(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】信号検出装置、受信装置および信号検出方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/10 20060101AFI20241119BHJP
H04B 17/318 20150101ALI20241119BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20241119BHJP
H04L 27/14 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H04B1/10 B
H04B17/318
H04B1/16 R
H04L27/14
(21)【出願番号】P 2021046736
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 秀章
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092697(JP,A)
【文献】特開平1-183246(JP,A)
【文献】特開2012-019498(JP,A)
【文献】特開平3-149942(JP,A)
【文献】特表平4-501489(JP,A)
【文献】特開平8-265238(JP,A)
【文献】特開2008-42760(JP,A)
【文献】特開2008-113300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
H04B 17/318
H04B 1/16
H04L 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交検波された信号の強度を検出する強度検出部と、
直交検波された信号の所定期間のゼロクロス回数を検出するゼロクロス検出部と、
前記強度検出部で検出された信号強度がしきい値以上であり、かつ、前記ゼロクロス検出部で検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内である場合、直交検波された信号が受信信号であると判定する信号判定部と、
を備えることを特徴とする信号検出装置。
【請求項2】
直交検波された信号の強度を検出する強度検出部と、
直交検波された信号を微分した微分信号の、所定期間のゼロクロス回数を検出するゼロクロス検出部と、
前記強度検出部で検出された信号強度がしきい値以上であり、かつ、前記ゼロクロス検出部で検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内である場合、直交検波された信号が受信信号であると判定する信号判定部と、
を備えることを特徴とする信号検出装置。
【請求項3】
直交検波部と、
前記直交検波部で直交検波された信号が供給される請求項1または2に記載の信号検出装置と、
前記直交検波部で直交検波された信号をFM検波して、検波信号を生成するFM検波部と、
前記FM検波部で生成された検波信号の復調帯域外のノイズレベルを検出し、検出したノイズレベルに基づいて、直交検波された信号が受信信号であるか否か判定するノイズスケルチ判定部と、
前記FM検波部で生成された検波信号に基づく音声信号を出力するか否か制御するオーディオ制御部と、
を備え、
前記オーディオ制御部は、
前記信号判定部が受信信号ではないと判定した場合、音声信号を出力せず、
前記信号判定部が受信信号であると判定し、かつ、前記ノイズスケルチ判定部が受信信号ではないと判定した場合、音声信号を出力せず、
前記信号判定部が受信信号であると判定し、かつ、前記ノイズスケルチ判定部が受信信号であると判定した場合、音声信号を出力する、
ことを特徴とする受信装置。
【請求項4】
直交検波部と、
前記直交検波部で直交検波された信号が供給される請求項1または2に記載の信号検出装置と、
前記直交検波部で直交検波された信号をFM検波して、検波信号を生成するFM検波部と、
前記FM検波部で生成された検波信号の復調帯域外のノイズレベルを検出し、検出したノイズレベルに基づいて、直交検波された信号が受信信号であるか否か判定するノイズスケルチ判定部と、
前記直交検波部が受信する対象のチャネルを変更するチャネルスキャン制御部と、
を備え、
前記チャネルスキャン制御部は、
所定の第1時間内に前記信号判定部が受信信号であると判定しない場合、前記第1時間が経過するとチャネルを変更し、
前記第1時間より長い所定の第2時間内に、前記信号判定部が受信信号であると判定し、かつ、前記ノイズスケルチ判定部が受信信号であると判定しない場合、前記第2時間が経過するとチャネルを変更し、
前記信号判定部が受信信号であると判定し、かつ、前記ノイズスケルチ判定部が受信信号であると判定した場合、チャネルの変更を停止する、
ことを特徴とする受信装置。
【請求項5】
直交検波された信号の強度を検出するステップと、
直交検波された信号の所定期間のゼロクロス回数、または、直交検波された信号を微分した微分信号の、所定期間のゼロクロス回数を検出するステップと、
検出された信号強度がしきい値以上であり、かつ、検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内である場合、直交検波された信号が受信信号であると判定するステップと、
を含むことを特徴とする信号検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号検出技術に関し、特に信号を検出する信号検出装置、受信装置および信号検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線装置は、信号検出処理を実行し、信号を検出した場合に信号の受信動作を実行する。これまで、信号検出は、RSSI(Received Signal Strength Indication)とスケルチの2段階でなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナを装着すると周囲の雑音の影響により、RSSI検出では高確率で信号ありと判定されるので、スケルチ検出処理が頻繁に実行される。また、スケルチ判定には復調処理やノイズ信号の積分処理等のため約60ms要するので、信号検出の速度が低下する。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、信号と雑音とを高速かつ高精度に判別できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の信号検出装置は、直交検波された信号の強度を検出する強度検出部と、直交検波された信号の所定期間のゼロクロス回数を検出するゼロクロス検出部と、強度検出部で検出された信号強度がしきい値以上であり、かつ、ゼロクロス検出部で検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内である場合、直交検波された信号が受信信号であると判定する信号判定部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様もまた、信号検出装置である。この装置は、直交検波された信号の強度を検出する強度検出部と、直交検波された信号を微分した微分信号の、所定期間のゼロクロス回数を検出するゼロクロス検出部と、強度検出部で検出された信号強度がしきい値以上であり、かつ、ゼロクロス検出部で検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内である場合、直交検波された信号が受信信号であると判定する信号判定部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、信号検出方法である。この方法は、直交検波された信号の強度を検出するステップと、直交検波された信号の所定期間のゼロクロス回数、または、直交検波された信号を微分した微分信号の、所定期間のゼロクロス回数を検出するステップと、検出された信号強度がしきい値以上であり、かつ、検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内である場合、直交検波された信号が受信信号であると判定するステップと、を含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号と雑音とを高速かつ高精度に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の直交検波部で生成されたI信号とQ信号のコンスタレーションの一例を示す図である。
【
図3】I信号とQ信号のコンスタレーションの別の例を示す図である。
【
図4】I信号とQ信号のコンスタレーションのさらに別の例を示す図である。
【
図5】希望波を受信した場合のI信号の波形とゼロクロス検出結果の例を示す図である。
【
図6】無信号時のI信号の波形とゼロクロス検出結果の例を示す図である。
【
図7】無信号時の
図1のチャネルスキャン制御部の動作を説明する図である。
【
図8】無信号時に信号判定部が受信信号であると判定した場合の
図1のチャネルスキャン制御部の動作を説明する図である。
【
図9】信号検出部による検出手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、無線の信号を受信する受信装置に関する。受信装置は、例えば、ダイレクト・コンバージョン型の直交検波を実行する。前述のごとく、無信号で周囲雑音が大きい環境においては、RSSI検出では信号ありと判定され、続くノイズスケルチ判定処理により信号なしと判定されるため、最終的に信号なしと判定されるまでに長時間を要する。そのため、チャネルスキャンにおいてスキャン速度が低下し、待ち受け電流も増加する。これに対応するために、本実施例に係る受信装置は、直交検波された信号のゼロクロス回数にもとづいて、信号と雑音とを高速かつ高精度に判別する。
【0013】
図1は、実施例の受信装置1の構成を示す。受信装置1は、アンテナ10、直交検波部12、スイッチ部14、FM検波部16、アナログ受信処理部18、オーディオ制御部20、スピーカ22、信号検出部30、ノイズスケルチ判定部32、および、チャネルスキャン制御部34を備える。信号検出部30は、強度検出部36、ゼロクロス検出部38、および、信号判定部40を備える。
【0014】
アンテナ10は、図示しない送信装置からのRF(Radio Frequency)信号を受信する。RF信号には、例えば、FM変調がなされているが、これに限定されない。アンテナ10は、受信したRF信号を直交検波部12へ出力する。
【0015】
直交検波部12は、アンテナ10からのRF信号を直交検波し、I相のベースバンド信号(以下、「I信号」という)と、I相のベースバンド信号とは直交したQ相のベースバンド信号(以下、「Q信号」という)を生成する。直交検波部12は、生成したI信号とQ信号をスイッチ部14、強度検出部36、および、ゼロクロス検出部38へ出力する。直交検波部12の処理には公知の技術が使用されればよいので、ここでは詳細な説明は省略する。直交検波部12は、例えば、アナログのデバイスで構成される。直交検波がデジタル信号処理によりなされてもよい。
【0016】
スイッチ部14、FM検波部16、アナログ受信処理部18、オーディオ制御部20、信号検出部30、ノイズスケルチ判定部32、および、チャネルスキャン制御部34の構成は、ハードウエア的には、DSP、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0017】
信号検出部30は、I信号とQ信号の少なくとも一方をもとに信号検出を実行する。強度検出部36とゼロクロス検出部38は、それぞれ、直交検波され、かつ所定のタイミングでサンプリングされたI信号とQ信号の少なくとも一方を受けつける。なお、I信号およびQ信号は、帯域制限フィルタにより帯域制限されている。
【0018】
強度検出部36は、直交検波された信号の強度を検出し、検出した強度を信号判定部40に出力する。強度検出部36は、I信号とQ信号の少なくとも一方の振幅の絶対値を求め、求めた絶対値をもとに直交検波された信号の強度を検出する。強度検出部36は、I信号とQ信号との二乗和平方根、もしくは二乗和を算出して、直交検波部12の出力の絶対値を求め、この絶対値を直交検波された信号の強度としてもよい。直交検波された信号の強度は、RF信号のレベルと相対的な関係であるため、RSSIと等価である。つまり、強度検出部36は、受け付けたI信号とQ信号とをもとにRSSIを導出するとも言える。強度検出部36は、RSSI検出部またはキャリアスケルチ処理部とも呼べる。
【0019】
図2は、
図1の直交検波部12で生成されたI信号とQ信号のコンスタレーションの一例を示す。横軸がI軸を示し、縦軸がQ軸を示す。
図2は、FM変調された一定強度のRF信号を受信した場合の例を示し、コンスタレーションは原点を中心とした円である。円の半径は電界強度を表す。FM変調されたRF信号を希望波と呼ぶ。
【0020】
図3は、I信号とQ信号のコンスタレーションの別の例を示す。
図3は、無信号であり、周囲雑音のレベルが比較的小さい場合の例を示す。無信号とは、希望波が存在しないことを表す。コンスタレーションは、周囲雑音のレベルにより定まる半径の小さい点である。
【0021】
図4は、I信号とQ信号のコンスタレーションのさらに別の例を示す。
図4は、無信号であり、周囲雑音のレベルが
図3の例より大きい場合の例を示す。コンスタレーションは、
図3より半径の大きい塗りつぶされた円に近くなる。周囲雑音のレベルが高くなるほど、塗りつぶされた円の半径は大きくなり、強度検出部36で検出される信号強度が大きくなる確率が高まる。そのため、信号強度による判定のみでは、
図2のようなFM信号によるコンスタレーションと、
図4のような周囲雑音によるコンスタレーションとを判別することが困難である。
【0022】
本実施例では、直交検波された信号のゼロクロス回数を用いることで、キャリアスケルチ判定と同程度の判定時間内に、
図2のようなFM信号によるコンスタレーションと、
図4のような周囲雑音によるコンスタレーションとを判別する。
【0023】
図1に戻る。ゼロクロス検出部38は、直交検波された信号の所定期間のゼロクロス回数を検出し、検出したゼロクロス回数を信号判定部40に出力する。詳細には、ゼロクロス検出部38は、I信号とQ信号の少なくとも一方の所定期間のゼロクロス回数を検出する。ゼロクロス回数は、信号の値がプラスからゼロを介してマイナスに変化した回数と、信号の値がマイナスからゼロを介してプラスに変化した回数との和である。ゼロクロス回数は、信号の正負の符号が変化した回数とも言える。所定期間は、例えば、強度検出部36が信号強度を検出するために要する時間と同等であってよく、シミュレーション計算等により決定されればよい。
【0024】
図5は、希望波を受信した場合のI信号の波形とゼロクロス検出結果の例を示す。
図6は、無信号時のI信号の波形とゼロクロス検出結果の例を示す。縦軸はI信号の電圧値を示し、横軸は時間を示す。
図5と
図6において、縦軸と横軸は同じスケールを示す。ゼロクロス検出結果の値が大きくなるタイミングでゼロクロスが検出されたことを示す。I信号がゼロクロスしたタイミングと、ゼロクロスが検出されたタイミングがずれている位置もあるが、これはサンプリングの影響であり、本実施例の作用効果に影響しない。Q信号は、I信号に直交した信号であるため、Q信号の変化はI信号の変化と同等である。そこで、以下、I信号について説明する。
【0025】
図5に示すように、希望波を受信した場合、I信号はFM信号の周波数に応じた波形となる。一方、
図6に示すように、無信号時ではI信号は雑音により高速かつランダムに変化するため、振幅がプラスからゼロをまたいでマイナスに、マイナスからゼロをまたいでプラスに変化する確率が、希望波の受信時より高くなる。そのため、
図6では、
図5と比較して同一期間内のゼロクロス回数が多い。本実施例では、一定期間内のゼロクロス回数が上限値より多い場合、希望波ではないと判定する。
【0026】
図1に戻る。ゼロクロス検出部38は、直交検波された信号を微分した微分信号、即ちI信号とQ信号の少なくとも一方を微分した微分信号の、所定期間のゼロクロス回数を検出してもよい。ゼロクロス検出部38は、I信号とQ信号の少なくとも一方を時間で微分して微分信号を求める。具体的には、ゼロクロス検出部38は、各サンプリングにおけるI信号とQ信号の少なくとも一方の値と、そのひとつ前のサンプリングにおけるI信号とQ信号の少なくとも一方の値と、の差分を各サンプリングにおける微分値とし、各サンプリングにおける微分値が、サンプリングのタイミングで連続した信号を微分信号とする。この場合、I信号またはQ信号がDCオフセットを含むことでゼロクロスしない期間が存在する場合であっても、DCオフセットの影響を除外して、信号のランダムな変化を検出しやすくなる。よって、判定精度を高めることができる。
【0027】
また、ゼロクロス検出部38がI信号とQ信号のいずれか一方の所定期間のゼロクロス回数を検出する場合、計算量を少なくできる。ゼロクロス検出部38がI信号とQ信号の両方の所定期間のゼロクロス回数を検出する場合、データ数が増えることで、判定精度を高めることができる。
【0028】
また、ゼロクロス検出部38は、ゼロクロス回数として、信号の値がプラスからゼロを介してマイナスに変化した回数と、信号の値がマイナスからゼロを介してプラスに変化した回数とのいずれか一方のみを検出してもよい。この場合、計算量を少なくできる。
【0029】
信号判定部40は、強度検出部36で検出された信号強度と第1しきい値とを比較し、ゼロクロス検出部38で検出されたゼロクロス回数と所定の範囲とを比較することによって、直交検波された信号が受信信号であるか否かを判定する。受信信号は、希望波に相当する。詳細には、受信信号とは、後述のFM検波部16において検波すべき信号であり、受信装置1に対して復調可能な電波形式で変調され送信された信号である。
【0030】
第1しきい値と所定の範囲は、例えば、シミュレーション計算等により決定されればよい。所定の範囲は、例えば、I信号とQ信号の帯域や受信装置1の構成に応じて定めることができる。
【0031】
信号判定部40は、強度検出部36で検出された信号強度が第1しきい値以上であり、かつ、ゼロクロス検出部38で検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内である場合、直交検波された信号が受信信号であると判定する。
【0032】
信号判定部40は、検出された信号強度が第1しきい値未満であるか、または、検出されたゼロクロス回数が所定の範囲内でない場合、直交検波された信号が受信信号でないと判定する。受信信号でないとは、雑音であることに相当する。既述のように、雑音であれば、直交検波された信号が直交平面上をランダムに動くので、ゼロクロス回数は、所定の範囲の上限より多くなる。一方、受信信号であれば、直交平面上の角速度は変調指数(シンボルレート)により上限が定まるので、雑音の場合と比較してゼロクロス回数が少なくなる。
【0033】
また、ゼロクロス回数が所定の範囲の下限値未満である場合は、FM検波部16が検波すべき信号を受信した場合と比較して、信号変化が少ないことを意味する。そのため信号判定部40は、直交検波された信号はFM検波部16が検波すべき信号ではないため受信信号ではないと判定する。このような信号を除外する必要がなければ、所定の範囲の下限値はゼロであってもよい。
【0034】
なお、信号判定部40は、検出された信号強度が第1しきい値以上である場合に限り、ゼロクロス回数が所定の範囲内であるか否か判定してもよい。あるいは、信号判定部40は、ゼロクロス回数が所定の範囲内である場合に限り、検出された信号強度が第1しきい値以上であるか否か判定してもよい。
【0035】
信号判定部40は、受信信号であると判定した場合、スイッチ部14に処理開始を指示する。一方、信号判定部40は、受信信号でないと判定した場合、スイッチ部14に処理開始を指示しない。また、信号判定部40は、判定結果をオーディオ制御部20とチャネルスキャン制御部34に出力する。
【0036】
スイッチ部14は、信号判定部40から処理開始を指示されていない場合、直交検波部12から供給されたI信号とQ信号をFM検波部16に出力せず、FM検波部16、アナログ受信処理部18、オーディオ制御部20、および、ノイズスケルチ判定部32の動作を停止させる。この場合、信号検出部30は、相対的に低い第1周波数のクロックで動作する。これにより、待ち受け動作時の消費電流を低減できる。
【0037】
スイッチ部14は、信号判定部40から処理開始を指示されると、直交検波部12から供給されたI信号とQ信号をFM検波部16に出力し、FM検波部16、アナログ受信処理部18、オーディオ制御部20、および、ノイズスケルチ判定部32の動作を開始させる。この場合、受信装置1の各部は、第1周波数より高い第2周波数のクロックで動作する。
【0038】
FM検波部16は、スイッチ部14から供給されたI信号とQ信号をFM検波し、FM検波の結果であるFM検波信号を生成する。FM検波として、例えば、Arctan検波が実行される。Arctan検波によりFM変調の復調が可能になる。検波処理には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。FM検波部16は、生成したFM検波信号をノイズスケルチ判定部32とアナログ受信処理部18に出力する。
【0039】
ノイズスケルチ判定部32は、FM検波部16から供給された検波信号の復調帯域外のノイズレベルを検出し、検出したノイズレベルに基づいて、直交検波部12で直交検波された信号が受信信号であるか否か判定する。ノイズレベルの検出処理には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。ノイズスケルチ判定部32は、検出したノイズレベルが第2しきい値未満であれば、信号は受信信号であると判定し、ノイズレベルが第2しきい値以上であれば、信号は受信信号でないと判定する。第2しきい値は、例えば、シミュレーション計算等により決定されればよい。ノイズスケルチ判定部32は、判定結果をオーディオ制御部20とチャネルスキャン制御部34に出力する。
【0040】
アナログ受信処理部18は、FM検波部16から供給された検波信号に対してD/A変換などの音声信号を抽出するための処理を行い、得られた音声信号をオーディオ制御部20に出力する。
【0041】
オーディオ制御部20は、信号判定部40による判定結果とノイズスケルチ判定部32による判定結果とに基づいて、アナログ受信処理部18から供給された音声信号をスピーカ22などの音声出力装置に出力するか否か制御する。
【0042】
詳細には、オーディオ制御部20は、信号判定部40が受信信号であると判定し、かつ、ノイズスケルチ判定部32が受信信号ではないと判定した場合、音声信号をスピーカ22に出力せず、音声信号をミュートする。一方、オーディオ制御部20は、信号判定部40が受信信号であると判定し、かつ、ノイズスケルチ判定部32が受信信号であると判定した場合、音声信号をスピーカ22に出力し、音声信号のミュートを解除する。
【0043】
チャネルスキャン制御部34は、信号判定部40による判定結果とノイズスケルチ判定部32による判定結果とに基づいて、直交検波部12が受信する対象のチャネルを別のチャネルに変更するチャネルスキャンを制御する。チャネルスキャンとは、受信装置1が受信するチャネルを順に切り替えて、所定のタイムアウト時間内に音声信号を生成できたチャネルを受信する機能である。
【0044】
チャネルスキャン制御部34は、所定の第1時間内に信号判定部40が受信信号であると判定しない場合、当該第1時間が経過するとチャネルを変更する。第1時間は、第1タイムアウト時間とも呼ぶことができ、例えば、30ms程度であってもよい。
【0045】
図7は、無信号時の
図1のチャネルスキャン制御部34の動作を説明する図である。周囲雑音がない場合に
図7の動作となり、周囲雑音のレベルが比較的高い場合でも
図7の動作となる確率が高い。チャネルCH1のとき、第1時間の間、信号判定部40は受信信号ではないと判定し続け、チャネルスキャン制御部34は、第1時間が経過したタイミングでチャネルCH1からチャネルCH2に切り替える。信号判定部40は受信信号ではないと判定するため、ノイズスケルチ判定部32は判定処理を実行しない。同様に、チャネルCH2のとき、第1時間の間、信号判定部40は受信信号ではないと判定し続け、チャネルスキャン制御部34は、第1時間が経過したタイミングでチャネルCH2からチャネルCH3に切り替える。
【0046】
チャネルスキャン制御部34は、第1時間より長い所定の第2時間内に、信号判定部40が受信信号であると判定し、かつ、ノイズスケルチ判定部32が受信信号であると判定しない場合、当該第2時間が経過するとチャネルを変更する。第2時間は、ノイズスケルチ判定部32が受信信号であるか否かの判定に要する時間より長い。第2時間は、第2タイムアウト時間とも呼ぶことができ、例えば、150ms程度であってもよい。
【0047】
図8は、無信号時に信号判定部40が受信信号であると判定した場合の
図1のチャネルスキャン制御部34の動作を説明する図である。信号判定部40は、時刻t1にチャネルCH1に設定されてから判定に要する時間が経過した時刻t2にて受信信号であると判定し、その判定結果に応じて時刻t2からノイズスケルチ判定部32が判定処理を開始する。ノイズスケルチ判定部32は、時刻t2から判定に要する時間が経過した時刻t3にて受信信号でないと判定する。そのため、チャネルスキャン制御部34は、時刻t1から第2時間が経過したタイミングでチャネルCH1からチャネルCH2に切り替える。チャネルCH2に切り替えられた後の処理も同様である。周囲雑音のレベルが高く希望波がない状況で信号判定部40が受信信号であると判定した場合にも、ノイズスケルチ判定部32により高精度に受信信号の有無を判定できる。
【0048】
一方、チャネルスキャン制御部34は、信号判定部40が受信信号であると判定し、かつ、ノイズスケルチ判定部32が受信信号であると判定した場合、チャネルの変更を停止する。つまり、現在のチャネルが維持され、受信装置1は、そのチャネルで受信を継続する。
【0049】
以上の構成による受信装置1の動作を説明する。
図9は、信号検出部30による検出手順を示すフローチャートである。強度検出部36は、直交検波された信号の強度を検出する(S10)。ゼロクロス検出部38は、直交検波された信号の所定期間のゼロクロス回数を検出する(S12)。
【0050】
信号強度が第1しきい値以上であり、かつ、ゼロクロス回数が所定の範囲内である場合(S14のY)、信号判定部40は、信号を受信信号と判定する(S16)。一方、信号強度が第1しきい値以上でないか、または、ゼロクロス回数が所定の範囲内でない場合(S14のN)、信号判定部40は、信号を雑音と判定する(S24)。
【0051】
ここで、比較例の受信装置について説明する。
図10は、比較例の受信装置1Xの構成を示す。比較例では、
図1のゼロクロス検出部38と信号判定部40が設けられておらず、
図1の強度検出部36に替えて強度判定部36Xが設けられることが本実施例と異なる。受信待ち受け中、強度判定部36Xは、低周波数のクロックでキャリアスケルチ判定を実行し、直交検波された信号の強度がしきい値以上であれば受信信号であると判定する。強度判定部36Xが受信信号であると判定すると、高周波数のクロックに切り替えられ、FM検波部16等が処理を開始する。この場合、無信号で周囲雑音が比較的大きい環境では、強度判定部36Xは受信信号であると誤って判定するため、常に高周波数のクロックで動作することになり、待ち受け時の消費電流が増加してしまう。この場合、チャネルスキャンにおいても、
図8のようにノイズスケルチ判定部32の判定処理が完了して第2時間が経過するまで次のチャネルに切り替えることができないことから、チャネルスキャンの速度が大幅に低下する。
【0052】
これに対して、本実施例では、無信号で周囲雑音が比較的大きい環境において、信号判定部40が受信信号と判定する確率が比較例より低いため、FM検波部16等が動作する確率が低く、消費電流を減らすことができる。また、本実施例では、無信号で周囲雑音が比較的大きい環境において、チャネルスキャンで
図7の処理が実行される確率が
図8の処理が実行される確率より高く、
図8の処理が実行される確率は比較例より低い。そのため、このような環境下でもチャネルスキャンを高速に実行しやすい。
【0053】
本実施例によれば、直交検波された信号の強度とゼロクロス回数とに基づいて受信信号であるか否かを判定するので、キャリアスケルチ判定と同等の時間内に、ノイズスケルチ判定に近い精度で判定できる。つまり、信号と雑音とを高速かつ高精度に判別できる。
【0054】
また、ゼロクロス回数を検出するので、計算量を比較的少なくでき、処理負荷が比較的低い信号処理により判定できる。そのため、信号検出部30の動作クロックの周波数を比較例と同等にでき、ゼロクロス回数の検出のために必要な消費電流は比較的小さい。
【0055】
また、周囲雑音が相対的に大きくキャリアスケルチ判定のみでは受信信号であると誤判定される環境であっても、受信信号ではないと正しく判定される確率が高まる。そのため、受信待ち受け中にノイズスケルチ判定部32が判定処理を実行する確率を下げることができる。よって、受信待ち受け中の消費電流を低減できる。また、受信待ち受け中にノイズスケルチ判定部32による判定処理の実行確率が下がるので、チャネルスキャン動作時に周囲雑音によるスキャン速度の低下を抑制できる。
【0056】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0057】
例えば、実施例では、信号判定部40が受信信号であると判定するまでは、FM検波部16、アナログ受信処理部18、オーディオ制御部20、および、ノイズスケルチ判定部32は動作を停止しているが、これらの各部は、信号判定部40の判定結果によらず動作を続けてもよい。この場合、スイッチ部14を設けなくてよい。オーディオ制御部20は、信号判定部40が受信信号ではないと判定した場合、ノイズスケルチ判定部32による判定結果によらず、音声信号をスピーカ22に出力しない。この変形例では、制御を簡素化できる。
【符号の説明】
【0058】
1…受信装置、12…直交検波部、14…スイッチ部、16…FM検波部、18…アナログ受信処理部、20…オーディオ制御部、30…信号検出部、32…ノイズスケルチ判定部、34…チャネルスキャン制御部、36…強度検出部、38…ゼロクロス検出部、40…信号判定部。