(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/32 20060101AFI20241119BHJP
G06V 30/12 20220101ALI20241119BHJP
【FI】
H04N1/32 144
G06V30/12 J
(21)【出願番号】P 2021051965
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジェームズ・ブラットアッグ
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-142971(JP,A)
【文献】特開2014-131278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/32
G06V 30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を頁単位で入力する画像入力部と、
記号又は文字を配列してなる識別情報が入力される識別情報入力部と、
前記入力された1頁の原稿の画像におけるテキストを認識して、当該認識したテキストを構成する複数の単語を抽出し、前記入力された識別情報を構成する記号又は文字を順に選択すると共に、前記抽出された各単語を順次選択し、前記記号又は文字と、前記単語とを選択する度に、当該選択された単語と次順の単語の間に、予め設定された符号及び前記選択された記号又は文字を挿入して文字列を生成し、前記生成された文字列を二次元バーコードに変換し、前記変換された二次元バーコードを前記原稿の画像に付与する制御部と、
前記二次元バーコードが付与された前記原稿の画像を出力する出力部と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記生成する文字列の文字数を、前記二次元バーコードに変換される文字列の予め定められた最大文字数以下に制限する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記入力された識別情報の記号又は文字を循環して繰り返し順次選択する請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
識別情報入力部には、新たな前記識別情報が入力され、
前記制御部は、
前記原稿の画像に付与された前記二次元バーコードを検出し、前記検出した二次元バーコードを文字列に変換し、前記新たな前記識別情報を構成する記号又は文字を順に選択して、前記記号又は文字の選択の度に、前記符号と前記選択された記号又は文字に基づき前記変換された文字列に含まれる単語を抽出し、
前記原稿の画像におけるテキストを認識して、当該認識したテキストを構成する複数の単語を抽出し、
前記変換された文字列に含まれる各単語と、前記テキストを構成する各単語とを照合して、前記変換された文字列に含まれる各単語と、前記テキストを構成する各単語が同一性を有する場合に、前記原稿の画像の処理を承認する、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記テキストの処理として当該テキストのコピー又は送信を承認する請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
原稿の画像を頁単位で入力する画像入力ステップと、
記号又は文字を配列してなる識別情報を入力する識別情報入力ステップと、
前記入力された1頁の原稿の画像におけるテキストを認識して、当該認識したテキストを構成する複数の単語を抽出する単語抽出ステップと、
前記入力された識別情報を構成する記号又は文字を順に選択すると共に、前記抽出された各単語を順次選択し、前記記号又は文字と、前記単語とを選択する度に、当該選択された単語と次順の単語の間に、予め設定された符号と前記選択された記号又は文字を挿入して、文字列を生成する文字列生成ステップと、
前記生成された文字列を二次元バーコードに変換する符号化ステップと、
前記変換された二次元バーコードを前記原稿の画像に付与する付与ステップと、
前記二次元バーコードが付与された前記原稿の画像を出力する出力ステップと、を有する画像処理方法。
【請求項7】
新たな前記識別情報を入力する新規識別情報入力ステップと、
前記原稿の画像に付与された二次元バーコードを検出する検出ステップと、
前記検出された二次元バーコードを文字列に変換する復号化ステップと、
前記入力された識別情報の記号又は文字を順次選択して、前記記号又は文字の選択の度に、前記符号と前記選択された記号又は文字に基づき前記変換された文字列に含まれる単語を抽出する復元ステップと、
前記原稿の画像におけるテキストを認識して、当該認識したテキストを構成する複数の単語を抽出する単語抽出ステップと、
前記変換された文字列に含まれる各単語と前記テキストを構成する各単語を照合して、前記変換された文字列に含まれる各単語と、前記テキストを構成する各単語が同一性を有する場合に、前記原稿の画像の処理を承認する承認ステップと、を有する請求項6に記載の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法及び画像処理システムに関し、特に、原稿の画像におけるテキストの信頼性及びセキュリティを向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように画像などの信頼性及びセキュリティを向上させる方法として、パスワードを用いて、画像などを保護する方法がある。しかしながら、パスワードのクラック(割り出し)や漏洩などによる被害が懸念される。
【0003】
また、特許文献1では、紙文書の内容の信頼性及びセキュリティを向上させるために、コード情報(地紋画像)を紙文書に埋め込んで、地紋画像により紙文書の複写や持ち出し等を制限するという技術が紹介されている。しかしながら、特許文献1に記載されている地紋画像は、その生成や読取を行い得る機器が普及しておらず、適用が困難である。
【0004】
このため、コード情報として、より一般的なQRコード(登録商標)(二次元バーコードの一例)を適用することが考えられる。QRコードとしては、特許文献2に記載のものがある。特許文献2に記載の計算機では、情報を符号化して、QRコードを作成し、画像をQRコードに仮配置して、QRコードの誤り率を算出し、誤り率が閾値以下となるようにその画像の配置位置とサイズを調整している。これにより、人間が情報の内容を認識又は推測可能なQRコードの提供が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-278361号公報
【文献】特開2013-25782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、QRコードは、周知のように普及しており、その適用が容易である。このため、QRコードにより原稿の画像におけるテキストの信頼性及びセキュリティを向上させるには、QRコードの情報の割り出しを困難にする必要がある。例えば、QRコードがユーザーの識別情報を示すだけでは、信頼性を確保できない。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、原稿の画像におけるテキストの改ざんを防止でき、テキストの信頼性及びセキュリティを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面にかかる画像処理装置は、原稿の画像を頁単位で入力する画像入力部と、記号又は文字を配列してなる識別情報が入力される識別情報入力部と、前記入力された1頁の原稿の画像におけるテキストを認識して、当該認識したテキストを構成する複数の単語を抽出し、前記入力された識別情報を構成する記号又は文字を順に選択すると共に、前記抽出された各単語を順次選択し、前記記号又は文字と、前記単語とを選択する度に、当該選択された単語と次順の単語の間に、予め設定された符号及び前記選択された記号又は文字を挿入して文字列を生成し、前記生成された文字列を二次元バーコードに変換し、前記変換された二次元バーコードを前記原稿の画像に付与する制御部と、前記二次元バーコードが付与された前記原稿の画像を出力する出力部と、を備えるものである。
【0009】
また、本発明の一局面にかかる画像処理方法は、原稿の画像を頁単位で入力する画像入力ステップと、記号又は文字を配列してなる識別情報を入力する識別情報入力ステップと、前記入力された1頁の原稿の画像におけるテキストを認識して、当該認識したテキストを構成する複数の単語を抽出する単語抽出ステップと、前記入力された識別情報を構成する記号又は文字を順に選択すると共に、前記抽出された各単語を順次選択し、前記記号又は文字と、前記単語とを選択する度に、当該選択された単語と次順の単語の間に、予め設定された符号と前記選択された記号又は文字を挿入して、文字列を生成する文字列生成ステップと、前記生成された文字列を二次元バーコードに変換する符号化ステップと、前記変換された二次元バーコードを前記原稿の画像に付与するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原稿の画像におけるテキストの改ざんを防止して、テキストの信頼性及びセキュリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる画像処理方法が適用された画像形成装置を示す断面図である。
【
図2】本実施形態の画像形成装置の主要内部構成を示すブロック図である。
【
図3】原稿の画像におけるテキスト、ユーザーのログインパスワード、テキスト及びログインパスワードに基づき生成された文字列、文字列を変換してなるQRコードを示す図である。
【
図4】QRコードを原稿の画像に付与するための制御手順を示すフローチャートである。
【
図5】原稿の画像及びQRコードが形成された記録紙を示す図である。
【
図6】QRコードが付与された原稿の画像を処理するための制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかる画像処理方法が適用された画像形成装置を示す断面図である。
図1に示すように本実施形態の画像形成装置10は、例えばコピー機能、プリンター機能、ファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えたMFP(複合機)である。この画像形成装置10は、画像読取部11と、画像形成部12とを備えている。
【0014】
画像読取部11は、原稿の画像を光学的に読み取る撮像素子を有しており、この撮像素子のアナログ出力がデジタル信号に変換されて、原稿の画像を示す画像データが生成される。画像読取部11は、特許請求の範囲における画像入力部の一例である。
【0015】
画像形成部12は、上記画像データによって示される画像を記録紙に形成するものであり、マゼンタ用の画像形成ユニット3M、シアン用の画像形成ユニット3C、イエロー用の画像形成ユニット3Y、及びブラック用の画像形成ユニット3Bkを備えている。各画像形成ユニット3M、3C、3Y、及び3Bkのいずれにおいても、感光体ドラム4の表面を均一帯電させ、感光体ドラム4の表面を露光して、感光体ドラム4の表面に静電潜像を形成し、感光体ドラム4の表面の静電潜像をトナー像に現像して、感光体ドラム4の表面のトナー像を中間転写ベルト5に1次転写する。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト5上に形成される。このカラーのトナー像は、中間転写ベルト5と2次転写ローラー6の間のニップ域Nにおいて給紙部14から搬送路8を通じて搬送されてきた記録紙Pに2次転写される。なお、画像形成部12は、特許請求の範囲における出力部の一例である。
【0016】
この後、定着装置15で記録紙Pが加熱及び加圧されて、記録紙P上のトナー像が熱圧着により定着され、更に記録紙Pが排出ローラー16を通じて排出トレイ17に排出される。
【0017】
次に、
図2は、本実施形態の画像形成装置10の主要内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように本実施形態の画像形成装置10は、画像読取部11と、画像形成部12と、表示部21と、操作部22と、タッチパネル23と、ネットワーク通信部(NW通信部)24と、ファクシミリ通信部(FAX通信部)25と、画像メモリー26と、記憶部28と、制御ユニット29とを備えている。これらの構成要素は、互いにバスを通じてデータ又は信号の送受信が可能とされている。
【0018】
表示部21は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(OLED:Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイなどから構成される。操作部22は、テンキー、決定キー、スタートキーなどの物理キーを備えている。
【0019】
表示部21の画面には、タッチパネル23が配置されている。タッチパネル23は、所謂抵抗膜方式や静電容量方式などのタッチパネルであって、タッチパネル23に対するユーザーの指などの接触(タッチ)をその接触位置とともに検知して、その接触位置の座標を示す検知信号を制御ユニット29の後述する制御部31などに出力する。
【0020】
ネットワーク通信部(NW通信部)24は、不図示のLANチップなどの通信モジュールを備える通信インターフェイスであり、有線又は無線LANを通じて他の端末装置と接続され、他の端末装置との間でデータの送受信を行う。
【0021】
ファクシミリ通信部(FAX通信部)25は、画像を示す画像データを、ネットワークを通じて他の画像形成装置やファクシミリ装置などとの間で送受信する。
【0022】
画像メモリー26には、画像読取部11により読取られた原稿の画像を示す画像データが記憶される。
【0023】
記憶部28は、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などの大容量の記憶装置であって、各種のアプリケーションプログラムや種々のデータを記憶している。
【0024】
制御ユニット29は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)などから構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット29は、上記のROM又は記憶部28に記憶された制御プログラムが上記のプロセッサーで実行されることにより、制御部31として機能する。
【0025】
制御部31は、画像形成装置10を統括的に制御する。制御ユニット29は、画像読取部11、画像形成部12、表示部21、操作部22、タッチパネル23、ネットワーク通信部24、ファクシミリ通信部25、画像メモリー26、及び記憶部28などと接続されている。制御部31は、これらの構成要素の動作制御や、当該各構成要素との間での信号またはデータの送受信を行う。
【0026】
制御部31は、画像形成装置10による画像形成に必要な各種の処理などを実行する処理部としての役割を果たす。また、制御部31は、タッチパネル23から出力される検知信号あるいは操作部22の物理キーの操作に基づき、ユーザーにより入力された操作指示を受け付ける。更に、制御部31は、表示部21の表示動作を制御する機能、ネットワーク通信部24及びファクシミリ通信部25の通信動作を制御する機能を有する。
【0027】
また、制御部31は、QRコードを生成する符号化部32、及びQRコードを復号化する復号化部33として機能する。
【0028】
このような構成の画像形成装置10において、例えば、ユーザーが、原稿を画像読取部11にセットし、操作部22又はタッチパネル23を操作して、コピーの実行指示を入力すると、制御部31は、この実行指示に従って、画像読取部11により原稿の画像を読取らせ、当該原稿の画像を示す画像データを画像メモリー26に記憶させる。画像形成部12は、画像データを画像メモリー26から入力して、画像データによって示される原稿の画像を記録紙に形成する。
【0029】
また、本実施形態では、QRコードを原稿の画像に付与(合成)する。これにより、原稿の画像の信頼性及びセキュリティを向上させる。制御部31は、頁毎に原稿の画像におけるテキストを認識して、当該認識したテキストを構成する複数の単語を抽出する。そして、制御部31は、ユーザーが画像形成装置10にログインするときに入力するログインパスワード(識別情報の一例)を取得し、当該ログインパスワードを構成する記号又は文字を順に選択する(例えば、ログインパスワードを構成する記号又は文字をその並び方向において最初の1文字目から順番に1文字ずつ順番に選択する)。制御部31は、これと共に、上記抽出された各単語を順次選択し(例えば、上記抽出された複数の単語について、その並び順に先頭の単語から1単語ずつ順番に選択する)、上記記号又は文字と、上記単語とを選択する度に、当該選択された単語と次順の単語の間に、予め設定された下線符号(例えば、アンダースコア)と、上記選択された記号又は文字とを挿入して文字列を生成し、当該生成した文字列を二次元コード(例えば、QRコード。以下、本実施形態ではQRコードを例にして説明する)に変換して、この変換されたQRコードを原稿の画像に付与(合成)する。
【0030】
例えば、制御部31は、
図3に示すように原稿の画像におけるテキストTXを認識して、テキストTXを構成する各単語「The quick brown fox jumps……」を抽出した場合、ユーザーのログインパスワードLP「user123」の記号又は文字を1つずつ順次選択する。制御部31は、これと共に、各単語「The」「quick」「brown」「fox」「jumps」…を1つずつ順次選択し、これらの選択の度に、選択された単語と次順の単語の間に、アンダースコアと「USER123」から順に選択された1つの記号又は文字を挿入する。これにより、制御部31は、文字列M「The_Uquick_Sbrown_Efox_Rjumps ……」を生成し、この文字列MをQRコード51に変換する。
【0031】
また、制御部31は、原稿の画像のコピー又はファクシミリ送信などの処理に際し、原稿の画像に付与されたQRコードを検出して、この検出されたQRコードを文字列に変換し、この変換された文字列におけるアンダースコアとユーザーのログインパスワードの記号又は文字に基づき複数の単語を抽出する。更に、制御部31は、原稿の画像におけるテキストを認識して、テキストを構成する複数の単語を抽出し、文字列から抽出した各単語とテキストを構成する各単語を照合する。そして、制御部31は、文字列から抽出した各単語とテキストを構成する各単語とが同一性を有する場合に、原稿の画像の処理を承認する。
【0032】
上記では、制御部31は、QRコードを、ユーザーのログインパスワードと原稿の画像におけるテキストの各単語に基づき、原稿の頁毎に生成するため、生成されるQRコードは、原稿の画像の頁毎に内容が変化する。これにより、原稿の画像におけるテキストの信頼性及びセキュリティを向上させることができる。
【0033】
次に、QRコードを原稿の画像に付与する処理を、
図4に示すフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0034】
例えば、ユーザーは、原稿を画像読取部11にセットし、タッチパネル23又は操作部22を通じて表示部21の画面に表示されているGUIなどを操作して、当該ユーザーのログインパスワードLP(識別情報の一例)を入力すると共に、QRコードの生成及び付与の指示を入力する。なお、タッチパネル23及び操作部22は、特許請求の範囲における識別情報入力部の一例である。
【0035】
制御部31は、ユーザーのログインパスワードLPが記憶部28内のログイン管理テーブルにおける複数のユーザーのログインパスワードのいずれかに一致するか否かを判定する。制御部31は、一致すると判定した場合、当該ユーザーのログインパスワードLPを承認して、当該ログインパスワードLPのユーザーに対して画像形成装置10のログインを許可する(S101)。
【0036】
そして、制御部31は、QRコードの生成及び付与の指示に応じて、画像形成装置10をQRコード付与モードに設定し(S102)、コピージョブを実行して、画像読取部11により1頁の原稿の画像を読取らせて、この画像を示す画像データを画像メモリー26に記憶させる(S103)。
【0037】
制御部31は、既存のOCR(Optical Character Recognition)機能により画像メモリー26内の画像データを解析して、原稿の画像におけるテキストTXを認識して、当該認識したテキストTXを構成する複数の単語を抽出する(S104)。例えば、テキストTXが英文である場合、各単語の間にスペースが挿入されているので、制御部31は、各単語間のスペースに基づき当該各単語を区別して抽出する。また、テキストTXが日本語などである場合、単語辞書を記憶部28に予め記憶しておき、制御部31は、単語辞書を参照して、単語辞書が示す単語毎に、テキストTXを構成する各単語を抽出する。
【0038】
続いて、制御部31は、ユーザーのログインパスワードLPの1番目の記号又は文字を選択すると共に(S105)、S104で抽出された各単語からテキストTXにおける1番目の単語を選択する(S106)。制御部31は、この選択した単語及びアンダースコアとその選択した1番目の記号又は文字を順次並べてなる文字列Mを生成する(S107)。
【0039】
そして、制御部31は、その生成された文字列Mの文字数nをカウントし、この文字列Mの文字数nがQRコードにより変換される文字列の予め定められた最大文字数Nを超えるか否かを判定すると共に(S108)、S104で抽出された各単語からテキストTXにおける最後の単語が選択されたか否かを判定する(S109)。
【0040】
ここで、制御部31は、文字列Mの文字数nが最大文字数Nを超えないと判定し(S108「No」)、S104で抽出された各単語から最後の単語が選択されていないと判定すると(S109「No」)、処理はS105に戻り、ログインパスワードLPの2番目の記号又は文字を選択すると共に(S105)、S104で抽出された各単語から2番目の単語を選択し(S106)、この選択された2番目の単語及びアンダースコアとその選択された2番目の記号又は文字を順次並べて前回のS107で生成された文字列Mに追加し、文字列Mを更新する(S107)。すなわち、制御部31は、この更新された文字列Mの文字数nが最大文字数Nを超えないと判定し(S108「No」)、S104で抽出された各単語から最後の単語が選択されていないと判定すると(S109「No」)、S105~S107を繰り返す。
【0041】
以降同様に、文字列Mの文字数nが最大文字数Nを超えず、S104で抽出された各単語から最後の単語が選択されていなければ、ログインパスワードLPの次順の記号又は文字が選択されると共に、S104で抽出された各単語から次順の単語が選択され、この選択された次順の単語及びアンダースコアとその選択された次順の記号又は文字が順次並べられて前回生成された文字列Mに追加され、文字列Mが更新される。
【0042】
これにより、例えば
図3に示すように各単語「The quick brown fox jumps……」の間に、アンダースコアと「USER123」のうちの1つの記号又は文字が逐次挿入され、文字列M「The_Uquick_Sbrown_Efox_Rjumps ……」が生成される。
【0043】
このようにテキストTXの各単語の間にアンダースコアとログインパスワードLPのうちの1つの記号又は文字が逐次挿入される度に、文字列Mの文字数nが「単語の文字数+2」ずつ増大する。
【0044】
ここで、制御部31は、ユーザーのログインパスワードLPの記号又は文字を、循環して繰り返し順次選択する。すなわち、制御部31は、ログインパスワードLPの記号又は文字を、1番目から最後順へと順次選択していき、最後順が選択されると、続いて1番目から選択する、という処理を繰り返す。
【0045】
また、QRコードに変換される文字列の最大文字数Nは、「4296」であるものとする。例えば、1頁の原稿の画像におけるテキストの平均文字数を「3500」とした場合、QRコードには、「4296」から「3500」を差し引いた差「796」の分だけ、アンダースコアとログインパスワードの記号又は文字(2文字)を繰り返し追加する余地がある。従って、テキストの各単語の間には、アンダースコアとログインパスワードの記号又は文字を最大で796/2=398回だけ挿入することが可能である。
【0046】
制御部31は、文字列Mの文字数nの増大に伴い、文字数nが最大文字数Nを超えると判定すると(S108「Yes」)、S107で更新される前の文字列Mを選択する。すなわち、制御部31は、最大文字数N以下の文字数nからなる文字列Mを選択する(S110)。この場合、原稿の画像におけるテキストの各単語が全て選択される前に、文字列Mの文字数nがQRコードに変換される文字列の最大文字数Nに達したことになり、文字列Mには、テキストTXの各単語の全てが含まれることなく、途中の順番からの少なくとも1つの単語が欠ける。
【0047】
また、制御部31は、文字列Mの文字数nが最大文字数Nを超えないと判定しながらも(S108「Yes」)、S104で抽出された各単語から最後の単語が選択されたと判定すると(S109「Yes」)、S107で更新された文字列Mを選択し、最大文字数N以下の文字数nからなる文字列Mを選択する(S111)。この場合、原稿の画像におけるテキストTXの各単語が全て選択され、文字列Mには、テキストTXの各単語の全てが含まれることになる。
【0048】
制御部31は、符号化部32によりS110又はS111で選択された文字列MをQRコードに変換させ(S112)、画像メモリー26に記憶されている原稿の画像を示す画像データを処理して、そのQRコードを原稿の画像に付与(合成)する(S113)。
【0049】
そして、制御部31は、QRコードが付与された原稿の画像を示す画像データを画像メモリー26から画像形成部12に入力させて、画像形成部12により当該原稿の画像を記録紙に形成させる(S114)。これにより、
図5に示すように記録紙Pには、原稿の画像におけるテキストTX及びQRコード51が形成される。
【0050】
次に、QRコードが付与された原稿の画像を処理する際の制御を、
図6に示すフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0051】
例えば、ユーザーは、原稿を画像読取部11にセットし、タッチパネル23を通じて表示部21の画面に表示されているGUIなどを操作して、当該ユーザーのログインパスワードLPを入力すると共に、操作部22を操作して、コピージョブの実行指示を入力する。すなわち、この時点では、新たなログインパスワードLPが入力される。
【0052】
制御部31は、ユーザーのログインパスワードLPが記憶部18内のログイン管理テーブルにおける複数のユーザーのログインパスワードのいずれかに一致するかを判定する。ここで制御部31は、一致すると判定した場合、当該ユーザーのログインパスワードLPを承認して、当該ログインパスワードLPのユーザーに対して画像形成装置10のログインを許可する(S201)。
【0053】
制御部31は、コピージョブの実行の指示に応じてコピージョブを実行し、画像読取部11により1頁の原稿の画像を読取らせて、この画像を示す画像データを画像メモリー26に記憶させる(S202)。
【0054】
制御部31は、画像メモリー26に記憶されている画像データに基づきQRコードが原稿の画像に付与されているか否かを判定する(S203)。制御部31は、例えばパターンマッチング技術等により当該判定を行う。
【0055】
例えば、制御部31は、QRコードが原稿の画像に付与されていないと判定した場合(S203「No」)、原稿の画像を示す画像データを画像形成部12に入力させて、画像形成部12により当該原稿の画像を記録紙に形成させる(S204)。従って、QRコードが原稿の画像に付与されていなければ、通常のコピー処理が行われる。
【0056】
また、制御部31は、QRコードが原稿の画像に付与されていると判定した場合(S203「Yes」)、復号化部33によりQRコードを復号化させて、QRコードを文字列Mに変換する(S205)。
【0057】
制御部31は、ユーザーのログインパスワードLPの1番目の記号又は文字を選択し(S206)、アンダースコアとその選択された1番目の記号又は文字の組合せを、文字列Mの先頭側の文字からの順次照合により当該文字列Mから検索する(S207)。
【0058】
このとき、制御部31は、アンダースコアとその選択された1番目の記号又は文字の組合せが文字列Mから検索されなければ(S208「No」)、エラーメッセージを表示部21に表示させて(S209)、コピージョブを禁止する(S210)。
【0059】
また、制御部31は、アンダースコアとその選択された1番目の記号又は文字の組合せが文字列Mから検索されると(S208「Yes」)、文字列Mにおけるアンダースコアとその選択された1番目の記号又は文字の組合せの位置に基づき文字列Mから1番目の単語を抽出し(S211)、この単語及びその組み合わせを文字列Mから削除して、文字列Mを更新する(S212)。
【0060】
制御部31は、その更新された文字列Mにおける単語の有無を判定し(S213)、単語が有ると判定すると(S213「Yes」)、ユーザーのログインパスワードLPの2番目の記号又は文字を選択し(S206)、アンダースコアとその選択された2番目の記号又は文字の組合せを、文字列Mの先頭側の文字からの順次照合により当該文字列Mから検索する(S207)。
【0061】
制御部31は、アンダースコアとその選択された2番目の記号又は文字の組合せが文字列Mから検索されなければ(S208「No」)、エラーメッセージを表示部21に表示させて(S209)、コピージョブを禁止する(S210)。また、制御部31は、当該組合せが文字列Mから検索されると(S208「Yes」)、文字列Mにおけるアンダースコアとその選択された2番目の記号又は文字の組合せの位置に基づき2番目の単語を抽出し(S211)、この単語及びその組み合わせを文字列Mから削除して、文字列Mを更新する(S212)。そして、制御部31は、その更新された文字列Mの単語の有無を判定し(S213)、単語が有ると判定すると(S213「Yes」)、S206~S213を繰り返す。
【0062】
以降同様に、更新された文字列Mの文字が有れば、ユーザーのログインパスワードLPの次順の記号又は文字が選択され、アンダースコアとその選択された次順の記号又は文字の組合せが文字列Mから検索されない場合に、エラーが表示部21に表示されて、コピージョブが禁止され、またその組合せが文字列Mから検索された場合に、文字列Mにおけるアンダースコアとその選択された次順の記号又は文字の組合せの位置に基づき次順の単語が抽出され、この単語及びその組み合わせが文字列Mから削除されて、文字列Mが更新される。なお、ユーザーのログインパスワードLPの記号又は文字は、循環して繰り返し順次選択される。
【0063】
このように文字列MにおけるアンダースコアとログインパスワードLPのうちの1つの記号又は文字の組合せの位置に基づき単語が抽出され、単語及びその組み合わせが削除されて、文字列Mの更新が繰り返されると、文字列Mにおける単語の数が減少して行く。
【0064】
制御部31は、文字列Mにおける単語の数の減少に伴い、文字列Mにおける単語が無くなったと判定すると(S213「No」)、文字列Mにおける単語の抽出を終了して、抽出した単語群を、文字列Mに含まれていた全ての単語群として取得する(S214)。
【0065】
また、制御部31は、OCR機能により画像メモリー26内の画像データを解析して、原稿の画像におけるテキストTXを認識して、当該認識したテキストTXを構成する複数の単語を抽出する(S215)。
【0066】
制御部31は、S214で取得した文字列Mの全ての単語を、S215で抽出したテキストTXの各単語に順次照合して、文字列Mの全ての単語がテキストTXの各単語に一致するか否かを判定する(S216)。
【0067】
制御部31は、文字列Mの全ての単語がテキストTXの各単語に一致すると判定すると(S216「Yes」)、QRコードが付与された原稿の画像を示す画像データを画像メモリー26から画像形成部12に入力させて、画像形成部12により当該原稿の画像を記録紙に形成させる(S217)。文字列Mには、上記のようにテキストTXの各単語の全てが含まれるとは限らず、テキストTXの途中の順番からの少なくとも1つの単語が欠けていることがある。このため、制御部31は、文字列Mの全ての単語がテキストTXの各単語に一致すれば、文字列Mの単語と照合されなかったテキストTXの単語が残っても、文字列Mの全ての単語がテキストTXの各単語に一致すると判定する。すなわち、制御部31は、文字列Mの全ての単語がテキストTXの各単語に対して同一性を有することをもって、一致すると判定する。
【0068】
また、制御部31は、文字列Mの全ての単語がテキストTXの各単語に一致しないと判定すると(S216「No」)、エラーメッセージを表示部21に表示させて(S209)、コピージョブを禁止する(S210)。
【0069】
このように本実施形態では、ユーザーのログインパスワードLPを構成する記号又は文字を順次選択すると共に、原稿の画像におけるテキストTXの各単語を順次選択し、記号又は文字及び単語の選択の度に、当該選択された単語と次順の単語の間に、アンダースコアとその選択された記号又は文字を挿入して、文字列Mを生成し、この生成された文字列MをQRコードに変換して、この変換されたQRコードを原稿の画像に付与する。
【0070】
また、原稿の画像の処理に際しては、原稿の画像に付与されたQRコードを検出して、この検出されたQRコードを文字列Mに変換し、この変換された文字列におけるアンダースコアとユーザーのログインパスワードの記号又は文字に基づき複数の単語を抽出し、また原稿の画像におけるテキストTXを認識して、テキストTXを構成する複数の単語を抽出し、文字列Mの全ての単語がテキストTXの各単語に一致した場合に、原稿の画像の処理を承認している。
【0071】
このため、原稿の画像におけるテキストTXが改ざんされたときには(QRコードは変更されていないものとする)、原稿の画像の処理が承認されないことになるため、原稿の画像におけるテキストTXの信頼性及びセキュリティを向上させことができる。
【0072】
なお、上記実施形態では、原稿の画像の処理として、コピージョブを例示しているが、これに限定されず、制御部31は、上記と同様にして、原稿の画像をファクシミリ送信又はスキャン送信するなどの他のジョブについても、原稿の画像に付与されているQRコードに基づき処理を許可或いは禁止するようにしてもよい。この場合、ファクシミリ通信部25が、特許請求の範囲における出力部の一例となる。また、ネットワーク通信部24は、特許請求の範囲における画像入力部及び出力部の一例となる。
【0073】
また、上記実施形態では、文字列Mの文字数nを最大文字数N以下に制限して、文字列MをQRコードに変換しているが、文字列Mの文字数nが最大文字数Nを超えた場合に、制御部31は、QRコードを2つに増やして、文字列Mを2つのQRコードに割り振って変換してもよい。更に、制御部31は、文字列Mの文字数nが最大文字数Nの整数倍の値を超える度に、QRコードを1つずつ増やして、文字列Mを各QRコードに割り振って変換しても構わない。これにより、原稿の画像におけるテキストを構成する全ての単語を複数のQRコードに変換することができる。制御部31は、これらのQRコードを原稿の画像に付与しておき、原稿の画像を処理する際に、この原稿の画像から各QRコードを抽出して文字列Mに変換し、原稿の画像におけるテキストを構成する全ての単語を文字列Mの各単語と照合する。
【0074】
また、上記実施形態では、本発明の一実施形態を、画像形成装置(複合機)を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、コピー機、プリンター、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置でもよい。
【0075】
また、
図1乃至
図6を用いて説明した上記実施形態の構成及び処理は、本発明の一例に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0076】
10 画像形成装置
11 画像読取部
12 画像形成部
21 表示部
22 操作部
23 タッチパネル
24 ネットワーク通信部
25 ファクシミリ通信部
26 画像メモリー
28 記憶部
29 制御ユニット
31 制御部
32 符号化部
33 復号化部