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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241119BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241119BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20241119BHJP
   H10K 19/10 20230101ALI20241119BHJP
【FI】
H01L29/78 618C
H01L29/78 613A
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H01L29/78 618F
H01L29/78 619A
H10K10/46
H10K19/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021012739
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2021129107
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020024075
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩二
(72)【発明者】
【氏名】堀井 新司
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087937(WO,A1)
【文献】特開2011-166070(JP,A)
【文献】特表2008-514008(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H10K 10/00
H10K 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板上に設けられた、第1の半導体素子および第2の半導体素子を有する半導体装置であって、
前記第1の半導体素子は、n型半導体素子であり、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記第2の半導体素子は、p型半導体素子であり、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第2の半導体層と、
前記第2の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記半導体装置が、前記n型半導体素子と前記p型半導体素子とから構成される相補型半導体装置であり、
前記第1の半導体層および前記第2の半導体層がともにカーボンナノチューブを含有し、
前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)を前記第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)が、前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)を前記第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)と異なる、ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)を前記第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)が、前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)を前記第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)より小さい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)を前記第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)が、前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)を前記第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)の0.2倍以上0.8倍以下である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
絶縁表面を有する基板上に設けられた、第1の半導体素子および第2の半導体素子を有する半導体装置であって、
前記第1の半導体素子は、n型半導体素子であり、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記第2の半導体素子は、p型半導体素子であり、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第2の半導体層と、
前記第2の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記半導体装置が、前記n型半導体素子と前記p型半導体素子とから構成される相補型半導体装置であり、
前記第1の半導体層および前記第2の半導体層がともにカーボンナノチューブを含有し、
前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)が、前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)と異なる、ことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)が、前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)より短い、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)が、前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)の0.2倍以上0.8倍以下である、請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の半導体素子は、さらに、前記第1の半導体層に対して前記ゲート絶縁層とは反対側で前記第1の半導体層と接する第2絶縁層を含む、請求項1~6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の半導体層は、さらにn型改質剤を含む、請求項1~6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の半導体素子が前記第2絶縁層と異なる第3絶縁層を有し、前記第3絶縁層は、前記第2の半導体層に対して前記ゲート絶縁層とは反対側で前記第2の半導体層と接する、請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記第1の半導体層および前記第2の半導体層を塗布および乾燥して形成する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の半導体層および前記第2の半導体層を同一工程で塗布および乾燥して形成する請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1の半導体層を形成するために用いられる組成物と、前記第2の半導体層を形成するために用いられる組成物とが、同一の組成物である、請求項10または11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の半導体層を形成するために用いられる組成物の濃度と、前記第2の半導体層を形成するために用いられる組成物の濃度とが異なる、請求項10~12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1の半導体層を形成するために用いられる組成物の塗布量と、前記第2の半導体層を形成するために用いられる組成物の塗布量とが異なる、請求項10~13のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電界効果型トランジスタ(以下、FETという)を用いたデバイスとして、RFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信システムが注目されている。RFIDタグは、FETで構成された回路を有するICチップと、リーダ/ライタとの無線通信するためのアンテナを有する。タグ内に設置されたアンテナが、リーダ/ライタから送信される搬送波を受信し、ICチップ内の駆動回路が動作する。
【0003】
RFIDタグは、物流管理、商品管理、万引き防止などの様々な用途での利用が期待されており、交通カードなどのICカード、商品タグなど一部で導入が始まっている。
【0004】
今後、あらゆる商品でRFIDタグが使用されるためには、製造コストの低減が必要であり、その製造において、塗布・印刷技術を用いた安価なプロセスを利用することが検討されている。
【0005】
例えば、ICチップ内の駆動回路におけるトランジスタにおいては、インクジェット技術やスクリーン印刷技術が適用できる、カーボンナノチューブ(CNT)や有機半導体を用いたFETが盛んに検討されている。
【0006】
ところで、ICチップ内の駆動回路は、データを記憶するメモリ回路と、リーダ/ライタから送信される交流信号から電源電圧を生成する整流回路と、上記交流信号を復調しメモリ回路に記憶されているデータを読み出すロジック回路とから少なくとも構成されている。中でもロジック回路は、その消費電力を抑制するなどのため、p型FETとn型FETとからなる相補型半導体装置で構成するのが一般的である。
【0007】
しかし、CNTを用いたFET(以下、CNT-FETという)は、大気中では、通常、p型半導体素子の特性を示すことが知られている。そこで、CNTを含む半導体層の上に、n型改質ポリマーを形成することや、窒素原子およびリン原子から選ばれるいずれか1種以上を有する電子供与性化合物を含有する第2絶縁層を形成することにより、CNT-FETの特性をn型半導体素子に転換することが検討されている(例えば、特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2009/139339号
【文献】国際公開第2018/180146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~2に記載の技術では、相補型半導体装置を組んだ際、入力信号に対する出力信号のノイズマージンが狭いといった課題があった。
【0010】
そこで本発明は上記課題に着目し、ノイズマージンが広い相補型半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち本発明は、
絶縁表面を有する基板上に設けられた、第1の半導体素子および第2の半導体素子を有する半導体装置であって、
前記第1の半導体素子は、n型半導体素子であり、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記第2の半導体素子は、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第2の半導体層と、
前記第2の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記第1の半導体層および前記第2の半導体層がともにカーボンナノチューブを含有し、
前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)を前記第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)が、前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)を前記第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)と異なる、ことを特徴とする半導体装置である。
【0012】
また本発明の半導体装置は、
絶縁表面を有する基板上に設けられた、第1の半導体素子および第2の半導体素子を有する半導体装置であって、
前記第1の半導体素子は、n型半導体素子であり、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記第2の半導体素子は、p型半導体素子であり、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極と接する第2の半導体層と、
前記第2の半導体層を前記ゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、
を含み、
前記第1の半導体層および前記第2の半導体層がともにカーボンナノチューブを含有し、
前記第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)が、前記第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)と異なる、ことを特徴とする半導体装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノイズマージンが広い相補型半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置における第1の半導体素子を示した模式断面図
図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置における第2の半導体素子を示した模式断面図
図3】本発明の実施の形態3に係る半導体装置における第1の半導体素子を示した模式断面図
図4A】本発明の実施の形態に係る半導体装置の機能を説明する模式図
図4B】本発明の実施の形態に係る半導体装置の伝達特性の一例を示した図
図5】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示した模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る半導体装置の1つの実施形態は、n型半導体素子である第1の半導体素子とp型半導体素子である第2の半導体素子とを有し、各半導体素子の半導体層がともにカーボンナノチューブを含有し、上記第1の半導体素子の半導体層1μm当たりに存在する上記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)を上記第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)が、上記第2の半導体素子の半導体層1μm当たりに存在する上記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)を上記第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)と異なるものである。
【0016】
また、本発明に係る半導体装置の1つの実施形態は、n型半導体素子である第1の半導体素子とp型半導体素子である第2の半導体素子とを有し、各半導体素子の半導体層がともにカーボンナノチューブを含有し、上記第1の半導体素子の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)が、上記第2の半導体素子の半導体層1μm当たりに存在する上記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)と異なるものである。
【0017】
上記各実施形態にかかる構成により、ノイズマージンが広い相補型半導体装置を提供することができる。
【0018】
以下、本発明に係る半導体装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る半導体装置は、第1の半導体素子が、さらに、第1の半導体層に対してゲート絶縁層とは反対側で第1の半導体層と接する第2絶縁層を含む、半導体装置である。
【0020】
<第1の半導体素子>
第1の半導体素子は、絶縁性表面を有する基材上に備えられており、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極と接する第1の半導体層と、第1の半導体層をゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、第1の半導体層に対してゲート絶縁層とは反対側で前記第1の半導体層と接する第2絶縁層と、を備え、第1の半導体層が、カーボンナノチューブを含有する。
【0021】
図1に、第1の半導体素子の一例を示す模式断面図を示す。この半導体素子1は、基板10の上に形成されるゲート電極11と、それを覆うゲート絶縁層12と、その上に設けられるソース電極13およびドレイン電極14と、それらの電極の間に設けられる第1の半導体層15と、第1の半導体層15の上側に第1の半導体層を覆う第2絶縁層16を有する。第1の半導体層15は、カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称する)を含有する。
【0022】
第1の半導体素子1の構造は、ゲート電極11が第1の半導体層15の下側(基板10側)に配置され、第1の半導体層15の下面にソース電極13およびドレイン電極14が配置される、いわゆるボトムゲート・ボトムコンタクト構造である。しかし、第1の半導体素子の構造はこれに限られるものではなく、例えば、ゲート電極11が第1の半導体層15の上側(基板10と反対側)に配置される、いわゆるトップゲート構造や、第1の半導体層15の上面にソース電極13およびドレイン電極14が配置される、いわゆるトップコンタクト構造であってもよい。
【0023】
(絶縁性表面を有する基材)
第1の半導体素子の絶縁性表面を有する基材は、少なくとも電極系が配置される面が絶縁性であればいかなる材質のものでもよい。例えば、シリコンウエハ、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料などが好適に用いられる。また、例えばシリコンウエハ上にPVP膜を形成したものやポリエチレンテレフタレート上にポリシロキサン膜を形成したものなど複数の材料が積層されたものであってもよい。
【0024】
(ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極)
第1の半導体素子のソース電極、ドレイン電極およびゲート電極に用いられる材料は、一般的に電極として使用されうる導電性材料であれば、いかなるものでもよい。そのような導電性材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。また、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属、これらの中から選択される複数の金属の合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質が挙げられる。また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体、ヨウ素などのドーピングによって導電率を向上させた導電性ポリマーが挙げられる。さらには、炭素材料、有機成分と導電体とを含有する材料などが挙げられる。
【0025】
有機成分と導電体とを含有する材料は、電極の柔軟性が増し、屈曲時にも密着性が良く電気的接続が良好となる。有機成分としては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマーもしくはポリマー、光重合開始剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。電極の折り曲げ耐性向上の観点からは、オリゴマーもしくはポリマーが好ましい。しかし、電極および配線の導電性材料は、これらに限定されるものではない。これらの導電性材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0026】
電極の形成方法としては、例えば国際公開第2018/180146号に記載されているような、公知の方法を用いることができる。
【0027】
第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離100(Ln)は、特に制限はないが、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。この範囲の距離にすることにより、より半導体素子の特性が向上する。電極間の距離は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定できる。
【0028】
また、複数の第1の半導体素子間を電気的に接続する配線を形成してもよい。配線に用いられる材料は、一般的に電極として使用されうる導電性材料であれば、いかなるものでもよい。例えば、上述の電極材料と同様のものが挙げられる。
【0029】
配線の形成方法、およびパターン状に形成する方法としては、導通を取ることができる方法であれば、特に制限されないが、例えば、上述の電極材料と同様のものが挙げられる。
【0030】
(ゲート絶縁層)
ゲート絶縁層に用いられる材料は、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)等の有機高分子材料;あるいは無機材料粉末と有機材料の混合物を挙げることができる。有機材料の中でもケイ素と炭素の結合を含む有機化合物を含むものが基板や電極との密着性の観点から好ましい。
【0031】
ケイ素と炭素の結合を含む有機化合物としては、ポリシロキサン等が挙げられる。ポリシロキサンは絶縁性が高く、低温硬化が可能であるためより好ましい。
【0032】
第1の半導体素子のゲート絶縁層の膜厚は0.05~5μmが好ましく、0.1~1μmがより好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0033】
第1の半導体素子のゲート絶縁層の作製方法は特に制限はないが、例えば、ゲート絶縁層を形成する材料を含む組成物を基板に塗布し、乾燥することで得られたコーティング膜を必要に応じ熱処理する方法が挙げられる。塗布方法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。コーティング膜の熱処理の温度としては、100~300℃の範囲にあることが好ましい。
【0034】
ゲート絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して複数のゲート絶縁層を形成しても構わない。
【0035】
(第1の半導体層)
第1の半導体層はCNTを含有する。CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよいが、高い半導体特性を得るためには単層CNTを用いるのが好ましい。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等により得ることができる。
【0036】
また、CNTは半導体型CNTを80重量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは半導体型CNTを95重量%以上含むことである。半導体型80重量%以上のCNTを得る方法としては、既知の方法を用いることができる。例えば、密度勾配剤の共存下で超遠心する方法、特定の化合物を選択的に半導体型もしくは金属型CNTの表面に付着させ、溶解性の差を利用して分離する方法、電気的性質の差を利用し電気泳動等により分離する方法などが挙げられる。半導体型CNTの含有率を測定する方法としては、可視-近赤外吸収スペクトルの吸収面積比から算出する方法や、ラマンスペクトルの強度比から算出する方法等が挙げられる。
【0037】
CNT1本の長さは、ソース電極とドレイン電極間の距離(以下、単に「電極間距離」と称する)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、電極間距離にもよるが、好ましくは2μm以下である。
【0038】
CNTの平均長さとは、ランダムにピックアップした20本のCNTの長さの平均値を言う。CNT平均長さの測定方法としては、原子間力顕微鏡で得た画像の中から、20本のCNTをランダムにピックアップし、それらの長さの平均値を得る方法が挙げられる。
【0039】
一般に市販されているCNTは長さに分布があり、電極間距離よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTの長さを電極間距離よりも短くする工程を加えることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより、CNTを短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、CNTの純度を向上させる点でさらに好ましい。
【0040】
CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。さらに好ましくは5nm以下である。
【0041】
また、CNTとしては、CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT複合体を用いることが好ましい。共役系重合体とは、繰り返し単位が共役構造をとり、重合度が2以上の化合物を指す。
【0042】
CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着した状態とは、CNTの表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのは、両者の共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判断できる。定量的にはX線光電子分光(XPS)などの元素分析によって、付着物の存在とCNTに対する付着物の重量比を同定することができる。
【0043】
CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体を付着させることにより、CNTの保有する高い電気的特性を損なうことなくCNTを溶液中に均一に分散することが可能になる。また、CNTが均一に分散した溶液から塗布法により、均一に分散したCNT膜を形成することが可能になる。これにより、高い半導体特性を実現できる。
【0044】
CNTに共役系重合体を付着させる方法は、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTを溶媒中に超音波等で予備分散させておき、そこへ共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系へ超音波を照射して混合する方法などが挙げられる。本発明では、いずれの方法を用いてもよく、複数の方法を組み合わせてもよい。
【0045】
共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ-p-フェニレン系重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体などが挙げられるが、特に限定されない。上記重合体は単一のモノマーユニットが並んだものが好ましく用いられるが、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したものも用いられる。また、グラフト重合したものも用いることができる。
【0046】
上記重合体の中でも本発明においては、CNTへの付着が容易であり、CNT複合体を形成しやすいポリチオフェン系重合体が好ましく使用される。環中に含窒素二重結合を有する縮合へテロアリールユニットとチオフェンユニットを繰り返し単位中に含むものがより好ましい。
【0047】
環中に含窒素二重結合を有する縮合へテロアリールユニットとしては、特にベンゾチアジアゾールユニットまたはキノキサリンユニットが好ましい。これらのユニットを有することで、CNTと共役系重合体の密着性が増し、CNTを半導体層中により良好に分散することができる。
【0048】
半導体層は電気特性を阻害しない範囲であれば、さらに有機半導体や絶縁材料を含んでもよい。半導体層の膜厚は1nm以上100nm以下が好ましい。この範囲内にあることで、均一な薄膜形成が容易になる。より好ましくは1nm以上50nm以下、さらに好ましくは1nm以上20nm以下である。膜厚は、原子間力顕微鏡により測定できる。
【0049】
半導体層の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などを好ましく用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下でアニーリング処理を行ってもよい。
【0050】
(第2絶縁層)
第2絶縁層は、半導体層に対してゲート絶縁層が形成された側の反対側に形成される。半導体層に対してゲート絶縁層が形成された側の反対側とは、例えば、半導体層の下側にゲート絶縁層を有する場合は、半導体層の上側を指す。第2絶縁層を形成することにより、通常はp型半導体特性を示すCNT-FETを、n型半導体特性を示す半導体素子へ転換できる。
【0051】
第2絶縁層は、炭素原子と窒素原子の結合を含む有機化合物を含有することが好ましい。そのような有機化合物としてはいかなる有機化合物でもよいが、例えば、アミド系化合物、イミド系化合物、ウレア系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、アニリン系化合物、ニトリル系化合物などを挙げることができる。中でも、第2絶縁層は、(a)1つの炭素-炭素二重結合または1つの共役系に一般式(1)および一般式(2)で表される基がそれぞれ少なくとも1つ以上結合した構造を有する化合物、および(b)ポリマーを含有することが好ましい。
【0052】
(a)化合物は、1つの炭素-炭素二重結合または1つの共役系に一般式(1)および一般式(2)で表される基がそれぞれ少なくとも1つ以上結合していることにより、1つの炭素-炭素二重結合または1つの共役系のπ軌道の電子密度が高くなる。さらに、1つの炭素-炭素二重結合または1つの共役系といった構造は、CNTとπ-π相互作用や電荷移動相互作用をしやすいため、(a)化合物はCNTと強く電子的に相互作用し、通常はp型半導体特性を示すCNT-FETを、安定なn型半導体特性を示す半導体素子へ転換できると推定される。
【0053】
さらに第2絶縁層は(b)ポリマーを含有することにより、(a)化合物とCNTとが相互作用する場を安定に保つことができると考えられるので、より安定なn型半導体特性が得られると推定される。
【0054】
【化1】
【0055】
一般式(1)および(2)中、Rは水素原子、アルキル基およびシクロアルキル基から選ばれる構造を示す。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基から選ばれる構造を示す。また、R~Rのうち任意の2つにより環構造が形成されていてもよい。一般式(1)または一般式(2)で表される基がそれぞれ2つ以上含まれる場合、R~Rは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0056】
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、1以上20以下が好ましく、より好ましくは1以上8以下である。
【0057】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示す。シクロアルキル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。シクロアルキル基の炭素数は特に限定されないが、3以上20以下の範囲が好ましい。
【0058】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0059】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの、二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示す。シクロアルケニル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。シクロアルケニル基の炭素数は特に限定されないが、3以上20以下の範囲が好ましい。
【0060】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの、三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示す。アルキニル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0061】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、6以上40以下の範囲が好ましい。
【0062】
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基など、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基を示す。ヘテロアリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、2以上30以下の範囲が好ましい。
【0063】
~Rのうち任意の2つにより環構造が形成される場合とは、例えば、RとRや、RとRとが互いに結合して、共役または非共役の環構造を形成する場合である。環構造の構成元素として、炭素原子以外に、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素の各原子を含んでいてもよい。また、環構造が、さらに別の環と縮合した構造であってもよい。
【0064】
また共役系とは、多重結合が2個あるいはそれ以上共役している系のことであり、多重結合のπ電子は単結合を通して相互作用し非局在化している。例えば、二重結合および/または三重結合が単結合または非共有電子対または空のp軌道を有する原子により連結された構造であり、具体例としては、一般式(3)~(5)にて示される。
【0065】
【化2】
【0066】
また、1つの共役系に一般式(1)および一般式(2)で表される基がそれぞれ少なくとも1つ以上結合している例とは、例えば、一般式(6)~(9)で表される化合物である。なお、1つの共役系に該当する構造を点線で覆っている。
【0067】
【化3】
【0068】
(a)化合物としては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、4-((2-ジメチルアミノ)ビニル)―N,N-ジメチルアニリン、1,2-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’-トリメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N-ビス(メトキシメチル)-N’,N’-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、5,10-ジヒドロ-5,10-ジメチルフェナジン、ベンジジン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、N,N,N’,N’-テトラメチルベンジジン、4-(ピロリジン-1-イル)アニリン、4-(4-メチルピペリジン-1-イル)アニリン、2,4-ジピペリジン-1-イル-フェニルアミン、トリス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]アミン、N,N,N’,N’-テトラキス[4-(ジイソブチルアミノ)フェニル] -1,4-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレンなどが挙げられる。該化合物は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
第2絶縁層中の(a)化合物や(b)ポリマーの分析方法としては、半導体素子から第2絶縁層の組成物を抽出するなどして得られたサンプルを核磁気共鳴(NMR)などで分析する方法や、第2絶縁層をXPSなどで分析する方法などが挙げられる。
【0070】
第2絶縁層の膜厚は、500nm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、3.0μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、より半導体素子の特性の安定性が向上する。また、上限としては、特に限定されるものではないが、500μm以下であることが好ましい。
【0071】
第2絶縁層の膜厚は、第2絶縁層の断面を走査型電子顕微鏡により測定し、得られた像のうち、半導体層上に位置する第2絶縁層部分の中から無作為に選択した10箇所の膜厚を算出し、その算術平均の値とする。
【0072】
第2絶縁層は(a)化合物や(b)ポリマー以外に他の化合物を含有していてもよい。他の化合物としては、例えば、第2絶縁層を塗布で形成する場合における、溶液の粘度やレオロジーを調節するための増粘剤やチクソ剤などが挙げられる。
【0073】
また、第2絶縁層は単層でも複数層でもよい。複数層である場合、少なくとも(a)化合物を含有する層が半導体層に接している限りにおいて、少なくとも一つの層が(a)化合物と(b)ポリマーとを含んでいてもよいし、(a)化合物と(b)ポリマーとがそれぞれ別々の層に含まれていてもよい。例えば、半導体層上に(a)化合物を含有する第1層が形成され、その上に(b)ポリマーを含有する第2層が形成された構成が挙げられる。
【0074】
第2絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法として、具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ドロップキャスト法などを好ましく用いることができる。塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。
【0075】
(保護層)
第1の半導体素子は、第2絶縁層上に、さらに保護層を有していてもよい。保護層の役割としては、擦れなどの物理ダメージや大気中の水分や酸素から半導体素子を保護することなどが挙げられる。
【0076】
保護層の材料としては、例えば、シリコンウエハ、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー等の有機材料などが挙げられる。また、例えば、シリコンウエハ上にポリビニルフェノール膜を形成したものや、ポリエチレンテレフタレート上に酸化アルミニウム膜を形成したものなど、複数の材料が積層されたものであってもよい。
【0077】
半導体素子では、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流(ソース・ドレイン間電流)を、ゲート電圧を変化させることによって制御することができる。そして、半導体素子の移動度μ(cm/V・s)は、下記式を用いて算出することができる。
【0078】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・εr・ε・Vsd)
ただしIdはソース・ドレイン間電流(A)、Vsdはソース・ドレイン間電圧(V)、Vgはゲート電圧(V)、Dはゲート絶縁層の厚み(m)、Lはチャネル長(m)、Wはチャネル幅(m)、εrはゲート絶縁層の比誘電率(F/m)、εは真空の誘電率(8.85×10-12F/m)、δは該当の物理量の変化量を示す。
【0079】
また、半導体素子のしきい値電圧は、Id-Vgグラフにおける線形部分の延長線とVg軸との交点から求めることができる。
【0080】
しきい値電圧の絶対値が小さく、移動度が高いものが、高機能な、特性の良い半導体素子である。
【0081】
<第2の半導体素子>
第2の半導体素子は、絶縁性表面を有する基材上に備えられており、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極と接する第2の半導体層と、第2の半導体層をゲート電極と絶縁するゲート絶縁層と、を備え、第2の半導体層が、CNTを含有する。
【0082】
図2に、第2の半導体素子の一例を示す模式断面図を示す。この半導体素子2は、基板20の上に形成されるゲート電極21と、それを覆うゲート絶縁層22と、その上に設けられるソース電極23およびドレイン電極24と、それらの電極の間に設けられる第2の半導体層25を有する。第2の半導体層25は、CNTを含有する。
【0083】
第2の半導体素子2の構造は、図1に示す半導体素子1と同様、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造である。しかし、第2の半導体素子2の構造はこれに限られるものではなく、トップゲート構造や、トップコンタクト構造であってもよい。
【0084】
(絶縁性表面を有する基材)
第2の半導体素子の絶縁性表面を有する基材は、例えば、上述の第1の半導体素子の絶縁性表面を有する基材と同様のものが挙げられる。
【0085】
なお、製造コスト、プロセス簡便性の観点から、上述の第1の半導体素子と第2の半導体素子を別々の基材上に形成するのではなく、同一の絶縁性表面を有する基材上に形成することが好ましい。
【0086】
(ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極)
第2の半導体素子のソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極に用いられる材料は、例えば、上述の第1の半導体素子の電極に用いられる材料と同様のものが挙げられる。
【0087】
なお、第2の半導体素子の電極は、製造コストの観点から、上述の第1の半導体素子の電極と、別々の材料で形成するのではなく、同一の材料で形成することが好ましい。各電極が同一材料から形成されるとは、各電極に含まれる元素の中でも最も含有モル比率が高い元素が同一であることをいう。電極中の元素の種類と含有比率はX線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0088】
さらに、第2の半導体素子の電極は、プロセス簡便性の観点から、上述の半導体素子の各電極と、同一工程で形成することが好ましい。
【0089】
第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離200(Ln)は、特に制限はないが、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。この範囲の距離にすることにより、より半導体素子の特性が向上する。電極間の距離は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定できる。
【0090】
また、複数の第2半導体素子間、または第1の半導体素子と第2の半導体素子を電気的に接続する配線を形成してもよい。配線に用いられる材料は、一般的に電極として使用されうる導電性材料であれば、いかなるものでもよい。例えば、上述の第1の半導体素子間を電気的に接続する配線と同様のものが挙げられる。
【0091】
(ゲート絶縁層)
第2の半導体素子のゲート絶縁層に用いられる材料は、特に限定されないが、例えば、上述の第1の半導体素子のゲート絶縁層と同様のものが挙げられる。
【0092】
なお、第2の半導体素子のゲート絶縁層は、製造コストの観点から、上述の第1の半導体素子のゲート絶縁層と、別々の材料で形成するのではなく、同一の材料で形成することが好ましい。これらのゲート絶縁層が同一材料からなるとは、各ゲート絶縁層を構成する組成物中に1モル%以上含まれる元素の種類および組成比が同じであることをいう。元素の種類および組成比が同じであるか否かは、X線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0093】
さらに、第2の半導体素子のゲート絶縁層は、プロセス簡便性の観点から、上述の第1の半導体素子のゲート絶縁層と、同一工程で形成することが好ましい。
【0094】
(第2の半導体層)
第2の半導体層はCNTを含有する。CNTとしては、上述の第1の半導体層のものと同様である。
【0095】
なお、第2の半導体層は、製造コストの観点から、上述の第1の半導体層と、別の材料で形成するのではなく、同一の材料で形成することが好ましい。さらに、第2の半導体層は、プロセス簡便性の観点から、上述の第1の半導体層と、同一工程で形成することが好ましい。
【0096】
本実施の形態1に係る半導体装置において、第1の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cn)は、第2の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cp)とは異なる。これにより、第1の半導体素子と第2の半導体素子の、オン電流やオフ電流、しきい値電圧といった電気的特性が同等になることで、ノイズマージンが広い半導体装置となる。
【0097】
中でも、第2の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cp)が、第1の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cn)より短いことが好ましい。これにより、第1の半導体素子と第2の半導体素子の電気的特性がより等しくなるので好ましい。これは、下記の理由であると推定される。通常、CNT-TFTはp型半導体特性を示すことからも分かるように、CNTにおいては、p型半導体の電気的な伝導性を担うキャリアである正孔の移動度の方が、n型半導体の電気的な伝導性を担うキャリアである電子の移動度より大きい。このため、p型半導体素子とn型半導体素子の電気的特性を同等とするためには、n型半導体素子のキャリア密度を、p型半導体素子のキャリア密度よりも、密にすることが好ましい。さらに、p型半導体素子とn型半導体素子の電気的特性を同等とするためには、n型半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離を、p型半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離よりも、短くすることも好ましい。
【0098】
さらに好ましくは、第2の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cp)が、第1の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cn)の0.2倍以上0.8倍以下である。なお、上記数値範囲は、限界値の有効数字の下一桁を四捨五入して得られる範囲である。すなわち、0.8倍以下とは、0.84倍以下であり、0.2倍以上とは、0.15倍以上である。この範囲にあることで、第1の半導体素子と第2の半導体素子の移動度が高くなり、電気的特性もより同等となり、ノイズマージンもより広い半導体装置となる。
【0099】
半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さとは、半導体層中の無作為に抽出した1μm内に存在するCNTの長さの総和を言う。CNTの総長さの測定方法としては、原子間力顕微鏡で得た半導体素子の半導体層の画像の中から無作為に1μmを選択し、その領域に含まれる全てのCNTの長さを測定して合計する方法が挙げられる。なお、上記CNTの総長さは、1μm未満の数字を四捨五入して得られる値である。すなわち、CNTの総長さ1μmとは、0.5μm以上1.4μm以下である。
【0100】
また、半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離とは、ソース電極とドレイン電極間の最短距離を言う。ソース電極とドレイン電極間の距離の測定方法としては、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などで得た半導体素子の画像から、ソース電極とドレイン電極間の最短距離を測定する方法が挙げられる。
【0101】
(第3絶縁層)
第2の半導体素子は、さらに、第2の半導体層に対してゲート絶縁層が形成された側の反対側に第3絶縁層を形成してもよい。第2の半導体層に対してゲート絶縁層が形成された側の反対側とは、例えば、第2の半導体層の下側にゲート絶縁層を有する場合は、半導体層の上側を指す。本発明の第3絶縁層をさらに形成することによって、第2の半導体層を酸素や水分などの外部環境、物理的な衝撃から保護することができる。また、第3絶縁層を形成することにより、第2の半導体素子の特性を調整することもできる。
【0102】
第3絶縁層は、これを形成することにより通常はp型半導体特性を示すCNT-FETをn型半導体特性を示す半導体素子に転換するものではない。この点で、第3絶縁層は、第1の半導体素子が備える第2絶縁層とは異なる。
【0103】
なお、第3絶縁層と第2絶縁層が異なるとは、第3絶縁層、および第2絶縁層を構成する組成物中に1モル%以上含まれる元素の種類および組成比が異なることをいう。第3絶縁層、および第2絶縁層中の元素の種類と含有比率は、半導体素子から第3絶縁層、および第2絶縁層の組成物を抽出するなどして得られたサンプルをX線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0104】
第3絶縁層に用いられる材料としては、特に限定されないが、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などの有機高分子材料;あるいは無機材料粉末と有機高分子材料の混合物や有機低分子材料と有機高分子材料の混合物を挙げることができる。これらの中でも、塗布法で作製できる有機高分子材料を用いることが好ましい。特に、ポリフルオロエチレン、ポリノルボルネン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびこれらの誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらを含む共重合体からなる群より選ばれる有機高分子材料を用いることが、絶縁層の均一性の観点から好ましい。ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリビニルフェノールおよびポリメチルメタクリレートからなる群より選ばれた有機高分子材料を用いることで、第2の半導体素子の電気特性を悪化させることなく、第2の半導体層の保護が可能となることから、特に好ましい。
【0105】
第3絶縁層の膜厚は、50nm~10μmが好ましく、より好ましくは100nm~3μmである。第3絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して形成しても構わない。
【0106】
第3絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法として、具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ドロップキャスト法などを好ましく用いることができる。塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。
【0107】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る半導体装置は、上記実施の形態1に係る半導体装置において、第1の半導体層1μm当たりに存在するカーボンナノチューブの総長さ(Cn)が、第2の半導体層1μm当たりに存在するカーボンナノチューブの総長さ(Cp)と異なる、という特徴の代わりに、第1の半導体層1μm当たりに存在するカーボンナノチューブの総長さ(Cn)を第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)が、第2の半導体層1μm当たりに存在するカーボンナノチューブの総長さ(Cp)を第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)と異なる、という特徴を有するものである。また、その点を除いては、上記実施の形態1に係る半導体装置と同様の構成である。
【0108】
本実施の形態2に係る半導体装置は、上記特徴を有することにより、第1の半導体素子と第2の半導体素子の、オン電流やオフ電流、しきい値電圧といった電気的特性が同等になることで、ノイズマージンが広い半導体装置となる。
【0109】
中でも、第2の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cp)を上記第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)が、第1の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cn)を第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)より小さいことが好ましい。これにより、第1の半導体素子と第2の半導体素子の電気的特性がより等しくなるので好ましい。これは、下記の理由であると推定される。通常、CNT-TFTはp型半導体特性を示すことからも分かるように、CNTにおいては、p型半導体の電気的な伝導性を担うキャリアである正孔の移動度の方が、n型半導体の電気的な伝導性を担うキャリアである電子の移動度より大きい。このため、p型半導体素子とn型半導体素子の電気的特性を同等とするためには、n型半導体素子のキャリア密度を、p型半導体素子のキャリア密度よりも、密にすることが好ましい。さらに、p型半導体素子とn型半導体素子の電気的特性を同等とするためには、n型半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離を、p型半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離よりも、短くすることも好ましい。
【0110】
さらに好ましくは、第2の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cp)を第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)が、第1の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cn)を第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)の0.2倍以上0.8倍以下である。なお、上記数値範囲は、限界値の有効数字の下一桁を四捨五入して得られる範囲である。すなわち、0.8倍以下とは、0.84倍以下であり、0.2倍以上とは、0.15倍以上である。この範囲にあることで、第1の半導体素子と第2の半導体素子の移動度が高くなり、電気的特性もより同等となり、ノイズマージンもより広い半導体装置となる。
【0111】
なお、本実施の形態2に係る半導体装置は、さらに、第1の半導体層1μm当たりに存在するカーボンナノチューブの総長さ(Cn)が、第2の半導体層1μm当たりに存在するカーボンナノチューブの総長さ(Cp)と異なる、という特徴を有していても構わない。また、第2の半導体層1μm当たりに存在するカーボンナノチューブの総長さ(Cp)が、第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)より短い、という特徴を有していても構わない。さらに、第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)が、第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)の0.2倍以上0.8倍以下である、という特徴を有していても構わない。
【0112】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る半導体装置は、第1の半導体素子における第1の半導体層が、さらにn型改質剤を含む、半導体装置である。
【0113】
図3に、本発明の実施の形態3に係る半導体装置における、第1の半導体素子の一例を示す模式断面図を示す。この半導体素子3は、基板30の上に形成されるゲート電極31と、それを覆うゲート絶縁層32と、その上に設けられるソース電極33およびドレイン電極34と、それらの電極の間に設けられる第1の半導体層35を有する。第1の半導体層35は、CNTおよびn型改質剤を含有する。
【0114】
<n型改質剤>
n型改質剤は、通常はp型半導体特性を示すCNT-FETを、n型半導体特性を示す半導体素子へ転換するための材料である。第1の半導体層がCNTとn型改質剤とを含むことで、第1の半導体素子はn型半導体素子となる。
【0115】
第1の半導体層にn型改質剤を含有させる手法としては、第1の半導体層中のCNTに対し、n型改質剤を、ドーピングする手法、吸着させる手法、コーティングする手法などが挙げられる。
【0116】
n型改質剤は、CNT-FETを、n型半導体特性を示す半導体素子へ転換できるものであれば、特に限定されないが、例えば、カリウム等のアルカリ金属、リンなどのCNTに電子を提供する電子ドナー原子を含む物質、アミン類やハロゲン化アルキル類やアルコール類等の電子供与性基となる官能基を有する物質などが挙げられる。
【0117】
本実施の形態2に係る半導体装置は、第1の半導体素子が第2絶縁層を必須の構成要素としては含まず、代わりに、第1の半導体層が上記n型改質剤を含む点を除いては、その構成や製造方法等は実施の形態1と同様である。
【0118】
本実施の形態3に係る半導体装置においても、第1の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cn)は、第2の半導体層1μm当たりに存在するCNTの総長さ(Cp)とは異なる。または、第1の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cn)を第1の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Ln)で割った値(Cn/Ln)が、第2の半導体層1μm当たりに存在する前記カーボンナノチューブの総長さ(Cp)を第2の半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離(Lp)で割った値(Cp/Lp)と異なる。これにより、第1の半導体素子と第2の半導体素子の、オン電流やオフ電流、しきい値電圧といった電気的特性が同等になることで、ノイズマージンが広い半導体装置となる。
【0119】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、第1の半導体素子、及び第2の半導体素子の両方を備えている。本発明の実施の形態に係る半導体装置の一例を図4Aに示す。ここで、第1の半導体素子41はn型半導体素子であって、第2の半導体素子42はp型半導体素子である。図3Aに示す半導体装置の動作を以下に示す。
【0120】
まず、入力信号(Vin)は、ロー “L”(接地電位GND)とハイ “H”(VDD)との間で変化する。入力信号が“L”の場合、p型半導体素子が導通し、n型半導体素子が遮断されることにより、出力信号(Vout)が“H”になる。逆に、入力信号が“H”の場合、n型半導体素子41が導通し、p型半導体素子42が遮断されることにより、出力信号が“L”になる。この半導体装置の伝達特性の一例を図4Bに示す。
【0121】
例えば、n型半導体素子のしきい値電圧とp型半導体素子のしきい値電圧が異なると、n型半導体素子とp型半導体素子の導通と遮断のタイミングがずれてしまい、入力信号に対して、出力信号が反転せず、正常に動作しないことがある。そのため、n型半導体素子とp型半導体素子の電気的特性が同等であることで、特性の良い半導体装置となる。例えば、n型半導体素子とp型半導体素子の電気的特性が同等であると、出力信号が変化する入力信号(図3B中のV:出力信号がVDD/2となる入力信号)が、VDD/2となり、ノイズマージンが広く高性能な半導体装置となる。また、図4Bに示す、入力信号に対する出力信号を表す曲線(伝達特性曲線)において、Vin=Vにおける接線の傾き(ゲイン)は各半導体素子の移動度と相関しており、ゲインが大きい半導体装置が高性能である。なお、電気的特性とは、前述のしきい値電圧以外にも、例えばオン電流、オフ電流、移動度などがあげられる。
【0122】
(半導体装置の適用可能性)
本発明の実施の形態に係る半導体装置は、各種電子機器のIC、RFIDタグなどの無線通信装置、無線給電装置、アクティブマトリクス駆動の液晶ディスプレイや電子ペーパーなどのディスプレイ用TFTアレイ、センサ、開封検知システム、などに適用可能である。
【0123】
<半導体装置の製造方法>
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の半導体素子、及び第2の半導体素子におけるソース電極とドレイン電極との間の領域に、半導体層を塗布および乾燥して形成する工程を、少なくとも含むことが好ましい。また、この製造方法において、製造対象の第1の半導体素子及び第2の半導体素子を構成する、電極、ゲート絶縁層、半導体層、第2絶縁層、第3絶縁層の形成方法は前述の通りである。これらの形成方法の順序を適宜選択することで、本発明に係る半導体装置を製造することができる。
【0124】
製造コスト、プロセス簡便性の観点から、第1の半導体素子と第2の半導体素子を別々に形成するのではなく、同時に形成することが好ましい。そのため、同一構造であることが好ましい。特に、第1の半導体層および第2の半導体層を同一工程で塗布および乾燥して形成することが好ましい。
【0125】
ここで、同時に形成するとは、その電極や層の形成に必要なプロセスを1回行うことで、2つの電極や層をともに形成することをいう。また、同一工程で塗布および乾燥して形成するとは、対象となる層を形成するための塗布および乾燥工程を1回行うことで、それらの層を形成することをいう。
【0126】
これらの工程はいずれも、第1の半導体素子と第2の半導体素子の構造が異なる場合であっても適用可能であるが、それらが同一構造である場合の方が適用は容易である。
【0127】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を具体的に説明する。まず、図5(a)に示すように、基板50上の第1の半導体素子領域500にゲート電極510を、第2の半導体素子領域501にゲート電極511を、前述の方法で形成する。
【0128】
次に図5(b)に示すように第1の半導体素子500および第2の半導体素子501のゲート絶縁層520、521を形成する。
【0129】
次に図5(c)に示すように第1の半導体素子500および第2の半導体素子501のゲート絶縁層520、521の上部にソース電極540、541およびドレイン電極550、551を、同一の材料を用いて前述の方法で同時に形成する。
【0130】
次に図5(d)に示すように第1の半導体素子500および第2の半導体素子501のソース電極540、541とドレイン電極550、551間それぞれに第1の半導体層560、460、および第2の半導体層561を前述の方法で形成する。
【0131】
次に図5(e)に示すように、第1の半導体素子500の第1の半導体層560を覆うように第2絶縁層5848を前述の方法で形成することにより半導体装置を作製できる。
【0132】
なお、材料の使用効率向上、材料種類が少なくなることから、第1の半導体素子400および第2の半導体素子501のゲート電極510、511は同一材料であることが好ましい。同様の理由で、第1の半導体層560を形成するために用いられる組成物と第2の半導体層561を形成するために用いられる組成物が、同一の組成物であることが好ましい。組成物が同一であるとは、各組成物中に1モル%以上含まれる元素の種類および組成比が同じであることをいう。元素の種類および組成比が同じであるか否かは、X線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0133】
また、第1の半導体層560を形成するために用いられる組成物の濃度と、第2の半導体層561を形成するために用いられる組成物の濃度とが異なることが好ましい。または、第1の半導体層560を形成するために用いられる組成物の塗布量と、第2の半導体層561を形成するために用いられる組成物の塗布量とが異なることが好ましい。これらのいずれかの方法を用いると、簡便に、第1の半導体素子と第2の半導体素子の電気的特性が同等な半導体装置が作製できるため、好ましい。
【0134】
また、第1の半導体層560および第2の半導体層561の塗布工程における塗布法は、特に限定されるものではないが、インクジェット法、ディスペンサー法およびスプレー法からなる群より選ばれるいずれか一つであることが好ましい。中でも、原料使用効率の観点から、塗布法としてインクジェット法がより好ましい。その際は、例えば、ショット数や溶液押し出し圧などの調整により、塗布量を調整することが考えられる。
【実施例
【0135】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0136】
半導体溶液の作製例1;半導体溶液A1、半導体溶液A2
まず、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)(アルドリッチ(株)製)2.0mgのクロロホルム10ml溶液にCNT1(CNI社製、単層CNT、純度95%)を1.0mg加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX-500)を用いて出力20%で4時間超音波撹拌し、CNT分散液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.96g/l)を得た。次に、半導体層を形成するための半導体溶液の作製を行った。上記CNT分散液Aをメンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。得られた濾液にo-DCB(和光純薬工業(株)製)5mlを加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて、低沸点溶媒であるクロロホルムを留去し、溶媒をo-DCBで置換し、CNT分散液A’を得た。
CNT分散液A’1mlにo-DCB3mLを加え、半導体溶液A1(溶媒に対するCNT複合体濃度0.033g/l)とした。また、CNT分散液A’1mlにo-DCB1.5mLを加え、半導体溶液A2(溶媒に対するCNT複合体濃度0.061g/l)とした。
【0137】
組成物の作製例1;ゲート絶縁層溶液A
メチルトリメトキシシラン61.29g(0.45モル)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.31g(0.05モル)、およびフェニルトリメトキシシラン99.15g(0.5モル)をプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)203.36gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0重量%のポリシロキサン溶液Aを得た。得られたポリシロキサンの重量平均分子量は6000であった。得られたポリシロキサン溶液Aを10gはかり取り、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)54.4gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ゲート絶縁層溶液Aを得た。
【0138】
組成物の作製例2;第2絶縁層作製用の溶液A
ポリメチルメタクリレート(富士フィルム和光純薬株式会社製)2.5gをN,N-ジメチルホルムアミド7.5gに溶解し、ポリマー溶液Aを調製した。次に、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(東京化成工業株式会社製)1gをN,N-ジメチルホルムアミド9.0gに溶解し、化合物溶液Aを調製した。ポリマー溶液A0.68gに化合物溶液A0.30gを添加し、第2絶縁層作製用の溶液Aを得た。
【0139】
組成物の作製例3;第2絶縁層作製用の溶液B
N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミンの代わりにN,N,N’,N’-テトラメチルベンジジン(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は組成物の作製例2と同様にして、第2絶縁層作製用の溶液Bを得た。
【0140】
組成物の作製例4;第3絶縁層溶液A
ポリメチルメタクリレート1.485gをシクロヘキサノン8.5gに溶解し、第3絶縁層溶液Aを調製した。
【0141】
組成物の作製例5;第3絶縁層溶液B
ポリメチルメタクリレートの代わりにヒドロキシ基を有するアクリル樹脂(共栄社化学株式会社製、品番「オリコックス KC-7000」)を用いたこと以外は組成物の作製例4と同様にして、第3絶縁層溶液Bを得た。
【0142】
組成物の作製例6;第3絶縁層溶液C
ポリメチルメタクリレートの代わりにエチルセルロース(ダウケミカル社製、品番「エトセル STD-100CPS」)を用いたこと以外は組成物の作製例4と同様にして、第3絶縁層溶液Cを得た。
【0143】
(半導体装置の評価)
各実施例および比較例で作製した、第1の半導体素子および第2の半導体素子から構成される、図3Aに示す半導体装置の評価を行った。VDDは10V、GND端子は接地とした。入力信号(Vin)の0→10Vの変化に対する出力信号(Vout)の伝達特性の接線の傾き(ゲイン)を測定した。また、Voutが変化するVin(VoutがVDD/2となるVin)を測定した。ゲインが大きいほど高性能な半導体装置であることを示す。また、Vinは5V(=VDD/2)に近いほど、n型半導体素子とp型半導体素子との半導体特性が同等で良好であることを示す。
【0144】
実施例1
まず、ガラス製の基板(膜厚0.7mm)上に、抵抗加熱法により、マスクを通してクロムを5nmおよび金を50nm真空蒸着し、これにより、図5に示す第1の半導体素子のゲート電極510、第2の半導体素子のゲート電極511を形成した。
【0145】
次に上記ゲート絶縁層溶液Aを上記基板上にスピンコート塗布(2000rpm×30秒)し、窒素気流下200℃、1時間熱処理することによって、膜厚600nmのゲート絶縁層520、521を形成した。
【0146】
つぎに、抵抗加熱法により、金を膜厚50nmになるように真空蒸着し、その上にフォトレジスト(商品名“LC100-10cP”、ローム・アンド・ハース株式会社製)をスピンコート法で塗布(1000rpm×20秒)し、100℃で10分間加熱乾燥した。ついで、上記のように作製したフォトレジスト膜を、パラレルライトマスクアライナー(キヤノン株式会社製、PLA-501F)を用いて、マスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業株式会社製、AD-2000)を用いて、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(商品名“ELM-D”、三菱ガス化学株式会社製)で70秒間シャワー現像し、続いて水で30秒間洗浄した。その後、エッチング処理液(商品名“AURUM-302”、関東化学株式会社製)で5分間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。ついで、剥離液(商品名“AZリムーバ100”、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)に5分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、120℃で20分間加熱乾燥することで第1の半導体素子のソース電極540、およびドレイン電極550、第2の半導体素子のソース電極541、およびドレイン電極551を形成した。
【0147】
第1の半導体素子のソース電極540、およびドレイン電極550、第2の半導体素子のソース電極541、およびドレイン電極551の幅は100μmとし、これらの電極間の距離は30μmとした。上記のように各電極が形成された基板1上において、インクジェット法で、第1の半導体素子には200plの半導体溶液A1を塗布し、第2の半導体素子には100plの半導体溶液A1を塗布した後、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分間の熱処理を行うことによって第1の半導体層560、および第2の半導体層561を形成した。次に、第2絶縁層作製用の溶液A5μLを、第1の半導体層560上に、第1の半導体層を覆うように滴下し、窒素気流下、110℃で30分熱処理して、第2絶縁層58を形成した。
【0148】
このようにして、実施例1の半導体装置を得た。次に第1の半導体層の画像を原子間力顕微鏡Dimension Icon(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて取得し、第1の半導体層中央1μm当たりに存在するCNT複合体全ての長さを測定し、合計したところ、16μmであった。また同様に第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、11μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは29、Voutが変化するVinは、5.9Vであった。
【0149】
実施例2
第2の半導体素子の第2の半導体層561上に、ポリスチレン(アルドリッチ社製、重量平均分子量(Mw):192000、以下PSという)の5質量%プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート溶液を10μLドロップキャストし、30℃で5分風乾した後、ホットプレート上で窒素気流下、120℃、30分の熱処理を行い、第3絶縁層を有する第2の半導体素子を形成した以外は、実施例1同様に半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、16μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、11μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは30、Voutが変化するVinは、5.7Vであった。
【0150】
実施例3
第1の半導体素子の第1の半導体層を、半導体溶液A1を250pl滴下して形成し、第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A1を200pl敵下して形成したこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、18μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、16μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは7、Voutが変化するVinは、7.9Vであった。
【0151】
実施例4
第1の半導体素子の第1の半導体層を、半導体溶液A2を100pl滴下して形成し、第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A1を250pl敵下して形成したこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、24μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、18μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは19、Voutが変化するVinは、6.1Vであった。
【0152】
実施例5
第1の半導体素子の第1の半導体層を、半導体溶液A2を100pl滴下して形成し、第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A1を100pl敵下して形成したこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、24μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、11μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは38、Voutが変化するVinは、4.8Vであった。
【0153】
実施例6
第2絶縁層作製用の溶液Aの代わりに第2絶縁層作製用の溶液Bを用いたこと以外は実施例5と同様にして、半導体素子を作製し、実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、24μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、11μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは34、Voutが変化するVinは、4.5Vであった。
【0154】
実施例7
第1の半導体素子の第1の半導体層を、半導体溶液A1を3000pl滴下して形成し、第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A2を100pl敵下して形成したこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、80μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、24μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは18、Voutが変化するVinは、3.8Vであった。
【0155】
実施例8
第1の半導体素子の第1の半導体層を、半導体溶液A1を1000pl滴下して形成し、第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A1を70pl敵下して形成したこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、53μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、7μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは5、Voutが変化するVinは、1.9Vであった。
【0156】
実施例9
第1の半導体素子の第1の半導体層を、半導体溶液A1を3000pl滴下して形成し、第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A1を200pl敵下して形成したこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、80μmであった。また、第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定したところ、16μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、ゲインは15、Voutが変化するVinは、3.2Vであった。
【0157】
実施例10~12
PSの5質量%プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート溶液の代わりに、表1に記載のように、第3絶縁層溶液A、BおよびCをそれぞれ用いたこと以外は実施例2と同様にして、半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0158】
実施例13
第2の半導体素子のソース電極541、およびドレイン電極551の電極間の距離を35μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0159】
実施例14
第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A1を200pl敵下して形成し、第2の半導体素子のソース電極541、およびドレイン電極551の電極間の距離を60μmとしたこと以外実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0160】
実施例15
第2の半導体素子のソース電極541、およびドレイン電極551の電極間の距離を130μmとしたこと以外は、実施例14と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0161】
実施例16
第1の半導体素子のソース電極540、およびドレイン電極550の電極間の距離を10μm、第2の半導体素子のソース電極541、およびドレイン電極551の電極間の距離を100μmとしたこと以外は、実施例14と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0162】
実施例17
第1の半導体素子のソース電極540、およびドレイン電極550の電極間の距離を30μm、第2の半導体素子のソース電極541、およびドレイン電極551の電極間の距離を35μmとしたこと以外は、実施例14と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0163】
実施例18
第2の半導体素子の第2の半導体層を、半導体溶液A2を100pl敵下して形成したこと以外は、実施例14と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0164】
実施例19
第2の半導体素子の第2の半導体層561上に、第3絶縁層溶液Aを10μLドロップキャストし、30℃で5分風乾した後、ホットプレート上で窒素気流下、120℃、30分の熱処理を行い、第3絶縁層を有する第2の半導体素子を形成した以外は、実施例14と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さを測定し、それぞれの半導体装置について上記の評価を行った。
【0165】
比較例1
第1の半導体素子の第1の半導体層、第2の半導体素子の第2の半導体層を、ともに半導体溶液A1を100pl滴下して形成したこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。実施例1同様に第1の半導体層、および第2の半導体層中の1μm当たりに存在するCNT複合体の総長さをそれぞれ測定したところ、ともに11μmであった。また、この半導体装置について上記の評価を行ったところ、Vinの0→10Vの変化に対しVoutは10V→4Vまでしか変化せず、完全な半導体装置の動作は得られなかった。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【符号の説明】
【0168】
10、20、30、50 基板
11、21、31、510、511 ゲート電極
12、22、32、520、521 ゲート絶縁層
13、23、33、540、541 ソース電極
14、24、34、550、551 ドレイン電極
15、35、560 第1の半導体層
16、58 第2絶縁層
100、200 半導体素子のソース電極とドレイン電極との間の距離
25、561 第2の半導体層
41、500 第1の半導体素子
42、501 第2の半導体素子
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5