IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

特許7589601洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/36 20060101AFI20241119BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
E03D1/36
E03D5/10
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021040151
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022043975
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020149223
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】志牟田 晃大
(72)【発明者】
【氏名】北浦 秀和
(72)【発明者】
【氏名】林 信宏
(72)【発明者】
【氏名】黒石 正宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】畑間 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 隆
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2744262(US,A)
【文献】特開2009-257061(JP,A)
【文献】実開平3-80169(JP,U)
【文献】実開平4-30393(JP,U)
【文献】特開2021-85272(JP,A)
【文献】特開2002-201691(JP,A)
【文献】特開2011-74618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0150038(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107345584(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 - 7/00
E03D 11/00 -13/00
E03C 1/266
F16K 17/00 -17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置であって、
上記水洗便器に供給すべき洗浄水を貯留すると共に、貯留した洗浄水を上記水洗便器へ排出するための排水口が形成された貯水タンクと、
上記排水口を開閉し、上記水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う排水弁と、
供給された水の給水圧を利用して、上記排水弁を駆動する排水弁水圧駆動部と、
この排水弁水圧駆動部の上流側に設けられ、上流側から供給された水を、下流側の上記排水弁水圧駆動部に供給する排水/真空破壊弁装置と、を有し、
上記排水弁水圧駆動部は、
上記排水/真空破壊弁装置を通って供給された水が流入するシリンダと、
このシリンダ内に摺動可能に配置され、上記シリンダに流入した水の圧力により移動され、上記排水弁を移動させるピストンと、を有し、
上記排水/真空破壊弁装置は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放すると同時に、上記排水弁水圧駆動部から逆流した水を排水するように作動する弁体を備え
上記排水/真空破壊弁装置は、供給された水を流入させる流入口、流入した水を上記排水弁水圧駆動部に供給する流出口、及び上記弁体によって開閉される吸気/排水開口を備え、上記流入口は上記流出口よりも上方に設けられており、上記吸気/排水開口は、鉛直面又は傾斜面に形成されていることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記排水/真空破壊弁装置の上記吸気/排水開口の面積は、上記排水/真空破壊弁装置の上記流出口の面積よりも大きい請求項記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
上記排水/真空破壊弁装置の上記吸気/排水開口は、水平方向よりも鉛直方向に長く形成されている請求項1又は2に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
上記排水/真空破壊弁装置の上記弁体は、所定の中心軸線を中心に回動可能に設けられ、回動されることにより上記吸気/排水開口を開閉する請求項1乃至3の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
上記所定の中心軸線は、上記吸気/排水開口の垂直投影面の外側に配置されている請求項記載の洗浄水タンク装置。
【請求項6】
上記吸気/排水開口は、その下縁が水平方向に延びるように形成され、上記排水弁水圧駆動部から上記排水/真空破壊弁装置へ逆流した水は、上記下縁を越えて上記貯水タンク内に排出される請求項1乃至5の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項7】
上記吸気/排水開口は、その上縁が水平方向に延びるように形成されている請求項記載の洗浄水タンク装置。
【請求項8】
上記弁体は、上記排水/真空破壊弁装置に水が供給されていない状態において、上記弁体の重心位置が最も低下した待機姿勢になる請求項1乃至7の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項9】
上記弁体は、錘を備えている請求項記載の洗浄水タンク装置。
【請求項10】
上記排水/真空破壊弁装置は付勢ばねを備え、この付勢ばねは、上記吸気/排水開口を開放する方向に上記弁体を付勢する請求項1乃至9の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項11】
上記付勢ばねは、変形量が大きくなるほど、変形量の増分に対する付勢力の増分が増加するように構成されている請求項10記載の洗浄水タンク装置。
【請求項12】
上記付勢ばねは、上記吸気/排水開口が所定量以上開放された状態では、上記弁体に付勢力を作用させないように構成されている請求項10記載の洗浄水タンク装置。
【請求項13】
さらに、上記排水弁水圧駆動部から上記排水/真空破壊弁装置へ逆流する水の流量を抑制する流量抑制手段を有する請求項1乃至12の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項14】
水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置であって、
上記水洗便器に供給すべき洗浄水を貯留すると共に、貯留した洗浄水を上記水洗便器へ排出するための排水口が形成された貯水タンクと、
上記排水口を開閉し、上記水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う排水弁と、
供給された水の給水圧を利用して、上記排水弁を駆動する排水弁水圧駆動部と、
この排水弁水圧駆動部の上流側に設けられ、上流側から供給された水を、下流側の上記排水弁水圧駆動部に供給する排水/真空破壊弁装置と、を有し、
上記排水弁水圧駆動部は、
上記排水/真空破壊弁装置を通って供給された水が流入するシリンダと、
このシリンダ内に摺動可能に配置され、上記シリンダに流入した水の圧力により移動され、上記排水弁を移動させるピストンと、
供給された水の流れにより回転される水車、及びこの水車の回転により電力を生成する発電部を備えた発電機と、
この発電機によって生成された電力により作動する電磁弁を備え、上記排水/真空破壊弁装置への給水、停止を制御する給水制御装置と、を有し、
上記排水/真空破壊弁装置は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放すると同時に、上記排水弁水圧駆動部から逆流した水を排水するように作動する弁体を備え、
上記排水弁水圧駆動部は、平面視において上記排水弁の少なくとも一部を取り囲むように配置された外郭部を備え、上記発電機は、上記貯水タンク内の止水水位よりも上方に配置されると共に、平面視の左右方向において、上記排水/真空破壊弁装置から排水された水が上記貯水タンク内の水面に着水する着水位置に対して上記外郭部を挟んで逆側に配置されている洗浄水タンク装置。
【請求項15】
上記発電機は、上記貯水タンク内を平面視で左右方向に左側領域、中央領域、及び、右側領域に三等分した場合において、上記着水位置が属する領域とは異なる領域内に配置されている請求項14記載の洗浄水タンク装置。
【請求項16】
上記着水位置は、平面視において、上記貯水タンク内における上記左側領域又は上記右側領域のいずれか一方に位置し、上記発電機は、平面視において、上記貯水タンク内における上記左側領域又は上記右側領域のいずれか他方に配置されている請求項15記載の洗浄水タンク装置。
【請求項17】
上記発電機は、上記着水位置に対して、前後方向において上記排水弁水圧駆動部の外郭部を挟んで逆側に配置されている請求項14乃至16の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項18】
上記排水弁水圧駆動部の上記シリンダは、上記外郭部の上方に設けられている請求項14乃至17の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項19】
水洗便器装置であって、
請求項1乃至18の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置と、
この洗浄水タンク装置から供給される洗浄水により洗浄される上記水洗便器と、
を有することを特徴とする水洗便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置に関し、特に、水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-257061号公報(特許文献1)には、ロータンク装置が記載されている。このロータンク装置においては、排水弁を備えたロータンクの内部に、ピストンと水抜き部を有する水圧シリンダ装置が配置され、ピストンと排水弁が連結部により連結されている。また、ロータンク内の洗浄水を排出する際には、電磁弁を開弁することにより、水圧シリンダ装置に水を供給して、ピストンを押し上げる。ピストンは連結部により排水弁に接続されているため、ピストンの移動により排水弁が引き上げられて、排水弁が開弁され、ロータンク内の洗浄水が排出される。なお、水圧シリンダ装置に供給された水は、水抜き部から流出して、ロータンク内に流入する。
【0003】
さらに、排水弁を閉弁させる場合には、電磁弁を閉弁させることにより、水圧シリンダ装置への水の供給を停止させる。これにより、押し上げられていたピストンが下降し、これに伴って排水弁は自重により閉弁位置に復帰する。この際、水圧シリンダ装置内の水は水抜き部から少しずつ流出するため、ピストンはゆっくりと下降し、排水弁も緩やかに閉弁位置に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-257061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のロータンク装置においては、水圧シリンダ装置のピストンが元の位置に復帰するまでの時間が長く、1回の便器洗浄の後、次の便器洗浄が可能になるまでに時間を要するという問題がある。即ち、特許文献1記載のロータンク装置においては、水圧シリンダ装置のシリンダに水が流入することにより、ピストンが押し上げられ、排水弁が引き上げられる。排水弁が引き上げられた後、シリンダ内に流入した水は、ピストンに取り付けられたロッド部とシリンダに設けられた貫通孔との間の隙間(水抜き部)から流出し、ピストンが低下して元の位置に復帰する。このロッド部と貫通孔との間の隙間は狭いため、シリンダ内の水が排出されるのに比較的長い時間を要する。また、この隙間を大きくするとシリンダ内の圧力が上昇しにくく、便器洗浄時にピストンを押し上げることが困難となるため、単純に隙間を大きく設定することはできない。
【0006】
また、特許文献1には、水圧シリンダ装置のシリンダに排水管を接続し、この排水管に排水管電磁弁を設けておくことにより、シリンダ内の水を排出するロータンク装置も記載されている。このロータンク装置によれば、排水弁が引き上げられた後、排水管電磁弁を開弁させることにより、シリンダ内の水を、排水管を介して早急に排出することができる。しかしながら、このタイプのロータンク装置では、シリンダ内の水を排出するために専用の電磁弁が必要となり、装置の構造が複雑化すると共に、水圧シリンダ装置が大型化するという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、供給された水圧を利用して排水弁の開弁を行いながら、単純な機構で水圧シリンダ装置(排水弁水圧駆動部)内の水を迅速に排出し、短時間で次回の便器洗浄が実行可能な状態に復帰することができる洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置であって、水洗便器に供給すべき洗浄水を貯留すると共に、貯留した洗浄水を水洗便器へ排出するための排水口が形成された貯水タンクと、排水口を開閉し、水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う排水弁と、供給された水の給水圧を利用して、排水弁を駆動する排水弁水圧駆動部と、この排水弁水圧駆動部の上流側に設けられ、上流側から供給された水を、下流側の排水弁水圧駆動部に供給する排水/真空破壊弁装置と、を有し、排水弁水圧駆動部は、排水/真空破壊弁装置を通って供給された水が流入するシリンダと、このシリンダ内に摺動可能に配置され、シリンダに流入した水の圧力により移動され、排水弁を移動させるピストンと、を有し、排水/真空破壊弁装置は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放すると同時に、排水弁水圧駆動部から逆流した水を排水するように作動する弁体を備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、排水弁水圧駆動部が、供給された水の給水圧を利用して排水弁を駆動し、貯水タンクの排水口を開弁させ、貯留された洗浄水が水洗便器へ排出される。排水弁水圧駆動部の上流側には、排水/真空破壊弁装置が設けられ、この排水/真空破壊弁装置は、上流側から供給された水を下流側の排水弁水圧駆動部に供給する。排水弁水圧駆動部は、シリンダ及びピストンを有し、排水/真空破壊弁装置を通って供給された水がシリンダに流入すると、シリンダ内に摺動可能に配置されたピストンが流入した水の圧力により移動され、排水弁を移動させる。排水/真空破壊弁装置は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放すると同時に、排水弁水圧駆動部から逆流した水を排水する。
【0010】
このように構成された本発明によれば、上流側からの水の供給が停止されると、排水/真空破壊弁装置が排水弁水圧駆動部から逆流した水を排水するので、簡単な機構で排水弁水圧駆動部のシリンダに流入した水を排出することができる。これにより、ピストンを早期に初期位置に復帰させることができ、短時間で次回の便器洗浄が実行可能な状態に復帰することができる。また、上記のように構成された本発明によれば、排水/真空破壊弁装置は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放するので、排水/真空破壊弁装置の上流側が負圧になった場合には、大気が吸入され、上流側に水が逆流するのを防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、排水/真空破壊弁装置は、供給された水を流入させる流入口、流入した水を排水弁水圧駆動部に供給する流出口、及び弁体によって開閉される吸気/排水開口を備え、流入口は流出口よりも上方に設けられており、吸気/排水開口は、鉛直面又は傾斜面に形成されている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、流入口が流出口よりも上方に設けられているので、排水弁水圧駆動部から流出口に逆流した水が、流入口に逆流するのを確実に防止することができる。また、弁体によって開閉される吸気/排水開口が、鉛直面又は傾斜面に形成されているので、排水弁水圧駆動部から流出口に逆流した水を吸気/排水開口の下部から排出すると同時に、吸気/排水開口の上部から大気を吸入することができ、排水と吸気を同時に行うことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、排水/真空破壊弁装置の吸気/排水開口の面積は、排水/真空破壊弁装置の流出口の面積よりも大きい。
このように構成された本発明によれば、吸気/排水開口の面積が排水/真空破壊弁装置の流出口の面積よりも大きいので、排水弁水圧駆動部から流出口に逆流した水を排水しながら、大気の吸入も確実に実行することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、排水/真空破壊弁装置の吸気/排水開口は、水平方向よりも鉛直方向に長く形成されている。
このように構成された本発明によれば、吸気/排水開口が水平方向よりも鉛直方向に長く形成されているので、小さな開口面積で、逆流した水の排水と、大気の吸入を確実に実行することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、排水/真空破壊弁装置の弁体は、所定の中心軸線を中心に回動可能に設けられ、回動されることにより吸気/排水開口を開閉する。
このように構成された本発明によれば、排水/真空破壊弁装置の弁体が、回動されることにより吸気/排水開口を開閉するので、吸気/排水開口の開閉機構をコンパクトに構成することができ、排水/真空破壊弁装置の設計の自由度を拡大することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、弁体が回動される所定の中心軸線は、吸気/排水開口の垂直投影面の外側に配置されている。
このように構成された本発明によれば、弁体が回動される中心軸線が吸気/排水開口の垂直投影面の外側に配置されているので、吸気/排水開口の縁部と弁体の間をシールするためのパッキンを設けた場合において、パッキンの潰し代を確実に確保することができ、吸気/排水開口を確実に閉塞させることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、吸気/排水開口は、その下縁が水平方向に延びるように形成され、排水弁水圧駆動部から排水/真空破壊弁装置へ逆流した水は、下縁を越えて貯水タンク内に排出される。
【0018】
このように構成された本発明によれば、吸気/排水開口の下縁が水平方向に延びており、逆流した水が、この下縁を越えて貯水タンク内に排出されるので、下縁を越えて流れる排水の流路面積を大きく確保することができ、排水/真空破壊弁装置内の水位上昇を抑制することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、吸気/排水開口は、その上縁が水平方向に延びるように形成されている。
このように構成された本発明によれば、吸気/排水開口の上縁が水平方向に延びているので、吸気/排水開口から水を排出している状態においても、吸気/排水開口を通して外気を吸入する流路面積を大きく確保することができ、大気を確実に吸入することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、弁体は、排水/真空破壊弁装置に水が供給されていない状態において、弁体の重心位置が最も低下した待機姿勢になる。
このように構成された本発明によれば、排水/真空破壊弁装置に水が供給されていない状態において、弁体は、重心位置が最も低下した待機姿勢になるので、単純な構造で、自重により弁体を待機姿勢に戻すことができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、弁体は、錘を備えている。
このように構成された本発明によれば、弁体が錘を備えているので、弁体に働く重力を大きくすることができ、単純な構造で弁体を確実に待機姿勢に復帰させることができる。
【0022】
本発明において、好ましくは、排水/真空破壊弁装置は付勢ばねを備え、この付勢ばねは、吸気/排水開口を開放する方向に弁体を付勢する。
このように構成された本発明によれば、弁体を、吸気/排水開口を開放する方向に付勢する付勢ばねを備えているので、排水/真空破壊弁装置への水の供給が停止されたとき、確実に吸気/排水開口を開放することができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、付勢ばねは、変形量が大きくなるほど、変形量の増分に対する付勢力の増分が増加するように構成されている。
まず、吸気/排水開口が閉塞された状態においては弁体に静水圧が作用するため、これを開放させるために大きな力が必要である一方、吸気/排水開口が少しでも開放された状態では弁体に静水圧が作用しなくなるため、小さな力で弁体を移動させることができる。上記のように構成された本発明によれば、変形量が大きくなるほど、変形量の増分に対する付勢力の増分が増加するように付勢ばねが構成されているので、吸気/排水開口が閉塞され、付勢ばねが最も大きく変形されている状態で、弁体を開放させる方向の付勢力が最も大きくなる。このため、排水/真空破壊弁装置への水の供給が停止されたとき、容易に弁体を開放させることができる。一方、付勢ばねの変形量が小さい領域では、付勢力が小さくなるため、排水/真空破壊弁装置への給水が開始されたとき、容易に弁体を移動させ閉塞させることができる。
【0024】
本発明において、好ましくは、付勢ばねは、吸気/排水開口が所定量以上開放された状態では、弁体に付勢力を作用させないように構成されている。
このように構成された本発明によれば、吸気/排水開口が所定量以上開放された状態では、弁体に付勢力が作用しないので、排水/真空破壊弁装置への給水が開始されたとき、容易に弁体を移動させ閉塞させることができる。一方、吸気/排水開口の開度が所定量未満の場合には、弁体に付勢力が作用するため、排水/真空破壊弁装置への水の供給が停止されたとき、容易に弁体を開放させることができる。
【0025】
本発明において、好ましくは、さらに、排水弁水圧駆動部から排水/真空破壊弁装置へ逆流する水の流量を抑制する流量抑制手段を有する。
このように構成された本発明によれば、流量抑制手段により、排水/真空破壊弁装置へ逆流する水の流量が抑制されるので、排水弁水圧駆動部から大流量の水が逆流して、吸気/排水開口が満水となり、外気が吸入できなくなるのを防止することができる。
【0026】
本発明において、好ましくは、さらに、供給された水の流れにより回転される水車、及びこの水車の回転により電力を生成する発電部を備えた発電機と、この発電機によって生成された電力により作動する電磁弁を備え、排水/真空破壊弁装置への給水、停止を制御する給水制御装置と、を有し、排水弁水圧駆動部は、平面視において排水弁の少なくとも一部を取り囲むように配置された外郭部を備え、発電機は、貯水タンク内の止水水位よりも上方に配置されると共に、平面視の左右方向において、排水/真空破壊弁装置から排水された水が貯水タンク内の水面に着水する着水位置に対して外郭部を挟んで逆側に配置されている。
【0027】
このように構成された本発明においては、発電機が、貯水タンク内の止水水位よりも上方に配置されていると共に、平面視の左右方向において、排水/真空破壊弁装置から排出された水が貯水タンク内の水面に着水する着水位置に対して外郭部を挟んで逆側に配置されている。この結果、排水/真空破壊弁装置から流出した水が貯水タンク内の水面に着水することにより飛散した水が外郭部によって阻まれるため、発電機の被水を抑制することができる。
【0028】
本発明において、好ましくは、発電機は、貯水タンク内を平面視で左右方向に左側領域、中央領域、及び、右側領域に三等分した場合において、着水位置が属する領域とは異なる領域内に配置されている。
【0029】
このように構成された本発明においては、平面視における左側領域、中央領域、及び、右側領域のうち、着水位置が属する領域とは異なる領域内に発電機が配置されているので、着水位置と発電機との間の距離を比較的大きく確保することができる。これにより、排水/真空破壊弁装置から流出した水が貯水タンク内の水面に着水し、飛散した水が発電機にかかるのを効果的に抑制することができる。
【0030】
本発明において、好ましくは、着水位置は、平面視において、貯水タンク内における左側領域又は右側領域のいずれか一方に位置し、発電機は、平面視において、貯水タンク内における左側領域又は右側領域のいずれか他方に配置されている。
【0031】
このように構成された本発明においては、排水/真空破壊弁装置から流出した水の着水位置が、貯水タンク内の左側領域又は右側領域の一方に位置するのに対し、発電機は、左側領域又は右側領域の他方に配置されている。このため、貯水タンク内の着水位置と発電機の間の距離を比較的大きく確保することができ、排水/真空破壊弁装置から流出した水が貯水タンク内の水面に着水し、飛散した水が発電機にかかるのを効果的に抑制することができる。
【0032】
本発明において、好ましくは、発電機は、着水位置に対して、前後方向において排水弁水圧駆動部の外郭部を挟んで逆側に配置されている。
【0033】
このように構成された本発明においては、発電機が、排水/真空破壊弁装置から流出した水の着水位置に対し、前後方向において外郭部を挟んで逆側に配置されているので、排水/真空破壊弁装置から流出した水が着水位置に着水して飛散した水を外郭部によって阻むことができ、発電機の被水を効果的に抑制することができる。
【0034】
本発明において、好ましくは、排水弁水圧駆動部のシリンダは、外郭部の上方に設けられている。
【0035】
このように構成された本発明においては、排水弁水圧駆動部のシリンダが外郭部の上方に設けられているので、排水/真空破壊弁装置から流出した水が着水位置に着水して飛散した水をシリンダによっても阻むことができ、発電機の被水をより効果的に抑制することができる。
【0036】
また、本発明は、水洗便器装置であって、本発明の洗浄水タンク装置と、この洗浄水タンク装置から供給される洗浄水により洗浄される水洗便器と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、供給された水圧を利用して排水弁の開弁を行いながら、単純な機構で排水弁水圧駆動部内の水を迅速に排出し、短時間で次回の便器洗浄が実行可能な状態に復帰することができる洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗便器装置全体を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられた排水弁水圧駆動部及び排水弁の断面図であり、排水弁水圧駆動部のピストンが下降した第1の位置にある状態を示す。
図4】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられた排水弁水圧駆動部及び排水弁の断面図であり、排水弁水圧駆動部のピストンが上昇した第2の位置にある状態を示す。
図5】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられた排水弁水圧駆動部及び排水弁の断面図であり、排水弁が排水弁フロート機構によって保持されている状態を示す。
図6】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置において、クラッチ機構を構成する部品を分解して示す分解斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置において、排水弁が閉弁されているときのクラッチ機構の状態を示す部分拡大断面図である。
図8】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置において、連結解除時におけるクラッチ機構の状態を示す部分拡大断面図である。
図9】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置において、連結直前におけるクラッチ機構の状態を示す部分拡大断面図である。
図10】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置において、クラッチ機構を連結させる際の状態を示す部分拡大断面図である。
図11】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の斜視図である。
図12】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の断面図であり、給水制御装置からの給水が行われていない状態を示している。
図13】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の断面図であり、給水制御装置からの給水が行われている状態を示している。
図14】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置のフラップ弁体に、各作動状況において作用する力を説明するための図である。
図15】本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の斜視図である。
図16】本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の断面図であり、給水制御装置からの給水が行われていない状態を示している。
図17】本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の断面図であり、給水制御装置からの給水が行われている状態を示している。
図18】本発明の第3実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の斜視図である。
図19】本発明の第3実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置のケースの一部を破断して示した斜視図である。
図20】本発明の第3実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置のケースの一部を破断して示した斜視図である。
図21】本発明の第3実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の水平断面図である。
図22】本発明の第4実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す正面断面図である。
図23】本発明の第4実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す平面断面図である。
図24】通常の負圧破壊弁の典型的な構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による洗浄水タンク装置及びそれを備えた水洗便器装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗便器装置全体を示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。図3乃至図5は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置に備えられた排水弁水圧駆動部及び排水弁の断面図である。
【0040】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗便器装置1は、水洗便器である水洗便器本体2と、この水洗便器本体2の後部に載置された、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置4から構成されている。本実施形態の水洗便器装置1は、使用後に、壁面に取り付けられたリモコン装置6を操作するか、便座に設けられた人体検知センサである人感センサ8が使用者の離座を検知した後、所定時間経過することにより、水洗便器本体2のボウル部2aの洗浄が行われるように構成されている。本実施形態による洗浄水タンク装置4は、リモコン装置6又は人感センサ8からの指示信号に基づいて、内部に貯留されている洗浄水を水洗便器本体2に排出し、この洗浄水によりボウル部2aを洗浄するように構成されている。なお、本実施形態では人感センサ8は便座に設けられているが、本発明はこの形態に限るものではなく、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できる位置に設けられていればよく、例えば、水洗便器本体2や洗浄水タンク装置4に設けることもできる。また、人感センサ8は、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できるものであればよく、例えば、赤外線センサやマイクロ波センサを人感センサ8として使用することができる。
【0041】
次に、図2に示すように、洗浄水タンク装置4は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留する貯水タンク10と、この貯水タンク10に設けられた排水口10aを開閉するための排水弁12と、この排水弁12を駆動する排水弁水圧駆動部14と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置4は、排水弁水圧駆動部14及び貯水タンク10内への給水を制御する給水制御装置18と、給水制御装置18に取り付けられた電磁弁20と、を貯水タンク10の内部に有する。
【0042】
貯水タンク10は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗便器本体2へ排出するための排水口10aが形成されている。また、貯水タンク10内において、排水口10aの下流側にはオーバーフロー管10bが接続されている。このオーバーフロー管10bは、排水口10aの近傍から垂直に立ち上がり、貯水タンク10内に貯留されている洗浄水の水面よりも上方まで延びている。従って、オーバーフロー管10bの上端から流入した洗浄水は、排水口10aをバイパスして、水洗便器本体2へ直接流出する。
【0043】
さらに、図2に示すように、給水制御装置18と排水弁水圧駆動部14の間の流入管24aには、排水/真空破壊弁装置30が設けられている。
給水制御装置18からの給水が停止された場合には、排水/真空破壊弁装置30により、流入管24aに外気が吸引されると共に、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14a内等に残留した水が流入管24aから貯水タンク10内に排出される。なお、排水/真空破壊弁装置30の構造、及び作用については後述する。
【0044】
また、図2に示すように、給水制御装置18は、電磁弁20の作動に基づいて排水弁水圧駆動部14への給水を制御すると共に、貯水タンク10への給水、停止を制御するように構成されている。即ち、給水制御装置18は、水道に接続された給水管32と、排水弁水圧駆動部14に接続された流入管24aとの間に接続されており、コントローラ28からの指示信号に基づいて、給水管32から供給された水の、排水弁水圧駆動部14への供給、停止を制御する。本実施形態においては、給水制御装置18から流出した水は、全量が流入管24aを通って排水弁水圧駆動部14に供給される。また、排水弁水圧駆動部14に供給された水の多くは、流出管24bを通ってシリンダ14aから流出し、流出管分岐部24cにおいて貯水タンク10に流入する部分と、オーバーフロー管10bを介して水洗便器本体2に流入する部分に分岐される。
【0045】
さらに、排水/真空破壊弁装置30と排水弁水圧駆動部14の間の、流入管24aの途中には、流量抑制手段であるオリフィス24dが設けられている。オリフィス24dは、流入管24aの内部に設けられた絞り部であり、上流側から下流側に向けて流路断面積が漸減するように構成されている。オリフィス24dは、流入管24a内を流れる水の流量を抑制するように構成され、特に、排水弁水圧駆動部14から排水/真空破壊弁装置30へ逆流する水の流量を抑制するように構成されている。
【0046】
一方、水道から供給された水は、貯水タンク10の外側に配置された止水栓32a、この止水栓32aの下流側の、貯水タンク10の中に配置された定流量弁32bを介して給水制御装置18に供給される。止水栓32aは、メンテナンス時等に洗浄水タンク装置4への水の供給を停止させるために設けられており、通常は開栓された状態で使用される。定流量弁32bは、水道から供給された水を、所定流量で給水制御装置18に流入させるために設けられており、水洗便器装置1の設置環境に関わらず一定流量の水が給水制御装置18に供給されるように構成されている。
【0047】
また、給水制御装置18には電磁弁20が取り付けられており、この電磁弁20の作動に基づいて、給水制御装置18から排水弁水圧駆動部14への給水が制御される。具体的には、リモコン装置6や人感センサ8からの信号をコントローラ28が受信し、コントローラ28は電磁弁20に電気信号を送り、これを作動させる。
【0048】
さらに、給水制御装置18には、給水弁フロート34も接続されており、貯水タンク10内の水位を所定の止水水位L1に設定するように構成されている。給水弁フロート34は貯水タンク10内に配置されており、貯水タンク10の水位上昇と共に上昇して、水位が所定の止水水位L1まで上昇すると、給水制御装置18から排水弁水圧駆動部14への給水を停止させるように構成されている。
【0049】
給水制御装置18は、給水管32及び流入管24aが接続された本体部36と、この本体部36の中に配置された主弁体38と、この主弁体38が着座する弁座40と、給水弁フロート34によって回動されるアーム部42と、このアーム部42の回動によって移動されるフロート側パイロット弁44と、電磁弁側パイロット弁50と、を有する。
【0050】
本体部36は、下部に給水管32の接続部、一側に排水/真空破壊弁装置30の接続部が設けられた部材であり、排水/真空破壊弁装置30の反対側の側面には、電磁弁20が取り付けられるように構成されている。また、本体部36の内部には、弁座40が形成されており、この弁座40は、排水/真空破壊弁装置30に連通するようになっている。さらに、本体部36の内部には、弁座40を開閉するように主弁体38が配置されており、開弁時においては、給水管32から流入した水道水が、弁座40を通って、排水/真空破壊弁装置30に流出するように構成されている。
【0051】
主弁体38は、概ね円板状のダイヤフラム式の弁体であり、弁座40に対して着座、離座できるように、本体部36の中に取り付けられている。また、本体部36内には、主弁体38に対して、弁座40の反対側に、圧力室36aが形成されている。即ち、圧力室36aは、本体部36の内壁面と主弁体38によって画定され、この圧力室36a内の圧力が高くなると、この圧力によって主弁体38が弁座40に押しつけられて、弁座40に着座する。
【0052】
一方、電磁弁20は、本体部36に取り付けられており、電磁弁側パイロット弁50を進退させることができるように構成されている。即ち、電磁弁側パイロット弁50は、圧力室36aに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉させるように構成されている。また、フロート側パイロット弁44は、圧力室36aに設けられたフロート側パイロット弁口(図示せず)を開閉させるように構成されている。
【0053】
一方、給水弁フロート34はアーム部42によって支持されており、このアーム部42にはフロート側パイロット弁44が連結されている。そして、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L1まで上昇している状態では給水弁フロート34が上方に押し上げられ、これに伴いフロート側パイロット弁44が、圧力室36aのフロート側パイロット弁口(図示せず)を閉弁させている。一方、貯水タンク10内の洗浄水が排水され、貯水タンク10内の水位が低下すると、給水弁フロート34が下方に下がり、フロート側パイロット弁44が移動して、フロート側パイロット弁口が開弁される。
【0054】
この構成により、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L1にあり、電磁弁20に通電されていない、便器洗浄の待機時においては、主弁体38のパイロット弁口(図示せず)、及び本体部36のフロート側パイロット弁口(図示せず)は、共に閉弁状態となっている。
【0055】
また、給水管32から供給された水道水は圧力室36a内に流入する。ここで、電磁弁側パイロット弁50がパイロット弁口(図示せず)を閉弁させ、且つフロート側パイロット弁44がフロート側パイロット弁口(図示せず)を閉弁させている状態では、流入した水道水により圧力室36a内の圧力が上昇する。このように圧力室36a内の圧力が上昇すると、この圧力により主弁体38が弁座40に向けて押圧され、主弁体38により弁座40が閉弁される。
【0056】
一方、電磁弁20に通電が行われ、電磁弁側パイロット弁50がパイロット弁口(図示せず)を開弁させると、圧力室36a内の圧力が低下し、これにより主弁体38が弁座40から引き離され、弁座40が開弁される。また、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L1よりも低下している状態においては、給水弁フロート34が下がり、フロート側パイロット弁44がフロート側パイロット弁口(図示せず)を開弁させる。これにより、圧力室36a内の圧力が低下し、弁座40が開弁される。このように、主弁体38のパイロット弁口又はフロート側パイロット弁口の何れか一方でも開弁されている状態では、圧力室36a内の圧力が低下し、弁座40は開弁される。
【0057】
次に、図3乃至図5を参照して、排水弁水圧駆動部及び排水弁の構造を説明する。図3は排水弁水圧駆動部14及び排水弁12の断面図であり、排水弁水圧駆動部14のピストンが下降した第1の位置にある状態を示す。図4は排水弁水圧駆動部14及び排水弁12の断面図であり、排水弁水圧駆動部14のピストンが上昇した第2の位置にある状態を示す。図5は、排水弁水圧駆動部14及び排水弁12の断面図であり、排水弁12が排水弁フロート機構によって保持されている状態を示す。
【0058】
図3及び図4に示すように、排水弁12は、排水口10aを開閉するように配置された直動式の弁体であり、棒状の弁軸12aと、その下端に取り付けられた弁体部12bから構成されている。この排水弁12が鉛直方向に引き上げられることにより、排水口10aが開弁され、貯水タンク10内の洗浄水が水洗便器本体2に排出されて、ボウル部2aが洗浄される。
【0059】
排水弁水圧駆動部14は、排水弁12の上方に設けられ、水道から供給された洗浄水の給水圧を利用して、排水弁12を駆動するように構成されている。具体的には、排水弁水圧駆動部14は、給水制御装置18(図2)から流入管24aを介して供給された水が流入するシリンダ14aと、このシリンダ14a内に摺動可能に配置されたピストン14bと、を有する。さらに、ピストン14bの下面には、駆動部材であるロッド15が取り付けられ、このロッド15は、シリンダ14aの下端から突出して排水弁12に向けて延びている(図3)。また、ロッド15は、排水弁12の弁体部12bの中心から立ち上がる弁軸12aと同一直線上に位置するように配置されており、排水弁12とロッド15は同軸上に配置されている。
【0060】
さらに、シリンダ14aの内部にはスプリング14cが配置されており、ピストン14bを下方に向けて付勢している。また、ピストン14bの外周には弾性部材である環状のパッキン14eが取り付けられており、このパッキン14eは下側が開いた逆U字形断面に形成されている。さらに、パッキン14eは、弾性変形した状態でシリンダ14aの内壁面に接触され、シリンダ14aの内壁面とピストン14bの間の水密性が確保されている。また、ロッド15の下端と排水弁12の接続部には、クラッチ機構22が設けられており、このクラッチ機構22により、ロッド15と排水弁12が連結され、所定のタイミングでロッド15と排水弁12の連結が解除される。
【0061】
シリンダ14aは、円筒形の部材であり、その軸線が鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン14bを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ14aの内部空間は、ピストン14bにより、ピストン14bの下側の圧力室16aと、ピストン14bの上側の背圧室16bに区画される。ピストン14bは、シリンダ14a内で、図3に示す第1の位置と、図4に示す第2の位置との間で摺動可能に配置されている。図3に示すように、ピストン14bが最も下側に位置する第1の位置では、ピストン14bの下側の圧力室16aの容積が最も小さくなり、ピストン14bの上側の背圧室16bの容積が最も大きくなる。一方、図4に示すピストン14bの第2の位置では、ピストン14bの下側の圧力室16aの容積が最も大きくなり、ピストン14bの上側の背圧室16bの容積が最も小さくなる。
【0062】
また、図3に示すように、シリンダ14aの下端部には、駆動部給水路である流入管24aが接続されており、この流入管24aは、流入口25aを介してシリンダ14a内の圧力室16aに連通する。即ち、給水制御装置18(図2)から流出した水は、流入口25aを通ってシリンダ14a内の圧力室16aに流入する。圧力室16aに流入した水により、圧力室16a内の圧力が上昇し、ピストン14bは、スプリング14cの付勢力に抗して押し上げられる。即ち、ピストン14bは、水道水の圧力により、第1の位置から第2の位置へ移動され、これに伴い排水弁12が駆動される。
【0063】
一方、シリンダ14aの上部には流出口25bが設けられており、流出管24bは、この流出口25bを介してシリンダ14a内の背圧室16bと連通している。従って、シリンダ14aの背圧室16b内に流入した水は、流出口25bを通って流出する。また、図2に示すように、シリンダ14aから延びる流出管24bの先端部には流出管分岐部24cが設けられている。流出管分岐部24cにおいて分岐した流出管24bは、その一方が貯水タンク10内に水を流出させ、他方がオーバーフロー管10bの中に水を流出させるように構成されている。従って、シリンダ14aから流出した水の一部は、オーバーフロー管10bを通って水洗便器本体2に排出され、残りは貯水タンク10内に貯留される。
【0064】
図3及び図4に示すように、ロッド15は、ピストン14bの下面に接続された棒状の部材であり、シリンダ14aの底面に形成されたスリーブ14fを通って、シリンダ14aの中から下方に突出するように延びている。スリーブ14fは鉛直方向に延びる筒状の部分であり、シリンダ14aの底面を貫通するように設けられており、スリーブ14fの内部をロッド15が貫通して延びている。また、ロッド15の下端は、クラッチ機構22を介して排水弁12に連結されている。このため、シリンダ14aに水が流入してピストン14bが押し上げられると、ピストン14bに接続されたロッド15が排水弁12を上方に吊り上げ、排水弁12が開弁される。
【0065】
また、シリンダ14aの下方から突出するロッド15と、シリンダ14aのスリーブ14fの内壁面との間には、隙間14dが設けられ、シリンダ14aに流入した水の一部は、この隙間14dから流出する。隙間14dから流出した水は、貯水タンク10内に流入する。なお、この隙間は比較的流路断面積が狭く、流路抵抗が大きい。このため、隙間14dから水が流出する状態であっても、水勢が強い場合には、流入管24aからシリンダ14aに流入する水により圧力室16a内の圧力が上昇し、スプリング14cの付勢力に抗してピストン14bが押し上げられる。
【0066】
さらに、図3及び図4に示すように、ロッド15の上端部には連通流路17が設けられ、この連通流路17は、ロッド15の上端から中心軸線に沿って、ロッド15の内部を延びている。連通流路17は、ロッド15上端に設けられた背圧室開口である上端開口17aから、ロッド15側面の中間部に設けられたロッド開口である側面開口17bまで延びている。本実施形態において、ロッド15は、ピストン14bを貫通するように設けられており、ロッド15の上端に形成された上端開口17aが、ピストン14bの上側の背圧室16bに開口している。この上端開口17aは、上方に向けて、即ち、ピストン14bの摺動方向に向けて背圧室16b内に開口している。
【0067】
また、シリンダ14aの天井面には、下方に向けて垂下するように流出ガイド部14gが設けられている。この流出ガイド部14gは、シリンダ14a内に配置されたスプリング14cの内側に設けられ、円筒の一部を切り欠いた形状に形成されている。また、流出ガイド部14gを構成する円筒の切欠部分は、シリンダ14aの流出口25bの方向に向けられている。このため、連通流路17を通って上端開口17aから背圧室16b内に流入した水は、流出ガイド部14gにより、流出口25bの方に導かれる。また、図4に示すように、ピストン14bが第2の位置まで移動された状態では、流出ガイド部14gの下端とピストン14bの上面が当接する。換言すれば、ピストン14bは、流出ガイド部14gの下端と当接することにより、第2の位置に位置決めされる。
【0068】
なお、本実施形態においては、ロッド15の上端に形成された上端開口17aが、背圧室16bに開口した背圧室開口として機能しているが、背圧室開口は必ずしもロッド15に設けられている必要はなく、ピストン14bに設けられていても良い。この場合には、連通流路17の一部がピストン14bの内部に形成され、ピストン14bの背圧室16b側に設けられた背圧室開口から延びる連通流路17が、ロッド15の内部に設けられた連通流路17に接続される。
【0069】
一方、ロッド開口である側面開口17bは、連通流路17の下端に位置し、ロッド15の中間部の側面に開口している。また、本実施形態において、側面開口17bは、ロッド15の中心線の両側に、同じ高さに2つ設けられている。好ましくは、側面開口17bを複数設ける場合には、ロッドの中心軸線に対して対称の位置に、同じ高さに設ける。即ち、本実施形態においては、2つの側面開口17bが、ロッドの中心軸線を中心として、中心角180度隔てて設けられているが、例えば、側面開口17bを3つ設ける場合には中心角120度ずつ、4つ設ける場合には中心角90度ずつ間隔を空けて各側面開口17bを設けるのが良い。
【0070】
また、図3に示すように、ピストン14bが第1の位置に位置する状態では、ロッド15に設けられた各側面開口17bは、圧力室16aの外部に、即ち、シリンダ14aの外部に位置する。即ち、ピストン14bが下降した第1の位置では、ロッド15の側面に設けられた各側面開口17bは、スリーブ14fの下端よりも下方に位置し、各側面開口17bは、シリンダ14aの外側に開口する。この状態では、ピストン14bの上側の背圧室16bと、シリンダ14aの外部が連通流路17を介して連通される。なお、ピストン14bが第1の位置に位置する状態では、ロッド15の各側面開口17bは、図3に一点鎖線で示す止水水位L1よりも下側に位置し、側面開口17bは水没した状態になる。
【0071】
一方、図4に示すように、ピストン14bが第2の位置に位置する状態では、ロッド15に設けられた各側面開口17bは、圧力室16aの内部に位置する。即ち、ピストン14bが上昇した第2の位置では、ロッド15の側面に設けられた各側面開口17bは、スリーブ14fの上端よりも上側に位置し、各側面開口17bは、シリンダ14a内の圧力室16aの内側に開口する。この状態では、ピストン14bの上側の背圧室16bと、ピストン14bの下側の圧力室16aが、連通流路17を介して連通される。
【0072】
また、図5に示すように、各側面開口17bのピストン14b側の縁部17cは、ロッド15の中心軸線に対して直交する方向(図5における水平方向)に、直線状に延びるように形成されている。ここで、ピストン14bが第2の位置に近づいて、側面開口17bの上側の縁部17cが、スリーブ14fの上端よりも上側に達すると、各側面開口17bが圧力室16a内に開口し始める。この際、縁部17cがロッド15の中心軸線に直交して延びるように形成されていることにより、上側の縁部17cが、直線状に形成されたスリーブ14fの上端よりも僅かに上側に達すると、各側面開口17bが圧力室16a内に開口する面積が急激に広くなる。このため、圧力室16a内の水は、各側面開口17bを通って急速に連通流路17に流入するようになる。これにより、圧力室16a内の水圧を急速に低下させることができるので、ピストン14bの移動途中で圧力室16a内の圧力と背圧室16b内の圧力が平衡に達し、ピストン14bが動かなくなるのを防止することができる。
【0073】
次に、クラッチ機構22は、ロッド15と排水弁12の弁軸12aの間に設けられている。クラッチ機構22は、排水弁12が所定の位置まで吊り上げられると、排水弁12の弁軸12aをロッド15から切り離すように構成されている。クラッチ機構22が切り離された状態では、排水弁12は、ピストン14b及びロッド15の動きに連動しなくなり、浮力に抵抗しながら重力により降下する。なお、クラッチ機構22の詳細については、後述する。
【0074】
一方、図5に示すように、排水弁12の弁軸12aの近傍には、フロート機構である排水弁フロート機構26が設けられている。なお、図5は、排水弁12が排水弁フロート機構26によって保持されている状態を示す断面図であり、断面の切断方向が図3及び図4に対して90度回転されている。排水弁フロート機構26は、ロッド15が所定距離吊り上げられ、クラッチ機構22により排水弁12が切り離された後、排水弁12が降下して、排水口10aを閉弁させるのを遅延させるように構成されている。具体的には、排水弁フロート機構26は、フロートであるフロート部26aと、このフロート部26aと連動した係合部26bと、フロート部26aと係合部26bを連結するフロート軸26cを有する。
【0075】
一方、排水弁12の弁軸12aには係合突起12cが設けられており、排水弁12が吊り上げられた状態では、係合突起12cは、排水弁フロート機構26の係合部26bよりも上方に位置する。吊り上げられた排水弁12がクラッチ機構22により切り離されると、降下してきた排水弁12の係合突起12cが、係合部26bと係合し、排水弁12の降下を阻止する(図5は、係合部26bと係合突起12cが係合し、排水弁12が保持された状態を示している)。次いで、貯水タンク10内の水位低下と共にフロート部26aが下降し、貯水タンク10内の水位が所定水位まで低下すると、フロート部26aは係合部26bを、図5に想像線で示す解除位置まで回動させる。係合部26bが解除位置へ回動されると、係合部26bと係合突起12cの係合が解除される。係合が解除されることにより、排水弁12が降下して、排水口10aに着座する。これにより、排水弁12の閉弁が遅延され、適正量の洗浄水が、排水口10aから排出されるようになっている。
【0076】
次に、図6乃至図10を新たに参照して、排水弁12とロッド15を連結するクラッチ機構22を説明する。
図6は、クラッチ機構22を構成する部品を分解して示す分解斜視図である。図7は、排水弁12が閉弁されているときのクラッチ機構22の状態を示す部分拡大断面図である。図8は、連結解除時におけるクラッチ機構22の状態を示す部分拡大断面図である。図9は、連結直前におけるクラッチ機構22の状態を示す部分拡大断面図である。図10は、クラッチ機構22を連結させる際の状態を示す部分拡大断面図である。
【0077】
まず、図6に示すように、クラッチ機構22は、ロッド15の下端部、排水弁12の弁軸12aの上端部、及びこの上端部に取り付けられた可動部材60から構成されている。即ち、ロッド15は、排水弁水圧駆動部14のピストン14bの下面から下方に延びており、このロッド15の下端部がクラッチ機構22の一部を構成する。また、弁軸12aの上端部には、可動部材60が回動可能に取り付けられており、この可動部材60がロッド15の下端部と係合/解除されることにより、ロッド15と排水弁12が連結・解除される。
【0078】
ロッド15の下端部には、薄肉部15a、及び引上部15bが形成され、これらがクラッチ機構22の一部として機能する。一方、排水弁12の弁軸12aの上端部には、支持部12dが設けられている。この支持部12dは、側方が開放されるように形成された一対の軸受から構成されており、可動部材60の両端が回動可能に取り付けられる。
【0079】
ロッド15下端の薄肉部15aは、ロッド15の上部よりも細く形成された部分である。ロッド15の引上部15bは、薄肉部15aの下端から、両側に水平方向に突出するように形成された部分であり、排水弁12を引き上げる際は、ロッド15の引上部15bと可動部材60が係合する。
【0080】
可動部材60は、横向きに延びるベースプレート62と、このベースプレート62の両端から外方に延びる一対の回転軸66と、ベースプレート62の両端部から縦方向に立ち上がる一対のアーム64と、各アーム64の上端から内方に向けて延びる当接部68と、を有する。可動部材60の各回転軸66は、弁軸12aの上端部に設けられた各支持部12dに受け入れられ、可動部材60が回動可能に支持される。
【0081】
ベースプレート62は、横向きに延びる板状の部分であり、上面視でT字形に形成されている。アーム64は、T字形のベースプレート62の両端から上方に向けて夫々立ち上がるように形成されている。クラッチ機構22の連結時においては、ロッド15下端の薄肉部15a及び引上部15bが、一対のアーム64の間に位置する。回転軸66は、ベースプレート62の左右両端、且つ各アーム64の基端から、夫々水平方向に突出するように形成され、弁軸12aの各支持部12dに受け入れられている。
【0082】
当接部68は、各アーム64の上端から内方に向けて突出するように形成されている。当接部68は、回転軸66と平行な方向から見て、断面が涙滴状に形成され、下側が円弧状の曲面に形成されている。また、クラッチ機構22の連結時においては、ロッド15下端の薄肉部15aが各当接部68の間に位置し、引上部15bの両端が各当接部68の下側に位置する。
【0083】
次に、図7乃至図10を参照して、クラッチ機構22の作用を説明する。
まず、排水弁12が排水口10aに着座し、クラッチ機構22が連結された状態においては、可動部材60は図7に示す「係合位置」にされている。可動部材60が係合位置にされた状態では、ロッド15下端の引上部15bが、可動部材60の当接部68の真下に位置する。排水弁水圧駆動部14(図2)に洗浄水が供給され、図7に示す状態からロッド15が上方に引き上げられると、ロッド15によって排水弁12が鉛直上方に引き上げられる。即ち、ロッド15が引き上げられると、可動部材60が係合位置を維持したまま、ロッド15の引上部15bの上面15cと、可動部材60の当接部68の下端が係合し、排水弁12が引き上げられる。
【0084】
また、クラッチ機構22が連結された状態で、ロッド15と共に排水弁12が引き上げられると、可動部材60は、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14aの底面に接近する。そして、排水弁12が所定位置まで引き上げられると、図8に示すように、シリンダ14aの底面から下方に突出した規制部70の先端が可動部材60のベースプレート62に当接する。ベースプレート62が規制部70の先端に当接することにより、可動部材60は、図7に示す「係合位置」から図8に示す「非係合位置」へ、回転軸66を中心に回動される。可動部材60が「非係合位置」に回動されると、ロッド15の引上部15bと可動部材60の当接部68の係合が解除され、クラッチ機構22の連結が解除される。即ち、可動部材60が回転軸66を中心に回動されると、アーム64の先端に設けられた当接部68が移動して、ロッド15下端の引上部15bから外れ、当接部68と引上部15bの係合が解除される。
【0085】
クラッチ機構22の連結が解除されると、排水弁12がロッド15から切り離され、排水弁12が下降して、排水口10aに着座する。これにより、貯水タンク10から水洗便器本体2への洗浄水の排出が停止される。
次いで、排水弁水圧駆動部14への洗浄水の供給が停止されると、シリンダ14aの内部に配置されたスプリング14cの付勢力により、ピストン14b及びロッド15が下降する。図9に示すように、ロッド15が下降することにより、ロッド15の下端が、排水口10aに着座している排水弁12に取り付けられた可動部材60に接近する。なお、可動部材60の重心は、図9において、回転軸66の中心よりも左側に位置するため、図7においてクラッチ機構22の連結が解除された後も、可動部材60は「非係合位置」を維持している。
【0086】
ロッド15が更に下降すると、図10に示すように、ロッド15の被当接部15dが可動部材60のベースプレート62に当接し、可動部材60が図10における時計回りに回動される。これにより、「非係合位置」にされていた可動部材60が図7に示す「係合位置」に回動されて図7に示す状態に復帰し、クラッチ機構22が連結される。
【0087】
次に、図11乃至図13を新たに参照して、給水制御装置18と排水弁水圧駆動部14との間に接続された排水/真空破壊弁装置30を説明する。
図11は排水/真空破壊弁装置30の斜視図である。図12は、給水制御装置18からの給水が行われていない状態における排水/真空破壊弁装置30の断面図であり、図13は給水が行われている状態における排水/真空破壊弁装置30の断面図である。
【0088】
図12及び図13に示すように、排水/真空破壊弁装置30は、弁体ケース72と、弁体であるフラップ弁体80と、パッキン82と、を有する。
図11に示すように、弁体ケース72は、箱状の本体部74と、この本体部74の上面に取り付けられた流入管接続部材76と、本体部74の下部側面に取り付けられた流出管接続部材78から構成されている。
【0089】
弁体ケース72の本体部74は、下側の一方の隅が切り欠かれた概ね直方体の箱状に構成されている。本体部74の上面は開口されており、この開口部74aを塞ぐように流入管接続部材76が取り付けられている。また、本体部74の、切り欠かれていない方の下部側面には流出管接続部材78の取付部74bが設けられており、そこに流出管接続部材78が取り付けられている。さらに、本体部74の側面、且つ取付部74bの上側には、吸気/排水開口74cが設けられている。
【0090】
この吸気/排水開口74cは、概ね鉛直方向に向けられた、縦長の長方形の開口である。フラップ弁体80が開弁された状態では、この吸気/排水開口74cを介して外気が吸入されると共に、流入管24aから逆流した水が流出し、貯水タンク10内に排出される。即ち、吸気/排水開口74cは、本体部74の概ね鉛直方向に向けられた鉛直面に形成され、水平方向よりも鉛直方向に長く形成されている。また、吸気/排水開口74cの上縁74d及び下縁74eは、夫々水平方向に延びるように直線状に形成されており、排水/真空破壊弁装置30へ逆流した水は、下縁74eを越えて貯水タンク10内に排出される。なお、吸気/排水開口74cは、水平方向に対して傾斜した傾斜面に設けられていても良い。
【0091】
流入管接続部材76には、上方に向けて突出するように通水管取付部76aが設けられており、この通水管取付部76aに、給水制御装置18(図2)から延びる通水管が接続されている。通水管取付部76aの下端は本体部74の内部に開口しており、給水制御装置18から供給された水は、通水管取付部76a下端の流入口76cを通って排水/真空破壊弁装置30内に流入する。即ち、給水制御装置18から流出した水は、排水/真空破壊弁装置30の上部に設けられた通水管取付部76aを通って、流入口76cから鉛直下方に向けて弁体ケース72内に流入する。
【0092】
流出管接続部材78には、水平方向に向けて突出するように通水管取付部78aが設けられており、この通水管取付部78aに流入管24aが接続されている。このため、給水制御装置18から供給され、弁体ケース72内に流入した水は、通水管取付部78aの上流端の流出口78bを通って排水/真空破壊弁装置30から流出し、流入管24aを介して排水弁水圧駆動部14に供給される。即ち、排水/真空破壊弁装置30に流入した水は、流出口78bを通って排水弁水圧駆動部14に供給される。なお、吸気/排水開口74cの面積は、流出口78bの面積よりも大きく形成され、流入口76cは流出口78bよりも上方に設けられている。
【0093】
フラップ弁体80は、弁体ケース72内に回動可能に取り付けられた概ねL字形の部材であり、吸気/排水開口74cを開閉するように構成されている。また、L字形のフラップ弁体80の角部近傍には、水平方向に延びる中心軸線である支軸80aが形成されている。この支軸80aは流入管接続部材76に設けられた軸受部76bによって回動可能に支持され、フラップ弁体80は、図12に示す状態と、図13に示す状態の間で回動される。なお、支軸80aは、吸気/排水開口74cの垂直投影面の外側に配置されている。即ち、支軸80aは、吸気/排水開口74cが形成されている面(鉛直面)に対して垂直に光を当てることにより形成される吸気/排水開口74cの投影面よりも外側に位置している。
【0094】
また、フラップ弁体80は、横方向に延びるアーム部を備え、このアーム部の先端に供給水受部80bが設けられている。供給水受部80bは、通水管取付部76aの下方に、流入口76cを覆うように配置されている。このため、流入口76cを介して水が流入すると、フラップ弁体80の供給水受部80bが下方に押され、フラップ弁体80は、図12に示す状態から図13に示す状態に回動される。
【0095】
さらに、フラップ弁体80は、支軸80aから下方に延びる弁板部80cと、弁板部80cの下側に設けられた排水受部80dと、を有する。弁板部80cは、本体部74側面に設けられた吸気/排水開口74cに対向するように配置され、フラップ弁体80が図13に示す状態に回動されると、吸気/排水開口74cを覆うように構成されている。また、弁板部80cの、吸気/排水開口74cに対向する側の面には、薄板状のパッキン82が取り付けられており、フラップ弁体80が図13に示す状態に回動されたとき、弁板部80cと吸気/排水開口74cの間がシールされる。ここで、フラップ弁体80の支軸80aは、吸気/排水開口74cの垂直投影面の外側に配置されているため、フラップ弁体80が図13の状態に回動された状態において、パッキン82の潰し代を確実に確保することができる。
【0096】
排水受部80dは、弁板部80cの下側に形成され、流出管接続部材78の流出口78bに対向するように配置される。このため、流入管24aから通水管取付部78aに水が逆流してくると、排水受部80dが押されて、図13に示す状態から図12に示す状態に回動される。通水管取付部78aから逆流した水は、吸気/排水開口74cを通って流出し、貯水タンク10内に排出される。
【0097】
さらに、弁板部80cには、吸気/排水開口74cから突出するように、錘取付部80eが設けられ、この錘取付部80eの先端部には、錘82aが取り付けられている。この錘82aを取り付けることにより、フラップ弁体80全体の重心が、支軸80aよりも吸気/排水開口74cに近い側(図12図13における右側)に位置するようになる。この結果、支軸80aを中心に図13における時計回りにフラップ弁体80を回動させる力のモーメントが作用し、水の静圧及び動圧が作用しない待機状態では、フラップ弁体80は図12に示す位置に回動される。即ち、フラップ弁体80は、排水/真空破壊弁装置30に水が供給されていない状態において、フラップ弁体80の重心位置が最も低下した、図12に示す待機姿勢にされる。
【0098】
また、本体部74の切欠部分の底面には、付勢ばねであるコイルスプリング84が、鉛直上方に向けて取り付けられている。このコイルスプリング84の上端は、フラップ弁体80の供給水受部80bの下方に位置する。図13に示すように、吸気/排水開口74cが弁板部80cによって閉塞されている状態では、コイルスプリング84の上端が供給水受部80bに当接し、フラップ弁体80は時計回りに回動する方向に付勢される。即ち、コイルスプリング84は、吸気/排水開口74cを開放する方向にフラップ弁体80を付勢する。一方、フラップ弁体80が図12に示す位置に回動された状態では、コイルスプリング84の上端と供給水受部80bは当接せず、コイルスプリング84による付勢力は作用しない。このように、コイルスプリング84は、吸気/排水開口74cが所定量以上開放された状態では、フラップ弁体80に付勢力を作用させない。
【0099】
なお、本実施形態においては、コイルスプリング84として円筒状の付勢ばねが使用され、この付勢ばねは、変形量の増分に対する付勢力の増分がほぼ一定になる。これに対し、変形例として、円錐形のコイルスプリングを付勢ばねとして使用することもできる。円錐形のコイルスプリングは、変形量が大きくなるほど、変形量の増分に対する付勢力の増分が増加する特性を有する。このため、円錐形のコイルスプリングが、フラップ弁体80を常時付勢するように配置された場合でも、本実施形態と類似した傾向の付勢力を作用させることができる。即ち、円錐形のコイルスプリングを使用することにより、フラップ弁体80が開放されている状態では比較的付勢力が小さく、フラップ弁体80が閉塞位置に近づくにつれ、急激に付勢力が強くなるように、付勢力を作用させることができる。
【0100】
次に、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置4、及びそれを備えた水洗便器装置1の作用を説明する。
まず、便器洗浄の待機状態においては、貯水タンク10内の水位が所定水位L1にあり、電磁弁20への通電は行われていない。この状態では、給水制御装置18の電磁弁側パイロット弁50及びフロート側パイロット弁44(図2)は、共に閉弁状態となり、弁座40は主弁体38によって閉弁されている。次に、使用者がリモコン装置6(図1)の洗浄ボタンを押すと、リモコン装置6は、便器洗浄の指示信号をコントローラ28(図2)に送信する。なお、本実施形態の水洗便器装置1においては、人感センサ8(図1)によって使用者の離座が検知された後、リモコン装置6の洗浄ボタンが押されることなく、所定時間経過した場合にも、便器洗浄の指示信号がコントローラ28に送信される。
【0101】
便器洗浄の指示信号を受信すると、コントローラ28は、電磁弁20に通電を行い、電磁弁側パイロット弁50を開弁させる。これにより、圧力室36a内の圧力が低下し、主弁体38が弁座40から離座して、弁座40が開弁される。この結果、給水管32から給水制御装置18(図2)に供給された水道水は、給水制御装置18から流出して排水/真空破壊弁装置30に流入する。
【0102】
排水/真空破壊弁装置30に水が流入すると、図13に示すように、フラップ弁体80の供給水受部80bが下方に押され、フラップ弁体80が図13に示す位置に回動される。これにより、排水/真空破壊弁装置30の吸気/排水開口74cがフラップ弁体80によって閉塞される。排水/真空破壊弁装置30の流入口76cから流入した水は、図13に矢印で示すように、供給水受部80bを迂回して弁体ケース72内に流入し、さらに、排水受部80dを迂回して流出口78bから流入管24aに流入する。
【0103】
さらに、図2に示すように、流入管24aに流入した水は、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14a内に流入する。シリンダ14a内に流入した水は、スプリング14cの付勢力に抗してピストン14bを押し上げる。この際、クラッチ機構22は連結されているため(図3)、ピストン14bに連結されたロッド15、及びこのロッド15に連結された排水弁12も引き上げられ、排水弁12が排水口10aから離間する。即ち、排水弁12は、給水管32を介して給水された水道水の給水圧に基づく排水弁水圧駆動部14の駆動力により駆動され、開弁される。
【0104】
排水弁12が開弁されると、貯水タンク10内に貯留されていた洗浄水(水道水)が、排水口10aを通って水洗便器本体2のボウル部2aに排出され、ボウル部2aが洗浄される。また、貯水タンク10内の洗浄水が排出されると、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L1よりも低下するので、給水弁フロート34が下がる。これにより、アーム部42(図2)が回動し、フロート側パイロット弁44が開弁される。
【0105】
なお、フロート側パイロット弁口(図示せず)が開弁した状態では、電磁弁側パイロット弁50を閉弁させても、圧力室36a内の圧力が上昇することはないため、主弁体38の開弁状態を維持することができる。このため、コントローラ28は電磁弁20に通電して主弁体38を開弁させた後、所定時間経過して、貯水タンク10内の水位が低下すると、電磁弁20への通電を停止させる。これにより、電磁弁側パイロット弁50は閉弁されるが、フロート側パイロット弁口が開弁されているため、主弁体38は弁座40から離座したままになる。即ち、コントローラ28は、電磁弁20に短時間通電するだけで、長時間主弁体38を開弁させることができる。
【0106】
一方、流入管24aから排水弁水圧駆動部14のシリンダ14aの圧力室16a内に流入した水は、ピストン14bを図3に示す位置から、図4に示す位置に押し上げる。ここで、ピストン14bが第1の位置に位置するとき(図3)は、ロッド15に設けられた側面開口17bが圧力室16aの外部に位置するので、圧力室16aの水が側面開口17bを通って流出することがなく、圧力室16a内の圧力を容易に高めることができる。ピストン14bが押し上げられ、これに伴いロッド15及び排水弁12が所定位置まで引き上げられると、クラッチ機構22が、排水弁12をロッド15から切り離す。
【0107】
即ち、図8に示すように、シリンダ14aから下方に突出する規制部70が可動部材60を「非係合位置」へ回動させ、ロッド15の引上部15bと可動部材60の当接部68との係合が解除される。これにより、ロッド15はピストン14bと共に上方に押し上げられたままになる一方、排水弁12は自重により降下する。しかしながら、切り離された排水弁12の係合突起12c(図5)は、排水弁フロート機構26の係合部26bと係合し、排水弁12の降下が阻止される。これにより、貯水タンク10の排水口10aは開弁されたままとなり、貯水タンク10からの排水が継続される。
【0108】
一方、ピストン14bが図3に示す第1の位置から、図4に示す第2の位置に押し上げられると、ロッド15に設けられた側面開口17bは、シリンダ14aの外部から圧力室16a内に移動する。即ち、図4に示すように、側面開口17bが、シリンダ14aに設けられたスリーブ14fの上端よりも上側に移動すると、側面開口17bが圧力室16a内に開口するようになる。これにより、シリンダ14a内の圧力室16aと背圧室16bが、連通流路17を通して連通される。即ち、圧力室16a内に流入した水は、側面開口17bから連通流路17内に流入し、上端開口17aを通って背圧室16b内に流入する。
【0109】
また、この際、水平方向に向けられた側面開口17bの上側の縁部17cが、スリーブ14fの上端よりも上側に移動すると、側面開口17bの圧力室16a内への開口面積が急激に広くなり、圧力室16aの水は、急速に背圧室16b内に流入するようになる。背圧室16b内に流入した水は、流出管24bを通ってシリンダ14aから流出する。この際、シリンダ14aの天井面に設けられた流出ガイド部14gは、上端開口17aから流出した水を、流出管24bに向けて案内する。流出管24bを通って流出した水は、流出管分岐部24c(図2)において分岐され、貯水タンク10内、及びオーバーフロー管10b内に夫々流入する。また、流入管24aからシリンダ14aに流入した水の一部は、シリンダ14aのスリーブ14fの内壁とロッド15の間の隙間14dから流出し、この水は、貯水タンク10に流入する。
【0110】
次いで、貯水タンク10内の水位が、止水水位L1よりも低い第2の所定水位まで低下すると、排水弁フロート機構26のフロート部26a(図5)が下降し、これが係合部26bを、図5に想像線で示す非係合位置に移動させる。これにより、排水弁12の係合突起12cと係合部26bとの係合が解除され、排水弁12は再び降下し始める。その後、排水弁12が貯水タンク10の排水口10aを閉弁させ、水洗便器本体2への洗浄水の排出が停止される。排水口10aが閉弁された後も、給水制御装置18内の弁座40は開弁された状態にあるため、給水管32から供給された水が排水弁水圧駆動部14内に流入し、排水弁水圧駆動部14から流出した水は、流出管24bを通って貯水タンク10内に流入するので、貯水タンク10内の水位が上昇する。
【0111】
貯水タンク10内の水位が所定水位L1まで上昇すると、給水弁フロート34(図2)が上昇し、アーム部42を介してフロート側パイロット弁44が移動され、フロート側パイロット弁44が閉弁される。これにより、フロート側パイロット弁口(図示せず)及び主弁体38のパイロット弁口(図示せず)が閉弁されるので、圧力室36a内の圧力が上昇し、主弁体38が弁座40に着座する。この結果、給水制御装置18からの給水が停止される。給水制御装置18からの給水が停止されると、排水弁水圧駆動部14のピストン14bは、スプリング14cの付勢力により押し下げられ、これに伴いロッド15も押し下げられる。
【0112】
また、ピストン14bと共にロッド15が押し下げられる(図9)と、クラッチ機構22により切り離されていたロッド15と排水弁12が再び連結される。即ち、図10に示すように、降下してきたロッド15の被当接部15dが可動部材60に当接して、可動部材60を「係合位置」に回動させ、ロッド15の引上部15bと可動部材60の当接部68を係合させる(図7)。このため、次回、便器洗浄が実行された時は、ロッド15及び排水弁12は、ピストン14bにより共に引き上げられる。以上により、一回の便器洗浄が終了し、水洗便器装置1は、便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0113】
次に、給水制御装置18からの給水が停止された後の排水/真空破壊弁装置30の作用を説明する。
給水制御装置18からの給水が停止されると、排水/真空破壊弁装置30に備えられたフラップ弁体80の供給水受部80b(図13)に、給水による動圧が作用しなくなる。この結果、コイルスプリング84の付勢力等により、フラップ弁体80は、図13に示す状態から、図12に示す状態に向けて回動され、吸気/排水開口74cが開弁される。一方、給水制御装置18からの給水が停止されると、第2の位置に押し上げられていた排水弁水圧駆動部14のピストン14b(図4)が、スプリング14cの付勢力により押し下げられる。これにより、シリンダ14aの圧力室16a内に満たされていた水の多くは、流入管24aを通って排水/真空破壊弁装置30の方に逆流する。
【0114】
流入管24aから排水/真空破壊弁装置30に逆流した水は、図12に実線の矢印で示すように、通水管取付部78aの流出口78bを通って弁体ケース72に流入し、吸気/排水開口74cの下縁74eを越えて流出する。排水/真空破壊弁装置30の吸気/排水開口74cから流出した水は、貯水タンク10内に排出される。ここで、吸気/排水開口74cの下縁74eは水平方向に向けて直線状に形成されているため、吸気/排水開口74cが少しでも開弁されると、逆流した水を排出するための比較的大きな流路が確保される。このように、排水弁水圧駆動部14から逆流した水を速やかに排出することができるため、シリンダ14a内に残留した水は早期に排出され、洗浄水タンク装置4を速やかに初期状態に復帰させることができる。
【0115】
また、流出口78bは、流入口76cよりも下方に設けられているので、流出口78bを通って排水/真空破壊弁装置30の中に逆流した水が、流入口76cへ逆流するのを防止することができる。さらに、吸気/排水開口74cの面積は流出口78bの面積よりも大きく形成されているので、流出口78bを通って逆流した水により、吸気/排水開口74cが満水にされることはなく、逆流した水は速やかに排出される。加えて、排水/真空破壊弁装置30と排水弁水圧駆動部14の間の流路には、流量抑制手段であるオリフィス24d(図2)が設けられているため、排水/真空破壊弁装置30から大流量の水が逆流するのを防止することができ、吸気/排水開口74cが満水にされるのを確実に防止することができる。これらの構成により、流出口78bを通って排水/真空破壊弁装置30の中に逆流した水が、上流側の給水制御装置18へ逆流するのを確実に防止することができる。なお、本実施形態においては、流量抑制手段としてオリフィス24dが設けられているが、他の構成により、逆流する水の流量を抑制することもできる。
【0116】
一方、排水/真空破壊弁装置30の吸気/排水開口74cが開弁されると、図12に破線の矢印で示すように、外気が吸気/排水開口74cの上部を通って弁体ケース72内に吸入される。即ち、吸気/排水開口74cは縦長に形成されているため、流出口78bを通って逆流してきた水を吸気/排水開口74cの下部から排出すると同時に、吸気/排水開口74cの上部からは外気を容易に導入することができる。このように、給水制御装置18からの給水が停止され、通水管取付部76aの側が負圧になった場合でも、排水/真空破壊弁装置30から外気が吸入されるので、流入管24aから逆流した水の、給水制御装置18への逆流が阻止される。ここで、吸気/排水開口74cの上縁74dは水平方向に向けて直線状に形成されているため、吸気/排水開口74cが少しでも開弁されると、外気を吸入するための比較的大きな流路が確保される。
【0117】
さらに、図12に示すように、通水管取付部76aの下端に設けられた流入口76cは、吸気/排水開口74cの上縁74dよりも下方に位置するため、弁体ケース72内の水が、通水管取付部76aの中に逆流することはなく、逆流を確実に防止することができる。このように、排水/真空破壊弁装置30のフラップ弁体80は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放すると同時に、排水弁水圧駆動部14から逆流した水を排水するように作動する。排水/真空破壊弁装置30は、下流側から逆流した水を排出する機能と、管路内に外気を吸入する機能を併せ持っており、吸気/排水開口74cは、外気の吸入口及び管路内の水の排水口として機能する。
【0118】
次に、図14を参照して、フラップ弁体80を開閉するために作用する力を説明する。
図14は、各作動状況において、排水/真空破壊弁装置30のフラップ弁体80に作用する力を説明するための図である。
【0119】
まず、図14(a)に示す給水制御装置18からの給水が開始される前の状態においては、排水/真空破壊弁装置30のフラップ弁体80は待機姿勢にされている。この状態においては、フラップ弁体80に作用する力は重力のみであり、フラップ弁体80は、その重心が最も低下した待機姿勢の状態(図12の状態)に回動され、吸気/排水開口74cは開放されている。なお、フラップ弁体80が待機姿勢にある状態では、コイルスプリング84(図12)はフラップ弁体80に接触しておらず、フラップ弁体80にはコイルスプリング84による付勢力は作用しない。
【0120】
次に、図14(b)に示すように、給水制御装置18からの給水が開始されると、流入口76cから流入した水の動圧によりフラップ弁体80の供給水受部80bが押され、フラップ弁体80には動圧に基づく力のモーメントT1が作用する。これにより、この力のモーメントT1により、フラップ弁体80は吸気/排水開口74cを閉塞する方向に回動される。即ち、流入した水の動圧に基づく力のモーメントT1が、フラップ弁体80を待機姿勢に維持しようとする重力に基づく力のモーメントTgに打ち勝って(T1-Tg>0)、フラップ弁体80が回動される。さらに、フラップ弁体80が所定量以上閉方向に回動されると、コイルスプリング84(図12)がフラップ弁体80に接触し、コイルスプリング84の付勢力に基づく力のモーメントTbもフラップ弁体80に作用するようになる。フラップ弁体80は、このコイルスプリング84による付勢力にも打ち勝って(T1-Tg-Tb>0)閉方向に回動される。
【0121】
さらに、フラップ弁体80が回動され、吸気/排水開口74cが閉塞状態に近くなると、図14(c)に示すように、排水/真空破壊弁装置30内の水の静圧に基づく力のモーメントTsによってもフラップ弁体80は閉塞される方向に押圧されるようになる。
【0122】
次いで、図14(d)に示すように、吸気/排水開口74cがフラップ弁体80により閉塞され、給水制御装置18からの給水が継続されている状態では、静圧及び動圧によってフラップ弁体80が閉塞される。即ち、フラップ弁体80の供給水受部80bに作用する給水の動圧に基づく力のモーメントT1、及びフラップ弁体80の背面に作用する静圧に基づく力のモーメントTsによって吸気/排水開口74cの閉塞状態が安定的に維持される(T1+Ts-Tg-Tb>0)。
【0123】
さらに、図14(e)に示すように、給水制御装置18からの給水が停止されると、フラップ弁体80には、給水の動圧に基づく力のモーメントT1が作用しなくなる。この状態では、フラップ弁体80を開放させる方向の力のモーメント(Tg、Tb)の和が、閉塞させる方向の力のモーメント(Ts)よりも大きくなる(Ts-Tg-Tb<0)。これにより、フラップ弁体80は開方向に回動し始める。ここで、フラップ弁体80に作用する静圧に基づく力は、吸気/排水開口74cの開口面積に比例するため、開口面積を過大に設定すると、静圧に基づく力のモーメントTsが過大になり、フラップ弁体80を開放させることが困難となる。
【0124】
次いで、図14(f)に示すように、フラップ弁体80が開放されると、吸気/排水開口74cから排水/真空破壊弁装置30内に大気が導入されると共に、排水/真空破壊弁装置30内の水が吸気/排水開口74cを通って排出される。排水/真空破壊弁装置30内に大気が導入されることにより、フラップ弁体80には静圧に基づく力のモーメントTsが作用しなくなる(Ts=0)。また、フラップ弁体80が所定量以上開方向に回動されると、コイルスプリング84(図12)の先端がフラップ弁体80から離れ、コイルスプリング84の付勢力に基づく力のモーメントTbも作用しなくなる(Tb=0)。この状態でもフラップ弁体80の開放状態は維持される(-Tg<0)。
【0125】
さらに、図14(g)に示すように、排水弁水圧駆動部14の側から流出口78bを通って水が逆流し始めると、流出口78bを通って逆流する水の動圧に基づく力のモーメントT2よっても、フラップ弁体80は開方向に回動される(-Tg-T2<0)。
【0126】
次いで、図14(h)に示すように、流出口78bを通って逆流した水の排出が終わると、フラップ弁体80は、フラップ弁体80に働く重力に基づく力のモーメントTgのみにより開状態に維持され、給水制御装置18からの給水が開始される前の状態に復帰する。本実施形態における排水/真空破壊弁装置30は、フラップ弁体80に作用する力のモーメントT1、T2、Tg、Tb、Tsを適切に設定することにより、図14(a)~(h)の動作が確実に行われるようにしている。
【0127】
以上のように、本実施形態の洗浄水タンク装置4に備えられている排水/真空破壊弁装置30は、逆流水を排出すると共に、管路内に大気を導入するため、負圧破壊弁(バキュームブレーカ)としても機能しているが、従来の洗浄水タンク装置等に備えられている通常の負圧破壊弁とは異なるものである。このことを、図24を参照して、以下に説明する。
【0128】
図24は、負圧破壊弁の典型的な構成を示す断面図であり、一例として特開2013-204389号公報に開示された負圧破壊弁の構成を示している。
図24に示すように、通常の負圧破壊弁90は、負圧破壊弁体92と、この負圧破壊弁体92によって開閉される大気開口94から構成されている。図24に示す例においては、負圧破壊弁90は、主弁口96aから流出口98に至る流路の途中に設けられている。なお、主弁口96aから流入し、流出口98から流出した洗浄水は、貯水タンク内に供給したり、補給水用のホース及びオーバーフロー管を介して便器本体をリフィールさせたりするために用いることができる。負圧破壊弁体92は鉛直方向に移動可能に配置された弁体であり、上方に移動されたとき大気開口94を閉塞するように構成されている。一方、大気開口94は水平方向に向けられた壁面に形成された開口であり、鉛直上方に向けて開口している。図24に示す例では、大気開口94の上側が、大気に開放されている。
【0129】
図24に示すように、主弁体96bが開弁されると、主弁口96aから水が流入し、流入した水は流路に沿って流れ上方に向かう。負圧破壊弁体92は、上方に流れた水の動圧により上方に押し上げられ、大気開口94を閉塞する。大気開口94が閉塞された状態では、主弁口96aから流入した水は、流出口98へ流出する。一方、主弁口96aからの水の流入が停止されると、負圧破壊弁体92に動圧が作用しなくなるため、負圧破壊弁体92は重力により下方に移動され、大気開口94が大気に開放される。このため、主弁口96aの上流側に負圧が発生した場合には、大気開口94から流路内に大気が導入され、負圧が破壊される。このため、主弁口96aの上流側に発生した負圧により負圧破壊弁90の下流側の水が上流側に吸引され、上流側に水が逆流するのを防止することができる。
【0130】
しかしながら、図24に示す構造の通常の負圧破壊弁90では、管路内への大気の導入と同時に、下流側から逆流してきた水の排出を行うことはできない。即ち、図24に示す構造では、大気開口94から逆流水を排出するためには、貯水タンク内等から流出口98に逆流してきた水の水位が大気開口94よりも上方まで上昇する必要がある。この状態では、大気開口94は満水になるため、最早この大気開口94から大気を導入することはできない。このように、通常の負圧破壊弁では、大気の導入と、逆流水の排出を同時に行うことはできず、これを本実施形態における排水/真空破壊弁装置30のように作用させることはできない。
【0131】
本発明の第1実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、上流側からの水の供給が停止されると、排水/真空破壊弁装置30が排水弁水圧駆動部14から逆流した水を排水する(図12)ので、簡単な機構で排水弁水圧駆動部14のシリンダ14a(図2)に流入した水を排出することができる。これにより、ピストン14bを早期に初期位置に復帰させることができ、短時間で次回の便器洗浄が実行可能な状態に復帰することができる。また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、排水/真空破壊弁装置30は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放するので、排水/真空破壊弁装置30の上流側が負圧になった場合には、大気が吸入され、上流側に水が逆流するのを防止することができる。
【0132】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、流入口76cが流出口78bよりも上方に設けられている(図12)ので、排水弁水圧駆動部14から流出口78bに逆流した水が、流入口96cに逆流するのを確実に防止することができる。また、フラップ弁体80によって開閉される吸気/排水開口74cが、鉛直面に形成されているので、排水弁水圧駆動部14から流出口78bに逆流した水を吸気/排水開口74cの下部から排出すると同時に、吸気/排水開口74cの上部から大気を吸入することができ、排水と吸気を同時に行うことができる。
【0133】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、吸気/排水開口74cの面積が排水/真空破壊弁装置30の流出口78bの面積よりも大きいので、排水弁水圧駆動部14から流出口78bに逆流した水を排水しながら、大気の吸入も確実に実行することができる。
【0134】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、吸気/排水開口74cが水平方向よりも鉛直方向に長く形成されている(図11)ので、小さな開口面積で、逆流した水の排水と、大気の吸入を確実に実行することができる。
【0135】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、排水/真空破壊弁装置30のフラップ弁体80が、回動されることにより吸気/排水開口74cを開閉するので、吸気/排水開口74cの開閉機構をコンパクトに構成することができ、排水/真空破壊弁装置30の設計の自由度を拡大することができる。
【0136】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、フラップ弁体80が回動される支軸80aが吸気/排水開口74cの垂直投影面の外側に配置されている(図12)ので、吸気/排水開口74cの縁部とフラップ弁体80の間をシールするパッキン82の潰し代を確実に確保することができ、吸気/排水開口74cを確実に閉塞させることができる。
【0137】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、吸気/排水開口74cの下縁74eが水平方向に延びており(図11)、逆流した水が、この下縁74eを越えて貯水タンク10内に排出されるので、下縁74eを越えて流れる排水の流路面積を大きく確保することができ、排水/真空破壊弁装置30内の水位上昇を抑制することができる。
【0138】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、吸気/排水開口74cの上縁74dが水平方向に延びているので(図11)、吸気/排水開口74cから水を排出している状態においても、吸気/排水開口74cを通して外気を吸入する流路面積を大きく確保することができ、大気を確実に吸入することができる。
【0139】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、排水/真空破壊弁装置30に水が供給されていない状態において、フラップ弁体80は、重心位置が最も低下した待機姿勢(図12)になるので、単純な構造で、自重により弁体を待機姿勢に戻すことができる。
【0140】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、フラップ弁体80が錘82aを備えているので、フラップ弁体80に働く重力を大きくすることができ、単純な構造でフラップ弁体80を確実に待機姿勢に復帰させることができる。
【0141】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、フラップ弁体80を、吸気/排水開口74cを開放する方向に付勢するコイルスプリング84を備えているので(図13)、排水/真空破壊弁装置30への水の供給が停止されたとき、確実に吸気/排水開口74cを開放することができる。
【0142】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、吸気/排水開口74cが所定量以上開放された状態では、フラップ弁体80に付勢力が作用しないので(図12)、排水/真空破壊弁装置30への給水が開始されたとき、容易にフラップ弁体80を移動させ閉塞させることができる。一方、吸気/排水開口74cの開度が所定量未満の場合には、フラップ弁体80に付勢力が作用するため(図13)、排水/真空破壊弁装置への水の供給が停止されたとき、容易に弁体を開放させることができる
【0143】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、流量抑制手段であるオリフィス24d(図2)により、排水/真空破壊弁装置30へ逆流する水の流量が抑制されるので、排水弁水圧駆動部14から大流量の水が逆流して、吸気/排水開口74cが満水となり、外気が吸入できなくなるのを防止することができる。
【0144】
次に、図15乃至図17を参照して、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置及びそれを備えた水洗便器装置を説明する。
本実施形態の洗浄水タンク装置は、排水/真空破壊弁装置の構造が上述した第1実施形態とは異なっており、その他の構成は第1実施形態と同一である。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0145】
図15は本発明の第2実施形態の洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の斜視図である。図16は、給水制御装置からの給水が行われていない状態における排水/真空破壊弁装置の断面図であり、図17は給水が行われている状態における排水/真空破壊弁装置の断面図である。
【0146】
図15乃至図17に示すように、本実施形態における排水/真空破壊弁装置130は、弁体ケース172と、弁体であるフラップ弁体180と、パッキン182と、を有する。
また、弁体ケース172は、箱状の本体部174と、この本体部174の上面に取り付けられた蓋部材176と、流入管接続部材177(図16)と、本体部174の下部側面に取り付けられた流出管接続部材178から構成されている。
【0147】
弁体ケース172の本体部174は、下方に向かって拡大した概ね台形の箱状に構成され、その一方の側面が鉛直に向けられ、他方の側面が傾斜するように構成されている。また、本体部174の上面は開口されており、この開口部を塞ぐように蓋部材176が取り付けられている。さらに、本体部174の鉛直に向けられた側面の上部には、上部取付部174aが設けられており、そこに流入管接続部材177が取り付けられている。また、本体部174の傾斜した側面の下部には下部取付部174bが設けられており、そこに流出管接続部材178が取り付けられている。さらに、本体部174の傾斜した側面には、下部取付部174bの上側に、吸気/排水開口174cが設けられている。
【0148】
この吸気/排水開口174cは、縦長の長方形の開口である。フラップ弁体180が開弁された状態では、この吸気/排水開口174cを介して外気が吸入されると共に、流入管24aから逆流した水が流出し、貯水タンク10内に排出される。即ち、吸気/排水開口174cは、本体部174の傾斜した側面に形成された開口であり、水平方向よりも鉛直方向に長く形成されている。また、吸気/排水開口174cの上縁174dは水平方向に延びるように直線状に形成され、下縁174eは、円弧状に延びている。排水/真空破壊弁装置130へ逆流した水は、下縁174eを越えて貯水タンク10内に排出される。
【0149】
流入管接続部材177には、本体部174を貫通するように、水平方向に延びる通水管取付部177aが設けられている。通水管取付部177aの一端は、本体部174の外方に向けて、吸気/排水開口174cの反対方向に突出しており、そこに給水制御装置18(図2)から延びる通水管が接続される。一方、通水管取付部177aの他端は、本体部174の内部に開口しており、給水制御装置18から供給された水は、通水管取付部177a他端の流入口177bを通って排水/真空破壊弁装置130内に流入する。この流入口177bは、排水/真空破壊弁装置130内に配置されたフラップ弁体180の背面に向けて開口している。即ち、給水制御装置18から流出した水は、排水/真空破壊弁装置130の上部側面に設けられた通水管取付部177aを通って、流入口177bから水平方向に弁体ケース172内に流入する。
【0150】
流出管接続部材178には、水平方向に向けて突出するように通水管取付部178aが設けられており、この通水管取付部178aに流入管24aが接続されている。このため、給水制御装置18から供給され、弁体ケース172内に流入した水は、通水管取付部178aの上流端の流出口178bを通って排水/真空破壊弁装置130から流出し、流入管24aを介して排水弁水圧駆動部14に供給される。即ち、排水/真空破壊弁装置130に流入した水は、流出口178bを通って排水弁水圧駆動部14に供給される。なお、吸気/排水開口174cの面積は、流出口178bの面積よりも大きく形成され、流入口177bは流出口178bよりも上方に設けられている。
【0151】
フラップ弁体180は、弁体ケース172内に回動可能に取り付けられた概ね長方形板状の部材であり、吸気/排水開口174cを開閉するように構成されている。また、フラップ弁体180の上端には、水平方向に延びる中心軸線である支軸180aが形成されている。この支軸180aは蓋部材176に設けられた軸受部176aによって回動可能に支持され、フラップ弁体180は、図16に示す状態と、図17に示す状態の間で回動される。なお、支軸180aは、吸気/排水開口174cの垂直投影面の外側に配置されている。即ち、支軸180aは、吸気/排水開口174cが形成されている面(傾斜面)に対して垂直に光を当てることにより形成される吸気/排水開口174cの投影面よりも外側に位置している。
【0152】
また、上記のように、フラップ弁体180の上部背面側には、通水管取付部177aが配置されており、給水制御装置18から供給された水は、流入口177bからフラップ弁体180の背面に向けて吐出される。このため、流入口177bを介して水が流入すると、フラップ弁体180の背面が吸気/排水開口174cに向けて押され、フラップ弁体180は、図16に示す状態から図17に示す状態に回動される。
【0153】
さらに、フラップ弁体180は、支軸180aから下方に延びる弁板部180bと、弁板部180bの下側に設けられた排水受部180cと、を有する。弁板部180bは、本体部174の傾斜した側面に設けられた吸気/排水開口174cに対向するように配置され、フラップ弁体180が図17に示す状態に回動されると、吸気/排水開口174cを覆うように構成されている。また、弁板部180bの、吸気/排水開口174cに対向する側の面には、薄板状のパッキン182が取り付けられており、フラップ弁体180が図17に示す状態に回動されたとき、弁板部180bと吸気/排水開口174cの間がシールされる。ここで、フラップ弁体180の支軸180aは、吸気/排水開口174cの垂直投影面の外側に配置されているため、フラップ弁体180が図17の状態に回動された状態において、パッキン182の潰し代を確実に確保することができる。
【0154】
排水受部180cは、弁板部180bの下側に形成され、流出管接続部材178の流出口178bに対向するように配置される。このため、流入管24aから通水管取付部178aに水が逆流してくると、排水受部180cが押されて、フラップ弁体180は図17に示す状態から図16に示す状態に回動される。通水管取付部178aから逆流した水は、吸気/排水開口174cを通って流出し、貯水タンク10内に排出される。
【0155】
さらに、弁板部180bには、吸気/排水開口174cから突出するように、錘取付部180dが設けられ、この錘取付部180dの先端部には、錘182aが取り付けられている。この錘182aを取り付けることにより、フラップ弁体180全体の重心が、支軸180aよりも吸気/排水開口174cに近い側(図16図17における右側)に位置するようになる。この結果、支軸180aを中心に図17における時計回りにフラップ弁体180を回動させる力のモーメントが作用し、水の静圧及び動圧が作用しない待機状態では、フラップ弁体180は図16に示す位置に回動される。即ち、フラップ弁体180は、排水/真空破壊弁装置130に水が供給されていない状態において、フラップ弁体180の重心位置が最も低下した、図16に示す待機姿勢にされる。
【0156】
変形例として、本体部174の外周面に、吸気/排水開口174cを覆うようにカバーを取り付けることもできる。このカバーにより、吸気/排水開口174cから貯水タンク10内に排出される水が飛散するのを抑制することができる。また、カバーの吸気/排水開口174cと対向する面に排出水が衝突することで、フラップ弁体180付近に水が一時的に滞留し、フラップ弁体180の開方向への回動をより容易に行うことができる。
【0157】
また、別の変形例として、本体部174内の流出口178bよりも下方にさらに空間を形成し、この空間内にフラップ弁体180を延長することもできる。即ち、排水受部180cの下端から下方に向けて延びる先端部を形成してもよい。この別の変形例によっては、流入管24aから通水管取付部178aに水が逆流してきた場合、下縁174eを形成する部分により、逆流水を排水受部180cへと導くことができる。また、流入口177bを介して水が流入する場合、下縁174eを形成する部分により、吸気/排水開口174cから水が排出されることを抑止して内圧を高めるとともに、下縁174eを形成する部分と対向する下側の位置に本体部174内へ突出する部分がないためスムーズに水が流出口178bから流れ出ることができる。さらに、先端部には、本体部174内壁との間に付勢ばね及びこの付勢ばねを覆うばねカバーを設けてもよい。
【0158】
次に、本発明の第2実施形態による洗浄水タンク装置、及び水洗便器装置の作用を説明する。
まず、便器洗浄の指示信号が受信されると、給水制御装置18からの給水が行われ、排水/真空破壊弁装置130に水が流入する。排水/真空破壊弁装置130に水が流入すると、図16に示すように、フラップ弁体180の背面が吸気/排水開口174cに向けて押され、フラップ弁体180が図17に示す位置に回動される。これにより、排水/真空破壊弁装置130の吸気/排水開口174cがフラップ弁体180によって閉塞される。排水/真空破壊弁装置130の流入口177bから流入した水は、図17に矢印で示すように、弁体ケース172内に流入し、さらに、排水受部180cを迂回して流出口178bから流入管24aに流入する。
【0159】
これにより、排水弁水圧駆動部14に洗浄水が供給される。排水弁水圧駆動部14に洗浄水が供給された後の洗浄水タンク装置による便器洗浄作用は、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0160】
次いで、便器洗浄終了後、給水制御装置18からの給水が停止されると、排水/真空破壊弁装置130に備えられたフラップ弁体180の弁板部180b(図17)の背面に、給水による動圧が作用しなくなる。この結果、フラップ弁体180に作用する重力により、フラップ弁体180は、図17に示す状態から、図16に示す状態に向けて回動され、吸気/排水開口174cが開弁される。一方、給水制御装置18からの給水が停止されると、第2の位置に押し上げられていた排水弁水圧駆動部14のピストン14b(図4)が、スプリング14cの付勢力により押し下げられる。これにより、シリンダ14aの圧力室16a内に満たされていた水の多くは、流入管24aを通って排水/真空破壊弁装置130の方に逆流する。
【0161】
流入管24aから排水/真空破壊弁装置130に逆流した水は、図16に実線の矢印で示すように、通水管取付部178aの流出口178bを通って弁体ケース172に流入し、吸気/排水開口174cの下縁174eを越えて流出する。排水/真空破壊弁装置130の吸気/排水開口174cから流出した水は、貯水タンク10内に排出される。また、流出口178bは、流入口177bよりも下方に設けられているので、流出口178bを通って排水/真空破壊弁装置130の中に逆流した水が、流入口177bへ逆流するのを防止することができる。
【0162】
さらに、吸気/排水開口174cの面積は流出口178bの面積よりも大きく形成されているので、流出口178bを通って逆流した水により、吸気/排水開口174cが満水にされることはなく、逆流した水は速やかに排出される。この構成により、流出口178bを通って排水/真空破壊弁装置130の中に逆流した水が、上流側の給水制御装置18へ逆流するのを確実に防止することができる。また、排水弁水圧駆動部14から逆流した水を速やかに排出することができるため、シリンダ14a内に残留した水は早期に排出され、洗浄水タンク装置を速やかに初期状態に復帰させることができる。
【0163】
一方、排水/真空破壊弁装置130の吸気/排水開口174cが開弁されると、図16に破線の矢印で示すように、外気が吸気/排水開口174cの上部を通って弁体ケース172内に吸入される。即ち、吸気/排水開口174cは縦長に形成されているため、流出口178bを通って逆流してきた水を吸気/排水開口174cの下部から排出すると同時に、吸気/排水開口174cの上部からは外気を容易に導入することができる。このように、給水制御装置18からの給水が停止され、通水管取付部177aの側が負圧になった場合でも、排水/真空破壊弁装置130から外気が吸入されるので、流入管24aから逆流した水の、給水制御装置18への逆流が阻止される。ここで、吸気/排水開口174cの上縁174dは水平方向に向けて直線状に形成されているため、吸気/排水開口174cが少しでも開弁されると、外気を吸入するための比較的大きな流路が確保される。
【0164】
さらに、図16に示すように、流入口177bは、吸気/排水開口174cの上縁174dよりも下方に位置するため、弁体ケース172内の水が、通水管取付部177aの中に逆流することはなく、逆流を確実に防止することができる。このように、排水/真空破壊弁装置130のフラップ弁体180は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放すると同時に、排水弁水圧駆動部14から逆流した水を排水するように作動する。排水/真空破壊弁装置130は、下流側から逆流した水を排出する機能と、管路内に外気を吸入する機能を併せ持っており、吸気/排水開口174cは、外気の吸入口及び管路内の水の排水口として機能する。
【0165】
本発明の第2実施形態の洗浄水タンク装置によれば、吸気/排水開口174cが傾斜面に設けられているので(図16)、フラップ弁体180を自重により、容易に待機位置に復帰させることができる。
【0166】
次に、図18乃至図21を参照して、本発明の第3実施形態による洗浄水タンク装置及びそれを備えた水洗便器装置を説明する。
本実施形態の洗浄水タンク装置は、排水/真空破壊弁装置の構造が上述した第1実施形態とは異なっており、その他の構成は第1実施形態と同一である。従って、ここでは、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0167】
図18は本発明の第3実施形態の洗浄水タンク装置に備えられている排水/真空破壊弁装置の斜視図である。図19はケースの一部を破断して示した排水/真空破壊弁装置の斜視図であり、給水制御装置からの給水が行われていない状態を示している。図20はケースの一部を破断して示した排水/真空破壊弁装置の斜視図であり、給水制御装置からの給水が行われている状態を示している。図21は、排水/真空破壊弁装置の内部構造を示す水平断面図である。
【0168】
図18乃至図21に示すように、本実施形態における排水/真空破壊弁装置230は、弁体ケース272と、弁体であるフラップ弁体280と、パッキン282と、を有する。
また、弁体ケース272は、円筒状の本体部274と、この本体部274の上面に取り付けられた蓋部材276から構成されている。
【0169】
弁体ケース272の本体部274は、中心軸線が鉛直方向に向けられた概ね円筒形に構成されている。また、本体部274の上面は開口されており、この開口部を塞ぐように蓋部材276が取り付けられている。さらに、本体部274の外周面の上部には流入側通水管取付部274aが設けられ、外周面の下部には流出側通水管取付部274bが設けられている。また、本体部274の外周面には吸気/排水開口274cも設けられている。
【0170】
さらに、本体部274の外周面にはカバー278(図21)が取り付けられている。このカバー278は、本体部274側面に設けられた吸気/排水開口274cを覆うように取り付けられている。吸気/排水開口274cから流出した水は、カバー278と本体部274の外周面の間の隙間を通って排水/真空破壊弁装置230の外部に流出する。
【0171】
流入側通水管取付部274aは、本体部274の上部側面から、本体部274の中心軸線に対して直角を為す方向に、水平方向に突出するように形成された円管である。また、流出側通水管取付部274bは、本体部274の下部側面から、本体部274の中心軸線に対して直角を為す方向に、水平方向に突出するように形成された円管である。さらに、流入側通水管取付部274aの基端は、供給された水を流入させる流入口274d(図21)として本体部274の内側に開口し、流出側通水管取付部274bの基端は、排水/真空破壊弁装置230内の水を流出させる流出口274eとして本体部274の内側に開口している。
【0172】
この流入側通水管取付部274a基端の流入口274dは、流出側通水管取付部274b基端の流出口274eよりも上方に設けられている。また、流出口274eは、本体部274の側面に形成された吸気/排水開口274cの下端よりも下側に設けられている。また、流入側通水管取付部274aには、給水制御装置18(図2)から延びる通水管が接続され、給水制御装置18から供給された水は、流入口274dを通って弁体ケース272内に流入する。また、流出側通水管取付部274bには、流入管24aが接続され、弁体ケース272内に流入した水は、流出口274eを通って流出する。
【0173】
また、流出側通水管取付部274bは流入側通水管取付部274aの反対側に設けられ、これら流入側通水管取付部274aと流出側通水管取付部274bは、上面視において平行に向けられている(図21)。さらに、本体部274の外周面に設けられた吸気/排水開口274cは、流入側通水管取付部274a及び流出側通水管取付部274bに対して直角を為す方向に向けられている。
【0174】
吸気/排水開口274cは、縦長の長円形の開口である(図19)。フラップ弁体280が開弁された状態では、この吸気/排水開口274cを介して外気が吸入されると共に、流入管24aから逆流した水が流出し、貯水タンク10内に排出される。即ち、吸気/排水開口274cは、本体部274の鉛直に向けられた面に形成された開口であり、水平方向よりも鉛直方向に長く形成されている。排水/真空破壊弁装置230へ逆流した水は、吸気/排水開口274cの下縁を越えて貯水タンク10内に排出される。
【0175】
図19に示すように、フラップ弁体280は、弁体ケース272内に回動可能に取り付けられた2枚の長方形板状の部分から構成された部材であり、吸気/排水開口274cを開閉するように構成されている。フラップ弁体280は、第1平板部280aと、第2平板部280bと、これらを連結する連結部280cから構成されている。第1平板部280aと第2平板部280bは、所定の角度を為すように1つの長辺で接合されており、これら第1平板部280aと第2平板部280bの間が、概ね扇形の連結部280cによって連結されている。また、図20に示すように、第2平板部280bは、弁体ケース272の天井面付近から底面まで延びている。これに対し、第1平板部280aは、弁体ケース272の天井面付近から底面よりも所定距離上方の位置まで延びており、第1平板部280aの下端と弁体ケース272の底面との間には隙間が設けられている。
【0176】
さらに、円筒形の弁体ケース272内には、軸線方向に延びるシャフト281が設けられている。このシャフト281は、フラップ弁体280の第1平板部280aと第2平板部280bの接合部を回動可能に支持し、フラップ弁体280はシャフト281を中心に回動される。フラップ弁体280が、図19に示す位置に回動された状態では、第2平板部280bが流入側通水管取付部274aと対向し、図20に示す位置に回動された状態では、第1平板部280aが吸気/排水開口274cと対向する。なお、シャフト281は、吸気/排水開口274cの垂直投影面の外側に配置されている。即ち、シャフト281は、吸気/排水開口274cに対して垂直に光を当てることにより形成される吸気/排水開口274cの投影面よりも外側に位置している。
【0177】
さらに、図20に示すように、フラップ弁体280の上側には捩りコイルばね284が配置され、この捩りコイルばね284は、シャフト281の周囲を取り囲むように取り付けられている。フラップ弁体280は、捩りコイルばね284により、開方向に、即ち、図20に示す位置から図19に示す位置に回動するように付勢されている。
【0178】
また、上記のように、フラップ弁体280の第2平板部280bは、流入側通水管取付部274a基端の流入口274dと対向しており、第2平板部280bの、流入口274dと対向する位置には、円板状の小パッキン283(図21)が取り付けられている。給水制御装置18から供給された水は、流入口274dから第2平板部280bに向けて吐出されるため、水が流入すると、第2平板部280bが押圧され、フラップ弁体280は図21における時計回りに回動される。これにより、フラップ弁体280は、図19に示す状態から図20に示す状態に回動される。
【0179】
さらに、上記のように、フラップ弁体280の第1平板部280aは、吸気/排水開口274cと対向しており、フラップ弁体280が図20に示す状態に回動されると、吸気/排水開口274cを覆うように構成されている。また、第1平板部280aの、吸気/排水開口274cに対向する側の面には、薄板状のパッキン282(図19)が取り付けられており、フラップ弁体280が図20に示す状態に回動されたとき、第1平板部280aと吸気/排水開口274cの間がシールされる。ここで、フラップ弁体280を支持するシャフト281は、吸気/排水開口274cの垂直投影面の外側に配置されているため、フラップ弁体280が図20の状態に回動された状態において、パッキン282の潰し代を確実に確保することができる。
【0180】
一方、流入管24aから流出側通水管取付部274bに水が逆流した場合には、逆流した水が、フラップ弁体280の第1平板部280aと弁体ケース272の底面との間の隙間を通って、第2平板部280bの背面に当たる。これにより、フラップ弁体280は図20に示す状態から図19に示す状態に回動される。流出側通水管取付部274bから逆流した水は、吸気/排水開口274cを通って流出し、貯水タンク10内に排出される。
【0181】
次に、本発明の第3実施形態による洗浄水タンク装置、及び水洗便器装置の作用を説明する。
まず、便器洗浄の指示信号が受信されると、給水制御装置18からの給水が行われ、排水/真空破壊弁装置230に水が流入する。排水/真空破壊弁装置230に水が流入すると、フラップ弁体280の第2平板部280bが押され、フラップ弁体280は、捩りコイルばね284の付勢力に抗して図20に示す位置に回動される。これにより、排水/真空破壊弁装置230の吸気/排水開口274cがフラップ弁体280の第1平板部280aによって閉塞される。排水/真空破壊弁装置230の流入口274dから流入した水は、弁体ケース272内で、フラップ弁体280を迂回して流出口274eから流入管24aに流入する。
【0182】
これにより、排水弁水圧駆動部14に洗浄水が供給される。排水弁水圧駆動部14に洗浄水が供給された後の洗浄水タンク装置による便器洗浄作用は、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0183】
次いで、便器洗浄終了後、給水制御装置18からの給水が停止されると、排水/真空破壊弁装置230に備えられたフラップ弁体280の第2平板部280bに、給水による動圧が作用しなくなる。この結果、捩りコイルばね284の付勢力により、フラップ弁体280は、図20に示す状態から、図19に示す状態に向けて回動され、吸気/排水開口274cが開弁される。一方、給水制御装置18からの給水が停止されると、第2の位置に押し上げられていた排水弁水圧駆動部14のピストン14b(図4)が、スプリング14cの付勢力により押し下げられる。これにより、シリンダ14aの圧力室16a内に満たされていた水の多くは、流入管24aを通って排水/真空破壊弁装置230の方に逆流する。
【0184】
流入管24aから排水/真空破壊弁装置230に逆流した水は、図19に実線の矢印で示すように、流出側通水管取付部274bの流出口274eを通って弁体ケース272に流入し、吸気/排水開口274cの下縁を越えて流出する。排水/真空破壊弁装置230の吸気/排水開口274cから流出した水は、貯水タンク10内に排出される。また、流出口274eは、流入口274dよりも下方に設けられているので、流出口274eを通って排水/真空破壊弁装置230の中に逆流した水が、流入口274dへ逆流するのを防止することができる。
【0185】
さらに、吸気/排水開口274cの面積は流出口274eの面積よりも大きく形成されているので、流出口274eを通って逆流した水により、吸気/排水開口274cが満水にされることはなく、逆流した水は速やかに排出される。この構成により、流出口274eを通って排水/真空破壊弁装置230の中に逆流した水が、上流側の給水制御装置18へ逆流するのを確実に防止することができる。また、排水弁水圧駆動部14から逆流した水を速やかに排出することができるため、シリンダ14a内に残留した水は早期に排出され、洗浄水タンク装置を速やかに初期状態に復帰させることができる。
【0186】
一方、排水/真空破壊弁装置230の吸気/排水開口274cが開弁されると、図19に破線の矢印で示すように、外気が吸気/排水開口274cの上部を通って弁体ケース272内に吸入される。即ち、吸気/排水開口274cは縦長に形成されているため、流出口274eを通って逆流してきた水を吸気/排水開口274cの下部から排出すると同時に、吸気/排水開口274cの上部からは外気を容易に導入することができる。このように、給水制御装置18からの給水が停止され、流入側通水管取付部274aの側が負圧になった場合でも、排水/真空破壊弁装置230から外気が吸入されるので、流入管24aから逆流した水の、給水制御装置18への逆流が阻止される。
【0187】
このように、排水/真空破壊弁装置230のフラップ弁体280は、上流側からの水の供給が停止されると、上流側を大気に開放すると同時に、排水弁水圧駆動部14から逆流した水を排水するように作動する。排水/真空破壊弁装置230は、下流側から逆流した水を排出する機能と、管路内に外気を吸入する機能を併せ持っており、吸気/排水開口274cは、外気の吸入口及び管路内の水の排水口として機能する。
【0188】
本発明の第3実施形態の洗浄水タンク装置によれば、フラップ弁体280が鉛直方向に向けられたシャフト281により支持されているので、実質的に重力の影響を受けることなく、フラップ弁体280を回動させることができる。
【0189】
次に、図22及び図23を参照して、本発明の第4実施形態による洗浄水タンク装置及びそれを備えた水洗便器装置を説明する。
本実施形態の洗浄水タンク装置は、発電機を備えており、この発電機によって生成された電力により給水制御装置の電磁弁を作動させる点が上述した第1実施形態とは異なっている。従って、ここでは、本発明の第4実施形態の、第1実施形態とは異なる構成、作用、効果のみを説明し、同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0190】
図22は、本発明の第4実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す正面断面図である。図23は、本発明の第4実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す平面断面図である。
【0191】
図22及び図23に示すように、本発明の第4実施形態による洗浄水タンク装置304は、貯水タンク10の内部に発電機310を備えている。この発電機310は、水車310a及び発電部310bを備えている。水車310aは、発電機310に供給された水の流れにより回転されるように構成されている。また、発電部310bは、水車310aの回転により電力を生成するように構成されている。
【0192】
発電機310によって生成された電力は、コントローラ28に送られ、コントローラ28に内蔵された蓄電池(図示せず)に蓄積されるように構成されている。これにより、洗浄水タンク装置304による水洗便器本体2の洗浄が行われる度に発電機310に水が供給されて電力が生成され、蓄電池(図示せず)に蓄積される。本実施形態の洗浄水タンク装置304においては、発電機310によって生成され、蓄電池(図示せず)に蓄積された電力により、コントローラ28及び給水制御装置18の電磁弁20が作動される。このため、洗浄水タンク装置304は、外部電源が確保できないトイレ室にも設置することができる。なお、コントローラ28による給水制御装置18の電磁弁20の制御、及び給水制御装置18の作用は、上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0193】
また、図22に示すように、発電機310は、オーバーフロー管10bの上端に、貯水タンク10内の止水水位L1よりも上方に位置するように取り付けられている。即ち、発電機310は、オーバーフロー管10b上端の上端開口よりも上方に配置されているため、貯水タンク10内の水位が上昇した状態でも水没することがない。さらに、本実施形態において、発電機310は、貯水タンク10内を平面視で左右方向X1(図23)に三等分した左側領域L、中央領域C、及び、右側領域Rのうちの右側領域R内に配置されている。また、図23に示すように、本実施形態において、発電機310は、貯水タンク10内を平面視で前後方向Y1に二等分した後ろ側の領域内に配置されている。
【0194】
さらに、本実施形態において、給水制御装置18及び排水/真空破壊弁装置30は左側領域L内に配置され、排水弁水圧駆動部14は中央領域Cに配置されている。なお、図23に示すように、本実施形態において、排水弁水圧駆動部14は、平面視において、貯水タンク10の前後方向のほぼ中央に配置されている。
【0195】
また、本実施形態において、排水弁水圧駆動部14は、外郭部314を備えている。この外郭部314は、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14a等を貯水タンク10に対して支持するフレーム状の部材であり、シリンダ14aは外郭部314の上方に設けられている。さらに、図23に示すように、外郭部314は、平面視において排水弁12を取り囲むように配置されている。
【0196】
ここで、図22に示すように、給水制御装置18と排水/真空破壊弁装置30の間は通水管320によって接続され、排水/真空破壊弁装置30とシリンダ14aの間は通水管322によって接続されている。さらに、シリンダ14aと発電機310の間は通水管324によって接続され、発電機310の下流側には通水管326が接続されている。なお、発電機310から延びる通水管326は、一旦、上方に向かって延びており、発電機310への水の供給が停止された後も、発電機310内の水車310aの周囲に水が残留するようになっている。
【0197】
このような構成により、給水制御装置18から供給された水は通水管320を通って排水/真空破壊弁装置30に流入し、排水/真空破壊弁装置30から流出した水は通水管322を通ってシリンダ14aに流入する。さらに、シリンダ14aから流出した水は通水管324を通って発電機310に流入し、発電機310から流出した水は通水管326を通って貯水タンク10内に流入する。即ち、発電機310から通水管326に流入した水は、通水管326末端の出口326aから流出し、貯水タンク10内の水面の着水位置Q1に着水する。
【0198】
図22に示すように、通水管326は、貯水タンク10の右側領域R内に配置された発電機310から、左側領域L内に位置する出口326aまで概ね水平方向に延びており、出口326aから流出した水W1の着水位置Q1も左側領域L内に位置する。従って、右側領域R内に配置された発電機310は、左側領域L内に位置する着水位置Q1に対し、排水弁水圧駆動部14の外郭部314を挟んで逆側に配置されている。換言すれば、発電機310は、貯水タンク10内を平面視で左右方向X1に左側領域L、中央領域C、及び、右側領域Rに三等分した場合において、着水位置Q1が属する領域とは異なる領域内に配置されている。なお、変形例として、発電機310を左側領域Lに配置し、着水位置Q1が右側領域Rに位置するように本発明を構成することもできる。
【0199】
また、本実施形態においては、排水/真空破壊弁装置30も左側領域L内に配置されているため、排水/真空破壊弁装置30の吸気/排水開口74cから排水された水W2の着水位置Q2も左側領域L内に位置する。このため、右側領域R内に配置された発電機310は、左側領域L内に位置する着水位置Q2に対し、排水弁水圧駆動部14の外郭部314を挟んで逆側に配置されている。換言すれば、発電機310は、貯水タンク10内を平面視で左右方向X1に左側領域L、中央領域C、及び、右側領域Rに三等分した場合において、着水位置Q2が属する領域とは異なる領域内に配置されている。なお、変形例として、発電機310を左側領域Lに配置し、着水位置Q2が右側領域Rに位置するように本発明を構成することもできる。
【0200】
さらに、図23に示すように、排水/真空破壊弁装置30の吸気/排水開口74cから排水された水W2の着水位置Q2は、貯水タンク10内を平面視で前後方向Y1に二等分した前側の領域内に位置している。従って、貯水タンク10の後ろ側の領域に配置された発電機310は、前側の領域内に位置する着水位置Q2に対し、排水弁水圧駆動部14の外郭部314を挟んで逆側に配置されている。換言すれば、発電機310は、貯水タンク10内を前後方向に二等分した場合において、着水位置Q2が属する領域とは異なる領域内に配置されている。なお、変形例として、発電機310を前側の領域内に配置し、着水位置Q2が後ろ側の領域に位置するように本発明を構成することもできる。
【0201】
本発明の第4実施形態の洗浄水タンク装置304によれば、発電機310が、貯水タンク10内の止水水位L1よりも上方に配置されている(図22)と共に、平面視の左右方向において、排水/真空破壊弁装置30から排出された水が貯水タンク10内の水面に着水する着水位置Q2に対して外郭部314を挟んで逆側に配置されている。この結果、排水/真空破壊弁装置30から流出した水が貯水タンク10内の水面に着水することにより飛散した水が外郭部314によって阻まれるため、発電機310の被水を抑制することができる。
【0202】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置304によれば、平面視における左側領域L、中央領域C、及び、右側領域Rのうち、着水位置Q2が属する領域とは異なる領域内に発電機310が配置されている(図22)ので、着水位置Q2と発電機310との間の距離を比較的大きく確保することができる。これにより、排水/真空破壊弁装置30から流出した水が貯水タンク10内の水面に着水し、飛散した水が発電機310にかかるのを効果的に抑制することができる。
【0203】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置304によれば、排水/真空破壊弁装置30から流出した水の着水位置Q2が、貯水タンク10内の左側領域Lに位置するのに対し、発電機310は右側領域Rに配置されている(図22)。このため、貯水タンク10内の着水位置Q2と発電機310の間の距離を比較的大きく確保することができ、排水/真空破壊弁装置30から流出した水が貯水タンク10内の水面に着水し、飛散した水が発電機310にかかるのを効果的に抑制することができる。
【0204】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置304によれば、発電機310が、排水/真空破壊弁装置30から流出した水の着水位置Q2に対し、前後方向において外郭部314を挟んで逆側に配置されている(図23)ので、排水/真空破壊弁装置30から流出した水が着水位置Q2に着水して飛散した水を外郭部314によって阻むことができ、発電機310の被水を効果的に抑制することができる。
【0205】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置304によれば、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14aが外郭部314の上方に設けられている(図22)ので、排水/真空破壊弁装置30から流出した水が着水位置Q2に着水して飛散した水をシリンダ14aによっても阻むことができ、発電機310の被水をより効果的に抑制することができる。
【0206】
以上、本発明の実施形態による洗浄水タンク装置及びそれを備えた水洗便器装置を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、排水/真空破壊弁装置がフラップ式の弁体を備えていたが、直動式の弁体等、任意の形式の弁体を適用することができる。
【符号の説明】
【0207】
1 水洗便器装置
2 水洗便器本体(水洗便器)
2a ボウル部
4 洗浄水タンク装置
6 リモコン装置
8 人感センサ
10 貯水タンク
10a 排水口
10b オーバーフロー管
12 排水弁
12a 弁軸
12b 弁体部
12c 係合突起
12d 支持部
14 排水弁水圧駆動部
14a シリンダ
14b ピストン
14c スプリング
14d 隙間
14e パッキン(弾性部材)
14f スリーブ
14g 流出ガイド部
15 ロッド(駆動部材)
15a 薄肉部
15b 引上部
15c 上面
15d 被当接部
16a 圧力室
16b 背圧室
17 連通流路
17a 上端開口(背圧室開口)
17b 側面開口(ロッド開口)
17c 縁部
18 給水制御装置
20 電磁弁
22 クラッチ機構
24a 流入管
24b 流出管
24c 流出管分岐部
24d オリフィス(流量抑制手段)
25a 流入口
25b 流出口
26 排水弁フロート機構(フロート機構)
26a フロート部(フロート)
26b 係合部
26c フロート軸
28 コントローラ
30 排水/真空破壊弁装置
32 給水管
32a 止水栓
32b 定流量弁
34 給水弁フロート
36 本体部
36a 圧力室
38 主弁体
40 弁座
42 アーム部
44 フロート側パイロット弁
50 電磁弁側パイロット弁
60 可動部材
62 ベースプレート
64 アーム
66 回転軸
68 当接部
70 規制部
72 弁体ケース
74 本体部
74a 開口部
74b 取付部
74c 吸気/排水開口
74d 上縁
74e 下縁
76 流入管接続部材
76a 通水管取付部
76b 軸受部
76c 流入口
78 流出管接続部材
78a 通水管取付部
78b 流出口
80 フラップ弁体(弁体)
80a 支軸(中心軸線)
80b 供給水受部
80c 弁板部
80d 排水受部
80e 錘取付部
82 パッキン
82a 錘
84 コイルスプリング(付勢ばね)
90 負圧破壊弁
92 負圧破壊弁体
94 大気開口
96a 主弁口
96b 主弁体
98 流出口
130 排水/真空破壊弁装置
172 弁体ケース
174 本体部
174a 上部取付部
174b 下部取付部
174c 吸気/排水開口
174d 上縁
174e 下縁
176 蓋部材
176a 軸受部
177 流入管接続部材
177a 通水管取付部
177b 流入口
178 流出管接続部材
178a 通水管取付部
178b 流出口
180 フラップ弁体
180a 支軸
180b 弁板部
180c 排水受部
180d 錘取付部
182 パッキン
182a 錘
230 排水/真空破壊弁装置
272 弁体ケース
274 本体部
274a 流入側通水管取付部
274b 流出側通水管取付部
274c 吸気/排水開口
274d 流入口
274e 流出口
276 蓋部材
278 カバー
280 フラップ弁体
280a 第1平板部
280b 第2平板部
280c 連結部
281 シャフト
282 パッキン
283 小パッキン
284 捩りコイルばね
304 洗浄水タンク装置
310 発電機
310a 水車
310b 発電部
314 外郭部
320 通水管
322 通水管
324 通水管
326 通水管
326a 出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24