるか否かを判定する。
【0023】
通信不可の状態は、通信部12が生体情報及び位置情報をスマートフォン20に送信できない状態と、通信部12が生体情報及び位置情報をスマートフォン20に送信しても、スマートフォン20が生体情報及び位置情報を外部装置へと送信できない状態とを含む。
【0024】
通信可否判定部111は、通信不可の状態であると判定すると、ビーコン送信制御部115に通信不可の状態であることを示す第1の判定信号を供給する。
【0025】
異常検出部113には、生体情報取得部112によって記憶部13から読み出された生体情報、または生体情報取得部112が取得した生体情報が直接、供給される。異常検出部113には、生体情報以外の他の情報として、マイクロホン15が収音した音声の音声データと、加速度センサ16が検出した加速度の検出値も供給される。異常検出部113は、生体情報、音声データ、加速度の検出値のうちの少なくとも1つに基づいて、災害の発生のような異常(変化)が発生したか否かを検出する。
【0026】
生体情報に基づいて検出される異常(変化)は、ユーザ自身に発生した異常である。音声データまたは加速度の検出値に基づいて検出される異常(変化)は、ユーザが位置する環境に発生した異常である。ユーザが位置する環境に発生した異常を音声データのみに基づいて検出してもよいし、加速度の検出値のみに基づいて検出してもよい。ユーザが位置する環境に発生した異常を音声データと加速度の検出値との双方に基づいて検出してもよい。
【0027】
異常検出部113は、生体情報が異常な値であれば災害等の発生によってユーザに異常が発生したと判定する。脈拍数、心拍数、体温、または血中酸素濃度であれば、過度に小さい値は異常な値である。生体情報によっては、過度に大きな値が異常な値となる場合もある。
【0028】
異常検出部113は、音声データに基づき異常に大きな音が発生したときには、ユーザが位置する環境に災害等の異常が発生したと判定する。異常検出部113は、加速度の検出値が異常に大きな値となったときには、ユーザが位置する環境に災害等の異常が発生したと判定する。異常検出部113は、生体情報、音声データ、または加速度の検出値に基づいて異常が発生したことを検出すると、ビーコン送信制御部115に異常が発生したことを示す第2の判定信号を供給する。
【0029】
ビーコン送信制御部115は、第1及び第2の判定信号の双方が入力されると、ビーコン信号を送信するようビーコン送信部19を制御する。ビーコン信号とは後述する各種の情報を含む電波信号である。
【0030】
第1の例として、ビーコン送信制御部115は、IDと対応付けられたユーザの生体情報及び位置情報を含むビーコン信号を送信するようビーコン送信部19を制御する。不揮発性メモリ18には、ユーザの血液型を示す情報を少なくとも含む生体個人情報が記憶されている。生体個人情報はユーザの持病を示す情報を含んでいてもよい。ビーコン送信制御部115は、ユーザの生体情報及び位置情報に加えて血液型を示す情報(さらには持病を示す情報)を含むビーコン信号を送信するようビーコン送信部19を制御するのがよい。
【0031】
ビーコン送信部19は、ビーコン送信制御部115による制御に基づいてビーコン信号を送信する。
【0032】
ユーザが例えば土砂崩れに巻き込まれていて、ビーコン送信部19はビーコン信号を送信しているとする。救助隊(または捜索者)がビーコン信号を受信する受信機を持ってユーザを探索すれば、受信機が受信するビーコン信号の強度に基づきユーザに近付くことができる。救助隊は、ビーコン信号に含まれる位置情報に基づいてユーザの位置を特定して、ユーザを発見することができる。このとき、救助隊は、ビーコン信号に含まれる生体情報または生体個人情報に基づいて、ユーザの状態を把握し、ユーザの治療に必要な情報を得ることができる。
【0033】
第1の例では、ビーコン送信部19は、ビーコン送信制御部115に第1及び第2の判定信号の双方が入力されると、ユーザの生体情報及び位置情報、またはこれに加えて生体個人情報を含むビーコン信号を自動的に送信する。ビーコン送信部19は、救助隊がユーザの救助に来ているか否かにかかわらず、ユーザの生体情報または生体個人情報という個人情報を含むビーコン信号を送信することになる。
【0034】
救助隊がユーザの救助に来ていない状況でユーザの個人情報を含むビーコン信号を送信することを避けたい場合には、次の第2の例のように構成するのがよい。
【0035】
第2の例として、ビーコン送信制御部115は、情報量の少ない1次ビーコン信号と、情報量の多い2次ビーコン信号とに分けて、ビーコン信号を送信するようビーコン送信部19を制御する。ビーコン送信制御部115は、第1及び第2の判定信号の双方が入力されると、位置情報を含みユーザの生体情報(及び生体個人情報)を含まない1次ビーコン信号を送信するようビーコン送信部19を制御する。このとき、位置情報はIDと対応付けられていなくてもよい。
【0036】
救助隊が1次ビーコン信号を受信する受信機を持ってユーザを探索すれば、受信機が受信する1次ビーコン信号の強度に基づきユーザに近付くことができる。救助隊がユーザに近付いたら、救助隊は、予め設定した特定音を発する。救助隊はホイッスルで特定音を発生してもよいし、サイレンで特定音を発生してもよい。特定音は予め設定した周波数を含む音であるか、予め設定したパターンの音である。パターンとは、一例として、時間方向に音圧の強弱を繰り返すことである。救助隊は、1次ビーコン信号に含まれる位置情報に基づいてユーザの位置を特定した後に特定音を発してもよい。
【0037】
マイクロホン15が収音した特定音の音声データは、特定音判定部116に供給される。不揮発性メモリ18には、特定音を定義するための特定音情報が記憶されている。特定音が予め設定した周波数であれば、特定音情報はその周波数を示す情報である。ユーザが土砂崩れに巻き込まれていると、地中または瓦礫の中を伝搬する特定音の周波数は救助隊が発した特定音とは異なる周波数となることがある。そこで、特定音を定義するための特定音情報は、特定音が地中または瓦礫の中を伝搬する場合を考慮して所定の範囲の周波数帯を示す情報とするのがよい。
【0038】
特定音が予め設定したパターンの音であれば、特定音情報はそのパターンを示す情報である。
【0039】
特定音判定部116は、不揮発性メモリ18に記憶されている特定音情報を参照して、マイクロホン15が特定音を収音したか否かを判定する。特定音判定部116は、マイクロホン15が特定音を収音したと判定すれば、特定音を収音したことを示す第3の判定信号をビーコン送信制御部115に供給する。
【0040】
ビーコン送信制御部115は、第3の判定信号が入力されると、ユーザの生体情報及び位置情報を含む2次ビーコン信号を送信するようビーコン送信部19を制御する。このとき、ユーザの生体情報及び位置情報はIDと対応付けられているのがよい。第1の例と同様に、2次ビーコン信号は、ユーザの生体情報及び位置情報に加えて生体個人情報を含むのがよい。救助隊が1次ビーコン信号に含まれる位置情報に基づいてユーザの位置を特定した後に特定音を発する場合には、2次ビーコン信号は位置情報を含まなくてもよい。
【0041】
救助隊は、1次ビーコン信号を受信する受信機で2次ビーコン信号を受信する。救助隊は、2次ビーコン信号に含まれる生体情報または生体個人情報に基づいて、ユーザの状態を把握し、ユーザの治療に必要な情報を得ることができる。
【0042】
以上説明した第1の例のみを実現する場合には、図1に示すウェアラブル端末10は、特定音判定部116を備えなくてもよく、不揮発性メモリ18は特定音情報を記憶しなくてもよい。
【0043】
図2に示すフローチャートを用いて、ウェアラブル端末10が第1の例のように動作する場合の処理を説明する。図2において、ウェアラブル端末10の制御部11が処理を開始すると、制御部11は、ステップS1にて、生体センサ14が測定したユーザの生体情報を取得する。制御部11は、ステップS2にて、マイクロホン15が収音した音声の音声データを取得する。制御部11は、ステップS3にて、加速度センサ16が検出した加速度の検出値を取得する。制御部11は、ステップS4にて、ウェアラブル端末10の位置情報を取得する。
【0044】
ステップS1~S5の順番は図2に示す順に限定されず、任意の順番でよく、少なくとも一部が同時に実行されてもよい。
【0045】
制御部11は、ステップS5にて、スマートフォン20が通信可能か否かを判定する。上記のように、スマートフォン20が通信不可の状態とは、スマートフォン20自体が生体情報及び位置情報を送信できない状態と、ウェアラブル端末10がスマートフォン20に生体情報及び位置情報を送信できない状態とを含む。
【0046】
ステップS5にてスマートフォン20が通信可能であれば(YES)、制御部11は、ステップS6にて、スマートフォン20にIDと対応付けられた生体情報及び位置情報を送信する。制御部11は、ステップS7にて、ウェアラブル端末10の電源がオフされたか否かを判定する。ウェアラブル端末10の電源がオフされれば(YES)。制御部11は処理を終了させる。ウェアラブル端末10の電源がオフされなければ(NO)、制御部11は、処理をステップS1に戻してステップS1以降の処理を繰り返す。
【0047】
ステップS5にてスマートフォン20が通信可能でなければ(NO)、制御部11は、ステップS8にて、異常を検出したか否かを判定する。異常を検出しなければ(NO)、スマートフォン20は災害以外の何らかの理由で通信不可となっているだけであり、制御部11は、処理をステップS1に戻してステップS1以降の処理を繰り返す。
【0048】
ステップS8にて異常を検出すれば(YES)、制御部11は、ステップS9にて、IDと対応付けられた生体情報及び位置情報を含むビーコン信号を送信するよう制御する。続けて、制御部11は、ステップS10にて、ビーコン信号の送信停止の操作がなされたか否かを判定する。ビーコン信号の送信停止の操作がなされなければ(NO)、制御部11は、処理をステップS9に戻してステップS9及びS10の処理を繰り返す。
【0049】
ステップS10にてビーコン信号の送信停止の操作がなされれば(YES)、制御部11は、ステップS11にて、ビーコン信号の送信を停止して、処理をステップS7に移行させる。ユーザまたは救助隊が図1では図示を省略している操作部を操作してビーコン信号の送信を停止することができる。
【0050】
ステップS11からステップS7に移行した場合も、制御部11は、ステップS7にて、ウェアラブル端末10の電源がオフされたか否かを判定する。ウェアラブル端末10の電源がオフされれば(YES)。制御部11は処理を終了させる。ウェアラブル端末10の電源がオフされなければ(NO)、制御部11は、処理をステップS1に戻してステップS1以降の処理を繰り返す。
【0051】
図3に示すフローチャートを用いて、ウェアラブル端末10が第2の例のように動作する場合の処理を説明する。図3において、図2と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
図3において、制御部11は、ステップS8にて異常を検出すれば(YES)、ステップS12にて、位置情報を含む1次ビーコン信号を送信するよう制御する。位置情報はIDと対応付けられていなくてよい。1次ビーコン信号は生体情報及び生体個人情報を含まない。制御部11は、ステップS13にて、マイクロホン15が特定音を収音したか否かを判定する。マイクロホン15が特定音を収音しなければ(NO)、制御部11は、処理をステップS12に戻してステップS12及びS13の処理を繰り返す。
【0053】
ステップS13にてマイクロホン15が特定音を収音すれば(YES)、制御部11は、ステップS14にて、IDと対応付けられた生体情報及び位置情報を含む2次ビーコン信号を送信するよう制御する。ステップS14は、図2のステップS9と実施的に等価である。制御部11は、ステップS14に続けて、処理をステップS10に移行させる。ステップS10以降の処理は図2と同じである。
【0054】
以上のように、ウェアラブル端末10によれば、災害に巻き込まれた人を発見したり救助したりすることを補助することができる。ウェアラブル端末10が実行するビーコン送信制御方法によれば、災害に巻き込まれた人を発見したり救助したりするための補助となるビーコン信号を自動的に送信することができる。
【0055】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。図1においては、ウェアラブル端末10をスマートフォン20と別体とし、ウェアラブル端末10とスマートフォン20が互いに無線通信する構成を示している。スマートフォン20が、ウェアラブル端末10内部の構成を備えていて、ウェアラブル端末10とスマートフォン20とが一体化されていてもよい。
【0056】
この場合、マイクロホン15、加速度センサ16、GNSS受信部17は、スマートフォン20が備える同じ構成部品を利用すればよい。また、制御部11、記憶部13、不揮発性メモリ18も、スマートフォン20が備える同じ構成部品を利用できる。通信部12は不要となる。ウェアラブル端末10とスマートフォン20とが一体化されている場合、図2及び図3のステップS5において、スマートフォン20が通信不可の状態とは、スマートフォン20が外部装置に生体情報及び位置情報を送信できない状態となる。
【0057】
制御部11が実行する図2または図3の動作は、コンピュータプログラムが実行する処理によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 ウェアラブル端末
11 制御部
12 通信部
13 記憶部
14 生体センサ
15 マイクロホン
16 加速度センサ
17 GNSS受信部
18 不揮発性メモリ
19 ビーコン送信部
20 スマートフォン(通信端末)
30 ネットワーク
40 消防署
50 病院
60 保険会社
111 通信可否判定部
112 生体情報取得部
113 異常検出部(変化検出部)
114 位置情報取得部
115 ビーコン送信制御部
116 特定音判定部
図1
図2
図3