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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241119BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241119BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241119BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241119BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241119BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 S
H01L25/04 C
H05K7/20 C
H05K1/02 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021021483
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022123984
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋也
(72)【発明者】
【氏名】西川 敦准
(72)【発明者】
【氏名】小坂 弥
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165545(JP,A)
【文献】特開2016-096263(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/12
H01L 25/07
H05K 7/20
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の一方の面に回路パターンを設け、他方の面を回路パターンが設けられていないベース面としたベース回路金属板を生成する回路形成工程と、
前記ベース回路金属板の前記回路パターンの抜き部に第1の樹脂を充填し、かつ前記回路パターン上を前記第1の樹脂で覆うことで樹脂被覆金属回路を生成する樹脂被覆工程と、
前記樹脂被覆金属回路の前記回路パターンを覆う前記第1の樹脂と前記ベース面とを取り除いて、前記回路パターンの抜き部に前記第1の樹脂が充填された状態の金属回路を生成する金属回路生成工程と、
前記金属回路と放熱部材とを放熱シートを介してプレス接合することで放熱ベース基板を生成する放熱部材接合工程と、
前記金属回路に半導体素子及び回路要素を取り付ける実装工程と、
前記半導体素子及び前記回路要素を第2の樹脂で封止する封止工程と、
を有する、回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属回路生成工程は、前記一方の面を覆う前記第1の樹脂および前記ベース面を研削により取り除く、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属回路生成工程において、研削された前記一方の面の平面度は0.01mm以上0.15mm以下である、請求項2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1の樹脂及び第2の樹脂の線膨張係数が10ppm/K以上20ppm/K以下である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂及び第2の樹脂は異なる材料からなる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1の樹脂及び第2の樹脂は同一の材料からなる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記金属回路生成工程で生成される前記金属回路の厚みが0.5mm以上2mm以下である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記放熱シートの熱伝導率が5W/mK以上25W/mK以下である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記放熱部材は放熱フィンまたは放熱ピンを備える、請求項1から8までのいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に係り、例えば半導体素子等が実装される回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子を伝熱用の金属回路基板に設けたパワーモジュールの市場が拡大している。そのようなパワーモジュールでは、高い放熱性を実現するために各種の技術が提案されている。例えば、高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含み、一体成形されたフィン付きヒートシンクおよび基材と、基材上に形成され、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層と、絶縁層上に形成された金属層とを有し、前記フィン付きヒートシンクおよび基材中の高熱伝導性フィラーの含有率が15~65vol%であり、絶縁層中の熱伝導性フィラーの含有率が15~65vol%であるフィン付きヒートシンク一体回路基板用積層板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-28421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワー半導体素子を伝熱用の金属回路基板に設けたパワーモジュールの一般的な製造方法では、回路となる銅板を絶縁層とベースとなる銅板に接合した後に、銅板を機械加工(一般にはドリル加工)及びエッチング加工している。絶縁基板の回路は、近年の大電流化に対応するため、厚銅化の要求が高まっている。銅板を機械加工する際にはドリル形状の影響により、板厚が厚くなるほど絶縁幅が大きくなって回路自体が大型化してしまうという課題があり、新たな技術が求められていた。
【0005】
本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであって、半導体素子が実装される回路基板において、回路基板の大型化を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
金属板の一方の面に回路パターンを設け、他方の面を回路パターンが設けられていないベース面としたベース回路金属板を生成する回路形成工程と、
前記ベース回路金属板の前記回路パターンの抜き部に第1の樹脂を充填し、かつ前記回路パターン上を前記第1の樹脂で覆うことで樹脂被覆金属回路を生成する樹脂被覆工程と、
前記樹脂被覆金属回路の前記回路パターンを覆う前記第1の樹脂と前記ベース面とを取り除いて、前記回路パターンの抜き部に前記第1の樹脂が充填された状態の金属回路を生成する金属回路生成工程と、
前記金属回路と放熱部材とを放熱シートを介してプレス接合することで放熱ベース基板を生成する放熱部材接合工程と、
前記金属回路に半導体素子及び回路要素を取り付ける実装工程と、
前記半導体素子及び前記回路要素を第2の樹脂で封止する封止工程と、
を有する、回路基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体素子が実装される回路基板において、回路基板の大型化を抑制する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る、パワーモジュールを模式的に示した断面図である。
図2】実施形態に係る、パワーモジュールの製造工程を示したチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比等は、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0010】
<パワーモジュール100の概要>
本実施形態に係るパワーモジュール100について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るパワーモジュール100を模式的に示した断面図である。説明を簡単にするため、パワーモジュール100の各構成要素の位置関係(上下関係等)が各図に示す関係であるものとして説明を行う場合がある。ただし、この説明における位置関係は、パワーモジュール100の使用時や製造時の位置関係とは無関係である。
【0011】
パワーモジュール100は、パワー半導体チップ1と、パワー半導体チップ1を支持固定し外部配線と電気的に接続するリード線7と、パワー半導体チップ1の一方の面側(図示では下面側)に設けられたCu回路3と、パワー半導体チップ1やリード線7を封止する樹脂封止部8とを有する。さらに、パワーモジュール100は、Cu回路3の下側の面に設けられたCuヒートシンク5と、Cu回路3とCuヒートシンク5の間に接合層として設けられた放熱シート4を有する。以下、具体的に説明する。
【0012】
<パワー半導体チップ1>
パワー半導体チップ1は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT;Insulated Gate Bipolar Transistor)およびダイオード等である。パワー半導体チップ1の上面には図示しない電極パターンが形成され、パワー半導体チップ1の下面には図示しない導電パターンが形成されている。パワー半導体チップ1の下面は、接合層であるシンタリング層2を介してCu回路3に接合されている。パワー半導体チップ1の上面の電極パターンは、リード線7に対して電気的に接続されている。
【0013】
<リード線7>
リード線7は、パワー半導体チップ1を支持固定し、また外部配線との電気的接続をするものであって、銅や鉄等の金属素材の薄板をプレス加工やエッチング加工等によって作られた部品である。
【0014】
<Cu回路3>
Cu回路3は、導電性を有する金属材料(ここでは銅)で構成された金属回路基板である。Cu回路3の一方の面(図示で上側の面)に形成された回路パターンに、シンタリング層2を介して、パワー半導体チップ1が設けられている。Cu回路3の他方の面(図示では下側の面)には、放熱シート4を挟んでCuヒートシンク5が設けられている。
【0015】
具体的には、Cu回路3は、厚銅(圧延銅)をパターンニングした回路基板である。Cu回路3を構成する金属材料には、例えば、厚銅(圧延銅)を好適に用いることができる。これにより、Cu回路3は、比較的抵抗値が小さくなる。なお、Cu回路3は、その少なくとも一部がソルダーレジスト層で覆われていてもよい。
【0016】
Cu回路3は、回路パターンを構成する抜き部33を有する。この抜き部33には、第1の樹脂6が充填されている。第1の樹脂6が充填されている部分を樹脂充填部62という。第1の樹脂6については後述する。また、Cu回路3の製造方法については図2を参照して後述するが、Cu回路3は表面を研削もしくは研磨する工程を経て得られる。
【0017】
Cu回路3の厚みは0.5mm以上2mm以下である。下限は、好ましくは0.6mm以上であり、より好ましくは0.7mm以上である。上限は、好ましくは1.7mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下である。Cu回路3の厚みの下限を上記範囲とすることで、高電流を要する用途であっても、Cu回路3の発熱を抑えることができる。また、上限を上記範囲とすることで回路加工性を向上させることができ、また、製品全体としての薄型化を図ることができる。
【0018】
Cu回路3の上面(パワー半導体チップ1側の面)および下面(放熱シート4側の面)の平面度は0.01mm以上0.15mm以下である。下限には特に制限はなく現実的な範囲であればよい。上限は、好ましくは0.13mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下である。平面度は、JIS0621-1984に規定されるものであり、測定方法としては、接触式(ダイヤルゲージ等)と非接触式(三次元測定機等)の2種類があり、いずれを用いてもよい。また、Cu回路3の上面と下面の平面度は、上記の範囲であれば異なってもよい。
平面度をこのような範囲とすることで、上面でのシンタリング層2を介したパワー半導体チップ1やリード線7の接合を好適に行える。また、下面での放熱シート4との接合を良好に行える。
【0019】
<第1の樹脂6(樹脂充填部62)の成分>
第1の樹脂6を構成する封止樹脂組成物は熱硬化性樹脂(A)および無機充填材(B)を含む熱硬化性組成物(C)の硬化体である。熱硬化性組成物(C)には、硬化促進剤(D)が含まれる。
【0020】
[硬化促進剤(D)]
本実施形態の硬化促進剤(D)は、活性が強いものである。これにより、低温硬化を実現する一方で、特段の工夫をせずにそのまま用いると保存中に反応が進行する等し、保存性が低下する。
硬化促進剤(D)としては、たとえば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、または、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、イミダゾール等のアミジン系化合物;ベンジルジメチルアミン等の3級アミン、アミジニウム塩、またはアンモニウム塩等の窒素原子含有化合物等が挙げられる。
なかでも、硬化促進剤(D)が、イミダゾール系硬化促進剤またはリン系硬化促進剤であることが好ましい。イミダゾール系硬化促進剤として、例えば、アミジン系化合物のイミダゾール化合物を含むことがより好ましい。イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、イダゾール-2-カルボアルデヒド、5-アザベンゾイミダゾール、4-アザベンゾイミダゾール等が挙げられるがこれらに限定されない。中でも、2-メチルイミダゾールが好ましく用いられる。
【0021】
封止樹脂組成物中における硬化促進剤(D)の含有量は、とくに限定されないが、たとえば封止樹脂組成物全体に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。
硬化促進剤(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止樹脂組成物を適切に硬化しやすくなる。一方、硬化促進剤(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、溶融状態を長くし、より低粘度状態を長くできる結果、低温封止を実現しやすくなる。
【0022】
[熱硬化性樹脂(A)]
熱硬化性樹脂(A)としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、およびポリウレタン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方を含むことが好ましく、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
エポキシ樹脂としては、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アルコキシナフタレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アルミニウム電解コンデンサの信頼性、および成形性のバランスを向上させる観点からは、アラルキル型エポキシ樹脂およびナフチルエーテル型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一方を用いることがより好ましい。
【0024】
熱硬化性樹脂(A)の150℃におけるICI粘度は、無機充填材(B)の含有量により適宜設定されることが好適であるが、たとえば、上限値は、好ましくは60ポアズ以下であり、より好ましくは50ポアズ以下であり、さらに好ましくは40ポアズ以下である。これにより、封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、また、低温封止を実現しやすくする。
一方、熱硬化性樹脂(A)の150℃におけるICI粘度の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01ポアズ以上としてもよい。なお、1ポアズは、0.1Pa・sである。
【0025】
熱硬化性樹脂(A)の含有量は、とくに限定されないが、たとえば封止樹脂組成物全体に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂(A)の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止樹脂組成物の流動性や成型性をより効果的に向上させることができる。また、熱硬化性樹脂(A)の含有量を上記上限値以下とすることにより、アルミニウム電解コンデンサの信頼性をより効果的に向上させることができる。
【0026】
[無機充填材(B)]
無機充填材(B)としては、例えば、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、または木材等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
上記のシリカとしては、結晶性シリカ(破砕状の結晶性シリカ)、溶融シリカ(破砕状のアモルファスシリカ、球状のアモルファスシリカ)、および液状封止シリカ(液状封止用の球状のアモルファス止シリカ)が挙げられる。なかでも、低温、低圧封止を実現しやすくする観点から、溶融球状シリカであることが好ましい。
【0028】
無機充填剤(B)の平均粒径は、特に限定されないが、典型的には1~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~20μmである。平均粒径が適当であることにより、後述の造粒工程において、溶融混合物を含むシェルがより均一にコーティングされる等の効果が得られると考えられる。また、最終的に得られたコアシェル粒子を半導体封止材として使用するときに、金型キャビティ内での半導体素子周辺への充填性を高めることができる。
なお、無機充填材(B)の体積基準粒度分布は、市販のレーザー式粒度分布計(たとえば、株式会社島津製作所製、SALD-7000)で測定することができる。
【0029】
無機充填材(B)の含有量は、特に限定されないが、たとえば封止樹脂組成物全体に対して、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。
無機充填材(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止樹脂組成物により封止されたアルミニウム電解コンデンサの信頼性を効果的に向上させることができる。また、無機充填材(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止樹脂組成物の流動性を良好なものとし、成形性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0030】
本実施形態の封止樹脂組成物は、上記以外に、以下の成分を含んでもよい。
[硬化剤(C)]
封止樹脂組成物は、硬化剤(C)を含むことができる。硬化剤(C)としては、熱硬化性樹脂(A)と反応して硬化させるものであればとくに限定されないが、たとえば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、および、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、ならびに、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミン類;アニリン変性レゾール樹脂、ジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、封止樹脂組成物の低温・低圧封止を実現させる観点からは、ノボラック型フェノール樹脂またはフェノールアラルキル樹脂のうちの少なくとも一方を用いることがより好ましい。
【0031】
封止樹脂組成物中における硬化剤(C)の含有量は、とくに限定されないが、たとえば封止樹脂組成物全体に対して、1質量%以上12質量%以下であることが好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
硬化剤(C)の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止樹脂組成物を適切に硬化しやすくなる。一方、硬化剤(C)の含有量を上記上限値以下とすることにより、適度な流動性を保持し、低温・低圧封止を実現しやすくなる。
【0032】
[カップリング剤(E)]
封止樹脂組成物は、たとえばカップリング剤(E)を含むことができる。カップリング剤(E)としては、たとえばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。
より具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
封止樹脂組成物中におけるカップリング剤(E)の含有量は、とくに限定されないが、たとえば封止樹脂組成物全体に対して、0.05質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。カップリング剤(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止樹脂組成物中における無機充填材(B)分散性を良好なものとすることができる。また、カップリング剤(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止樹脂組成物の流動性を良好なものとし、成形性の向上を図ることができる。
【0034】
さらに、本実施形態の封止樹脂組成物は、上記成分の他に、たとえば、カーボンブラック等の着色剤;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0035】
上述のように、Cu回路3の充填される第1の樹脂6(樹脂充填部62)は、表面を研削もしくは研磨される工程を経る。その際に、第1の樹脂6(樹脂充填部62)に含まれる充填剤のフィラーが脱落しにくい方がこのましい。これは、その後のプレス接合工程で樹脂表面が凸凹だと好ましくないためである。そこで、第1の樹脂6は、フィラーと、熱硬化性樹脂(A)との界面密着強度が高く、フィラーが脱落しにくい材料が好ましい。
【0036】
<第1の樹脂6の線膨張係数>
第1の樹脂6(樹脂充填部62)の線膨張係数は、10ppm/K以上20ppm/K以下である。下限は、好ましくは12ppm/K以上であり、より好ましくは15ppm/K以上である。上限は、好ましくは18ppm/K以下であり、より好ましくは16ppm/K以下である。第1の樹脂6(樹脂充填部62)の線膨張係数をこの様な範囲とすることで、Cu回路3の材料である銅の線膨張係数(概ね17ppm/K)と近くすることができる。すなわち、パワー半導体チップ1による熱が作用した場合でも、樹脂充填部62の第1の樹脂6と抜き部33の銅表面との界面を安定させ、剥離等を抑制することができる。
【0037】
<放熱シート4>
放熱シート4は、Cu回路3とCuヒートシンク5の間に配置される。パワー半導体チップ1の熱はCu回路3に伝達され、さらに、放熱シート4を介して放熱手段であるCuヒートシンク5に伝達され外部に放散される。これにより、パワーモジュール100の絶縁性を保ちつつ、発熱体であるパワー半導体チップ1から生じる熱(特にパワー半導体チップ1の下面側から生じる熱)を、パワーモジュール100の外部へ効果的に放散させることができる。このため、半導体装置の絶縁信頼性を向上させることが可能となる。
【0038】
放熱シート4の平面形状は特に限定されず、Cu回路3やCuヒートシンク5の形状に合わせて適宜選択することが可能であるが、たとえば矩形とすることができる。放熱シート4の膜厚は、例えば50μm以上250μm以下である。これにより、機械的強度や耐熱性の向上を図りつつ、Cu回路3の熱をより効果的にCuヒートシンク5へ伝えることができる。さらに、放熱シート4の放熱性と絶縁性のバランスが優れる。放熱シート4の熱伝導率は、例えば5W/mK以上25W/mK以下である。下限は、好ましくは10W/mK(175℃)以上、より好ましくは15W/mK(175℃)以上のものが用いられる。上限は特に限定はないが、一般的な値として上記の25W/mK以下とすることができる。
【0039】
[放熱シート4の材質]
放熱シート4は、例えば樹脂シートであって、シート用樹脂組成物を用いて形成されている。以下、シート用樹脂組成物について説明する。
本実施形態において、シート用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)、充填剤(B)、および硬化剤(C)等を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂を含む場合、樹脂シートは、熱硬化性樹脂(A)をBステージ化したものである。
【0040】
[熱硬化性樹脂(A)]
熱硬化性樹脂(A)としては、たとえば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノキシ樹脂、およびアクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂(A)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
なかでも、高い絶縁性を有する観点から、熱硬化性樹脂(A)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびフェノキシ樹脂であることが好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール基メタン型ノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
エポキシ樹脂の中でも、耐熱性および絶縁信頼性をより一層向上できる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0043】
フェノール樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、およびレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
フェノール樹脂の中でも、フェノールノボラック樹脂であることが好ましい。
【0044】
熱硬化性樹脂(A)の含有量は、シート用樹脂組成物全量に対し、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、当該含有量は、シート用樹脂組成物全量に対し、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
熱硬化性樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であると、シート用樹脂組成物のハンドリング性が向上し、樹脂シートを形成するのが容易となるとともに、樹脂シートの強度が向上する。
熱硬化性樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であると、樹脂シートの線膨張率や弾性率がより一層向上したり、熱伝導性がより一層向上したりする。
【0045】
[充填剤(B)]
本実施形態における充填剤(B)は、樹脂シートの熱伝導性を向上させるとともに強度を得る観点から用いられる。
【0046】
充填剤(B)としては、熱伝導性フィラーであることが好ましい。より具体的には、充填剤(B)としては、熱伝導性と電気絶縁性とのバランスを図る観点から、たとえば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、および炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、充填剤(B)は、アルミナ、窒化ホウ素であることが好ましい。
【0047】
充填剤(B)の含有量は、シート用樹脂組成物全量に対し、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。一方、熱伝導性の観点から、当該含有量は、シート用樹脂組成物全量に対し、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0048】
[硬化剤(C)]
シート用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)としてエポキシ樹脂、またはフェノール樹脂を用いる場合、さらに硬化剤(C)を含むことが好ましい。
【0049】
硬化剤(C)としては、硬化触媒(C-1)およびフェノール系硬化剤(C-2)から選択される1種以上を用いることができる。
硬化触媒(C-1)としては、たとえば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホス
フィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。硬化触媒(C-1)として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
硬化触媒(C-1)の含有量は、特に限定されないが、シート用樹脂組成物全量に対し、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0050】
また、フェノール系硬化剤(C-2)としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリスフェノールメタン型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、フェノール系硬化剤(C-2)がノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
【0051】
フェノール系硬化剤(C-2)の含有量は、特に限定されないが、シート用樹脂組成物全量に対し、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、当該含有量は、シート用樹脂組成物全量に対し、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0052】
[カップリング剤(D)]
シート用樹脂組成物は、カップリング剤(D)を含んでもよい。カップリング剤(D)は、熱硬化性樹脂(A)と充填剤(B)との界面の濡れ性を向上させることができる。
【0053】
カップリング剤(D)としては、特に限定されないが、たとえば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種または2種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。
カップリング剤(D)の含有量は、特に限定されないが、充填剤(B)100質量%に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。一方、当該含有量は、充填剤(B)100質量%に対して、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0054】
[フェノキシ樹脂(E)]
さらに、シート用樹脂組成物は、フェノキシ樹脂(E)を含んでもよい。フェノキシ樹脂(E)を含むことにより樹脂シート(すなわち放熱シート4)の耐屈曲性を向上できる。
また、フェノキシ樹脂(E)を含むことにより、樹脂シートの弾性率を低下させることが可能となり、樹脂シートの応力緩和力を向上させることができる。
【0055】
また、フェノキシ樹脂(E)を含むと、粘度上昇により、流動性が低減し、ボイド等が発生することを抑制できる。また、樹脂シートを金属部材と密着させて用いる場合等に、金属とシート用樹脂組成物の硬化体との密着性を向上できる。これらの相乗効果により、半導体装置の絶縁信頼性をより一層高めることができる。
【0056】
フェノキシ樹脂(E)としては、たとえば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、およびビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0057】
フェノキシ樹脂(E)の含有量は、たとえば、シート用樹脂組成物全量に対して、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0058】
[その他の成分]
シート用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ほかに酸化防止剤、レベリング剤等を含むことができる。
【0059】
<Cuヒートシンク5>
Cuヒートシンク5は、Cuベースプレートとも呼ばれる放熱部材の一種であって、銅の板状のヒートシンク基部51と、ヒートシンク基部51の下面から一体に複数のフィン状に延出するヒートシンクフィン部52(放熱フィン)を有する。なお、放熱フィンの代わりに複数のピン状に設けられた放熱ピンが設けられてもよい。
放熱部材としてCuヒートシンク5の他に、例えばアルミニウムのヒートシンクが採用されてもよい。また、パワー半導体チップ1の発熱をCu回路3を介して取得して他に逃がす機能を有すれば、一般的な放熱部材に限らず、他の構成の一部(例えばハウジング)等であってもよい。その場合であっても、放熱シート4を用いることができる。
【0060】
<シンタリング層2>
シンタリング層2は、金属粒子が含有されたシンタリングペーストを焼結させた接合層である。シンタリングペーストとしては、銀粒子を含有するAgシンタリングペースト、アルミニウム粒子を含有するALシンタリングペースト、銅粒子を含有するCuシンタリングペーストのいずれかを用いることができる。
【0061】
パワー半導体チップ1とCu回路3との間に上記のようなシンタリングペーストを設けて積層し、焼結工程により、パワー半導体チップ1とCu回路3がシンタリング層2により接合される。また、Cu回路3とリード線7とがシンタリング層2により接合されている。
シンタリング層2では、金属粒子によるシンタリングネットワーク(金属結合バス)が形成されており、高熱伝導性や低い電気抵抗が実現される。なお、シンタリング層2による接合性の向上の観点から、Cu回路3やリード線7に、シンタリングペーストに含有される金属によるメッキの表面処理が施されてもよい。具体的には、本実施形態では、Cu回路3やリード線7の表面にAgメッキやCuメッキが施されてもよい。
【0062】
<樹脂封止部8>
樹脂封止部8に用いる第2の樹脂は、例えばモールド樹脂であって、パワー半導体チップ1やリード線7、それらを積層するCu回路3のような構成要素を内部に一体封止している。樹脂封止部8用いられる封止材として、モールド樹脂の他に、シリコーンゲル等が用いられてもよい。以下では、モールド樹脂で一体封止する構成について説明する。この封止において、リード線7の一部が封止され、封止されない他部は、外部機器に接続される。
【0063】
<第2の樹脂(樹脂封止部8)の成分等>
樹脂封止部8のモールド樹脂(第2の樹脂)は、上述の樹脂充填部62に充填されている第1の樹脂6として例示したものと同様の材料ものを採用することができる。このとき、同一の材料としてもよいし、異なる材料としてもよい。第1の樹脂6では、上述のように研磨等の工程でフィラーの脱落防止が必要とされてそれに対応した材料が好ましい場合がある。
【0064】
第2の樹脂の線膨張係数は、第1の樹脂6と同様に、線膨張係数は、10ppm/K以上20ppm/K以下である。下限は、好ましくは12ppm/K以上であり、より好ましくは15ppm/K以上である。上限は、好ましくは18ppm/K以下であり、より好ましくは16ppm/K以下である。
【0065】
<パワーモジュール100の製造方法>
以上の構成によるパワーモジュール100の製造方法を図2のチャート図を参照して説明する。
【0066】
[回路形成工程(S1)]
回路形成工程(S1)として、銅板の一方の面(図示では上側の面)に抜き部33を設けて回路パターン部32を形成し、他方の面(図示では下側の面)を回路パターンが設けられていない金属板ベース部31としたベース回路Cu板30を生成する。
回路パターン部32は、例えば、金属板ベース部31に対応する所定厚さの銅板にレジストを塗布して回路パターンを形成し、めっきで回路パターン部32を形成させる。その後、レジストを除去することで、ベース回路Cu板30を形成することができる。
回路パターン部32の厚みは、最終的なCu回路3の厚みおよび後工程の金属回路生成工程(S3)における研磨等に必要される削除しろを考慮して設定される。
【0067】
[樹脂被覆工程(S2)]
樹脂被覆工程(S2)として、ベース回路Cu板30の回路パターン部32の抜き部33に第1の樹脂6を充填し樹脂充填部62を形成するとともに回路パターン部32の上を第1の樹脂6で覆う樹脂被覆部61を設けることで樹脂被覆Cu回路30Aを生成する。
【0068】
[金属回路生成工程(S3)]
金属回路生成工程(S3)として、樹脂被覆Cu回路30Aの回路パターン部32を覆う第1の樹脂6(樹脂被覆部61)と金属板ベース部31とを取り除いて、回路パターン部32の抜き部33に第1の樹脂6が充填された状態(すなわち樹脂充填部62を有する)のCu回路3を生成する。樹脂被覆部61および金属板ベース部31を取り除く手法として、研削や研磨を用いることができ、いずれか一方又は両方の手法が用いられてもよい。また、樹脂被覆部61および金属板ベース部31が取り除かれた状態で、Cu回路3の表面の平面度は0.01mm以上0.15mm以下である。また、Cu回路3の厚みが0.5mm以上2mm以下である。
【0069】
[放熱部材接合工程(S4)]
放熱部材接合工程(S4)として、Cu回路3とCuヒートシンク50とを放熱シート4を介してプレス接合することで放熱ベース基板30Bを生成する。
【0070】
[実装工程(S5)]
実装工程(S5)として、放熱ベース基板30BのCu回路3にパワー半導体チップ1やその他の回路要素(例えばリード線7)を取り付ける。具体的には、パワー半導体チップ1とCu回路3との間に上述したシンタリングペーストを設けて積層し、焼結工程により、パワー半導体チップ1とCu回路3とが、さらにCu回路3とリード線7とが、シンタリング層2により接合される。
【0071】
[封止工程(S6)]
封止工程(S6)として、パワー半導体チップ1やリード線7を実装した放熱ベース基板30Bの上面側にシンタリング層2で樹脂封止部8を設ける。すなわち、パワー半導体チップ1やリード線7を第2の樹脂で覆い封止することで、パワーモジュール100が完成する。
【0072】
以上、実施形態によると、以下の効果を奏する。すなわち、パワーモジュール100は、あらかじめCu回路3を作成し、Cuヒートシンク5に貼り付かせる製造方法により製造される。また、Cu回路3の回路パターン部32の抜き部33は第1の樹脂6が充填された樹脂充填部62となっている。回路パターン部32を形成する際に、従来のようにドリルでの機械加工を用いないため、製造時間の短縮を実現でき、また、銅厚みが厚くなった場合にドリル形状の制約で絶縁幅が細くできく回路が大型化してしまうといった懸念もない。また、Cuヒートシンク5にヒートシンクフィン部52(又は放熱ピン)が設けられている場合、従来であれば、エッチング等の製造ラインに流せることができず製造工程が煩雑になる傾向があったが、本実施形態では、エッチング処理が不要であり、そのような懸念はない。また、エッチング液の廃棄処理等の負担も省くことができる。
【0073】
本実施形態の特徴をまとめると次の通りである。
(1)本実施形態のパワーモジュール100の製造方法は、
銅板の一方の面に回路パターン部32を設け、他方の面を回路パターンが設けられていない金属板ベース部31としたベース回路Cu板30を生成する回路形成工程(S1)と、
ベース回路Cu板30の回路パターン部32の抜き部33に第1の樹脂6を充填し、かつ回路パターン部32上を第1の樹脂6で覆うことで樹脂被覆Cu回路30Aを生成する樹脂被覆工程(S2)と、
樹脂被覆Cu回路30Aの回路パターン部32を覆う第1の樹脂6(樹脂被覆部61)と金属板ベース部31とを取り除いて、前記回路パターン(回路パターン部32)の抜き部33に前記第1の樹脂6が充填された状態のCu回路3を生成する金属回路生成工程(S3)と、
Cu回路3とCuヒートシンク5とを放熱シート4を介してプレス接合することで放熱ベース基板30Bを生成する放熱部材接合工程(S4)と、
Cu回路3にパワー半導体チップ1及び回路要素(リード線7等)を取り付ける実装工程(S5)と、
パワー半導体チップ1及び回路要素を樹脂封止部8で封止する封止工程(S6)と、
を有する。
パワーモジュール100は、あらかじめCu回路3を作成し、Cuヒートシンク5に貼り付かせる製造方法により製造されるため、製造工程を簡素化できる。
(2)金属回路生成工程(S3)は、放熱ベース基板30Bの一方の面を覆う樹脂被覆部61および金属板ベース部31を研削により取り除く。これにより、製造工程を短縮でき、また、高精度な平面度を実現できる。
(3)金属回路生成工程(S3)において、研削された一方の面の平面度は0.01mm以上0.15mm以下である。
(4)第1の樹脂6及び第2の樹脂(樹脂封止部8)の線膨張係数が10ppm/K以上20ppm/K以下である。線膨張係数をこのような範囲とすることで、それら樹脂と接する金属(Cu回路3)との界面の熱的安定を実現できる。
(5)第1の樹脂6及び第2の樹脂は異なる材料からなってもよい。
(6)第1の樹脂6及び第2の樹脂は同一の材料からなってもよい。
(7)金属回路生成工程(S3)で生成されるCu回路3の厚みが0.5mm以上2mm以下である。
(8)放熱シート4の熱伝導率が5W/mK以上25W/mK以下である。
(9)Cuヒートシンク5はヒートシンクフィン部52または放熱ピンを備える。エッチング処理が不要であることから、ヒートシンクフィン部52または放熱ピンを有する構成のパワーモジュール100でも、製造プロセスをシンプルにできる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 パワー半導体チップ
2 シンタリング層
3 Cu回路
4 放熱シート
5 Cuヒートシンク
6 第1の樹脂
7 リード線
8 樹脂封止部
30 ベース回路Cu板
30A 樹脂被覆Cu回路
30B 放熱ベース基板
31 金属板ベース部
32 回路パターン部
33 抜き部
51 ヒートシンク基部
52 ヒートシンクフィン部
61 樹脂被覆部
62 樹脂充填部
100 パワーモジュール
図1
図2