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<図1>
  • 特許-座席構造 図1
  • 特許-座席構造 図2
  • 特許-座席構造 図3
  • 特許-座席構造 図4
  • 特許-座席構造 図5
  • 特許-座席構造 図6
  • 特許-座席構造 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】座席構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/01 20060101AFI20241119BHJP
   B64D 11/06 20060101ALI20241119BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B60N2/01
B64D11/06
B60N3/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020213605
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099672
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 咲乃
(72)【発明者】
【氏名】キム ジンウォン
(72)【発明者】
【氏名】平子 芳高
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0218095(US,A1)
【文献】特開平11-152094(JP,A)
【文献】特開2019-31279(JP,A)
【文献】特表2013-515648(JP,A)
【文献】特表2019-534200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/01
B64D 11/06
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の進行方向に並ぶ座席列を備える座席構造であって、
前記座席列が、その両サイドに前記進行方向に延びる通路をそれぞれ有すると共に、前記進行方向に対して横方向の一方に斜めを向いて配置される前向き座席と、前記進行方向に対して前記横方向の一方に斜めに背を向けて配置される後向き座席と、を有し、
前記座席列が、前記乗物の両側壁に沿って並ぶ前記進行方向を向く両壁側座席群の間の設置スペースにおいて、前記前向き座席と前記後向き座席とが両前記壁側座席群の各座席よりも広いシートピッチとシート幅とを備え、かつ、前記前向き座席及び前記後向き座席のうちの一方の座席が他方の座席よりも高い位置に設置されるように設けられる座席構造。
【請求項2】
乗物の進行方向に並ぶ座席列を備える座席構造であって、
前記座席列が、その両サイドに前記進行方向に延びる通路をそれぞれ有すると共に、前記進行方向に対して横方向の一方に斜めを向いて配置される前向き座席と、前記進行方向に対して前記横方向の一方に斜めに背を向けて配置される後向き座席と、を有し、
前記座席列が、前記乗物の両側壁に沿って並ぶ前記進行方向を向く両壁側座席群の間の設置スペースにおいて、前記前向き座席と前記後向き座席とが両前記壁側座席群の各座席よりも広いシートピッチとシート幅とを備えるように設けられ、
更に、前記進行方向に隣り合わせる前記前向き座席と前記後向き座席との間に設けられて、双方の着座者の隣り合わせる側の側方視界をそれぞれひと続き状に遮るパーティションを有し、
前記パーティションが、前記前向き座席及び前記後向き座席のうちの一方の座席の側方視界を遮るサイド被覆部に、高さ方向の中間部から上側の領域を下側の領域に対して前記一方の座席から遠ざけるように断面クランク状に凹む凹部を有し、該凹部のクランクにより、前記一方の座席側の前記凹部が上段側スペースとして形成され、他方の座席側の前記凹部の出っ張りの直下に凹状の下段側スペースが形成され、
前記一方の座席が、前記他方の座席よりも高い位置に設置される座席構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の座席構造であって、
前記座席列が横2列で構成され、各々の前記座席列がこれらの間とこれらを挟む両サイドに前記通路をそれぞれ有し、前記横方向の一方が相手側の前記座席列を向く方向とされる座席構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の座席構造であって、
前記前向き座席と前記後向き座席とが、前記進行方向に交互に並ぶ配置とされる座席構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席構造に関する。詳しくは、乗物の進行方向に並ぶ座席列を備える座席構造に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の客室用座席が斜め配置とされた構成が開示されている(特許文献1)。上記斜め配置により、機内の限られたスペースに多くの座席を配置しつつ、各座席のパーソナルスペースを適切に確保できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-519630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、2列の座席列の各座席が、それぞれ進行方向に真っ直ぐ並んで、互いの間を仕切るパーティションの側に斜めを向いて配置されている。そのため、前後の座席の間に形成される横の通路から出入りするための間口が狭められやすく、前後の座席の間を適切に詰めることができない。そこで、本発明は、個々の座席のパーソナルスペースを適切に確保しつつ、個々の座席の間を適切に詰めて配置することが可能な座席構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の座席構造は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の座席構造は、乗物の進行方向に並ぶ座席列を備える座席構造である。座席列が、その両サイドに進行方向に延びる通路をそれぞれ有すると共に、進行方向に対して横方向の一方に斜めを向いて配置される前向き座席と、進行方向に対して横方向の一方に斜めに背を向けて配置される後向き座席と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、進行方向に並ぶ前向き座席と後向き座席とが互いに相反する横方向を向くように斜めに配置される構成となる。それにより、前向き座席と後向き座席とが、双方の着座者が互いに視界に入りにくい配置となると共に、各々の通路に対する間口が狭められにくい構成となる。したがって、個々の座席のパーソナルスペースを適切に確保しつつ、個々の座席の間を適切に詰めて配置することが可能となる。
【0008】
また、本発明の座席構造は、更に次のように構成されていても良い。座席列が、乗物の両側壁に沿って並ぶ進行方向を向く両壁側座席群の間の設置スペースに設けられる。
【0009】
上記構成によれば、乗物の両壁側に沿って壁側座席群が並ぶ幅狭な設置スペース内に、個々の座席のパーソナルスペースを適切に確保しつつ、個々の座席の間を適切に詰めて配置できるように座席列を設けることができる。また、座席列と両壁側座席群との間で使用感に違いを出して、使用者に特別感のある演出をすることができる。
【0010】
また、本発明の座席構造は、更に次のように構成されていても良い。座席列が横2列で構成され、各々の座席列がこれらの間とこれらを挟む両サイドに通路をそれぞれ有し、横方向の一方が相手側の座席列を向く方向とされる。
【0011】
上記構成によれば、乗物の進行方向を向く乗り心地の良い前向き座席の間の通路を、前向き座席の使用者の専用通路として、使用者に特別感のある演出をすることができる。
【0012】
また、本発明の座席構造は、更に次のように構成されていても良い。前向き座席と後向き座席とが、進行方向に交互に並ぶ配置とされる。
【0013】
上記構成によれば、個々の座席のパーソナルスペースをより適切に確保しつつ、個々の座席の間をより適切に詰めて配置することが可能となる。
【0014】
また、本発明の座席構造は、更に次のように構成されていても良い。座席構造が、更に、進行方向に隣り合わせる前向き座席と後向き座席との間に設けられて、双方の着座者の隣り合わせる側の側方視界をそれぞれひと続き状に遮るパーティションを有する。
【0015】
上記構成によれば、進行方向に隣り合わせる前向き座席と後向き座席との個々のパーソナルスペースをより適切に、かつ、見栄え良く確保することができる。
【0016】
また、本発明の座席構造は、更に次のように構成されていても良い。パーティションが、前向き座席及び後向き座席のうちの一方の座席の側方視界を遮るサイド被覆部に、高さ方向の中間部から上側の領域を下側の領域に対して一方の座席から遠ざけるように断面クランク状に凹む凹部を有する。凹部のクランクにより、一方の座席側の凹部が上段側スペースとして形成され、他方の座席側の凹部の出っ張りの直下に凹状の下段側スペースが形成される。
【0017】
上記構成によれば、進行方向に隣り合わせる前向き座席と後向き座席との配置関係を利用して、一方の座席の真横に上段側スペースを形成し、他方の座席の足元に下段側スペースを合理的に形成することができる。
【0018】
また、本発明の座席構造は、更に次のように構成されていても良い。一方の座席が、他方の座席よりも高い位置に設置される。
【0019】
上記構成によれば、一方の座席の座席下に下段側スペースから更に凹み空間を拡張することが可能な荷室スペースを広く確保することができる。また、一方の座席と他方の座席とで高さを異ならせることで、使用感に違いを出して、使用者に特別感のある演出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る座席構造の概略構成を表す斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3図2のIII部拡大図である。
図4図3のIV矢視図である。
図5】前側座席を拡大して表す図3のV矢視図である。
図6】後側座席を拡大して表す図3のVI矢視図である。
図7図3のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
《第1の実施形態》
(座席構造1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る座席構造1の構成について、図1図7を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に符号がない場合には、図1図7のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0023】
図1図2に示すように、本実施形態に係る座席構造1は、航空機の客室に適用されている。ここで、各図における前方向は、航空機の進行方向を表している。上記航空機の客室内には、その両壁側に沿って、それぞれ横2列で前後方向に複数の座席が並ぶ壁側座席群1Wが設けられている。
【0024】
両壁側座席群1Wの各座席は、いわゆるエコノミークラスの座席として構成され、航空機の進行方向である前方向を向いて左右の座席同士が隣接するように配置された構成とされる。両壁側座席群1Wの各座席は、各々の前後のシートピッチが80cm前後に設定されている。
【0025】
また、上記客室内の両壁側座席群1Wの間の中央スペースには、本実施形態に係る座席構造1を成す横2列の座席列1L,1Rが設けられている。これら座席列1L,1Rは、それぞれ、前後左右にゆとりのある広い居住スペースで前後方向に複数の座席が並ぶ構成とされる。これら座席列1L,1Rの各座席は、両壁側座席群1Wの各座席よりも広いシートピッチとシート幅とを備え、かつ、各々の間がパーティションPで仕切られた快適性の高い仕様とされる。
【0026】
具体的には、各座席列1L,1Rは、互いの間に前後方向に貫いて延びる通路A1を備える。また、各座席列1L,1Rは、これらを挟む左右両サイドにも前後方向に貫いて延びる通路A2を備える。これら両サイドの通路A2は、両壁側座席群1Wの各座席の使用者にも使用される共用通路となっている。中央の通路A1は、両サイドの通路A2よりも嵩上げされた構成とされている。
【0027】
各座席列1L,1Rは、それぞれ、前斜めを向いて配置される複数の前向き座席Fと、後斜めを向いて配置される複数の後向き座席Rと、から成る。各座席列1L,1Rは、上記前向き座席Fと後向き座席Rとが前後方向に交互に並ぶ配置とされる。
【0028】
各座席列1L,1Rにおける前向き座席Fと後向き座席Rとは、互いに相反する方向を向くように平行に配置されている。各座席列1L,1Rは、互いの前向き座席F同士が横並びの関係とならないよう、各々の前向き座席Fが前後方向にずれた配置関係となるように設けられている。
【0029】
具体的には、左側の座席列1Lは、先頭に前向き座席Fが配置され、そこから後向き座席Rと前向き座席Fとが交互に並ぶように配置されている。上記左側の座席列1Lにおける各前向き座席Fは、右斜め前向き、すなわち、進行方向である前方向に対して右側の座席列1Rのある右方向に斜めを向いて配置される。各前向き座席Fは、互いに平行向きとなって前後方向に真っ直ぐ並ぶように配置されている。各前向き座席Fは、嵩上げされた中央の通路A1と面一状を成す嵩上げされたフロア上に設置されている。
【0030】
左側の座席列1Lにおける各後向き座席Rは、左斜め後向き、すなわち、航空機の後退方向である後方向に対して右側の座席列1Rに背を向けるよう左方向に斜めを向いて配置される。各後向き座席Rは、互いに平行向きとなって前後方向に真っ直ぐ並ぶように配置されている。各後向き座席Rは、左側の通路A2と面一状を成す一般フロア上に設置されている。なお、左側の壁側座席群1Wの各座席も、左側の通路A2と面一状を成す一般フロア上に設置されている。
【0031】
右側の座席列1Rは、先頭に後向き座席Rが配置され、そこから前向き座席Fと後向き座席Rとが交互に並ぶように配置されている。右側の座席列1Rにおける各前向き座席Fは、左斜め前向き、すなわち、進行方向である前方向に対して左側の座席列1Lのある左方向に斜めを向いて配置される。各前向き座席Fは、互いに平行向きとなって前後方向に真っ直ぐ並ぶように配置されている。各前向き座席Fは、嵩上げされた中央の通路A1と面一状を成す嵩上げされたフロア上に設置されている。
【0032】
右側の座席列1Rにおける各後向き座席Rは、右斜め後向き、すなわち、航空機の後退方向である後方向に対して左側の座席列1Lに背を向けるよう右方向に斜めを向いて配置される。各後向き座席Rは、互いに平行向きとなって前後方向に真っ直ぐ並ぶように配置されている。各後向き座席Rは、右側の通路A2と面一状を成す一般フロア上に設置されている。なお、右側の壁側座席群1Wの各座席も、右側の通路A2と面一状を成す一般フロア上に設置されている。
【0033】
各座席列1L,1Rは、このような配置となっていることで、各々の前向き座席Fと後向き座席Rとがそれぞれ斜めの方向を向いて前後に並ぶ関係となっていても、各々の面する通路A1,A2に対する間口が狭められにくい構成となっている。そのようなことから、各座席列1L,1Rは、各々の前向き座席Fと後向き座席Rとが前後方向に交互に並ぶように詰めて配置されていても、各々の通路A1,A2に対する間口の広さを適切に確保することができる構成とされる。
【0034】
また、各座席列1L,1Rは、各々の前向き座席Fと後向き座席Rとが互いに相反する横方向を向くように斜めに配置されていると共に、互いの間がパーティションPにより間仕切りされた構成となっている。このような構成となっていることで、各座席列1L,1Rは、各々の前向き座席F及び後向き座席Rの双方の着座者が互いに視界に入りにくく、個々のパーソナルスペースを適切に確保することのできる構成となっている。
【0035】
(座席構造1の各部の具体的な構成について)
以下、各座席列1L,1Rの各部の具体的な構成について詳しく説明する。なお、各座席列1L,1Rは、各々の前向き座席F同士及び後向き座席R同士が、互いに左右対称向きとなる実質的に同一の構成となっている。また、パーティションPによる間仕切り等の居住スペースに纏わる周囲の構成も同様となっている。
【0036】
したがって、以下では、前向き座席F、後向き座席R及びこれらの居住スペースに纏わる周囲の構成については、図2のIII部に示す右側の座席列1Rの一部の構成を用いて代表して説明することとする。なお、図3以降の各図には、右側の座席列1Rの符号の後ろに、対応する左側の座席列1Lの符号を括弧書きで付している。
【0037】
図3図4に示すように、前向き座席Fは、嵩上げされた中央の通路A1に面するように、斜め前方向を向いて配置されている。後向き座席Rは、サイドの通路A2に面するように、斜め後ろを向いて配置されている。前向き座席Fと後向き座席Rとの間には、これらの間を仕切るパーティションPが立設されている。
【0038】
パーティションPは、前後方向に交互に並ぶ前向き座席Fと後向き座席Rとの間を連続する壁形状により個々に仕切る構成とされる。なお、パーティションPの具体的な構成については、後に詳述する。
【0039】
図3及び図5に示すように、前向き座席Fは、その中央の通路A1に面する前方視界(進行方向の視界)は開放されているものの、その前後の後向き座席Rと隣り合わせる各側の側方視界と背後の視界(後退方向の視界)とがそれぞれパーティションPによりひと続き状に遮られた構成とされる。それにより、前向き座席Fは、その着座者が他の前向き座席Fの着座者や後向き座席Rの着座者、それにサイドの通路A2を通る使用者との間で、互いが視界に入りにくい配置とされている。
【0040】
図3及び図6に示すように、後向き座席Rは、そのサイドの通路A2に面する背後の視界(後退方向の視界)は開放されているものの、その前後の前向き座席Fと隣り合わせる各側の側方視界と背後の視界(進行方向の視界)とがそれぞれパーティションPによりひと続き状に遮られた構成とされる。それにより、後向き座席Rは、その着座者が他の後向き座席Rの着座者や前向き座席Fの着座者、それに中央の通路A1を通る使用者との間で、互いが視界に入りにくい配置とされている。
【0041】
前向き座席Fは、図5に示すように、中央の通路A1と面一状を成す嵩上げされたフロア上に設置され、図6に示すサイドの通路A2と面一状の一般フロア上に設置される後向き座席Rよりも高い位置に設置されている。それにより、前向き座席Fに設定される着座者のヒップポイントHP1が、後向き座席Rに設定される着座者のヒップポイントHP2よりも高い位置に設定されている(図4及び図7参照)。ここで、前向き座席Fが、本発明の「一方の座席」に相当する。また、後向き座席Rが、本発明の「他方の座席」に相当する。
【0042】
(パーティションPの構成について)
図3に示すように、パーティションPは、複数枚の立板状のパネル部材がひと続き状に配置された構成から成る。具体的には、上記パーティションPを構成する個々のパネル部材は、それぞれ、後席背後被覆部P1と、折曲り部P2と、前席背後被覆部P3と、前席サイド被覆部P4と、後席サイド被覆部P5と、前席キャビネット被覆部P6と、前席側凹部P7と、後席側凹部P8と、斜面部P9と、を有する折れ曲がったパネル形状とされる。
【0043】
後席背後被覆部P1は、前向き座席Fの後側に並ぶ後向き座席Rを背後側から対面状に被覆する部分とされる。折曲り部P2は、上記後席背後被覆部P1の前端から斜め後方に直角に折れ曲がって、後向き座席Rの側面に沿って立板状に延びる部分とされる。前席背後被覆部P3は、上記折曲り部P2の後方へ延びた先の端部から斜め前方に直角に折れ曲がって、前向き座席Fを背後側から対面状に被覆する部分とされる。
【0044】
前席サイド被覆部P4は、上記前席背後被覆部P3の前方へ延びた先の端部から斜め前方に直角に折れ曲がって、前向き座席Fの側面に沿って立板状に延びる部分とされる。後席サイド被覆部P5は、上記前席サイド被覆部P4から更に同一方向に延びて、上記前向き座席Fの前側に並ぶ後向き座席Rの側面に沿って立板状に延びる部分とされる。前席キャビネット被覆部P6は、後席サイド被覆部P5の前方へ延びた先の端部から前方に折れ曲がって、中央の通路A1の側縁に沿って前方へと真っ直ぐ延びる立板状の部分とされる。
【0045】
前席側凹部P7は、図3図5及び図7に示すように、前席サイド被覆部P4の高さ方向の中間部から上側の領域に形成された凹部とされる。具体的には、前席側凹部P7は、前席サイド被覆部P4の高さ方向の中間部から上側の領域を、下側の領域に対して、隣接する前向き座席Fから遠ざける方向(板厚方向:斜め前方)に断面クランク状に凹ませた凹部として形成されている。上記前席側凹部P7により、前向き座席Fの前席サイド被覆部P4と隣り合う側の側部には、着座者が小物置きやテーブル面として利用可能な上段側スペースとしてのニッチF8が形成されている。
【0046】
ここで、ニッチF8が、本発明の「上段側スペース」に相当する。また、前席サイド被覆部P4が、本発明の「サイド被覆部」に相当する。また、前席側凹部P7が、本発明の「凹部」に相当する。
【0047】
また、図3図6及び図7に示すように、上記前席側凹部P7の出っ張りにより、後向き座席R側の上記出っ張りの直下には、後向き座席Rの着座者が足入れスペースや荷物置きとして利用可能な凹状の下段側スペースR10が形成されている。上記前席側凹部P7は、後向き座席Rの正面に張り出す位置まで凹んだ形状とされる。
【0048】
後席側凹部P8は、図3図6及び図7に示すように、後席サイド被覆部P5の高さ方向の中間部から上側の領域に形成された凹部とされる。具体的には、後席側凹部P8は、後席サイド被覆部P5の高さ方向の中間部から上側の領域を、下側の領域に対して、隣接する後向き座席Rから遠ざける方向(板厚方向:斜め後方)に断面クランク状に凹ませた凹部として形成されている。上記後席側凹部P8により、後向き座席Rの後席サイド被覆部P5と隣り合う側の側部には、着座者が小物置きやテーブル面として利用可能な上段側スペースとしてのニッチR8が形成されている。
【0049】
また、図3図5及び図7に示すように、上記後席側凹部P8の出っ張りにより、前向き座席F側の上記出っ張りの直下には、前向き座席Fの着座者が足入れスペースや荷物置きとして利用可能な凹状の下段側スペースF10が形成されている。上記後席側凹部P8は、前向き座席Fの正面に張り出す位置まで凹んだ形状とされる。
【0050】
斜面部P9は、図3図5図7に示すように、上記前席側凹部P7と後席側凹部P8との間を繋ぐパネル部分が、前向き座席Fの着座者と後向き座席Rの着座者とにそれぞれ斜めに面を向けるように形成された部分とされる。詳しくは、斜面部P9は、前向き座席Fの正面に張り出す後席側凹部P8の後面部分と、後向き座席Rの正面に張り出す前席側凹部P7の前面部分と、をそれぞれ上記形状に一続き状に傾斜させる形状とされる。
【0051】
(前向き座席Fの構成について)
図5に示すように、前向き座席Fは、着座者の背凭れ部となるシートバックF1と、着座部となるシートクッションF2と、下腿部を乗せるオットマンF3と、を有する。シートバックF1は、その上部領域に頭凭れ部となるヘッドレストF1aが形成された、いわゆるハイバックタイプの構成とされる。
【0052】
シートバックF1は、その左右両サイドの下端部が、不図示のリクライナを介してシートクッションF2の左右両サイドの後端部に連結されている。それにより、シートバックF1は、シートクッションF2に対する背凭れ角度(傾斜角度)を前後方向に自由に調節することができる構成とされる。シートクッションF2は、フロア上に固定されている。
【0053】
前述したパーティションPの前席背後被覆部P3は、シートバックF1から背後側に離間した位置に配設されている。それにより、前席背後被覆部P3は、シートバックF1が通常の起立姿勢から背後に所定角度まで倒されても、シートバックF1と干渉しないようになっている。また、前席背後被覆部P3は、シートバックF1が背後側に倒されて近付けられても、その直下には、シートクッションF2との間に広い隙間が形成される構成とされる。
【0054】
オットマンF3は、シートクッションF2の前部に不図示の展開格納機構を介して連結されている。それにより、オットマンF3は、シートクッションF2の前部に垂下状に折り畳まれた格納状態と、シートクッションF2の前部から前方向に起こし上げられるように迫り出された展開状態と、の間の任意の角度に調節することができるようになっている。上記オットマンF3の展開格納操作及びシートバックF1の背凭れ角度の調節操作は、前向き座席Fの側部に設けられた不図示のスイッチの操作による電動操作によって行えるようになっている。
【0055】
上記前向き座席Fは、更に、その側部の前席サイド被覆部P4に取り付けられた壁付アームレストF4と、その反対側の側部に立設された立板状の立形アームレストF5と、を有する。立形アームレストF5は、フロア上に立設され、不図示の高さ調節機構によりその肘置き面となる天板面の高さ位置を調節することができる構成とされる。それにより、立形アームレストF5は、その天板面の高さをシートクッションF2の着座面より低い位置へと下げたり壁付アームレストF4と略同一の高さ位置へと引き上げたりする任意の高さ位置への調節を行えるようになっている。
【0056】
また、前向き座席Fは、立形アームレストF5から着座者の正面位置に引き出して使用することが可能なテーブルF6を有する。上記テーブルF6は、その不使用時には、立形アームレストF5の内部に上方から落とし込まれて格納される。また、テーブルF6は、その使用時には、上記立形アームレストF5の内部から上方に引き出されて水平状に倒されることで、着座者の正面に水平状の天板面を成す使用状態へと展開される。
【0057】
また、前向き座席Fは、パーティションPの斜面部P9に取り付けられたモニタF7と、前述した前席側凹部P7により形成された上段側スペースとしてのニッチF8と、を有する。モニタF7は、不図示の制御装置から出力される静止画や動画の各種映像信号を表示する機器とされる。モニタF7には、テレビ画面の他、機内で提供されるドリンクのオーダー画面や機外のカメラで撮影した機外の映像等の様々な映像が表示されるようになっている。
【0058】
上記モニタF7は、斜面部P9に対して不図示の展開格納機構を介して連結されている。それにより、モニタF7は、斜面部P9に重ね合わされる形に格納された状態と、斜面部P9から前向き座席Fの着座者の正面に真っ直ぐ対面する形に引き出された状態と、に切り換えられるようになっている。上記モニタF7の展開格納の切替操作は、前向き座席Fの側部に設けられた不図示のスイッチの操作による電動操作によって行えるようになっている。
【0059】
具体的には、上記モニタF7は、上記展開格納機構の動作により、斜面部P9と重なる格納位置から斜面部P9に沿って前方(着座者から遠ざかる方)にスライドした後、着座者に近い側の縁部に設けられたヒンジを中心に着座者の正面に真っ直ぐ対面する形に引き出されるようになっている。上記モニタF7が着座者の正面に対面するように引き出されることで、モニタF7が着座者の目隠しとなって、中央の通路A1を通る使用者と着座者との目線が合いにくくなるようにすることができる。また、モニタF7が斜面部P9に折り畳まれることで、モニタF7が着座者の視界を遮りにくくなるため、着座者が開放感のある視界でモニタF7を視聴することができる。
【0060】
また、前向き座席Fは、立形アームレストF5の側部に隣接して設けられるキャビネットF9と、前述した後席側凹部P8の出っ張りにより後席側凹部P8の直下に形成される下段側スペースF10と、を有する。キャビネットF9は、前述したパーティションPの後席背後被覆部P1と前席キャビネット被覆部P6とによって囲われた領域内にピッタリと収まるように配置される平面視台形状に形成されている。
【0061】
上記キャビネットF9は、後席背後被覆部P1を仕切りとして後向き座席Rの背後に配置される。また、キャビネットF9は、前席キャビネット被覆部P6による仕切りにより、中央の通路A1を通る使用者から視界に入りにくい配置とされている。上記キャビネットF9の中央の通路A1に面する斜め前面部には、開閉可能な収納扉F9aが設けられている。
【0062】
上記キャビネットF9は、壁付アームレストF4の天板面と同程度の高い位置に天板面を有する背高な収納棚として構成される。上記キャビネットF9は、上記収納扉F9aを開けることで、内部に買い物袋等の縦長な荷物を収納することが可能な収納スペースを備える。また、キャビネットF9は、その天板面を着座者が小物置きやテーブル面として利用することが可能な構成とされる。
【0063】
(後向き座席Rの構成について)
図6に示すように、後向き座席Rは、着座者の背凭れ部となるシートバックR1と、着座部となるシートクッションR2と、足載せ部となるフットレストR3と、を有する。シートバックR1は、その上部領域に頭凭れ部となるヘッドレストR1aが形成された、いわゆるハイバックタイプの構成とされる。
【0064】
シートバックR1は、その左右両サイドの下端部が、不図示のリクライナを介してシートクッションR2の左右両サイドの後端部に連結されている。それにより、シートバックR1は、シートクッションR2に対する背凭れ角度(傾斜角度)を前後方向に自由に調節することができる構成とされる。シートクッションR2は、フロア上に固定されている。
【0065】
前述したパーティションPの後席背後被覆部P1は、シートバックR1から背後側に離間した位置に配設されている。それにより、後席背後被覆部P1は、シートバックR1が通常の起立姿勢から背後に所定角度まで倒されても、シートバックR1と干渉しないようになっている。また、後席背後被覆部P1は、シートバックR1が背後側に倒されて近付けられても、その直下には、シートクッションR2との間に広い隙間が形成される構成とされる。
【0066】
フットレストR3は、パーティションPの前席サイド被覆部P4の下部、詳しくは前席側凹部P7の出っ張りの直下に形成される下段側スペースR10の側部に設けられている。上記フットレストR3は、不図示のプッシュラッチ機構を介して前席サイド被覆部P4の下部に組み付けられている。それにより、フットレストR3は、前席サイド被覆部P4の下部内に面一状に収められた状態と、前席サイド被覆部P4の下部から着座者の足元へと角棒状に延び出して着座者の足載せとして使用することのできる状態と、に切り替えられる構成とされる。
【0067】
具体的には、フットレストR3は、上記収納状態から着座者がフットレストR3の露出面を奥に押し込むように操作することで、収納位置でのロックが解除されて、バネ力により着座者の足元へと真っ直ぐ延び出すように引き出される構成とされる。また、フットレストR3は、上記引き出された状態から、着座者がフットレストR3を足で元の位置へと押し込むように操作することで、再び、収納位置にてバネ力により飛び出さないようにロックされるようになっている。
【0068】
上記後向き座席Rは、更に、その側部の後席サイド被覆部P5に取り付けられた壁付アームレストR4と、その反対側の側部に立設された立板状の立形アームレストR5と、を有する。立形アームレストR5は、フロア上に立設され、不図示の高さ調節機構によりその肘置き面となる天板面の高さ位置を調節することができる構成とされる。それにより、立形アームレストR5は、その天板面の高さをシートクッションR2の着座面より低い位置へと下げたり壁付アームレストR4と略同一の高さ位置へと引き上げたりする任意の高さ位置への調節を行えるようになっている。
【0069】
また、後向き座席Rは、立形アームレストR5から着座者の正面位置に引き出して使用することが可能なテーブルR6を有する。上記テーブルR6は、その不使用時には、立形アームレストR5の内部に上方から落とし込まれて格納される。また、テーブルR6は、その使用時には、上記立形アームレストR5の内部から上方に引き出されて水平状に倒されることで、着座者の正面に水平状の天板面を成す使用状態へと展開される。
【0070】
また、後向き座席Rは、パーティションPの斜面部P9に取り付けられたモニタR7と、前述した後席側凹部P8により形成された上段側スペースとしてのニッチR8と、を有する。モニタR7は、不図示の制御装置から出力される静止画や動画の各種映像信号を表示する機器とされる。モニタR7には、テレビ画面の他、機内で提供されるドリンクのオーダー画面や機外のカメラで撮影した機外の映像等の様々な映像が表示されるようになっている。
【0071】
上記モニタR7は、斜面部P9に対して不図示の展開格納機構を介して連結されている。それにより、モニタR7は、斜面部P9に重ね合わされる形に格納された状態と、斜面部P9から後向き座席Rの着座者の正面に真っ直ぐ対面する形に引き出された状態と、に切り換えられるようになっている。上記モニタR7の展開格納の切替操作は、後向き座席Rの側部に設けられた不図示のスイッチの操作による電動操作によって行えるようになっている。
【0072】
具体的には、上記モニタR7は、上記展開格納機構の動作により、斜面部P9と重なる格納位置から斜面部P9に沿って後方(着座者から遠ざかる方)にスライドした後、着座者に近い側の縁部に設けられたヒンジを中心に着座者の正面に真っ直ぐ対面する形に引き出されるようになっている。上記モニタR7が着座者の正面に対面するように引き出されることで、モニタR7が着座者の目隠しとなって、サイドの通路A2を通る使用者と着座者との目線が合いにくくなるようにすることができる。また、モニタR7が斜面部P9に折り畳まれることで、モニタR7が着座者の視界を遮りにくくなるため、着座者が開放感のある視界でモニタR7を視聴することができる。
【0073】
また、後向き座席Rは、立形アームレストR5の側部に隣接して設けられるキャビネットR9と、前述した前席側凹部P7の出っ張りの直下に形成される下段側スペースR10と、を有する。キャビネットR9は、立形アームレストR5の側部と、前述したパーティションPの前席背後被覆部P3と、の内角部にピッタリと収まるように配置される平面視三角形状に形成されている。
【0074】
上記キャビネットR9は、前席背後被覆部P3を仕切りとして前向き座席Fの背後に配置される。上記キャビネットR9は、サイドの通路A2には仕切られることなく露出して設けられる。上記キャビネットR9のサイドの通路A2に面する側面部には、開閉可能な収納扉R9aが設けられている。
【0075】
上記キャビネットR9は、立形アームレストR5を最も低く下げた時の天板面よりも僅かに低い位置に天板面を有する背低な収納棚として構成される。上記キャビネットR9は、上記収納扉R9aを開けることで、内部にハンドバック程度の大きさの荷物を収納することが可能な収納スペースを備える。また、キャビネットR9は、その天板面を着座者が小物置きやテーブル面として利用することができるようになっている。
【0076】
下段側スペースR10を構成する前席側凹部P7の出っ張りの直下の前席サイド被覆部P4には、開閉可能な収納扉R10aが設けられている。上記下段側スペースR10は、図7に示すように、その収納扉R10aの奥側のスペースが、中央の通路A1と面一状の嵩上げされたフロア上に設置される前向き座席Fの下部スペースとなっている。詳しくは、上記下段側スペースR10の収納扉R10aの奥側のスペースは、前向き座席FのシートバックF1が背後側に倒された時のシートバックF1の直下に位置するスペースとなっている。
【0077】
そのようなことから、上記収納扉R10aの奥側のスペースは、前向き座席Fの設置スペースを侵食することなく広く確保された構成とされる。具体的には、上記収納スペースは、収納扉R10aを空けることで、内部に小型なスーツケースを横に立てた向きで真っ直ぐ収納することができる程度の大きさに形成されている。
【0078】
また、図6に示すように、後向き座席Rは、着座者の側方視界を遮る可動式のサイドシェードR11を更に有する。サイドシェードR11は、パーティションPの折曲り部P2の後方へ延びた先の端部から斜め後方に立板状に張り出して、着座者の側方視界を遮るようになっている。サイドシェードR11は、上記張出状態から、着座者により背後へと押し込まれることで、折曲り部P2内に押し込まれて格納される。また、サイドシェードR11は、上記格納状態から着座者により引き出されることで、先の張出状態へと展開される。なお、サイドシェードR11は、後向き座席Rの側部に設けられた不図示のスイッチの操作による電動操作によって行えるようになっているものであっても良い。
【0079】
以上が、前向き座席F及び後向き座席Rの構造となっている。このように構成された座席構造1は、図1図2に示すように、各座席列1L,1Rが、両サイドの壁側座席群1Wとは異なり、シートピッチやシート幅が広く、かつ、パーティションPで仕切られた快適性の高い仕様とされている。そのため、各座席列1L,1Rの使用者に対し、上記使用感が異なることによる特別感を演出することができる。
【0080】
また、各座席列1L,1Rの中でも、中央の通路A1の側を向いて配置される各前向き座席Fは、航空機の進行方向を向き、かつ、パーティションPにより各壁側座席群1Wとの間が空間的に仕切られた、より特別感の感じられる構成とされている。そのようなことから、各前向き座席Fは、各後向き座席Rよりも座り心地を高められるオットマンF3や、着座姿勢から使いやすくかつ外部から見られにくいように仕切られた背高なキャビネットF9等の機能を備えた快適性の高い仕様とされており、かつ、各壁側座席群1Wよりも高い位置に設置されて、各後向き座席Rよりも更に特別感を感じられる構成とされている。
【0081】
各座席列1L,1Rの着座者に対する機内食やドリンクの配膳は、図示は省略されているが、客室乗務員やAI(人工知能)を搭載した配膳ロボットによって行われる。具体的には、両サイドの通路A2に面する各後向き座席Rや各壁側座席群1Wの着座者に対する機内食やドリンクの配膳は、客室乗務員がこれらを載せたカートを手押しで動かしながら移動する人手によるサービスによって行われる。
【0082】
一方、中央の通路A1に面する各前向き座席Fの着座者に対する機内食やドリンクの配膳は、中央の通路A1に沿って自律的に移動する配膳ロボットによって行われる。上記配膳ロボットは、各前向き座席Fの着座者より注文された機内食やドリンクがトレーに載せられた後、所定のタイミングで注文した着座者に対し、順に機内食やドリンクを配膳するように設定されている。
【0083】
このように、各前向き座席Fの着座者に対する配膳が配膳ロボットによる高度な技術で行われることによっても、各前向き座席Fの着座者に対し、各後向き座席Rや壁側座席群1Wとの間でサービスが異なることによる特別感を演出することができる。配膳を配膳ロボットによって行うことで、人と人とが直接接触しないより衛生的なサービスを提供することができる。
【0084】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係る座席構造1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0085】
すなわち、座席構造(1)は、乗物の進行方向に並ぶ座席列(1L(1R))を備える座席構造(1)である。座席列(1L(1R))が、その両サイドに進行方向に延びる通路(A1,A2)をそれぞれ有すると共に、進行方向に対して横方向の一方に斜めを向いて配置される前向き座席(F)と、進行方向に対して横方向の一方に斜めに背を向けて配置される後向き座席(R)と、を有する。
【0086】
上記構成によれば、進行方向に並ぶ前向き座席(F)と後向き座席(R)とが互いに相反する横方向を向くように斜めに配置される構成となる。それにより、前向き座席(F)と後向き座席(R)とが、双方の着座者が互いに視界に入りにくい配置となると共に、各々の通路(A1,A2)に対する間口が狭められにくい構成となる。したがって、個々の座席のパーソナルスペースを適切に確保しつつ、個々の座席の間を適切に詰めて配置することが可能となる。
【0087】
また、座席列(1L,1R)が、乗物の両側壁に沿って並ぶ進行方向を向く両壁側座席群(1W)の間の設置スペースに設けられる。上記構成によれば、乗物の両壁側に沿って壁側座席群(1W)が並ぶ幅狭な設置スペース内に、個々の座席のパーソナルスペースを適切に確保しつつ、個々の座席の間を適切に詰めて配置できるように座席列(1L,1R)を設けることができる。また、座席列(1L,1R)と両壁側座席群(1W)との間で使用感に違いを出して、使用者に特別感のある演出をすることができる。
【0088】
また、座席列(1L,1R)が横2列で構成され、各列の座席列(1L,1R)がこれらの間とこれらを挟む両サイドに通路(A1,A2)をそれぞれ有し、横方向の一方が相手側の座席列(1R,1L)を向く方向とされる。上記構成によれば、乗物の進行方向を向く乗り心地の良い前向き座席(F)の間の通路(A1)を、前向き座席(F)の使用者の専用通路として、使用者に特別感のある演出をすることができる。
【0089】
また、前向き座席(F)と後向き座席(R)とが、進行方向に交互に並ぶ配置とされる。上記構成によれば、個々の座席のパーソナルスペースをより適切に確保しつつ、個々の座席の間をより適切に詰めて配置することが可能となる。
【0090】
また、座席構造(1)が、更に、進行方向に隣り合わせる前向き座席(F)と後向き座席(R)との間に設けられて、双方の着座者の隣り合わせる側の側方視界をそれぞれひと続き状に遮るパーティション(P)を有する。上記構成によれば、進行方向に隣り合わせる前向き座席(F)と後向き座席(R)との個々のパーソナルスペースをより適切に、かつ、見栄え良く確保することができる。
【0091】
また、パーティション(P)が、前向き座席(F)及び後向き座席(R)のうちの一方の座席(F)の側方視界を遮るサイド被覆部(P4)に、高さ方向の中間部から上側の領域を下側の領域に対して一方の座席(F)から遠ざけるように断面クランク状に凹む凹部(P7)を有する。凹部(P7)のクランクにより、一方の座席(F)側の凹部(P7)が上段側スペース(F8)として形成され、他方の座席(R)側の凹部(P7)の出っ張りの直下に凹状の下段側スペース(R10)が形成される。
【0092】
上記構成によれば、進行方向に隣り合わせる前向き座席(F)と後向き座席(R)との配置関係を利用して、一方の座席(F)の真横に上段側スペース(F8)を形成し、他方の座席(R)の足元に下段側スペース(R10)を合理的に形成することができる。
【0093】
また、一方の座席(F)が、他方の座席(R)よりも高い位置に設置される。上記構成によれば、一方の座席(F)の座席下に下段側スペース(R10)から凹み空間を更に拡張することが可能な荷室スペースを広く確保することができる。また、一方の座席(F)と他方の座席(R)とで高さを異ならせることで、使用感に違いを出して、使用者に特別感のある演出をすることができる。
【0094】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0095】
1.本発明の座席構造は、航空機の他、マイクロバスや鉄道等の車両や船舶等の他の乗物にも適用することができるものである。
【0096】
2.座席列は、その両サイドに進行方向に延びる通路をそれぞれ有するものであれば良く、1列のみ、又は横3列以上から成るものであっても良い。また、座席列は、必ずしも前向き座席と後向き座席とが交互に並ぶ配置とされていなくても良く、前向き座席及び/又は後向き座席が進行方向に部分的に連続して並ぶように配置されるものであっても良い。
【0097】
また、各前向き座席は、必ずしもそれらの全てが互いに平行に配置されていなくても良く、進行方向に対して横方向の一方に斜めを向いて配置されるものの、それらの全てが互いに平行とはならないように配置されるものであっても良い。各後向き座席も同様に、必ずしもそれらの全てが互いに平行に配置されていなくても良く、進行方向に対して横方向の一方に斜めに背を向けて配置されるものの、それらの全てが互いに平行とはならないように配置されるものであっても良い。
【0098】
また、座席列が複数列で構成される場合において、各々の前向き座席と後向き座席とは、次の(ア)~(エ)のような関係となるように配置されるものであっても良い。すなわち、(ア)各々の前向き座席が互いに背中合わせとなる横方向に斜めを向くもの、(イ)各々の後向き座席が互いに向き合う横方向に斜めを向くもの、(ウ)各々の前向き座席が互いに同一の横方向(両方ともが右方向或いは左方向)に斜めを向くもの、(エ)各々の後向き座席が互いに同一の横方向(両方ともが右方向或いは左方向)に斜めを向くもの。
【0099】
また、本発明の座席構造は、乗物の両壁側に沿って並ぶ両壁側座席群の間の設置スペースに設けられるものの他、壁側座席群が片方の壁側に沿ってしか設けられない乗物や、壁側座席群が全く設けられない乗物に設けられるものであっても良い。
【0100】
5.パーティションは、前向き座席と後向き座席との間にのみ立板状に設けられて、これらの背後には設けられないものであっても良い。また、パーティションが全く設けられない構成であっても構わない。サイド被覆部は、前向き座席の他、後向き座席の側方視界を遮るもの、すなわち、上記実施形態で示した後席サイド被覆部P5であっても良い。その場合、サイド被覆部に形成される凹部は、後向き座席から遠ざけるように断面クランク状に凹むもの、すなわち、上記実施形態で示した後席側凹部P8として形成されるものとなる。
【符号の説明】
【0101】
1 座席構造
1L,1R 座席列
1W 壁側座席群
A1,A2 通路
F 前向き座席(一方の座席)
F1 シートバック
F1a ヘッドレスト
F2 シートクッション
F3 オットマン
F4 壁付アームレスト
F5 立形アームレスト
F6 テーブル
F7 モニタ
F8 ニッチ(上段側スペース)
F9 キャビネット
F9a 収納扉
F10 下段側スペース
R 後向き座席(他方の座席)
R1 シートバック
R1a ヘッドレスト
R2 シートクッション
R3 フットレスト
R4 壁付アームレスト
R5 立形アームレスト
R6 テーブル
R7 モニタ
R8 ニッチ
R9 キャビネット
R9a 収納扉
R10 下段側スペース
R10a 収納扉
R11 サイドシェード
P パーティション
P1 後席背後被覆部
P2 折曲り部
P3 前席背後被覆部
P4 前席サイド被覆部(サイド被覆部)
P5 後席サイド被覆部
P6 前席キャビネット被覆部
P7 前席側凹部(凹部)
P8 後席側凹部
P9 斜面部
HP1,HP2 ヒップポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7