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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】スタック性成形体
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/032 20060101AFI20241119BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B65D21/032
B65D77/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021014336
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2021151892
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2020050866
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-278931(JP,A)
【文献】米国特許第04986434(US,A)
【文献】特開平08-058793(JP,A)
【文献】登録実用新案第3024142(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/032
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなり、全体としてカップ形状を有しているスタック性成形体において、
前記周状側壁の上部には、該スタック性成形体の底部を含む下方部分が通過し得る大きさの上部水平開口を有しており、
前記周状側壁の中間部には、前記スタック性成形体の底部を含む下方部分の通過が阻止されるような水平形状を有している中間水平開口が形成されており、
側断面でみたとき、前記周状側壁の周方向の一部は、前記底壁から外方に傾斜して立ち上がっている外テーパー領域を有し、
側断面でみたとき、前記周状側壁は、上方にいくに従い内方に縮経した形状の返しを有する返し領域を有しており、該返しの先端が該周状側壁の中間部分に位置すると共に、前記外テーパー領域は、該返し領域に対向する位置に存在しており、
前記返し領域において、前記返しの先端からは、上方に向かって立ち上がっている中間立設部が形成されており、該中間立設部の上端は、前記外テーパー領域の上端と同一高さを有しており、該中間立設部の上端と外テーパー領域の上端を含むようにして全周にわたって外方に広がったスタック用水平段差が形成されており、該水平段差の外周縁の全周から上方に立ち上がった周状ガイド壁が形成されていることを特徴とするスタック性成形体。
【請求項2】
底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなり、全体としてカップ形状を有しているスタック性成形体において、
前記周状側壁の上部には、該スタック性成形体の底部を含む下方部分が通過し得る大きさの上部水平開口を有しており、
前記周状側壁の中間部には、前記スタック性成形体の底部を含む下方部分の通過が阻止されるような水平形状を有している中間水平開口が形成されており、
前記中間水平開口の周囲には、全周にわたって又は部分的に、スタック用段差が形成されており、
側断面でみたとき、前記周状側壁の周方向の一部は、前記底壁から外方に傾斜して立ち上がっている外テーパー領域を有し、
側断面でみたとき、前記周状側壁は、上方にいくに従い内方に縮経した形状の返しを有する返し領域を有しており、該返しの先端が該周状側壁の中間部分に位置すると共に、前記外テーパー領域は、該返し領域に対向する位置に存在しており、
前記スタック用段差は、前記外テーパー領域に形成されており、該外テーパー領域は、前記底壁周縁に連なっている第1の外テーパー壁と該段差の外側端部から上方に延びている第2の外テーパー壁とを有しており、
前記側断面でみて、前記第1の外テーパー壁の底壁に対する立ち上がり角θ は、前記返し領域の付け根部分での周状側壁の立ち上がり角α よりも大きく設定されていることを特徴とするスタック性成形体
【請求項3】
底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなり、全体としてカップ形状を有しているスタック性成形体において、
前記周状側壁の上部には、該スタック性成形体の底部を含む下方部分が通過し得る大きさの上部水平開口を有しており、
前記周状側壁の中間部には、前記スタック性成形体の底部を含む下方部分の通過が阻止されるような水平形状を有している中間水平開口が形成されており、
側断面でみたとき、前記周状側壁の周方向の一部は、前記底壁から外方に傾斜して立ち上がっている外テーパー領域を有しており、
側断面でみて、前記外テーパー領域と反対側の領域に、前記周状側壁が内方に傾斜して立ち上がっている内方傾斜領域が形成されていると共に、該内方傾斜領域を形成している周状側壁の立ち上がり角α は、前記外テーパー領域を形成している周状側壁の立ち上がり角θ よりも小さく設定されており、
前記内方傾斜領域の上端は、前記外テーパー領域の上端よりも低い中間位置に連なって前記中間水平開口が形成されており、該内方傾斜領域の上端から水平方向外方にスタック用段差が延びており、該スタック用段差の外周縁から上部立設壁が形成されており、該立設壁は、前記外テーパー領域の前記中間位置よりも上方の部分を形成している周状側壁に連なっていることを特徴とするスタック性成形体。
【請求項4】
前記返しは、内方側に屈曲している請求項1又は2に記載のスタック性成形体。
【請求項5】
前記返し領域における前記返しの先端からは、外方に向かって立ち上がっている延長立設部が形成されており、前記延長立設部は、前記外テーパー領域に周状に連なって前記上部水平開口を形成しており、
前記上部水平開口の前記側断面で長さDは、前記底壁の前記側断面での長さdよりも大きく設定されている請求項に記載のスタック性成形体。
【請求項6】
前記中間立設部の上端と外テーパー領域の上端とによって前記中間水平開口が形成されている請求項に記載のスタック性成形体。
【請求項7】
前記周状側壁の上端には、水平方向外方に広がったフランジが全周にわたって形成されている請求項1~の何れかに記載のスタック性成形体。
【請求項8】
容器として使用される請求項1~の何れかに記載のスタック性成形体。
【請求項9】
前記容器が食器である請求項に記載のスタック性成形体。
【請求項10】
積み重ねて保管或いは搬送される請求項1~の何れかに記載のスタック性成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み重ねての保管が可能なスタック性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなるカップ形状を有している成形体は、カップ内空間に種々の物を収容できるため、容器或いは食器などとして広く使用されている。
【0003】
ところで、このような形態の成形体において、周状側壁の一部に、上方にいくに従い内方に屈曲している返しを有する屈曲部を形成した形態のものが知られている(特許文献1,2参照)。このような形態の成形体は、幼児用或いは介護用の食器として好適に使用される。即ち、料理などを入れた場合、屈曲部側に料理をスプーンで寄せやすく、しかも料理を掬いやすいので、料理を残さずに食べ易くなるという利点がある。
【0004】
しかしながら、上記のような成形体は、上端に内方に向かって屈曲している返しが存在しているため、積み重ねて保管することができないという問題があった。また、上端の開口径を底壁の径よりも大きくしてスタック性(積み重ね性)を付与することもできるが、この場合においても、返しの存在により、積載物が傾いて不安定となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3168528号
【文献】特開2002-240858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなり、全体としてカップ形状を有していると共に、積み重ねやすい形態に周状側壁が形成されている積み重ね性に優れたスタック性成形体を提供することにある。
本発明の他の目的は、周状側壁が、収容された料理を掬いやすい形態を有しているスタック性成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなり、全体としてカップ形状を有しているスタック性成形体において、前記周状側壁の上部には、該スタック性成形体の底部を含む下方部分が通過し得る大きさの上部水平開口を有しており、前記周状側壁の中間部には、前記スタック性成形体の底部を含む下方部分の通過が阻止されるような水平形状を有している中間水平開口が形成されており、側断面でみたとき、前記周状側壁の周方向の一部は、前記底壁から外方に傾斜して立ち上がっている外テーパー領域を有し、側断面でみたとき、前記周状側壁は、上方にいくに従い内方に縮経した形状の返しを有する返し領域を有しており、該返しの先端が該周状側壁の中間部分に位置すると共に、前記外テーパー領域は、該返し領域に対向する位置に存在しており、前記返し領域において、前記返しの先端からは、上方に向かって立ち上がっている中間立設部が形成されており、該中間立設部の上端は、前記外テーパー領域の上端と同一高さを有しており、該中間立設部の上端と外テーパー領域の上端を含むようにして全周にわたって外方に広がったスタック用水平段差が形成されており、該水平段差の外周縁の全周から上方に立ち上がった周状ガイド壁が形成されていることを特徴とするスタック性成形体が提供される。
本発明によればまた、底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなり、全体としてカップ形状を有しているスタック性成形体において、前記周状側壁の上部には、該スタック性成形体の底部を含む下方部分が通過し得る大きさの上部水平開口を有しており、前記周状側壁の中間部には、前記スタック性成形体の底部を含む下方部分の通過が阻止されるような水平形状を有している中間水平開口が形成されており、前記中間水平開口の周囲には、全周にわたって又は部分的に、スタック用段差が形成されており、側断面でみたとき、前記周状側壁の周方向の一部は、前記底壁から外方に傾斜して立ち上がっている外テーパー領域を有し、側断面でみたとき、前記周状側壁は、上方にいくに従い内方に縮経した形状の返しを有する返し領域を有しており、該返しの先端が該周状側壁の中間部分に位置すると共に、前記外テーパー領域は、該返し領域に対向する位置に存在しており、前記スタック用段差は、前記外テーパー領域に形成されており、該外テーパー領域は、前記底壁周縁に連なっている第1の外テーパー壁と該段差の外側端部から上方に延びている第2の外テーパー壁とを有しており、前記側断面でみて、前記第1の外テーパー壁の底壁に対する立ち上がり角θ は、前記返し領域の付け根部分での周状側壁の立ち上がり角α よりも大きく設定されていることを特徴とするスタック性成形体が提供される。
本発明の上記スタック性成形体は、次の態様を好適に採用することができる。
(1)前記返しは、内方側に屈曲していること。
(2)前記返し領域における前記返しの先端からは、外方に向かって立ち上がっている延長立設部が形成されており、前記延長立設部は、前記外テーパー領域に周状に連なって前記上部水平開口を形成しており、 前記上部水平開口の前記側断面で長さDは、前記底壁の前記側断面での長さdよりも大きく設定されていること。
(3)前記中間立設部の上端と外テーパー領域の上端とによって前記中間水平開口が形成されていること。
(4)前記周状側壁の上端には、水平方向外方に広がったフランジが全周にわたって形成されていること。
(5)容器、特に食器として使用されること。
(6)積み重ねて保管或いは搬送されること。前記中間立設部の上端と外テーパー領域の上端とによって前記中間水平開口が形成されていること。
【0008】
本発明によれば更に、底壁と底壁周縁から立ち上がっている周状側壁とからなり、全体としてカップ形状を有しているスタック性成形体において、前記周状側壁の上部には、該スタック性成形体の底部を含む下方部分が通過し得る大きさの上部水平開口を有しており、前記周状側壁の中間部には、前記スタック性成形体の底部を含む下方部分の通過が阻止されるような水平形状を有している中間水平開口が形成されており、側断面でみたとき、前記周状側壁の周方向の一部は、前記底壁から外方に傾斜して立ち上がっている外テーパー領域を有しており、側断面でみて、前記外テーパー領域と反対側の領域に、前記周状側壁が内方に傾斜して立ち上がっている内方傾斜領域が形成されていると共に、該内方傾斜領域を形成している周状側壁の立ち上がり角α は、前記外テーパー領域を形成している周状側壁の立ち上がり角θ よりも小さく設定されており、前記内方傾斜領域の上端は、前記外テーパー領域の上端よりも低い中間位置に連なって前記中間水平開口が形成されており、該内方傾斜領域の上端から水平方向外方にスタック用段差が延びており、該スタック用段差の外周縁から上部立設壁が形成されており、該立設壁は、前記外テーパー領域の前記中間位置よりも上方の部分を形成している周状側壁に連なっていることを特徴とするスタック性成形体が提供される。
本発明の上記スタック性成形体は、次の態様を好適に採用することができる。
(1)前記周状側壁の上端には、水平方向外方に広がったフランジが全周にわたって形成されていること。
(2)容器、特に食器として使用されること。
(3)積み重ねて保管或いは搬送されること。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスタック性成形体は、全体としてカップ形状を有しており、周状側壁の上端面が水平方向に連なって上端水平開口が形成されているが、この上端水平開口が、このスタック性成形体の底部を含む下方部分が通過し得る大きさを有しており、さらに、この周状側壁の中間部には、該スタック性成形体の底部を含む下方部分の通過を阻止するような大きさの水平形状を有する中間水平開口を有しているという基本構造を有している。即ち、このような基本構造により、このスタック性成形体を積み重ねることができ、保管や搬送を効率よく行うことができる。
特に、中間水平開口の周囲に、全周にわたって或いは部分的に段差を形成させておくことにより、積み重ね形状を安定に保持することができる。
【0010】
さらに、上記のような基本構造は、底壁から立ち上がっている周状側壁の形状を調整することにより、上記のようなスタック性を確保しながら、この成形体を食器として使用したとき、収容された料理を食べやすいような形態とすることができる。
即ち、周状側壁の一部に、外方に傾斜して立ち上がっている外テーパー領域を形成することにより、この立ち上がり角を調整することにより中間水平開口や上端水平開口の大きさを、スタック性に適した大きさに容易に設定することができ、また、この外テーパー領域の反対側の周状側壁に、上方にいくに従い内方に縮経した形状の返しが中間部分に形成されているため、スタック性を損なうことなく、この成形体(食器)に収容された料理をスプーンで掬いやすくなる。即ち、この成形体(食器)内に置かれた料理が少なくなった場合にも、スプーンなどにより少なくなった料理を返し領域側に寄せ、容易に掬い上げて食することができる。
【0011】
例えば、従来公知の成形体(食器)では、料理を寄せて掬い上げやすいものの、上記のような返しが周状側壁の上端部分に位置しているため、スタック性を示さず、積み重ねることができない。勿論、返しの先端を含む側壁上端の開口長さを底壁の長さよりも大きくすることによってスタック性を付与することはできるが、積み重ねたとき、上側の食器が下側の食器内に斜めに入り込んでしまう。このため、多数を積み重ねようとすると、水平に保持されていないため、不安定となり、容易に倒れてしまうこととなり、多数の食器を積み重ねることができない。本発明の成形体では、返しの先端が周状側壁の中間部分に位置しているため、成形体同士を積み重ねたとき、これらの成形体がほぼ水平に保持されるため、多数の成形体を倒れることなく、安定に積み重ねることができる。
【0012】
このように、本発明の成形体は、スタック性に優れ、多数を積み重ねることができる。即ち、多数を積み重ねて保管することができるため、各種の物質を収容するための容器として量産して倉庫などに保管しておくことができ、さらには、その搬送も効率よく行うことができる。特に、食器として使用する場合には、多数を積み重ねて戸棚などに保管しておくことができ、極めて保管性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のスタック性成形体の好適な形態を示す斜視図。
図2図1の成形体の側断面図。
図3図1及び図2の成形体を積み重ねた状態を示す側断面図。
図4】本発明のスタック性成形体の他の好適例を積み重ねた状態を示す側断面図。
図5】本発明のスタック性成形体の他の例を示す半断面側面図。
図6】本発明のスタック性成形体のさらに他の例を示す半断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2を参照して、全体として20で示す本発明のスタック性成形体は、矩形状の底壁1と、底壁1の周縁から立ち上がっている周状側壁3とからなっており、全体としてカップ形状を有している。
底壁1の底面(裏面)は、基本的には、フラットな面であってよいが、図の例では、中央部に上げ底1aが形成されており、上げ底1aの上面の周囲には凹部1bが形成されることとなる。この上げ底1aを大面積に形成すると、凹部1bの幅が狭くなり、凹部1bに入り込んだ料理を掬い上げることが困難となるおそれがあるので、上げ底1aは、このような不都合が生じない程度の大きさとすべきである。
【0015】
周状側壁3は、基本的には、同一高さに形成されており、この上端面が水平方向に連なって上部水平開口3aが形成されている(図2参照)。さらに、周状側壁3の上端には、全周にわたって水平方向外方に延びている水平フランジ5が設けられている。この水平フランジ5は、把手として利用されるものであるが、成形体20の利用形態や材質等によっては、ヒートシールによるシール箔の融着固定などに利用することもできる。また、水平フランジ5の一部が大面積に形成され、持ちやすくなるような形態とすることもできる。
また、上記の上部水平開口3aは、このスタック成形体20の底壁1よりも大きく、これにより、この上部水平開口3aを通して他のスタック成形体20を積み重ねることができるのであるが、このようなスタック性が損なわれない限り、周状側壁部3は、部分的に高い箇所と低い箇所があっても構わない。
【0016】
図1から理解されるように、このスタック性成形体20は、底壁1が矩形状であるため、周状側壁3の上部に形成されている上部水平開口3a(水平フランジ5の内周により形成される開口)も矩形状となっている。即ち、水平フランジ5は、大まかに言って、5a,5b,5c,5dの4つの辺で形成されており、5aと5c及び5bと5dとが対向している。
【0017】
特に図2を参照して、この成形体20では、周状側壁3の一部に返し領域7が形成されており、返し領域7に対向する部分には、外テーパー領域9が形成されており、返し領域7と外テーパー領域9とは、当然、周方向に連なっている。
【0018】
返し領域7では、底壁1から立ち上がり角αで周状側壁3が立ち上がっているが(この立ち上がり部は7aで示されている)、この領域7の上部には、上方に行くに従い内方に縮経した返し7bが形成されている。一方、外テーパー領域9側では、底壁1から外方に傾斜して周状側壁3が立ち上がっている。この外テーパー領域9での立ち上がり部は、第1の外テーパー壁9aとなっており、この立ち上がり角θは、返し領域7での周状側壁3の立ち上がり角αよりも大きく、この角度調整により、周状側壁3の中間部に、底壁1が通らないような大きさの中間水平開口(図2において10で示す)を形成することができる。また、返し領域7の上部には、内方に縮経した返し7bが形成されているため、例えば底壁1上に料理が置かれたとき、外テーパー領域9側から返し領域7側に料理を寄せ、寄せられた料理を側壁3の内面(立ち上がり部7aの内面)に沿ってスプーンで容易に掬い上げて食することができる。上方に存在する返し7bの存在により、掬い上げられた料理が速やかにスプーン内に収まるからである。
【0019】
なお、図1に示されている例では、返し領域7は、矩形状に連なっている周状側壁3の一辺の部分に形成されており、他の3辺はテーパー領域9となっている。
また、図2では、返し7bが屈曲した形状を有しているが、この返し7bは、上方に行くにしたがって縮経している限り、ストレートな傾斜壁であってもよいし、場合によっては、立ち上がり部7aが返し7bとなっていてもよい。ただし、図2に示されているように、立ち上がり部7aの上部に屈曲した形状の返し7bが形成されていることが、料理の掬いやすさという点で最も好適である。
【0020】
また、返し領域7では、上記の返し7bの先端から上方に延びている延長立設部7cが設けられている。この延長立設部7cは、若干外方に広がるように立ち上がり角αで上方に延びており、その上端に水平フランジ5が存在している。本発明では、このような延長立設部7cを設けることにより、より優れたスタック性を確保することが可能となる。
【0021】
即ち、このような延長立設部7cが設けられている形態の成形体20では、必然的に、外テーパー領域9側での周状側壁3の上端が、延長立設部7cの上端と同じ高さとなるように形成されると同時に、積み重ね可能とするために、上端水平開口3aの長さD(フランジ5a,5c間距離に相当)は、底壁1の長さdよりも大きくなるように設計されており、上側に位置する成形体20の底壁1は、上端水平開口3aを通して下側の成形体20内に挿入される。
【0022】
例えば、延長立設部7cが設けられていないと、この成形体20を積み重ねようとすると、返し7bが邪魔となり、フランジ5よりも下側に成形体20の底壁1を位置させることができないため、成形体20を安定に積み重ねることができない。底壁1を斜めにして積み重ねれば、その一部を返し7bの下側に位置させることはできるが、この場合には、重ねられた成形体20が水平に保持されていないため、不安定となり、それ以上の積み重ねが困難である。
一方、上記のように延長立設部7cが設けられていると、この延長立設部7c及び延長立設部7cに連なる外テーパー領域9での周状側壁3がガイドとなるため、返し7bが存在していたとしても、成形体20を水平に保持して重ねることができる。即ち、2個、あるいは3個以上の成形体20を安定に積み重ねることができるわけである。
【0023】
このような延長立設部7cが設けられている成形体20では、積み重ねられた成形体20を安定に保持するために、中間にスタック用段差11を設け、この外テーパー領域9での側壁3を、底壁1に連なる第1の外テーパー壁9aと、スタック用段差11の外側端部から延びている第2の外テーパー壁9bとから形成することが好適である。このような形態では、第1の外テーパー壁9aが立ち上がり角θで底壁1から立ち上がっており、第2の外テーパー壁9bは、立ち上がり角θでスタック用段差11から外方に向かって上方に延びている。また、図1から理解されるように、このようなスタック用段差11は、返し領域7以外の領域の周状側壁3に形成されている。
【0024】
例えば、図3には、上記の成形体20を積み重ねた形態が示されているが、積み重ねられた成形体20のスタック用段差11は、その下面が、下側の成形体20の水平フランジ5の上面に当接し、これにより、水平状態に安定に保持されるわけである。スタック用段差の形状については、図3に見られるように、水平形状が最も安定的にスタックが可能であるが、形状はこれに限られるわけではなく、成形体20を水平に保持することが可能であれば、R形状、テーパー形状、波形状など任意の形状をとることができる。
【0025】
また、図2を参照して、上記のような形態において、返し領域7(立ち上がり部7a)での側壁3の立ち上がり角α、延長立設部7cでの側壁3の立ち上がり角α、外テーパー領域9での側壁3の傾斜角(第1の外テーパー壁9aの立ち上がり角θや第2の外テーパー壁9bの立ち上がり角θ)、さらにはスタック用段差11の幅や形状などは、スタック性や成形性、その他の機能などを考慮して適宜の範囲に設定されるべきである。
【0026】
例えば、返し領域7での側壁3の立ち上がり角αは、厳密ではないが、下記条件(1):
α>60度 (1)
を満足していることが好適である。この立ち上がり角αが60度より小さい場合、この成形体20の成形方法がかなり制限されたり、成形体20内に収容された料理のスプーンによる掬いあげが困難となるおそれがある。さらに、スタック性を確保するためには、この立ち上がり角αと、第1の外テーパー壁9aの立ち上がり角θとが、下記条件(2):
α≦θ (2)
を満足していることが好適である。この条件(2)を満足していないと、スタック性を満足させるために(即ち、上部水平開口3aの長さDを底壁1の長さdよりも大きくする)、延長立設部7cの立ち上げ角αや第2の外テーパー壁9bの立ち上がり角θを大きくし、必要以上に上部が開いた形状とすることが必要となり、この成形体20が不安定な形状となってしまう。
【0027】
さらに、返し領域7に形成されている返し7bの屈曲や傾斜の程度、延長立設部7cの立ち上がり角αやその長さ(高さ)、及び外テーパー領域9に形成されている第2の外テーパー壁9bの立ち上がり角θやその長さ(高さ)は、中間水平開口10が底壁1を通過しないような大きさを保ちながら、上部水平開口3aの長さDが底壁1の長さdよりも大きくなるように、上記の立ち上がり角αやθに応じて適宜の範囲に設定される。
【0028】
上述した本発明において、この成形体20のスタック性やスタックの形態などは、外テーパー領域9での周状側壁3の傾斜角、特に第1の外テーパー壁9aの立ち上がり角θに大きく依存する。
【0029】
例えば、図3には、図1及び図2に示されている成形体20を積み重ねた形態が示されており、下側の成形体20が20A、積み重ねられ、上側に位置する成形体20が20Bで示されている。この成形体20は、第1の外テーパー壁9aの立ち上がり角θ及び第2の外テーパー壁9bの立ち上がり角θは比較的小さく、返し領域7での側壁3の立ち上がり角αとの差が小さい。図3では、下側の成形体20Aに対して互い違いに上側の成形体20Bが重ねられているが、このような形態の成形体20では、下側の成形体20Aに対して同方向に上側の成形体20Bを重ねることもできる。
【0030】
また、図4に示されている成形体20は、第1の外テーパー壁9aの立ち上がり角θ及び第2の外テーパー壁9bの立ち上がり角θがかなり大きく、返し領域7での周状側壁3の立ち上がり角αとの差が大きい。即ち、図4では、積み重ねた成形体20を下から順に、20A,20B,20Cで示されているが、このように立ち上がり角θ、θが大きく設定されている場合には、成形体20を同方向に積み重ねることはできても、互い違いに積み重ねることはできず、積み重ね方に方向性が生じてしまう。成形体20の側断面の形態が対称形から大きく外れてしまうからである。
しかし、このような形成体の成形体20は、効率よく積み重ねることができる。即ち、図1及び図2に示されている形態の成形体20では、その側断面形状が対称形に近い形状であるため、互い違い及び同方向の何れにも積み重ねることができる。しかるに、この場合には、図3に示されているように、下側の成形体20Aの底壁1と上側の成形体20Bの底壁1との間隔CLが、成形体20の高さの50%程度であり、上側の成形体20Bを下側の成形体20Aの内部に深く侵入させるには適した形状ではない。
【0031】
一方、図4に示されている形態の成形体20では、その側断面形状が対称形から大きく外れた形状であるため、互い違いの方向には積み重ねることができない。しかし、この場合には、下側の成形体20Aの底壁1と上側の成形体20Bの底壁1との間隔CLが、成形体20の高さの34%程度である。即ち、図4に示されている成形体20は、上側の成形体20Bを下側の成形体20Aの内部に深く侵入させるに適した形状であり、多数の成形体20を積み重ねるに適した形状といえる。
【0032】
上述した本発明において、成形体20は、底壁1が矩形状となっており、所謂箱型形状となっているが、このような形状に限定されるものではなく、例えば、底壁1が円形或いは楕円形の形態とすることもできる。
【0033】
さらに、返し領域7(返し7bが形成されている領域)の周方向幅は、例えば、成形体20内に収容された料理が掬い上げやすいという返し7bの利点が有効に発揮される程度の大きさとすればよい。さらに、返し領域7以外の領域が外テーパー領域9となっていることが好ましい。
【0034】
上述した本発明のスタック性成形体20は、スタック性が損なわれない限り種々の設計変形が可能である。このような設計変更の例を図5及び図6に示した。
【0035】
例えば図5のスタック性成形体20では、上端の水平フランジ5の外周縁の全周にわたって、若干降下し、さらに外方に若干広がった形状の緩衝壁31が形成されている。この緩衝壁31は、この成形体20内に熱い料理などが収容されたときでも温度上昇を制限し、この成形体20を手で持てるようにするためのものである。
【0036】
さらに、図5の成形体20では、外テーパー領域9の中間部にスタック用段差は形成されておらず、上端部にスタック用段差11が形成されている。即ち、第2の外テーパー壁9bは形成されておらず、一定の立ち上がり角θで外方に延びている外テーパー壁9aのみにより外テーパー領域9が形成されている。
【0037】
また、返し領域7においては、返し7bの上端から上方に立ち上がった中間立設部7dが形成されており、その上端に外方に広がったスタック用段差11が形成されている。即ち、中間立設部7dの上端と外テーパー領域9(外テーパー壁9a)の上端とが同一高さに形成されており、これらの上端が連なって中間水平開口10が形成され、その周囲に水平なスタック用段差11を有する形態となっている。
【0038】
このような図5の形態では、スタック用段差11の外周縁の全周から上方に立ち上がった周状ガイド壁33が形成されており、周状ガイド壁33の上端が上部水平開口3aを形成しており、この上部水平開口3aの周囲に前述した緩衝壁31を備えた水平フランジ5が形成される。即ち、かかる形態の成形体20においては、スタック用段差11上に積み重ねられた他の成形体20の底部1が載置され、背の低い周状ガイド壁33により、積み重ねられた他の成形体20の安定化が図られる。
【0039】
かかる図5の成形体20は、返し7bにより料理の掬いやすさが確保されていると同時に、その上部に形成されている中間立設部7dにより、この成形体20上に収容される料理等の収容容量を多くすることができる。
従って、返し領域7での立ち上がり部7aおよび中間立設部7dは、何れもほぼ垂直方向に延びていてよい。また、図5では、返し7bがストレートに傾斜しているが、勿論、この返し7bは、図2のように屈曲した形状を有していてよい。
【0040】
また、図6の成形体20は、料理等の収容容量の増大を目的として、図5に示された形態をよりシンプルにしたものである。
【0041】
図6の成形体20は、図5の成形体20における外テーパー領域9に対向して形成されている返し領域7の代わりに、周状側壁3が内方に傾斜して立ち上がっている内方傾斜領域15を形成したものである。即ち、この内方傾斜領域15では、周状側壁3は、ほぼ90度に近い立ち上がり角αで内方に傾斜した傾斜壁15aを有しており、この立ち上がり角αは、外テーパー領域9の第1のテーパー壁9aでの立ち上がり角θよりも小さい。
【0042】
上記の内方傾斜領域15において、傾斜壁15aの上端は、外テーパー壁9aの上端に近い上方部分(即ち上端ではない)に連なって中間水平開口10を形成しており、この内方傾斜領域15の傾斜壁15aの上端に、水平方向外方に広がったスタック用段差11が形成されており、このスタック用段差11の水平方向幅は、外テーパー領域9側にいくに連れて狭くなっており、図6から理解されるように、外テーパー領域9側では、その幅は完全にゼロとなっている。
【0043】
また、上記のスタック用段差11の外側端部からは、ほぼ垂直方向に延びている立設壁17が設けられている。この立設壁17は、外テーパー領域9側にいくにしたがい徐々に傾斜していき、外テーパー領域9側で外テーパー壁9aと一体となる。
【0044】
図6から理解されるように、立設壁17の上端及び外テーパー領域9(外テーパー壁9a)の上端が連なって上部水平開口3aが形成され、この上部水平開口3aの周囲に、図5の成形体20と同様、緩衝壁31を備えた水平フランジ5が形成されている。即ち、この成形体20でも、スタック用段差11上に他の成形体20が積み重ねられ、積み重ねられた他の成形体20は、立設壁17により、ガタつかないように安定化される。
【0045】
このように、スタック性が確保されている成形体20では、返し7bが存在しないため、料理の掬いやすさという点ではやや劣るものの、傾斜壁15aによりある程度の掬いやすさが確保されており、極めてシンプルな形態で料理等の収容容量が増大している。
【0046】
上述した本発明のスタック性成形体20は、各種プラスチックや金属材料を用いて形成することができる。
【0047】
例えば、プラスチックとしては、成形可能である限り、種々の熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を用いることができ、用いたプラスチックの種類に応じて公知の成形法を採用することができる。
特に本発明では、包装材料分野で広く使用されている熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂を用いることが好ましく、コストの点でオレフィン系樹脂が最適である。
【0048】
また、熱可塑性樹脂を用いての成形手段としては、射出成形が一般的であるが、本発明の形態の成形体20では、プラグアシスト成形により安価に製造することができ、これは本発明の大きな利点である。
このプラグアシスト成形では、シート状に成形されたプリフォームを使用し、所定の成形型上に置かれたプリフォームを、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点未満の温度で、真空吸引すると同時にプラグで成形型内に押し付けることにより賦形される。成形後では、成形体20がガラス転移点以上に保持されているまま、返し領域7がテーパー領域9を形成する型面側に面するように成形体20を回転させ、この状態で成形体20を成形型から取り出すことができる。
このように、本発明の成形体20は、プラグアシスト成形により成形でき、安価なコストで製造できる。
【0049】
また、金属素材、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、スチール等の金属板を使用し、この金属板(ブランク)の周縁を、液体が充填された液圧室上にダイス等により保持し、パンチで該ブランクを液圧室に押し込むことにより、金属製の成形体24を製造することができる(対向液圧成形)。
また、公知の方法で得られた上記金属製の有底筒状缶体(ブランク缶)を使用し、この缶体を外型内に保持し、次いでゴム製の内型をブランク缶内に保持し、ゴム製の内型内に水圧を加え、水圧により外型に合わせて膨張変形せしめることにより、金属製の成形体24を製造することができる(パスカル缶成形)。この場合、成形後は、内型内に加えられた水圧を低下させて内型を収縮させたのちに該内型を引き抜けばよい。
さらに、上記と同様、公知の方法により製造された有底筒状缶体(ブランク缶)を使用し、このブランク缶について、口絞り加工及び口広げ加工を行うことにより、目的とする金属製の成形体20を製造することもできる。
【0050】
本発明の成形体20は、該成形体20内に置かれた料理等の物質の掬い上げ性に優れていると同時に、スタック性にも優れ、多数を積み重ねることができ、保管性に優れている。従って、この成形体20は、これに限定されるものではないが、各種食料品が収容された容器として好適に使用される。即ち、倉庫等に積み重ねて保管されていた成形体20を倉庫から出し、この成形体20に食料品を収容し、ヒートシールによりシール箔を水平フランジ5に固定して、販売することができる。このような食糧品が収容された容器は、掬い上げ性に優れているため、シール箔を引き剥がし、スプーンによりそのまま食することができる。従って、ヨーグルト、プリン、あるいはバターなどの食品用の容器として好適に使用される。
また、掬い上げ性に優れているため、幼児用の食器、あるいは老人などのための介護用の食器としても好適に使用される。
【符号の説明】
【0051】
1:底壁
1a:上げ底
1b:凹部
3:周状側壁
3a:上部水平開口
5(5a,5b,5c,5d):水平フランジ
7:返し領域
7a:立ち上がり部
7b:返し
7c:延長立設部
7d:中間立設部
9:外テーパー領域
9a:第1の外テーパー壁
9b:第2の外テーパー壁
10:中間水平開口
11:スタック用段差
20:スタック性成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6