(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両の後部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2021063883
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塩 宗男
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037215(JP,A)
【文献】特開2009-101988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0273099(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014101275(DE,A1)
【文献】特開2006-232237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延びるリヤクロスメンバと、
前記リヤクロスメンバの両端部を支持し、フロアに固定された1対のブラケットと、を備え、
前記リヤクロスメンバの前記端部の下側は、前記ブラケットの上面に支持されており、
前記リヤクロスメンバの前記端部の上側は、開放されて
おり、
前記ブラケットは、本体と、前記本体の車幅方向外側に結合された側板とを有し、
前記ブラケットの本体は、車両前後方向の前方と後方のそれぞれに配置されて前記フロアに締結された締結部と、2つの前記締結部のそれぞれから互いに近づくように斜め上方に延びる斜板と、2つの前記斜板の上端に接続されて前記本体の天井を形成する天板とを有し、
前記ブラケットの本体の天板は、断面が半円状である凹み部を有し、前記凹み部は、車両左右方向に延びており、前記凹み部には、前記リヤクロスメンバの前記端部が入り込んでおり、
前記ブラケットの側板は、前記ブラケットの本体の天板よりも上側に延びた上部を有し、
前記リヤクロスメンバの端面は、前記ブラケットの側板の上部における車幅方向内側の面に溶接されずに当たっている、
ことを特徴とする車両の後部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部車体構造に関し、特に、側面衝突時に、衝突してきた移動体の車両内部への侵入を抑制する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後方部分には、車両幅方向に延びるリヤクロスメンバが配置されている。リヤクロスメンバは、側面衝突時に荷重を受けて、衝突側とは反対側の部材に荷重を伝えると共にそれを受け止めさせることで、衝突してきた移動体の車両内部への侵入を抑制する。
【0003】
特許文献1には、リヤフロアパネルに取り付けられ、リヤシートクッションの内部に収容されるように配置されたリヤシートクロスメンバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6Aは、従来技術におけるリヤクロスメンバ122と1対のブラケット124を車両後方から見た図である。同図に示すように、車両には、リヤクロスメンバ122の両端部142を1対のブラケット124を介してフロア114に固定した構造を有するものがある。リヤクロスメンバ122の端部142は、ブラケット124の上面に置かれて、上から被覆部材150が覆い被されている。被覆部材150は、ブラケット124に溶接されて、ブラケット124との間で、リヤクロスメンバ122の端部142を挟み込んでいる。
【0006】
側面衝突時、
図6Bに示すように、衝突荷重Fがブラケット124上側の外側端面に印加されると、ブラケット124上部と被覆部材150には、衝突側とは反対側(以下、反衝突側と言う)の下方に向かう曲げモーメントが生じる。この際、リヤクロスメンバ122の端部142は、ブラケット124上部と被覆部材150から印加される曲げモーメントに抗うことができず、それらとともに反衝突側の下方に向かうことになる。そのため、リヤクロスメンバ122が大きく変形して、反衝突側のブラケット124に衝突荷重を十分に伝えられない虞がある。
【0007】
本発明の目的は、リヤクロスメンバの両端部を1対のブラケットを介してフロアに保持する車両において、側面衝突時に、リヤクロスメンバの変形を抑制できる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両の後部車体構造は、車両幅方向に延びるリヤクロスメンバと、前記リヤクロスメンバの両端部を支持し、フロアに固定された1対のブラケットと、を備え、前記リヤクロスメンバの前記端部の下側は、前記ブラケットの上面に支持されており、前記リヤクロスメンバの前記端部の上側は、開放されており、前記ブラケットは、本体と、前記本体の車幅方向外側に結合された側板とを有し、前記ブラケットの本体は、車両前後方向の前方と後方のそれぞれに配置されて前記フロアに締結された締結部と、2つの前記締結部のそれぞれから互いに近づくように斜め上方に延びる斜板と、2つの前記斜板の上端に接続されて前記本体の天井を形成する天板とを有し、前記ブラケットの本体の天板は、断面が半円状である凹み部を有し、前記凹み部は、車両左右方向に延びており、前記凹み部には、前記リヤクロスメンバの前記端部が入り込んでおり、前記ブラケットの側板は、前記ブラケットの本体の天板よりも上側に延びた上部を有し、前記リヤクロスメンバの端面は、前記ブラケットの側板の上部における車幅方向内側の面に溶接されずに当たっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
リヤクロスメンバの端部の上側が開放されているため、側面衝突時、衝突荷重によりブラケット上部が反衝突側の下方に向かって変形する際に、リヤクロスメンバの端部は、ブラケットの上面から離脱することできる。リヤクロスメンバの端部が、ブラケット上部の変形に追従しなくなるため、リヤクロスメンバの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】車両の後部車体構造の要部を上方から見た図である。
【
図2】リヤクロスメンバと1対のブラケットを示す斜視図である。
【
図3】リヤクロスメンバの端部とブラケットの固定構造を示す斜視図である。
【
図5A】リヤクロスメンバとブラケットを後方から見た図である。
【
図5B】側面衝突時のリヤクロスメンバとブラケットの変形の様子を示す図である。
【
図6A】従来技術におけるリヤクロスメンバとブラケットを後方から見た図である。
【
図6B】従来技術における側面衝突時のリヤクロスメンバとブラケットの変形の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の方向および向きを表す語句は、車両に関する方向および向きを表す。また、車両の左右方向(幅方向)において車両の前後方向に延びる中心線に近い側を車幅方向内側、遠い側を車幅方向外側と記す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印RHの向きが右方を表す。
【0012】
図1は、車両10の後部車体構造12の要部を上方から見た図である。後部車体構造12は、フロアパネル14と、フロアパネル14上に配置されたリヤシート16と、車両幅方向に延びるリヤクロスメンバ22と、リヤクロスメンバ22の両端部42を支持し、フロアパネル14に固定された1対のブラケット24とを備える。リヤシート16は、座部18と、背もたれ20とを有する。座部18は、骨格およびクッション材を含み、下部に空洞が形成されている。この空洞の中に、リヤクロスメンバ22と1対のブラケット24が収容されている。
【0013】
1対のブラケット24は、それぞれ、左右対称の形状を有し、車幅方向外側に配置されている。ブラケット24には、その前後に、フロアパネル14との締結部26が形成されている。
図2は、リヤクロスメンバ22と1対のブラケット24を示す斜視図である。ブラケット24の締結部26は、複数のボルト挿入孔28を有し、各ボルト挿入孔28にボルトが挿入されることで、各ブラケット24がフロアパネルに締結されている。リヤクロスメンバ22は、パイプ状の部材であり、2つのブラケット24の間に架け渡されている。
【0014】
図3は、リヤクロスメンバ22の端部42とブラケット24の固定構造を示す斜視図であり、
図4は、
図3のA-A端面図である。ブラケット24は、金属板を折り曲げて形成された本体30と、本体30の車幅方向外側に結合された金属板である側板32とを有する。
【0015】
ブラケット24の本体30は、前後のそれぞれに配置された締結部26と、締結部26から斜め上方に延びる斜板33と、斜板33の上端に接続され、本体30の天井を形成する天板34とを備える。
図4に示すように、天板34は、断面が半円状である凹み部36を有し、凹み部36は、左右方向(
図4の紙面を突き抜ける方向)に延びている。凹み部36には、リヤクロスメンバ22の端部42が入り込むことで、凹み部36が、リヤクロスメンバ22の端部42を下から支持している。
【0016】
図3に示すように、側板32は、天板34よりも上側に延びた部分を有し、リヤクロスメンバ22の端面は、側板32上部の車幅方向内側の面に当たっている。ブラケット24の凹み部36の上端(縁部39と記す)には、左右方向の複数箇所に、左右方向に延びる線状の溶接が施されている。この溶接は、
図4に示すように、前後の縁部39に施されている。また、凹み部36の底には、左右方向(
図4の紙面を突き抜ける方向)の複数箇所に、左右方向に延びる孔37が形成されており、ブラケット24の下側から、これらの孔37を通して溶接が施されている。これらの溶接によって、リヤクロスメンバ22の端部42は、ブラケット24に固定されている。
【0017】
この実施形態では、リヤクロスメンバ22の端部42の上側が開放されている点に大きな特徴がある。このように、リヤクロスメンバ22の端部42の上部部品(被覆部材)を廃止して、同端部42の下側のみをブラケット24の上面に固定している。
【0018】
次に、以上説明した後部車体構造12の作用効果について説明する。
【0019】
図5Aは、リヤクロスメンバ22とブラケット24を後方から見た図であり、
図5Bは、側面衝突時のリヤクロスメンバ22とブラケット24の変形の様子を示す図である。側面衝突時、
図5Bに示すように、衝突荷重Fがブラケット24上側の外側端面に印加されると、ブラケット24上部には、反衝突側の下方に向かう曲げモーメントが生じることになる。しかしながら、以上説明した実施形態によれば、リヤクロスメンバ22の端部42の上側が開放されているため、ブラケット24上部が反衝突側の下方に向かって変形する際に、リヤクロスメンバ22の端部42は、ブラケット24の上面から離脱することができる。リヤクロスメンバ22の端部42の下側は、ブラケット24の上面に溶接されているが、ブラケット24の変形が進むことにより溶接が剥がれて、それらの結合が解除される。これにより、リヤクロスメンバ22の端部42は、ブラケット24の変形に追従しなくなるため、リヤクロスメンバ22の変形を抑制することができる。リヤクロスメンバ22の形状が直線状に近い形状に維持されるため、反衝突側のブラケット24(
図5Bの左側)に衝突荷重を十分に伝えることができ、同ブラケット24に衝突荷重の一部を受け止めさせることができる。そのため、衝突してきた移動体の車両内への侵入を効果的に抑制することができる。
【0020】
以上説明した実施形態では、リヤクロスメンバ22の端部42の下側が、ブラケット24の上面に溶接されていたが、溶接されずに、ブラケット24の上面に置かれているだけでもよい。この場合、リヤクロスメンバ22を1対のブラケット24間に強く挟み込むことで、リヤクロスメンバ22が保持されてもよい。この実施形態でも、側面衝突時、リヤクロスメンバ22の端部42が、ブラケット24の上面から離脱できるため、リヤクロスメンバ22の変形を抑制することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 車両、12 後部車体構造、14,114 フロアパネル(フロア)、16 リヤシート、18 座部、20 背もたれ、22,122 リヤクロスメンバ、24,124 ブラケット、26 締結部、28 ボルト挿入孔、30 本体、32 側板、33 斜板、34 天板、36 凹み部、37 孔、39 縁部、42,142 端部、150 被覆部材。