(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】降車支援装置および該方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20241119BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20241119BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2021001406
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】平田 義人
(72)【発明者】
【氏名】大坪 智範
(72)【発明者】
【氏名】上村 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】前田 真聡
(72)【発明者】
【氏名】松田 紘明
(72)【発明者】
【氏名】柏原 正人
(72)【発明者】
【氏名】中上 千恵子
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-262752(JP,A)
【文献】特開平10-203379(JP,A)
【文献】特開2007-001499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
B62D 1/16-20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席に着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席を後方に移動させる降車支援装置であって、
座高に基づいてステアリングホイールの高さ求めるためのホイール高さ情報を記憶する記憶部と、
ステアリングホイールの高さを変更する高さ変更部と、
前記乗員の座高を取得する座高取得部と、
前記乗員が降車すると判定した前記場合
であって前記運転席を後方に移動させた後に、前記座高取得部で取得した座高
に基づいて前記ホイール高さ情報を用いて前記ステアリングホイールの高さを求め、前記求めたステアリングホイールの高さ
となるように前記高さ変更部を制御する高さ制御部とを備え、
前記ホイール高さ情報は、前記座高が所定の閾値より短い場合には、前記ステアリングホイールの高さは所定の一定値であり、前記座高が前記所定の閾値以上である場合には、前記所定の一定値から、前記座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、設定されている、
降車支援装置。
【請求項2】
前記記憶部は、さらに、身長および目の高さに基づいて座高を求めるための座高変換情報を記憶し、
前記座高取得部は、
前記乗員の身長を入力する入力部と、
前記車両の運転席に着座する前記乗員における目の高さを計測する計測部と、
前記入力部に入力された身長および前記計測部で計測した目の高さに基づいて
前記座高変換情報を用いて前記乗員の座高を求める座高処理部とを備える、
請求項1に記載の降車支援装置。
【請求項3】
前記乗員の身長を取得する身長取得部をさらに備え、
前記ホイール高さ情報は、座高に基づいてステアリングホイールの高さ求めるための第1および第2ホイール高さ情報を備え、前記第2ホイール高さ情報は、前記第1ホイール高さ情報に対し、前記座高が同一の場合には、前記ステアリングホイールの高さが高くなるように、設定されており、
前記高さ制御部は、
前記乗員が降車すると判定した前記場合であって前記運転席を後方に移動させた後に、前記運転席のリフト量が所定の閾値未満である場合に、前記座高取得部で取得した座高および前記身長取得部で取得された身長
に基づいて前記第1ホイール高さ情報を用いて前記ステアリングホイールの高さを求め、前記求めたステアリングホイールの高さ
となるように前記高さ変更部を制御
し、前記運転席のリフト量が所定の閾値以上である場合に、前記座高取得部で取得した座高および前記身長取得部で取得された身長に基づいて前記第2ホイール高さ情報を用いて前記ステアリングホイールの高さを求め、前記求めたステアリングホイールの高さとなるように前記高さ変更部を制御する、
請求項1または請求項2に記載の降車支援装置。
【請求項4】
前記乗員の腕の長さを取得する腕長取得部をさらに備え、
前記運転席を後方に移動させる場合に、前記腕長取得部で取得した腕の長さが長い程、移動量を大きくする、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の降車支援装置。
【請求項5】
車両の運転席に着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席を後方に移動させる降車支援方法であって、
前記乗員の座高を取得する座高取得工程と、
前記乗員が降車すると判定した前記場合
であって前記運転席を後方に移動させた後に、前記座高取得工程で取得した座高
に基づいてホイール高さ情報を用いてステアリングホイールの高さを求め、前記求めたステアリングホイールの高さ
となるように、前記ステアリングホイールの高さを変更する高さ制御工程とを備え、
前記ホイール高さ情報は、前記座高が所定の閾値より短い場合には、前記ステアリングホイールの高さは所定の一定値であり、前記座高が前記所定の閾値以上である場合には、前記所定の一定値から、前記座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、設定されている、
降車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員に対する運転席からの降車を支援する降車支援装置および降車支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員が運転席から降車する場合、降車の動作を行う身体とステアリングホールや運転席等とが干渉することがあり、降車の動作が阻害される場合がある。このため、降車し易くするために、乗員に対する運転席からの降車を支援する装置が知られており、例えば、特許文献1に車両シート用の退避動作制御装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された車両シート用の退避動作制御装置は、降車タイミングを検知して最前列シートを自動で車両前後方向にスライド移動させる退避動作コントローラを備える退避動作制御装置であって、前記最前列シートのドア側に配置されるセンターピラーのピラー前端及びピラー後端のそれぞれの曲率部分を除いた直線部分の間を二等分した線をピラー二等分線というとき、前記退避動作コントローラは、前記降車タイミングを検知すると、前記最前列シートの車両側面方向から見たリクライニング回転中心部が、前記降車タイミングを検知したときの運転姿勢シート位置から、前記ピラー二等分線と重なる位置を含めた車両前方側の退避シート位置まで、スライド移動するように退避動作制御処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された車両シート用の退避動作制御装置は、降車タイミングを検知して最前列シートを退避シート位置まで自動でスライド移動させるので、乗員の足元の空間が広がるため、乗員は、降車し易くなる。しかしながら、降車の動作は、身体全体の動作であるから、足元だけの考慮では、不十分な場合もある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、より降車し易くできる降車支援装置および降車支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる降車支援装置は、車両の運転席に着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席を後方に移動させる装置であって、ステアリングホイールの高さを変更する高さ変更部と、前記乗員の座高を取得する座高取得部と、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記座高取得部で取得した座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、前記高さ変更部を制御する高さ制御部とを備える。
【0008】
車両の運転席に着座する乗員が降車する場合、運転席が後方に移動するだけでなく、ステアリングホイールが持ち上げられると、乗員の足元の空間だけでなく、乗員の上半身周辺の空間も広がるため、乗員は、より降車し易くなる。この乗員が降車する場合、乗員は、ステアリングホイールを掴んで上半身を起こしながら降車する場合がある。この際に、ステアリングホイールが高く持ち上げられていると、座高が高い程、乗員は、ステアリングホイールが掴み難く、ステアリングホイールを掴んで上半身を起こす際に、腕が肘で曲がるため、腕に力を入れ難い。上記降車支援装置は、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記座高取得部で取得した座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、前記高さ変更部を制御して前記ステアリングホイールの高さを変更する。このため、乗員は、ステアリングホイールが掴み易くなり、ステアリングホイールを掴んで上半身を起こす際に、腕がより伸びるため(肘での曲がりがより浅くなるため)、腕に力を入れ易くなる。したがって、上記降車支援装置は、より降車し易くできる。
【0009】
他の一態様では、上述の降車支援装置において、前記座高取得部は、前記乗員の身長を入力する入力部と、前記車両の運転席に着座する前記乗員における目の高さを計測する計測部と、前記入力部に入力された身長および前記計測部で計測した目の高さに基づいて前記乗員の座高を求める座高処理部とを備える。
【0010】
目の高さに基づいていわゆるヒップポイントを求めることが可能であり、身長とヒップポイントとに基づいて座高を求めることが可能である。上記降車支援装置は、入力部、計測部および座高処理部を備えるので、簡易な手法で精度良く座高を取得できる。
【0011】
他の一態様では、これら上述の降車支援装置において、前記乗員の身長を取得する身長取得部をさらに備え、前記高さ制御部は、さらに、前記座高が同一の場合には、前記身長取得部で取得された身長が低い程、前記ステアリングホイールの高さが高くなるように、前記高さ変更部を制御する。好ましくは、上述の降車支援装置において、前記身長取得部は、前記運転席の座面の高さ(上下方向の位置、リフト量)を取得する。好ましくは、上述の降車支援装置において、前記身長取得部は、前記座高取得部の前記入力部である(前記身長取得部は、前記座高取得部の前記入力部と兼用される)。
【0012】
身長の相対的に低い小柄な乗員は、身長の相対的に高い大柄な乗員より、座面をより高くし、運転席の位置もより前方に位置することが多い。このため、身長の相対的に低い小柄な乗員では、ステアリングホイールの高さを低くしてしまうと、乗員の上半身周辺の空間が狭くなる。上記降車支援装置は、前記座高が同一の場合には、前記身長取得部で取得した身長が低い程、前記ステアリングホイールの高さが高くなるように、前記高さ変更部を制御して前記ステアリングホイールの高さを変更する。このため、前記小柄な乗員でも上半身周辺の空間がより広くなり、乗員は、より降車し易くなる。したがって、上記降車支援装置は、より降車し易くできる。
【0013】
他の一態様では、これら上述の降車支援装置において、前記乗員の腕の長さを取得する腕長取得部をさらに備え、前記運転席を後方に移動させる場合に、前記腕長取得部で取得した腕の長さが長い程、移動量を大きくする。好ましくは、上述の降車支援装置において、前記運転席の前後方向の位置を変更する位置変更部と、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記腕長取得部で取得した腕の長さが長い程、前記運転席の位置が後方になるように、前記位置変更部を制御する位置制御部とをさらに備える、好ましくは、上述の降車支援装置において、前記乗員の身長を入力する第2入力部をさらに備え、前記腕長取得部は、前記第2入力部に入力された身長および前記座高取得部で取得した座高に基づいて前記乗員の腕の長さを求める。
【0014】
このような降車支援装置は、腕の長さが長い程、前記運転席の後方への移動量を大きく(多く)するので、腕の長さが相対的に長い乗員でも、ステアリングホイールが掴み易くなり、ステアリングホイールを掴んで上半身を起こす際に、腕がより伸びるため(肘での曲がりがより浅くなるため)、腕に力を入れ易くなる。したがって、上記降車支援装置は、より降車し易くできる。
【0015】
他の一態様では、これら上述の降車支援装置において、前記高さ制御部は、前記運転席が後方に移動した後に、前記高さ変更部を制御する。好ましくは、上述の降車支援装置において、前記運転席の前後方向の位置を変更する位置変更部と、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記運転席の位置が後方になるように、前記位置変更部を制御する位置制御部とをさらに備え、前記高さ制御部は、前記位置制御部が前記位置変更部を制御した後に、前記高さ変更部を制御する。
【0016】
このような降車支援装置は、運転席を後方に移動した後に、ステアリングホイールを持ち上げるので、前記ステアリングホイールが持ち上がる際に、乗員は、前記ステアリングホイールからより離れるから(ステアリングホイールと乗員との距離がより空くから)、前記ステアリングホイールの持ち上がり動作に対し、乗員に安心感を与えることができる。
【0017】
本発明の他の一態様にかかる降車支援方法は、車両の運転席に着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席を後方に移動させる方法であって、前記乗員の座高を取得する座高取得工程と、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記座高取得工程で取得した座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、前記ステアリングホイールの高さを変更する高さ制御工程とを備える。
【0018】
このような降車支援方法は、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記座高取得工程で取得した座高が高い程、ステアリングホイールの高さが低くなるように、前記ステアリングホイールの高さを変更する。このため、乗員は、ステアリングホイールが掴み易くなり、ステアリングホイールを掴んで上半身を起こす際に、腕がより伸びるため(肘での曲がりがより浅くなるため)、腕に力を入れ易くなる。したがって、上記降車支援方法は、より降車し易くできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる降車支援装置および降車支援方法は、より降車し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態における降車支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】前記降車支援装置の第2入力部を説明するための図である。
【
図3】一例として、前記降車支援装置に記憶される座高変換テーブルを示す図である。
【
図4】一例として、前記降車支援装置に記憶されるホイール高さ情報を示す図である。
【
図5】降車の支援に関する、前記降車支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】降車の際における、運転席の移動およびステアリングホイールの高さ変更を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0022】
実施形態における降車支援装置は、車両に搭載され、前記車両の運転席に着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席を後方に移動させる装置である。この降車支援装置は、ステアリングホイールの高さを変更する高さ変更部と、前記乗員の座高を取得する座高取得部と、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記座高取得部で取得した座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、前記高さ変更部を制御する高さ制御部とを備える。以下、このような降車支援装置について、より具体的に説明する。
【0023】
図1は、実施形態における降車支援装置の構成を示すブロック図である。
図2は、前記降車支援装置の第2入力部を説明するための図である。
図2Aは、斜視図であり、
図2Bは、側面図である。
図3は、一例として、前記降車支援装置に記憶される座高変換テーブルを示す図である。
図4は、一例として、前記降車支援装置に記憶されるホイール高さ情報を示す図である。前記ホイール高さ情報は、座高とステアリングホイールの高さとの対応関係を表し、
図4の横軸は、座高であり、その縦軸は、ステアリングホイールの高さである。
【0024】
ここで、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」および「下」等の方向を表す用語は、車両の前進走行の際の進行方向を「前」とした場合における車両の各方向を指すものとする。
【0025】
実施形態における降車支援装置Dは、例えば、
図1に示すように、入力部1と、座高取得部2と、制御処理部3と、記憶部4と、シート駆動部5と、ステアリング装置6とを備える。
図1に示す例では、降車支援装置Dは、さらに、ヘッドアップディスプレイ(HUD)7を備える。
【0026】
シート駆動部5は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って車両の運転席DSの姿勢を動かす装置である。運転席(運転者用シート)DSは、例えば、
図2に示すように、座面を形成するシートクッションDSaと、その下端(一方端)でシートクッションDSaの後端(他方端)に取り付けられ、背もたれとなるシートバックDSbと、シートバックDSbの上端(他方端)に取り付けられる枕状のヘッドレストDScとを備える。この運転席DSには、シート駆動部5が組み込まれている。シート駆動部5は、本実施形態では、例えば、シートバックDSbの傾きを調整する電動のリクライニング機構51と、前後方向におけるシートクッションDSaの位置(前後位置)を調整する電動のスライド機構52と、上下方向におけるシートクッションDSaの位置(上下位置、高さ)を調整する電動のリフト機構53と、シートクッションDSaの前端(一方端)の高さを上下方向に調整することで、シートクッションDSaの座面の傾きを調整する電動のチルト機構54とを備える。このような電動化されたリクライニング機構51、スライド機構52、リフト機構53およびチルト機構54は、公知の常套手段によって構成され、例えば、特開2011-79472号公報、特開2019-172016号公報および特開2006-218882号公報等に開示されている。前記シートバックDSbの傾き(シートバックDSbの角度)は、上下方向を法線とする水平面(例えば車両の床面等)に対する、シートバックSBの略高さ方向に延びる延長方向とのなす角度によって表される。前記座面の傾きは、前記水平面と前記座面とのなす角度によって表される。
【0027】
入力部1は、制御処理部3に接続され、例えば、運転席DSの姿勢を動かす指示(運転席DSの姿勢を調整する指示)、および、例えば運転席DSに着座する乗員の身長等の降車支援装置Dを動作させる上で必要な各種データを降車支援装置Dに入力する装置である。入力部1は、本実施形態では、
図1および
図2に示すように、第1入力部11と、第2入力部12とを備える。
【0028】
第1入力部11は、前記乗員の身長等の各種データを入力する装置である。第1入力部11は、例えばテンキー等の複数のスイッチを備えて構成されてよいが、本実施形態では、軸周りに回転可能であって軸方向にプッシュ可能な円柱状のダイヤルスイッチであり、例えば、車両室内において、運転席と助手席とを隔てるセンターコンソールに配置される。このダイヤルスイッチでは、ダイヤルスイッチを回転することによって、HUD7(あるいはセンターディスプレイ(不図示))に表示される数値が回転方向に応じて増減し(例えば時計回りの回転によって前記数値が増加し、反時計回りの回転によって前記数値が減少する)、ダイヤルスイッチをプッシュすることによって、HUD7(あるいは前記センターディスプレイ)に表示されている数値が確定し、当該降車支援装置Dに入力される。
【0029】
第2入力部12は、運転席DSの姿勢を動かす指示を入力する装置である。第2入力部12は、本実施形態では、例えば、
図2に示すように、シートバックDSbの傾きを調整する指示を入力するシートバック用スイッチ(SBスイッチ)121と、シートクッションDSaにおける前後位置、上下位置および座面の傾きそれぞれを調整する各指示を入力するシートクッション用スイッチ(SCスイッチ)122とを備え、SBスイッチ121とSCスイッチ122とで運転席DSの側面視形状を模すように、運転席DSの下部側面に配設される。SBスイッチ121は、下端部を回転軸に略前後方向に傾くように構成される。SCスイッチ122は、略中央部を回転軸に前端および後端それぞれを略上下方向に傾くように構成され、さらに、前後方向に動くように構成される。
【0030】
座高取得部2は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、運転席DSに着座する乗員の座高を取得する装置である。座高取得部2は、例えば、第1入力部11であってよく(第1入力部11と兼用されてよく)、前記乗員が、マニュアル入力によって自己の座高を第1入力部11から入力してもよいが、前記乗員が自己の座高を知っていることが少ないので、本実施形態では、座高取得部2は、前記乗員の身長を入力する入力部と、計測部21と、座高処理部22(35)とを備える。
【0031】
この前記乗員の身長を入力する入力部は、入力部1に、第1および第2入力部11、12とは別途に第3入力部として設けられてもよいが、本実施形態では、第1入力部11である(第1入力部11と兼用される)。
【0032】
計測部21は、車両の運転席DSに着座する乗員の目の高さを計測する装置である。前記目の高さは、所定の基準の位置(高さ)、例えば、車両の床面の位置(高さ)、シートクッションDSaの座面の位置(高さ)、あるいは、運転席DSの姿勢に応じたいわゆるヒップポイントの位置(高さ)から計測される。本実施形態では、一例として、前記目の高さは、シートクッションDSaの座面の位置(高さ)(シートの基準点の位置)から計測される。計測部21は、本実施形態では、例えば、目高さデータ取得部211と、目高さ処理部34(212)とを備える。目高さデータ取得部211は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、運転席DSに着座する乗員の目の高さを計測するための所定のデータを取得する装置である。目高さ処理部212(34)は、本実施形態では、後述の制御処理プログラムの実行によって制御処理部3に機能的に構成され、目高さデータ取得部211で取得した前記所定のデータを処理することによって前記乗員の目の高さを求めるものである。
【0033】
例えば、目高さデータ取得部211は、運転席DSに着座する乗員の画像を生成するカメラと、運転席DSに着座する乗員までの距離を測定する距離計とを備え、例えば前記センターディスプレイ(不図示)の横に配置される。目高さ処理部212(34)は、前記カメラで生成した前記乗員の画像、および、前記距離計で測定した前記乗員までの距離に基づいて、前記乗員の目の高さを求める。前記距離計は、例えば、赤外光パルスを送信し、前記乗員で反射した前記赤外光パルスの反射光を受信し、前記赤外光パルスの送信タイミングから前記反射光の受信タイミングまでの時間に基づく、いわゆるTOF(Time of fligt)で距離を測定する。目高さ処理部212(34)は、前記カメラで生成した前記乗員の画像における、前記乗員の顔が写り込むと想定される予め規定された所定の画像領域から、白色フィルタ等の画像処理によって白目部分を抽出して白目部分の画素位置を求め、前記距離計で測定した前記乗員までの距離および前記カメラの撮像光学系の光学特性(例えば撮像倍率等)等から、1画素に写り込む被写体の実長を求め、前記カメラで生成される画像の下端部の実高さ、前記白目部分の画素位置および前記1画素に写り込む被写体の実長から、前記乗員の目の高さを求める。なお、前記カメラで生成される画像の下端部の実高さは、前記カメラにおける撮像光学系の光学特性および撮像方向(光軸方向)等から、予め求められ、記憶部4に記憶される。前記所定の画像領域は、例えば、前記カメラの配置位置、運転席DSの配置位置、前記カメラの撮像光学系の光学特性およびその撮像方向等によって予め求められ、記憶部4に記憶される。あるいは、例えば、目高さデータ取得部211は、前記カメラおよび前記距離計に代え、いわゆるステレオカメラを備える。前記ステレオカメラによって、運転席DSに着座する乗員の画像を生成し、運転席DSに着座する乗員までの距離を測定する。あるいは、例えば、目高さデータ取得部211は、サイズ(大きさ)の既知なマークと、運転席DSに着座する乗員および前記マークの画像を生成するカメラとを備える。前記マークは、乗員が運転席DSに着座した場合でも前記カメラによって撮像可能な箇所、例えばヘッドレストDScの側部に設けられ、前記カメラは、斜め前方から前記乗員の顔および前記マークを撮像するように配置される。目高さ処理部212(34)は、前記カメラで生成した前記乗員の画像における所定の画像領域から、画像処理によって白目部分および前記マークそれぞれを抽出して白目部分の画素位置および前記マークが写り込んだ画素数を求め、前記マークが写り込んだ画素数および前記マークのサイズから1画素に写り込む被写体の実長を求め、前記カメラで生成される画像の下端部の実高さ、前記白目部分の画素位置および前記1画素に写り込む被写体の実長から、前記乗員の目の高さを求める。
【0034】
座高処理部22(35)は、本実施形態では、後述の制御処理プログラムの実行によって制御処理部3に機能的に構成され、第1入力部11に入力された身長および計測部21で計測した目の高さに基づいて前記乗員の座高を求めるものである。座高処理部22(35)については、さらに、後述する。
【0035】
ステアリング装置6は、操舵輪を操舵するための機構である。ステアリング装置6は、例えば、ステアリングホイール61と、ステアリングホイール61に連結されるステアリングシャフト63と、ステアリングホイール61の操作によってステアリングシャフト63に生じる舵角に応じて前記操舵輪に操舵角を与える操舵角駆動機構64と、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従ってステアリングホイール61の高さを変更する高さ変更部62とを備える。高さ変更部62は、より具体的には、例えば、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従ってステアリングホイール61を電動で上下させるチルト機構であり、このチルト機構は、例えば、ステアリングシャフト63のチルト角を変更することで、ステアリングホイール61を上下させる。本実施形態では、ステアリング装置6は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従ってステアリングホイール61を電動で前後させるテレスコピック機構(不図示)をさらに備えている。このような電動化されたチルト機構およびテレスコピック機構は、公知の常套手段で構成され、例えば、特開2020-19327号公報や特開2019-23050号公報等に開示されている。なお、ステアリング装置6は、ステアリングホイール61の操作によってステアリングシャフト63に生じる舵角を検出する舵角センサを備え、操舵角駆動機構64は、前記舵角センサで検出した舵角に応じて前記操舵輪に操舵角を与える機構であってもよい。このような場合では、例えば、ステアリングシャフト63は、その一方端でステアリングホイール61に連結され、その他方端には、いわゆるユニバーサルジョイントが連結され、前記チルト機構でステアリングシャフト63のチルト角を変更することで、ステアリングホイール61が上下される。
【0036】
HUD7は、運転席DSの前方におけるダッシュボードに配置され、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、例えば第1入力部11で入力される乗員の身長等の所定の情報を例えばフロントガラス等の透明な面状光学部材に投影して表示する装置である。HUD7は、公知の常套手段で構成され、例えば、特開2015-161965号公報や特開2019-166886号公報等に開示されている。
【0037】
記憶部4は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、降車支援装置Dの各部1、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、シート駆動部5を制御するシート制御プログラムや、ステアリング装置6における前記チルト機構(高さ変更部62の一例)および前記テレスコピック機構を制御することによって、ステアリングホイールの位置(上下方向の位置(高さ)および前後方向の位置)を制御するホイール制御プログラムや、目高さデータ取得部211で取得した前記所定のデータを処理することによって前記乗員の目の高さを求める目高さ処理プログラムや、第1入力部11に入力された乗員の身長および計測部21で計測した目の高さに基づいて前記乗員の座高を求める座高処理プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、乗員の身長を含む乗員情報や、座高変換情報およびホイール高さ情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部4は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部4は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部3のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。記憶部4は、乗員情報記憶部41と、座高変換情報記憶部42と、ホイール高さ情報記憶部43とを機能的に備える。
【0038】
乗員情報記憶部41は、乗員情報を記憶するものである。前記乗員情報は、乗員の身長を含み、乗員に関する所定の情報である。制御処理部3の制御部31は、第1入力部11で、運転席DSに着座する乗員の身長を受け付けると、その乗員の身長を乗員情報記憶部41に記憶する。なお、乗員情報記憶部41は、乗員を特定し識別する識別子(乗員識別子)と乗員情報とを互いに対応付けて記憶してもよい。これにより、複数の乗員に対する乗員情報が記憶できる。この場合では、例えば、HUD7に乗員識別子を表示し、第1入力部11で乗員識別子の選択を受け付けてから、第1入力部11で前記乗員の身長を受け付ければよい。
【0039】
座高変換情報記憶部42は、座高変換情報を記憶するものである。前記座高変換情報は、身長および目の高さに基づいて座高を求めるための情報である。前記座高変換情報は、例えば、身長および目の高さから座高を算出する関数式であってもよいが、本実施形態では、前記座高変換情報は、例えば、
図3に示す、身長および目の高さと座高とを対応付けた座高変換テーブルCTである。この座高変換テーブルCTは、2次元マトリクス状のテーブルであり、各行の各身長を登録する身長登録領域CTaと、各列の目の各高さを登録する目高さ登録領域CTbと、2次元マトリクス状に各座高を登録する座高登録領域CTcとを備える。この座高変換テーブルCTでは、大略、同一身長では、目の高さが高いほど、より高い座高SHが登録され、同一の目の高さでは、身長が高いほど、より高い座高SHが登録される。例えば、身長150[cm]では、SH11<SH126であり、目の高さ76[cm]では、SH11<SH411である。SH11<SH4126でもある。このような座高変換テーブルCTでは、各行の中から、身長で行を指定するとともに、各列の中から、目の高さで列を指定することによって、2次元マトリクス状に登録されている各座高の中から、これら指定された前記行および前記列の交差する座高が選定(検索、抽出)される。これによって、前記身長および前記目の高さに基づく座高が求められる。
【0040】
ホイール高さ情報記憶部43は、ホイール高さ情報を記憶するものである。前記ホイール高さ情報は、座高に基づいてステアリングホイールの高さ求めるための情報である。前記ホイール高さ情報は、座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、設定されている。そして、前記ホイール高さ情報は、前記座高が同一の場合には、身長が低い程、前記ステアリングホイールの高さが高くなるように、設定されている。前記ホイール高さ情報は、例えば、座高とステアリングホイールの高さとを対応付けたテーブルであってよいが、本実施形態では、前記ホイール高さ情報は、座高からステアリングホイールの高さを算出する関数式である。より具体的には、本実施形態では、例えば、
図4に示すグラフα、βの各関数式Fα(SH)、Fβ(SH)である。グラフαの関数式Fα(SH)は、身長の相対的に高い大柄な乗員用であり、SH<SH1では、Fα(SH)=HH1であって、SH1≦SHでは、Fα(SH)=HH1-a×(SH-SH1)である。SHは、座高であり、Fα(SH)は、座高SHの場合のステアリングホイールの高さであり、HH1は、予め設定された所定のデフォルトのステアリングホイールの高さであり、SH1は、予め設定された所定の座高であり、-aは、傾きであり、予め設定される(a>0)。グラフβの関数式Fβ(SH)は、身長の相対的に低い小柄な乗員用であり、SH<SH1では、Fβ(SH)=HH1であって、SH1≦SHでは、Fβ(SH)=HH1-b×(SH-SH1)である。Fβ(SH)は、座高SHの場合のステアリングホイールの高さであり、-bは、傾きであり、予め設定される(b>0)。このようにホイール高さ情報Fα(SH)、Fβ(SH)は、座高SHがSH1より短い場合には、ステアリングホイールの高さが一定値HH1であり、座高SHがSH1以上である場合には、ステアリングホイールの高さが一定値HH1より低くなるように設定されている。前記ホイール高さ情報は、上述のように、前記座高が同一の場合には、身長が低い程、前記ステアリングホイールの高さが高くなるように、設定されているので、a>b>0(-a<-b<0)である。乗員が小柄か大柄かの前記判定は、例えば、シート駆動部5のリフト機構53によるリフト量に基づき実行され、乗員が小柄か大柄かを分ける閾値(判定閾値)が予め設定され、前記リフト量が前記判定閾値以上である場合には、小柄な乗員と判定され、Fβ(SH)が用いられ、前記リフト量が前記判定閾値未満である場合には、大柄な乗員と判定され、Fα(SH)が用いられる。これらHH1、SH1、a、bおよび前記判定閾値は、例えば、複数のサンプルから、予め適宜に設定される。
【0041】
なお、乗員が小柄か大柄かの前記判定は、例えば、これらを分ける閾値(第2判定閾値)が予め設定され、乗員の身長が前記第2判定閾値以上である場合には、大柄な乗員と判定され、Fα(SH)が用いられ、乗員の身長が前記第2判定閾値未満である場合には、小柄な乗員と判定され、Fβ(SH)が用いられてもよい。また、
図4に示す例では、ホイール高さ情報は、2個の関数式Fα(SH)、Fβ(SH)を備えて構成されたが、3個以上の複数であってもよい。また、
図4に示す例では、縦軸(すなわち、関数式F(SH)の値)は、ステアリングホイールの高さであるが、本実施形態では、上述したように、ステアリングホイールの高さは、ステアリングシャフト63のチルト角をステアリング装置6における前記チルト機構で調整することによって変更されるので、縦軸(すなわち、関数式F(SH)の値)は、ステアリングシャフト63のチルト角で表されてよい。
【0042】
制御処理部3は、降車支援装置Dの各部1、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、車両の運転席DSに着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席DSを後方に移動させ、前記乗員の座高が高い程、ステアリングホイールの高さが低くなるように、前記運転席DSおよびステアリングホイールを制御するための回路である。制御処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部3には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部31、シート制御部32、ホイール制御部33、目高さ処理部34(212)および座高処理部35(22)が機能的に構成される。
【0043】
制御部31は、降車支援装置Dの各部1、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、降車支援装置D全体の制御を司るものである。
【0044】
シート制御部32は、シート駆動部5を制御するものである。より具体的には、
図2Aに示すように、SBスイッチ121が前方に傾けられると、シート制御部32は、SBスイッチ121が傾いて前方に位置している間、シートバックDSbを前方に傾け、シートバックDSbの傾きを徐々に小さくするように、リクライニング機構51を制御し、SBスイッチ121が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、シート制御部32は、リクライニング機構51を停止する。シートバックDSbは、その傾きでその姿勢を維持する。一方、SBスイッチ121が後方に傾けられると、シート制御部32は、シートバックDSbを後方に傾ける点を除き、SBスイッチ121を前方に傾ける、上述の場合と同様に動作する。
図2Aに示すように、SCスイッチ122が前方に動かされると、シート制御部32は、SCスイッチ122が前方に位置している間、シートクッションDSaを前方に徐々に移動するように、スライド機構52を制御する。SCスイッチ122が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、シート制御部32は、スライド機構52を停止する。シートクッションDSaは、その前後位置でその姿勢を維持する。一方、SCスイッチ122が後方に動かされると、シート制御部32は、シートクッションDSaを後方に移動する点を除き、SBスイッチ121を前方に動かす、上述の場合と同様に動作する。
図2Aに示すように、SCスイッチ122の後端が上方に傾けられると、シート制御部32は、SCスイッチ122が傾いて上方に位置している間、シートクッションDSaを徐々に上げるように、リフト機構53を制御し、SCスイッチ122が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、シート制御部32は、リフト機構53を停止する。シートクッションDSaは、その上下位置(高さ)でその姿勢を維持する。一方、SCスイッチ122の後端が下方に傾けられると、シート制御部32は、シートクッションDSaを下げる点を除き、SBスイッチ121の後端を上方に傾ける、上述の場合と同様に動作する。
図2Aに示すように、SCスイッチ122の前端が上方に傾けられると、シート制御部32は、SCスイッチ122が傾いて上方に位置している間、シートクッションDSaの前端を徐々に上げるように、チルト機構54を制御し、SCスイッチ122が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、シート制御部32は、チルト機構54を停止する。シートクッションDSaは、その座面の傾きでその姿勢を維持する。一方、SCスイッチ122の前端が下方に傾けられると、シート制御部32は、シートクッションDSaの前端を下げる点を除き、SBスイッチ121の前端を上方に傾ける、上述の場合と同様に動作する。運転席DSの姿勢が調整されると、シート制御部32は、調整後の運転席DSの姿勢(シートバックDSbの傾き、シートクッションDSaの前後位置、シートクッションDSaの上下位置(高さ、リフト量)、シートクッションDSaのチルト量)を記憶部4に記憶する。
【0045】
そして、シート制御部32は、車両の運転席DSに着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席DSを後方に移動させるように、シート駆動部5を制御する。より具体的には、シート制御部32は、車両の運転席DSに着座する乗員が降車すると判定した場合に、前記運転席DSを予め設定された所定の移動量だけ移動することによって前記運転席の位置が後方になるように、スライド機構52を制御する。これにより、スライド機構52は、例えば、現在位置から前記所定の移動量だけ後方に運転席DSのシートクッションDSaを移動する。なお、シートクッションDSaの後方への移動に対する限界位置が予め設定され、運転席DSのシートクッションDSaが後方への移動中に、前記限界位置に到達した場合に、その移動が停止されてよい。シート制御部32は、この運転席DSの後方への移動を終了すると、この移動の終了をホイール制御部33へ通知する。
【0046】
目高さ処理部34(212)は、上述したように、目高さデータ取得部211で取得した前記所定のデータを処理することによって前記乗員の目の高さを求めるものである。
【0047】
座高処理部35(22)は、第1入力部11に入力された乗員の身長および計測部21で計測した目の高さに基づいて前記乗員の座高を求めるものである。より具体的には、本実施形態では、座高処理部35(22)は、第1入力部11に入力された乗員の身長および計測部21で計測した目の高さに基づき、座高変換情報記憶部42に記憶されている座高変換情報を用いることによって、前記乗員の座高を求める。より詳しくは、本実施形態では、前記座高変換情報は、座高変換テーブルCTであるので、座高処理部35(22)は、各行の中から、第1入力部11に入力され乗員情報として乗員情報記憶部41に記憶された乗員の身長で行を指定するとともに、各列の中から、計測部21で計測した目の高さで列を指定することによって、2次元マトリクス状に登録されている各座高の中から、これら指定された前記行および前記列の交差する座高を選定(検索、抽出)し、この選定した座高を、前記乗員の座高として求める。
【0048】
ホイール制御部33は、ステアリング装置6における前記チルト機構(高さ変更部62の一例)および前記テレスコピック機構を制御することによって、ステアリングホイールの位置(上下方向の位置(高さ)および前後方向の位置)を制御するものである。そして、本実施形態では、ホイール制御部33は、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、座高取得部2で取得した座高が高い程、ステアリングホイールの高さが低くなるように、ステアリング装置6における前記チルト機構(高さ変更部62の一例)を制御する。より具体的には、ホイール制御部33は、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、ホイール高さ情報記憶部43に記憶されているホイール高さ情報を用いることによって、座高取得部2で取得した座高が高い程、ステアリングホイールの高さが低くなるように、ステアリング装置6における前記チルト機構を制御する。より詳しくは、本実施形態では、前記ホイール高さ情報は、2個の関数式Fα(SH)、Fβ(SH)であるので、ホイール制御部33は、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、まず、運転席DSに着座する乗員が大柄な乗員か小柄な乗員かの別を判定し、この判定結果に基づき前記2個の関数式Fα(SH)、Fβ(SH)から1個の関数式F(SH)を選定する。上述の例では、ホイール制御部33は、記憶部4に記憶されたリフト量と前記判定閾値とを比較し、この比較の結果、前記リフト量が前記判定閾値以上である場合には、小柄な乗員と判定し、Fβ(SH)を選定し、前記リフト量が前記判定閾値未満である場合には、大柄な乗員と判定し、Fα(SH)を選定する。ホイール制御部33は、座高取得部2の座高処理部22(35)で求めた乗員の座高SHを、前記選定した関数式F(SH)、例えば関数式Fα(SH)に代入し、前記乗員の座高に対応するステアリングホイールの高さFα(SH)を求める。そして、ホイール制御部33は、シート制御部32から、前記移動の終了を表す通知を受けると、前記求めたステアリングホイールの高さFα(SH)となるように、ステアリング装置6における前記チルト機構を制御し、これによってステアリングホイールの高さを変更する。
【0049】
このような制御処理部3および記憶部4は、いわゆるECU(Electronic Control Unit)と呼称されるコンピュータによって構成可能である。
【0050】
なお、ホイール制御部33は、前記乗員が降車すると判定した前記場合に、前記座高取得部で取得した座高が高い程、前記ステアリングホイールの高さが低くなるように、前記高さ変更部を制御する高さ制御部の一例に相当し、前記乗員の身長を取得する身長取得部の一例にも相当する。本実施形態では、身長取得部の一例としてのホイール制御部33は、運転席DSの座面の高さ(上下方向の位置、リフト量)を取得するものである。また、前記身長取得部は、前記座高取得部の前記入力部(第1入力部11)であってもよい(前記身長取得部は、前記座高取得部の前記入力部と兼用されてもよい)。
【0051】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図5は、降車の支援に関する、前記降車支援装置の動作を示すフローチャートである。
図6は、降車の際における、運転席の移動およびステアリングホイールの高さ変更を説明するための図である。
図6Aは、運転席の移動およびステアリングホイールの高さ変更の前の状況を示し、
図6Bは、運転席の移動およびステアリングホイールの高さ変更の後の状況を示す。
【0052】
このような降車支援装置Dは、車両が稼働を始めると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部3には、制御部31、シート制御部32、ホイール制御部33、目高さ処理部34(212)および座高処理部35(22)が機能的に構成される。
【0053】
車両に乗車し、運転席DSに着座した乗員は、適切な運転姿勢(ドライビングポジション)を実現できるように、運転席DSの姿勢を調整する。例えば、運転席DSの姿勢は、
図6Aに示すように調整される。そして、第1入力部11から自己の身長を入力する。降車支援装置Dは、第1入力部11で、運転席DSに着座する乗員の身長を受け付けると、制御処理部3の制御部31によって、その乗員の身長を乗員情報の1つとして記憶部4の乗員情報記憶部41に記憶する。なお、ここでは、運転席DSの姿勢をマニュアルで調整したが、第1入力部11で乗員の身長を受け付けると、自動的に運転席DSの姿勢が調整されてもよい。適切な運転姿勢は、例えば、特許第6662360号公報(特開2019-038320号公報に開示されている。
【0054】
運転席DSに着座する乗員は、車両を走行させ、例えば目的地に到着すると、降車しようとする。
【0055】
図5において、車両の運転席DSに着座する乗員が降車すると判定すると(S1)、降車支援装置Dは、制御処理部3のホイール制御部33によって、乗員情報記憶部41に記憶されている前記乗員の身長を取得する(S2)。
【0056】
処理S1の判定は、例えば、イグニッションキー(またはイグニッションボタン)によるイグニッションのオンオフで実行され、イグニッションがオフされると、降車支援装置Dは、制御処理部3のホイール制御部33によって、運転席DSに着座する乗員が降車すると判定する。あるいは、例えば、処理S1の判定は、運転席DSのシートベルトの脱着で実行され、運転席DSのシートベルトが外されると、降車支援装置Dは、制御処理部3のホイール制御部33によって、運転席DSに着座する乗員が降車すると判定する。例えば、シートベルトのタングに、シートベルトのバックルの脱着に応じてオンオフするスイッチ等を設けることにより、シートベルトの脱着が検知できる。
【0057】
続いて、降車支援装置Dは、計測部21によって、運転席DSに着座する前記乗員の目の高さを計測し(S3)、座高処理部22(35)によって、第1入力部11に入力され乗員情報記憶部41に記憶された前記乗員の身長および計測部21で計測した目の高さに基づき、座高変換情報記憶部42に記憶されている座高変換テーブルCTを用いることによって、前記乗員の座高を求める(S4)。なお、降車支援装置Dは、制御部31によって、この求めた乗員の座高を乗員情報の1つとして乗員情報記憶部41に記憶し、次回以降の前記乗員の降車の際に利用してもよい。また、この処理S3および処理S4は、上述のように、乗車の際に、第1入力部11で、運転席DSに着座する乗員の身長を受け付けた場合に、実行され、前記求めた乗員の座高が乗員情報の1つとして乗員情報記憶部41に記憶されてもよい。この場合では、降車支援装置Dは、これら処理S3および処理S4に代え、処理S2と同様に、乗員情報記憶部41に記憶されている前記乗員の座高を取得すればよい。
【0058】
続いて、降車支援装置Dは、ホイール制御部33によって、記憶部4からリフト量を取得する(S5)。なお、ホイール制御部33は、シート駆動部5のリフト機構53から前記リフト量を取得してもよい。
【0059】
続いて、降車支援装置Dは、ホイール制御部33によって、処理S4で取得した乗員の座高および処理S5で取得したリフト量に基づいてステアリングホイールの高さを求める(S6)。より具体的には、ホイール制御部33は、処理S5で取得したリフト量に基づいて乗員が大柄か小柄か判定し、2個の関数式Fα(SH)、Fβ(SH)のうちのいずれかを選択する。そして、ホイール制御部33は、この選択した関数式F(SH)、例えば関数式Fα(SH)が選択された場合に関数式Fα(SH)に、処理S4で取得した乗員の座高SHを代入してステアリングホイールの高さFα(SH)を求める。
【0060】
そして、降車支援装置Dは、シート制御部32によって、前記運転席DSを前記所定の移動量だけ後方に移動させ、この移動終了後に、ホイール制御部33によって、処理S6で求めたステアリングホイールの高さFα(SH)となるように、ステアリング装置6における前記チルト機構を制御し、これによってステアリングホイールの高さを変更し(S7)、本処理を終了する。これによって
図6Aに示す運転席DSは、
図6Bに矢符Bで示すように後方に移動し、ステアリングホイール61は、
図6Bに矢符Aで示すように、ステアリングホイールの高さFα(SH)となるように上方に移動される。
【0061】
車両の運転席DSに着座する乗員が降車する場合、運転席が後方に移動するだけでなく、ステアリングホイール61が持ち上げられると、乗員の足元の空間だけでなく、乗員の上半身周辺の空間も広がるため、乗員は、より降車し易くなる。この乗員が降車する場合、乗員は、ステアリングホイール61を掴んで上半身を起こしながら降車する場合がある。この際に、ステアリングホイール61が高く持ち上げられていると、座高が高い程、乗員は、ステアリングホイール61が掴み難く、ステアリングホイール61を掴んで上半身を起こす際に、腕が肘で曲がるため、腕に力を入れ難い。
【0062】
実施形態における降車支援装置Dおよびこれに実装された降車支援方法は、乗員が降車すると判定した場合に、座高取得部2で取得した座高が高い程、ステアリングホイールの高さが低くなるように、高さ変更部62(上述の例ではステアリング装置6の前記チルト機構)を制御して前記ステアリングホイールの高さを変更する。このため、乗員は、ステアリングホイール61が掴み易くなり、ステアリングホイール61を掴んで上半身を起こす際に、腕がより伸びるため(肘での曲がりがより浅くなるため)、腕に力を入れ易くなる。したがって、上記降車支援装置Dおよび降車支援方法は、より降車し易くできる。
【0063】
目の高さに基づいていわゆるヒップポイントを求めることが可能であり、身長とヒップポイントとに基づいて座高を求めることが可能であり、本実施形態では、身長および目の高さ(ヒップポイント)と座高との対応関係を表す座高変換情報が予め用意され、記憶部4に記憶される。上記降車支援装置Dおよび降車支援方法は、第1入力部11、計測部21および座高処理部22(35)を備えるので、前記座高変換情報を用いることによって、簡易な手法で精度良く座高を取得できる。
【0064】
身長の相対的に低い小柄な乗員は、身長の相対的に高い大柄な乗員より、座面をより高くし、運転席の位置もより前方に位置することが多い。このため、身長の相対的に低い小柄な乗員では、ステアリングホイールの高さを低くしてしまうと、乗員の上半身周辺の空間が狭くなる。上記降車支援装置Dおよび降車支援方法は、座高が同一の場合には、身長が低い程、前記ステアリングホイールの高さが高くなるように、前記ステアリングホイールの高さを変更する。このため、前記小柄な乗員でも上半身周辺の空間がより広くなり、乗員は、より降車し易くなる。したがって、上記降車支援装置Dおよび降車支援方法は、より降車し易くできる。
【0065】
上記降車支援装置Dおよび降車支援方法は、運転席DSを後方に移動した後に、ステアリングホイール61を持ち上げるので、このステアリングホイール61が持ち上がる際に、乗員は、ステアリングホイール61からより離れるから(ステアリングホイール61と乗員との距離がより空くから)、前記ステアリングホイール61の持ち上がり動作に対し、乗員に安心感を与えることができる。
【0066】
なお、上述の実施形態において、降車支援装置Dは、前記乗員の腕の長さを取得する腕長取得部をさらに備え、前記運転席を後方に移動させる場合に、前記腕長取得部で取得した腕の長さが長い程、移動量を大きくしてもよい。この変形形態の降車支援装置Dは、腕の長さが長い程、運転席DSの後方への移動量を大きく(多く)するので、腕の長さが相対的に長い乗員でも、ステアリングホイールが掴み易くなり、ステアリングホイールを掴んで上半身を起こす際に、腕がより伸びるため(肘での曲がりがより浅くなるため)、腕に力を入れ易くなる。したがって、上記降車支援装置は、より降車し易くできる。
【0067】
この変形形態の降車支援装置Dでは、前記制御処理プログラムには、さらに、前記乗員の腕の長さを求める腕長処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムの実行により、制御処理部3には、
図1に破線で示すように、腕長処理部36が機能的に構成される。
【0068】
人体各部の長さ比は、国民あるいは人種によって、統計的に、決まっている(分かっている)。このため、腕の長さは、身長に対する座高の比率に基づいて腕の長さを求めることが可能である。したがって、例えば車両の仕向地に応じた、身長に対する座高の比率と腕の長さとの対応関係を表す腕長変換情報が例えば関数式やテーブルで予め用意され、記憶部4に記憶される。そして、腕長処理部36は、第1入力部11に入力され乗員情報記憶部41に記憶された前記乗員の身長および座高処理部35(22)で求めた座高に基づき、記憶部4に記憶されている腕長変換情報を用いることによって、前記乗員の腕の長さを求める。腕長処理部36は、上述の、前記乗員の腕の長さを取得する腕長取得部の一例に相当する。
【0069】
腕の長さと運転席DSの後方への移動量との対応関係を表す後方移動量情報が例えば関数式やテーブルで予め用意され、記憶部4に記憶される。前記後方移動量情報は、腕の長さが長い程、移動量を大きく(多く)なるように、設定される。そして、シート制御部32は、車両の運転席DSに着座する乗員が降車すると判定した場合に、腕長処理部36で求めた腕の長さに対応する移動量を記憶部4に記憶されている後方移動量情報を用いて求め、この求めた移動量だけ前記運転席DSを移動するように、スライド機構52を制御する。
【0070】
なお、上述では、身長に対する座高の比率に基づいて腕の長さが求められて取得されたが、第1入力部11から腕の長さが入力され、取得されてもよい。
【0071】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0072】
D 降車支援装置
1 入力部
2 座高取得部
3 制御処理部
4 記憶部
5 シート駆動部
6 ステアリング装置
7 HUD
11 第1入力部
21 計測部
22(35) 座高処理部
211 目高さデータ取得部
212(34) 目高さ処理部
31 制御部
32 シート制御部
33 ホイール制御部
41 乗員情報記憶部
42 座高変換情報記憶部
43 ホイール高さ情報記憶部
52 スライド機構
61 ステアリングホイール
62 高さ変更部