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特許7589587通信装置、制御プログラム、サービス提供システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】通信装置、制御プログラム、サービス提供システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20241119BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241119BHJP
   H04L 67/00 20220101ALI20241119BHJP
【FI】
G06F3/12 331
B41J29/38 701
G06F3/12 303
G06F3/12 325
G06F3/12 330
G06F3/12 367
G06F3/12 388
H04L67/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021029420
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130808
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】奥野 哲也
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-160955(JP,A)
【文献】特開2014-178984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 29/38
H04L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信インタフェースと、メモリと、コントローラとを備え、所定のサービスを提供するサーバと前記通信インタフェースを介して通信可能な通信装置であって、
前記メモリには、前記サーバが前記所定のサービスの提供において前記通信装置を識別するための識別情報が記憶されており、
前記コントローラは、
前記メモリのリセット指示を受付ける指示受付処理と、
前記リセット指示を受付けた場合に、前記メモリから前記識別情報以外の情報を削除するリセット処理と、
前記リセット処理が実行された後であって、前記サーバとの間で前記所定のサービスの提供を受けるための再登録を行う場合に、前記サーバに対して前記識別情報の更新を要求する更新要求処理と、
前記更新要求処理に基づき、更新された前記識別情報を前記メモリに記憶する記憶処理と、
を実行する通信装置。
【請求項2】
前記更新要求処理では、前記サーバに対して前記識別情報の更新を要求すると共に、前記メモリに記憶されている前記識別情報を前記サーバに送信する請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記更新要求処理では、前記識別情報の更新の要求により、前記サーバに、前記通信装置に対して新たな前記識別情報を作成させ、
前記記憶処理では、前記サーバにより作成された前記識別情報を、更新後の前記識別情報として前記メモリに記憶する請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記リセット処理の実行後に新たな前記識別情報を作成し、
前記更新要求処理では、前記新たに作成された識別情報を前記通信装置における前記識別情報として前記サーバに送信し、
前記記憶処理では、前記新たに作成された識別情報を前記メモリに記憶する請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記サーバは、前記所定のサービスに加え、他のサービスを提供可能であり、
前記メモリには、前記識別情報に加えて、前記サーバから前記他のサービスの提供を受けるための情報である接続情報が記憶されており、
前記リセット処理では、
前記リセット指示を受付けた場合に、前記通信装置に対して前記他のサービスの提供が登録されていれば、前記メモリに記憶された前記接続情報を削除せず、
前記リセット指示を受付けた場合に、前記通信装置に対して前記他のサービスの提供が登録されていなければ、前記メモリに記憶された前記接続情報を削除する請求項1~4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記リセット指示を受付けた場合に、前記通信装置に対して前記他のサービスの提供が登録されていれば、前記他のサービスが登録されていることを通知する通知処理を実行する請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
通信インタフェースと、メモリと、を備え、所定のサービスを提供するサーバと前記通信インタフェースを介して通信可能な通信装置のコントローラで実行可能な制御プログラムであって、
前記メモリには、
前記サーバが前記所定のサービスの提供において前記通信装置を識別するための識別情報が記憶されており、
前記コントローラに、
前記メモリのリセット指示を受付ける指示受付処理と、
前記リセット指示を受付けた場合に、前記識別情報以外の情報を前記メモリから削除するリセット処理と、
前記リセット処理が実行された後であって、前記サーバとの間で前記所定のサービスの提供を受けるための再登録を行う場合に、前記サーバに対して前記識別情報の更新を要求する更新要求処理と、
前記更新要求処理に基づき、更新された前記識別情報を前記メモリに記憶する記憶処理と、
を実行させる制御プログラム。
【請求項8】
通信インタフェースと、メモリとを備える通信装置と、所定のサービスを提供するサーバとで構成され、前記通信装置は前記通信インタフェースを介して前記サーバと通信可能なサービス提供システムであって、
前記メモリには、前記サーバが前記所定のサービスの提供において前記通信装置を識別するための識別情報が記憶されており、
前記通信装置は、
前記メモリのリセット指示を受付ける指示受付処理と、
前記リセット指示を受付けた場合に、前記識別情報以外の情報を前記メモリから削除するリセット処理と、
前記リセット処理が実行された後であって、前記サーバとの間で前記所定のサービスの提供を受けるための再登録を行う場合に、前記サーバに対して前記識別情報の更新を要求する更新要求処理と、
を実行し、
前記サーバは、前記識別情報の更新の要求を受けると、前記識別情報を更新し、
前記通信装置は、前記更新要求処理に基づき、更新された前記識別情報を前記メモリに記憶する記憶処理を実行するサービス提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバとの間で通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定のサービスを提供するサーバと、このサーバとの通信可能な通信装置が記載されている。特許文献1では、サービスの提供に先立ち、通信装置は、サーバとの間で、サービスの提供を受けるために必要な通信装置の識別情報をメモリに記憶する。そして、通信装置は、メモリに記憶された識別情報を用いてサーバからのサービスの提供を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-178984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、通信装置において、メモリに記憶された情報を削除した後に、サーバとの間でサービスの提供を受けるための再登録を行う場合がある。このような場合において、通信装置又はサーバに対して悪影響が生じる懸念がある。しかし、特許文献1では、メモリに記憶された情報をリセットした場合の通信装置の処理について何ら記載されていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、メモリに記憶されている情報をリセットした後に、サーバとの間でサービスの提供を受けるための再登録を行う場合において、通信装置又はサーバに対する悪影響を極力抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明では、通信インタフェースと、メモリと、コントローラとを備え、所定のサービスを提供するサーバと、通信インタフェースを介して通信可能な通信装置に関する。通信装置のメモリには、サーバが所定のサービスの提供において通信装置を識別するための識別情報が記憶されており、コントローラは、メモリのリセット指示を受付ける指示受付処理と、リセット指示を受付けた場合に、メモリから識別情報以外の情報を削除するリセット処理と、リセット処理が実行された後であって、サーバとの間で所定のサービスの提供を受けるための再登録を行う場合に、サーバに対して識別情報の更新を要求する更新要求処理と、更新要求処理に基づき、更新された識別情報をメモリに記憶する記憶処理と、を実行する。
【0007】
上記構成では、通信装置のコントローラは、メモリのリセット指示を受付けた場合に、メモリから識別情報以外の情報を削除するリセット処理を実行する。コントローラは、リセット処理が実行された後であって、サーバとの間で所定のサービスの提供を受けるための再登録を行う場合に、サーバに対して当該識別情報の更新を要求する。これにより、メモリのリセットを行った後において、サーバとの間でサービスの提供を受けるために通信装置の再登録が行われるまでは、識別情報が保持される。一方で、サーバとの間でサービスの提供を受けるために再登録が行われた場合は、通信装置の識別情報が更新されるため、通信装置に対して同じ識別情報が継続して使用される場合と比べて、セキュリティーの低下を抑制することができる。これにより、メモリのリセットが行われた場合において、メモリに記憶された全ての情報を削除する場合と比べて、通信装置又はサーバに対する悪影響を極力抑制することができる。
【0008】
本発明は、種々の形態により実現することが可能であり、通信装置の発明以外にも、通信装置のコントローラが実行する制御プログラムや、通信装置を含むサービス提供システムとしても実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メモリに記憶されている情報をリセットした後に、サーバとの間でサービスの提供を受けるための再登録を行う場合において、通信装置又はサーバに対する悪影響を極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】印刷システムの構成図。
図2】管理テーブルを説明する図。
図3】サービスの登録の手順を示すタイミングチャート。
図4】サービスの実行手順を説明するタイミングチャート。
図5】ファクトリリセット後の各装置の処理を説明するタイミングチャート。
図6図5のS32で実行される処理を説明するフローチャート。
図7】第2実施形態に係る、ファクトリリセット後の各装置の処理を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態係に係る印刷システムを、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1に示す印刷システム100は、端末10と、プリンタ30と、サーバ50とを備えている。端末10と、プリンタ30と、サーバ50とはネットワーク200に接続されている。本実施形態では、ネットワーク200は、インターネットであってもよいし、ローカルエリアネットワーク(LAN)であってもよいし、LANとインターネットとの組み合わせであってもよい。また、ネットワーク200は、有線の他、無線でもよいし有線と無線の組み合わせにより構成されていてもよい。本実施形態では、プリンタ30が通信装置の一例である。
【0013】
端末10の構成について説明する。端末10は、スマートフォンやタブレット端末である。端末10は、バス11と、端末側CPU12と、メモリ13と、ユーザIF17と、通信IF20とを備えている。これらの構成要素は、バス11を介して互いに通信可能に接続されている。IFは、Interfaceの略称である。
【0014】
ユーザIF17は、操作キー18や、タッチパネル19を備えている。タッチパネル19は、タッチセンサを有しており、タッチセンサによる検出結果に応じた信号を出力する。なお、本実施形態における「タッチ」とは、入力媒体をタッチパネル19の表示画面に接触させる操作全般を含む。また、入力媒体をタッチパネル19との間の距離がごく僅かな位置まで入力媒体を近接させることを、前述の「タッチ」の概念に含めてもよい。さらに入力媒体とは、ユーザの指であってもよいし、タッチペン等であってもよい。
【0015】
通信IF20は、所定の通信プロトコルに準拠して、端末10をネットワーク200に接続する。通信IF20は、例えば、IEEEの802.11の規格およびそれに準ずる規格に基づいて、Wi-Fi(R)(登録商標)方式の無線通信を行うことが可能とされている。また、通信IF20は、プリンタ30との間でBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行うものであってもよい。なお、通信IF20は、基地局を介した移動通信システムを利用した無線通信を行うものであってもよい。
【0016】
端末側CPU12は、メモリ13に記憶されたプログラムを実行することで、端末10の各部を制御する。メモリ13には、不図示のOS(Operating Systemの略称)、印刷アプリケーションプログラム14、メールプログラム15、課金アプリケーションプログラム16が記憶されている。以下、アプリケーションプログラムを、単に、「アプリケーション」と称す。端末側CPU12は、OSの実行下において、各プログラム14,15,16を実行することにより、プリンタ30及びサーバ50との間でネットワーク200を介した通信を行うことができる。例えば、端末側CPU12は、印刷アプリケーション14を実行することにより、プリンタ30に対して、プリント処理の指示を行う。端末側CPU12は、メールプログラム15を実行することにより、サーバ50との間で、メールデータの送受信を行うことができる。端末側CPU12は、課金アプリケーションを実行することにより、サーバ50から課金の伴うサービスの提供を受けることができる。以下では、プログラムを実行するCPUのことを、単にプログラム名でも記載する場合がある。例えば、「印刷アプリケーション14が」という記載は、「印刷アプリケーション14を実行する端末側CPU12が」ということを意味する場合がある。
【0017】
なお、本実施形態では、主に、プログラムに記述された命令に従ったCPUの処理を示す。すなわち、以下の説明における「判断」、「抽出」、「選択」、「算出」、「決定」、「特定」、「取得」、「受付」、「制御」等の処理は、CPUやコントローラの処理を表している。CPUによる処理は、OSを介したハードウェア制御も含む。なお「取得」は要求を必須とはしない概念で用いる。すなわち、各プログラムが要求することなくデータを受信するという処理も、「CPUがデータを取得する」という概念に含まれる。また、本明細書中の「データ」とは、コンピュータに読取可能な形式で表される。そして、実質的な意味内容が同じでフォーマットが異なるデータは、同一のデータとして扱われるものとする。本明細書中の「情報」についても同様である。
【0018】
次に、サーバ50の構成について説明する。サーバ50は、通信IF52と、サーバ側CPU53と、メモリ54とを備え、バス51を介して互いに通信可能に接続されている。サーバ50は、端末10に対して、各種のサービスの提供を行うことが可能なサーバである。本実施形態では、サーバ50により、提供可能なサービスとして、メールサービス、メールプリント、及び課金サービスがある。メールサービスは、端末10との間で、アドレスを指定したメールデータの送受信を行うサービスである。メールプリントは、印刷ファイルを、メールデータに添付して送信することにより、プリンタ30に印刷ファイルを印刷させることができるサービスである。なお、本実施形態では、一台のサーバ50により各種のサービスが提供されるが、これに限定されず複数のサーバそれぞれが各サービスを提供するものであってもよい。
【0019】
サーバ50のメモリ54には、管理テーブルKTが記憶されている。図2に示すように、管理テーブルKTは、サーバ50が提供可能なサービスにおける各種の情報を関連付けて記憶する情報である。管理テーブルKTには、「デバイスID」、「サービスID」、「アカウント」、「クライアント番号」、「メールアドレス」、「課金情報」の各項目を含んでいる。「デバイスID」は、サーバ50がサービスの提供に用いる装置を識別するための情報であり、装置を一意に特定することができる情報である。図2では、「dv1」がプリンタ30のデバイスIDである。「サービスID」は、サーバ50が提供可能なサービスを特定するための情報である。このうち、「sv1」がメールプリントのサービスIDであり、「sv2」が課金サービスのサービスIDである。「アカウント」は、ユーザが、各サービスの提供を受けるために入力される情報である。また、管理テーブルKTにおいて、メールプリントのサービスID(sv1)には、「メールアドレス」(〇〇〇@print)が関連づけて記憶されている。「クライアント番号」は、サーバ50が装置のアドレスを特定するために用いる情報である。本実施形態では、XMPPプロトコルに対応する情報である。管理テーブルKTにおいて、課金サービスのサービスID(sv2)には、「課金情報」が関連づけて記憶されている。なお、課金情報は、課金サービスの提供を受けるユーザが、サーバに課金を行う際に必要となる情報であり、例えば、クレジットカードの番号である。
【0020】
図2で示す管理テーブルKTでは、プリンタ30のデバイスID(dv1)に対して、2つのサービスID(sv1,sv2)が関連付けて記憶されている。これは、プリンタ30に対して、メールプリントと、課金サービスとが登録されていることを示している。
【0021】
次に、プリンタ30のハードウェア構成について説明する。プリンタ30は、バス31、通信IF32、印刷ユニット33、ユーザIF34、コントローラ35、メモリ36、インクタンク38を備えている。プリンタ30を構成する各部は、バス31を介して通信可能に接続されている。
【0022】
通信IF32は、端末10における通信IF20と同様である。ユーザIF34は、端末10におけるユーザIF17と同様であり、タッチパネルや、物理キーとしての操作キーを備えている。
【0023】
印刷ユニット33は、シートやディスクなどの被記録媒体に画像を印刷するプリント動作を実行する。印刷ユニット33は、記録媒体としてのインクを被記録媒体に吐出するインクジェット方式のユニットである。印刷ユニット33には、インクを貯留するインクタンク38が接続されている。なお、印刷ユニット33は、感光体にトナー像を形成し、形成されたトナー像を被記録媒体に転写する電子写真方式のユニットであってもよい。この場合、印刷ユニットには、インクタンク38に代えて、トナーが貯留されたトナーカートリッジが接続されている。
【0024】
コントローラ35は、CPUや、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略称)等により構成されており、印刷ユニット33、ユーザIF34の各動作を制御する。メモリ36は、各種のプログラムや、データが記憶されている。本実施形態では、メモリ36には、NVRAM(Non-Volatile RAMの略称)37が含まれている。これ以外にも、メモリ36は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリーが組み合わされて構成されていてもよい。また、メモリ36は、コンピュータであるコントローラ35が読み取り可能なストレージ媒体を含んでいてもよい。ストレージ媒体とは、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体も含まれる。
【0025】
メモリ36には、ファームウェア40が記憶されている。コントローラ35は、制御プログラムであるファームウェア40を実行することにより、プリント処理を実行することができる。メモリ36には、各種サービスで用いられる情報が記憶されている。具体的には、「サービスID」、「デバイスID」、「メールアドレス」、「保護フラグ」が記憶される。メモリ36に記憶された各情報には、管理テーブルKT上でデバイスID(dv1)に関連づけて記憶された情報と同じ情報が含まれている。図1では、NVRAM37には、デバイスID(dv1)が記憶されている。なお、メモリ36に記憶される各情報は、後述する図3に示す処理においてメモリ36に記憶される。
【0026】
次に、図3を用いて、サーバ50が提供可能なサービスである「メールプリント」で使用するプリンタとして、プリンタ30を登録する場合の処理を説明する。図3に示す各処理のうち、プリンタ30が実行する処理は、ファームウェア40により実行される。なお、プリンタ30とサーバ50との間のネットワーク接続は既に確立されているものとする。
【0027】
ユーザが、プリンタ30のユーザIF34に対して、プリンタ30をメールプリントで使用するプリンタに登録する操作を行う。具体的には、ユーザIF34に表示された待受画面をメールプリントの設定画面に切換え、この設定画面上で、メールプリントの実行を選択操作する。ファームウェア40は、メールプリントの選択操作を受付けると。ステップ10(以下、S10と記載する。)では、サーバ50に対して、プリンタ30をメールプリントで使用するプリンタに登録するための登録要求を送信する。
【0028】
サーバ50のサーバ側CPU53は、通信IF52を介して登録要求を受信すると、S11で、プリンタ30に対してデバイスIDを発行する。S12では、サーバ側CPU53は、発行されたデバイスIDを、管理テーブルKTに記憶することで、プリンタ30を、メールプリントで使用するプリンタに登録する。具体的には、管理テーブルKT上に、発行されたデバイスID(dv1)に関連付けて、「メールプリント」を示すサービスID(sv1)を記憶する。
【0029】
サーバ側CPU53は、S13では、S11で発行された「デバイスID」及び認証トークンを、プリンタ30に送信する。これ以降、プリンタ30とサーバ50とはXMPPプロトコルに従った常時接続状態となる。プリンタ30のファームウェア40は、デバイスIDを受信すると、S14では、受信したデバイスIDと認証トークンとをNVRAM37に記憶する。これにより、サーバ50は、プリンタ30を、メールプリントで使用するプリンタとして識別することが可能となる。なお、例えば、定額制の印刷サービスや消耗品の発注サービス等の課金情報を必要とするサービスID「sv2」をサーバ50に登録した場合、プリンタ30のファームウェア40はメモリ36に記憶された保護フラグを1に設定する。
【0030】
ファームウェア40は、S15で、サーバ50に対して、自装置のデバイスID(dv1)と共に、アドレス取得要求を送信する。ファームウェア40が送信するアドレス取得要求は、「メールプリント」において、プリンタ30に関連付けられるメールアドレスを、サーバ50に発行させるための要求である。なお、S15において、デバイスIDに代えて、プリンタ30を識別可能な認証トークンを送信するものであってもよい。
【0031】
サーバ側CPU53は、プリンタ30からのアドレス取得要求を受信すると、S16で、プリンタ30に対してメールアドレスを発行する。具体的には、サーバ側CPU53は、Eメールアドレス「〇〇〇@print」を発行する。S17では、サーバ側CPU53は、S16で発行したメールアドレスを、プリンタ30のデバイスID(dv1)に関連付けて管理テーブルKTに記憶する。
【0032】
サーバ側CPU53は、S18において、発行されたメールアドレスを、プリンタ30に送信する。ファームウェア40は、S19で、サーバ50から受信したメールアドレスを、メモリ36に記憶する。ファームウェア40は、S19の処理の後、ユーザIF34を介して受付けた操作に応じて、メモリ36に記憶されたメールアドレスを、ユーザIF34に表示させることができる。
【0033】
次に、図4を用いて、ユーザが、端末10が記憶する印刷ファイルを、「メールプリント」を利用して印刷する手順を説明する。印刷ファイルは、例えば、印刷アプリケーション14により作成されたファイルである。しかしながら、文書作成アプリケーションや表作成アプリケーションなど他のアプリケーションで作成したファイルであってもよい。端末10が実行する処理は、メールプログラム15により実行される処理である。
【0034】
メールプログラム15は、ユーザによるユーザIF17を介した操作に応じて、新規作成画面をユーザIF17に表示させる。ユーザは、新規作成画面上で、印刷ファイルをメールデータに添付する操作を行うとともに、プリンタ30に記憶されたメールアドレスを宛先として入力する。これにより、S20では、メールプログラム15は、プリンタ30に記憶されたメールアドレスを宛先として、メールデータ及びメールデータに添付された印刷ファイルをサーバ50に送信する。
【0035】
サーバ50のサーバ側CPU53は、メールデータを受信すると、メールデータに添付されているファイルを適宜プリンタ30が解釈可能なファイルに変換する。そして、S21で、管理テーブルKT上でメールアドレスに関連付けられたデバイスIDを参照する。サーバ側CPU53は、S22では、管理テーブルKT上で、S20で参照されたデバイスIDに関連づけられたプリンタ30に対して、メールデータに添付された印刷ファイルを送信する。例えば、サーバ側CPU53は、XMPPプロトコルに従い、デバイスIDに関連付けられたクライアント番号を特定し、そのクライアント番号により特定されるプリンタ30に対して印刷ファイルを送信する。
【0036】
ファームウェア40は、サーバ50から印刷ファイルを受信すると、S23で、印刷ファイルをメモリ36に記憶する保存処理を行う。例えば、宛先として指定されたメールアドレスと、メールアドレスを受信した時刻とを関連付けて、印刷ファイルをメモリ36に記憶してもよい。S24では、ファームウェア40は、印刷ファイルの保存が完了したことを、サーバ50に送信する。
【0037】
S25では、ファームウェア40は、ユーザIF34を介して、ユーザによる印刷ファイルの印刷操作を受付ける。本実施形態では、ファームウェア40は、サーバ50から受信した印刷ファイルを、メールアドレスに関連付けてユーザIF34に表示させることができる。そのため、ユーザは、ユーザIF34に表示された印刷ファイルのうち、所望とするメールアドレスに関連付けられた印刷ファイルを指定して、ファームウェア40に印刷操作を行うことができる。これ以外にも、ファームウェア40は、サーバ50から印刷ファイルを受信すると、ユーザによるユーザIF34に対する操作を受付けることなく印刷ファイルを即座に印刷するものであってもよい。この場合、図4のS25の処理を省略すればよい。
【0038】
S26では、ファームウェア40は、S25で受付けた印刷操作に応じて、印刷ファイルに対する印刷処理を行う。
【0039】
次に、図5を用いて、プリンタ30に対してファクトリリセットが実行される場合に、各装置が実行する処理の手順を説明する。ファクトリリセットは、メモリ36に記憶された各種のデータを削除することにより、プリンタ30を工場出荷時の状態に戻すための処理である。ファクトリリセットの実行に先立ち、端末側CPU12は、ユーザからプリンタ30の各種設定を行うための設定画面の表示操作を、ユーザIF17を介して受付けると、端末側CPU12は、設定画面の表示要求をプリンタ30に送信する。プリンタ30のファームウェア40は、Webサーバ機能により、設定画面を表示させるためのWebページデータを、端末10に送信する。
【0040】
端末側CPU12は、Webページデータを受信すると、S30でユーザIF17に、設定画面を表示して、ファクトリリセットの実行操作を受付ける。端末側CPU12は、ユーザによるファクトリリセットの実行操作を受付けると、S31で、プリンタ30に対してファクトリリセットの実行指示を送信する。本実施形態では、S30で端末側CPU12が実行する処理が指示受付処理の一例である。
【0041】
ファームウェア40は、ファクトリリセットの実行指示を受信すると、S32で、リセット処理を実行する。図6は、S32で実行されるリセット処理の詳細を示すフローチャートであり、主体は、ファームウェア40である。
【0042】
S50では、プリンタ30に対して課金サービスを登録済みであるか否かを判断する。例えば、メモリ36に記憶された「保護フラグ」が「1」に設定されている場合、プリンタ30に対して課金サービスが登録されていると判断する。「保護フラグ」は、課金サービスの提供を受けるためにプリンタ30とサーバ50との間で常時接続が確立されている場合に、「1」に設定される情報である。これ以外にも、サーバ50に対して、現在、課金サービスに登録済みであるか否かの問合せを行い、サーバ50からの返信結果により判断を行ってもよい。
【0043】
課金サービスが登録されておらず、S50を否定判定する場合、S51に進みファクトリリセットを実行する。ファクトリリセットでは、プリンタ30とサーバ50との間で使用される認証トークンや、保護フラグ等の接続情報が削除される。一方、S51でのファクトリリセットにおいて、NVRAM37に記憶されたデバイスIDは削除されない。
【0044】
S52では、リセットフラグを「0」に設定する。リセットフラグは、ファクトリリセットが実行されたか否かを示す情報であり、「0」の場合にファクトリリセットが実行されたことを示し、「1」の場合に、ファクトリリセットが実行されていないことを示す。これにより、リセットフラグの値を参照することで、ファクトリリセットが実行されたことを判断することが可能となる。そして、図5のS33に進む。
【0045】
一方、課金サービスを登録済みである場合、S50を肯定判定して、S53に進む。この場合、ファクトリリセットは実行されない。これは、サーバ50から課金サービスの提供を受けている場合、プリンタ30とサーバ50との間の常時接続を維持するために、メモリ36には認証トークンが記憶されている。しかし、ファクトリリセットが実行され、メモリ36に記憶された認証トークンが削除されてしまうと、サーバ50とプリンタ30との間の常時接続が解除され、既に支払い済みの課金サービスを維持することができなくなる。これを回避するために、課金サービスが登録されている場合、常時接続を維持するため、ファクトリリセットを実行しない。
【0046】
S53では、リセットフラグを「1」に設定する。なお、リセットフラグが既に「1」に設定されている場合は、「1」を維持する。S53の処理を終了すると、図5のS33に進む。
【0047】
S33では、ファームウェア40は、端末10に対して通知処理を実行する。この通知処理では、ファームウェア40は、リセット処理の結果を端末10に送信する。具体的には、ファームウェア40は、リセットフラグが「0」である場合、ファクトリリセットの完了通知を端末10に送信する。一方、ファームウェア40は、リセットフラグが「1」である場合、プリンタ30に課金サービスが登録されており、ファクトリリセットを実行できないことを通知する。これにより、ユーザは、課金サービスが登録されているため、ファクトリリセットが実行できないことを認識することができる。
【0048】
以下、ファクトリリセットが実行された後に、ユーザが、プリンタ30を、「メールプリント」に再登録する場合を例に説明を行う。
【0049】
プリンタ30のファームウェア40は、プリンタ30を「メールプリント」に使用するプリンタに登録するための登録操作を、ユーザIF34を介して受付けると、S34で、ファームウェア40は、ファクトリリセットは実行済みであるか否かを判断する。具体的には、ファームウェア40は、リセットフラグを参照し、リセットフラグが「0」であれば、ファクトリリセットを実行済みであると判断する。一方、リセットフラグが「1」であれば、ファクトリリセットが未実行であると判断する。
【0050】
ファームウェア40は、リセットフラグが「1」でありS34を否定判定する場合、図5の処理を終了する。この場合、現在、NVRAM37に記憶されているデバイスIDを用いて、プリンタ30を対象とするメールプリントを継続することとなる。
【0051】
ファームウェア40は、S34を肯定判定する場合、S35に進み、NVRAM37に記憶されているデバイスIDとともに、デバイスIDの更新要求をサーバ50に送信する。更新要求は、サーバ50に対して、NVRAM37に記憶されているデバイスIDを、新たなデバイスIDに更新させるための要求である。本実施形態では、ファームウェア40が、S35で実行する処理が更新要求処理の一例である。
【0052】
サーバ50に対して、プリンタ30からデバイスIDが送信されることで、サーバ50は、更新前のデバイスIDと、後述するS36で新たに発行されるデバイスIDとが同じプリンタ30を識別する情報であることを認識することが可能となる。これにより、サーバ側CPU53は、例えば、管理テーブルKT上で、更新前のデバイスIDに関連づけられた情報を引き継ぐことで、新たに発行されたデバイスIDに関連づけて記憶させることが可能となる。
【0053】
サーバ50のサーバ側CPU53は、更新要求を受信すると、S36で、プリンタ30に対して新たなデバイスIDを発行する。S37では、S36で発行されたデバイスIDを、メールプリントのサービスID(sv1)等、管理テーブルKTの各情報に関連づけて登録する。
【0054】
S38では、新たに発行されたデバイスIDを、プリンタ30に送信する。プリンタ30のファームウェア40は、デバイスIDを受信すると、S39で、既にNVRAM37に記憶されているデバイスIDを、受信されたデバイスIDに上書きすることで、デバイスIDを更新する。これにより、プリンタ30は、更新後のデバイスIDにより、サーバ50により認識されることとなる。本実施形態では、ファームウェア40がS39で実行する処理が記憶処理の一例である。なお、その後、図3で示した、S15~S19の処理が実行されることで、プリンタ30をメールプリントで使用するプリンタとして設定することができる。
【0055】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
コントローラ35は、ファクトリリセットの実行指示を受付けた場合に、メモリ36からデバイスID以外の情報を削除する。コントローラ35は、サーバ50に対して、プリンタ30をメールプリントで使用するプリンタに再登録する場合に、サーバ50に対してデバイスIDの更新を要求し、サーバ50により更新されたデバイスIDをNVRAM37に記憶する。これにより、ファクトリリセットを行った後において、プリンタ30の再登録が行われるまでは、デバイスIDが保持される。一方、プリンタ30の再登録が行われた後は、デバイスIDが更新されるため、プリンタ30に対して同じデバイスIDが継続して使用される場合と比べて、セキュリティーの低下を抑制することができる。
【0056】
プリンタ30のファームウェア40は、サーバ50に対してデバイスIDの更新を要求すると共に、NVRAM37に記憶されているデバイスIDをサーバ50に送信する。これにより、例えば、サーバ50は、プリンタ30から送信された更新前のデバイスIDに関連付けられたデータを引き継ぐことで、更新後のデバイスIDに関連づける情報を管理テーブルKTに容易に記憶させることができる。
【0057】
ファームウェア40は、デバイスIDの更新指示により、サーバ50に、プリンタ30の新たなデバイスIDを作成させ、サーバ50により作成された新たなデバイスIDを、更新後のデバイスIDとしてNVRAM37に記憶する。これにより、サーバ50により作成されたデバイスIDを用いて、プリンタ30に対して、新たなデバイスIDを再設定することができる。
【0058】
ファームウェア40は、ファクトリリセットの実行操作を受付けた場合に、プリンタ30に対して課金サービスの提供が登録されていれば、メモリ36に記憶された情報を削除しない。一方、ファクトリリセットの実行操作を受付けた場合に、プリンタ30に対して課金サービスの提供が登録されていなければ、メモリ36に記憶されたデバイスID以外の情報を削除する。これにより、不用意にメモリ36に記憶された情報が削除されたことに伴う、他のサービスへの悪影響を防止することができる。
【0059】
ファームウェア40は、ファクトリリセットの実行操作を受付けた場合に、プリンタ30に対して課金サービスの提供が登録されていれば、課金サービスが登録されていることを通知する。これにより、課金サービスの提供が登録されている場合に、その旨が通知されるため、ユーザは、ファクトリリセットが実行されない理由を認識することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第2実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0061】
本実施形態では、プリンタ30に対するファクトリリセットが実行された後において、ファームウェア40が新たなデバイスIDを作成する。図7を用いて、本実施形態に係るプリンタ30に対してファクトリリセットが実行された場合に、各装置が実行する処理の手順を説明する。本実施形態においても、S31で、端末10からプリンタ30にファクトリリセットの実行指示が送信された場合に、S32でリセット処理が実行される。そして、S32でのリセット処理の後、ユーザが、端末10を操作してプリンタ30をメールプリントで使用するプリンタに登録する操作を行ったものとする。
【0062】
S34で、プリンタ30のファームウェア40は、ファクトリリセットが実行済みであるか否かを判断する。S34を肯定判定すると、ファームウェア40は、S60において、自装置における新たなデバイスIDを作成する。S60で作成されるデバイスIDは、NVRAM37に記憶されているデバイスIDと異なる値である。S61では、デバイスIDの更新要求と共に、NVRAM37に記憶されている旧デバイスIDと、S60で作成された新たなデバイスIDとをサーバ50に送信する。
【0063】
サーバ50のサーバ側CPU53は、プリンタ30からの更新要求を受信すると、S62で、プリンタ30から受信した新たなデバイスIDを登録する。S62の処理は、図5のS37の処理と同様である。S63では、サーバ側CPU53は、デバイスIDを更新したことを、プリンタ30に通知する。S39では、ファームウェア40は、NVRAM37に記憶されている旧デバイスIDを、S60で作成されたデバイスIDに上書きすることで、デバイスIDを更新する。
【0064】
以上説明した本実施形態では、プリンタ30でデバイスIDを作成する場合においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述した各実施形態では、識別情報として、デバイスIDを用いた。これ以外にも、デバイスIDに代えて、ユーザを固有に識別するユーザID等を用いてもよい。
【0066】
ファームウェア40は、図5のS35において、デバイスIDの更新要求を行う場合に、デバイスIDを送信しなくともよい。この場合において、S35において、デバイスIDの送信に代えて、プリンタ30を特定可能な認証トークンをサーバ50に送信するものであってもよい。そして、サーバ50のサーバ側CPU53は、認証トークンを用いて、プリンタ30によりデバイスIDの更新要求が行われたことを判断すればよい。
【0067】
サーバが提供可能なサービスは、メールプリントに限定されず、プリンタを使用するサービスであれば、どのようなサービスであってもよい。
【0068】
通信装置を、プリンタ30として説明したことは一例であり、通信装置は、プリント処理の他、スキャン処理を実行可能な複合機であってもよい。この場合、サーバが提供可能なサービスは、スキャン処理を使用するサービスであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…端末、30…プリンタ、32…通信IF、34…ユーザIF、35…コントローラ、36…メモリ、50…サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7