(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/02 20060101AFI20241119BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20241119BHJP
G01B 21/02 20060101ALI20241119BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20241119BHJP
B65H 26/08 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B65H7/02
G01B21/00 A
G01B21/02
B41J11/42
B65H26/08
(21)【出願番号】P 2020211231
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】山口 綾二
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-320101(JP,A)
【文献】特開2017-171302(JP,A)
【文献】特開2020-185876(JP,A)
【文献】特開2001-277680(JP,A)
【文献】特開2010-224636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/02
G01B 21/00
G01B 21/02
B41J 11/42
B65H 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のうちの少なくとも2つを検出する1つの検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉状態を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のうちの少なくとも2つの情報を演算する演算部と、
前記演算部が演算した情報を報知する報知部と
を備
え、
前記検出部は、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のすべてを検出し、
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉位置を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のすべての情報を演算すること
を特徴とする印刷装置。
【請求項2】
印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のうちの少なくとも2つを検出する1つの検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉状態を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のうちの少なくとも2つの情報を演算する演算部と、
前記演算部が演算した情報を報知する報知部と
を備え、
前記検出部は、発した信号が検出対象物に反射して戻るまでの時間に基づく距離を検出するToF方式の距離センサ、または発した信号が検出対象物に反射して戻る位置に基づく距離を検出する三角測距方式の距離センサであること
を特徴とする印刷装置。
【請求項3】
印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記カバーの開閉位置、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅を検出する1つの検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉状態を示す情報、および前記印刷媒体の幅を示す情報を演算する演算部と、
前記演算部が演算した情報を報知する報知部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記カバーの開閉位置、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量を検出する1つの検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉状態を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報を演算する演算部と、
前記演算部が演算した情報を報知する報知部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量を検出する1つの検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を演算する演算部と、
前記演算部が演算した情報を報知する報知部と
を備え、
前記検出部は、発した信号が検出対象物に反射して戻るまでの時間に基づく距離を検出するToF方式の距離センサ、または発した信号が検出対象物に反射して戻る位置に基づく距離を検出する三角測距方式の距離センサであること
ることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のすべてを検出し、
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉位置を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のすべての情報を演算すること
を特徴とする請求項
2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記収容部に設け、前記カバーが前記開位置にあるときには、前記収容部の内部と前記検出部との間に位置する第一位置に変位し、前記カバーが前記閉位置にあるときには、前記収容部の内部と前記検出部との間から退避する第二位置に変位するシャッター部材を備え、
前記検出部は、
前記シャッター部材が前記第一位置にあるときには、前記シャッター部材との距離を検出し、
前記シャッター部材が前記第二位置にあるときには、前記収容部に収容された前記印刷媒体との距離を検出すること
を特徴とする請求項
2または
6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記収容部に設け、前記収容部の内部と前記検出部との間に位置する第一位置と、前記収容部の内部と前記検出部との間から退避する第二位置との間で変位するシャッター部材と、
前記シャッター部材の位置を変位する操作を受け付ける操作部材と
を備え、
前記検出部は、
前記シャッター部材が前記第一位置にあるときには、前記シャッター部材との距離を検出し、
前記シャッター部材が前記第二位置にあるときには、前記収容部に収容された前記印刷媒体との距離を検出すること
を特徴とする請求項
2から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記収容部に設け、前記印刷媒体の幅方向に移動可能であり、前記印刷媒体を前記幅方向において保持可能な保持部材と、
前記検出部を支持し、前記幅方向に交差する交差方向に移動可能な支持台と、
前記保持部材の移動に連動し、前記第一位置を介した前記収容部の内部に対する前記支持台の位置を前記交差方向に移動する移動機構と
を備え、
前記演算部は、前記シャッター部材が前記第一位置にあるときに、前記検出部が検出した前記シャッター部材との距離に基づいて、前記印刷媒体の幅を示す情報を演算すること
を特徴とする請求項
7または
8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記検出部は、発した信号が検出対象物に反射して戻るまでの時間に基づく距離を検出するToF方式の距離センサ、または発した信号が検出対象物に反射して戻る位置に基づく距離を検出する三角測距方式の距離センサであること
を特徴とする請求項
3、4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のうちの少なくとも2つを検出する1つの検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉状態を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のうちの少なくとも2つの情報を演算する演算部と、
前記演算部が演算した情報を報知する報知部と、
前記収容部に設け、前記カバーが前記開位置にあるときには、前記収容部の内部と前記検出部との間に位置する第一位置に変位し、前記カバーが前記閉位置にあるときには、前記収容部の内部と前記検出部との間から退避する第二位置に変位するシャッター部材と
を備え、
前記検出部は、
前記シャッター部材が前記第一位置にあるときには、前記シャッター部材との距離を検出し、
前記シャッター部材が前記第二位置にあるときには、前記収容部に収容された前記印刷媒体との距離を検出すること
を特徴とする印刷装置。
【請求項12】
前記検出部は、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のすべてを検出し、
前記演算部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉位置を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のすべての情報を演算すること
を特徴とする請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のうちの少なくとも2つを検出する1つの検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉状態を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のうちの少なくとも2つの情報を演算する演算部と、
前記演算部が演算した情報を報知する報知部と、
前記収容部に設け、前記収容部の内部と前記検出部との間に位置する第一位置と、前記収容部の内部と前記検出部との間から退避する第二位置との間で変位するシャッター部材と、
前記シャッター部材の位置を変位する操作を受け付ける操作部材と
を備え、
前記検出部は、
前記シャッター部材が前記第一位置にあるときには、前記シャッター部材との距離を検出し、
前記シャッター部材が前記第二位置にあるときには、前記収容部に収容された前記印刷媒体との距離を検出すること
を特徴とする印刷装置。
【請求項14】
前記収容部に設け、前記印刷媒体の幅方向に移動可能であり、前記印刷媒体を前記幅方向において保持可能な保持部材と、
前記検出部を支持し、前記幅方向に交差する交差方向に移動可能な支持台と、
前記保持部材の移動に連動し、前記第一位置を介した前記収容部の内部に対する前記支持台の位置を前記交差方向に移動する移動機構と
を備え、
前記演算部は、前記シャッター部材が前記第一位置にあるときに、前記検出部が検出した前記シャッター部材との距離に基づいて、前記印刷媒体の幅を示す情報を演算すること
を特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項15】
印刷媒体を巻回したロールを収容可能な収容部を有する筐体と、
前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、
前記収容部に収容された前記ロールの外周面に対向する位置に設けられ、前記ロールの径方向に送受信するパルスレーザ光の伝搬時間に基づいて、前記ロールの外周面との間の距離を計測するToF方式の距離センサと、
前距離センサの計測結果に基づいて、
前記カバーの開閉状態と前記ロールの残量を示す情報を演算する演算部と、
前記演算部が演算した前記ロールの残量を示す情報を報知する報知部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置に収容する印刷媒体の残量等を検出することができる装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のロール紙供給装置は、装置にセットしたロール紙の残量と紙幅を検出することができる。具体的には、ロール紙供給装置は残量検出押え部材と紙幅検出押え部材を備え、各々の押え部材の基端部をロール紙の直径方向にて揺動可能に支持する。残量検出押え部材の先端部はバネの付勢によりロール紙の右側外周縁部に当接し、紙幅検出押え部材の先端部はバネの付勢によりロール紙の左側外周縁部に当接する。ロール紙供給装置は、各々の押え部材とロール紙の回転軸とがなす角度に基づいて、ロール紙の残量と紙幅と検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のロール紙供給装置は、残量検出押え部材の角度を検出する検出手段と、紙幅検出押え部材の角度を検出する検出手段の、2つの検出手段を備えているので、部品点数が増え、構成が煩雑であった。
【0005】
本発明は、1つの検出部の検出結果から印刷媒体に関する複数の情報を得られる構成にすることにより、必要となる部品の点数を減らし、構成を簡易化することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る印刷装置は、印刷媒体を収容可能な収容部を有する筐体と、前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、検出対象物との距離を非接触で検出可能であり、前記カバーの開閉位置、前記収容部に収容された前記印刷媒体の幅、および前記収容部に収容された前記印刷媒体の残量のうちの少なくとも2つを検出する1つの検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記カバーの開閉状態を示す情報、前記印刷媒体の幅を示す情報、および前記印刷媒体の残量を示す情報のうちの少なくとも2つの情報を演算する演算部と、前記演算部が演算した情報を報知する報知部とを備えることを特徴とする。
【0007】
第一態様において、印刷装置は、1つの検出部によって、カバーの開閉位置、印刷媒体の幅、および残量のうち少なくとも2つを検出することができる。故に印刷装置は、カバーの開閉位置、印刷媒体の幅、および残量のうち少なくとも2つを検出するために、それぞれに対応する検出部を設ける場合と比べ、必要となる部品の点数を減らし、構成を簡易化することができる。
【0008】
本発明の第二態様に係る印刷装置は、印刷媒体を巻回したロールを収容可能な収容部を有する筐体と、前記収容部を開放する開位置および前記収容部を閉鎖する閉位置に変位可能なカバーと、前記収容部に収容された前記ロールの外周面に対向する位置に設けられ、前記ロールの径方向に送受信するパルスレーザ光の伝搬時間に基づいて、前記ロールの外周面との間の距離を計測するToF方式の距離センサと、前距離センサの計測結果に基づいて、前記ロールの残量を示す情報を演算する演算部と、前記演算部が演算した前記ロールの残量を示す情報を報知する報知部とを備えることを特徴とする。
【0009】
第二態様において、印刷装置は、ToF方式の距離センサを用い、検出対象物との距離を非接触で検出することにより、印刷媒体の残量を示す情報を得られ、報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】カバー12を閉じた印刷装置1の斜視図である。
【
図2】カバー12を開いた印刷装置1の斜視図である。
【
図3】カバー12を開いた印刷装置1の平面図である。
【
図4】測距センサ110が測定対象物との距離を検出する構成の説明図である。
【
図5】測距センサ110と移動機構120の斜視図である。
【
図7】印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】表示部13における情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の印刷装置の一実施形態である印刷装置1の構造について図面を参照して説明する。
図1の右斜め下方向、左斜め上方向、右斜め上方向、左斜め下方向、上向、および下向を各々印刷装置1の右方、左方、後方、前方、上方、および下方とする。
【0012】
印刷装置1は、例えばPC端末等の外部機器(図示略)から受信した印刷データを、印刷媒体に印刷可能に構成された印刷装置である。印刷媒体は、例えば、感熱ラベルである。
図1~
図3に示すように、印刷装置1は、筐体10を備える。筐体10は、略直方体状であり、本体部11、カバー12、排出部15を備える。本体部11およびカバー12は例えば樹脂材料で形成される。排出部15は、印刷装置1の内部で印刷された印刷媒体を印刷装置1の外部に排出するためのスリットであり、本体部11の前面に設けた下側排出部151とカバー12の前面に設けた上側排出部152とにより左右方向に延設されている。
【0013】
本体部11は、略直方体の箱状である。本体部11は、印刷装置1の下側部分をなし、内底20、収容部21、プラテンローラ22、ロール支持機構23を備える。
図2、
図3に示すように、内底20は、上方が開放した箱状の部材である。内底20の底面は、後部が下方に向けて円弧状に湾曲する。内底20の底面は、案内溝25,26、凹部27、下側排出部151を有する。案内溝25、26は左右方向に延びる矩形状の貫通孔であり、前後方向において、凹部27と、内底20の底面のうち最も下方に凹んだ部分との間に設けられる。案内溝25は後述の第一支持部30の連結部34(
図6参照)を挿通し、案内溝26は第二支持部40の連結部44(
図6参照)を挿通する。案内溝25は、印刷装置1の左右方向の中心よりも右側から左方に延びる。案内溝26は、印刷装置1の左右方向の中心よりも左側から右方に延びる。案内溝25と案内溝26とは、印刷装置1の左右方向の中心付近において、前後方向に対向する。案内溝26は、案内溝25よりも前方にある。凹部27は左右方向に延び、下方に凹む部分である。凹部27は、案内溝25、26よりも前方、かつ後述のプラテンローラ22よりも後方に設けられる。下側排出部151は内底20の前端部に設けられ、排出部15の下側部分を構成する。
【0014】
図2に示すように、収容部21は、内底20によって区画された印刷装置1の内部空間であり、ロールMの芯Tが左右方向に延びる状態で、ロールMを収容できる。ロールMは、例えば、感熱ラベルが貼付された台紙が筒状の芯Tに巻回されて構成される。プラテンローラ22は、印刷媒体を搬送するための円柱状のローラであり、排出部15の長手方向(左右方向)に沿って設けられる。収容部21は、筐体10の内部にて、排出部15の後方に位置する。ロール支持機構23は、ロールMを取り外し可能に支持できる。ロール支持機構23の詳細は後述する。印刷装置1は、本体部11において内底20より下方に、移動機構120、測距センサ110、シャッター機構140、電子回路基板100(
図7参照)等を備える。電子回路基板100は、印刷装置1の制御を司る。
【0015】
内底20は、最も下方に凹んだ部分に開口部28を有する。開口部28は、内底20の底面を貫通し、内底20の下方と収容部21内を連通する。
図2、
図4に示すように、シャッター機構140は、シャッター部材141、ラックギア142、駆動ギア143、従動ギア144、回転軸145、ピニオンギア146を備える。シャッター部材141は、開口部28の開口面積よりも若干大きく形成され、内底20の底面の下側から開口部28を覆い塞ぐ。シャッター部材141は、開口部28を塞いで測距センサ110と収容部21内との間を遮る遮蔽位置(
図4の実線で表す位置)と、遮蔽位置よりも後ろ斜め上方で、開口部28から退避する退避位置(
図4の二点鎖線で表す位置)との間を、内底20の底壁に沿って移動可能である。ラックギア142はシャッター部材141の後部に接続し、ギア歯を下方へ向けつつ、後ろ斜め上方に延びる。駆動ギア143は、本体部11の後上部の右端部にて、カバー12の開閉軸147(
図4参照)と同軸に設けられ、カバー12の開閉によって回動する。従動ギア144は駆動ギア143に噛合し、カバー12の開閉に連動して回動する。従動ギア144のギア径は、駆動ギア143のギア径よりも小さい。従動ギア144の回転軸145は、本体部11の後上部において、本体部11の略中央へ向けて左方に延びる。回転軸145の左端部には、ピニオンギア146が設けられる。ピニオンギア146はシャッター部材141に連結するラックギア142に、下側から噛合する。
【0016】
移動機構120と測距センサ110は、内底20の下側で、開口部28を介して収容部21内に連通する位置に設けられる。より具体的には、収容部21内にロールMが収容された場合の芯Tの軸に対して交差する方向(直交方向に近いほど好ましい。)に沿って、開口部28を介した内底20の下側の位置に設けられる。測距センサ110は、パルスレーザ光を送信し、測定対象物に反射した反射光を受信するまでの光の伝播時間に基づいて、測定対象物との間の距離を計測する、いわゆるToF(Time of Flight)方式の距離センサである。パルスレーザ光の送信方向は、開口部28を介して収容部21内に向けられる。
【0017】
移動機構120は、測距センサ110を開口部28に近づける方向、および遠ざける方向に移動する。より具体的には、移動機構120は、測距センサ110をパルスレーザ光の送受信方向、すなわち、収容部21内にロールMが収容された場合の芯Tの軸に対する交差方向(直交方向に近いほど好ましい)に沿って移動する。
【0018】
図5に示すように、移動機構120は、枠体121、駆動モータ122、支持軸123、駆動軸124、支持台125を備える。枠体121は長方形状の金属板の両端を同一面方向に略直角に折り曲げた、移動機構120の各部品を支持する枠である。駆動モータ122は、パルス信号によって回転量を正確に制御できるパルスモータである。駆動モータ122は、枠体121の一方の端部に外側から固定し、枠体121の内側に突出させたモータ軸にギア(図示略)を組み付ける。支持軸123は枠体121の両端部間に架設する。駆動軸124は枠体121の両端部間に回転可能に架設し、駆動モータ122側の端部に固定したギア126を、駆動モータ122のギアに噛合する。駆動軸124の軸体はリードネジである。支持台125は、測距センサ110を固定する台座である。支持台125は、ネジ孔が設けられて駆動軸124の軸体に噛合する。支持台125は、ネジ孔が設けられた部分から支持軸123へ向けて延び、端部が溝状に形成された部位を有する。溝状の部位は支持軸123に係合し、駆動軸124の回転時において、支持台125の回り止めとして機能する。支持台125は、ネジ孔が設けられた部分から溝状の部位とは反対側へ向けて延び、端部が板状に形成された部位を有する。板状の部位には、測距センサ110が組み付けられ、パルスレーザ光の送受信方向を駆動軸124の軸方向にして固定される。故に移動機構120は、駆動モータ122の駆動によって駆動軸124が回転すると、支持台125が駆動軸124の軸方向に移動し、支持台125の移動により測距センサ110を移動させることができる。故に前述したように、本体部11の内底20の下側に組み付けられた移動機構120は、開口部28を介して収容部21内に向けられるパルスレーザ光の送受信方向に、測距センサ110を移動することができる(
図2、
図4参照)。なお、駆動モータ122は、後述するロール支持機構23のポテンショメータ90が出力する抵抗値に応じた回転量の分、駆動する。
【0019】
カバー12は、本体部11の後上部において左右方向に延びる上記の開閉軸147(
図4参照)を中心として回動可能に軸支された開閉部材である。
図1に示すように、カバー12が閉じられた状態において、カバー12の上面は前方ほど下側に傾斜している。印刷装置1は、カバー12が閉じられた状態において、カバー12の上面に、表示部13および操作部14を備える。操作部14は、印刷装置1に各種指示を入力するのに用いられる。カバー12は、サーマルヘッド29を収容する。
図2、
図3に示すように、サーマルヘッド29は、上側排出部152の後方において左右方向に延びる。サーマルヘッド29は、左右方向に沿って並んだ複数の発熱体を有する。サーマルヘッド29は、電子回路基板100によって制御され、加熱により印刷媒体である感熱ラベルにキャラクタを印刷可能である。カバー12は上側排出部152を有する。上側排出部152は、カバー12の前端部に設けられた排出部15の上側部分をなす部分である。
【0020】
次に、ロール支持機構23を説明する。ロール支持機構23は、支持板部70、ピニオン2、第一移動部3、第二移動部4、付勢部材5,6、ポテンショメータ90を備える。
図6に示すように、支持板部70は、ロール支持機構23の他の部材の下方において、左右方向に延びる板状部材である。支持板部70は、内底20の底面の下方に配置される。支持板部70は、ボス部75、左右方向に延びる溝部78,79を有する。ボス部75は、支持板部70の中心部に設けられた円筒形状の部位である。溝部78,79は各々、内底20の底面の案内溝25、26の下方に設けられ、ボス部75は、前後方向において案内溝25,26の間に位置する。ピニオン2は、ボス部75に回転可能に支持される平歯車である。ピニオン2は、左右方向において第一支持部30と第二支持部40との間の中心に配置される。
【0021】
図2、
図3、
図6に示すように、第一移動部3は、第一ラック部39および第一支持部30を備える。第一ラック部39は左右方向に延び、溝部78に配置される。第一ラック部39は平面視左右方向に長い矩形状であり、前面に、左右方向に並ぶ歯部を有する。第一ラック部39はピニオン2の後側に位置し、歯部がピニオン2と噛合する。第一ラック部39は、内底20の底面の下方において、内底20の底面に対し略平行に延びる。
【0022】
第一支持部30は、側方視略直角三角形状の板状部材であり、上下方向に延びる。第一支持部30は、内底20の底面の上方すなわち収容部21内に配置される。第一支持部30は、左右方向に移動可能に設けられる。
【0023】
第一支持部30は、突起31、凸部36を備える。突起31は右方へ向けて突出する円錐台形状の突起であり、第一支持部30の上端部に設けられる。連結部34は、第一支持部30の下端部から右方へ向けて延びる板状の部位である。連結部34はネジ38を挿通する貫通孔を有する。第一支持部30は、連結部34が内底20の底面の案内溝25に挿通された状態で、該貫通孔に挿通されたネジ38によって第一ラック部39に固定される。凸部36は、第一支持部30の前端部に設けられた下方に突出する部位である。凸部36は、内底20の底面の凹部27に嵌まる。第一支持部30は、案内溝25と凹部27とによって左右方向の移動が案内される。
【0024】
第二移動部4は、第一支持部30の移動と連動して第一支持部30の移動方向とは反対方向に移動可能である。第二移動部4は、第二ラック部49および第二支持部40を備える。第二ラック部49は左右方向に延び、溝部79に配置される。第二ラック部49は平面視左右方向に長い矩形状であり、後面に、左右方向に並ぶ歯部を有する。第二ラック部49はピニオン2の前側に位置し、歯部がピニオン2と噛合する。第二ラック部49は、内底20の底面の下方において、内底20の底面に対し略平行に延びる。第二ラック部49は、ピニオン2を挟んで第一ラック部39と前後方向に対向する。
【0025】
第二支持部40は、側方視略直角三角形状の板状部材であり、上下方向に延びる。第二支持部40は、内底20の底面の上方すなわち収容部21内に配置され、第一支持部30と左右方向に対向する。第二支持部40は、概略、第一支持部30と左右対称の構成を有する。第二支持部40は、左右方向に移動可能に設けられ、第一支持部30との間に、ロールMを取り外し可能で支持可能に構成される。
【0026】
第二支持部40は、突起41、凸部46を備える。突起41は左方へ向けて突出する円錐台形状の突起であり、第二支持部40の後端部に設けられる。突起41は、第一支持部30の突起31と対向する位置に設けられる。突起31,41は各々、ロールMの芯Tの孔に嵌合可能である。連結部44は、第二支持部40の下端部から左方に延びる板状の部位である。連結部44は、連結部34よりも前方に設けられる。連結部44はネジ48を挿通する貫通孔を有する。第二支持部40は、連結部44が内底20の底面の案内溝26に挿通された状態で、該貫通孔に挿通されたネジ48によって第二ラック部49に固定される。凸部46は、第二支持部40の前端部に設けられた下方に突出する部位である。凸部46は、内底20の底面の凹部27に嵌まる。第二支持部40は、案内溝26と凹部27とによって左右方向の移動が案内される。
【0027】
第一支持部30が左方に所定量移動すると、第一ラック部39、ピニオン2、および第二ラック部49を介して、第二支持部40は右方に所定量移動する。一方、第一支持部30が右方に所定量移動すると、第一ラック部39、ピニオン2、および第二ラック部49を介して、第二支持部40は左方に所定量移動する。このように、第一支持部30と第二支持部40は、反対方向に連動して移動する。
【0028】
付勢部材5,6は、第一移動部3と第二移動部4とを互いに接近する方向に付勢する。付勢部材5,6は、例えば、引っ張りバネである。付勢部材5,6は各々、支持板部70の溝部78,79に配置される。付勢部材5の右端は支持板部70に掛止され、付勢部材5の左端は第一支持部30の下端部に掛止されている。付勢部材6の左端は支持板部70に掛止され、付勢部材6の右端は第二支持部40の下端部に掛止されている。故に、第一支持部30および第二支持部40は、付勢部材5,6により、互いに接近する方向に付勢される。
【0029】
ポテンショメータ90は、移動子91の左右方向の位置を検出する公知のリニア方式の可変抵抗器である。移動子91は第一ラック部39の後部に組付けられ、第一ラック部39と一体的に左右方向に移動する。ポテンショメータ90は、移動子91の左右方向の位置に応じた抵抗値を出力する。前述したように、第一ラック部39と第二ラック部49は連動し、互いに相反する左右方向に移動する。故にポテンショメータ90は、第一支持部30と第二支持部40との左右方向における相対的な距離、すなわち第一支持部30と第二支持部40との間に支持されるロールMの幅に応じた抵抗値を出力することができる。ロールMの幅は、ロールMの芯Tの延設方向の長さである。
【0030】
図7を参照して、印刷装置1の電気的構成について説明する。印刷装置1は、印刷装置1の制御を司る電子回路基板100を備える。電子回路基板100は、CPU102、ROM103、CGROM104、RAM105、フラッシュメモリ106、駆動回路86~88,95を備える。
【0031】
CPU102は印刷装置1を統括制御する。ROM103は、各種プログラムおよびCPU102が各種プログラムを実行する時に必要な各種パラメータを記憶する。CGROM104は、キャラクタを印刷するための印刷用ドットパターンデータを記憶する。RAM105は、テキストメモリ、印刷バッファ等、複数の記憶領域を備える。フラッシュメモリ106は、CPU102が印刷装置1を制御するための各種パラメータ等を記憶する。フラッシュメモリ106は、印刷装置1の電源をオフにした場合でも保存する各種データ等を記憶する。駆動回路86は、サーマルヘッド29を駆動するための電子回路であり、CPU102の指示に従いサーマルヘッド29を駆動する。駆動回路87は、搬送モータ89を駆動するための電子回路であり、CPU102の指示に従い搬送モータ89を駆動する。搬送モータ89は、プラテンローラ22を回転駆動させる。駆動回路88は、表示部13を駆動するための電子回路であり、CPU102の指示に従い表示部13を駆動する。駆動回路95は、移動機構120の駆動モータ122を駆動するための電子回路である。駆動回路95はポテンショメータ90から入力される抵抗値に基づきパルス信号を生成して移動機構120の駆動モータ122を駆動し、測距センサ110の位置をポテンショメータ90の抵抗値に対応する位置に移動する。
【0032】
また、CPU102は、操作部14と測距センサ110に接続する。操作部14は、ユーザによる操作部14に対する操作の入力を受け付け、CPU102に伝達する。測距センサ110は、測定対象物との間の距離の測定結果をCPU102に入力する。
【0033】
次に、
図2~
図4を参照して、印刷装置1の印刷動作について説明する。ユーザは、印刷装置1の収容部21にロールMを収容する場合、またはロールMを収容部21から取り外す場合に、カバー12を開き、ロール支持機構23を操作する。カバー12が閉じた閉状態(
図4の実線で表す位置)の場合、シャッター部材141は開口部28を開放する退避位置にある。ロールMの収容時、ユーザは、印刷装置1のカバー12を開く。カバー12が閉状態から開状態(
図4の二点鎖線で表す位置)に移行する場合、開閉軸147に設けた駆動ギア143は左側方視で反時計回りに回転し、従動ギア144を時計回りに回転させる。従動ギア144の回転軸145は、従動ギア144とともに左側方視で時計回りに回転し、ピニオンギア146を時計回りに回転させる。ラックギア142は、ピニオンギア146の時計回りの回転によって前斜め下方へ向けて移動し、シャッター部材141を開口部28の後方の退避位置から開口部28を塞ぐ遮蔽位置に移動する。
【0034】
カバー12が開いた開状態において、ユーザは指等を用い、第一支持部30または第二支持部40を互いに離れる方向(左右方向外側)に移動させる。ユーザは、第一支持部30と第二支持部40の間にロールMを左側方視、反時計回りに巻回された状態で配置させる。ユーザが、第一支持部30または第二支持部40に対する操作を解除すると、第一支持部30および第二支持部40は、付勢部材5,6の付勢力によって互いに近づく向きに移動し、ロールMに接触して移動を停止する。突起31,41は、ロールMの芯Tの孔に嵌合する。その結果、第一支持部30と第二支持部40の間の距離は、ロールMの幅と略同じ長さとなる。ポテンショメータ90は第一支持部30の左右方向の位置に応じた抵抗値を電子回路基板100の駆動回路95に出力する。駆動回路95は、測距センサ110の位置が、ポテンショメータ90の抵抗値に応じた位置となるように、モータ軸の回転位置と、抵抗値に応じて予め設定された回転位置との差分に基づき、移動機構120の駆動モータ122を駆動する。本実施形態においては、一例として、幅が1インチ、2インチ、3インチ、または4インチのロールMが用いられるものとする。駆動回路95は、測距センサ110とシャッター部材141との間の長さLX(
図4参照)が、ロールMの幅に応じて予め設定した長さとなるよう、駆動モータ122の駆動を制御する。一例として、ロールMの幅が1インチ、2インチ、3インチ、4インチの場合、それぞれの長さLXは、6.5mm、9.5mm、12.5mm、15.5mm(それぞれ誤差±1.5mmを許容)である。なお、カバー12の開状態において、CPU102は、後述する情報報知処理を実行し、測距センサ110がシャッター部材141との距離(長さLX)を測定した結果に基づいて、カバー12が開状態または閉状態であるかの報知と、ロールMの幅が1~4インチのいずれであるかの報知を行う。
【0035】
ロールMから引き出される印刷媒体は、内底20の底面の曲面に沿って配置される。印刷媒体の前端は排出部15付近に配置される。印刷媒体の左右方向の端部は、第一支持部30の右面と第二支持部40の左面によって案内され、これにより印刷媒体の搬送経路が規定される。ユーザはカバー12を閉める。カバー12が開状態から閉状態に移行する場合、開閉軸147に設けた駆動ギア143は左側方視で時計回りに回転し、従動ギア144を反時計回りに回転させる。従動ギア144の回転軸145は、従動ギア144とともに左側方視で反時計回りに回転し、ピニオンギア146を反時計回りに回転させる。ラックギア142は、ピニオンギア146の反時計回りの回転によって後斜め上方へ向けて移動し、シャッター部材141を、開口部28を塞ぐ遮蔽位置から、開口部28の後方の退避位置に移動する。
【0036】
カバー12が閉状態であるとき、サーマルヘッド29は、プラテンローラ22に向けて印刷媒体を押し付ける。プラテンローラ22は、搬送モータ89の駆動により回転することで、印刷媒体を排出部15に向けて搬送する。サーマルヘッド29は、印刷データに応じて発熱体が選択的に発熱することにより、印刷媒体の感熱層にキャラクタをライン単位で印刷する。排出部15は、印刷装置1の内部で印刷された印刷媒体を印刷装置1の外部に排出する。なお、印刷装置1は、排出部15から排出された印刷済みの印刷媒体を、所定位置で切断する切断部を必要に応じて備えてもよい。なお、カバー12の閉状態において、CPU102は、後述する情報報知処理を実行し、測距センサ110がロールMの外周面との距離(長さLX+長さLD)を測定した結果に基づいて、ロールMの残量の報知を行う。長さLDは、測距センサ110のパルスレーザ光の送受信方向において、シャッター部材141とロールMの外周面との間の距離である。本実施形態において、印刷装置1に用いられるロールMは、未使用の状態の外径(長さLM)が、例えば60mmであり、芯Tの外径(長さLT)が、例えば10mmのものが用いられる。そして、未使用のロールMを収容部21に収容した状態で、パルスレーザ光の送受信方向におけるシャッター部材141とロールMの外周面との間の長さLDは、例えば10mmである。故に、例えば幅が4インチのロールMを収容部21に収容する場合において、測距センサ110による測定の結果が誤差±1.5mmを許容した値で24mm以上27mm未満であれば、ロールMの残量はフル(100%)であり、同様に測定結果が49mm以上52mm未満であれば、ロールMの残量はなし(0%)である。
【0037】
図8を参照して、表示部13の表示例について説明する。印刷装置は、測距センサ110の測定結果に基づいて、カバー12の開閉状態、ロールMの幅残量を、それぞれに対応するアイコン131~133を表示部13に表示することにより、ユーザへの報知を行う。アイコン131は、カバー12が開状態のとき、カバー12が本体部11に対して斜めに開く筐体10の図を表示し、カバー12が閉状態のとき、カバー12が本体部11と合わさった筐体10の図の表示により、カバー12の開閉状態を報知する。アイコン132は、枠内にロールMの幅(1~4インチ)を表示した図の表示により、ロールMの幅を報知する。アイコン133は、枠内に、例えば4つまでのブロックを表示し、ブロックの数により、ロールMの残量の割合(0~25%、26~50%、51~75%、76~100%)を報知する。
【0038】
図9を参照して、幅テーブル150を説明する。幅テーブル150は、測距センサ110が測定し得る距離(長さLX)の許容範囲を、ロールMの幅と対応付けたテーブルである。後述する情報報知処理の実行において、CPU102は、測距センサ110の測定結果に基づきロールMの幅を決定する場合に、幅テーブル150を参照する。例えば、長さLXが11.2mmの場合、CPU102は、ロールMの幅が3インチであるとし、長さLXが8.0mmの場合には2インチであるとする。
【0039】
図10を参照して、残量テーブル160を説明する。残量テーブル160は、ロールMの幅と、測距センサ110が測定しうる距離(長さLX+長さLD)の許容範囲とを、ロールMの残量と対応付けたテーブルである。後述する情報報知処理の実行において、CPU102は、測距センサ110の測定結果に基づきロールMの残量を決定する場合に、幅テーブル150を参照する。前述したように、ロールMの残量は、割合によって4段階で示される。例えば、ロールMの幅が1インチで、長さLX+長さLDが33.1mmの場合、CPU102は、ロールMの残量が26~50%であるとし、アイコン133に表示するブロック数を2とする。例えば、ロールMの幅が4インチで、長さLX+長さLDが50.0mmの場合、CPU102は、ロールMの残量が0~25%であるとし、アイコン133に表示するブロック数を1とする。
【0040】
図11を参照して、印刷装置1で実行される情報報知処理について説明する。情報報知処理は、印刷装置1のCPU102は、電源がオンになるとRAM105を初期化し、ROM103に記憶されたプログラムをRAM105に読み出して情報報知処理を実行する。以下、ステップ番号を単にSと略記する。
【0041】
測距センサ110は、所定時間ごとにパルスレーザ光を出力し、測定対象物との間の距離を測定すると、測定結果をCPU102に入力する。CPU102は測距センサ110の測定結果を取得する(S1)。カバー12が開状態の場合、シャッター部材141は遮蔽位置にある。パルスレーザ光がシャッター部材141に反射した場合、測定結果として長さLXの採り得る値は、5mm以上17mm未満である。故に測定結果が17mm未満の場合(S3:YES)、CPU102はカバー12が開状態にあると判断する。CPU102は表示部13に、カバー12の開状態を示すアイコン131を表示して、開状態を報知する(S5)。
【0042】
CPU102は、後述するS41の処理においてRAM105に記憶する前回の測定結果と、S1で取得した今回の測定結果との差分を演算する(S7)。例えば、ユーザがロールMをロール支持機構23に支持する過程では、第一支持部30と第二支持部40との間の距離が変化するので、前回と今回の測定結果の差分は大きく変化する。また、ユーザがカバー12を開閉中である場合にも、前回と今回の測定結果の差分は大きく変化する。よって、差分が3mm以上の場合(S11:YES)、CPU102は、ユーザによる操作が行われているとして、処理をS41に移行する。CPU102は、今回の測定結果をRAM105に記憶すると(S41)、1秒間待機したのち(S43)、処理をS1に移行する。
【0043】
S11の判断において、前回と今回の測定結果の差分が3mm未満の場合(S11:NO)、CPU102は、幅テーブル150を参照し、測定結果に基づいてロールMの幅を取得し、RAM105に記憶する(S13)。CPU102は表示部13に、ロール幅を示すアイコン132を表示して、ロールMの幅を報知する(S15)。CPU102は、処理をS41に移行し、今回の測定結果をRAM105に記憶すると(S41)、1秒間待機したのち(S43)、処理をS1に移行する。
【0044】
カバー12が閉状態の場合、シャッター部材141は退避位置にある。パルスレーザ光は開口部28から収容部21内に進み、ロールMの外周面、もしくは収容部21の内面にて反射する。よってシャッター部材141で反射しない場合の測定結果として長さLXの採り得る値は、17mm以上となる。故に測定結果が17mm以上の場合(S3:NO)、CPU102はカバー12が閉状態にあると判断する。CPU102は表示部13に、カバー12の閉状態を示すアイコン131を表示して、閉状態を報知する(S21)。
【0045】
ロールMの残量がない場合、測距センサ110から芯Tの外周面までの距離で採り得る最大の距離(長さLX+長さLD+1/2(長さLM-長さLT))は、17mm+10mm+1/2(60mm-10mm)=52mmである。収容部21内にロールMが収容されていない場合、パルスレーザ光は収容部21の内面で反射するため、測定結果の採り得る値は、少なくとも、測距センサ110から芯Tの軸心までの距離で採り得る最大の距離(長さLX+長さLD+1/2(長さLM))である57mm以上となる。よってCPU102は、測定結果が57mm以上である場合(S23:YES)、ロールMの残量を示すアイコン133においてブロックを表示しないことで、ロールMが収容されていないことを報知する(S25)。CPU102は、処理をS41に移行し、今回の測定結果をRAM105に記憶すると(S41)、1秒間待機したのち(S43)、処理をS1に移行する。
【0046】
S23の判断において、測定結果が57mm未満である場合(S23:NO)、CPU102は、残量テーブル160を参照し、S13でRAM105に記憶したロールMの幅と、測定結果とに基づいてロールMの残量を取得する(S31)。CPU102は表示部13に、ロール残量を示すアイコン133を表示して、表示したブロックの数により、ロールMの残量を報知する(S33)。CPU102は、処理をS41に移行し、今回の測定結果をRAM105に記憶すると(S41)、1秒間待機したのち(S43)、処理をS1に移行する。情報報知処理は、印刷装置1の電源がオフになると終了する。
【0047】
上記実施形態において、測距センサ110は、本発明の「検出部」の一例である。S3、S13、S31で測定結果の比較およびテーブルの参照により、カバー12の開閉状態、ロールMの幅および残量についての情報を取得するCPU102は、本発明の「演算部」の一例である。表示部13は、本発明の「報知部」の一例である。シャッター部材141の遮蔽位置および退避位置は、それぞれ、本発明の「第一位置」および「第二位置」の一例である。第一支持部30および第二支持部40は、本発明の「保持部材」の一例である。
【0048】
以上説明したように、印刷装置1は、1つの測距センサ110によって、カバー12の開閉状態、ロールMの幅、および残量のうち少なくとも2つ、本実施形態ではすべてを検出することができる。故に印刷装置1は、カバー12の開閉状態、ロールMの幅、および残量のうち少なくとも2つ、あるいはすべてを検出するために、それぞれに対応する測距センサ110を設ける場合と比べ、必要となる部品の点数を減らし、構成を簡易化することができる。
【0049】
カバー12が開位置にあるとき、シャッター部材141は、収容部21の内部と測距センサ110との間の遮蔽位置に位置する。故に測距センサ110がシャッター部材141との距離を検出したとき、印刷装置1は、カバー12が開位置にあることを示すアイコン131の表示により、開閉状態を報知することができる。一方、カバー12が閉位置にあるとき、シャッター部材141は、収容部21の内部と測距センサ110との間から退避した退避位置に位置する。故に測距センサ110の検出結果がシャッター部材141との距離を示さないとき、印刷装置1は、カバー12が閉位置にあることを示すアイコン131の表示により、開閉状態を報知することができる。
【0050】
シャッター部材141が収容部21の内部と測距センサ110との間から退避した退避位置に位置する場合において、測距センサ110は、収容部21に収容されたロールMとの距離を検出することができる。故に印刷装置1は、ユーザの操作によってシャッター部材141が遮蔽位置から退避位置に変位したときに、残量テーブル160の参照により得られたロールMの残量を示すアイコン133の表示により、残量を報知することができる。
【0051】
第一支持部30と第二支持部40は、ロールMの幅に応じて移動する。測距センサ110の支持台125は、第一支持部30と第二支持部40の移動に連動し、すなわちロールMの幅に応じて、遮蔽位置にある場合のシャッター部材141との距離をパルスレーザ光の送受信方向に移動する。故に印刷装置1は、測距センサ110による距離の測定結果に基づくロールMの幅を示すアイコン132の表示により、残量を報知することができる。
【0052】
印刷装置1は、ToF方式の測距センサ110を用い、検出対象物との距離を非接触で検出することにより、1つの測距センサ110によって、カバー12の開閉状態、ロールMの幅、ロールMの残量等を示す情報を得られ、アイコン131~133の表示により報知することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。シャッター部材141は、ギアによる機械的な連動によって、カバー12の開閉動作に応じて遮蔽位置と退避位置の間を移動するが、カバー12と連動しなくてもよい。例えば操作部14に、ユーザが操作するとカバー12が遮蔽位置から退避位置に移動し、手を離すとカバー12が遮蔽位置に戻る操作部材(例えばボタン等)を設けてもよい。シャッター部材141とは、操作部材との機械的な連動によって作動してもよいし、ソレノイド等により電気的に作動してもよい。この場合、CPU102は、シャッター部材141が遮蔽位置のときロールMの幅を検出し、退避位置のときロールMの残量を検出し、カバー12の開閉状態については検出しなくてもよい。操作部材の非操作時にシャッター部材141が遮蔽位置にあるので、印刷装置1は、例えばロールMから紙粉が生じた場合に、測距センサ110や本体部11内が開口部28から進入した紙粉で汚れることを抑制できる。また、開口部28に、例えばレーザ光を透過するフィルタもしくはカバーを設けてもよい。この場合も同様に、印刷装置1は、紙粉等の本体部11内への進入を抑制することができる。
【0054】
内底20の開口部28は、形成されなくてもよい。この場合、移動機構120と測距センサ110は、収容部21内、あるいは収容部21に測距センサ110の送受信方向を向けることができる収容部21外の位置に設けるとよい。シャッター部材141は、測距センサ110の送受信方向において、退避位置と遮蔽位置との間を移動すればよい。
【0055】
印刷装置1は、印刷媒体の一例としてロールMを用いたが、カット紙等を用いてもよい。この場合、収容部21はカット紙を積層して収容し、移動機構120と測距センサ110は、収容部21の上部に設け、カット紙を積層する方向をレーザ光の送受信方向とすればよい。
【0056】
測距センサ110の送受信方向は、ロールMの芯Tの軸心に直交し、軸心を向く方向としたが、軸心に対して交差する方向であってもよい。測距センサ110はToF方式の距離センサを用いたが、三角測距方式の距離センサを用いてもよい。
【0057】
移動機構120の支持台125は、ロール支持機構23のポテンショメータ90が出力する抵抗値に応じて駆動モータ122を駆動することによって、電気的な連動によって移動した。支持台125は、ロール支持機構23との機械的な連動によって移動してもよい。例えば、ロール支持機構23は、ポテンショメータ90の代わりにラックギアとピニオンギアを備えてもよい。移動機構120はピニオンギアに連動する多段のギアを設け、ピニオンギアの駆動力で駆動軸124を回動し、支持台125を移動する構成としてもよい。
【0058】
印刷装置1は、ロールMの外径(LM)、芯Tの外径(LT)が本実施形態とは異なるロールを用いてもよい。この場合、印刷装置1は、例えば操作部14の操作によって、ロールと芯の外径をユーザに入力させ、フラッシュメモリ106に記憶してもよい。残量テーブル160は、フラッシュメモリ106に記憶するロールと芯の外径をパラメータとして、測定結果(LX+LD)の採り得る範囲を変更してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 印刷装置
10 筐体
12 カバー
13 表示部
21 収容部
30 第一支持部
40 第二支持部
102 CPU
110 測距センサ
120 移動機構
125 支持台
141 シャッター部材