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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】避難用扉、および、防災設備
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20241119BHJP
   A62B 13/00 20060101ALI20241119BHJP
   A62C 2/06 20060101ALI20241119BHJP
   E06B 7/32 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
E06B5/16
A62B13/00 C
A62C2/06 502
E06B7/32 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021004999
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109604
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岸上 昌史
(72)【発明者】
【氏名】山口 純一
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-140141(JP,A)
【文献】特開2000-84104(JP,A)
【文献】特開2020-70542(JP,A)
【文献】特開2020-143567(JP,A)
【文献】特開2018-199975(JP,A)
【文献】特開2018-199976(JP,A)
【文献】特開2005-314952(JP,A)
【文献】特開平8-246757(JP,A)
【文献】特開2013-177803(JP,A)
【文献】国際公開第2015/177873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
A62B 13/00
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災発生時に排気設備によって排煙される第1室と前記第1室からの避難経路の一部を構成する第2室とを区画する壁に形成された開口部に扉枠を介して設けられ、前記開口部を開閉する避難用扉であって、
前記開口部の上部を開閉可能な第1扉と、
前記第1扉が閉じられた状態において前記開口部の下部の少なくとも一部を開閉可能に構成され、前記第1扉の開閉操作時に前記第1扉とともに開閉可能な第2扉と、を有し、
前記第2扉の高さが、1.2m以上であり、かつ、前記第1室における火災発生時の煙層下端高さ以下である
避難用扉。
【請求項2】
前記第2扉は、前記開口部の下部全体を開閉可能に構成されている
請求項1に記載の避難用扉。
【請求項3】
前記第2扉が前記扉枠に回動可能に支持され、前記第1扉および前記第2扉の回動領域が前記第2室である
請求項2に記載の避難用扉。
【請求項4】
前記第2室側に設けられ、前記第1扉に前記第2扉を連結するとともに解除操作により前記第1扉に対する前記第2扉の連結を解除可能な連結部材を有する
請求項2または3に記載の避難用扉。
【請求項5】
前記第1扉は、前記扉枠に回動可能に支持され、
前記第2扉は、前記第1扉に囲まれるように設けられ、前記第1扉に回動可能に支持されている
請求項1に記載の避難用扉。
【請求項6】
前記第1扉の回動領域が前記第2室であり、
前記第1扉が閉じられた状態において、前記第2扉の回動領域が前記第1室である
請求項5に記載の避難用扉。
【請求項7】
前記第1室側および前記第2室側から操作可能に前記第1扉に設けられ、前記第1扉に連動して前記第2扉が回動可能な第1操作部と、
前記第2扉に前記第2室側からのみ操作可能に設けられ、前記第1扉に対して前記第2扉が回動可能な第2操作部と、を有する
請求項5または6に記載の避難用扉。
【請求項8】
第1室での火災発生時に、前記第1室を排煙する排気設備と、
前記第1室と前記第1室からの避難経路の一部を構成する第2室とを区画する壁に形成された開口部に扉枠を介して設けられ、前記開口部を開閉する避難用扉と、を備え、
前記避難用扉は、
前記開口部の上部を開閉可能な第1扉と、
前記第1扉が閉じられた状態において前記開口部の下部の少なくとも一部を開閉可能に構成され、前記第1扉の開閉操作時に前記第1扉とともに開閉可能な第2扉と、を有し、
前記第2扉の高さが、1.2m以上であり、かつ、前記第1室における火災発生時の煙層下端高さ以下である
防災設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難用扉、および、該避難用扉を用いた防災設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、建物の防災設備の一例として、加圧防排煙設備が知られている。加圧防排煙設備は、消防隊による活動を支援するために、火災が発生した場合に生ずる煙を有効に排除し、かつ、給気により加圧することによって、当該活動の拠点となる室への煙の侵入を防ぐことのできる設備である。
【0003】
加圧防排煙設備が適用される建物は、火災発生が想定される第1室と、避難用扉が設けられた開口部を通じて第1室に連絡する第2室と、を備える。第2室は、第1室からの避難経路の一部を構成しているとともに消防隊の活動拠点として機能する。
【0004】
加圧防排煙設備は、第1室を排気する排気設備、第2室を給気する給気設備、および、上記開口部を開閉する避難用扉を備える。第1室での火災発生時、加圧防排煙設備は、排気設備により第1室から煙を排出するとともに給気設備により第2室を加圧する。これにより、開口部を通じた第1室から第2室への煙の侵入が抑えられることから、在室者が安全に避難することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-171415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、火災発生時、第1室で発生した煙は、時間の経過とともに天井から床方向へと蓄積していく。このため、避難時だけでなく消防活動時にも第1室から第2室への煙の侵入を抑えることが望まれている。なお、こうした要望は、加圧防排煙設備に限らず、火災発生時に第1室を排気する排気設備を有する防災設備に共通する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する避難用扉は、火災発生時に排気設備によって排煙される第1室と前記第1室からの避難経路の一部を構成する第2室とを区画する壁に形成された開口部に扉枠を介して設けられ、前記開口部を開閉する避難用扉であって、前記開口部の上部を開閉可能な第1扉と、前記第1扉が閉じられた状態において前記開口部の下部の少なくとも一部を開閉可能に構成され、前記第1扉の開閉操作時に前記第1扉とともに開閉可能な第2扉と、を有し、前記第2扉の高さが、前記第1室における火災発生時の煙層下端高さ以下である。
【0008】
上記課題を解決する防災設備は、第1室での火災発生時に、前記第1室を排煙する排気設備と、前記第1室と前記第1室からの避難経路の一部を構成する第2室とを区画する壁に形成された開口部に扉枠を介して設けられ、前記開口部を開閉する避難用扉と、を備え、前記避難用扉は、前記開口部の上部を開閉可能な第1扉と、前記第1扉が閉じられた状態において前記開口部の下部の少なくとも一部を開閉可能に構成され、前記第1扉の開閉操作時に前記第1扉とともに開閉可能な第2扉と、を有し、前記第2扉の高さが、前記第1室における火災発生時の煙層下端高さ以下である。
【0009】
上記構成によれば、煙層下端高さ以下の高さを有する第2扉を開放して消防活動を行うことができる。その結果、消防活動時にも第1室から第2室への煙の侵入を抑えることができる。
【0010】
上記構成において、前記第2扉は、前記開口部の下部全体を開閉可能に構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、開口部の幅全体を利用して消防活動を行うことができる。
【0011】
上記構成において、前記第2扉が前記扉枠に回動可能に支持され、前記第1扉および前記第2扉の回動領域が前記第2室であることが好ましい。
上記構成によれば、第2扉を扉枠に連結するヒンジを利用して、避難用扉を回動させることができる。すなわち、第2扉を回動させるヒンジを避難用扉全体を回動させるヒンジとして利用することができる。
【0012】
上記構成において、前記第2室側に設けられ、前記第1扉に前記第2扉を連結するとともに解除操作により前記第1扉に対する前記第2扉の連結を解除可能な連結部材を有することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、連結部材に対して解除操作を行うだけで第2扉の開閉を独立して行うことができる。
上記構成において、前記第1扉は、前記扉枠に回動可能に支持され、前記第2扉は、前記第1扉に囲まれるように設けられ、前記第1扉に回動可能に支持されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、第2扉のみの開放時における第1室から第2室への煙の侵入を効果的に抑えることができる。
上記構成において、前記第1扉の回動領域が前記第2室であり、前記第1扉が閉じられた状態において、前記第2扉の回動領域が前記第1室であることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、第2扉の回動領域が第1室であることにより、第2室における避難用扉周辺での消防活動時に第2扉が障害となることがない。
上記構成において、前記第1室側および前記第2室側から操作可能に前記第1扉に設けられ、前記第1扉に連動して前記第2扉が回動可能な第1操作部と、前記第2扉に前記第2室側からのみ操作可能に設けられ、前記第1扉に対して前記第2扉が回動可能な第2操作部と、を有することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、第2扉の開閉を第2室側からのみ行うことができるため、第1室から第2室へと避難するときに誤って第2扉を開放することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態において、防災設備の概略構成を示す図。
図2】第1実施形態において、第2室から見た避難用扉を模式的に示す正面図。
図3】第1実施形態において、第1扉と第2扉とを開放した状態の一例を模式的に示す上面図。
図4】第1実施形態において、第1室における煙層下端高さの算出方法を説明するための模式図。
図5】第2実施形態において、第2室から見た避難用扉を模式的に示す正面図。
図6】第2実施形態において、第2扉とともに第1扉を開放した状態の一例を模式的に示す上面図。
図7】第2実施形態において、第2扉のみを開放した状態の一例を模式的に示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1図4を参照して、避難用扉、および、該避難用扉を備えた防災設備の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1に示すように、防災設備20が適用される建物10は、避難階段11が設けられた階段室12、階段室12に連絡する付室13、矩形状の開口部14を通じて付室13に連絡する隣接室15、隣接室15に連絡する一般室16を備えている。建物10において、隣接室15および一般室16は火災発生が想定される第1室18であり、付室13は、第1室18からの避難経路の一部を構成するとともに第1室18に連絡して消防活動の拠点となる第2室19である。
【0020】
防災設備20の一例は、加圧防排煙設備である。防災設備20は、第1室18での火災発生時に、第1室18を排気する排気設備21と、第2室19に対して給気する給気設備22と、を有する。また、防災設備20は、火災報知器などを通じて第1室18での火災を検知すると第1室18に対して放水を行うスプリンクラー設備を有していてもよい。
【0021】
排気設備21は、第1室18に設けられた排煙口23と、排煙口23を通じて第1室18を排気する排気機24と、を有する。排気機24は、例えば火災報知器や起動スイッチからの信号S1を受けて起動される。起動後、排気機24は、予め定められた排気量で第1室18を排気する。
【0022】
給気設備22は、第2室19に設けられた図示されない給気口と、給気口を通じて第2室19に空気を送る給気機26と、を有する。給気機26は、例えば火災報知器や起動スイッチからの信号S2を受けて起動される。起動後、給気機26は、予め定められた給気量で第2室19に給気する。
【0023】
第1室18と第2室19とを区画する壁17には、該壁17に形成された開口部14を開閉する矩形状の避難用扉30が設けられている。給気設備22による給気量は、避難用扉30の開口幅を40cmとした場合を基準として定められる。
【0024】
図2に示すように、避難用扉30は、扉枠31を介して壁17に固定されている。避難用扉30は、扉枠31に対して回動可能に支持されている。扉枠31は、開口部14の上辺部と一対の側辺部とに接するように壁17に固定されている。避難用扉30の全体高さHは、1.8m以上に設定される。
【0025】
図3に示すように、扉枠31は、第1室18側の周縁部に、第1室18側への避難用扉30の回動を防止するとともに、図示されないラッチが扉枠31に係合する位置に避難用扉30を位置決めする戸当たり32が設けられている。
【0026】
図2および図3に示すように、避難用扉30は、第1扉33と第2扉34とを有する。第1扉33は、開口部14の上部を開閉する部分扉である。第2扉34は、開口部14の下部の少なくとも一部を開閉する部分扉である。なお、避難用扉30の回動とは、第1扉33および第2扉34の双方が一体となって回動することをいう。
【0027】
第1扉33および第2扉34は、上下方向に並んでいる。第1扉33は、ヒンジ35を介して扉枠31に回動可能に支持されている。第2扉34は、ヒンジ36を介して扉枠31に回動可能に支持されている。第1扉33および第2扉34は、第2室19に回動領域を有する。第1扉33は、開口部14の中央部分よりも上側部分を開閉可能に構成されている。第2扉34は、開口部14の中央部分とその中央部分よりも下側部分とを開閉可能に構成されている。第2扉34の高さHaは、例えば第2扉34の開放によって形成される開口部が建築基準法施行令第126条の7に規定された非常用の進入口の構造に適合するように、1.2m以上に設定することが望ましい。また、高さHaは、第1室18における火災発生時の煙層下端高さZs以下に設定される。煙層下端高さZsの詳細については後述する。
【0028】
避難用扉30は、連結部材37を有する。連結部材37は、第2室19側に設けられている。連結部材37は、第1扉33に対して第2扉34を連結するとともに、解除操作により第1扉33に対する第2扉34の連結を解除可能に構成されている。連結部材37の解除操作は、例えば、避難用扉30から連結部材37を取り外す取り外し操作である。また、連結部材37の解除操作は、連結部材37の先端部が扉枠31に対向するように、第1扉33に対する連結部分を中心として連結部材37を回動させる操作であってもよい。
【0029】
避難用扉30は操作部38を有する。操作部38は、第1室18側および第2室19側の双方から操作可能に構成されている。操作部38は、第2扉34に設けられている。操作部38は、扉枠31に対する図示されないラッチの係合を解除可能に構成されている。
【0030】
避難用扉30は、連結部材37が第1扉33と第2扉34とを連結した状態においては、これら第1扉33および第2扉34が一体化された1つの扉として回動操作可能に構成されている。また、避難用扉30は、連結部材37が解除操作された状態においては、第2扉34単独で回動操作可能に構成されている。すなわち、閉状態にある避難用扉30は、連結部材37が解除操作されることにより、第1扉33を閉状態に維持したまま、第2扉34のみを開放可能に構成されている。
【0031】
図4を参照して、第1室18での火災発生時の煙層下端高さZsについて説明する。
図4に示すように、煙層下端高さZsは、床面40から煙層41の下端までの高さ(空気層42の高さ)である。煙層下端高さZsは、第1室18の収納可燃物や内装材、排気設備21による排煙効果のほか、スプリンクラー設備等、火災発生後に火災の拡大を抑制する設備による火災拡大抑制効果などを考慮したうえで算出される。
【0032】
まず、煙層下端高さZsは、式(1)に示すように、煙発生量Vs[m/s]と排気設備21による排気量Ve[m/s]とが釣り合う位置で安定する。
【0033】
【数1】
【0034】
煙発生量Vsは、式(2)に示すように、巻き込み係数cm、火源43の発熱速度Qf[kW]、煙層密度ρs[kg/m]、および、煙層下端高さZs[m]に応じて算出される。
【0035】
【数2】
【0036】
巻き込み係数cmは、火源43から発生した燃焼ガスを含む上昇気流が周囲の空気を巻き込んで膨張する際の係数である。巻き込み係数cmの一例には、0.076[kg/kJ1/3・m5/3・s2/3]が用いられる。
【0037】
発熱速度Qfは、国土交通省告示第五百十号に規定された火炎成長率αと、火源43が成長火源から定常火源へと移行する移行時間tcとを用いて、式(3)により示される。
【0038】
【数3】
【0039】
移行時間tcは、例えば、火災発生からスプリンクラー設備が作動するまでの時間である。また例えば、移行時間tcは、火災発生から、火源43となる可燃物の表面全体に燃焼が拡がるまでの時間である。
【0040】
そして、式(2)を式(1)に代入して煙層下端高さZsについて整理すると、式(4)が得られる。
【0041】
【数4】
【0042】
なお、煙層密度ρsには、計算結果が安全側となるように、例えば1.0[kg/m]が用いられる。
(作用)
上述した構成においては、第1室18での火災発生時、在室者は、第1室18側から操作部38を操作して避難用扉30を第2室19側に開放する。このとき、第1扉33および第2扉34の双方が開放される。これにより、在室者は、開口部14全体を利用して避難することができる。また、第2室19に到着した消防隊は、避難用扉30を一旦閉めたのち、第2室19側から操作部38を操作して第2扉34を第2室19側に開放する。消防隊は、開口部14の下部全体を利用して消防活動を行う。このとき、第2扉34の高さHaが煙層下端高さZs以下であることで、第1室18から第2室19への煙の侵入が抑えられる。
【0043】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)第2扉34の高さHaが煙層下端高さZs以下であることで、消防活動時における第1室18から第2室19への煙の侵入を抑えることができる。
【0044】
(1-2)避難用の開口部14とは別個に消防用の開口部を壁17に設ける必要がない。このため、消防活動時における第1室18から第2室19への煙の侵入を抑えつつ、壁17の強度低下を抑えることができる。
【0045】
(1-3)第2扉34は、開口部14の下部全体を開閉可能に構成されている。これにより、開口部14の幅全体を利用して消防活動を行うことができる。
(1-4)第2扉34が扉枠31に回動可能に支持され、第1扉33および第2扉34の回動領域が第2室19となるように構成されている。これにより、第2扉34を扉枠31に連結するヒンジ36を利用して避難用扉30を回動させることができる。その結果、第1扉33と第2扉34とを有する避難用扉30の構成要素を少なくすることができる。
【0046】
(1-5)避難用扉30は、第2扉34が開口部14の下部全体を開閉可能に構成され、かつ、第1扉33および第2扉34の双方の回動領域が第2室19となっている。これにより、第1扉33用の戸当たりと第2扉34用の戸当たりとを共通化することができる。その結果、扉枠31の構造の簡素化を図ることができる。
【0047】
(1-6)避難用扉30は、第2室19側に、第1扉33に第2扉34を連結するとともに解除操作により第1扉33に対する第2扉34の連結を解除可能な連結部材37を有する。これにより、開口部14全体を利用して在室者を避難させることができるとともに、消防活動時には連結部材37に対して解除操作を行うだけで第2扉34の開閉を独立して行うことができる。
【0048】
(第2実施形態)
図5図7を参照して、避難用扉、および、該避難用扉を備えた防災設備の第1実施形態について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態とは避難用扉の構成が異なる。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態とは異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0049】
図5に示すように、第2実施形態において、第1扉51は、ヒンジ52を介して扉枠31に対して回動可能に支持されている。第2扉53は、上方と側方とを第1扉51に囲まれるように設けられている。第2扉53は、第1室18側に設けられたヒンジ54を介して第1扉51に対して回動可能に支持されている。第2扉53は、第2扉53の開放によって形成される開口部が建築基準法施行令第126条の7に規定された非常用の進入口の構造に適合するように、幅Waが75cm以上、高さHaが1.2m以上に設定される。また、高さHaは、第1室18における火災発生時の煙層下端高さZs以下に設定される。
【0050】
図6に示すように、第1扉51は、第2室19に回動領域を有する。第1扉51は、第1室18側への回動が戸当たり32によって防止されている。
図7に示すように、第2扉53は、第1扉51とは反対側に回動領域を有する。すなわち、第2扉53は、第1扉51が閉じられた状態において、第1室18に回動領域を有する。
【0051】
図5に示すように、第1扉51には、第1操作部56が設けられている。第1操作部56は、第1室18側および第2室19側の双方から操作可能に構成されている。第1操作部56は、図示されないラッチによる扉枠31に対する第1扉51の係合を解除可能に構成されている。すなわち、第1扉51は、第1操作部56の操作により、扉枠31に対して開放可能に構成されている。
【0052】
第2扉53には、第2操作部57が設けられている。第2操作部57は、第2室19側から操作可能に構成されている。第2操作部57は、図示されないラッチによる第1扉51に対する第2扉53の係合を解除可能に構成されている。すなわち、第2扉53は、第2操作部57の操作により、第1扉51に対して開放可能に構成されている。
【0053】
なお、第1扉51には、第2室19側への避難用扉30の回動を防止するとともに、図示されないラッチが第1扉51に係合する位置に第2扉53を位置決めする第2扉53用の戸当たりが設けられていてもよい。
【0054】
(作用)
上述した構成においては、第1室18での火災発生時、在室者は、第1室18側から第1操作部56を操作して避難用扉30を第2室19側に開放する。このとき、第1扉51および第2扉53の双方が開放される。これにより、在室者は、開口部14全体を利用して避難することができる。また、第2室19に到着した消防隊は、避難用扉30を一旦閉めたのち、第2室19側から第2操作部57を操作して第2扉53を第1室18側に開放する。消防隊は、開口部14の下部を利用して消防活動を行う。このとき、第2扉53の高さHaが煙層下端高さZs以下であることで、第1室18から第2室19への煙の侵入が抑えられる。
【0055】
第2実施形態によれば、上記(1-1)および(1-2)に記載した効果に加えて、下記の効果を得ることができる。
(2-1)第2扉53は、第1扉51に囲まれるように設けられ、第1扉51に回動可能に支持されている。これにより、第2扉53のみを開放したときの幅Waが開口部14の幅Wよりも小さくなることから、第1室18から第2室19への煙の侵入を効果的に抑えることができる。
【0056】
(2-2)第1扉51の回動領域が第2室19であり、第1扉51が閉じられた状態において、第2扉53の回動領域が第1室18である。これにより、第2室19における避難用扉30周辺での消防活動時に第2扉53が障害となることがない。
【0057】
(2-3)第1扉51には、第1室18側および第2室19側から操作可能に設けられ、第1扉51に連動して第2扉53が回動可能な第1操作部56が設けられている。また、第2扉53には、第2室19側からのみ操作可能に設けられ、第1扉51に対して第2扉53を回動可能にする第2操作部57が設けられている。これにより、在室者は、第1操作部56を操作して避難用扉30を開放することができるとともに、避難時に誤って第2扉53を開放することが防止される。
【0058】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第2実施形態において、第2操作部57は、第1室18側から操作可能であってもよい。
【0059】
・第2実施形態において、第2扉34は、第1扉33が閉じられた状態での回動領域が第2室19であってもよい。また、第1室18および第2室19の両方に対して回動可能であってもよい。すなわち、第2実施形態のように第1扉33に囲まれるように第2扉34が設けられる構成によれば、第2扉34の回動領域をその時々の設計仕様に応じて選択することができる。
【0060】
・第1実施形態において、第2扉34のみを開閉可能な操作部が別途設けられていてもよい。このとき、当該操作部は、第2室19側からのみ操作できることが好ましい。
・第1実施形態において、第2扉34は、第1扉33が閉じられた状態での回動領域が第1室18であってもよい。
【0061】
・防災設備20は、排気設備21を備えているものであればよく、加圧防排煙設備に限られない。
【符号の説明】
【0062】
10…建物、11…避難階段、12…階段室、13…付室、14…開口部、15…隣接室、16…一般室、17…壁、18…第1室、19…第2室、20…防災設備、21…排気設備、22…給気設備、23…排煙口、24…排気機、26…給気機、30…避難用扉、31…扉枠、32…戸当たり、33…第1扉、34…第2扉、35,36…ヒンジ、37…連結部材、38…操作部、40…床面、41…煙層、42…空気層、43…火源、51…第1扉、52…ヒンジ、53…第2扉、54…ヒンジ、56…第1操作部、57…第2操作部。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7