(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】イムノクロマト測定法用増感剤及び測定法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20241119BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20241119BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241119BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241119BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241119BHJP
G01N 21/78 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
G01N33/543 525G
G01N33/531 B
G01N33/53 N
G01N33/543 521
A61K45/00
A61P31/14
G01N21/78 A
(21)【出願番号】P 2020207001
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 滉
(72)【発明者】
【氏名】松田 将
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-344406(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039319(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111426831(CN,A)
【文献】特表2017-521654(JP,A)
【文献】特表2020-509349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
A61K 45/00
A61P 31/14
G01N 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式〔1〕で表される化合物を含んでなる、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用増感剤。
【化1】
(式中、nは0または1を表し、Rは炭素数6~16のアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のイムノクロマト測定法用増感剤を含む、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用検体希釈液。
【請求項3】
請求項1に記載のイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行わせることを特徴とする、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法。
【請求項4】
請求項1に記載のイムノクロマト測定法用増感剤を含む、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定用器具。
【請求項5】
請求項1に記載のイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する物質を含む、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査用キット。
【請求項6】
請求項1に記載のイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行うことにより、被験体由来の生物学的試料中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定することを含む、該被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している可能性を試験するための方法。
【請求項7】
下記一般式〔1〕で表される化合物を含んでなるイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤を含む、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用キット。
【化2】
(式中、nは0または1を表し、Rは炭素数6~16のアルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用増感剤、及び該増感剤の共存下で行う新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマト法は、メンブレンの毛細管現象を利用したクロマトグラフィーの手法と抗原抗体反応を利用した免疫学的手法を組み合わせた方法である。イムノクロマト法は、抗原抗体反応に起因する高い特異性を備え、操作が簡便であり、場所や特別な設備を必要とせずその場で検査でき、かつ結果を目視で判定できることから、臨床診断法として広く普及している(特許文献1)。
【0003】
イムノクロマト法は、簡易に測定できる利点はあるが、検出感度の精度が低く、陽性検体を用いても偽陰性と判定される場合もあるので、より高感度のイムノクロマト測定法が望まれている。
【0004】
これまでに、高感度のイムノクロマト測定法を確立する目的で種々の方法が検討されており、例えば、特許文献2では、イムノクロマトの試薬の添加位置を変える事で高感度化する手法が開示されている。また、特許文献3では、メンブレンの素材を改良することで高感度化する手法が開示されている。
【0005】
さらに、従来のイムノクロマト法に用いている検体希釈液に、添加剤を加えることで、高感度化を達成する方法が知られている。例えば、特許文献4,5及び6では、検体希釈液中に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ホスホリルコリン基を有する重合体、ヒアルロン酸を含有させることが開示されている。これらの開示では、試薬の添加位置を変える必要がなく、また従来のイムノクロマト用メンブレンを使用可能という利点がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体とIgG抗体の測定を高感度に行う方法に用いる増感剤については開示又は示唆をされていない。
【0007】
とくに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染初期に産生される抗体であり、IgM抗体を高感度に検出可能であれば、感染初期段階で感染者を隔離できることから感染の拡大を抑えることが可能となる。また、早期に治療を開始できることから治療の効果を高めることができるため、IgM抗体を高感度に検出可能とする増感剤は有用性が高いと考えられる。
【0008】
さらに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体は、体内での産生される期間が長く存在する抗体であり、IgG抗体を高感度に検出可能であれば、感染後期の感染者を把握することが可能となる。無自覚の感染者が多い新型コロナウイルスの感染者を把握するうえで、長期間産生されるIgG抗体を高感度に検出可能とする増感剤は有用性が高いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平01-063865号公報
【文献】特開2014-66674号公報
【文献】特開2014-62820号公報
【文献】特開2008-292326号公報
【文献】特開2008-058334号公報
【文献】特開2003-344413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を高感度に検出できるイムノクロマト測定法用増感剤及び該増感剤を使用した測定法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を高感度に検出できる化合物を見出すべく鋭意検討した結果、下記一般式〔1〕で示されるホスホリルコリン類似基を有する基を側鎖に有する共重合体が目的の性能を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下よりなる。
[1] 下記一般式〔1〕で表される化合物を含んでなる、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用増感剤。
【0013】
【0014】
(式中、nは0または1を表し、Rは炭素数6~16のアルキル基を表す。)
[2] [1]に記載のイムノクロマト測定法用増感剤を含む、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用検体希釈液。
[3] [1]に記載のイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行わせることを特徴とする、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法。
[4] [1]に記載のイムノクロマト測定法用増感剤を含む、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定用器具。
[5] [1]に記載のイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する物質を含む、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査用キット。
[6] [1]に記載のイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行うことにより、被験体由来の生物学的試料中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定することを含む、該被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している可能性を試験するための方法。
[7] 以下の(1)、(2)の工程を含む新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法、
(1)下記一般式〔1〕で表される化合物を含んでなるイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行う新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の測定工程、及び
(2)上記(1)の測定結果に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療を患者に施す工程。
【0015】
【0016】
(式中、nは0または1を表し、Rは炭素数6~16のアルキル基を表す。)
[8] 下記一般式〔1〕で表される化合物を含んでなるイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤を含む、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用キット。
【0017】
【0018】
(式中、nは0または1を表し、Rは炭素数6~16のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用増感剤を使用した測定方法では、従来の新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を検出するイムノクロマト測定法と比較して、高感度で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用増感剤、該増感剤を含む上記抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用検体希釈液、該増感剤の存在下で抗原抗体反応を行わせる上記抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法、該増感剤を含む上記抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定用器具、及び、該増感剤の存在下で抗原抗体反応を行わせる工程を含む新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法を、以下で説明する。
【0021】
なお、本発明のイムノクロマト測定法用増感剤を使用する測定法では、測定対象物質としては新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体であるが、他の測定対象物質も検出できる。しかし、本発明のイムノクロマト測定法用増感剤は、上記抗体を高感度に検出できることを特徴とする。
【0022】
本明細書中、新型コロナウイルスとは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を指し、COVID-19パンデミックの原因となった呼吸器疾患である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(コロナウイルス病2019ともいう)を引き起こすコロナウイルス株のことを言う。各SARS-CoV-2ビリオンの直径は50~200ナノメートルであり、他のコロナウイルスと同様に、SARS-CoV-2には、S(スパイク)、E(エンベロープ)、M(膜)、およびN(ヌクレオカプシド)タンパク質として知られる4つの構造タンパク質がある。Nタンパク質はRNAゲノムを保持し、S、E、およびMタンパク質が一緒になってウイルスエンベロープを形成する。スパイクタンパク質は、ウイルスが宿主細胞の膜に付着して融合することを可能にするタンパク質である。SARS-CoV-2はヒトからヒトへ感染し、感染は当初、主に一定範囲内の咳やくしゃみからの呼吸器飛沫を介して起こると想定された。また、エアロゾルがウイルスを感染させる可能性があるため、ウイルスも空中浮遊している可能性があることも示唆されている。
【0023】
本発明の新型コロナウイルスを測定対象物質とするイムノクロマト測定法用増感剤として用いられる化合物は、下記一般式〔1〕で表される。
【0024】
【0025】
(式中、nは0または1を表し、Rは炭素数6~16のアルキル基を表す。)
【0026】
nは、好ましくは1である。
Rにおける「炭素数6~16のアルキル基」とは、炭素数が6~16個の直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味し、その具体例としては、ヘキシル基、4-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、へプチル基、オクチル基、6-メチルへプチル基、1-メチルへプチル基、ノニル基、デシル基、8-メチルノニル基、1-メチルノニル基、ウンデシル基、ドデシル基、10-メチルウンデシル基、1-メチルウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。中でも、炭素数が6~12個のアルキル基が好ましく、10~12個のアルキル基がより好ましい。
【0027】
イムノクロマト測定法用増感剤として用いられる化合物は、好ましくは、以下の実施例に記載のものを例示することができるが特に限定されない。
【0028】
本発明のイムノクロマト測定法用増感剤として用いられる化合物は、イムノクロマト測定法に用いられる各種試薬や試料に溶解させて用いてもよく、また、イムノクロマト測定法用キットに担持させて用いてもよいが、好ましくは、検体希釈液として用いることが好ましい。
【0029】
なお、本発明のイムノクロマト測定法とは、用いられるイムノクロマト測定法用キットとして一般に、検体希釈液とテストストリップからなる。
【0030】
検体希釈液とは、イムノクロマトグラフィー法で測定するに際しての、適当な希釈剤であり、トリス緩衝剤、リン酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、グッド緩衝剤等の緩衝成分、アルブミン、グロブリン、カゼイン、血清、水溶性ゼラチン、界面活性剤、糖類、キレート剤等の安定化成分、サリチル酸、安息香酸、アジ化ナトリウム等の防腐成分を含むことができる。
【0031】
本発明の増感剤を、検体希釈液に溶解させて用いる場合、その濃度は、抗原抗体反応がなされる際の濃度として、とくに限定されないが、通常0.1~5.0w/v%、好ましくは0.5~1.0w/v%となるように用いられる。
【0032】
テストストリップとは、一般に、検体の第一の抗原決定基にて抗原抗体反応可能な第一の物質と、前記検体の第二の抗原決定基にて抗原抗体反応可能で且つ標識された第二の物質と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の物質は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の物質は前記捕捉部位から隔離した位置で前記担体にてクロマト展開可能なように配置されて構成される。一態様において、該検体が抗体(IgM抗体および/またはIgG抗体を含む)の場合、上記第一の物質および/または第二の物質は該抗体に対する抗原であり得る。
【0033】
イムノクロマト測定用テストストリップは、市販品を用いても、公知の方法により作製したものを用いてもよい。公知の方法により作製する場合、上記展開膜で用いられる基材としては、通常この分野で用いられるものを用いればよく、例えば、セルロース、ニトロセルロース、ナイロン等が好ましいものとして挙げられる。
【0034】
本発明の増感剤を含む新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定用器具としては、例えば、(1)展開膜からなるもの、(2)検体標識部並びに展開膜からなり、且つ該検体標識部と該展開膜とが毛細管現象により移動可能なように形成されたもの、(3)検体標識部、展開膜並びに液体吸収部からなり、且つ該検体標識部と該展開膜と該液体吸収部とが、この順に毛細管現象により移動可能なように形成されたもの、(4)検体滴下部、検体標識部、展開膜並びに液体吸収部からなり、且つ該検体滴下部と該検体標識部と該展開膜と該液体吸収部とが、この順に毛細管現象により移動可能なように形成されたもの等が挙げられるが、とくに限定されない。
【0035】
本発明の増感剤を、前記イムノクロマト測定用器具に担持させて用いる場合、その量は、担持させる場所、使用する増感剤の種類、使用する測定対象物質の種類、使用する標識物質等により変動するが、例えば、イムノクロマト測定用器具の展開膜、検体標識部、検体滴下部等に担持させる場合、単位面積(cm2)当たりに含まれる増感剤の量として、通常0.01μg~10mg、好ましくは0.1μg~4mg、より好ましくは1~800μgである。また、担持される面積は、用いられるイムノクロマト測定用器具の種類及び大きさ、測定用試料の量により変動するが、イムノクロマト測定用器具の展開膜の場合には、通常総面積の5~60%、好ましくは5~15%、検体滴下部の場合には、通常総面積の5~40%、好ましくは10~20%である。
【0036】
本発明は、本発明のイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する物質を含む、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査用キットを提供する。
【0037】
「特異的」とは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に対する親和性が、他の物質に対する親和性よりも高いことを意味する(一態様において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のタンパク質以外の抗原に対するIgM抗体および/またはIgG抗体は、該「他の物質」には含まれない)。該特異的に結合する物質は、例えば、約10-6、10-7、10-8、10-9、10-10以下のKDで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に結合する。また、該特異的に結合する物質は、10-14、10-13、10-12以上のKDで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に結合する。
【0038】
前記物質は単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、天然にある状態から目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された前記物質の純度(全タンパク質重量に対する、前記物質の重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。
【0039】
前記物質は、直接的又は間接的に標識物質により標識されていてもよい。標識物質としては、蛍光物質(例、FITC、ローダミン)、放射性物質(例、14C、3H、125I)、酵素(例、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ)、着色粒子(例、金属コロイド粒子、着色ラテックス)、ビオチン等が挙げられる。
【0040】
本発明において「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する物質」としては、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に対する抗原、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する抗体、核酸(例、アプタマー)等が挙げられるが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に対する抗原、抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体が好ましい。
【0041】
前記抗原としては、本発明が測定対象とする新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に対する抗原であれば限定されないが、例えば、新型コロナウイルスS(スパイク)タンパク質、E(エンベロープ)タンパク質、M(膜)タンパク質、およびN(ヌクレオカプシド)タンパク質が挙げられる。
【0042】
抗原として組換え新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質を用いる場合、組換え新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質は、例えば以下の方法で作製することができる。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを適切な発現ベクターに組み込み、これを適切な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換細胞の破砕物から目的とする組換え新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質を得ることができる。上記宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、植物又は動物細胞などを用いることができる。
【0043】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質は、上記形質転換体から産生される組換えタンパク質の他、これを産生する天然の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)から自体公知のタンパク質分離精製技術により単離又は精製されるものであってもよい。また、化学合成若しくは無細胞翻訳系で生化学的に合成されたタンパク質であってもよい。
【0044】
一態様において、上記「抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体」には、該IgM抗体および/またはIgG抗体を産生した動物と同種の動物の抗IgM抗体および/または抗IgG抗体が含まれる。
【0045】
抗体は、任意のアイソタイプ、例、IgA、IgD、IgE、IgG(例、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)、IgM等であり得る。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の他、キメラ抗体、単鎖抗体であり得る。また、Fab断片やFab発現ライブラリーによって生成される断片等のように抗原結合性を有する抗体の一部(抗体断片)であり得る。抗体断片の例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結びついた2つのFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片、(iii)抗体のシングルアームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)温和な還元条件を用いてF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を破壊して得られるFab’断片、(v)ジスルフィドで安定化したFv断片(dsFv)及び(vi)抗原に特異的に結合する抗体の単一な可変領域ドメイン(VH若しくはVL)ポリペプチドであるドメイン抗体(dAb)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の方法で用いる抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体は、マウス、モルモット、ハムスター、ヤギ又はウサギで作製したものであり得る。また、抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体は市販のものを用いることができる。
【0047】
本発明の検査用キットは、上記本発明のイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する物質を別々の容器に含む。
【0048】
更に本発明の検査用キットは、本発明のイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する物質を、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査に使用することができる、又は使用すべきであることを記載した説明書を含んでいてもよい。
【0049】
上記新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査用キットは、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体、安定剤や緩衝液成分、他の治療薬やサプリメント等を含み得る。医薬上許容され得る担体としては、例えば、水、生理食塩水等の希釈剤等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。また、本発明の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査用キットは、検体希釈液、イムノクロマト測定用テストストリップ、イムノクロマト測定用器具を含み得る。
【0050】
本発明は、本発明のイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行うことにより、被験体由来の生物学的試料中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定することを含む、該被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している可能性を試験するための方法を提供する。
【0051】
当該方法において用いることのできる生物学的試料としては、血液が挙げられるが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を検出できる限り、特に限定されない。「血液」としては、いかなる組織由来の血液も想定することができるが、採取の容易から、通常は末梢血が用いられる。血液の採取方法としては、自体公知の方法が適用できる。また採取した血液はそのまま本方法に用いてもよいが、自体公知の方法、例えば遠心分離、濾過などを利用して細胞成分(赤血球、白血球、血小板など)を分離した液体成分(血漿)として本方法に用いてもよい。また血液を凝固させて血小板や凝固因子を分離した液体成分(血清)として本方法に用いることも可能である。
【0052】
本発明の検査方法を行うに際しては、例えば、血液等の被験体の生物学的試料を抽出液に入れ懸濁し、抗原を生物学的試料液から抽出する。そして、例えば上記(4)のイムノクロマト測定用器具を用いる場合、検体滴下部に抽出液で処理された生物学的試料液を滴下する。そうすることで、本発明のイムノクロマト測定法用増感剤を含む、イムノクロマト測定法用検体希釈液の存在下、生物学的試料液は毛細管現象により検体滴下部から検体標識部へ、そしてメンブレン(膜)上に展開される。
【0053】
生物学的試料液中の標的抗原(例、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体)は、検体標識部を通過する際に検体標識部に担持された標識物質(例、抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体)と免疫複合体を形成し、そのまま展開膜の一端へと展開される。そして、当該複合体と展開膜のテストライン上に存在する(テストライン上にコーティングされた)物質(例、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に対する抗原)とが免疫化学反応を起こし結合し、呈色することにより視認可能なラインが展開膜上に現れる。このように呈色した場合は、当該検体は陽性であり、生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体の場合は、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染していると判定することができる。生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体の場合は、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているか、又は過去に感染していたと判定することができる。また、その呈色度合いを目視や適当な分析機器(例えば、イムノクロマトリーダー、分光光度計)で測ることにより当該陽性の強度を判定することができる。なお、標識抗体が有する検出手段として、例えば蛍光色素を用いた場合には、テストラインに紫外線等を照射し、それによる呈色の有無やその程度により陽性か否かを判定することができる。
【0054】
一方、テストラインの後にはコントロールラインがあり、そこに存在する(そこにコーティングされた)抗体と免疫複合体未形成の標識物質(例、抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体)とが免疫化学反応を起こし結合し呈色することにより、イムノクロマトが問題なく行われたことを視認することができる。
【0055】
検体サンプル液が展開膜上を展開通過した後は、吸収パッドにより未反応の標識抗体等が吸収される。なお、検体中に標的抗原(例、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体)が含まれていなかった場合は、テストラインは呈色せず、コントロールラインのみが呈色することになる。この場合、当該検体は陰性であり、生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体の場合は、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているとは判定されない。生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体の場合は、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているとは判定されず、過去に感染していたとも判定されない。
【0056】
一態様においては、生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体の場合に陰性で、生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体の場合に陰性であれば、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているとは判定されず、過去に感染していたとも判定されない。生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体の場合に陽性で、生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体の場合に陰性であれば、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していると判定することができ、感染の初期段階であると判定することができる。生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体の場合に陽性で、生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体の場合に陽性であれば、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していると判定することができ、感染後一定時間が経過していると判定することができる。生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体の場合に陰性で、生物学的試料液中の標的抗原が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体の場合に陽性であれば、被験体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたと判定することができる。
【0057】
本発明の、試験するための方法に供される生物学的試料は、哺乳動物の被験体に由来する試料である。当該哺乳動物としては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染する可能性がある哺乳動物であれば特に限定されないが、なかでも、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類が好ましく、特にヒトが好ましい。
【0058】
本発明の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法は、少なくとも以下の(1)及び(2)の工程を含む。
(1)化合物を含んでなるイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行う新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の測定工程。
(2)上記(1)の測定結果に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療を患者に施す工程。
【0059】
なお、患者は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しているおそれのある人も含む。なお、測定とは、患者由来の検体中に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体が存在するかどうかを検出することを意味する。
【0060】
また、新型コロナウイルス感染症治療を患者に施す工程とは、公知治療薬、今後上市される治療薬、臨床段階の治療薬候補を患者に投与するだけではなく、対症療法(アスピリン投与、補液・輸液投与等)も含む。
【0061】
本発明の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法は、高感度で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を検出することができるので、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者に迅速に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療を施すことができる。
【0062】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状は、無症状から重症の肺炎、死亡まで多岐にわたるが、具体的には、発熱、空咳、倦怠感・だるさ、痰、嗅覚障害・味覚障害、息切れ、筋肉痛・関節痛、のどの痛み、頭痛、悪寒、吐き気・嘔吐、鼻づまり、下痢、喀血、結膜充血等が挙げられる。
【0063】
別の態様において、本発明の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法は、少なくとも以下の(1)及び(2)の工程を含む。
(1)前記化合物を含んでなるイムノクロマト測定法用増感剤の存在下で抗原抗体反応を行う新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の測定工程。
(2)上記(1)の測定結果に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療を、ヒトを除く被験体に施す工程。
【0064】
本発明の治療方法に供されるヒトを除く被験体は、限定されないが、好ましくは哺乳動物を意味する。更に好ましくは、当該哺乳動物としては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染する可能性がある哺乳動物が挙げられ、なかでも、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類が好ましい。
【0065】
本発明は、上記式〔1〕及び〔2〕で表される化合物を含んでなるイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤を含む、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用キットを提供する。
【0066】
該治療剤としては、例えば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬を含むものが挙げられ、該治療薬としては、限定されないが、レムデシビル、デキサメタゾン、ファビピラビル(アビガン)、シクレソニド、ナファモスタット、カモスタット、イベルメクチン、ネルフィナビル等が挙げられる。治療薬は、重症肺炎や急性呼吸窮迫症候群の治療薬であるトシリズマブ、バリシチニブ、アカラブルチニブ、ラブリズマブ、エリトラン、イブジラスト、LY3127804、オチリマブ、HLCM051、ADR-001、イカチバント、アプレミラスト、cenicrivirocであってもよい。今後上市される治療薬、臨床段階の治療薬候補であってもよい。治療剤は、対症療法に用いられるアスピリン、補液・輸液等を含むものであってもよい。
【0067】
本発明の治療用キットは、上記本発明のイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤を別々の容器に含む。
【0068】
更に本発明の治療用キットは、本発明のイムノクロマト測定法用増感剤及び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用キットを、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に使用することができる、又は使用すべきであることを記載した説明書を含んでいてもよい。
【0069】
上記新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用キットは、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体、安定剤や緩衝液成分、他の治療薬やサプリメント等を含み得る。医薬上許容され得る担体としては、例えば、水、生理食塩水等の希釈剤等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。また、本発明の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用キットは、検体希釈液、イムノクロマト測定用テストストリップ、イムノクロマト測定用器具を含み得る。
【0070】
本発明の治療用キットは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体に特異的に結合する物質を更に含んでもよい。
【0071】
本発明の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用キットは、高感度で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を検出することができるので、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被験体(患者)に迅速に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療を施すことができる。
【0072】
以下、本実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0073】
製造例
(本発明及び比較例の共重合体の合成)
本発明のイムノクロマト測定法用増感剤として用いられる化合物を合成した。詳細は、以下の通りである。
【0074】
本発明で使用する化合物は、上記化学式〔1〕のとおり、ホスホリルコリン基を含む化合物である。
(化合物1)
上記化学式〔1〕中のn;1、R;ヘキシル基
(化合物2)
上記化学式〔1〕中のn;1、R;オクチル基
(化合物3)
上記化学式〔1〕中のn;1、R;デシル基
(化合物4)
上記化学式〔1〕中のn;1、R;ドデシル基
(化合物5)
上記化学式〔1〕中のn;0、R;ヘキサデシル基
【0075】
実施例
(公知のイムノクロマト測定用器具を使用しての検出感度の確認)
本実施例では、上記の重合体が、公知の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体の検出キットの検出感度を向上させることができるか(増感効果があるか)どうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
【0076】
(比較例)
市販の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体検出キットおよびSARS-CoV-2 IgG抗体検出キット(共にRayBiotec.社製)で評価した。より詳しくは、SARS-CoV-2IgM抗体検出キットまたはSARS-CoV-2 IgG抗体検出キットの希釈液 245μLに新型コロナウイルス陽性患者血清(CoV-PosM-S-100、RayBiotec.社製) 25μLを添加し、希釈液をイムノクロマトキットに展開した。
【0077】
(実施例)
当該キットの希釈液に終濃度0.5重量%となるように化合物1、2、3、4または5を添加し、さらに、新型コロナウイルス陽性患者血清が比較例に対して100倍希釈になるように調製した溶液を展開し、検出感度を比較した。
【0078】
(イムノクロマト測定用器具を使用してのIgM抗体検出感度の確認結果)
公知の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体検出キットを使用しての、検出感度向上の結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
0.5重量%の重合体1、2、3、4または5を添加した場合、IgM抗体について、比較例であるコントロールと同等以上か、やや薄い濃さのテストラインが検出できたことから、共重合体1、2、3、4または5の添加により、感度が向上していることが確認された。
【0081】
(イムノクロマト測定用器具を使用してのIgG抗体検出感度の確認結果)
公知の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体検出キットを使用しての、検出感度向上の結果を表2に示す。
【0082】
【0083】
0.5重量%の重合体1、2、3、4または5を添加した場合、IgG抗体について、比較例であるコントロールと同等以上か、やや薄い濃さのテストラインが検出できたことから、共重合体1、2、3、4または5の添加により、感度が向上していることが確認された。
【0084】
以上の実施例より、本発明は、公知の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法と比較して、著しく増感効果が優れているイムノクロマト測定法を提供することができた。
【0085】
以上述べたことから明らかなように、本発明は、公知の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法と比較して、増感効果が優れているイムノクロマト測定法を提供することができた。
【0086】
さらに、本発明の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を高感度に検出することができるので、新型コロナウイルス感染症の患者又は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しているおそれのある患者に迅速に新型コロナウイルス感染症治療を施すことができるので治療効果が高い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgM抗体および/またはIgG抗体を測定対象物質とするイムノクロマト測定法用増感剤を提供することができる。