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  • 特許-紐かけ治具及び紐かけ方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】紐かけ治具及び紐かけ方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 67/00 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B65B67/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021064657
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160118
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亘
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-006712(JP,U)
【文献】特開2017-154816(JP,A)
【文献】特開2003-020018(JP,A)
【文献】実開昭52-128476(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0158942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、
紐を掛ける箱状体の対象物の角部に係合するV字形状の係合部と、
前記把持部と前記係合部とを繋ぎ、前記係合部を前記対象物に係合させたときに、該対象物に向かって凸となるように長手方向に沿って湾曲しているアーム部と、
を備える、
紐かけ治具。
【請求項2】
前記係合部は、前記対象物の、前記係合部が前記対象物に係合される係合点に対向する位置に引っ掛けられた紐の一端が前記アーム部に掛けられた状態で、前記対象物に係合され、
前記係合点を支点として、前記把持部を前記対象物から離れる方向に傾けることで、前記紐が前記アーム部に沿って滑り、前記係合部から前記対象物へ移動する、
請求項1に記載の紐かけ治具。
【請求項3】
前記係合部に設けられ、前記対象物の前記角部の上面に当接する当接部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の紐かけ治具。
【請求項4】
前記係合部は、前記対象物に係合した状態で前記把持部が傾けられるときに、前記対象物に干渉しない形状を有する、
請求項2又は3に記載の紐かけ治具。
【請求項5】
把持部と、紐を掛ける箱状体の対象物の角部に係合するV字形の係合部と、前記把持部と前記係合部とを繋ぎ、前記係合部を前記対象物に係合させたときに、該対象物に向かって凸となるように長手方向に沿って湾曲しているアーム部とを備える紐かけ治具を用い、
前記対象物の、前記係合部が前記対象物に係合される係合点に対向する位置に前記紐を引っ掛け、
前記紐の一端を前記アーム部に掛けた状態で、前記係合部を前記対象物に係合し、
前記係合点を支点として、前記把持部を前記対象物から離れる方向に傾けることで、前記紐を、前記アーム部に沿って滑り、前記係合部から前記対象物へ移動させる、
紐かけ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐かけ治具及び紐かけ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、抗張力の大きいポリアミド系繊維等の単繊維又は繊維束よりなる繊維輪を鞘状の編紐で覆った輪紐を少なくとも2本組み合わせた多用途輪紐組が開示されている。箱状物体を吊り上げる場合、複数の輪紐を連結して箱状物体に巻き付け、箱状物体が抜け落ちないよう、巻き付けた輪紐に垂直、水平方向に別の輪紐を交差させて巻き付けるか、掛けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-176972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
箱状物体が抜け落ちないように紐を掛ける際、手で紐を引っ張り伸ばしながら箱に掛けることとなる。特許文献1のように抗張力の大きい紐の場合、紐を引っ張る力(引張荷重)が大きく、紐が指に食い込み、作業者の負担となる。特に、高齢者や女性には、大きな紐引き荷重の作業は負担が大きすぎる。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、対象物への紐かけを容易に行うことが可能な、紐かけ治具及び紐かけ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る紐かけ治具は、把持部と、紐を掛ける対象物に係合する係合部と、前記把持部と前記係合部とを繋ぎ、前記係合部を前記対象物に係合させたときに、該対象物に向かって凸となるように長手方向に沿って湾曲しているアーム部とを備えるものである。
【0007】
一態様に係る紐かけ方法は、把持部と、紐を掛ける対象物に係合する係合部と、前記把持部と前記係合部とを繋ぎ、前記係合部を前記対象物に係合させたときに、該対象物に向かって凸となるように長手方向に沿って湾曲しているアーム部とを備える紐かけ治具を用い、前記対象物の、前記係合部が前記対象物に係合される係合点に対向する位置に前記紐を引っ掛け、前記紐の一端を前記アーム部に掛けた状態で、前記係合部を前記対象物に係合し、前記係合点を支点として、前記把持部を前記対象物から離れる方向に傾けることで、前記紐を、前記アーム部に沿って滑り、前記係合部から前記対象物へ移動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対象物への紐かけを容易に行うことが可能な、紐かけ治具及び紐かけ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る紐かけ治具の構成を示す図である。
図2図1の紐かけ治具を下側から見た図である。
図3】実施形態に係る紐かけ方法の各状態を示す図である。
図4】実施形態に係る紐かけ方法の各状態を示す図である。
図5】実施形態に係る紐かけ方法の各状態を示す図である。
図6】実施形態に係る紐かけ方法の各状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。なお、特許請求の範囲に係る発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0011】
実施形態に係る紐かけ治具は、対象物に紐を掛ける際に用いられるものである。以下の説明では、例えば、プラスチック製の箱状の対象物が落下しないように、対象物の側面にビニールの紐を掛ける例について説明する。
【0012】
箱状の対象物に紐を掛ける際、作業者は、対象物の1つの角部に紐を引っ掛けて、手で紐を引っ張って伸ばしながら、対象物の4辺に紐を配置していた。このとき、紐を引っ張る引張荷重が110Nにも及ぶことがあり、紐が指に食い込み、作業者の負担になっていた。そこで、本発明者は、作業者が直接手で紐を引っ張ることなく、容易に対象物に紐かけを行うための治具を考案した。
【0013】
図1は、実施形態に係る紐かけ治具10の構成を示す図である。図1に示すように、紐かけ治具10は、把持部11、係合部12、アーム部13、当接部14を含む。紐かけ治具10の一方の端部には把持部11が配置され、他方の端部には係合部12が配置されている。把持部11は、作業者が手で握る部分である。
【0014】
係合部12は、紐を掛ける対象物Tに係合する。アーム部13は、把持部11と係合部12とを繋ぐ、湾曲した丸棒状の部材である。アーム部13は、係合部12を対象物に係合させたときに、該対象物に向かって凸となるように長手方向に沿って湾曲している。すなわち、図1に示す例では、紐かけ治具10の下側が、対象物に対向する側となる。
【0015】
アーム部13の形状は、アーム部13の任意の2点を基準として、最大半径となるR形状とすることができる。例えば、アーム部13は、アーム部13と係合部12の接続点と、アーム部13と把持部11との接続点を通る円の半径が140mmとなる、R形状とすることができる。
【0016】
アーム部13と、把持部11及び係合部12の取付部は、同一の材料で一体的に形成され得る。アーム部13の材料としては、例えばステンレス鋼等の金属材料が用いられる。アーム部13から延びる、把持部11及び係合部12の取付箇所はそれぞれ直線とすることができる。係合部12の取付箇所の直線と、把持部11の取付箇所の直線とのなる角度αは、例えば20度とすることができる。
【0017】
把持部11には、ゴム等の弾性材料からなる滑り止めが設けられていてもよい。把持部11の外径は、アーム部13の外径よりも大きいことが好ましい。把持部及びアーム部13の外径とは、それらの最大直径(つまり、それらの外周における径方向の最大寸法)を指す。
【0018】
なお、把持部11、当接部14は、横断面視で多角形に形成されてもよい。この場合、把持部11及びアーム部13の外径は、該多角形の外接円直径を指す。このように、把持部11の外径をアーム部13の外径よりも大きく形成することで、作業者が把持部11を強固に握ることができると共に、対象物Tへの紐かけを行う際に力を入れやすくなる。
【0019】
図2は、図1の紐かけ治具を下側から見た図である。図2に示すように、係合部12には、当接部14が設けられている。当接部14は、係合部12を対象物Tに係合する際に、対象物Tの上面に当接する。実施の形態では、当接部14は、下側から見て係合部12に沿って略直線状に設けられており、その全体が箱状の対象物Tの角部の上面に当接する。
【0020】
係合部12は、係合部12が対象物Tに係合した状態で把持部11が傾けられるときに、対象物Tに干渉しない形状を有する。実施の形態では、対象物Tが箱状体であるため、係合部12をV字形状とすることができる。この場合、係合部12は対象物Tの角部において、2つの側面に沿って配置される。また、把持部11が傾けられるときには、対象物Tの2つの側面からなる稜線が係合部12のV字形状内に進入するため、対象物Tと係合部12とがぶつかることがない。
【0021】
ここで、図3~6を参照して、実施形態に係る紐かけ方法について説明する。図3~6は、実施形態の紐かけ方法の各状態を示す図である。まず、係合部12を対象物Tの角部に係合させる。このとき、図3に示すように、対象物Tの角部における上面に沿って、当接部14の全体が当接する。係合部12が対象物Tに係合される箇所を係合点とする。
【0022】
このとき、対象物Tの、係合点に対向する位置には紐の一端があらかじめ引っ掛けられている。本例では、対象物Tの、係合点の対角に位置する角部に、紐Bの一端が引っ掛けられている。また、紐Bの他端は、アーム部13に掛けられている。この状態が、図4に示されている。アーム部13は対象物Tに向かって凸となるように配置されており、紐Bはアーム部13の凹側に接触している。
【0023】
この状態で、上述の係合点を支点として、把持部11を対象物Tから離れる方向に傾ける。すなわち、図4に矢印で示すように、把持部11を引き下げる。これにより、図5に示すように、紐Bがアーム部13に沿って、対象物Tに向かって滑る。
【0024】
その後、V字形状の係合部12内に、対象物Tの2側面よりなる稜線が侵入するまで、把持部11を引き下げ続けることで、紐Bは係合部12から対象物Tへと移動する。これにより、図6に示すように、作業者が手で直接紐Bに触れることなく、容易に対象物Tに紐Bを掛けることができる。
【0025】
なお、アーム部13が直線状である場合、係合点を支点として、把持部11を対象物Tから離れる方向に傾けたとしても、かけた力の大半が紐Bを引っ張ることに作用して、対象物Tの方向に向かって滑らかに移動しない。この時の引張荷重は、60Nである。
【0026】
これに対し、実施の形態では、把持部11を引き下げるにつれて、紐Bは、曲線状のアーム部13上を滑らかに移動する。この時の引張荷重は、11Nである。このように、アーム部13が湾曲していることにより、紐Bを下側の対象物Tの方向に送る作用が得られる。
【0027】
以上説明したように、実施形態の紐かけ治具10を用いることにより、てこの原理により、小さな力で紐Bを対象物Tに掛けることができる。このため、女性や高齢者、手先の不自由な人でも、紐かけ作業を行うことが可能となる。また、当接部14を対象物Tに当接させることで、係合部12が対象物Tに対してずれるのを抑制することができ、把持部11を引き下げる作業を容易に行うことができるとともに、対象物Tに対して確実に紐かけを行うことが可能となる。さらに、アーム部13が曲線状であることにより、アーム部が直線状である場合と比較して、紐Bのアーム部13上での移動を滑らかにすることができる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、対象物Tが箱状以外の形状である場合、該形状に合わせて、係合部12の形状や、当接部14の配置位置等を適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 紐かけ治具
11 把持部
12 係合部
13 アーム部
14 当接部
T 対象物
B 紐
図1
図2
図3
図4
図5
図6