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特許7589580細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20241119BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
A61J3/00 300Z
C12M3/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021023424
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125689
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】坂根 寛人
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169187(JP,A)
【文献】特開2019-005388(JP,A)
【文献】特開2004-267384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の軟質樹脂製のシート状部材の周縁部が接合されることで形成される細胞収容部と、
前記細胞収容部に細胞を導入する細胞導入部と、
前記細胞収容部に収容された細胞を導出する細胞導出部と、
前記細胞導出部に配置される硬質樹脂製のポート部材と、を備える細胞保存容器であって、
前記細胞導出部は、前記シート状部材に形成される凹溝と、該凹溝に配置され前記ポート部材が挿入される軟質樹脂製のチューブと、
前記細胞収容部を構成する前記2枚のシート状部材が前記細胞導出部側に延出すると共に、延出した該2枚のシート状部材の周縁部が前記ポート部材を囲むように接合されることで形成されたポート収容空間を有するポート収容部と、を備え
前記2枚のシート状部材における前記ポート収容部に対応する部分には立体成形が施されていない細胞保存容器。
【請求項2】
2枚の軟質樹脂製のシート状部材の周縁部が接合されることで形成される細胞収容部と、
前記細胞収容部に細胞を導入する細胞導入部と、
前記細胞収容部に収容された細胞を導出する細胞導出部と、
前記細胞導出部に配置される硬質樹脂製のポート部材と、を備え、
前記細胞導出部は、前記シート状部材に形成される凹溝と、該凹溝に配置され前記ポート部材が挿入される軟質樹脂製のチューブと、を備える細胞保存容器の製造方法であって、
前記シート状部材に、前記細胞導入部の形状に対応する細胞導入溝、及び前記細胞導出部の形状に対応する凹溝を立体成形により形成する立体形状形成工程と、
一方の前記シート状部材の前記凹溝に前記チューブを配置し、他方の前記シート状部材を、前記細胞導入溝、及び前記凹溝の位置が一致するように重ね合わせるチューブ配置工程と、
重ね合わされた2枚の前記シート状部材と、該2枚のシート状部材の間に配置された前記チューブとを、前記凹溝及びその近傍において溶着するチューブ溶着工程と、
前記チューブに前記ポート部材を挿入するポート取付工程と、
他方の前記シート状部材を、前記細胞収容部、前記細胞導入溝、及び前記凹溝の位置が一致するように重ね合わせ、前記細胞収容部よりも外側において、2枚の前記シート状部材を接合する接合工程と、を備え、
前記2枚のシート状部材は、前記細胞収容部から前記細胞導出部側に延出して前記ポート部材を覆う大きさを有し、
前記接合工程において、前記ポート部材における前記細胞収容部とは反対側の端部を少なくとも含む部分を2枚の前記シート状部材の立体成形が施されていない平坦な面で挟み込んだ状態で、2枚の前記シート状部材を、前記ポート部材を囲むように接合する細胞保存容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療に用いられる製品においては、これらの製品が使用される一連の過程において無菌性が求められる。特に、生体試料から採取された細胞から製造される細胞製剤については、患者に直接投与する場合が多く、外界からのコンタミネーションは治療において大きなリスクとなり得る。そのため、細胞製剤の細胞保存容器への保存から患者に投与する直前までのあらゆる過程において無菌性を維持する必要がある。また、細胞製剤を細胞保存容器から取り出す場合に、シリンジ等の細胞製剤の取り出しに用いられる器具が接触し得る場所についても無菌性を維持する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、軟質樹脂製のシート状部材により袋状に形成された細胞収容部を有する細胞保存容器が提案されている。このような袋状の細胞保存容器における細胞収容部からの細胞の取出口部分には、隔膜を有するチューブ状のポート部材が配置される。そして、細胞を取り出す場合には、ポート部材の隔膜に注射針を差し込むことで隔膜に穴を開け、シリンジ等により細胞を吸引して取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-005388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、再生医療に用いられる細胞は、集塊を形成した状態で保存される場合がある。このような場合、内径の小さい注射針を使用して細胞を取り出すと、形成された細胞集塊を損傷させてしまう可能性がある。
注射針のような内径の小さい穿刺針を用いることなく液体の注入や採取を可能とするポート部材として、ニードルレスポートが挙げられる。ニードルレスポートは、硬質樹脂製の筒状のポート本体と、このポート本体に取り付けられるスリットが形成された弾性隔壁部材と、を含んで構成され、弾性隔壁部材のスリットにシリンジの先端部を挿入することで液体の注入や採取が可能となっている。
ここで、軟質樹脂製の細胞収容部に硬質樹脂製のニードルレスポートを取り付ける場合、ニードルレスポートと細胞収容部との接続部分の密着性を担保することが重要となる。
【0006】
従って、本発明は、硬質樹脂製のポート部材と軟質樹脂製の細胞収容部との接続部分の密着性を高められる細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2枚の軟質樹脂製のシート状部材の周縁部が接合されることで形成される細胞収容部と、前記細胞収容部に細胞を導入する細胞導入部と、前記細胞収容部に収容された細胞を導出する細胞導出部と、前記細胞導出部に配置される硬質樹脂製のポート部材と、を備える細胞保存容器であって、前記細胞導出部は、前記シート状部材に形成される凹溝と、該凹溝に配置され前記ポート部材が挿入される軟質樹脂製のチューブと、を備える細胞保存容器に関する。
【0008】
また、細胞保存容器は、前記細胞収容部を構成する前記2枚のシート状部材が前記細胞導出部側に延出すると共に、延出した該2枚のシート状部材の周縁部が前記ポート部材を囲むように接合されることで形成されたポート収容空間を有するポート収容部を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、2枚の軟質樹脂製のシート状部材の周縁部が接合されることで形成される細胞収容部と、前記細胞収容部に細胞を導入する細胞導入部と、前記細胞収容部に収容された細胞を導出する細胞導出部と、前記細胞導出部に配置される硬質樹脂製のポート部材と、を備え、前記細胞導出部は、前記シート状部材に形成される凹溝と、該凹溝に配置され前記ポート部材が挿入される軟質樹脂製のチューブと、を備える細胞保存容器の製造方法であって、前記シート状部材に、前記細胞導入部の形状に対応する溝、及び前記細胞導出部の形状に対応する凹溝を立体成形により形成する立体形状形成工程と、一方の前記シート状部材の前記凹溝に前記チューブを配置し、他方の前記シート状部材を、前記細胞導入溝、及び前記凹溝の位置が一致するように重ね合わせるチューブ配置工程と、重ね合わされた2枚の前記シート状部材と、該2枚のシート状部材の間に配置された前記チューブとを、前記凹溝及びその近傍において溶着するチューブ溶着工程と、前記チューブに前記ポート部材を挿入するポート取付工程と、他方の前記シート状部材を、前記細胞収容部、前記溝、及び前記凹溝の位置が一致するように重ね合わせ、前記細胞収容部よりも外側において、2枚の前記シート状部材を接合する接合工程と、を備える細胞保存容器の製造方法に関する。
【0010】
また、前記2枚のシート状部材は、前記細胞収容部から前記細胞導出部側に延出して前記ポート部材を覆う大きさを有し、前記接合工程において、2枚の前記シート状部材を、前記ポート部材を囲むように接合することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法によれば、硬質樹脂製のポート部材と軟質樹脂製の細胞保存容器本体との接続部分の密着性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る細胞保存容器を示す平面図である。
図2】一実施形態に係る細胞保存容器を示す分解斜視図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4A】細胞保存容器の製造工程を示す図であり、立体形状が形成された2枚のシート状部材を、凹溝にチューブが配置された状態で重ね合わせる工程を示す図である。
図4B図4Aに示す状態から、細胞導出部の近傍を溶着する工程を示す図である。
図4C図4Bに示す状態から、細胞導出部にニードルレスポートを配置し、細胞導入部に細胞導入チューブを配置する工程を示す図である。
図4D】細胞導出部にニードルレスポートが配置され、細胞導入部に細胞導入チューブが配置された状態を示す図である。
図4E図4Dに示す状態から、2枚のシート状部材61,62の外周部分を高周波溶着(熱溶着)し、細胞収容部及びニードルレスポート収容部を有する細胞保存容器を製造する工程を示す図である。
図5】第1実施形態の細胞保存容器を使用する手順を示す図であり、細胞保存容器に細胞を収容している状態を示す図である。
図6図5に示す状態から、細胞収容部に細胞を収容した状態を示す図である。
図7図6に示す状態から、細胞導入チューブを溶断した状態を示す図である。
図8】細胞収容部に収容された細胞を取り出す状態を示す図であり、ニードルレスポート収容部を開封(切断)する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の細胞保存容器の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。細胞保存容器は、可撓性を有する軟質の熱可塑性樹脂からなるシート状部材を主体として構成され、生体試料から採取された幹細胞等の細胞や、これらの細胞を培養及び加工して製造される細胞製剤(以下、細胞及び細胞製剤を合わせて細胞という)を保存する場合に用いられる。
【0014】
まず、本実施形態の細胞保存容器1の構成について、図1図3を参照しながら説明する。本実施形態の細胞保存容器1は、図1に示すように、細胞収容部10と、細胞導入部20と、細胞導出部30と、この細胞導出部30に配置されるポート部材としてのニードルレスポート40と、ポート収容部としてのニードルレスポート収容部50と、を備える。
【0015】
細胞収容部10は、図1図3に示すように、2枚のシート状部材61,62が重ね合わせられると共に、それぞれの周縁部の大部分が接合されることで構成される。細胞収容部10は、周縁部が接合されたシート状部材61,62に囲まれた空間である細胞収容空間11を有する。
本実施形態では、シート状部材61,62には、それぞれ同形状の凹部が立体成形により形成され、これらの凹部同士が向かい合うようにシート状部材61,62が重ね合わせられることで細胞収容空間11が形成される。細胞収容部10は、図1に示すように、平面視において楕円形状に形成される。
【0016】
細胞導入部20は、生体試料から採取された細胞等を細胞収容部10に導入する場合に用いられる。細胞導入部20は、細胞導入路21と、この細胞導入路21に配置される細胞導入チューブ22と、を備える。
細胞導入路21は、楕円形状の細胞収容部10における長手方向の一端側に配置される。細胞導入路21は、シート状部材61,62それぞれに形成され、細胞収容部10の長手方向に沿って延びる細胞導入溝211により構成される。細胞導入溝211の一端部は、細胞収容空間11に連続する。細胞導入溝211の他端部は、シート状部材61,62の縁部まで延びる。
【0017】
細胞導入チューブ22は、細胞導入路21に配置される。細胞導入チューブ22は、生体試料から採取された細胞等を無菌的かつ気密の状態で細胞収容部10に導く。この細胞導入チューブ22は、EVA樹脂等の軟質の熱可塑性樹脂により構成される。本実施形態では、細胞導入チューブ22は、一端側が細胞収容空間11に連通するように、シート状部材61,62に形成された細胞導入溝211に配置される。
細胞導入チューブ22には、この細胞導入チューブ22の流路を開閉させるチューブクリップ23が取り付けられる。また、細胞導入チューブ22の先端部には、細胞保存容器1に細胞を導入する場合に用いられるシリンジ等の器具を接続可能な接続ポート24が取り付けられる。
【0018】
細胞導出部30は、細胞収容部10に収容された細胞等を導出する場合に用いられる。細胞導出部30は、楕円形状の細胞収容部10の長手方向における細胞導入部20が配置された側と反対側の端部(他端側)に配置される。細胞導出部30は、凹溝31と、この凹溝31に配置されるチューブ32と、を備える。凹溝31は、シート状部材61,62それぞれに形成され、細胞収容部10の長手方向に沿って延びる。凹溝31は、チューブ32の形状に対応した形状に形成される。チューブ32は、EVA樹脂等の軟質の熱可塑性樹脂により構成される。細胞導出部30の一端部は、細胞収容空間11に連続する。
【0019】
ニードルレスポート40は、細胞導出部30に配置される。ニードルレスポート40は、筒状の接続部41と、この接続部41よりも大径の本体部42と、を備える。ニードルレスポート40は、接続部41がチューブ32に挿入された状態で細胞導出部30に配置され、本体部42が細胞導出部30から突出する。ニードルレスポート40の接続部41及び本体部42は、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の硬質の合成樹脂により形成される。
ニードルレスポート40(本体部42)は、スリットが形成された弾性隔壁部材(図示せず)を有しており、このスリットにシリンジの先端部(筒先)を挿入することで、密閉性を保ちつつ、穿刺針等を用いないで液体の注入や採取を可能にする混注ポートである。
【0020】
ニードルレスポート収容部50は、細胞収容部10を構成するシート状部材61,62が細胞導出部30側に延出した部分により構成される。シート状部材61,62は、ニードルレスポート40の本体部42の先端部を超えて延出している。そして、シート状部材61,62の延出した部分は、平面視において、ニードルレスポート40から所定距離離間した部分よりも外側が接合され、これにより、シート状部材61,62によって囲まれたニードルレスポート収容空間51を有するニードルレスポート収容部50が形成される。
【0021】
次に、本実施形態の細胞保存容器1の製造方法について、図4A図4Eを参照しながら説明する。本実施形態の細胞保存容器1の製造方法は、立体形状形成工程と、チューブ配置工程と、チューブ溶着工程と、ポート取付工程と、接合工程と、を備える。
【0022】
まず、図4Aに示すように、立体形状形成工程において、シート状部材61,62に、細胞収容部10の形状に対応する凹部、細胞導入溝211、及び細胞導出部30の形状に対応する凹溝31が立体成形により形成される。本実施形態では、シート状部材61,62には、それぞれ同形状の立体形状が形成される。
次いで、チューブ配置工程において、一方のシート状部材(シート状部材62)の凹溝31にチューブ32を配置し、その後他方のシート状部材(シート状部材61)を、細胞収容部10、細胞導入溝211、及び細胞導出部30の位置が一致するように重ね合わせる。
【0023】
次いで、図4Bに示すように、チューブ溶着工程において、重ね合わされたシート状部材61,62と、シート状部材61,62の間に配置されたチューブ32とを、細胞導出部30及びその近傍においてチューブ溶着金型110,110により挟み込んで溶着する。これにより、細胞導出部30及びその近傍において、シート状部材61,62、シート状部材61,62の間に配置されたチューブ32と、が溶着される(図4C参照)。
【0024】
次いで、図4Cに示すように、ポート取付工程において、チューブ32にニードルレスポート40の接続部41を挿入する。また、シート状部材61,62における細胞導入溝211が形成された部分に細胞導入チューブ22を配置する。
【0025】
次いで、図4Dに示すように、接合工程において、他方のシート状部材(シート状部材61)を、細胞収容部10、細胞導入溝211、及び細胞導出部30の位置が一致するように重ね合わせ、細胞導入チューブ22をシート状部材と溶着する。
【0026】
また、接合工程においては、図4Eに示すように、細胞収容部10よりも外側、及びニードルレスポート収容空間51を形成する部分の外側において、2枚のシート状部材61,62を高周波溶着(熱溶着)により接合する。
【0027】
これにより、細胞収容部10及びニードルレスポート収容部50を有する細胞保存容器1が製造される。ここで、本実施形態では、シート状部材61,62におけるニードルレスポート収容部50に対応する部分には、立体成形は施されていないが、所定の径(厚み)を有するニードルレスポート40を挟み込んだ状態でシート状部材61とシート状部材62は接合されるため、シート状部材61とシート状部材62との間には、所定の厚さを有するニードルレスポート収容空間51が形成される。
【0028】
細胞保存容器1には、その後、EOG滅菌処理が施される。EOG滅菌処理においては、細胞保存容器1を滅菌器の内部に配置した状態で、滅菌器にEOGを所定の圧力で導入し、細胞保存容器1の外表面を滅菌すると共に、EOGを細胞収容空間11及びニードルレスポート収容空間51にも浸透させ、細胞収容部10の内部及びニードルレスポート収容部50の内部も滅菌する。
【0029】
次に、本実施形態の細胞保存容器1の使用方法について、図5図8を参照しながら説明する。
【0030】
細胞保存容器1に細胞を収容する場合、生体試料収容容器から採取された所定の細胞Cは、図5に示すように、シリンジ等の器具100により、細胞導入チューブ22を介して細胞収容部10に導入される。細胞収容部10に細胞が収容された後、図6に示すように、チューブクリップ23により細胞導入チューブ22の流路は閉止される。次いで、図7に示すように、細胞導入チューブ22は、チューブクリップ23よりも細胞収容部10側において溶断され、これにより、細胞保存容器1は密閉される。この状態で、細胞保存容器1は保存される。
【0031】
保存された細胞保存容器1に収容された細胞を使用する場合には、図8に示すように、ニードルレスポート収容部50における長手方向Yの端部側を、幅方向Xにハサミ等により切断してニードルレスポート40を露出させる。そして、シリンジ(図示せず)の先端部(筒先)をニードルレスポート40に挿入し、細胞収容部10に収容された細胞を採取する。
【0032】
以上説明した本実施形態の細胞保存容器1によれば、以下のような効果を奏する。
【0033】
(1)細胞保存容器1を、2枚のシート状部材61,62により構成される細胞収容部10と、細胞収容部に細胞を導入する細胞導入部20と、細胞収容部10に収容された細胞を導出する細胞導出部30と、細胞導出部30に配置される硬質樹脂製のニードルレスポート40と、を含んで構成し、細胞導出部30を、シート状部材61,62に形成された凹溝31と、この凹溝31に配置される軟質樹脂製のチューブ32と、を含んで構成した。これにより、細胞保存容器1において細胞導出部30にニードルレスポート40を接続する場合に、まず、軟質樹脂製のシート状部材61,62の凹溝31が形成された部分と、軟質樹脂製のチューブ32とを溶着等により接合した後に、シート状部材61,62に溶着された状態のチューブ32に、硬質樹脂製のニードルレスポート40の接続部41を挿入することで、軟質樹脂製の材料で構成された細胞導出部30に硬質樹脂製のニードルレスポート40を好適に密着させて接続できる。
【0034】
(2)細胞保存容器1を、細胞収容部10を構成する2枚のシート状部材61,62が細胞導出部30側に延出すると共に、延出したこれら2枚のシート状部材61,62の周縁部がニードルレスポート40を囲むように接合されることで形成されたニードルレスポート収容空間51を有するニードルレスポート収容部50を含んで構成した。これにより、ニードルレスポート収容部50によりニードルレスポート40を密閉した状態を保てるので、細胞を採取する直前まで、ニードルレスポート40の無菌性を保った状態を維持させられる。
【0035】
(3)細胞保存容器の製造方法を、シート状部材61,62に、細胞導入チューブ22の形状に対応する細胞導入溝211、及びチューブ32の形状に対応する凹溝31を立体成形により形成する立体形状形成工程と、一方のシート状部材62の凹溝31にチューブ32を配置し、他方のシート状部材61を、細胞導入溝211、及び凹溝31の位置が一致するように重ね合わせるチューブ配置工程と、重ね合わされた2枚のシート状部材61,62と、2枚のシート状部材61,62の間に配置されたチューブ32とを、凹溝31及びその近傍において溶着するチューブ溶着工程と、チューブ32にニードルレスポート40の接続部41を挿入するポート取付工程と、他方のシート状部材61を、細胞収容部10、細胞導入溝211、及び凹溝31の位置が一致するように重ね合わせ、細胞収容部10よりも外側において、2枚のシート状部材61,62を接合する接合工程と、を含んで構成した。これにより、細胞導出部30にニードルレスポート40を接続する場合に、まず、チューブ溶着工程において軟質樹脂製のシート状部材61,62の凹溝31が形成された部分と軟質樹脂製のチューブ32とを溶着等により接合した後に、ポート取付工程においてシート状部材61,62に溶着された状態のチューブ32に、硬質樹脂製のニードルレスポート40の接続部41を挿入することで、軟質樹脂製の材料で構成された細胞導出部30に硬質樹脂製のニードルレスポート40を好適に密着させて接続できる。
【0036】
(4)2枚のシート状部材61,62を、細胞収容部10から細胞導出部30側に延出してニードルレスポート40を覆う大きさとし、接合工程において、2枚のシート状部材61,62を、ニードルレスポート40を囲むように接合した。これにより、軟質樹脂製の細胞収容部10に硬質樹脂製のニードルレスポート40が好適に接続されて構成された細胞保存容器1を、ニードルレスポート40を密閉するニードルレスポート収容部50を含んで構成できる。即ち、細胞保存容器の製造方法を、チューブ配置工程、チューブ溶着工程、ポート取付工程及び接合工程を含んで構成することにより、軟質樹脂製のシート状部材61,62により袋状に構成された細胞収容部10に、硬質樹脂製のニードルレスポート40を好適に密着させて接続でき、更にニードルレスポート40を密閉するニードルレスポート収容部50を有する細胞保存容器1を実現できる。
【0037】
以上、本発明の細胞保存容器の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、細胞保存容器1を、ニードルレスポート収容部50を含んで構成したが、これに限らない。即ち、細胞保存容器を、ニードルレスポート収容部を含まずに構成してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、ポート部材としてニードルレスポート40を用いたが、これに限らない。即ち、ポート部材として、硬質樹脂製の他のポートを用いてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、ニードルレスポート収容部50を、シート状部材61,62に立体成形を形成することなく構成したが、これに限らない。即ち、ニードルレスポート収容部50を、細胞収容部と同じように、シート状部材61,62に立体成形を形成して構成してもよい。
【0040】
また、本実施形態では、細胞保存容器1にEOG滅菌を施したが、これに限らない。即ち、細胞保存容器にガンマ線や電子線等の放射線滅菌を施してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 細胞保存容器
10 細胞収容部
20 細胞導入部
30 細胞導出部
31 凹溝
32 チューブ
40 ニードルレスポート(ポート部材)
50 ニードルレスポート収容部(ポート収容部)
51 ニードルレスポート収容空間(ポート収容空間)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8