(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】移動体システム、制御装置、制御方法、及び移動体
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241119BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2021010919
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】須藤 弘
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-276212(JP,A)
【文献】特開2000-285373(JP,A)
【文献】特開平10-320048(JP,A)
【文献】特開平10-143246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な複数の移動体と、
前記複数の移動体の移動制御を行う制御装置と、を備え、
前記通路は、前記第1エリアから延びる第1区間と、前記第2エリアから延びる第2区間と、前記第1区間と前記第2区間とを繋ぐ中間区間と、を含み、
前記中間区間は、前記複数の移動体がすれ違うことができる幅員を有し、
前記制御装置は、
前記複数の移動体のうち前記第1エリアに位置する第1移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体に所定のイベントが発生したと判定すると、前記第1移動体を
、前記通路上において前記第1区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第1位置へ移動させるとともに、前記複数の移動体のうち
前記第2エリアに位置する第2移動体を
、前記通路上において前記第2区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第2位置へ移動させる処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体から与えられる前記第1移動体及び前記第2移動体それぞれの位置情報に基づいて、前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させる処理と、を実行する
移動体システム。
【請求項2】
前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させる処理は、前記第1移動体又は前記第2移動体のうち、前記第1位置又は前記第2位置に先着した一方の移動体を前記第1位置又は前記第2位置で待機させる処理を含む
請求項1に記載の移動体システム。
【請求項3】
前記第1位置と前記第2位置との間には、進行方向が互いに向き合う2台の前記移動体がすれ違い可能な区間が含まれる
請求項1又は請求項2に記載の移動体システム。
【請求項4】
前記複数の移動体は、動作用の電力を蓄電するバッテリを備え、
前記所定のイベントは、前記第1移動体の前記バッテリの充電残量が所定の条件を満たすことである
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体システム。
【請求項5】
前記所定のイベントは、前記第1移動体が前記第1エリア内に移動してからの経過時間が所定の条件を満たすことである
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動体システム。
【請求項6】
前記第1位置は、前記第1区間上において前記中間区間に進入する直前の位置、または、前記中間区間上において前記第1区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する位置のいずれかであり、
前記第2位置は、前記第2区間上において前記中間区間に進入する直前の位置、または、前記中間区間上において前記第2区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する位置のいずれかである
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の移動体システム。
【請求項7】
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な複数の移動体の移動制御を行う制御装置であって、
前記通路は、前記第1エリアから延びる第1区間と、前記第2エリアから延びる第2区間と、前記第1区間と前記第2区間とを繋ぐ中間区間と、を含み、
前記中間区間は、前記複数の移動体がすれ違うことができる幅員を有し、
前記複数の移動体のうち前記第1エリアに位置する第1移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体に所定のイベントが発生したと判定すると、前記第1移動体を
、前記通路上において前記第1区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第1位置へ移動させるとともに、前記複数の移動体のうち
前記第2エリアに位置する第2移動体を
、前記通路上において前記第2区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第2位置へ移動させる処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体から与えられる前記第1移動体及び前記第2移動体それぞれの位置情報に基づいて、前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させる処理と、を実行する
制御装置。
【請求項8】
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な複数の移動体の制御方法であって、
前記通路は、前記第1エリアから延びる第1区間と、前記第2エリアから延びる第2区間と、前記第1区間と前記第2区間とを繋ぐ中間区間と、を含み、
前記中間区間は、前記複数の移動体がすれ違うことができる幅員を有し、
前記複数の移動体のうち前記第1エリアに位置する第1移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定するステップと、
前記第1移動体に所定のイベントが発生したと判定すると、前記第1移動体を
、前記通路上において前記第1区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第1位置へ移動させるとともに、前記複数の移動体のうち
前記第2エリアに位置する第2移動体を
、前記通路上において前記第2区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第2位置へ移動させるステップと、
前記第1移動体及び前記第2移動体から与えられる前記第1移動体及び前記第2移動体それぞれの位置情報に基づいて、前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定するステップと、
前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させるステップと、を含む
制御方法。
【請求項9】
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な移動体であって、
自移動体及び他の移動体の移動制御を行う制御装置と、
前記他の移動体との間で通信を行う通信装置と、を備え、
前記通路は、前記第1エリアから延びる第1区間と、前記第2エリアから延びる第2区間と、前記第1区間と前記第2区間とを繋ぐ中間区間と、を含み、
前記中間区間は、前記複数の移動体がすれ違うことができる幅員を有し、
前記制御装置は、
前記自移動体が前記第1エリアに位置する場合に、前記自移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定する処理と、
前記所定のイベントが発生したと判定すると、前記自移動体を
、前記通路上において前記第1区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第1位置へ移動させるように制御するとともに、前記第2エリアに位置する前記他の移動体を
、前記通路上において前記第2区間と前記中間区間とが繋がる部分に隣接する第2位置へ移動させる命令を前記他の移動体へ送信する処理と、
前記自移動体の位置情報及び前記他の移動体から与えられる前記他の移動体の位置情報に基づいて、前記自移動体及び前記他の移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定する処理と、
前記自移動体及び前記他の移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記自移動体に開始させるように制御するとともに、前記第1エリアへの移動を前記他の移動体に開始させる命令を前記他の移動体へ送信する処理と、を実行する
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体システム、制御装置、制御方法、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工場内搬送においては、自走台車としての機能を有する移動体が用いられることがある。このような移動体には、磁気テープ等の誘導ガイドが必要なものの他、誘導ガイド等を必要とせず、自律的に移動可能なものがある(例えば、特許文献1参照)。
自律移動が可能な移動体は、センサによって自機の位置及び周囲の障害物を検知し、移動経路を自ら探索する機能を有しており、自機の周囲の状況を読み取りつつ所定の目的地まで自律的に移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場内においては、進行方向が互いに向き合う移動体同士がすれ違うことができない程度に幅員が狭い通路が存在することがある。
このような幅員が狭い通路においては、前記通路の途中に幅員を広げることで移動体同士がすれ違い可能な区間を設け、この区間で移動体同士をすれ違わせることが考えられる。
【0005】
しかし、前記通路の一方側及び他方側から無秩序に前記移動体が進入すると、一方側から通路に進入した移動体と、他方側から通路に進入した移動体とがすれ違い可能な区間以外で対向してしまい、両移動体が共に通路を通過することができなくなるおそれがある。
特に、本発明者らの鋭意検討によると、移動体同士がすれ違うだけの物理的な空間があるにも関わらず、移動体が備える衝突防止センサーが過敏に反応してしまい、両移動体が向き合ったまま停止してしまう事態(いわゆる「お見合い」。)が生じることも明らかになっている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、通路において互いに進行方向が向き合う移動体同士をスムーズにすれ違わせることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る移動体システムは、
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な複数の移動体と、
前記複数の移動体の移動制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数の移動体のうち前記第1エリアに位置する第1移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体に所定のイベントが発生したと判定すると、前記第1移動体を前記通路上の第1位置へ移動させるとともに、前記複数の移動体のうち第2エリアに位置する第2移動体を前記第1位置と前記第2エリアとの間の第2位置へ移動させる処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体から与えられる前記第1移動体及び前記第2移動体それぞれの位置情報に基づいて、前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させる処理と、を実行する。
【0008】
上記構成の移動体システムによれば、第1移動体は、第2移動体が第2位置に到着してから、第1位置から第2エリアへの移動を開始する。また、第2移動体は、第1移動体が第1位置に到着してから、第2位置から第1エリアへの移動を開始する。
これにより、通路において進行方向が互いに向き合う第1移動体及び第2移動体を、必ず第1位置と第2位置との間で対向させることができる。
よって、少なくとも、第1位置と第2位置との間で第1移動体と第2移動体とがすれ違うことができるようにすれば、通路において進行方向が互いに向き合う移動体同士をスムーズにすれ違わせることができる。
【0009】
上記移動体システムにおいて、
前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させる処理は、前記第1移動体又は前記第2移動体のうち、前記第1位置又は前記第2位置に先着した一方の移動体を前記第1位置又は前記第2位置で待機させる処理を含んでいることが好ましい。
この場合、第1移動体又は第2移動体のうちのいずれか一方が、第1位置又は第2位置に先着したとしても、第1移動体の第2エリアへの移動開始のタイミングと、第2移動体の第1エリアへの移動開始のタイミングとを適切に調整することができる。
【0010】
上記移動体システムにおいて、
前記第1位置と前記第2位置との間には、進行方向が互いに向き合う2台の前記移動体がすれ違い可能な区間が含まれていることが好ましい。
この場合、第1位置と第2位置との間に含まれる区間において移動体同士をすれ違わせることができる。
【0011】
上記移動体システムにおいて、
前記複数の移動体は、動作用の電力を蓄電するバッテリを備え、
前記所定のイベントは、前記第1移動体の前記バッテリの充電残量が所定の条件を満たすことであることが好ましい。
この場合、例えば、第1エリアにバッテリの充電設備がなく、第2エリアにバッテリの充電設備がある場合、第1移動体のバッテリの充電残量が所定の閾値以下となったときに、第1移動体を第2エリアへ移動させ、第1移動体にバッテリの充電を行わせることができる。
【0012】
上記移動体システムにおいて、
前記所定のイベントは、前記第1移動体が前記第1エリア内に移動してからの経過時間が所定の条件を満たすことであってもよい。
この場合、第1移動体が長期に亘って第1エリアに滞在するのを抑制することができる。よって、例えば、第1エリアに位置するときの移動体の単位時間当たりの実働時間が、第2エリアに位置するときの移動体の単位時間当たりの実働時間よりも大きい場合に、各移動体の実働時間に偏りが生じるのを抑制することができる。
【0013】
また、本発明は、
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な複数の移動体の移動制御を行う制御装置であって、
前記複数の移動体のうち前記第1エリアに位置する第1移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体に所定のイベントが発生したと判定すると、前記第1移動体を前記通路上の第1位置へ移動させるとともに、前記複数の移動体のうち第2エリアに位置する第2移動体を前記第1位置と前記第2エリアとの間の第2位置へ移動させる処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体から与えられる前記第1移動体及び前記第2移動体それぞれの位置情報に基づいて、前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定する処理と、
前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させる処理と、を実行する。
【0014】
また、本発明は、
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な複数の移動体の制御方法であって、
前記複数の移動体のうち前記第1エリアに位置する第1移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定するステップと、
前記第1移動体に所定のイベントが発生したと判定すると、前記第1移動体を前記通路上の第1位置へ移動させるとともに、前記複数の移動体のうち第2エリアに位置する第2移動体を前記第1位置と前記第2エリアとの間の第2位置へ移動させるステップと、
前記第1移動体及び前記第2移動体から与えられる前記第1移動体及び前記第2移動体それぞれの位置情報に基づいて、前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定するステップと、
前記第1移動体及び前記第2移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記第1移動体に開始させるとともに前記第1エリアへの移動を前記第2移動体に開始させるステップと、を含む。
【0015】
上記構成の制御装置及び制御方法によれば、通路において進行方向が互いに向き合う移動体同士をスムーズにすれ違わせることができる。
【0016】
また、本発明は、
第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能な移動体であって、
自移動体及び他の移動体の移動制御を行う制御装置と、
前記他の移動体との間で通信を行う通信装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記自移動体が前記第1エリアに位置する場合に、前記自移動体に所定のイベントが発生したか否かを判定する処理と、
前記所定のイベントが発生したと判定すると、前記自移動体を前記通路上の第1位置へ移動させるように制御するとともに、前記第2エリアに位置する前記他の移動体を前記第1位置と前記第2エリアとの間の第2位置へ移動させる命令を前記他の移動体へ送信する処理と、
前記自移動体の位置情報及び前記他の移動体から与えられる前記他の移動体の位置情報に基づいて、前記自移動体及び前記他の移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したか否かを判定する処理と、
前記自移動体及び前記他の移動体が前記第1位置及び前記第2位置に到着したと判定すると、前記第2エリアへの移動を前記自移動体に開始させるように制御するとともに、前記第1エリアへの移動を前記他の移動体に開始させる命令を前記他の移動体へ送信する処理と、を実行する。
【0017】
上記構成の移動体によれば、通路において他の移動体との間で進行方向が互いに向き合った場合にもスムーズにすれ違うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通路を移動する移動体同士をスムーズにすれ違わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る搬送システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、搬送ロボット及び制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、交替処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1エリアの搬送ロボットが第1待機位置に到着し、第2エリアの搬送ロボットが第2待機位置に到着していない状態を示す図である。
【
図6】
図6は、第1エリアの搬送ロボットが第1待機位置に待機しているとともに、第2エリアの搬送ロボットが第2待機位置に到着した場合を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る第1待機位置及び第2待機位置を示す図である。
【
図8】
図8は、他の実施形態に係る搬送ロボットの構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態の処理部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔搬送システムの全体構成について〕
図1は、実施形態に係る搬送システムの全体構成の一例を示す図である。
この搬送システムは、例えば、タイヤの製造工場内に設けられるシステムであり、複数の搬送ロボット2と、制御装置4とを含む。
複数の搬送ロボット2は、自律移動可能な移動体であり、第1エリアA1、及び第2エリアA2内において搬送作業を行う機能を有する。
複数の搬送ロボット2と、制御装置4とは、複数の搬送ロボット2を移動体とする移動体システム1を構成する。
【0021】
第1エリアA1にはタイヤの成型装置Sが設置されており、第1エリアA1ではタイヤの成型工程が行われる。
第1エリアA1に位置する搬送ロボット2は、成型装置Sから得られるタイヤを搬送する作業を行う。
第2エリアA2では、タイヤの検査工程が行われる。
第2エリアA2に位置する搬送ロボット2は、検査工程において再検査が必要と判断されたタイヤを再度検査工程に戻すための搬送作業を行う。第2エリアA2に位置する搬送ロボット2が行うタイヤの搬送作業では、再検査が必要と判断されたタイヤのみが搬送される。よって、第2エリアA2の搬送ロボット2が行うタイヤの搬送作業は、第1エリアA1の搬送ロボット2が行うタイヤの搬送作業と比較して、作業の発生頻度が低い。このため、第1エリアの搬送ロボット2の単位時間当たりの実際に稼働する実働時間の方が、第2エリアの搬送ロボット2の単位時間当たりの実働時間よりも多くなる。
【0022】
また、第2エリアA2には、搬送ロボット2が充電を行うための充電ステーション6が設けられている。
充電ステーション6は、搬送ロボット2のバッテリに接続可能な接続端子(図示省略)を有しており、搬送ロボット2のバッテリが接続されると、そのバッテリに対して自動的に充電を行う機能を有する装置である。
第2エリアA2に位置する搬送ロボット2は、自機が有するバッテリの充電残量が所定の閾値以下になると、自律的に充電ステーション6へ移動し、自機のバッテリを充電ステーション6に接続し充電を行う。
なお、第1エリアA1には、充電ステーションは設けられていない。
【0023】
第1エリアA1及び第2エリアA2は、通路Tによって繋がっている。
搬送ロボット2は、第1エリアA1、第2エリアA2、及び通路Tを自律移動することができる。また、搬送ロボット2は、制御装置4による制御に基づいて、通路T内へ移動し、第1エリアA1と第2エリアとの間を移動する。
【0024】
制御装置4は、複数の搬送ロボット2の移動制御を行う機能を有する。
制御装置4及び複数の搬送ロボット2は、相互に無線通信が可能である。制御装置4は、無線通信によって複数の搬送ロボット2に命令を与える。複数の搬送ロボット2は、制御装置4から命令が与えられると、その命令に基づいて移動する。
制御装置4と複数の搬送ロボット2との間の通信は、無線LANや、Bluetooth(登録商標)等によって行われる。
【0025】
図2は、搬送ロボット2及び制御装置4の構成例を示すブロック図である。
図2中、搬送ロボット2は、処理装置10と、通信装置12と、周囲センサ14と、搬送装置16と、駆動装置18と、バッテリ20とを備える。
【0026】
通信装置12は、無線LANや、Bluetooth等による無線通信を行う装置であり、直接又はネットワークを介して制御装置4との間で各種情報を送受信する機能を有する。
周囲センサ14は、カメラや、レーザセンサ、ミリ波レーダ等を含む。周囲センサ14は、自機の周囲の障害物や自機の位置の検知に用いられる。
搬送装置16は、第1エリアA1及び第2エリアA2において行う搬送作業を行うための装置である。搬送装置16は、タイヤ等を積載したり、荷下ろししたりするために必要な機能を有する。
駆動装置18は、搬送ロボット2を移動させるための機能を有する。駆動装置18は、搬送ロボット2を移動させるための走行輪や走行輪を駆動するためのモータ等を含む。
バッテリ20は、駆動装置18や搬送装置16を駆動するための電力や、搬送ロボット2の各部を動作させるための電力を蓄電する。
【0027】
処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)等からなる処理部22と、ハードディスクやメモリ等からなる記憶部24とを含むコンピュータ等によって構成される。
記憶部24には、処理部22が実行するためのコンピュータプログラムや、各種データ等が記憶される。処理部22は、記憶部24のようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録された前記コンピュータプログラムを読み込むことで、処理部22(処理装置10)が有する各種機能を実現する。
【0028】
処理部22は、通信装置12や、周囲センサ14、搬送装置16、駆動装置18を制御する機能の他、自律移動するための機能(自律移動処理22a)や、作業モードを切り替えるための機能、バッテリ20の充電残量を監視する機能(充電残量監視処理22b)等を有する。
【0029】
処理部22は、自律移動処理22aを実行することで自律移動する。自律移動処理22aは、自律的に移動するために必要な処理であり、周囲センサ14によって自機の周囲の障害物や自機の位置を検知する処理や、所定の目的地及び所定の目的地までのルートを決定する処理、駆動装置18を制御して所定の目的地へ移動する処理等を含む。
記憶部24には、搬送ロボット2が移動可能な範囲である第1エリアA1、第2エリアA2、及び通路Tを示す地図情報24aが記憶されている。
【0030】
自律移動処理22aを実行する処理部22は、地図情報24aを用いてルートを決定し、周囲センサ14によって検知される障害物等を回避しつつ、決定したルートに従って所定の目的地へ移動するように駆動装置18を制御する。
また、自律移動処理22aを実行する処理部22は、地図情報24aと、周囲センサ14の検知結果とに基づいて、自機の現在位置を検知する。処理部22は、移動しつつ自機の現在位置を検知する。処理部22は、検知した自機の現在位置を示す位置情報を、無線通信を介して制御装置4へ逐次送信する。
【0031】
処理部22は、自律移動処理22aを実行して自律的に移動する一方、制御装置4から命令が与えられると、実行中の搬送作業を終えた後、与えられる命令に基づいて目的地の設定を行い、自律移動する機能も有する。
【0032】
また、処理部22は、充電残量監視処理22bを実行することで、バッテリ20の充電残量を監視する機能を有する。
バッテリ20には、バッテリ20の両端電圧や電流値を測定するためのセンサ21が接続されている。処理部22は、センサ21の出力に基づいて、充電残量として例えばSOC(State Of Charge)を測定し監視する。
処理部22は、測定された充電残量を、無線通信を介して制御装置4へ逐次送信する。
【0033】
また、処理部22は、自機の位置に応じて作業モードを切り替え、実行すべき作業内容を切り替える機能を有する。これにより、搬送ロボット2は、第1エリアA1での搬送作業及び第2エリアA2での搬送作業の両方を実行することができる。
処理部22は、第1エリアA1では、成型装置Sから得られるタイヤの搬送作業を行う第1モードに切り替える。
また、処理部22は、第2エリアA2では、再検査が必要なタイヤの搬送作業を行う第2モードに切り替える。第2モードでは、処理部22は、搬送作業の他、バッテリ20の充電残量が所定の閾値以下になると、充電ステーション6へ移動し、バッテリ20を充電ステーション6に接続してバッテリ20の充電を行う。バッテリ20の充電を終えると、処理部22は、再検査が必要なタイヤの搬送作業を継続する。
【0034】
図2中、制御装置4は、処理装置30と、通信装置32とを備える。
通信装置32は、無線LANや、Bluetooth等による無線通信を行う装置であり、直接又はネットワークを介して搬送ロボット2との間で各種情報を送受信する機能を有する。
処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)等からなる処理部34と、ハードディスクやメモリ等からなる記憶部36とを含むコンピュータ等によって構成される。
記憶部36には、処理部34が実行するためのコンピュータプログラムや、各種データ等が記憶される。処理部34は、記憶部36のようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録された前記コンピュータプログラムを読み込むことで、処理部34(処理装置30)が有する各種機能を実現する。
【0035】
処理部34は、通信装置32を制御する機能の他、充電残量判定処理34aや、第1移動処理34b、到着判定処理34c、第2移動処理34dを実行する機能を有する。
これら機能については後に説明する。
【0036】
本実施形態において、第2エリアA2には充電ステーション6が設置されているが、第1エリアA1には充電ステーションが設置されていない。
また、上述したように、第1エリアの搬送ロボット2の単位時間当たりの実働時間の方が、第2エリアの搬送ロボット2の単位時間当たりの実働時間よりも多くなる。つまり、第1エリアA1に位置する搬送ロボット2は、第2エリアA2に位置する搬送ロボット2と比較して、負荷が高いと言える。
【0037】
このため、制御装置4は、第1エリアA1の搬送ロボット2に所定のイベントが発生すると、そのイベントが発生した搬送ロボット2と、第2エリアA2に位置する搬送ロボット2とを交替させる交替処理を実行する。交替処理によって、第1エリアA1に位置する搬送ロボット2に充電を行わせたり、各搬送ロボット2の実働時間に偏りが生じるのを抑制したりすることができる。
【0038】
〔交替処理について〕
交替処理とは、第1エリアA1の搬送ロボット2を第2エリアA2へ移動させるとともに、第2エリアA2の搬送ロボット2を第1エリアA1へ移動させる処理である。
搬送ロボット2が第1エリアA1と第2エリアA2との間を移動する場合、通路Tを通過する必要がある。
【0039】
図3は、
図1中、通路Tの部分の拡大図である。
図3に示すように、通路Tは、第1エリアA1から延びる第1区間T1と、第2エリアA2から延びる第2区間T2と、第1区間T1と第2区間T2とを繋ぐ中間区間T3とを含む。
第1区間T1及び第2区間T2は、2台の搬送ロボット2がすれ違うことができない程度の幅員である。よって、これら区間T1、T2の一端及び他端の両方から搬送ロボット2が進入すると、両搬送ロボット2は、その区間内で互いに対向してしまい、共にその区間を通過できなくなる。
中間区間T3は、進行方向が互いに向き合う2台の搬送ロボット2がすれ違うことができる幅員とされている。
【0040】
また、通路T上には、第1エリアA1の搬送ロボット2が待機するための第1待機位置W1(第1位置)と、第2エリアA2の搬送ロボット2が待機するための第2待機位置W2(第2位置)とが設けられている。第2待機位置W2は、通路T上において、第1待機位置W1と第2エリアA2との間に設けられている。
より詳細には、第1待機位置W1は、第1区間T1において中間区間T3に進入する直前の位置に設けられている。
第2待機位置W2は、第2区間T2において中間区間T3に進入する直前の位置に設けられている。
【0041】
制御装置4は、交替処理を実行すると、第1エリアA1の搬送ロボット2を第2エリアA2へ移動させるとともに、第2エリアA2の搬送ロボット2を第1エリアA1へ移動させる。
【0042】
図4は、交替処理の一例を示すフローチャートである。
図4中、制御装置4の処理部34は、まず、第1エリアA1の搬送ロボット2それぞれから送信される充電残量を参照し、第1エリアA1の搬送ロボット2のうち、充電残量が所定の閾値以下である搬送ロボット2があるか否かを判定する処理(
図2中、充電残量判定処理34a)を実行する(
図4中、ステップS1)。
ステップS1において、充電残量が所定の閾値以下である搬送ロボット2が無いと判定する場合、処理部34はステップS1を繰り返す。
一方、ステップS1において、充電残量が所定の閾値以下である搬送ロボット2があると判定する場合、処理部34は、充電残量が所定の閾値以下である搬送ロボット2に対して、第1待機位置W1へ移動する旨の命令を与える(
図4中、ステップS2)。
さらに、処理部34は、第2エリアA2の搬送ロボット2それぞれから送信される充電残量を参照し、第2エリアA2の搬送ロボット2のうち、充電残量が最も多い搬送ロボット2に対して、第2待機位置W2へ移動する旨の命令を与える(
図4中、ステップS3)。
【0043】
例えば、
図3中、第1エリアA1の搬送ロボット2Aの充電残量が所定の閾値以下であり、第2エリアA2の搬送ロボット2Bが第2エリアA2の搬送ロボット2の中で最も充電残量が多かったとする。
この場合、
図3中、第1エリアA1の搬送ロボット2A充電残量が所定の閾値以下と判定されると(
図4中、ステップS1)、搬送ロボット2A(第1移動体)に第1待機位置W1へ移動する旨の命令が与えられ(
図4中、ステップS2)、搬送ロボット2Aは、実行中の搬送作業を終えた後、第1待機位置W1を目的地として移動を開始する。
搬送ロボット2Aに移動命令が与えられると、さらに、搬送ロボット2B(第2移動体)に第2待機位置W2へ移動する旨の命令が与えられ(
図4中、ステップS3)、搬送ロボット2Bは、第2待機位置W2を目的地として移動を開始する。
【0044】
このように、
図4中のステップS2、S3は、所定のイベントが発生すると、搬送ロボット2Aを第1待機位置W1へ移動させるとともに、搬送ロボット2Bを第2待機位置W2へ移動させる処理(
図2中、第1移動処理34b)を構成する。
なお、本実施形態において所定のイベントとは、ステップS1の内容であり、第1エリアA1の搬送ロボット2Aの充電残量が所定の閾値以下となることである。
【0045】
図4中、ステップS3において搬送ロボット2Bに第2待機位置W2へ移動する旨の命令を与えた後、制御装置4は、搬送ロボット2A、2Bから送信される位置情報を参照し、この位置情報に基づいて搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bの両方が、第1待機位置W1及び第2待機位置W2に到着したか否かを判定する処理(
図2中、到着判定処理34c)を実行する(
図4中、ステップS4)。
ステップS4において、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bが、第1待機位置W1及び第2待機位置W2に到着していないと判定すると、制御装置4はステップS4を繰り返す。
【0046】
なお、例えば、
図5に示すように、搬送ロボット2Aが第1待機位置W1に到着し、搬送ロボット2Bが第2待機位置W2に到着していない場合、制御装置4は、搬送ロボット2Aに対して第1待機位置W1で待機する旨の命令を与える。このように、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bのうち、一方の搬送ロボット2のみが第1待機位置W1又は第2待機位置W2に到着した場合、制御装置4は、一方の搬送ロボット2を第1待機位置W1又は第2待機位置W2に待機させる。
【0047】
図4中、ステップS4において、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bが、第1待機位置W1及び第2待機位置W2に到着したと判定すると、制御装置4は、ステップS5へ進み、搬送ロボット2Aに対して第2エリアA2内の所定位置W3への移動命令を与え、搬送ロボット2Bに対して第1エリアA1内の所定位置W4への移動命令を与え(
図4中、ステップS5)、交替処理を終える。
【0048】
図6は、搬送ロボット2Aが第1待機位置W1に待機しているとともに、搬送ロボット2Bが第2待機位置W2に到着した場合を示す図である。
ここで、
図6中、搬送ロボット2A、2Bの両方が待機位置W1、W2に到着したと判定されると、搬送ロボット2Aに所定位置W3へ移動する旨の命令が与えられるとともに搬送ロボット2Bに所定位置W4へ移動する旨の命令が与えられる(
図4中、ステップS5)。
【0049】
所定位置W3へ移動する旨の命令が与えられた搬送ロボット2Aは、所定位置W3を目的地として移動を開始する。
また、所定位置W4へ移動する旨の命令が与えられた搬送ロボット2Bは、所定位置W4を目的地として移動を開始する。
この場合、第2待機位置W2に到着した搬送ロボット2Bは、第2待機位置W2に一時的に停止してもよいし、第2待機位置W2を通過し停止せずに所定位置W4への移動を開始してもよい。
【0050】
図4中のステップS5は、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bが第1待機位置W1及び第2待機位置W2に到着したと判定すると、第2エリアA2への移動を搬送ロボット2Aに開始させるとともに第1エリアA1への移動を搬送ロボット2Bに開始させる処理(
図2中、第2移動処理34d)を構成する。
【0051】
図6に示すように、搬送ロボット2Aが第1待機位置W1を出発するとともに、搬送ロボット2Bが第2待機位置W2を出発(通過)すると、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bは、中間区間T3内で対向する。
中間区間T3は、上述したように、進行方向が互いに向き合う2台の搬送ロボット2がすれ違うことができる区間である。よって、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bは、中間区間T3内で対向したとしても、互いに回避動作を行い、互いにすれ違うことができる。
この結果、搬送ロボット2Aは第2エリアA2内の所定位置W3へ到着することができ、搬送ロボット2Bは第2エリアA2内の所定位置W4へ到着することができる。
【0052】
本実施形態では、搬送ロボット2Aは、搬送ロボット2Bが第2待機位置W2に到着してから、第1待機位置W1から第2エリアA2への移動を開始する。また、搬送ロボット2Bは、搬送ロボット2Aが第1待機位置W1に到着してから、第2待機位置W2から第1エリアA1への移動を開始する。
これにより、通路Tにおいて進行方向が互いに向き合う搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bを、必ず第1待機位置W1と第2待機位置W2との間で対向させることができる。
第1待機位置W1と第2待機位置W2との間は中間区間T3であるので、通路Tにおいて進行方向が互いに向き合う搬送ロボット2同士をスムーズにすれ違わせることができる。
【0053】
また、本実施形態では、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bのうち、一方の搬送ロボット2のみが第1待機位置W1又は第2待機位置W2に到着した場合、制御装置4は、一方の搬送ロボット2を第1待機位置W1又は第2待機位置W2に待機させる。
これにより、搬送ロボット2A又は搬送ロボット2Bのうちのいずれか一方が、第1待機位置W1又は第2待機位置W2に先着したとしても、搬送ロボット2Aの第2エリアA2への移動開始のタイミングと、搬送ロボット2Bの第1エリアA1への移動開始のタイミングとを適切に調整することができる。
【0054】
所定位置W4に到着した搬送ロボット2Bは、作業モードを第2モードから第1モードへ切り替え、第1エリアA1における搬送作業を実行する。
一方、所定位置W3に到着した搬送ロボット2Aは、作業モードを第1モードから第2モードへ切り替える。搬送ロボット2Aは、バッテリ20の充電残量が所定の閾値以下であるので、充電ステーション6へ自律的に移動し、バッテリ20の充電を行う。
【0055】
このように、本実施形態では、所定のイベント(
図4中のステップS1)が、第1エリアA1の搬送ロボット2Aの充電残量が所定の閾値以下となることであることとしたので、第1エリアA1の搬送ロボット2Aのバッテリ20の充電残量が所定の閾値以下となったときに、制御装置4が交替処理を行い、第1エリアA1の搬送ロボット2Aを第2エリアA2へ移動させることができ、この結果、搬送ロボット2Aにバッテリ20の充電を行わせることができる。
【0056】
〔他の実施形態について〕
図8は、他の実施形態に係る搬送ロボット2の構成例を示すブロック図である。
上記実施形態は、制御装置4が各搬送ロボット2の管理を行う集中管理を採用した場合を例示したが、本実施形態では、制御装置4が有する機能を各搬送ロボット2が有する分散管理を採用する点において上記実施形態と相違する。
【0057】
図8に示すように、本実施形態の搬送ロボット2は、処理装置10、通信装置12、周囲センサ14、搬送装置16、駆動装置18、バッテリ20、及びセンサ21を備える。
通信装置12は、無線LANや、Bluetooth等による無線通信を行う装置であり、ネットワークNを介して他の搬送ロボット2との間で各種情報を送受信する機能を有する。
各搬送ロボット2の処理部22は、自機の現在位置を示す位置情報、及び自機の充電残量を無線通信を介して他の搬送ロボット2へ逐次送信する。よって、各搬送ロボット2は、自機及び他の搬送ロボット2の位置情報及び充電残量を認識することができる。
【0058】
図9は、本実施形態の処理部22の機能構成を示すブロック図である。
本実施形態の処理部22は、自律移動処理22aの他、充電残量判定処理22c、第1移動処理22d、到着判定処理22e、及び、第2移動処理22fを実行する機能を有する。
自律移動処理22aは、自機を自律的に移動するために必要な処理であり、上記実施形態と同様である。
充電残量判定処理22cは、自機が第1エリアA1に位置する場合に、自機のバッテリ20の充電残量が所定の閾値以下であるか否かを判定する処理である。
また、第1移動処理22dは、充電残量判定処理22cによって自機の充電残量が所定の閾値以下であると判定すると、自機を第1待機位置W1へ移動させるように制御するとともに、第2エリアA2に位置する他の搬送ロボット2を第2待機位置W2へ移動させる命令を他の搬送ロボット2へ送信する処理である。
到着判定処理22eは、自機の位置情報及び他の搬送ロボット2から与えられる他の搬送ロボット2の位置情報に基づいて、自機及び他の搬送ロボット2が第1待機位置W1及び第2待機位置W2に到着したか否かを判定する処理である。
第2移動処理22fは、自機及び他の搬送ロボット2が第1待機位置W1及び第2待機位置W2に到着したと判定すると、第2エリアA2への移動を自機に開始させるように制御するとともに、第1エリアA1への移動を他の搬送ロボット2に開始させる命令を他の搬送ロボット2へ送信する処理である。
【0059】
つまり、充電残量判定処理22c、第1移動処理22d、到着判定処理22e、及び第2移動処理22fは、上記実施形態の制御装置4が実行する充電残量判定処理34a、第1移動処理34b、到着判定処理34c、及び第2移動処理34dに相当する。
【0060】
よって、本実施形態の各搬送ロボット2は、自機の充電残量を監視し、第1エリアA1に位置する場合において充電残量が所定の閾値以下になると、交替処理を実行することができる。
この場合においても、通路Tにおいて他の搬送ロボット2との間で進行方向が互いに向き合った場合にもスムーズにすれ違うことができる。
【0061】
なお、第1移動処理22dにおいて他の搬送ロボット2に送信する命令は、交替処理を実行する旨を示す内容であってもよい。また、第1移動処理22dを実行する処理部22は、この命令を他のすべての搬送ロボット2へ報知するように構成されていてもよい。
また、処理部22は、この命令を受信すると、自機が第2エリアA2に位置しかつ他の搬送ロボット2の充電残量と比較して自機の充電残量が多いか否かを判定し、第2エリアA2に位置しかつ他の搬送ロボット2の充電残量と比較して自機の充電残量が多いと判定すると、受信した命令に従って自機を第2待機位置W2へ移動させるように構成されていてもよい。
この場合、処理部22は、この命令を受信した他の搬送ロボット2のうち、例えば、第2エリアA2に位置しかつ他の搬送ロボット2と比較して通路Tに最も近いと自らが判断する搬送ロボット2を、受信した命令に従って第2待機位置W2へ移動させることができる。
【0062】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
上記実施形態では、所定のイベントが、第1エリアA1の搬送ロボット2Aの充電残量が所定の閾値以下となることである場合を例示したが、所定のイベントは、搬送ロボット2Aの充電残量が所定の条件を満たすものであればよく、搬送ロボット2Aの充電残量が所定の閾値未満となることであってもよい。
【0063】
さらに、所定のイベントは、第1エリアA1の搬送ロボット2Aが直近に第1エリアA1内に移動してから現在までの経過時間が所定の条件を満たすことであってもよい。なおこの場合、搬送ロボット2の処理部22は、自機の位置情報に基づいて、自機が第1エリアA1内に直近に移動してから第1エリアA1に滞在する現在までの経過時間を取得し、無線通信を介して制御装置4へ逐次送信する。
このように、所定のイベントを、第1エリアA1の搬送ロボット2Aが第1エリアA1内に移動してからの経過時間とすることで、第1エリアA1に位置する搬送ロボット2Aが長期に亘って第1エリアA1に滞在するのを抑制することができる。これにより、移動体の単位時間当たりの実働時間が第2エリアA2よりも大きい第1エリアA1の滞在期間を調整することができ、各搬送ロボット2の実働時間に偏りが生じるのを抑制することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、第1待機位置W1(第2待機位置W2)を、第1区間T1(第2区間T2)において中間区間T3に進入する直前の位置に設けた場合を例示したが、第1待機位置W1及び第2待機位置W2は、
図7に示すように、中間区間T3内であってもよい。
この場合、搬送ロボット2A及び搬送ロボット2Bを確実に中間区間T3内で待機させ、中間区間T3内ですれ違わせることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、第1エリアA1の搬送ロボット2が成型装置Sから得られるタイヤを搬送する作業を行い、第2エリアA2の搬送ロボット2が再検査を必要とするタイヤの搬送作業を行う場合を例示したが、各エリアの作業はこれに限定されるものではない。
さらに、上記実施形態では、移動体として搬送作業を行う搬送ロボット2を用いた場合を例示したが、第1エリア、第2エリア、及び両エリアを繋ぐ通路を自律移動可能であれば、搬送作業以外の他の作業を行うものであってもよい。
【0066】
本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 移動体システム
2,2A,2B 搬送ロボット
4 制御装置
6 充電ステーション
10 処理装置
12 通信装置
14 周囲センサ
16 搬送装置
18 駆動装置
20 バッテリ
21 センサ
22 処理部
22a 自律移動処理
22b 充電残量監視処理
22c 充電残量判定処理
22d 第1移動処理
22e 到着判定処理
22f 第2移動処理
24 記憶部
24a 地図情報
30 処理装置
32 通信装置
34 処理部
34a 充電残量判定処理
34b 第1移動処理
34c 到着判定処理
34d 第2移動処理
36 記憶部
A1 第1エリア
A2 第2エリア
S 成型装置
T 通路
T1 第1区間
T2 第2区間
T3 中間区間
W1 第1待機位置
W2 第2待機位置
W3 所定位置
W4 所定位置