(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂シート、硬化膜、硬化膜の製造方法、半導体装置、有機EL表示装置および表示装置
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20241119BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20241119BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20241119BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241119BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20241119BHJP
C08G 8/04 20060101ALI20241119BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20241119BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20241119BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20241119BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20241119BHJP
H10K 101/00 20230101ALN20241119BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08L79/04 B
C08L61/06
C08L63/00 B
C08K5/13
C08G8/04
G03F7/037 501
G03F7/023 511
H10K50/00
H10K85/10
H10K101:00
(21)【出願番号】P 2020560423
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039856
(87)【国際公開番号】W WO2021085321
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019195997
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 啓華
(72)【発明者】
【氏名】増田 有希
(72)【発明者】
【氏名】富川 真佐夫
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069091(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066395(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188153(WO,A1)
【文献】特開2010-197748(JP,A)
【文献】特開2014-227464(JP,A)
【文献】特開平08-286370(JP,A)
【文献】特開2014-211517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 4/00- 16/06
G03F 7/023
G03F 7/037
H10K 50/00- 99/00
H10K 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体、からなる群より選択される1種以上の樹脂、
(B)フェノール樹脂、
(C)熱架橋剤
を含む樹脂組成物であって、
該(B)フェノール樹脂が一般式(4)で表される構造単位を有し、前記一般式(4)で表される構造単位が、一般式(5)および一般式(6)の構造単位を有し、
前記(B)フェノール樹脂における一般式(4)で表されるすべての構造単位数を100とした場合に、一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率が、一般式(5):一般式(6)=60:40~90:10である、樹脂組成物。
【化1】
(一般式(4)中、R
25、R
27は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R
25、R
27が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。j1、j2は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。)
【化2】
(一般式(5)中、R
25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R
25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R
28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R
28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数、j3は、1~3の整数を表す。)
【化3】
(一般式(6)中、R
25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R
25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R
28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R
28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。)
ただし、j3とj4の合計は必ずj2となる。
【請求項2】
前記(C)熱架橋剤が、置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤および/または一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化4】
(一般式(14)中、R
42は炭素数1以上15以下のアルキレン基またはアルキレンエーテル基を有する2価の有機基、R
43およびR
44は、各々独立に、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項3】
(C)熱架橋剤全体を100質量%とした場合に、置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤および一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤の含有比率が15質量%以上80質量%以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤が、一般式(12)または一般式(13)の構造を含有する、請求項2または3に記載の樹脂組成物。
【化5】
(一般式(12)中、R
29およびR
30は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R
29、R
30が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
31、R
32は、熱架橋基を表す。m1、m2は、それぞれ独立に0~4の整数、m3、m4は、それぞれ独立に1~3の整数を表し、1≦m1+m3≦5、1≦m2+m4≦5を満たす。)
【化6】
(一般式(13)中、R
33、R
34、R
35およびR
36は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R
33、R
34、R
35およびR
36が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
37、R
38、R
39およびR
40は、熱架橋基を表す。R
41は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。n1、n4、n5、n8は、それぞれ独立に1~3の整数、n2、n3、n6、n7は、それぞれ独立に0~4の整数、n9は、繰り返し単位を示し、1~10の整数、n10は、0または1の整数を表す。)
ただし、n1+n5≦5、n2+n6≦4、n3+n7≦4、n4+n8≦4とする。
【請求項5】
前記(C)熱架橋剤が、前記置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤を含有し、該置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤の含有量が、前記(B)フェノール樹脂100質量部に対して30質量部以上150質量部以下である、請求項2~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(D)感光性化合物を含有する請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて基材に形成した樹脂シート。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物、または、請求項7に記載の樹脂シート、を硬化した硬化膜。
【請求項9】
前記硬化膜が開口パターンを有し、該開口パターン断面における傾斜辺の角度が40°以上80°以下である、請求項8に記載の硬化膜。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物を基板に塗布し、または、請求項7に記載の樹脂シートを基板にラミネートし、その後、
乾燥して樹脂膜を形成する工程、乾燥した樹脂膜を露光する露光工程、露光された樹脂膜を現像する現像工程、および、現像された樹脂膜を加熱処理する加熱処理工程、を含む硬化膜の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の硬化膜を有する半導体装置。
【請求項12】
少なくとも、TFT基板、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層、第二電極を有する有機EL表示装置であって、該平坦化層または該絶縁層が、請求項8に記載の硬化膜を含む有機EL表示装置。
【請求項13】
少なくとも金属配線、請求項8に記載の硬化膜、および、複数の発光素子を有する表示装置であって、前記発光素子はいずれか一方の面に一対の電極端子を具備し、前記一対の電極端子は前記硬化膜中に延在する複数本の前記金属配線と接続し、複数本の前記金属配線は、前記硬化膜により電気的絶縁性を保持する構成である、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機発光素子などの表示装置の絶縁層や薄膜トランジスタ(以下、TFTと呼称する場合がある。)基板の平坦化膜に使用される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機発光素子などの表示装置の絶縁層や薄膜トランジスタ(以下、TFTと呼称する場合がある。)基板の平坦化膜には、耐熱性や電気絶縁性、機械特性等に優れたポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂が広く使用されている。
【0003】
近年、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂においては上記の特性の他、生産性を向上させるため、露光光源として用いられるg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)などに対して高感度化が求められている。
【0004】
これまでに、高感度化の手法として、例えばポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、ノボラック樹脂および/またはポリヒドロキシスチレン樹脂を101質量部以上含有したもの(特許文献1参照)、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体に対して特定の構造のフェノール樹脂を含有したもの(特許文献2,3参照)などが挙げられる。
【0005】
また、高感度化とともに半導体製造工程において要求される耐熱性を満たすため、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリイミド、及びポリイミド前駆体に対して特定の構造のフェノール樹脂を含有したもの(特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-352004号公報
【文献】特開2018-22171号公報
【文献】特開2018-55124号公報
【文献】国際公開第2014/069091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の文献に記載の組成物では、露光波長に対する感度は向上するものの、低温での硬化後のパターン形状や配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性、恒温恒湿試験(HAST)に対する耐性の点で課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。
[1](A)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体、からなる群より選択される1種以上の樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)熱架橋剤を含む樹脂組成物であって、該(B)フェノール樹脂が一般式(4)で表される構造単位を有し、前記一般式(4)で表される構造単位が、一般式(5)および一般式(6)の構造単位を有し、前記(B)フェノール樹脂における一般式(4)で表されるすべての構造単位数を100とした場合に、一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率が、一般式(5):一般式(6)=60:40~90:10である、樹脂組成物。
【0009】
【0010】
一般式(4)中、R25、R27は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25、R27が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。j1、j2は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。
【0011】
【0012】
一般式(5)中、R25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数、j3は、1~3の整数を表す。
【0013】
【0014】
一般式(6)中、R25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。
[2]上記の樹脂組成物を用いて基材に形成した樹脂シート。
[3]上記の樹脂組成物、または、上記の樹脂シート、を硬化した硬化膜。
[4]上記の樹脂組成物を基板に塗布し、または、上記の樹脂シートを基板にラミネートし、その後、乾燥して樹脂膜を形成する工程、乾燥した樹脂膜を露光する露光工程、露光された樹脂膜を現像する現像工程、および現像された樹脂膜を加熱処理する加熱処理工程を含む硬化膜の製造方法。
[5]上記の硬化膜を有する半導体装置。
[6]少なくとも、TFT基板、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層、第二電極を有する有機EL表示装置であって、該平坦化層または該絶縁層が、上記の硬化膜を含む有機EL表示装置。
[7]少なくとも、金属配線、上記の硬化膜、および、複数の発光素子を有する表示装置であって、前記発光素子はいずれか一方の面に一対の電極端子を具備し、前記一対の電極端子は前記硬化膜中に延在する複数本の前記金属配線と接続し、複数本の前記金属配線は、前記硬化膜により電気的絶縁性を保持する構成である、表示装置。
である表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、低温加熱処理であっても配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性、恒温恒湿試験(HAST)に対する耐性を有し、また感光性を有する場合は、加熱処理後の硬化膜のパターン形状に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の表示装置の一態様を示す正面断面図である。
【
図2】隔壁を設けた形態の本発明の表示装置の一態様を示す正面断面図である。
【
図4】本発明の表示装置の別の一態様を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体、からなる群より選択される1種以上の樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)熱架橋剤を含む樹脂組成物であって、該(B)フェノール樹脂が一般式(4)で表される構造単位を有し、前記一般式(4)で表される構造単位が、一般式(5)および一般式(6)の構造単位を有し、前記(B)フェノール樹脂における一般式(4)で表されるすべての構造単位数を100とした場合に、一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率が、一般式(5):一般式(6)=60:40~90:10である、樹脂組成物である。
【0018】
【0019】
一般式(4)中、R25、R27は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25、R27が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。j1、j2は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。
【0020】
【0021】
一般式(5)中、R25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数、j3は、1~3の整数を表す。
【0022】
【0023】
一般式(6)中、R25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。
【0024】
本発明の樹脂組成物が含有する(A)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂について説明する。
【0025】
<(A)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂>
(A)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、および、それらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂は以下、(A)成分と呼称する場合がある。
【0026】
ポリイミドは、イミド環を有するものであれば、特に限定されない。またポリイミド前駆体は、脱水閉環することによりイミド環を有するポリイミドとなる構造を有していれば、特に限定されず、ポリアミド酸やポリアミド酸エステルなどを含有することができる。ポリベンゾオキサゾールは、オキサゾール環を有するものであれば、特に限定されない。ポリベンゾオキサゾール前駆体は、脱水閉環することによりベンゾオキサゾール環を有するポリベンゾオキサゾールとなる構造を有していれば、特に限定されず、ポリヒドロキシアミドなどを含有することができる。
【0027】
ポリイミドは一般式(1)で表される構造単位を有し、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は下記一般式(2)で表される構造単位を有し、ポリベンゾオキサゾールは一般式(15)で表される構造単位を有する。これらを2種以上含有してもよいし、一般式(1)で表される構造単位、一般式(2)で表される構造単位、一般式(15)で表される構造単位を共重合した樹脂を含有してもよい。
【0028】
【0029】
一般式(1)中、Vは炭素数4~40の4~10価の有機基、Wは炭素数4~40の2~8価の有機基を表す。aおよびbは、それぞれ0~6の整数を表す。R1およびR2は水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を表し、複数のR1およびR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
【0031】
一般式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立に炭素数4~40の2~8価の有機基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。cおよびdは、それぞれ0~4の整数、eおよびfは、それぞれ0~2の整数を表す。
【0032】
【0033】
一般式(15)中、TおよびUは、それぞれ独立に炭素数4~40の2~8価の有機基を表す。
【0034】
(A)成分として具体的には、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体またはそれらの共重合体などが好ましく挙げられる。これらの樹脂は単独で含有してもよく、また複数の樹脂を組み合わせて含有してもよい。これらの樹脂は耐熱性が高く、また熱処理後の160℃以上の温度条件下におけるアウトガス量が少ないため、特に有機発光装置、表示装置、半導体素子に用いられる平坦化膜、絶縁層、隔壁、保護膜、および層間絶縁膜として好適に使用される。
【0035】
また、(A)成分は、特に限定されないが、環境負荷低減の観点からアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。本発明におけるアルカリ可溶性について説明する。γ-ブチロラクトンに樹脂を溶解した溶液をシリコンウエハ上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成する。次に、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少を求める。上記プリベーク膜の溶解速度が50nm/分以上である樹脂についてアルカリ可溶性であると定義する。
【0036】
(A)成分にアルカリ可溶性を持たせるために、一般式(1)はa+b>0であることが好ましい。また、一般式(2)はc+d+e+f>0であることが好ましい。一般式(2)において、ポリイミド前駆体の場合は、一般式(2)中のX、Yは芳香族基を有することが好ましい。さらには、一般式(2)中のXは芳香族基を有し、e>0であって、芳香族アミド基のオルト位にカルボキシ基またはカルボキシエステル基を有し、脱水閉環することによりイミド環を形成する構造を有することがより好ましい。
【0037】
また、一般式(2)において、ポリベンゾオキサゾール前駆体の場合は、一般式(2)中のXは芳香族基を有し、d>0であって、芳香族アミド基のオルト位にヒドロキシル基を有し、脱水閉環することによりベンゾオキサゾール環を形成する構造を有することがより好ましい。
【0038】
(A)成分における、一般式(1)または(2)で表される構造単位の繰り返し数nは、5~100,000であることが好ましく、10~100,000であることがより好ましい。
【0039】
また、(A)成分は、一般式(1)または(2)で表される構造単位に加えて、他の構造単位を有してもよい。他の構造単位としては、例えば、カルド構造、シロキサン構造などが挙げられるが、これらに限定されない。この場合、一般式(1)、(2)、または(15)で表される構造単位を、主たる構成単位とすることが好ましい。ここで主たる構成単位とは全構造単位数のうち一般式(1)、(2)、または(15)で表される構造単位を50モル%以上有することをいい、70モル%以上有することがより好ましい。
【0040】
<(A)成分の酸の残基>
上記一般式(1)中、V-(R1)a、上記一般式(2)中、(OH)c-X-(COOR3)e、および、上記一般式(15)中のTは酸の残基を表す。Vは炭素数4~40の4価~10価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。XおよびTは炭素数4~40の2価~8価の有機基であり、なかでも芳香族環、または脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。
【0041】
酸の残基を構成する酸成分としては、ジカルボン酸の例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9-ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸など、トリカルボン酸の例としてトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸など、テトラカルボン酸の例としてピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび下記に示した構造の芳香族テトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。これらを2種以上用いてもよい。
【0042】
【0043】
式中、R17は酸素原子、C(CF3)2、またはC(CH3)2を表す。R18およびR19は水素原子、または水酸基を表す。
【0044】
これらの酸は、そのまま、あるいは酸無水物、ハロゲン化物、活性エステルとして使用できる。
【0045】
<(A)成分のジアミンの残基>
上記一般式(1)中のW-(R2)b、上記一般式(2)中の(OH)d-Y-(COOR4)f、および、上記一般式(15)中のUはジアミンの残基を表す。WおよびY、Uは炭素数4~40の2~8価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。
【0046】
ジアミンの残基を構成するジアミンの具体的な例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、あるいはこれらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族ジアミン、および下記に示した構造のジアミンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0047】
【0048】
式中、R20は酸素原子、C(CF3)2、またはC(CH3)2を表す。R21~R24はそれぞれ独立に水素原子、または水酸基を表す。
【0049】
これらのジアミンは、ジアミンとして、またはジアミンにホスゲンと反応させて得られるジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。
【0050】
<アルキレン基およびアルキレンエーテル基から選ばれた基>
また、(A)成分は、アルキレン基およびアルキレンエーテル基から選ばれた基を含有することが好ましい。これらの基は脂肪族環を含んでいてもよい。アルキレン基およびアルキレンエーテル基から選ばれた基としては、一般式(3)で表される基が特に好ましい。
【0051】
【0052】
一般式(3)中、R5~R8はそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキレン基を表す。R9~R16はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、または炭素数1~6のアルキル基を表す。ただし、括弧内に表される構造はそれぞれ異なる。g、h、iはそれぞれ独立に0~35の整数を表し、g+h+i>0である。
【0053】
一般式(3)で表される基としては、例えばエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基などが挙げられ、直鎖状、分岐状、および環状のいずれでもよい。
【0054】
(A)成分が、アルキレン基およびアルキレンエーテル基から選ばれた基を有することにより、低温加熱処理でもイミド閉環、ベンゾオキサゾール閉環反応が促進され、耐薬品性が向上する。また、アルキレン基およびアルキレンエーテル基は金属との間で配位結合などの相互作用が得られるため、基板金属との高い密着性を得ることができる。さらに、アルキレン基およびアルキレンエーテル基を導入することで、極性を下げることができるため、恒温恒湿試験(HAST)に対する耐性を向上させることができる。
【0055】
(A)成分は、前記一般式(1)におけるW、または、一般式(2)におけるYに、前記のアルキレン基およびアルキレンエーテル基から選ばれた基を含有することが好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化膜における低温加熱処理での閉環促進による高耐薬品性、基板金属との高い密着性、恒温恒湿試験(HAST)に対する耐性を得ることができる。
【0056】
アルキレン基およびアルキレンエーテル基から選ばれた基を含有するジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、KH-511、ED-600、ED-900、ED-2003、EDR-148、EDR-176、D-200、D-400、D-2000、THF-100、THF-140、THF-170、RE-600、RE-900、RE-2000、RP-405、RP-409、RP-2005、RP-2009、RT-1000、HE-1000、HT-1100、HT-1700、(以上商品名、HUNTSMAN(株)製)などが挙げられる。
【0057】
また、これらのジアミン中に、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-NCH3-、-N(CH2CH3)-、-N(CH2CH2CH3)-、-N(CH(CH3)2)-、-COO-、-CONH-、-OCONH-、-NHCONH-などの結合を含んでもよい。
【0058】
アルキレン基およびアルキレンエーテル基から選ばれた基を含有するジアミン残基は、全ジアミン残基中、5モル%以上含まれることが好ましく、10モル%以上含まれることがより好ましい。また、全ジアミン残基中、40モル%以下含まれることが好ましく、30モル%以下含まれることがより好ましい。上記範囲で含むことにより、アルカリ現像液での現像性を高めるとともに、低温加熱処理での閉環促進による高耐薬品性、基板金属との高い密着性、恒温恒湿試験(HAST)に対する耐性を得ることができる。
【0059】
また、耐熱性を低下させない範囲で、脂肪族ポリシロキサン構造を有するジアミン残基を共重合してもよい。脂肪族ポリシロキサン構造を有するジアミン残基を共重合することで基板との接着性を向上させることができる。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを全ジアミン残基中の1~15モル%共重合したものなどが挙げられる。この範囲で共重合させることが、シリコンウエハなどの基板との接着性向上の点、および、アルカリ溶液へ溶解性を低下させない点で好ましい。
【0060】
また、(A)成分の末端を、酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸により封止することで、主鎖末端に酸性基を有する樹脂を得ることができる。酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸としては公知ものを使用してもよく、複数使用してもよい。
【0061】
上記モノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などの末端封止剤の含有量は、(A)成分を構成する酸成分およびアミン成分の総和100モル%に対して、2~25モル%が好ましい。
【0062】
(A)成分は、重量平均分子量が10,000以上100,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、硬化後の硬化膜の機械特性を向上させることができる。より好ましくは重量平均分子量が20,000以上である。一方、重量平均分子量が100,000以下であれば、各種現像液による現像性を向上させることができ、さらに重量平均分子量が50,000以下であれば、アルカリ溶液による現像性を向上させることができるため好ましい。
【0063】
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて確認できる。例えば展開溶剤をN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと省略する場合がある)として測定し、ポリスチレン換算で求めることができる。
【0064】
(A)成分の含有量は溶剤を含む全含有成分100質量%のうち、3~55質量%とすることが好ましく、5~40質量%とすることがさらに好ましい。前記範囲とすることで、スピン塗布またはスリット塗布を行う上で適切な粘度とすることができる。
【0065】
<(A)成分の作製>
(A)成分は公知の方法により作製できる。
【0066】
ポリイミド前駆体、例えばポリアミド酸やポリアミド酸エステルなどの場合、第一の方法としては、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させる方法。第二の方法としては、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得る。その後アミンと縮合剤の存在下で反応させる方法。第三の方法としては、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得る。その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、アミンと反応させる方法などで合成することができる。
【0067】
ポリベンゾオキサゾール前駆体、例えばポリヒドロキシアミドなどの場合、製造方法としては、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を縮合反応させることで得ることができる。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物を加える方法やピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下する方法などがある。
【0068】
ポリイミドの場合、例えば前述の方法で得られたポリイミド前駆体を加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0069】
本発明の樹脂組成物には、(A)成分のほかに、その他のアルカリ可溶性樹脂を含んでもよい。その他のアルカリ可溶性樹脂としては、具体的には、シロキサンポリマー、環状オレフィン重合体、およびカルド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、また複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。その場合、(A)成分とその他のアルカリ可溶性樹脂の合計を100質量部としたときに、その他のアルカリ可溶性樹脂の含有割合が1~50質量部とすることが好ましい。
【0070】
<(B)フェノール樹脂>
<一般式(4)で表される構造単位を含むフェノール樹脂>
本発明の樹脂組成物は(B)フェノール樹脂(以下、(B)成分と呼称する場合がある)を含有し、該(B)フェノール樹脂が一般式(4)で表される構造単位を有する。
【0071】
【0072】
一般式(4)中、R25、R27は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25、R27が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。j1、j2は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。
【0073】
上記一般式(4)のように、フェノール化合物と芳香族アルデヒド化合物および/または芳香族ケトン化合物から得られるフェノール樹脂を用いることで、耐熱性に優れるとともに、配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性を付与することができる。また、感光性を有する場合は現像時の露光部/未露光部間のコントラスト差が大きいこと、樹脂膜のガラス転移温度を適度に上昇させることから、現像後の樹脂膜、加熱処理後の硬化膜のパターン形状の高テーパー化に優れる。
【0074】
さらに、前記一般式(4)で表される構造単位が、一般式(5)および一般式(6)の構造単位を有し、(B)フェノール樹脂における一般式(4)で表されるすべての構造単位数を100とした場合に、一般式(5)で表される構造単位数と一般式(6)で表される構造単位数の比率が、一般式(5):一般式(6)=60:40~90:10である
【0075】
【0076】
一般式(5)中、R25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数、j3は、1~3の整数を表す。
【0077】
【0078】
一般式(6)中、R25は、水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R25が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R26は、水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。R28は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。R28が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。j1、j4は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。
【0079】
上記範囲とすることにより、適度な現像性を付与するとともに、低温加熱処理であっても配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性、および感光性を有する場合は現像後の樹脂膜、加熱処理後の硬化膜のパターン形状に優れる。
【0080】
<フェノール化合物>
フェノール化合物としては、アルキルフェノール類の例として、フェノール;メタクレゾール、パラクレゾール、オルトクレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2-メチル-3-エチル-フェノール、2-メチル-3-メトキシフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノールなど、多価フェノール類の例として、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコールなど、その他のフェノール類の例として、ハロゲン化フェノール、フェニルフェノール、アミノフェノールなどが挙げられる。その中で、下記式(7)で表されるフェノール化合物がより好ましい。これらのフェノール化合物は単独で用いてもよく、また複数のフェノール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
【0082】
<芳香族アルデヒド化合物>
一般式(5)で表される構造単位で使用される、芳香族アルデヒド化合物としては、例えば、4-メトキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、3-メチルサリチルアルデヒド、4-メチルサリチルアルデヒド、2-ヒドロキシ-5-メトキシベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4-トリヒドロキシベンズアルデヒド、などが挙げられる。その中で、下記式(8)で表される芳香族アルデヒド化合物がより好ましい。これらの芳香族アルデヒド化合物は単独で用いてもよく、また複数の芳香族アルデヒド化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
【0084】
一般式(6)で表される構造単位で使用される芳香族アルデヒド化合物としては、例えば、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒト、2,3-ジメチルベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、2,5-ジメチルベンズアルデヒド、2,6-ジメチルベンズアルデヒド、3,4-ジメチルベンズアルデヒド、3,5-ジメチルベンズアルデヒド、2,3,4-トリメチルベンズアルデヒド、2,3,5-トリメチルベンズアルデヒド、2,3,6-トリメチルベンズアルデヒド、2,4,5-トリメチルベンズアルデヒド、2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド、3,4,5-トリメチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、4-tert-ブチルベンズアルデヒド、4-イソブチルベンズアルデヒド、などが挙げられる。その中で、下記式(9)で表される芳香族アルデヒド化合物がより好ましい。これらの芳香族アルデヒド化合物は単独で用いてもよく、また複数の芳香族アルデヒド化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
【0086】
<芳香族ケトン化合物>
一般式(5)で表される構造単位で使用される芳香族ケトン化合物としては、例えば、p-ヒドロキシアセトフェノン、m-ヒドロキシアセトフェノン、3’,5’-ジヒドロキシアセトフェノン、p-ヒドロキシプロピオフェノン、m-ヒドロキシプロピオフェノン、p-ヒドロキシバレロフェノン、1’-ヒドロキシ-2’-アセトナフトン、2’-ヒドロキシ-1’-アセトナフトン、2’-ヒドロキシ-5’-メチルアセトフェノン、4’-ヒドロキシ-2’-メチルアセトフェノン、4’-ヒドロキシ-3’-メチルアセトフェノン、2’,4’-ジヒドロキシ-3’-メチルアセトフェノン、2’-ヒドロキシ-4’,5’-ジメチルアセトフェノン、4’-ベンゾイルオキシ-2’-ヒドロキシ-3’-メチルアセトフェノン、4’-ベンジルオキシ-2’-メトキシ-3’-メチルアセトフェノン、2’-ヒドロキシ-4’-メトキシアセトフェノン、2’-ヒドロキシ-5’-メトキシアセトフェノン、2’-ヒドロキシ-6’-メトキシアセトフェノン、2-(フェニルスルホニル)アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2’,4’-ジヒドロキシ-3’-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2’-ヒドロキシ-3-フェニルプロピオフェノン、4’-ベンジルオキシ-2’-ヒドロキシ-3’-メチルプロピオフェノン、2’,4’-ジヒドロキシ-3’-メチルブチロフェノン、o-ヒドロキシベンゾフェノン、p-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-フルオロ-4’-ヒドロキシベンゾフェノン、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルケトン、2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、5-ヒドロキシ-1-テトラロン、などが挙げられる。その中で、下記式(10)で表される芳香族ケトン化合物がより好ましい。これらの芳香族ケトン化合物は単独で用いてもよく、また複数の芳香族ケトン化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
【0088】
一般式(6)で表される構造単位で使用される芳香族ケトン化合物としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、イソブチロフェノン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、2,2-ジメチルプロピオフェノン、2-フェニルブチロフェノン、フェニルビニルケトン、シクロヘキシルフェニルケトン、p-メチルアセトフェノン、m-メチルアセトフェノン、o-メチルアセトフェノン、p-エチルアセトフェノン、p-プロピルアセトフェノン、p-イソブチルアセトフェノン、p-ブチルアセトフェノン、p-t-ブチルアセトフェノン、2’,4’-ジメチルアセトフェノン、3’,4’-ジメチルアセトフェノン、2’,4’,6’-トリメチルアセトフェノン、p-メチルプロピオフェノン、m-メチルプロピオフェノン、o-メチルプロピオフェノン、p-エチルプロピオフェノン、m-エチルプロピオフェノン、o-エチルプロピオフェノン、p-t-ブチルプロピオフェノン、1’-アセトナフトン、2’-アセトナフトン、6’-メチル-2’-アセトナフトン、4-アセチルビフェニル、t-ブチル-4-フェノキシフェニルケトン、1-(2-ナフチル)-3-フェニル-2-プロペン-1-オン、2-フルオロアセトフェノン、p-フルオロアセトフェノン、m-フルオロアセトフェノン、o-フルオロアセトフェノン、m-トリフルオロメチルアセトフェノン、2-フルオロプロピオフェノン、3-フルオロプロピオフェノン、p-フルオロプロピオフェノン、m-フルオロプロピオフェノン、o-フルオロプロピオフェノン、p-メトキシアセトフェノン、m-メトキシアセトフェノン、o-メトキシアセトフェノン、2-メトキシアセトフェノン、p-エトキシアセトフェノン、p-フェノキシアセトフェノン、2’,2’-ジエトキシアセトフェノン、2’,4’-ジメトキシアセトフェノン、2’,5’-ジメトキシアセトフェノン、2’,6’-ジメトキシアセトフェノン、3’,4’-ジメトキシアセトフェノン、3’,5’-ジメトキシアセトフェノン、3’,4’-(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3’,4’-(メチレンジオキシ)プロピオフェノン、6’-メトキシ-2’-アセトナフトン、6’-メトキシ-2’-プロピオノナフトン、2’,4’-ジメトキシ-3’-メチルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、5’-フルオロ-2’-ヒドロキシアセトフェノン、3’,5’-ジメトキシ-4’-ヒドロキシアセトフェノン、2-フルオロ-p-メトキシアセトフェノン、2-フルオロ-m-メトキシアセトフェノン、2-フルオロ-o-メトキシアセトフェノン、2’-フルオロ-4’-メトキシアセトフェノン、3’-フルオロ-4’-メトキシアセトフェノン、2’,4’-ジメトキシ-3’-メチルプロピオフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、p-メチルベンゾフェノン、m-メチルベンゾフェノン、o-メチルベンゾフェノン、p-エチルベンゾフェノン、m-エチルベンゾフェノン、o-エチルベンゾフェノン、2,5-ジメチルベンゾフェノン、2,4-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、p-モルホリノベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、o-フルオロベンゾフェノン、p-フルオロベンゾフェノン、2,4’-ジフルオロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(p-トリイルチオ)ベンゾフェノン、1-インダノン、2-メチル-1-インダノン、3-メチル-1-インダノン、4-メトキシ-1-インダノン、5-メトキシ-1-インダノン、6-メトキシ-1-インダノン、4-ヒドロキシ-1-インダノン、α-テトラロン、1-ベンゾスベロン、などが挙げられる。その中で、下記式(11)で表される芳香族ケトン化合物がより好ましい。これらの芳香族ケトン化合物は単独で用いてもよく、また複数の芳香族ケトン化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
【0090】
本発明において、前記芳香族アルデヒド化合物および芳香族ケトン化合物は単独で使用しても、また併用してもよい。また、前記フェノール化合物と、芳香族アルデヒド化合物および/または芳香族ケトン化合物の使用割合としては、〔芳香族アルデヒド化合物および/または芳香族ケトン化合物〕/〔フェノール化合物〕が、モル比で0.5~2.0となる範囲とすることで未反応フェノール類が少なく、十分に高分子量化したノボラック型フェノール樹脂が得られることから好ましく、0.7~1.8となる範囲がより好ましい。
【0091】
本発明において、(B)成分の重縮合反応は酸触媒を用いることが好ましい。用いる酸触媒としては、例えば、無機酸として塩酸、硫酸、燐酸、ホウ酸など、有機酸として、しゅう酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0092】
(B)成分は、重量平均分子量が500以上10,000以下であることが好ましく、重量平均分子量が500以上5,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることで、(A)成分などとの相溶性、耐熱性、適度な現像性、感光性を有する場合は、現像後の樹脂膜、加熱処理後の硬化膜の優れたパターン形状、配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性などを付与することができる。
【0093】
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて確認できる。例えば展開溶剤をN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと省略する場合がある)として測定し、ポリスチレン換算で求めることができる。
【0094】
<(B)成分の作製>
上記(B)成分は公知の方法で作成できるが、通常、重縮合反応を用いて作製する。重縮合反応は前記酸触媒存在下、加温下で数時間撹拌を行うことで進行する。反応温度としては50℃から140℃が好ましい。また、反応の際に溶媒を添加し溶媒中で反応を行うこともできる。反応溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノールなど、ポリオール系溶媒として、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど、グリコールエーテル系溶媒として、2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなど、環状エーテル系溶媒として、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンテトラヒドロフラン、ジオキサンなど、グリコールエステル系溶媒として、エチレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど、ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど、芳香族炭化水素として、トルエン、キシレンなど、その他の溶媒として、γ-ブチロラクトン、純水などが挙げられるが、これらに限定しない。これらの溶媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0095】
溶剤の添加量はフェノール化合物100質量部に対し、10質量部以上300質量部以下が好ましい。
【0096】
反応終了後は、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム等の塩基を用いて酸触媒を中和し、必要に応じてその中和塩を水層へ抽出することで除去した後、脱水、モノマー除去工程を行い回収される。
【0097】
上記フェノール樹脂(B)の合成後には、通常、モノマーの除去工程が行われる。モノマー除去の方法は溶剤と水を添加し水層を除去する溶剤分画方法や減圧しながら加熱を行うことでモノマーを揮発させる方法等を選択することができる。
【0098】
また、その他の(B)成分の作製方法として下記の3つの工程を経る方法を用いてもよい。
【0099】
<工程1>
前記フェノール化合物と前記芳香族アルデヒド化合物または芳香族ケトン化合物とを前記酸触媒存在下で、必要に応じて溶媒を用いて、60~140℃の範囲で加熱し、重縮合することにより、フェノール系3核体化合物を得る。
【0100】
<工程2>
工程1で得られたフェノール系3核体化合物を反応溶液中から単離する。
【0101】
<工程3>
工程2で単離した前記フェノール系3核体化合物と前記芳香族アルデヒド化合物および/または芳香族ケトン化合物とを前記酸触媒存在下で、必要に応じて溶媒を用いて、60~140℃の範囲で加熱し、重縮合することにより、フェノール樹脂を得る。
【0102】
フェノール系3核体化合物を用いることにより、分子量分布が狭くなることから、低温加熱処理であっても配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性、および感光性を有する場合は現像後の樹脂膜、加熱処理後の硬化膜のパターン形状に優れるため、好ましい。
【0103】
工程1、3について反応終了後は、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム等の塩基を用いて酸触媒を中和し、必要に応じてその中和塩を水層へ抽出することで除去した後、脱水、モノマー除去工程や単離などを行い回収される。
【0104】
工程1における前記フェノール化合物と、前記芳香族アルデヒド化合物または芳香族ケトン化合物との仕込み比率[フェノール化合物/(芳香族アルデヒド化合物または芳香族ケトン化合物)]は、未反応の前記フェノール化合物の除去性、生成物の収率及び反応生成物の純度に優れることから、モル比で1/0.2~1/0.5の範囲が好ましく、1/0.25~1/0.45の範囲がより好ましい。
【0105】
工程2におけるフェノール系3核体化合物の反応溶液中からの単離方法としては、例えば、反応溶液を反応生成物が不溶又は難溶である貧溶媒に投入して得られた沈殿物を濾別した後、反応生成物を溶解し貧溶媒にも混和する溶媒に溶解し、再度貧溶媒に投入して生じた沈殿物を濾別する方法が挙げられる。この際に用いる前記貧溶媒としては、例えば、水、モノアルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノールなど、脂肪族炭化水素として、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサンなど、芳香族炭化水素として、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの貧溶媒の中でも、効率よく酸触媒の除去も同時に行えることから、水、メタノールが好ましい。一方、前記溶媒としては、例えば、ポリオール系溶媒として、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど、グリコールエーテル系溶媒として、2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなど、環状エーテル系溶媒として、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンテトラヒドロフラン、ジオキサンなど、グリコールエステル系溶媒として、エチレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど、ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど、その他の溶媒として、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。それぞれ1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。上記の工程2の単離方法により、フェノール系3核体化合物を得ることができる。
【0106】
工程3における前記フェノール系3核体化合物と前記芳香族アルデヒド化合物および/または芳香族ケトン化合物の使用割合としては、〔フェノール系3核体化合物〕/〔芳香族アルデヒド化合物および/または芳香族ケトン化合物〕は、過剰な高分子量化(ゲル化)を抑制でき、適正な分子量のものが得られることから、モル比で1/0.5~1/1.2の範囲が好ましく、1/0.6~1/0.9の範囲がより好ましい。
【0107】
上記工程1及び工程3において必要に応じて用いる溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノールなど、ポリオール系溶媒として、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど、グリコールエーテル系溶媒として、2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなど、環状エーテル系溶媒として、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンテトラヒドロフラン、ジオキサンなど、グリコールエステル系溶媒として、エチレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど、ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど、芳香族炭化水素として、トルエン、キシレンなど、その他の溶媒として、γ-ブチロラクトン、純水などが挙げられるが、これらに限定しない。これらの溶媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる
(B)成分の含有量は、加熱処理後の硬化膜のパターン形状に優れ、配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性などの観点から、(A)成分100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、(A)成分との相溶性などの観点から、(A)成分100質量部に対して200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
【0108】
<(C)熱架橋剤>
本発明の樹脂組成物は、(C)熱架橋剤を含有する。熱架橋剤とは、熱架橋基である熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する樹脂または化合物を指す。
【0109】
熱架橋基の具体例としては、環状エーテル基、アルコキシメチル基、メチロール基などが挙げられる。
【0110】
(C)熱架橋剤が、置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤および/またはあとで説明する一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤を含有することが好ましい。
【0111】
<置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤>
本発明の樹脂組成物は、(C)熱架橋剤として、置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤を含有することが好ましい。
【0112】
置換基を有してもよいビフェニル構造を有することにより、硬化膜のストリッパーなどに対する耐薬品性を向上させることができ、さらに、低吸水性を付与することができるため、恒温恒湿試験(HAST)などに対する耐性を向上させることができる。さらに樹脂膜や硬化膜のガラス転移温度を適度に低下させて流動性を付与できることから、現像後の樹脂膜、加熱処理後の硬化膜のパターン形状の制御に優れる。
【0113】
(C)熱架橋剤のうち、置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤が、一般式(12)または一般式(13)の構造を含有することが好ましい。
【0114】
置換基を有してもよいビフェニル構造としては一般式(12)、一般式(13)で表される構造が耐薬品性を向上させ、また恒温恒湿試験(HAST)などに対する耐性を向上させる点から好ましい。
【0115】
【0116】
一般式(12)中、R29およびR30は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R29、R30が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R31、R32は、熱架橋基を表す。m1、m2は、それぞれ独立に0~4の整数、m3、m4は、それぞれ独立に1~3の整数を表し、1≦m1+m3≦5、1≦m2+m4≦5を満たす。
【0117】
【0118】
一般式(13)中、R33、R34、R35およびR36は、それぞれ独立に水酸基、または炭素数1~10の1価の有機基を表す。R33、R34、R35およびR36が複数個存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R37、R38、R39およびR40は、熱架橋基を表す。R41は、炭素数1~10の1価の有機基を表す。n1、n4、n5、n8は、それぞれ独立に1~3の整数、n2、n3、n6、n7は、それぞれ独立に0~4の整数、n9は、繰り返し単位を示し、1~10の整数、n10は、0または1の整数を表す。
【0119】
一般式(12)、一般式(13)で表される構造の具体例としては下記の環状エーテル基化合物、メチロール化合物、またはメチロール基の水素原子がメチル基または炭素数2~10のアルキル基で置換されたアルコキシメチル化合物が挙げられるが、これらに限定しない。また共重合体でもよい。
【0120】
【0121】
【0122】
n9は繰り返し単位を示し、1~10の整数を表す。
【0123】
本発明においては、その他の熱架橋剤として、公知の環状エーテル基化合物、アルコキシメチル化合物およびメチロール化合物を含有してもよい。
【0124】
<一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤>
本発明の樹脂組成物は、一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤を含有することが好ましい。
【0125】
【0126】
一般式(14)中、R42は炭素数1以上15以下のアルキレン基またはアルキレンエーテル基を有する2価の有機基、R43およびR44は、各々独立に、水素原子またはメチル基を表す。
【0127】
一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤は柔軟なアルキレン基と剛直な芳香族基を有することにより、硬化膜のストリッパーなどに対する耐薬品性を向上させることができ、低吸水性を付与することができるため、恒温恒湿試験(HAST)などに対する耐性を向上させることができる。さらに樹脂膜や硬化膜のガラス転移温度を適度に低下させて流動性を付与できることから、現像後の樹脂膜、加熱処理後の硬化膜のパターン形状の制御に優れる。
【0128】
一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤に含まれる架橋基としては、アクリル基やメチロール基、アルコキシメチル基、環状エーテル基等が上げられるがこれに限定されない。この中でも、(A)成分の水酸基と反応し、硬化膜の耐熱性を向上することができる点と、脱水せずに反応することができる点から、環状エーテル基が好ましい。
【0129】
一般式(14)で表される構造単位を含む化合物は、具体例としては以下のものが挙げられるが、下記構造に限らない。
【0130】
【0131】
式中o2は1~5の整数、o1は1~20であり、耐薬品性や低吸水性、パターン形状の制御の観点から、o2は1~2、o1は3~7であることが好ましい。
【0132】
(C)熱架橋剤として、置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤および/または一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤、その他の熱架橋剤は2種類以上を組み合わせて含有してもよい。
【0133】
(C)熱架橋剤全体を100質量%とした場合に、置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤および一般式(14)で表される構造単位を有する熱架橋剤の含有比率が、15質量%以上80質量%以下であることが好ましい。これは、硬化膜のストリッパーなどに対する耐薬品性を向上させることができ、さらに、低吸水性を付与することができるため、恒温恒湿試験(HAST)などに対する耐性を向上させることができる。さらに樹脂膜や硬化膜のガラス転移温度を適度に低下させることから、感光性を有する場合に硬化膜のパターン形状の制御に優れる。
【0134】
本発明の樹脂組成物は、前記(C)熱架橋剤が、前記置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤を含有し、該置換基を有してもよいビフェニル構造を有する熱架橋剤の含有量が、前記(B)フェノール樹脂100質量部に対して30質量部以上150質量部以下が好ましい。
【0135】
置換基を有してもよいビフェニル構造を有する(C)熱架橋剤の含有量は、配線形成時に用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性、恒温恒湿試験(HAST)などに対する耐性を向上させる観点から、(B)フェノール樹脂100質量部に対して30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましい。また、パターン形状を維持しながら、配線形成時用いるフォトレジストを除去するためのストリッパーに対する耐性、恒温恒湿試験(HAST)などに対する耐性を向上させる観点から、(B)フェノール樹脂100質量部に対して150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0136】
<(D)感光性化合物>
本発明の樹脂組成物は、(D)感光性化合物(以下、(D)成分と呼称する場合がある)を含有することが好ましい。
【0137】
(D)成分を含有することで樹脂組成物に感光性を付与できる。(D)成分は、紫外線に感応して化学構造が変化する化合物であり、例えば、光酸発生剤、光塩基発生剤、光重合開始剤などを挙げることができる。(D)成分として光酸発生剤を用いた場合は、感光性樹脂組成物の光照射部に酸が発生し、光照射部のアルカリ現像液に対する溶解性が増大するため、光照射部が溶解するポジ型のパターンを得ることができる。
【0138】
(D)成分として光塩基発生剤を用いた場合は、樹脂組成物の光照射部に塩基が発生し、光照射部のアルカリ現像液に対する溶解性が低下するため、光照射部が不溶化するネガ型のパターンを得ることができる。
【0139】
(D)成分として光重合開始剤を用いた場合は、樹脂組成物の光照射部にラジカルが発生してラジカル重合が進行し、アルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。また、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
【0140】
上記した(D)成分の中で、高感度で高解像度のパターンが得られる点で、光酸発生剤が好ましい。光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。さらに増感剤などを必要に応じて含むことができる。
【0141】
キノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を有した化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP,DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6-ジメトキシメチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(商品名、本州化学工業(株)製)などの化合物に4-ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することができるが、これ以外の化合物を使用することもできる。
【0142】
また、フェノール性水酸基を有した化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。50モル%以上置換されているキノンジアジド化合物を使用することで、キノンジアジド化合物のアルカリ水溶液に対する親和性が低下する。その結果、未露光部の樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する溶解性は大きく低下する。さらに、露光によりキノンジアジドスルホニル基がインデンカルボン酸に変化し、露光部の感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する大きな溶解速度を得ることができる。すなわち、結果として組成物の露光部と未露光部の溶解速度比を大きくして、高い解像度でパターンを得ることができる。
【0143】
このようなキノンジアジド化合物を含有することで、一般的な水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)やそれらを含むブロードバンドに感光するポジ型の感光性を有する樹脂組成物を得ることができる。また、(D)成分は1種のみ含有しても、2種以上組み合わせて含有してもよく、高感度な樹脂組成物を得ることができる。
【0144】
キノンジアジドとしては、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基および5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を含むものなどが挙げられる。
【0145】
ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物としては5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物(D-1)を含むことが好ましい。(D-1)成分は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光および全波長露光に適している。また、硬化時に(A)成分や(B)成分と反応することにより架橋構造を形成し、耐薬品性が向上する。
【0146】
ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物としては5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物(D-1)および4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物(D-2)を有し、その含有比率が(D-2)/(D-1)=0.3~3であることが好ましい。(D-2)成分は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。また、露光により発生する酸が強酸のスルホン酸のため、現像時に露光部全体のアルカリ溶解が増加することで、現像後、加熱処理後のパターン形状を向上させることができる。そのため、含有比率を(D-2)/(D-1)=0.3~3とすることにより、耐薬品性、加熱処理後のパターン形状を両立することができる。
【0147】
キノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって、公知の方法により合成することができる。キノンジアジド化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
【0148】
(D)成分の分子量は、熱処理により得られる膜の耐熱性、機械特性および接着性の点から、好ましくは300以上、より好ましくは350以上であり、好ましくは3,000以下、より好ましくは1,500以下である。
【0149】
(D)成分のうち、スルホニウム塩、ホスホニウム塩およびジアゾニウム塩は、露光によって発生した酸成分を適度に安定化させるため好ましい。中でもスルホニウム塩が好ましい。
【0150】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上100質量部以下が好ましい。(D)成分の含有量が0.1質量部以上100質量部以下であれば、熱処理後の膜の耐熱性、耐薬品性および機械特性を維持しつつ、感光性を付与することができる。
【0151】
(D)成分がキノンジアジド化合物を含有する場合、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。1質量部以上100質量部以下であれば、熱処理後の膜の耐熱性、耐薬品性および機械特性を維持しつつ、感光性を付与することができる。
【0152】
(D)成分がスルホニウム塩、ホスホニウム塩またはジアゾニウム塩を含有する場合、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、3質量部以上が特に好ましい。また、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下が特に好ましい。0.1質量部以上100質量部以下であれば、熱処理後の膜の耐熱性、耐薬品性および機械特性を維持しつつ、感光性を付与することができる。
【0153】
(D)成分として光塩基発生剤を含有する場合、光塩基発生剤として、具体的には、アミド化合物、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0154】
アミド化合物としては、例えば、2-ニトロフェニルメチル-4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシラート、9-アントリルメチル-N,N-ジメチルカルバメート、1-(アントラキノン-2イル)エチルイミダゾールカルボキシラート、(E)-1-[3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペノイル]ピペリジンなどが挙げられる。
【0155】
アンモニウム塩としては、例えば、1,2-ジイソプロピル-3-(ビスジメチルアミノ)メチレン)グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート、(Z)-{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}-N-シクロヘキシルアミノ)メタニミニウムテトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウムn-ブチルトリフェニルボラートなどが挙げられる。
【0156】
(D)成分として光塩基発生剤を含有する場合、樹脂組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、含有量は、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、17質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度を向上させることができる。
【0157】
(D)成分として、光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤または安息香酸エステル系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤が好ましい。露光時の感度向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
【0158】
α-アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ジエチルアミノ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-2-モルフォリノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-(4-メチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-エチルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ブチルフェニル)-2-ジメチルアミノ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-メトキシフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ジメチルアミノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォルニル)フェニル]-1-ブタノンが挙げられる。
【0159】
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドまたはビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0160】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルブタン-1,2-ジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパン-1,2,3-トリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1-[4-[4-(カルボキシフェニル)チオ]フェニル]プロパン-1,2-ジオン-2-(O-アセチル)オキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシム、1-[9-エチル-6-[2-メチル-4-[1-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルオキシ]ベンゾイル]-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチル)オキシムまたは“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831が挙げられる。
【0161】
(D)成分として光重合開始剤を含有する場合、樹脂組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、露光時の感度を向上させることができる。一方、含有量は、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、17質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、現像後の解像度を向上させることができる。
【0162】
<その他>
本発明の樹脂組成物には、必要に応じてその他の成分として、ラジカル重合性化合物、酸化防止剤、溶剤、フェノール性水酸基を有する化合物、密着改良剤、接着改良剤、界面活性剤を含有してもよい。
【0163】
<樹脂組成物の製造方法>
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。例えば、前記(A)、(B)、(C)の各成分と、必要により、(D)成分、ラジカル重合性化合物、酸化防止剤、溶剤、フェノール性水酸基を有する化合物、密着改良剤、接着改良剤、界面活性剤などを混合して溶解させることにより、樹脂組成物を得ることができる。
【0164】
溶解方法としては、加熱や撹拌など公知の方法が挙げられる。
【0165】
樹脂組成物の粘度は、2~5,000mPa・sが好ましい。粘度が2mPa・s以上となるように固形分濃度を調整することにより、所望の膜厚を得ることが容易になる。一方粘度が5,000mPa・s以下であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。このような粘度を有する樹脂組成物は、例えば固形分濃度を5~60質量%にすることで容易に得ることができる。ここで、固形分濃度とは溶剤以外の成分を言う。
【0166】
得られた樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあるが、ポリエチレンやナイロンが好ましい。
【0167】
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、上記樹脂組成物を用いて基材に形成した樹脂シートである。具体的には、基材に樹脂組成物を塗布し、乾燥して得られたシートをいう。
【0168】
樹脂組成物を塗布する基材にはポリエチレンテレフタレート(PET)などのフィルムを用いることができる。樹脂シートをシリコンウエハなどの基板に貼り合わせて用いる際に、基材を剥離除去する必要がある場合は、表面にシリコーン樹脂などの離型剤がコーティングされている基材を用いると、容易に樹脂シートと基材を剥離できるため好ましい。
【0169】
<硬化膜の製造方法>
次に、本発明の樹脂組成物、または、本発明の樹脂シート、を硬化した本発明の硬化膜、および、その製造方法について説明する。
【0170】
以下、樹脂膜とは、本発明の樹脂組成物を基板に塗布し、乾燥して得られた膜をいう。また、硬化膜は樹脂膜、もしくは樹脂シートを硬化して得られた膜をいう。
【0171】
本発明の硬化膜の製造方法は、前記樹脂組成物を基板に塗布し、または、樹脂シートを基板にラミネートし、その後、乾燥して樹脂膜を形成する工程、乾燥した樹脂膜を露光する露光工程、露光された樹脂膜を現像する現像工程、および、現像された樹脂膜を加熱処理する加熱処理工程、を含む硬化膜の製造方法が好ましい。
【0172】
まず、本発明の樹脂組成物を基板に塗布し、樹脂組成物の塗布膜を得る。基板としてはシリコンウエハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機回路基板、無機回路基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものなどが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~150μmになるように塗布される。
【0173】
塗布に先立ち、樹脂組成物を塗布する基板を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶剤に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法で基板表面を処理する方法が挙げられる。基板表面を処理した後、必要に応じて、減圧乾燥処理を施してもよい。また、その後50℃~280℃の熱処理により基板と密着改良剤との反応を進行させてもよい。
【0174】
次に、樹脂組成物の塗布膜を乾燥して、樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃~140℃の範囲で1分~数時間行うことが好ましい。
【0175】
一方、本発明の樹脂組成物から形成した樹脂シートを用いる場合、前記樹脂シートに保護フィルムを有する場合にはこれを剥離し、樹脂シートと基板を対向させ、熱圧着により貼り合わせる(樹脂シートと基板を対向させ、熱圧着により貼り合わせることを、樹脂シートを基板にラミネートすると記す場合もある)。次に、基板にラミネートした樹脂シートを、上記樹脂膜を得る際と同様に乾燥して、樹脂膜を形成する。樹脂シートは、本発明の樹脂組成物を剥離性基板であるポリエチレンテレフタラート等により構成される支持フィルム上に塗布、乾燥させて得ることができる。
【0176】
熱圧着は、熱プレス処理、熱ラミネート処理、熱真空ラミネート処理等によって行うことができる。貼り合わせ温度は、基板への密着性、埋め込み性の点から40℃以上が好ましい。また、樹脂シートが感光性を有する場合、貼り合わせ時に樹脂シートが硬化し、露光・現像工程におけるパターン形成の解像度が低下することを防ぐために、貼り合わせ温度は140℃以下が好ましい。
【0177】
露光工程においては、感光性を有する樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では一般的な露光波長であるg線(436nm)、h線(405nm)またはi線(365nm)、を用いることが好ましい。感光性を有さない樹脂膜においては、樹脂膜形成後にフォトレジストを形成した後、前記の化学線を照射する。
【0178】
次に、露光された感光性を有する樹脂膜を現像する。現像液としては、テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを1種または2種以上添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0179】
このようにして得られた樹脂膜を加熱して熱架橋反応を進行させ、本発明の硬化膜を得る。硬化膜は、架橋によって、耐熱性および耐薬品性が向上する。この加熱処理は、段階的に昇温して行ってもよいし、連続的に昇温しながら行ってもよい。加熱処理は5分間~5時間実施することが好ましい。一例としては、100℃で30分加熱処理した後、さらに230℃60分熱処理する例が挙げられる。加熱処理条件としては、140℃以上400℃以下が好ましい。加熱処理条件は、熱架橋反応を進行させるため、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。また優れた硬化膜を提供するため、半導体装置や表示装置の信頼性を向上させるため、加熱処理条件は300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
【0180】
このようにして得られた本発明の硬化膜は、開口パターンを有し、該開口パターン断面における傾斜辺の角度が40°以上80°以下であることが好ましい。
【0181】
図3に硬化膜の開口パターンの正面断面図を示す。
図3において硬化膜3に形成した開口パターンについて傾斜辺14の角度が15である。なお、傾斜辺は上部の開口パターンと下部の開口パターンを直線で結んだものとした。
【0182】
硬化膜の開口パターン断面における傾斜辺の角度をこの範囲にすることで、本硬化膜を適用した後述する半導体装置や表示装置が配線の短絡など配線不良などの不具合を起こしにくく、信頼性に優れる。
【0183】
<半導体装置>
本発明の樹脂組成物、または、本発明の樹脂シート、を硬化した、本発明の硬化膜は、公知の半導体装置等の電子部品に使用することができる。すなわち、本発明の半導体装置は本発明の硬化膜を有する。本発明の半導体装置は、金属配線および絶縁膜を有し、本発明の硬化膜を絶縁膜として有する。半導体装置とは、一般には、半導体素子やそれを集積した集積回路を部品として含む装置を指す。本発明の半導体装置は、半導体素子を含む装置のみでなく、配線基板等の半導体装置用の部品も含むものとする。また、半導体素子などが封止樹脂によって保護され、さらに外部と電気接続する機能を持たせた半導体パッケージも本発明の半導体装置に含まれる。本発明の硬化膜は、具体的には、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜などの用途に好適に用いられる。
【0184】
特に、近年の半導体装置は、半導体素子の電極や基板の金属配線のさらなる微細化に伴い、金、銀、銅やニッケル、アルミニウムなどを用いた電極、金属配線およびバンプを有する半導体装置が主流となっており、これらの形成時における金属配線やバリアメタルのエッチング工程やレジストのパターン形成工程において、フラックスやフォトレジスト除去用のストリッパーなど多くの薬液に触れる。本発明の樹脂組成物または樹脂シートからなる硬化膜をそのような電極や金属配線の保護膜として用いると、それらの薬液に対して高い耐性をもつため、特に好ましく用いられる。なお、銅配線は製造工程上、酸化処理がなされる場合がある。そのような場合においても、本発明の硬化膜は好ましく用いることができる。
【0185】
本発明の樹脂組成物、または、本発明の樹脂シート、を硬化した、本発明の硬化膜(以下、本発明の樹脂組成物または樹脂シートからなる硬化膜ということがある。)を有する半導体装置の好ましい例としては、例えば、国際公開第2018/066395号に記載のCPUやGPUなどのロジックデバイス、MRAMや次世代メモリとして有望なポリマーメモリ(Polymer Ferroelectric RAM:PFRAM)や相変化メモリ(Phase Change RAM:PCRAM、あるいはOvonic Unified Memory:OUM)などのメモリ、バンプを有する半導体装置、ファンアウトウエハレベルパッケージ(ファンアウトWLP)あるいはファンアウトパネルレベルパッケージ(ファンアウトPLP)、インダクタ装置のコイル部品、チップサイズが100~700μmのミニLEDやチップサイズが100μm以下であるマイクロLED等が挙げられる。
【0186】
バンプを有する半導体装置、ファンアウトウエハレベルパッケージ(ファンアウトWLP)あるいはファンアウトパネルレベルパッケージ(ファンアウトPLP)、インダクタ装置のコイル部品においては本発明の樹脂組成物または樹脂シートからなる硬化膜を絶縁膜として形成した後、その上にさらに金属配線(いわゆる再配線)を形成してもよい。上記の工程を繰り返して行うことにより、2層以上の再配線が、本発明の樹脂組成物または樹脂シートの硬化物からなる絶縁膜により分離された多層配線構造を形成することができる。この再配線を分離する絶縁膜を、層間絶縁膜と呼ぶ。この際、形成された絶縁膜は複数回にわたり各種薬液と接触することになるが、本発明の樹脂組成物または樹脂シートの硬化物からなる絶縁膜は、密着性と耐薬品性に優れているために、良好な多層配線構造を形成することができる。さらに、本発明の樹脂組成物または樹脂シートは感光性を有する場合、硬化後のテーパー形状に優れるため、多層金属配線形成時の銅配線のレイアウト設計の自由度が向上するため、多層金属配線の保護膜として特に好ましく用いることができる。多層配線構造の層数には上限はないが、10層以下のものが多く用いられる。
【0187】
ファンアウトWLPあるいはファンアウトPLPにおいては、再配線の微細化が進んでいる。本発明の硬化膜は、金属配線の幅と隣り合う金属配線同士の間隔が5μm以下の金属配線にも高い金属密着性を有するため、微細な再配線にも好適に用いられる。ここで、金属配線の幅と隣り合う金属配線同士の間隔が5μm以下とは、金属配線の幅が5μm以下であって、かつ、隣り合う金属配線同士の間隔も5μm以下であることを意味する。
【0188】
このような微細構造を有するファンアウトWLPあるいはファンアウトPLPにおいては、複数の再配線層が積層された多層積層構造を有し、隣接する各再配線層のうち、半導体チップに近い方の再配線層の金属配線の幅および隣り合う金属配線同士の間隔が、半導体チップから遠い方の再配線層の金属配線の幅と隣り合う金属配線同士の間隔と比べて、同じまたは狭くなることが好ましい。ここで、再配線層とは、複数の再配線が複数の層間絶縁膜によって分離された多層配線構造において、1組の再配線およびその上に形成された層間絶縁膜からなる層のことを指す。なお、再配線層が1層のみからなる場合も存在する。また、再配線層の金属配線の幅および隣り合う金属配線同士の間隔が同じまたは狭くなるとは、半導体チップに近い方の再配線層の金属配線の幅が、半導体チップから遠い方の再配線層の金属配線の幅と比べて、同じまたは狭く、かつ、半導体チップに近い方の再配線層における隣り合う金属配線同士の間隔が、半導体チップから遠い方の再配線層における隣り合う金属配線同士の間隔と比べて、同じまたは狭いことを意味する。
【0189】
また、これらの構造においては、隣接する各再配線層のうち、半導体チップに近い方の再配線層の層間絶縁膜の厚みが、半導体チップに遠い方の再配線層の層間絶縁膜の厚みと比べて、同じまたは薄くなることが好ましい。
【0190】
<表示装置>
本発明の樹脂組成物または樹脂シートを硬化した硬化膜は、基板に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、具体的には例えば、LCD、ECD、ELD、有機ELを用いた表示装置等に好適に用いられる。
【0191】
本発明の有機EL表示装置は、少なくとも、TFT基板、平坦化層、第1電極、絶縁層、発光層、第二電極を有する有機EL表示装置であって、該平坦化層または該絶縁層が、本発明の硬化膜を含むことが好ましい。
【0192】
さらに、少なくとも金属配線、本発明の硬化膜、および、複数の発光素子を有する表示装置であって、前記発光素子はいずれか一方の面に一対の電極端子を具備し、前記一対の電極端子は前記硬化膜中に延在する複数本の前記金属配線と接続し、複数本の前記金属配線は、前記硬化膜により電気的絶縁性を保持する構成であることが好ましい。
【0193】
前記表示装置について、
図1を一態様の例として説明する。
【0194】
図1において、表示装置1は、対向基板5上に複数の発光素子2を配し、発光素子2上に硬化膜3を配する。発光素子上とは、発光素子の表面のみならず、支持基板や発光素子の上側にあればよい。
図1に示す態様では、発光素子2の少なくとも一部と接するように配した硬化膜3の上にさらに複数の硬化膜3を積層し合計して3層積層する構成を例示しているが、これに限定せず、また硬化膜3は単層であってもよい。発光素子2は対向基板5と接する面とは反対の面に一対の電極端子6を具備し、それぞれの電極端子6が硬化膜3中に延在する金属配線4と接続されている。なお、硬化膜3中に延在する複数本の金属配線4は、硬化膜3により覆われており、硬化膜3は、絶縁膜としても機能するため、電気的絶縁性を保持する構成となっている。さらに発光素子2が、対向基板5に対して対向した位置に設けられた発光素子駆動基板7に付加された駆動素子8と、金属配線4や4cを通じて電気的に接続されて、発光素子2の発光を制御させることができる。また、発光素子駆動基板7は、例えばはんだバンプ10を介して金属配線4と電気的に接続されている。さらに金属配線4などの金属の拡散を防止するため、バリアメタル9を配してもよい。なお、以後図中金属配線4cは発光素子駆動基板7を貫通して駆動素子8と接続してもよい。
【0195】
前記硬化膜3は本発明の樹脂組成物または樹脂シートを硬化した硬化膜である。
【0196】
金属配線4の材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、金や銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられ、銅が好ましい。
前記表示装置の別実施態様として、
図4に示すように、
図1の表示装置に対し、発光素子2の少なくとも一部と接するように配した硬化膜16を設けた構成を例示している。発光素子2の少なくとも一部と接するように配した硬化膜16は、本発明の樹脂組成物または樹脂シートを硬化した硬化膜から構成されていてもよく、また本発明の樹脂組成物または樹脂シートを硬化した硬化膜以外の材料から構成されてもよく、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂など公知のものを使用してもよい。
【0197】
また、本発明において、硬化膜の全体の厚みが5μm~100μmであることが好ましい。
【0198】
硬化膜の全体の厚みが5μm~100μmであることにより、発光素子を有する表示装置自体の低背化、配線短距離化による配線の短絡など配線不良の抑制や低損失化の抑制、高速応答性の向上が可能になる。
【0199】
硬化膜の全体の厚みとは、一の硬化膜の少なくとも一部が他の硬化膜に接する連続した硬化膜の層全体の厚みをいう。例えば前述の
図1のように硬化膜3を複数積層した場合は、
図1の12で示した領域が硬化膜の層全体の厚みである。全体の厚みは好ましくは7~70μm、より好ましくは8~60μmである。5μm未満であると金属配線の保護が不十分なため、配線の短絡など配線不良の懸念があり、100μmを超えると表示装置自体の低背化、配線短距離化による配線の短絡など配線不良の抑制や低損失化の抑制、高速応答性の向上という点で不都合を生じる場合がある。
【0200】
また、硬化膜を複数積層する場合、硬化膜の層数が2層以上10層以下であることが好ましい。
【0201】
硬化膜は複数の発光素子を配置する観点から、1層以上が好ましく、さらに2層以上とすることで、発光素子と接続可能な金属配線数を増加させることができるため、複数の発光素子を配置することができ、また、パッケージ低背化や配線短距離化による配線の短絡など配線不良の抑制や低損失化、高速応答性の向上の観点から10層以下が好ましい。
【0202】
本構成により、微小な発光素子が適用可能であり、また複数の発光素子の高密度実装が可能となり、幅広いサイズで高解像度な発光素子を有する表示装置を得ることができる。さらに微細な金属配線を形成することが可能になり、単位面積中で形成できる配線数が増加するため硬化膜全体の厚みを小さくすることができ、発光素子を有する表示装置自体の低背化、配線短距離化による配線の短絡など配線不良の抑制や低損失化の抑制、高速応答性の向上が可能になる。
【0203】
微小な発光素子を適用する、また発光素子の高密度実装化の観点から、金属配線の底面部の最長長さは、好ましくは2~15μm、より好ましくは2~10μm、さらに好ましくは、2~5μmである。2μm未満であると発光素子2との接続不良を生じる場合があり、20μmを超えると微小な発光素子の適用や高密度実装化に弊害となる場合がある。
【0204】
また、前記発光素子が1辺の長さが5μm以上700μm以下のLEDであることが好ましく、前記発光素子が1辺の長さが5μm以上100μm以下のLEDであることがさらに好ましい。
【0205】
また、本発明において、複数の前記発光素子の間に、前記発光素子の厚み以上の厚みを有し、前記(A)樹脂を含む樹脂組成物を硬化した硬化膜から構成される隔壁を設けてもよい。
【0206】
別の実施態様として
図2に示すように、発光素子2を有する表示装置1の画素数に応じた繰り返しパターン、すなわち各発光素子2間またはその周囲に、隔壁11を有することが好ましい。この構成により、対向基板5との貼り合わせが容易になるため好ましい。
【0207】
隔壁の厚みは、各発光素子の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、5μm~120μmが好ましい。
【0208】
なお、隔壁は、本発明の樹脂組成物または樹脂シートを硬化した硬化膜でもよく、またそれ以外の材料から構成されてもよく、エポキシ樹脂、(メタ)アクリルポリマ、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリシロキサンなど公知のものを使用してもよい。
【0209】
また、複数の前記発光素子の間に、前記発光素子の厚み以上の厚みを有する隔壁を、発光素子を覆う前記硬化膜中に配することが好ましい。
【実施例】
【0210】
以下、実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の樹脂組成物または樹脂シートの評価は以下の方法により行った。なお、評価には、あらかじめ1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過した樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)を用いた。
【0211】
<感光性を有しない樹脂組成物の評価>
(1)感光性を有しない樹脂組成物からなる硬化膜の開口パターン形状評価
ワニスを作製して8インチのシリコンウエハ上に、加熱処理後の膜厚が7μmとなるよう、塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークを行い、プリベーク膜を作製した。プリベークは110℃で3分間行った。その後、プリベーク膜上にポジ型フォトレジストOFPR-800(東京応化製)を塗布し、100℃で10分間プリベークを行った。次いで、i線ステッパー((株)ニコン製、NSR-2205i14)を用いてそれぞれ100~800mJ/cm2の露光量にて露光した。露光に用いた円形パターンのサイズは30μmである。露光後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(多摩化学工業製)を用いて、現像前後の未露光部の膜厚変化が1.5μmとなるような条件で現像し、次いで純水でリンスし、振り切り乾燥をし、パターン形成膜を得た。なお、プリベーク後および現像後の膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製光干渉式膜厚測定装置ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率を1.629として測定した。
【0212】
次に、50℃から3.5℃/分で、100℃まで昇温し、続けて100℃で30分加熱処理を行った。その後3.5℃/分で160℃まで昇温し、続けて160℃で10分間ベークを行った後、剥離液106(東京応化製)に3分間浸漬させ、純水でリンスすることで、フォトレジスト膜を除去した。
【0213】
その後、イナートオーブンCLH-21CD-S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素気流下において酸素濃度20ppm以下で50℃から3.5℃/分で、100℃まで昇温し、続けて100℃で30分加熱処理を行った。その後3.5℃/分で、表3に記載のキュア温度である200℃、230℃もしくは250℃まで昇温し、続けて、表3に記載の昇温後のキュア温度で1時間加熱処理を行ない、パターン形成膜を硬化させて硬化膜を得た。
【0214】
温度が50℃以下になったところでウエハを取り出した後、ウエハを割断し、5μmの円形パターン断面形状を走査型電子顕微鏡S-4800(日立ハイテク製)を用いて観察、測定した。なお、上部の開口パターンと下部の開口パターンを直線で結んだものを傾斜辺として傾斜辺の角度を求めた。
【0215】
その結果、傾斜辺の角度が40°以上80°以下の場合は良好として2、40°以下または80°以上の場合は不良として1、と評価した。
【0216】
(2)感光性を有しない樹脂組成物の耐薬品性の評価
ワニスを作製して8インチのシリコンウエハ上に、加熱処理後の膜厚が7μmとなるよう、塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークを行い、プリベーク膜を作製した。プリベークはいずれも110℃で3分間行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(多摩化学工業製)を用いて、現像前後の未露光部の膜厚変化が1.5μmとなるような条件で現像し、次いで純水でリンスし、振り切り乾燥をし、現像された樹脂膜を得た。
【0217】
その後、塗布膜をイナートオーブン(光洋サーモシステム(株)製、CLH-21CD-S)を用いて、窒素気流下において酸素濃度20ppm以下で50℃から3.5℃/分で、100℃まで昇温し、続けて100℃で30分加熱処理を行った。その後3.5℃/分で、表3に記載のキュア温度である200℃、230℃もしくは250℃まで昇温し、続けて、表3に記載の昇温後のキュア温度で1時間加熱処理を行ない、塗布膜を硬化させて硬化膜を得た。なお、プリベーク後および現像後の塗布膜の膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製光干渉式膜厚測定装置ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率を1.629として測定し、硬化膜の膜厚は屈折率1.629で測定した。
【0218】
温度が50℃以下になったところでシリコンウエハを取り出し、得られた硬化膜をNMP/DMSO/エタノールアミン=70/20/10からなるストリッパーに浸漬し、70℃で30分間処理した。その後剥がれや溶出の有無を観察し、膜厚変化率を測定した。
【0219】
その結果、浸漬前後の膜厚変化率が5%以下の場合は極めて良好として3、膜厚変化率が5%を超えて10%以下の場合は良好として2、膜厚変化率が10%を超えるか剥がれや溶出が観測された場合は不良として1、と評価した。膜厚変化率の数値が小さければより耐薬品性が良いことを示す。
【0220】
(3)銅配線基板上での感光性を有しない樹脂組成物のHAST耐性評価
銅配線での剥離評価を行うにあたり、以下の評価基板を準備した。8インチシリコンウエハ上に、厚み3μm、幅50μm、配線間隔100μmの銅配線を作成した。これを評価基板として使用した。
【0221】
ワニスを上記評価基板上に、加熱処理後の膜厚が7μmとなるよう、塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークを行い、プリベーク膜を作製した。プリベークはいずれも110℃で3分間行った。その後、イナートオーブンCLH-21CD-S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素気流下において酸素濃度20ppm以下で50℃から3.5℃/分で、100℃まで昇温し、続けて100℃で30分加熱処理を行った。その後3.5℃/分で、表3に記載のキュア温度である200℃、230℃もしくは250℃まで昇温し、続けて、表3に記載の昇温後のキュア温度で1時間加熱処理を行ない、プリベーク膜を硬化させて硬化膜を得た。温度が50℃以下になったところで評価基板(以後試料とする)を取り出した。
【0222】
次に、試料をHAST装置に投入し、温度130℃、湿度85%で168時間処理を行った。その後、試料を取り出し、樹脂組成物-銅配線間での剥離を観察するため、収束イオンビーム加工装置付属 走査型電子顕微鏡Versa 3D Dual Beam(FEI(株)製)を用いて、試料の切削、および倍率50,000倍にて断面観察を行った。
【0223】
その結果、樹脂組成物-銅配線間に剥離が見られないものを極めて良好として2、剥離や空洞など一部欠陥が見られるものをやや不良として1、剥離や空洞など欠陥が全体に見られるものを不良として0、と評価した。剥離や空洞などが少ないほどHAST耐性が良いことを示す。
【0224】
<感光性を有する樹脂組成物の評価>
(4)感光性を有する樹脂組成物からなる硬化膜の開口パターン形状評価
ワニスを作製して8インチのシリコンウエハ上に、加熱処理後の膜厚が7μmとなるよう、塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークを行い、プリベーク膜を作製した。プリベークは110℃で3分間行った。その後、i線ステッパー((株)ニコン製、NSR-2205i14)を用いてそれぞれ100~800mJ/cm2の露光量にて露光した。露光に用いた円形パターンのサイズは5μmである。露光後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(多摩化学工業製)を用いて、現像前後の未露光部の膜厚変化が1.5μmとなるような条件で現像し、次いで純水でリンスし、振り切り乾燥をし、パターン形成膜を得た。なお、プリベーク後および現像後の膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製光干渉式膜厚測定装置ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率を1.629として測定した。
【0225】
現像後、イナートオーブンCLH-21CD-S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素気流下において酸素濃度20ppm以下で50℃から3.5℃/分で、100℃まで昇温し、続けて100℃で30分加熱処理を行った。その後3.5℃/分で、表4に記載のキュア温度である200℃、230℃もしくは250℃まで昇温し、続けて、表4に記載の昇温後のキュア温度で1時間加熱処理を行ない、パターン形成膜を硬化させて硬化膜を得た。
【0226】
温度が50℃以下になったところでウエハを取り出した後、ウエハを割断し、5μmの円形パターン断面形状を走査型電子顕微鏡S-4800(日立ハイテク製)を用いて観察、測定した。なお、上部の開口パターンと下部の開口パターンを直線で結んだものを傾斜辺として傾斜辺の角度を求めた。
【0227】
その結果、傾斜辺の角度が40°以上80°以下の場合は良好として2、40°以下または80°以上の場合は不良として1、と評価した。
【0228】
(5)感光性を有する樹脂組成物の耐薬品性の評価
表4に示した以外は上記(2)に同じである。
【0229】
(6)銅配線基板上での感光性を有する樹脂組成物のHAST耐性評価
表4に示した以外は上記(3)に同じである。
【0230】
<合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成>
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、以下、BAHFとする)18.3g(0.05モル)をアセトン100mLおよびプロピレンオキシド(東京化成(株)製)17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間撹拌し、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0231】
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素(和光純薬(株)製)を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0232】
【0233】
<合成例2 フェノール三核体の合成>
冷却管、温度計を備えた100mLの2口フラスコに、m-クレゾール3.2g(30mmol)及びp-ヒドロキシベンズアルデヒド1.2g(10mmol)を仕込み、2-エトキシエタノール10mLに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸1mLを加えた後、100℃で2時間加熱、攪拌し反応させた。反応後、得られた溶液を水で再沈殿操作を行い粗生成物を得た。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿操作を行った後、得られた生成物を濾別、真空乾燥を行うことによって、下記式で表されるフェノール3核体化合物を得た。
【0234】
【0235】
<合成例3 フェノール三核体の合成>
冷却管、温度計を備えた100mLの2口フラスコに、m-クレゾール3.2g(30mmol)及びp-ヒドロキシアセトフェノン1.4g(10mmol)を仕込み、2-エトキシエタノール10mLに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸1mLを加えた後、100℃で2時間加熱、攪拌し反応させた。反応後、得られた溶液を水で再沈殿操作を行い粗生成物を得た。粗生成物をアセトンに再溶解し、さらに水で再沈殿操作を行った後、得られた生成物を濾別、真空乾燥を行うことによって、下記式で表されるフェノール3核体化合物を得た。
【0236】
【0237】
<合成例4 ポリベンゾオキサゾール前駆体(A-1)の合成>
乾燥窒素気流下、4,4‘-ジアミノジフェニルエーテル(以下、4,4‘-DAEと呼ぶ)1.5g(0.0075モル)、BAHF12.8g(0.035モル)、RT-1000(HUNTSMAN(株)製)5.0g(0.0050モル)をNMP100gに溶解させた。ここに、ドデカン酸ジイミダゾール(7.4g、0.023モル)、PBOM(8.1g、0.023モル)をNMP25gとともに加えて、85℃で3時間反応させた。次に、SiDA0.6g(0.0025モル)、ODPA0.8g(0.0025モル)、NA0.8g(0.0050モル)をNMP25gとともに加えて、85℃で1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸13.2g(0.25モル)をNMP25gとともに加えて、室温で1時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を水1.5Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の通風乾燥機で3日間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体(A-1)の粉末を得た。
【0238】
<合成例5 ポリベンゾオキサゾール前駆体(A-2)の合成>
乾燥窒素気流下、BAHF27.5g、(0.075モル)をNMP257gに溶解させた。ここに、PBOM17.2g(0.048モル)をNMP20gとともに加えて、85℃で3時間反応させた。続いて、RT-1000(HUNTSMAN(株)製)20.0g(0.02モル)、SiDA1.2g(0.005モル)、PBOM14.3g(0.04モル)をNMP50gとともに加えて、85℃で1時間反応させた。さらに、末端封止剤として、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物3.9g(0.024モル)をNMP10gとともに加えて、85℃で30分反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸52.8g(0.50モル)をNMP87gとともに加えて、室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の通風乾燥機で3日間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体(A-2)の粉末を得た。
【0239】
<合成例6 ポリイミド前駆体(A-3)の合成>
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン51.9g(0.086モル)および1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(以下、SiDAと呼ぶ)1.0g(0.004モル)をNMP200gに溶解した。ここに4,4’-オキシジフタル酸無水物(以下、ODPAと呼ぶ)31.0g(0.10モル)を加え、40℃で2時間撹拌した。そして末端封止剤として3-アミノフェノール(東京化成工業(株)製)1.1g(0.01モル)をNMP10gとともに加えて、40℃で1時間反応させた。その後、ジメチルホルアミドジメチルアセタール(三菱レーヨン(株)製、以下、DFAと呼ぶ)7.1g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を滴下した。滴下後、40℃で2時間撹拌を続けた。撹拌終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。さらに水2Lで3回洗浄を行い、集めたポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド前駆体(A-3)を得た。
【0240】
<合成例7 ポリイミド前駆体(A-4)の合成>
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン41.1g(0.068モル)、プロピレンオキシドおよびテトラメチレンエーテルグリコール構造を含むジアミン(RT-1000、HUNTSMAN(株)製))18.0g(0.018モル)およびSiDA1.0g(0.004モル)をNMP200gに溶解した。ここにODPA31.0g(0.10モル)を加え、40℃で2時間撹拌した。そして末端封止剤として3-アミノフェノール1.1g(0.01モル)をNMP10gとともに加えて、40℃で1時間反応させた。その後、DFA(三菱レーヨン(株)製)6.0g(0.05モル)をNMP5gで希釈した溶液を滴下した。滴下後、40℃で2時間撹拌を続けた。撹拌終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。さらに水2Lで3回洗浄を行い、集めたポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド前駆体(A-4)を得た。
【0241】
<合成例8 ポリイミド(A-5)の合成>
乾燥窒素気流下、BAHF29.3g(0.08モル)、SiDA1.2g(0.005モル)、末端封止剤として、3-アミノフェノール3.3g(0.03モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA31.2g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリイミド(A-5)の粉末を得た。
【0242】
<合成例9 フェノール樹脂(B-1)の合成>
乾燥窒素気流下、m-クレゾール108.1g(1.0モル)、ベンズアルデヒド34.0g(0.32モル)、サリチルアルデヒド90.4g(0.74モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-1)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=70:30である。
【0243】
<合成例10 フェノール樹脂(B-2)の合成>
乾燥窒素気流下、m-クレゾール108.1g(1.0モル)、ベンズアルデヒド11.7g(0.11モル)、サリチルアルデヒド116.0g(0.95モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-2)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=90:10である。
【0244】
<合成例11 フェノール樹脂(B-3)の合成>
乾燥窒素気流下、m-クレゾール108.1g(1.0モル)、ベンズアルデヒド44.6g(0.42モル)、サリチルアルデヒド76.9g(0.63モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-3)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=60:40である。
【0245】
<合成例12 フェノール樹脂(B-4)の合成>
乾燥窒素気流下、m-クレゾール108.1g(1.0モル)、サリチルアルデヒド128.2g(1.05モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-4)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=100:0である。
【0246】
<合成例13 フェノール樹脂(B-5)の合成>
乾燥窒素気流下、m-クレゾール108.1g(1.0モル)、ベンズアルデヒド56.2g(0.53モル)、サリチルアルデヒド64.7g(0.53モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-5)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=50:50である。
【0247】
<合成例14 フェノール樹脂(B-6)の合成>
乾燥窒素気流下、m-クレゾール108.1g(1.0モル)、アセトフェノン38.4g(0.32モル)、4-ヒドロキシアセトフェノン100.8g(0.74モル)、2-エトキシエタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、120℃で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-6)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=70:30である。
【0248】
<合成例15 フェノール樹脂(B-7)の合成>
乾燥窒素気流下、合成例2で得られた3核体フェノール化合物320.4g(1.0モル)、ベンズアルデヒド34.0g(0.32モル)、サリチルアルデヒド90.4g(0.74モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-7)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=70:30である。
【0249】
<合成例16 フェノール樹脂(B-8)の合成>
乾燥窒素気流下、合成例2で得られた3核体フェノール化合物320.4g(1.0モル)、ベンズアルデヒド11.7g(0.11モル)、サリチルアルデヒド116.0g(0.95モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-8)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=90:10である。
【0250】
<合成例17 フェノール樹脂(B-9)の合成>
乾燥窒素気流下、合成例2で得られた3核体フェノール化合物320.4g(1.0モル)、ベンズアルデヒド44.6g(0.42モル)、サリチルアルデヒド76.9g(0.63モル)、エタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、65℃還流下で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-9)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=60:40である。
【0251】
<合成例18 フェノール樹脂(B-10)の合成>
乾燥窒素気流下、合成例2で得られた3核体フェノール化合物320.4g(1.0モル)、アセトフェノン38.4g(0.32モル)、4-ヒドロキシアセトフェノン100.8g(0.74モル)、2-エトキシエタノール200g及びパラトルエンスルホン酸8.6g(0.05モル)を反応容器に仕込み、120℃で18時間反応させた。反応系を苛性ソーダで中和後、メチルイソブチルケトンと水を添加し、5回分液洗浄を行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを100℃で減圧留去させ、フェノール樹脂(B-10)を得た。一般式(5)および一般式(6)で表される構造単位数の比率は一般式(5):一般式(6)=70:30である。
【0252】
<合成例19 フェノール樹脂の合成(B-11)>
乾燥窒素気流下、m-クレゾール70.2g(0.65モル)、p-クレゾール37.8g(0.35モル)、37重量%、ホルムアルデヒド水溶液75.5g(ホルムアルデヒド0.93モル)、シュウ酸二水和物0.63g(0.005モル)、メチルイソブチルケトン264gをフラスコに仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて昇温し、その後に、フラスコ内の圧力を40~67hPaまで減圧して揮発分を除去し、室温まで冷却してフェノール樹脂(B-11)のポリマー固体を得た。GPCにより求めた重量平均分子量は3500であった。
【0253】
<合成例20 感光剤(キノンジアジド化合物)の合成(D-1)>
乾燥窒素気流下、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル-1)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学工業(株)製、以下TrisP-PAとする)、21.2g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド(東洋合成(株)製、NAC-5)37.5g(0.14モル)をγ-ブチロラクトン450gに室温において溶解させた。ここに、γ-ブチロラクトン50gと混合したトリエチルアミン12.7gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、下記式で表されるキノンジアジド化合物(D-1)を得た。
【0254】
【0255】
<合成例21 感光剤(キノンジアジド化合物)の合成(D-2)>
乾燥窒素気流下、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル-1)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学工業(株)製、以下TrisP-PAとする)、21.2g(0.05モル)と4-ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド(東洋合成(株)製、NAC-5)37.5g(0.14モル)をγ-ブチロラクトン450gに室温において溶解させた。ここに、γ-ブチロラクトン50gと混合したトリエチルアミン12.7gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、下記式で表されるキノンジアジド化合物(D-2)を得た。
【0256】
【0257】
実施例、比較例に用いた(C-1)成分、(C-2)成分、(C-3)成分、(C-4)成分、(C-5)成分の構造、溶媒を以下に示す。
【0258】
【0259】
【0260】
(C-1):YX-4000HK[ビフェニル型環状エーテルタイプ熱架橋剤](三菱ケミカル(株)製)
(C-3):TMOM-BP[ビフェニル型アルコキシメチルタイプ熱架橋剤](本州化学工業(株)製)
(C-4):HMOM-TPHAP[トリフェニルメタン型アルコキシメチルタイプ熱架橋剤](本州化学工業(株)製)
溶媒:ガンマブチロラクトン(GBL)
[実施例1~23、26~43、比較例1~16、参考例25]
合成例4~8で得られた(A)樹脂(A-1)~(A-5)に、合成例9~19で得られた(B)フェノール樹脂(B-1)~(B-11)、(C)熱架橋剤(C-1)~(C-5)、合成例20~21で得られた感光性化合物(D-1)、(D-2)を表1~2に示す質量部で加えて溶媒としてGBLを用いてワニスを作製した。これらの特性を上記評価方法により測定した。構成成分、測定結果を表3~4に示す。表において、実施例25は参考例25と読み替える。
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【符号の説明】
【0267】
1 表示装置
2 発光素子
3 硬化膜
4、4c 金属配線
5 対向基板
6 電極端子
7 発光素子駆動基板
8 駆動素子
9 バリアメタル
10 はんだバンプ
11 隔壁
12 硬化膜の全体の厚み
13 基板
14 傾斜辺
15 傾斜辺の角度
16 硬化膜