(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】電気機器と電気機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/48 20060101AFI20241119BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20241119BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241119BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241119BHJP
【FI】
H01L23/48 G
H01L23/28 B
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2021005103
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】野村 啓太
(72)【発明者】
【氏名】下妻 彩子
(72)【発明者】
【氏名】武藤 彰吾
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-512994(JP,A)
【文献】特開2014-113025(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153190(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/073306(WO,A1)
【文献】特開2020-153190(JP,A)
【文献】特開2015-130466(JP,A)
【文献】特開2013-012525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 23/28
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極(32C)と第2電極(32E)を備える半導体素子(30)と、
前記第1電極に電気的に接続される第1接続部(40H)と、
前記第2電極に電気的に接続される第2接続部(45)と、
基板(16)の貫通孔(16c)に先端が挿入され、前記基板と前記第1接続部に電気的に接続される第1測定端子(85H)と、
前記貫通孔に先端が挿入され、前記基板と前記第2接続部に電気的に接続される第2測定端子(85L)と、を有
し、
前記半導体素子は前記第1電極と前記第2電極を備える、第1半導体素子(30H)と第2半導体素子(30L)を有し、
前記第2接続部は前記第1半導体素子の前記第2電極に接続される第3接続部(50H)と、前記第3接続部と前記第2半導体素子の前記第1電極に接続される第4接続部(40L)を有し、
前記第1接続部に前記第1測定端子が接続され、
前記第4接続部に前記第2測定端子が接続され、
さらに、前記第2半導体素子の前記第2電極に電気的に接続される第5接続部(50L)と、
バッテリの高電位側と前記第1半導体素子の前記第1電極に接続される第1電源端子(80P)と、
前記バッテリの低電位側と前記第2半導体素子の前記第2電極に接続される第2電源端子(80N)と、
外部機器(3)と前記第1半導体素子の前記第2電極および前記第2半導体素子の前記第1電極に接続される外部端子(80S)と、を有し、
前記第1電源端子と前記第1測定端子が前記第1接続部に接続され、
前記外部端子と前記第2測定端子が前記第4接続部に接続され、
さらに、前記第1半導体素子と前記基板に接続される複数の第1信号端子(100H)と、
前記第2半導体素子と前記基板に接続される複数の第2信号端子(100L)と、
前記第1半導体素子、前記第2半導体素子、前記第1接続部、前記第2接続部、前記第5接続部、前記第1測定端子、前記第2測定端子、前記第1電源端子、前記第2電源端子、前記外部端子、複数の前記第1信号端子、および、複数の前記第2信号端子を被覆する複数の側面を備える被覆樹脂(20)と、を有し、
複数の前記側面(20c)のうちの1つから前記第1測定端子の一部、前記第2測定端子の一部、複数の前記第1信号端子の一部、および、複数の前記第2信号端子の一部それぞれが露出されている電気機器。
【請求項2】
前記第1接続部から前記第1測定端子が延接して延び、
前記第4接続部から前記第2測定端子が延接して延びている請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記第1接続部と前記第1測定端子を電気的に接続する第1介在部(65H)と、
前記第4接続部と前記第2測定端子を電気的に接続する第2介在部(65L)と、を有する請求項1に記載の電気機器。
【請求項4】
前記第1測定端子は前記第1接続部に接続される第1基部(86H)と、前記第1基部と前記基板に接続される第1先端部(87H、88H)を有し、
前記第2測定端子は前記第4接続部に接続される第2基部(86L)と、前記第2基部と前記基板に接続される第2先端部(87L、88L)を有し、
前記第1測定端子と前記第2測定端子の延びる延長方向に直交する直交方向における前記第1基部の幅が、前記直交方向における前記第1先端部の幅よりも大きく、
前記直交方向における前記第2基部の幅が、前記直交方向における前記第2先端部の幅よりも大きくなっている請求項1~3のいずれか1項に記載の電気機器。
【請求項5】
第1電極(32C)と第2電極(32E)を備える半導体素子(30)と、
前記第1電極に電気的に接続される第1接続部(40H)と、
前記第2電極に電気的に接続される第2接続部(45)と、
基板(16)の貫通孔(16c)に先端が挿入され、前記基板と前記第1接続部に電気的に接続される第1測定端子(85H)と、
前記貫通孔に先端が挿入され、前記基板と前記第2接続部に電気的に接続される第2測定端子(85L)と、
前記半導体素子と前記第1接続部と前記第2接続部と前記第1測定端子と前記第2測定端子を被覆する被覆樹脂(20)と、を有する電気機器の製造方法であって、
前記第1接続部、前記第2接続部、前記第1測定端子、前記第2測定端子、および、これらを一体的に連結する連結部を備えるリードフレーム(95)を準備し、
前記リードフレームの一部と前記半導体素子を一体的にモールド成形した後、
前記リードフレームから前記連結部を除去する電気機器の製造方法。
【請求項6】
前記連結部に、前記リードフレームと前記半導体素子が並ぶ並び方向で貫ぬき、なおかつ、前記第1測定端子と前記第2測定端子のそれぞれの一部を形作る壁部(96a)を備える誘導孔(96)が形成された前記リードフレームを準備する請求項5に記載の電気機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、電気機器と電気機器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはIGBTとIGBTに接続される2つの金属板と2つの金属板それぞれに接続される吊りリード端子を備える半導体装置が記載されている。2つの金属板のうちの1つがIGBTのコレクタ電極に接続されている。2つの金属板のうちの残りの1つがエミッタ電極に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コレクタ電極に接続される金属板に接続される吊りリード端子と、エミッタ電極に接続される金属板に接続される吊りリード端子が基板に接続される具体的な形態が開示されていなかった。
【0005】
そこで本開示の目的は、第1測定端子と第2測定端子が基板に接続される具体的な形態が開示され電気機器と電気機器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電気機器は、
第1電極(32C)と第2電極(32E)を備える半導体素子(30)と、
第1電極に電気的に接続される第1接続部(40H)と、
第2電極に電気的に接続される第2接続部(45)と、
基板(16)の貫通孔(16c)に先端が挿入され、基板と第1接続部に電気的に接続される第1測定端子(85H)と、
貫通孔に先端が挿入され、基板と第2接続部に電気的に接続される第2測定端子(85L)と、を有し、
半導体素子は第1電極と第2電極を備える、第1半導体素子(30H)と第2半導体素子(30L)を有し、
第2接続部は第1半導体素子の第2電極に接続される第3接続部(50H)と、第3接続部と第2半導体素子の第1電極に接続される第4接続部(40L)を有し、
第1接続部に第1測定端子が接続され、
第4接続部に第2測定端子が接続され、
さらに、第2半導体素子の第2電極に電気的に接続される第5接続部(50L)と、
バッテリの高電位側と第1半導体素子の第1電極に接続される第1電源端子(80P)と、
バッテリの低電位側と第2半導体素子の第2電極に接続される第2電源端子(80N)と、
外部機器(3)と第1半導体素子の第2電極および第2半導体素子の第1電極に接続される外部端子(80S)と、を有し、
第1電源端子と第1測定端子が第1接続部に接続され、
外部端子と第2測定端子が第4接続部に接続され、
さらに、第1半導体素子と基板に接続される複数の第1信号端子(100H)と、
第2半導体素子と基板に接続される複数の第2信号端子(100L)と、
第1半導体素子、第2半導体素子、第1接続部、第2接続部、第5接続部、第1測定端子、第2測定端子、第1電源端子、第2電源端子、外部端子、複数の第1信号端子、および、複数の第2信号端子を被覆する複数の側面を備える被覆樹脂(20)と、を有し、
複数の側面(20c)のうちの1つから第1測定端子の一部、第2測定端子の一部、複数の第1信号端子の一部、および、複数の第2信号端子の一部それぞれが露出されている。
【0007】
また本開示の一態様による電気機器の製造方法は、
第1電極(32C)と第2電極(32E)を備える半導体素子(30)と、
第1電極に電気的に接続される第1接続部(40H)と、
第2電極に電気的に接続される第2接続部(45)と、
基板(16)の貫通孔(16c)に先端が挿入され、基板と第1接続部に電気的に接続される第1測定端子(85H)と、
貫通孔に先端が挿入され、基板と第2接続部に電気的に接続される第2測定端子(85L)と、
半導体素子と第1接続部と第2接続部と第1測定端子と第2測定端子を被覆する被覆樹脂(20)と、を有する電気機器の製造方法であって、
第1接続部、第2接続部、第1測定端子、第2測定端子、および、これらを一体的に連結する連結部を備えるリードフレーム(95)を準備し、
リードフレームの一部と半導体素子を一体的にモールド成形した後、
リードフレームから連結部を除去する。
【0008】
これによれば、第1測定端子(85H)と第2測定端子(85L)が基板(16)に接続される具体的な形態が開示されるようになった。
【0009】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】車両の駆動システムを説明する回路図である。
【
図2】パワーカードが基板に接続された形態を示す側面図である。
【
図3】パワーカード15をエミッタ電極側から見た平面図である。
【
図4】
図2に示すIV-IV線に沿う断面図である。
【
図6】リードフレームに半導体素子とターミナルと第2ヒートシンクの搭載された状態を示す平面図である。
【
図7】リードフレームの一部と半導体素子とターミナルと第2ヒートシンクの一部が被覆樹脂によって被覆された状態を示す平面図である。
【
図8】パワーカード15が基板16に接続された形態の変形例を示す平面図である。
【
図9】パワーカード15が基板16に接続された形態の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0012】
また、各実施形態で組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
先ず、
図1に基づき、車両の駆動システム1の概略構成について説明する。
【0014】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。なお、直流電源2はバッテリに相当する。モータジェネレータ3は外部機器に相当する。
【0015】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、すなわち電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0016】
<電力変換装置>
次に、
図1に基づき、電力変換装置4の回路構成について説明する。電力変換装置4は、平滑コンデンサ5と、インバータ6と基板16を備えている。
【0017】
平滑コンデンサ5は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ5の備える一方の電極は、直流電源2の正極とインバータ6それぞれにPバスバ7を介して接続されている。平滑コンデンサ5の備える他方の電極は、直流電源2の負極とインバータ6それぞれにNバスバ8を介して接続されている。直流電源2と平滑コンデンサ5とインバータ6がPバスバ7とNバスバ8の間で並列接続されている。
【0018】
インバータ6は、DC-AC変換回路である。インバータ6は、基板16に搭載された制御回路によるスイッチング制御によって、直流電流を交流電流に変換する。そしてインバータ6は変換された交流電流をモータジェネレータ3へ出力する。これによって、モータジェネレータ3が駆動する。
【0019】
またインバータ6は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電流を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電流に変換し、Pバスバ7へ出力する。このように、インバータ6は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0020】
インバータ6は、三相分の上下アーム回路9を備えて構成されている。上下アーム回路9は、レグと称されることがある。上下アーム回路9は、三相の上アーム9Hと、三相の下アーム9Lを有している。三相の上アーム9HそれぞれはPバスバ7に接続されている。三相の下アーム9LそれぞれはNバスバ8に接続されている。インバータ6は、6つのアームを有している。
【0021】
また上アーム9Hと下アーム9LがPバスバ7とNバスバ8の間で直列接続されている。上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点が、出力バスバ10を介して、モータジェネレータ3の対応する相の巻線3aに接続されている。
【0022】
本実施形態では、各アームを構成するスイッチング素子として、nチャネル型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ11を採用している。なお、以下においてはnチャネル型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ11をIGBT11と示す。IGBT11のそれぞれには、還流用のダイオード12が逆並接続されている。なお、以下においては還流用のダイオード12をFWD12と示す。
【0023】
図1に示すように上アーム9Hにおいて、IGBT11のコレクタが、Pバスバ7に接続されている。下アーム9Lにおいて、IGBT11のエミッタが、Nバスバ8に接続されている。そして、上アーム9HにおけるIGBT11のエミッタと、下アーム9LにおけるIGBT11のコレクタが接続されている。FWD12のアノードは対応するIGBT11のエミッタに接続され、カソードはコレクタに接続されている。
【0024】
基板16はインバータ6などを構成するスイッチング素子の制御回路と駆動回路を備えている。制御回路は、IGBT11を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。駆動回路は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するアームのIGBT11のゲートに駆動電圧を供給する。
【0025】
制御回路は、上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。
【0026】
制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。制御回路は、たとえばマイクロコンピュータを備えて構成されている。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。
【0027】
駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するIGBT11を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0028】
なお、電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータをさらに備えてもよい。コンバータは、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ5との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路9を備えて構成される。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0029】
<パワーカードと基板の機械的構成>
以下においては互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とする。y方向は並び方向に相当する。z方向は延長方向に相当する。x方向とy方向に沿う方法が直交方向に相当する。なお、図面においては「方向」の記載を省略している。
【0030】
図1に示すようにインバータ6は3つの上下アームから構成されている。3つの上下アームのうちの1つが
図2に示すパワーカード15に備えられている。なお、パワーカード15は電気機器に相当する。
【0031】
図2はパワーカード15が基板16に接続された形態を示す側面図である。
図3はパワーカード15をエミッタ電極側から見た平面図である。
図4は
図2に示すIV-IV線に沿う断面図である。
図5はリードフレーム95を示す平面図である。
図6はリードフレーム95に半導体チップ30とターミナル60と第2ヒートシンク50の搭載された状態を示す平面図である。
図7はリードフレーム95の一部と半導体チップ30とターミナル60と第2ヒートシンク50の一部が被覆樹脂20によって被覆された状態を示す平面図である。
図8はパワーカード15が基板16に接続された形態の変形例を示す平面図である。
図9はパワーカード15が基板16に接続された形態の変形例を示す側面図である。
図10は吊り端子85の変形例を示す平面図である。なお、
図5~
図7では、パワーカード15の製造方法を説明するためにカット前のリードフレーム95を示している。パワーカード15の製造方法は電気機器の製造方法に相当する。
【0032】
まず基板16について説明する。基板16はz方向に厚さの薄い扁平形状を成している。基板16はz方向に並ぶ第1平面16aと第2平面16bを有している。基板16には第1平面16aと第2平面16bを貫通する複数の貫通孔16cが形成されている。
【0033】
基板16には上記した制御回路と駆動回路の他に、電圧を検出する図示しない電圧検出部が設けられている。電圧検出部に後述する2つの吊り端子85が電気的に接続されることで半導体チップ30にかかる電圧が検出されるようになっている。吊り端子85については後で詳説する。
【0034】
次に、パワーカード15の機械的構成について説明する。なお、パワーカード15を構成する要素の一部について、符号末尾に上アーム9H側を示す「H」を付与し、下アーム9L側を示す「L」を付与する。要素の他の一部について、便宜上、上アーム9Hと下アーム9Lとで共通の符号を付与する。
【0035】
パワーカード15は一相分の上下アーム回路9を構成している。パワーカード15は、被覆樹脂20、2つの半導体チップ30、2つの第1ヒートシンク40、2つの第2ヒートシンク50、2つのターミナル60、継手部70、主端子80、2つの吊り端子85、および、複数の信号端子100を備えている。
【0036】
2つの半導体チップ30とは上アーム側半導体チップ30Hと下アーム側半導体チップ30Lのことである。2つの第1ヒートシンク40とは上アーム側第1ヒートシンク40Hと下アーム側第1ヒートシンク40Lのことである。2つの第2ヒートシンク50とは上アーム側第2ヒートシンク50Hと下アーム側第2ヒートシンク50Lのことである。2つのターミナル60とは上アーム側ターミナル60Hと下アーム側ターミナル60Lのことである。2つの吊り端子85とは上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lのことである。複数の信号端子100とは複数の上アーム側信号端子100Hと複数の下アーム側信号端子100Lのことである。以下適宜、必要に応じてパワーカード15の構成要素を具体的に示す。
【0037】
なお、上アーム側半導体チップ30Hは第1半導体素子に相当する。下アーム側半導体チップ30Lは第2半導体素子に相当する。上アーム側第1ヒートシンク40Hは第1接続部に相当する。下アーム側第1ヒートシンク40Lは第4接続部に相当する。上アーム側第2ヒートシンク50Hは第3接続部に相当する。下アーム側第2ヒートシンク50Lは第5接続部に相当する。上アーム側第2ヒートシンク50Hと下アーム側第1ヒートシンク40Lを併せた部位が第2接続部45に相当する。
【0038】
また上アーム側吊り端子85Hは第1測定端子に相当する。下アーム側吊り端子85Lは第2測定端子に相当する。上アーム側信号端子100Hは第1信号端子に相当する。下アーム側信号端子100Lは第2信号端子に相当する。
【0039】
また継手部70は第1継手部71と第2継手部72と第3継手部73を有している。主端子80は正極端子80Pと負極端子80Nと出力端子80Sを有している。正極端子80Pは上アーム側第1ヒートシンク40Hに一体的に連結されている。出力端子80Sは下アーム側第1ヒートシンク40Lに一体的に連結されている。負極端子80Nは第3継手部73にはんだ90を介して電気的および機械的に接続されている。
【0040】
<リードフレーム>
図5に示すように、これまでに説明した2つの第1ヒートシンク40、継手部70、主端子80、2つの吊り端子85、および、複数の信号端子100がリードフレーム95の一部として構成されている。
【0041】
リードフレーム95は上記した2つの第1ヒートシンク40、継手部70、主端子80、2つの吊り端子85、および、複数の信号端子100の他に、これらに一体的に連結される連結部94を有している。
【0042】
連結部94が被覆樹脂20の成形後に除去される。これによって2つの第1ヒートシンク40、継手部70、主端子80、2つの吊り端子85、および、複数の信号端子100それぞれが形作られる。
【0043】
<被覆樹脂>
図2および
図4に示すように被覆樹脂20はパワーカード15を構成する構成要素の一部を封止している。被覆樹脂20は2つの半導体チップ30、2つの第1ヒートシンク40の一部、2つの第2ヒートシンク50の一部、2つのターミナル60、継手部70、複数の主端子80の一部、2つの吊り端子85の一部、複数の信号端子100の一部それぞれを封止している。なお、被覆樹脂20には上記した構成要素の他に後述の複数のワイヤ65も被覆されている。
【0044】
被覆樹脂20からパワーカード15を構成する構成要素の残りの部位が露出されている。被覆樹脂20から後述の第1裏面40bと後述の第2裏面50bと主端子80の残りの部位と、2つの吊り端子85の残りの部位と、複数の信号端子100の残りの部位それぞれが露出されている。
【0045】
被覆樹脂20は、たとえばエポキシ系樹脂を材料とする。被覆樹脂20は、たとえばトランスファモールド法により成形されている。
図2に示すように、被覆樹脂20は略矩形状を成している。被覆樹脂20は、y方向に並ぶ第1主面20aと、第1主面20aの裏側の第2主面20bと、第1主面20aと第2主面20bを連結する複数の連結面20cを有している。
【0046】
<半導体チップ>
半導体チップ30は、シリコン、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板31に、縦型素子が形成されて成る。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンドがある。半導体基板31はy方向に厚さの薄い扁平形状を成している。縦型素子はy方向に主電流が流れるように構成されている。本実施形態の縦型素子は1つのアームを構成するIGBT11およびFWD12である。
【0047】
図4に示すように半導体基板31は第1主面20a側に位置する第1基板面31aと第2主面20b側に位置する第2基板面31bを有する。
【0048】
半導体基板31の第1基板面31aには、コレクタ電極32Cが設けられている。コレクタ電極32Cは、第1基板面31aのほぼ全面に設けられている。なお、コレクタ電極32Cは、ダイオード12のカソード電極を兼ねている。コレクタ電極32Cは第1電極に相当する。
【0049】
また半導体基板31の第2基板面31bには、ゲート電極とエミッタ電極32Eが設けられている。エミッタ電極32Eは第2基板面31bの一部に設けられている。エミッタ電極32Eは、ダイオード12のアノード電極を兼ねている。エミッタ電極32Eは第2電極に相当する。
【0050】
なお、本実施形態ではコレクタ電極32Cとエミッタ電極32Eと半導体基板31を併せて半導体チップ30と示す。半導体チップ30は半導体素子に相当する。
【0051】
また第2基板面31bには上記したゲート電極とエミッタ電極32Eの他に、複数のパッド32Pが設けられている。複数のパッド32Pはエミッタ電極32Eとz方向で並ぶ態様で第2基板面31bに設けられている。パッド32Pは、信号用の電極である。パッド32Pは、エミッタ電極32Eと電気的に分離されている。
【0052】
パッド32Pは、ゲート電極用のパッド32Pと、感温ダイオード用のパッド32Pを少なくとも含む。本実施形態の半導体チップ30は、5つのパッド32Pを有している。具体的には、ゲート電極用、エミッタ電極32Eの電位を検出するケルビンエミッタ用、電流センス用、半導体チップ30の温度を検出する感温ダイオードのアノード電位用、同じくカソード電位用を有している。5つのパッド32Pは第2基板面31bのz方向の端側にまとめて形成されるとともに、x方向に離間して並ぶように形成されている。
【0053】
上アーム側半導体チップ30Hと下アーム側半導体チップ30Lそれぞれは互いに同様の構成を成している。
図4に示すように上アーム側半導体チップ30Hと下アーム側半導体チップ30Lは、x方向に離間して並んでいる。上アーム側半導体チップ30Hと下アーム側半導体チップ30Lはy方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。
【0054】
<第1ヒートシンク>
第1ヒートシンク40は、
図4に示すようにy方向において半導体チップ30のコレクタ電極32Cに対向配置されている。第1ヒートシンク40は、はんだ90を介して、コレクタ電極32Cに電気的および機械的に接続されている。第1ヒートシンク40は、半導体チップ30側の面である第1対向面40aと、第1対向面40aとの裏側の第1裏面40bを有している。
【0055】
第1ヒートシンク40は、半導体チップ30の熱を外部に放熱する。第1ヒートシンク40としては、たとえばCu、Cu合金などを材料とする金属板などを採用することができる。なお、第1ヒートシンク40は、表面に、NiやAuなどのめっき膜を備えてもよい。
【0056】
図4および
図5に示すように、上アーム側第1ヒートシンク40Hと下アーム側第1ヒートシンク40Lは、略矩形状をなしている。上アーム側第1ヒートシンク40Hと下アーム側第1ヒートシンク40Lはx方向に離間して並んでいる。上アーム側第1ヒートシンク40Hと下アーム側第1ヒートシンク40Lは互いにほぼ同じ厚みを有し、y方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。
【0057】
上アーム側第1ヒートシンク40Hの第1対向面40aと上アーム側半導体チップ30Hのコレクタ電極32Cとの間は、はんだ90によって接合されている。下アーム側第1ヒートシンク40Lの第1対向面40aと下アーム側半導体チップ30Lのコレクタ電極32Cとの間は、はんだ90によって接合されている。
【0058】
上アーム側第1ヒートシンク40Hと下アーム側第1ヒートシンク40Lそれぞれは、y方向からの平面視において、対応する半導体チップ30を内包している。
【0059】
また上アーム側第1ヒートシンク40Hと下アーム側第1ヒートシンク40Lそれぞれの第1裏面40bが被覆樹脂20から露出している。第1裏面40bは、放熱面と称されることがある。第1裏面40bは、被覆樹脂20の第1主面20aと略面一である。上アーム側第1ヒートシンク40Hの第1裏面40bと下アーム側第1ヒートシンク40Lの第1裏面40bとがx方向に離間して並んでいる。
【0060】
<第2ヒートシンク>
第2ヒートシンク50は、
図4に示すようにy方向においてターミナル60に対向配置されている。第2ヒートシンク50は、はんだ90を介して、ターミナル60に電気的および機械的に接続されている。なお、ターミナル60については後で詳説する。
【0061】
第2ヒートシンク50は、半導体チップ30側の面である第2対向面50aと、第2対向面50aとの裏側の第2裏面50bを有している。第2ヒートシンク50は、半導体チップ30の熱を外部に放熱する。第2ヒートシンク50としては、たとえばCu、Cu合金などを材料とする金属板などを採用することができる。なお、第2ヒートシンク50は、表面に、NiやAuなどのめっき膜を備えてもよい。
【0062】
図3および
図4に示すように、上アーム側第2ヒートシンク50Hと下アーム側第2ヒートシンク50Lは、略矩形状をなしている。上アーム側第2ヒートシンク50Hと下アーム側第2ヒートシンク50Lはx方向に離間して並んでいる。
【0063】
上アーム側第2ヒートシンク50Hと下アーム側第2ヒートシンク50Lは互いにほぼ同じ厚みを有し、y方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。上アーム側第2ヒートシンク50Hの第2対向面50aと上アーム側ターミナル60Hの第2対向面50a側の面との間とが、はんだ90によって接合されている。下アーム側第2ヒートシンク50Lの第2対向面50aと下アーム側ターミナル60Lの第2対向面50a側の面とが、はんだ90によって接合されている。
【0064】
上アーム側第2ヒートシンク50Hと下アーム側第2ヒートシンク50Lそれぞれは、y方向からの平面視において、対応する半導体チップ30を内包している。
【0065】
図4に示すように、上アーム側第2ヒートシンク50Hと下アーム側第2ヒートシンク50Lそれぞれの第2裏面50bが被覆樹脂20から露出している。第2裏面50bは、放熱面と称されることがある。第2裏面50bは、被覆樹脂20の第2主面20bと略面一である。上アーム側第2ヒートシンク50Hの第2裏面50bと下アーム側第2ヒートシンク50Lの第2裏面50bは、x方向に離間して並んでいる。
【0066】
<ターミナル>
ターミナル60は、y方向において半導体チップ30と第2ヒートシンク50との間に介在し、エミッタ電極32Eと第2ヒートシンク50とを電気的に中継している。ターミナル60は、エミッタ電極32Eと第2ヒートシンク50との電気伝導、熱伝導経路の途中に位置する。ターミナル60は、Cu、Cu合金などの金属材料を用いて形成された柱状体である。ターミナル60は、表面に、めっき膜を備えてもよい。ターミナル60は、金属ブロック体、中継部材と称されることがある。
【0067】
上記したように、上アーム側ターミナル60Hの第2対向面50a側の面と上アーム側第2ヒートシンク50Hの第2対向面50aの間とが、はんだ90によって接合されている。上アーム側ターミナル60Hの上アーム側半導体チップ30H側の面と上アーム側半導体チップ30Hの第2基板面31bに設けられたエミッタ電極32Eとが、はんだ90によって接合されている。
【0068】
また上記したように、下アーム側ターミナル60Lの第2対向面50a側の面と、下アーム側第2ヒートシンク50Lの第2対向面50aとがはんだ90によって接合されている。下アーム側ターミナル60Lの下アーム側半導体チップ30L側の面と下アーム側半導体チップ30Lの第2基板面31bに設けられたエミッタ電極32Eとが、はんだ90によって接合されている。
【0069】
<継手部>
上記したように継手部70は第1継手部71と第2継手部72と第3継手部73を有する。
図3および
図4に示すように第1継手部71は下アーム側第1ヒートシンク40Lに一体的に連結されている。第2継手部72は上アーム側第2ヒートシンク50Hに一体的に連結されている。第3継手部73は下アーム側第2ヒートシンク50Lに一体的に連結されている。
【0070】
図4に示すように第1継手部71と第2継手部72とがはんだ90によって接合されている。第1継手部71と第2継手部72は上アーム9Hと下アーム9Lを電気的に接続する役割を担っている。具体的に言えば上アーム側半導体チップ30Hのエミッタ電極32Eと下アーム側半導体チップ30Lのコレクタ電極32Cとを電気的に接続する役割を担っている。
【0071】
また第3継手部73と負極端子80Nとがはんだ90によって接合されている。第3継手部73は、下アーム9Lと負極端子80Nとを電気的に接続する役割を担っている。具体的に言えば下アーム側半導体チップ30Lのエミッタ電極32Eと負極端子80Nとを電気的に接続する役割を担っている。
【0072】
<主端子>
上記したように主端子80は、正極端子80Pと、負極端子80Nと、出力端子80Sそれぞれを有する。
【0073】
正極端子80Pは、直流電源2の高電位側と上アーム側半導体チップ30Hのコレクタ電極32Cに電気的に接続されている。正極端子80PはP端子、高電位電源端子と称されることがある。正極端子80Pは第1電源端子に相当する。
【0074】
負極端子80Nは、直流電源2の低電位側と下アーム側半導体チップ30Lのエミッタ電極32Eに電気的に接続されている。負極端子80Nは、N端子、低電位電源端子と称されることがある。負極端子80Nは第2電源端子に相当する。
【0075】
出力端子80Sは、上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点に接続されている。より具体的に言えば、80Sは上アーム側半導体チップ30Hのエミッタ電極32Eおよび下アーム側半導体チップ30Lのコレクタ電極32Cに電気的に接続されている。
【0076】
また出力端子80Sは上アーム側半導体チップ30Hのエミッタ電極32Eおよび下アーム側半導体チップ30Lのコレクタ電極32Cの他に、モータジェネレータ3に電気的に接続されている。出力端子80Sは、O端子、交流端子と称されることがある。なお、出力端子80Sは外部端子に相当する。
【0077】
正極端子80Pは上アーム側第1ヒートシンク40Hのパッド32Pが設けられた側の端とは反対側の端からz方向に延接されることで形成されている。出力端子80Sは下アーム側第1ヒートシンク40Lのパッド32Pが設けられた側の端とは反対側の端からz方向に延接されることで形成されている。負極端子80Nはx方向において正極端子80Pと出力端子80Sの間に設けられる。負極端子80Nは第3継手部73にはんだ90などを介して接合されている。
【0078】
これら正極端子80P、負極端子80N、出力端子80Sはx方向に離間して順に配置されている。正極端子80P、負極端子80N、出力端子80Sの一部が被覆樹脂20によって封止されている。正極端子80P、負極端子80N、出力端子80Sの残りの部位が被覆樹脂20から露出されている。
【0079】
<信号端子>
上記したように複数の信号端子100は上アーム側半導体チップ30Hに接続される複数の上アーム側信号端子100Hと、下アーム側半導体チップ30Lに接続される複数の下アーム側信号端子100Lを有する。
【0080】
複数の上アーム側信号端子100Hと下アーム側信号端子100Lそれぞれが基板16に形成された複数の貫通孔16cそれぞれに挿入される。上アーム側信号端子100Hと下アーム側信号端子100Lは複数の貫通孔16cそれぞれに挿入された後、基板16にはんだ90を介して接続される。これにより複数の上アーム側信号端子100Hと複数の下アーム側信号端子100Lそれぞれが基板16に電気的および機械的に接続されている。
【0081】
図2および
図3に示すように複数の上アーム側信号端子100Hがx方向に離間して並んでいる。複数の上アーム側信号端子100Hは、上アーム側半導体チップ30Hに電気的に接続されるパッド32Pに電気的に接続されている。具体的に言えば、上アーム側信号端子100Hが、上アーム側ワイヤ65Hを介して、上アーム側半導体チップ30Hに電気的に接続されるパッド32Pに電気的に接続されている。上アーム側ワイヤ65Hは第1介在部に相当する。
【0082】
同様に複数の下アーム側信号端子100Lがx方向に離間して並んでいる。複数の下アーム側信号端子100Lは下アーム側半導体チップ30Lに電気的に接続されるパッド32Pに電気的に接続されている。具体的に言えば、下アーム側信号端子100Lが、下アーム側ワイヤ65Lを介して、下アーム側半導体チップ30Lに電気的に接続されるパッド32Pに電気的に接続されている。下アーム側ワイヤ65Lは第2介在部に相当する。
<吊り端子>
【0083】
2つの吊り端子85はリードフレーム95の連結部94が除去される前の状態で複数の信号端子100に接続される端子である。また2つの吊り端子85はパワーカード15の構成要素の一部が被覆樹脂20にモールド成形される過程において位置決めや組付けの際の位置決めにも使われている。上記したように2つの吊り端子85とは具体的に上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lである。
【0084】
上アーム側吊り端子85Hは上アーム側第1ヒートシンク40Hの正極端子80Pが設けられた側とは反対側の端からz方向に延接されることで形成されている。下アーム側吊り端子85Lは下アーム側第1ヒートシンク40Lの出力端子80Sが設けられた側とは反対側の端それぞれからz方向に延接されることで形成されている。
【0085】
2つ吊り端子85それぞれは第1吊り部86と第2吊り部87と第3吊り部88を有する。上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hが上アーム側第1ヒートシンク40Hの正極端子80Pが設けられた側とは反対側の端に接続されている。上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hの上アーム側第1ヒートシンク40Hから離間した側の端に上アーム側第2吊り部87Hが接続されている。上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第2吊り部87Hの上アーム側第1吊り部86Hから離間した側の端に上アーム側第3吊り部88Hが接続されている。なお、上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hが第1基部に相当する。上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第2吊り部87Hと上アーム側第3吊り部88Hを併せた部位が第1先端部に相当する。
【0086】
同様に下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lが下アーム側第1ヒートシンク40Lの出力端子80Sが設けられた側とは反対側の端に接続されている。下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lの下アーム側第1ヒートシンク40Lから離間した側の端に下アーム側第2吊り部87Lが接続されている。下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第2吊り部87Lの下アーム側第1吊り部86Lから離間した側の端に下アーム側第3吊り部88Lが接続されている。なお、下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lが第2基部に相当する。下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第2吊り部87Lと下アーム側第3吊り部88Lを併せた部位が第2先端部に相当する。
【0087】
上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hのx方向の幅が、上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第2吊り部87Hのx方向の幅よりも広くなっている。上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第2吊り部87Hのx方向の幅が、上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第3吊り部88Hのx方向の幅よりも広くなっている。上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第3吊り部88Hが基板16の貫通孔16cに挿入され、基板16とはんだ接続されることで上アーム側吊り端子85Hと基板16とが電気的および機械的に接続されている。上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hの先端は上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第3吊り部88Hに相当する。なお、上記した形態はx方向の幅に限定されない。上記した形態はx方向とy方向に沿う方向の幅に適用してもよい。
【0088】
同様に下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lのx方向の幅が、下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第2吊り部87Lのx方向の幅よりも広くなっている。下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第2吊り部87Lのx方向の幅が、下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第3吊り部88Lのx方向の幅よりも広くなっている。下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第3吊り部88Lが基板16の貫通孔16cに挿入され、基板16とはんだ接続されることで下アーム側吊り端子85Lと基板16とが電気的および機械的に接続されている。下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lの先端は下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第3吊り部88Lに相当する。上アーム側と同様に上記した形態はx方向の幅に限定されない。上アーム側と同様に上記した形態はx方向とy方向に沿う方向の幅に適用してもよい。
【0089】
このように上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lが基板16に接続されている。そして上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lが基板16に設けられた電圧検出部に接続されている。これによって上アーム側半導体チップ30Hの電圧が検出されるようになっている。
【0090】
<被覆樹脂と端子>
上記したように被覆樹脂20から主端子80の一部と、2つの吊り端子85の一部と、複数の信号端子100の一部それぞれが露出されている。被覆樹脂20の備える複数の連結面20cのうちの1つから正極端子80Pと負極端子80Nと出力端子80Sそれぞれの一部が露出されている。主端子80の一部の露出される側の連結面20cとは異なる連結面20cから複数の信号端子100の一部と2つの吊り端子85の一部それぞれが露出されている。複数の信号端子100の一部と2つの吊り端子85の一部それぞれがz方向に基板16に向かって延び、複数の貫通孔16cそれぞれに挿入されている。
【0091】
<パワーカードの製造方法>
パワーカード15の製造方法について説明する。先ず、
図5に示すリードフレーム95を準備する。リードフレーム95は2つの第1ヒートシンク40、継手部70、主端子80、2つの吊り端子85、および、複数の信号端子100と、これらを一体的に連結する連結部94を有している。
【0092】
連結部94はy方向に厚さの薄い扁平形状を成している。連結部94における半導体チップ30が搭載される側の面を連結表面94aとその裏側の裏面94bを有している。
【0093】
連結部94には連結表面94aと裏面94bを貫通する誘導孔96が形成されている。誘導孔96は2つの吊り端子85の一部を形作る誘導壁96aを備えている。誘導孔96は上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lの外郭に沿うように連結部94に形成されている。なお、誘導壁96aは壁部に相当する。
【0094】
次に第1ヒートシンク40上に半導体チップ30を搭載する。具体的には、第1ヒートシンク40の第1対向面40a上にはんだ90を塗布し、コレクタ電極32Cが第1対向面40a側となるように、はんだ90上に半導体チップ30を搭載する。
【0095】
次に半導体チップ30にターミナル60を搭載する。具体的には半導体チップ30のエミッタ電極32Eにはんだ90を塗布し、はんだ90にターミナル60を搭載する。
【0096】
次にターミナル60に第2ヒートシンク50を搭載する。具体的にはターミナル60の第1ヒートシンク40から離間した側にはんだ90を塗布し、はんだ90に第2ヒートシンク50を搭載する。またその際、第1継手部71にもはんだ90を塗布しておく。これによって下アーム側第1ヒートシンク40Lと上アーム側第2ヒートシンク50Hがはんだ90を介して接続される。
【0097】
また詳しくは説明しないが、第3継手部73にもはんだ90を塗布しておく。これによって第3継手部73と負極端子80Nがはんだ90を介して接続される。
【0098】
次に、トランスファモールド法により被覆樹脂20をモールド成形する。その際、下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lと上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hそれぞれがy方向で金型に挟持される。これによってリードフレーム95の位置が規定される。モールド成形を行うことによって、2つの半導体チップ30、リードフレーム95の一部、第2ヒートシンク50の一部、複数のワイヤ65、および、2つのターミナル60を被覆する被覆樹脂20を成形する。
【0099】
次にリードフレーム95から連結部94を除去する。これまでに説明したように連結部94には上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lの外郭に沿う誘導孔96が形成されている。被覆樹脂20が形成された後、誘導孔96に沿って連結部94を除去することで上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lを形成する。
【0100】
<作用効果>
これまでに説明したように複数の連結面20cのうちの1つから上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lそれぞれが露出している。そしてこれらがz方向に基板16に向かって延び、複数の貫通孔16cそれぞれに挿入され、さらにはんだ90を介して基板16に電気的および機械的に接続されている。このように、上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lが基板16に接続される具体的な形態が開示されるようになっている。稼働中の上アーム側半導体チップ30Hの電圧が基板16で随時モニタリング可能になっている。
【0101】
さらに複数の連結面20cのうちの1つから上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lの他に、上アーム側信号端子100Hと下アーム側信号端子100Lが露出されている。上アーム側信号端子100Hと下アーム側信号端子100Lも同様にz方向に基板16に向かって延び、複数の貫通孔16cそれぞれに挿入され、さらにはんだ90を介して基板16に電気的および機械的に接続されている。これによればパワーカード15と基板16との接続性が向上されやすくなっている。また部品点数が減少されやすくなっている。
【0102】
これまでに説明したように上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hのx方向の幅が、上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第2吊り部87Hのx方向の幅よりも広くなっている。さらに上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第2吊り部87Hのx方向の幅が、上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第3吊り部88Hのx方向の幅よりも広くなっている。そのために上アーム側吊り端子85Hの強度が高くなりやすくなっている。また上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hがモールド成形時や組付け時の位置決めとして使用可能になっている。上アーム側吊り端子85Hが位置決めの機能と電圧測定の機能の両方を備えるようになっている。
【0103】
これまでに説明したように下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lのx方向の幅が、下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第2吊り部87Lのx方向の幅よりも広くなっている。さらに下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第2吊り部87Lのx方向の幅が、下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第3吊り部88Lのx方向の幅よりも広くなっている。そのために下アーム側吊り端子85Lの強度が高くなりやすくなっている。また下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lがモールド成形時や組付け時の位置決めとして使用可能になっている。下アーム側吊り端子85Lが位置決めの機能と電圧測定の機能の両方を備えるようになっている。
【0104】
これまでに説明したように被覆樹脂20が形成された後、誘導孔96に沿って連結部94を除去することで上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lを形成する。モールド成形時においては上記したように下アーム側吊り端子85Lの下アーム側第1吊り部86Lと上アーム側吊り端子85Hの上アーム側第1吊り部86Hそれぞれがy方向で金型に挟持される。モールド成形の後に上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lを形成することで上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lそれぞれの基板16側の第2吊り部87と第3吊り部88が損傷されにくくなっている。
【0105】
また誘導孔96に沿って連結部94を除去し、上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lを形成することで、専用のリードフレーム95や専用の工程設計が必要なくなりやすくなっている。
【0106】
(第1変形例)
これまでに説明した第1実施形態では同一の連結面20cから上アーム側信号端子100Hと下アーム側信号端子100Lと上アーム側吊り端子85Hと下アーム側吊り端子85Lそれぞれが露出した形態を示した。しかしながら
図8に示すように複数の信号端子100が露出される連結面20cとは異なる2つの連結面20cそれぞれから下アーム側吊り端子85Lと上アーム側吊り端子85Hそれぞれが露出されていてもよい。その場合、基板16を複数有している。下アーム側吊り端子85Lと上アーム側吊り端子85Hが複数の信号端子100が接続される基板16とは異なる別の基板16にむかってx方向に延びて接続されていてもよい。
【0107】
(第2変形例)
図9に示すように複数の信号端子100が露出される連結面20cとは異なる連結面20cそれぞれから下アーム側吊り端子85Lと上アーム側吊り端子85Hそれぞれが露出されていてもよい。その場合、基板16を複数有している。下アーム側吊り端子85Lと上アーム側吊り端子85Hが複数の信号端子100が接続される基板16とは異なる別の基板16にy方向に延びて接続されていてもよい。
【0108】
(第3変形例)
図10に示すように上アーム側吊り端子85Hが上アーム側第1ヒートシンク40Hに一体的に連結されていなくてもよい。その場合、上アーム側吊り端子85Hは上アーム側信号端子100Hと同一の形状を成していてもよい。その場合、上アーム側第1ヒートシンク40Hにパッド32Pが形成され、そのパッド32Pと上アーム側吊り端子85Hとが上アーム側ワイヤ65Hを介して接続されていても良い。
【0109】
同様に、下アーム側吊り端子85Lは下アーム側第1ヒートシンク40Lに一体的に連結されていなくてもよい。その場合、下アーム側吊り端子85Lは下アーム側信号端子100Lと同一の形状を成していてもよい。その場合、下アーム側第1ヒートシンク40Lにパッド32Pが形成され、そのパッド32Pと下アーム側吊り端子85Lとが下アーム側ワイヤ65Lを介して接続されていても良い。
【0110】
(その他の変形例)
本実施形態では上アーム側半導体チップ30Hの電圧を測定する形態について具体的に説明したが、下アーム側半導体チップ30Lの電圧を測定するよう形態であってもよい。また他にも1in1パッケージに適用される形態であっても良い。
【符号の説明】
【0111】
3…モータジェネレータ、16…基板、16c…貫通孔、20…被覆樹脂、20c…連結面、30…半導体チップ、30H…上アーム側半導体チップ、30L…下アーム側半導体チップ、32C…コレクタ電極、32E…エミッタ電極、40H…上アーム側第1ヒートシンク、40L…下アーム側第1ヒートシンク、50H…上アーム側第2ヒートシンク、50L…下アーム側第2ヒートシンク、65H…上アーム側ワイヤ、65L…下アーム側ワイヤ、80P…正極端子、80N…負極端子、80S…出力端子、85H…上アーム側吊り端子、85L…下アーム側吊り端子、86H…上アーム側第1吊り部、86L…下アーム側第1吊り部、87H…上アーム側第2吊り部、87L…下アーム側第2吊り部、88H…上アーム側第3吊り部、88L…下アーム側第3吊り部、95…リードフレーム、96…誘導孔、96a…誘導壁、100H…上アーム側信号端子、100L…下アーム側信号端子、