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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241119BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021064742
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160162
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健作
(72)【発明者】
【氏名】村上 涼
(72)【発明者】
【氏名】下川 真之介
(72)【発明者】
【氏名】森 純一
(72)【発明者】
【氏名】余 淑芬
(72)【発明者】
【氏名】間庭 佑太
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013818(JP,A)
【文献】特許第6712010(JP,B1)
【文献】特開2017-165167(JP,A)
【文献】特開2008-077531(JP,A)
【文献】特開2020-116865(JP,A)
【文献】特開2020-003936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の乗客を認証するための認証情報であって、予め登録された登録情報と比較される該認証情報を受信する受信部と、
前記認証情報と前記登録情報が一致する場合に乗客を認証する認証部と、
認証された乗客が起立しているか否かを推定する推定部と、
認証された乗客が起立していると推定されている時間を該乗客が起立している時間として計測する計測部と、
ポイントサービスに利用可能なポイント又は電子マネーを計算する計算部であって、認証された乗客が起立している時間が長いほど大きな値となるようにポイント又は電子マネーを計算する計算部と、
計算されたポイント又は電子マネーを、乗客に関連付けてポイント又は電子マネーを記憶する記憶部へ送信する送信部と、
を備え
前記受信部は、乗客が保有し且つ前記記憶部を有する通信装置と近距離無線通信を行う認証用機器であって車両内に設置された該認証用機器から前記認証情報を受信し、
前記認証部は、前記通信装置に記憶された前記認証情報を認証することで乗客を認証し、
前記送信部は、計算されたポイント又は電子マネーを、前記通信装置の前記記憶部へ送信し、
車両内で乗客が起立することで手を近づけることが可能な高さに設けられた前記認証用機器と前記通信装置との通信状態に基づいて、前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接しているか否かを判定する判定部を備え、
前記推定部は、前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接している場合に、認証された乗客が起立していると推定する、情報処理装置。
【請求項2】
前記認証用機器の近傍を撮影した画像を取得する画像取得部を備え、
前記推定部は、前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接しており、且つ、前記画像において前記認証用機器から所定範囲に起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記通信装置は、ICカード又は携帯端末である、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記認証用機器は乗客の生体情報を取得する生体情報取得機器であり、
前記認証情報は前記生体情報取得機器が取得した乗客の生体情報であり、
前記認証部は、前記生体情報に基づいて乗客を認証する、請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記認証情報に基づいて、複数の乗客それぞれに関連付けてポイント又は電子マネーを記憶する前記記憶部に、認証された乗客に関連付けてポイントまたは電子マネーを送信する、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記認証用機器は、車両内の吊り手に設けられた、請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
車両内の乗客が保有する通信装置と、該通信装置と無線通信可能に接続された情報処理装置とを備える情報処理システムであって、
前記通信装置に記憶された乗客を認証するための認証情報であって、予め登録された登録情報と比較される該認証情報を該通信装置から受信する受信部と、
前記認証情報と前記登録情報が一致する場合に乗客を認証する認証部と、
認証された乗客が起立しているか否かを推定する推定部と、
認証された乗客が起立していると推定されている時間を該乗客が起立している時間として計測する計測部と、
ポイントサービスに利用可能なポイント又は電子マネーを計算する計算部であって、認証された乗客が起立している時間が長いほど大きな値となるようにポイント又は電子マネーを計算する計算部と、
計算されたポイント又は電子マネーを、乗客に関連付けてポイント又は電子マネーを記憶する前記通信装置の記憶部へ送信する送信部と、
を備え、
前記受信部は、乗客が保有し且つ前記記憶部を有する通信装置と近距離無線通信を行う認証用機器であって車両内に設置された該認証用機器から前記認証情報を受信し、
前記認証部は、前記通信装置に記憶された前記認証情報を認証することで乗客を認証し、
前記送信部は、計算されたポイント又は電子マネーを、前記通信装置の前記記憶部へ送信し、
車両内で乗客が起立することで手を近づけることが可能な高さに設けられた前記認証用機器と前記通信装置との通信状態に基づいて、前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接しているか否かを判定する判定部を備え、
前記推定部は、前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接している場合に、認証された乗客が起立していると推定する、情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内に設置される吊り革保持部材に非接触ICカード読取装置を装備し、乗客が非接触ICカード等を当該読取装置に接触させることにより、商品情報、広告主情報等を非接触ICカード等に取り込むことが公知である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-014821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時においては、交通機関の発達等により歩く機会が減少し、現代人の生活習慣として運動が不足している傾向がある。一方、鉄道やバスなどの交通機関においては、乗客に対して輸送すること以外のサービスを提供できていない実情がある。
【0005】
運動不足を解消する観点からすると、車両内の乗客は、座席に座らずに立つことで、より多くのカロリーを消費することができる。しかし、現状、車両内において、立ったまま乗車している乗客のモチベーションが向上するような仕組みが提供されていない問題がある。
【0006】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、車両内の乗客に起立することを促すことが可能な情報処理装置及び情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
(1) 車両内の乗客を認証するための認証情報を受信する受信部と、
前記認証情報に基づいて乗客を認証する認証部と、
認証された乗客が起立しているか否かを推定する推定部と、
認証された乗客が起立していると推定されている時間を該乗客が起立している時間として計測する計測部と、
ポイントサービスに利用可能なポイント又は電子マネーを計算する計算部であって、認証された乗客が起立している時間が長いほど大きな値となるようにポイント又は電子マネーを計算する計算部と、
計算されたポイント又は電子マネーを、乗客に関連付けてポイント又は電子マネーを記憶する記憶部へ送信する送信部と、
を備える、情報処理装置。
【0008】
(2) 前記受信部は、車両内に設置された乗客を認証するための認証用機器から前記認証情報を受信し、
前記認証用機器の近傍を撮影した画像を取得する画像取得部を備え、
前記推定部は、前記画像において前記認証用機器から所定範囲に起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定する、上記(1)に記載の情報処理装置。
【0009】
(3) 前記受信部は、乗客が保有し且つ前記記憶部を有する通信装置と近距離無線通信を行う認証用機器であって車両内に設置された該認証用機器から前記認証情報を受信し、
前記認証部は、前記通信装置に記憶された前記認証情報を認証することで乗客を認証し、
前記送信部は、計算されたポイント又は電子マネーを、前記通信装置の前記記憶部へ送信する、上記(1)に記載の情報処理装置。
【0010】
(4) 車両内で乗客が起立することで手を近づけることが可能な高さに設けられた前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接しているか否かを判定する判定部を備え、
前記推定部は、前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接している場合に、認証された乗客が起立していると推定する、上記(3)に記載の情報処理装置。
【0011】
(5) 前記認証用機器の近傍を撮影した画像を取得する画像取得部を備え、
前記推定部は、前記画像において前記認証用機器から所定範囲に起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定する、上記(3)に記載の情報処理装置。
【0012】
(6) 車両内で乗客が起立することで手を近づけることが可能な高さに設けられた前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接しているか否かを判定する判定部を備え、
前記推定部は、前記認証用機器に対して前記通信装置が通信可能な状態で近接しており、且つ、前記画像において前記認証用機器から所定範囲に起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定する、上記(5)に記載の情報処理装置。
【0013】
(7) 前記通信装置は、ICカード又は携帯端末である、上記(3)~(6)のいずれかに記載の情報処理装置。
【0014】
(8) 前記認証用機器は乗客の生体情報を取得する生体情報取得機器であり、
前記認証情報は前記生体情報取得機器が取得した乗客の生体情報であり、
前記認証部は、前記生体情報に基づいて乗客を認証する、上記(2)に記載の情報処理装置。
【0015】
(9) 前記受信部は、車両内に設置された乗客を認証するための認証用機器から前記認証情報を受信し、
前記認証用機器は乗客の生体情報を取得する生体情報取得機器であり、
前記認証情報は前記生体情報取得機器が取得した乗客の生体情報であり、
前記認証部は、前記生体情報に基づいて乗客を認証し、
前記推定部は、前記生体情報取得機器の近傍に備えられ、乗客が起立することで手を近づけることが可能な高さに設けられたタッチセンサからの出力に基づいて、認証された乗客が起立しているか否かを推定する、上記(1)に記載の情報処理装置。
【0016】
(10) 前記送信部は、前記認証情報に基づいて、複数の乗客それぞれに関連付けてポイント又は電子マネーを記憶する前記記憶部に、認証された乗客に関連付けてポイントまたは電子マネーを送信する、上記(8)又は(9)に記載の情報処理装置。
【0017】
(11) 前記認証用機器は、車両内の吊り手に設けられた、上記(2)~(10)のいずれかに記載の情報処理装置。
【0018】
(12) 車両内の乗客が保有する通信装置と、該通信装置と無線通信可能に接続された情報処理装置とを備える情報処理システムであって、
前記通信装置に記憶された乗客を認証するための認証情報を該通信装置から受信する受信部と、
前記認証情報を認証することで乗客を認証する認証部と、
認証された乗客が起立しているか否かを推定する推定部と、
認証された乗客が起立していると推定されている時間を該乗客が起立している時間として計測する計測部と、
ポイントサービスに利用可能なポイント又は電子マネーを計算する計算部であって、認証された乗客が起立している時間が長いほど大きな値となるようにポイント又は電子マネーを計算する計算部と、
計算されたポイント又は電子マネーを、乗客に関連付けてポイント又は電子マネーを記憶する前記通信装置の記憶部へ送信する送信部と、
を備える、情報処理システム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両内の乗客に起立することを促すことが可能な情報処理装置及び情報処理システムを提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る吊り手およびポイント付与装置が備えられた車両の内部を示す模式図である。
図2】吊り手、ポイント付与装置、およびその周辺を拡大して示す模式図である。
図3】ポイント付与装置、およびICカードから構成されるシステムのハードウェアの構成を示すブロック図である。
図4】ポイント付与装置に備えられた制御部の機能ブロックを示す模式図である。
図5】ポイント付与装置、およびICカードから構成されるシステムにより行われる処理を示すシーケンス図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る吊り手およびポイント付与装置が備えられた車両の内部を示す模式図である。
図7】第2の実施形態において、ポイント付与装置、およびICカードから構成されるシステムのハードウェアの構成を示すブロック図である。
図8】第2の実施形態において、ポイント付与装置に備えられた制御部の機能ブロックを示す模式図である。
図9】第2の実施形態において、ポイント付与装置、およびICカードから構成されるシステムにより行われる処理を示すシーケンス図である。
図10】カメラから受信した画像と、ポイント付与装置に対するICカードの近接の双方に基づいて、認証されたICカードの持ち主である乗客が起立していることを推定する場合の処理を示すシーケンス図である。
図11】吊り手、ポイント付与装置、およびその周辺を拡大して示す模式図であって、ポイント付与装置にICカードのホルダーが設けられた例を示す図である。
図12】吊り手、ポイント付与装置、およびその周辺を拡大して示す模式図であって、吊り手にポイント付与装置とともに生体情報取得機器が装着された例を示す図である。
図13】変形例1に係るポイント付与装置のハードウェアの構成と、ポイント付与装置の周辺の構成を示すブロック図である。
図14】吊り手、ポイント付与装置、およびその周辺を拡大して示す模式図であって、ポイント付与装置および生体情報取得機器に加えて、吊り手にタッチセンサが装着された例を示す図である。
図15】変形例2に係るポイント付与装置のハードウェアの構成と、ポイント付与装置の周辺の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態について図を参照しながら説明する。しかしながら、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る吊り手100およびポイント付与装置200が備えられた車両の内部を示す模式図である。吊り手100は、車内で起立している乗客10が吊り手100に掴まることで乗客10の身体を支えるものであり、一般的な成人の乗客が起立することで手を近づけることが可能な高さであって車両の座席に着座したままでは手を近づけることができないような高さに設けられている。一例として、吊り手100は、道路上を走行して乗客10を輸送するバスに備えられる。図1では、車内に設置された支持パイプ150に複数の吊り手100が吊り下げられている様子が示されており、図中で中央の吊り手100に乗客10の腕12が掴まっている様子が模式的に示されている。
【0023】
吊り手100にはポイント付与装置200が装着されている。乗客10は、吊り手100を掴んでいる側の腕12の手でICカード300を保持しており、ICカード300をポイント付与装置200に近接させている。
【0024】
図2は、吊り手100、ポイント付与装置200、およびその周辺を拡大して示す模式図である。吊り手100は、吊り輪110と連結部120を有して構成された汎用的なものであり、連結部120の一端が支持パイプ150に吊り下げられ、連結部120の他端に吊り輪110が吊り下げられている。
【0025】
本実施形態において、ポイント付与装置200は、具体的にはリーダライタであり、吊り輪110または連結部120に対して固定されている。ポイント付与装置200は、乗客10がICカード300をポイント付与装置200に近接させると、ICカード300と通信を行うことで、ICカード300の情報を読み取ることができ、またICカード300へ情報を書き込むことができる。
【0026】
ICカード300は、乗客が保有する通信装置の一態様であり、電子定期券、電子乗車券、電子マネーカードなどであり、ポイントサービスに利用可能な電子的なポイントを貯めることが可能とされている。本実施形態では、ICカード300は、ポイント付与装置200に近接すると、ポイント付与装置200に対して接触状態または非接触状態で通信を行う。そして、ICカード300に記憶された認証情報がポイント付与装置200によって認証されると、乗客が認証され、ICカード300がポイント付与装置200に近接している間は、近接している時間に応じてポイント付与装置200からICカード300へポイントが送信される。ICカード300では、認証情報に関連付けて記憶されているポイントに、ポイント付与装置200から送信されたポイントが加算される。乗客10は、店舗などで商品を購入する際にICカード300に認証情報に関連付けて記憶されたポイントを使うことができる。なお、ポイントは電子マネーであってもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、通信装置の一態様としてICカード300を例示するが、ICカード300の代わりに、ICカード300と同様の機能を備えたICチップ、または、このICチップを搭載した各種の携帯端末(例えば、ICタグ、スマートフォンなどの携帯電話機、タブレット端末などの携帯情報端末等)を用いることが可能である。
【0028】
ポイント付与装置200が吊り手100に装着されていることから、乗客10がICカード300をポイント付与装置200に近接させるためには、乗客10は立ち上がった状態になる。つまり、乗客10は、ICカード300にポイントを貯めるためには、車内の座席に着座することなく、立ち上がった状態を維持する必要がある。
【0029】
これにより、ICカード300にポイントを貯めようとする乗客10のカロリーが消費され、乗客10の運動不足が解消されるので、健康増進が図られる。また、ICカード300にポイントを貯めようとする乗客10が座席に着座しないことにより、座席が空くため、お年寄り、傷病者、妊婦などが座席に座れる機会が増加する。
【0030】
以上のように、第1の実施形態では、ポイント付与装置200にICカード300が近接している場合は、ICカード300の持ち主である乗客10が立っているものと推定して、ポイント付与装置200に近接しているICカード300に対してポイントが付与される。
【0031】
なお、図1では複数のポイント付与装置200が示されているが、各ポイント付与装置200は、ICカード300にポイントを付与する処理に関して同じ構成を有するので、以下では、特に必要が無い限り、1つのポイント付与装置200について説明する。
【0032】
図3は、ポイント付与装置200、およびICカード300から構成されるシステムのハードウェアの構成を示すブロック図である。ポイント付与装置200は、制御部210と、通信部220と、記憶部230と、表示部240を有している。制御部210と、通信部220と、記憶部230と、表示部240のそれぞれは通信可能に接続される。なお、ポイント付与装置200は、表示部240を有していなくてもよい。
【0033】
ポイント付与装置200の制御部210は、情報処理装置の一態様であり、プロセッサから構成される。プロセッサは、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサは、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。制御部210は、記憶部230の作業領域に実行可能に展開されたコンピュータプログラムの実行により所定の目的に合致した機能を提供する。
【0034】
ポイント付与装置200の通信部220は、車両内に設置された乗客を認証するための認証用機器の一態様であり、ICカード300と通信する際の通信インターフェースであり、例えばNFC(Near Field Communication)に準拠した近接無線通信を行い、ICカード300とデータの送受信を行う。ここで、近接無線通信とは、通信する装置同士の距離が数10cm以内となって可能となる通信を意味し、通信する装置同士(またはその筐体)が接触して行う通信も含まれる。すなわち、本明細書において「近接」とは、ポイント付与装置200(またはポイント付与装置200の通信部220)とICカード300が所定距離以内に近づくこと、またはそれらが接触することを意味する。
【0035】
通信部220は、所定の電磁波を輻射し、それに対する負荷の変化に基づいて、ICカード300が近接されたか否かを検出するとともに、ICカード300が近接されたとき、ICカード300と各種のデータを送受信するためのアンテナ(不図示)を有する構成とされる。図2に示したように、通信部220は、ポイント付与装置200の筐体の表面近傍において、乗客がICカード300を近接させ易い領域に設けられている。通信部220は、例えば、発振回路(OSC)から供給される所定の周波数の搬送波を、ICカード300に送信するデータに基づき変調し、生成された変調波を、電磁波としてアンテナから出力する。また、通信部220は、アンテナを介して取得したICカード300から送信された変調波を復調し、復調したデータを制御部210などに適宜供給する。
【0036】
なお、ポイント付与装置200の通信部220は、Bluetooth(登録商標)規格に準拠したものであってもよく、乗客が保有する通信する通信装置がBluetooth(登録商標)規格に準拠した装置である場合、通信部220は、Bluetooth(登録商標)規格に準拠した通信を行うことで通信装置と通信してもよい。
【0037】
ポイント付与装置200の記憶部230は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。記憶部230は、制御部210がポイント付与装置200の各部を制御する上で必要とされるプログラムやデータを記憶し、また、ICカード300からのデータやIC300に提供するデータなどを記憶する。
【0038】
ポイント付与装置200の表示部240は、例えば液晶表示ディスプレイ(LCD)から構成され、乗客10がポイント付与装置200にICカード300を近接させたことに起因してICカード300に送信されるポイントの値、認証情報に関連付けてICカード300に記憶されているポイントの値などを表示する。
【0039】
なお、図1及び図2では、図3に示したポイント付与装置200の構成要素が吊り手100に装着された例が示されているが、ポイント付与装置200の通信部220のみが吊り手100に装着され、ポイント付与装置200の残りの構成要素は車両内の他の部位に配置され、これらがコントローラエリアネットワーク(Controller Area Network (CAN))、イーサネット(登録商標)(Ethernet(登録商標))といった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。また、通信部220のみが吊り手100に装着された場合に、通信部220はインターネットなどの通信ネットワークを介して車両内または車両外のサーバと通信可能に構成されていてもよく、ポイント付与装置200の制御部210、記憶部230などの構成要素はサーバ側に設けられていてもよい。
【0040】
ICカード300は、制御部310と、通信部320と、記憶部330と、を有している。ICカード300の制御部310は、プロセッサから構成され、ICカード300の各部を制御する。
【0041】
ICカード300の通信部320は、ポイント付与装置200と通信する際の通信インターフェースであり、ポイント付与装置200の通信部220と例えば上述したNFCに準拠した近接無線通信を行う。通信部320は、例えば、コイル状のアンテナとコンデンサにより構成されるLC回路を有する構成とされ、LC回路が近傍に配置されたポイント付与装置200の通信部220から輻射される所定の周波数の電磁波と共振するようになされている。そして、通信部320は、アンテナにおいて励起された交流磁界を復調により整流し、各部に直流電源として供給する。また、通信部320は、アンテナを介して受信した変調波を復調し、復調後のデータを制御部310などに供給する。
【0042】
通信部320は、所定の情報をポイント付与装置200に送信する場合、ポイント付与装置200に送信するデータを、例えばアンテナの負荷の変動に基づいて変調し、その変調成分を、アンテナを介してポイント付与装置200に送信する。
【0043】
ICカード300の記憶部330は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。記憶部330は、制御部310がICカード300の各部を制御する上で必要とされるプログラムやデータを記憶し、また、ポイント付与装置200からのデータやポイント付与装置200に提供するデータなどを記憶する。加えて、記憶部330は、乗客に関連付けて、すなわち乗客に対応する認証情報に関連付けて、ポイント(又は電子マネー)を記憶する。
【0044】
図4は、ポイント付与装置200に備えられた制御部210の機能ブロックを示す模式図である。ポイント付与装置200の制御部210は、送受信部210aと、近接判定部210bと、認証部210cと、起立推定部210dと、時間計測部210eと、ポイント計算部210fと、表示処理部210gと、を有している。制御部210が有するこれらの各部は、例えば、制御部210上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。つまり、制御部210が有するこれらの各部は、制御部210とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成される。また、そのプログラムは、ポイント付与装置200の記憶部230または外部から接続される記録媒体に記録されていてもよい。あるいは、制御部210が有するこれらの各部は、制御部210に設けられる専用の演算回路であってもよい。
【0045】
上述したように、ポイント付与装置200の制御部210、記憶部230などの構成要素はサーバ側に設けられていてもよく、その場合、図4に示す制御部210の機能ブロックはサーバ側に設けられる。
【0046】
制御部210の送受信部210aは、通信部220を介して、ICカード300との間で情報の送受信を行う。送受信部210aは、ポイント付与装置200に近接したICカード300を捕捉するため、Pollingコマンドを送信する。また、送受信部210aは、ICカード300を認証して乗客を認証するための認証情報をICカード300から通信部220を介して受信する。また、送受信部210aは、ポイント計算部210fが計算したポイントを、ICカード300の記憶部330へ送信する。より具体的には、送受信部210aは、ポイント計算部210fが計算したポイントを、ポイント付与装置200の通信部220及びICカード300の通信部320を介して、ICカード300の記憶部330へ送信する。
【0047】
制御部210の近接判定部210bは、ICカード300がポイント付与装置200に通信可能な状態で近接しているか否かを判定する。例えば、近接判定部210bは、通信部220から輻射した所定の電磁波に対する負荷の変化に基づいて、ICカード300がポイント付与装置200に通信可能な状態で近接しているか否かを判定する。近接判定部210bは、送受信部210aから所定のデータをICカード300へ逐次送信させ、これに対する肯定応答(ACK)をICカード300から受信している場合など、送信したデータに対する応答を受信した場合にICカード300が近接していると判定してもよい。
【0048】
制御部210の認証部210cは、認証情報に基づいて乗客を認証する。具体的には、認証部210cは、乗客が保有するICカード300に記憶された認証情報を認証することで乗客を認証する。例えば、認証部210cは、ICカード300から受信した認証情報と予め記憶部230に登録された登録情報とを比較し、認証情報と登録情報が一致する場合に乗客を認証する。一方、認証部210cは、認証情報と登録情報が一致しない場合は、乗客を認証しない。
【0049】
制御部210の起立推定部210dは、認証された乗客が起立しているか否かを推定する。具体的には、本実施形態では、起立推定部210dは、認証情報が認証されたICカード300がポイント付与装置200の通信部220に対して近接している場合に、認証された乗客が起立していると推定する。
【0050】
制御部210の時間計測部210eは、認証された乗客が起立していると推定されている時間を、乗客が起立している時間として計測する。
【0051】
制御部210のポイント計算部210fは、ポイントサービスに利用可能なポイントを計算する計算部であって、認証された乗客が起立している時間が長いほど大きな値となるようにポイントを計算する。
【0052】
制御部210の表示処理部210gは、ポイント付与装置200の表示部240に情報を表示させるための処理を行う。具体的に、表示処理部210gは、ICカード300に送信されるポイントを表示部240に表示するための処理、またはICカード300に記憶されている現時点の総ポイントを表示部240に表示するための処理等を行う。
【0053】
ポイント付与装置200の制御部210の送受信部210aがポイントに関する情報をICカード300へ送信すると、ICカード300の通信部320がこれを受信する。ポイントに関する情報は通信部320にて復調された後、制御部310に送られる。
【0054】
ICカード300の制御部310は、ポイント付与装置200から受信したポイントを記憶部330の不揮発性メモリに記憶させる。この際、制御部310は、既にICカード300の記憶部330にポイントが記憶されている場合は、記憶されているポイントにポイント付与装置200から受信したポイントを合算して記憶部330の不揮発性メモリに記憶させる。
【0055】
また、ICカード300の制御部310は、記憶部330の不揮発性メモリに記憶された現時点の総ポイントを、必要に応じてポイント付与装置200へ送信させる。このようにして送信されたポイントは、上述したように、ポイント付与装置200の表示部240に適宜表示される。
【0056】
ICカード300の記憶部330にポイントが記憶されると、乗客はICカード300の記憶部330に記憶されたポイントを各種ポイントサービスに利用することができる。例えば、乗客は、交通機関の乗車券の支払い、商品の購入、eコマース等にポイントを利用することができる。乗客の更なる健康増進を促進するため、乗客がポイントを利用して健康関連商品を購入する際の割引率は他の商品の割引率より大きくしてもよい。
【0057】
図5は、ポイント付与装置200、およびICカード300から構成されるシステムにより行われる処理を示すシーケンス図である。先ず、ポイント付与装置200の制御部210の送受信部210aが、通信部220を介してPollingコマンドを送信し、ICカード300との近接無線通信を試みる(ステップS20)。
【0058】
ICカード300がポイント付与装置200に近接していると、ICカード300の通信部320がPollingコマンドを受信し、ICカード300は、Pollingコマンドに対する応答コマンドをポイント付与装置200へ送信する(ステップS30)。応答コマンドには、ICカード300の認証情報が含まれている。
【0059】
ポイント付与装置200の制御部210の送受信部210aは、ICカード300から送信された応答コマンドを受信する(ステップS21)。次に、制御部210の近接判定部210bが、ICカード300がポイント付与装置200に通信可能な状態で近接していると判定する(ステップS22)。
【0060】
なお、ICカード300がポイント付与装置200に近接していない場合、ICカード300はPollingコマンドを受信しないため、応答コマンドがポイント付与装置200に送信されることはない。ポイント付与装置200は、所定時間内に応答コマンドを受信しなかった場合はICカード300を捕捉できなかったと判定し、ステップS20の処理を再度行う。
【0061】
ステップS22の後、制御部210の認証部210cが、応答コマンドに基づいて、応答コマンドに含まれる認証情報を認証することで、乗客を認証する(ステップS23)。次に、起立推定部210dが、認証された乗客が起立していると推定する(ステップS24)。次に、制御部210の時間計測部210eが、乗客が起立している時間(起立時間)を計測する(ステップS25)。
【0062】
次に、制御部210のポイント計算部210fが、ステップS25で計測された時間に基づいて、ポイントを計算する(ステップS26)。上述したように、ポイント計算部210fは、時間計測部210eが計測した時間が長いほど大きな値となるようにポイントを計算する。次に、送受信部210aが、計算されたポイントを、通信部220を介してICカード300へ送信する(ステップS27)。
【0063】
ICカード300の通信部320は、ポイント付与装置200から送信されたポイントを受信する(ステップS33)。次に、ICカード300の制御部310が、ポイント付与装置200から送信されたポイントを記憶部330に記憶させる(ステップS34)。ステップS34の後、ICカード300の処理が終了される。
【0064】
ポイント付与装置200では、ステップS27の後、制御部210の近接判定部210bが、ICカード300のポイント付与装置200に対する近接が継続しているか否かを判定する(ステップS28)。ICカード300のポイント付与装置200に対する近接が継続している場合、ステップS24へ戻り、ステップS24以降の処理が再度行われる。一方、ICカード300のポイント付与装置200に対する近接が継続していない場合、ポイント付与装置200の処理が終了される。
【0065】
なお、図5の処理では、乗客を認証した後にポイントを計算しているが、乗客の認証は、ポイントを計算した後、ポイントを送信する前に行われてもよい。この場合に、乗客を認証できなかった場合は、ポイントの送信は行われない。
【0066】
以上説明したように第1の実施形態によれば、吊り手100に装着されたポイント付与装置200にICカード300が近接している場合は、ICカード300の持ち主である乗客10が起立していると推定され、起立している時間に応じてICカード300にポイントが送信される。したがって、車両内の乗客に起立することを促すことが可能となり、乗客の健康増進を図ることができる。
【0067】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る吊り手100およびポイント付与装置200が備えられた車両の内部を示す模式図である。第2の実施形態では、車両内に乗客を撮影するカメラ400が設けられている。
【0068】
第2の実施形態では、車両内に設けられたカメラ400で乗客10を撮影し、撮影された画像に基づいて乗客10が起立しているか否かが推定される。また、第1の実施形態と同様に、ICカード300に記憶された認証情報を認証することで乗客が認証される。そして、乗客を認証したポイント付与装置200の近傍に起立した乗客が存在する場合は、認証情報が認証されたICカード300にポイントが送信される。
【0069】
図7は、第2の実施形態において、ポイント付与装置200、およびICカード300から構成されるシステムのハードウェアの構成を示すブロック図である。図7に示すシステムでは、図3にシステムに対して、カメラ400が追加されている。ポイント付与装置200とカメラ400は、コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network (CAN))、イーサネット(登録商標)(Ethernet(登録商標))といった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。ポイント付与装置200、およびICカード300は、図3に示した第1の実施形態と基本的に同様に構成されるが、第2の実施形態において、ポイント付与装置200の通信部220は、NFC等に準拠した近接無線通信を行う機能に加えて、車内ネットワークを介してカメラ400と通信を行う機能を有する。
【0070】
カメラ400は、車載カメラであって、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影検出対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。カメラ400は、車両の天井または壁などに設けられ、吊り手100の近傍の乗客10の想定位置に向けられている。カメラ400は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに吊り手100の周囲を撮影し、吊り手100の周囲の乗客10が表された画像を生成する。カメラ400は、ステレオカメラから構成されていてもよく、左右画像の視差から画像上の各構造物までの距離を取得するように構成されていてもよい。カメラ400は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してポイント付与装置200へ出力する。
【0071】
第2の実施形態において、ポイント付与装置200の記憶部230には、車両内におけるポイント付与装置200の3次元的な位置を表す位置情報、およびカメラ400の内部パラメータなどの情報が記憶されている。内部パラメータは、車両内におけるカメラ400の取付位置および姿勢、カメラ400の焦点距離等の情報を含む。
【0072】
図8は、第2の実施形態において、ポイント付与装置200に備えられた制御部210の機能ブロックを示す模式図である。ポイント付与装置200の制御部210は、第1の実施形態で説明した送受信部210a、近接判定部210b、認証部210c、起立推定部210d、時間計測部210e、ポイント計算部210f、および表示処理部210gに加えて、画像取得部210hを更に有している。第1の実施形態と同様、制御部210が有するこれらの各部は、例えば、制御部210上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。以下では、制御部210が有する各部について、第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0073】
制御部210の画像取得部210hは、カメラ400から車内ネットワークを介して送信された、カメラ400が通信部220(認証用機器)の近傍を撮影した画像を取得する。制御部210の起立推定部210dは、認証部210cがICカード300の認証情報を認証した後、カメラ400から受信した画像において、ポイント付与装置200から所定範囲、より具体的には通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定する。この際、起立推定部210dは、乗客および乗客の姿勢の検出用に機械学習された識別器にカメラ400から受信した画像を入力することにより、カメラ400から受信した画像に乗客が表されているか否かを判定し、乗客が表されている場合はその乗客が起立した状態で表されているか否かを判定する。
【0074】
より詳細には、起立推定部210dは、記憶部230に記憶されたポイント付与装置200の位置情報と、カメラパラメータとに基づき、画像上でポイント付与装置200から所定範囲(例えば、ポイント付与装置200の直下)に起立している乗客が存在するか否かを判定する。例えば、起立推定部210dは、カメラ400の位置を原点とし、カメラ400の光軸方向を一つの軸方向とするカメラ座標系から車両内の座標系への変換式を求める。そのような変換式は、座標系間の回転を表す回転行列と座標系間の平行移動を表す並進ベクトルの組み合わせで表される。そして、起立推定部210dは、その変換式に従って、カメラ座標系で表された画像に含まれる乗客の位置を車両の座標系の座標に変換する。そして、起立推定部210dは、車両の座標系の座標で表された、ポイント付与装置200の位置と、乗客の位置とを比較することで、ポイント付与装置200から所定範囲に乗客が表されているか否かを判定し、乗客が表されている場合はその乗客が起立した状態で表されているか否かを判定する。
【0075】
また、起立推定部210dは、顔の検出用に機械学習された識別器にカメラ400から受信した画像を入力することにより、画像から乗客の顔を認識するように構成されていてもよい。この場合、起立推定部210dは、認証された乗客が起立していると一旦推定した後は、ポイント付与装置200から所定範囲に起立した乗客が表されているか否かに関わらず、認識した顔に基づいて画像内で乗客を追尾し、この乗客が起立した状態で表されている否かを判定し、起立した状態で表されている場合は認証された乗客が起立していると推定してもよい。
【0076】
なお、起立推定部210dは、上記の識別器として、例えば、物体の分類とバウンディングボックスの位置の検出を同時に行うFaster R-CNN, YOLO, SSDなどのニューラルネットワーク(NN)を用いることができる。また、起立推定部210dは、上記の識別器として、例えば、入力された画像から、その画像の各画素について、その画素に表される可能性の有る物体の種類ごとに、その物体がその画素に表されている確からしさを出力し、確からしさが最大となる物体が表されていると識別するように予め学習されたセグメンテーション用の識別器を用いることができる。起立推定部210dは、そのような識別器として、例えば、Fully Convolutional Network(FCN)といった、セグメンテーション用のコンボリューショナルニューラルネットワーク型(CNN)のアーキテクチャを有するディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、起立推定部210dは、ランダムフォレストあるいはサポートベクトルマシンといった他の機械学習手法に従ったセグメンテーション用の識別器を利用してもよい。この場合、起立推定部210dは、画像をセグメンテーション用の識別器に入力することで、その画像において任意の物体が写っている画素を特定する。そして起立推定部210dは、同じ種類の物体が写っている画素の集合をその物体が表された領域とする。
【0077】
また、起立推定部210dは、例えば人が表されたテンプレート画像とカメラ400から受信した画像とのテンプレートマッチングにより、カメラ400から受信した画像に乗客が表されているか否かを判定し、乗客が表されている場合はその乗客が起立した状態で表されているか否かを判定してもよい。
【0078】
図9は、第2の実施形態において、ポイント付与装置200、およびICカード300から構成されるシステムにより行われる処理を示すシーケンス図である。図9に示す処理は、第1の実施形態で説明した図5の処理と比較すると、ステップS40,41が追加され、図5のステップS28が削除されている。以下では、図5に示した第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0079】
ステップS23で制御部210の認証部210cがICカード300認証情報を認証することで乗客を認証すると、制御部210の画像取得部210hが、カメラ400から車内ネットワークを介して送信された画像を取得する(ステップS40)。次に、起立推定部210dが、画像においてポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されているか否かを判定する(ステップS41)。ポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されている場合、起立推定部210dは、認証された乗客が起立していると推定する(ステップS24)。
【0080】
一方、ステップS41において、ポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されていない場合、起立推定部210dは、認証された乗客が起立していないと推定し、以降の処理が終了される。
【0081】
ステップS24以降の処理は第1の実施形態と基本的に同様であるが、第2の実施形態では、画像に起立した乗客が表されているか否かに基づいて乗客が起立していることを推定するため、第1の実施形態の図5のステップS28の処理は行われず、ステップS27の後はステップS40に戻り、画像に基づいて乗客が起立しているか否かが再度推定される。
【0082】
なお、図9の処理では、ポイント付与装置200に対するICカード300の近接に基づいて乗客が起立しているか否かを推定しないため、ステップS22の処理は行わなくてもよい。
【0083】
以上のように、図9の処理によれば、画像において、ポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されている場合は、認証された乗客が起立していると推定され、乗客が起立している時間に応じてICカード300にポイントが送信される。一方、画像において、ポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されていない場合は、認証された乗客が起立していないと推定されるため、ICカード300にポイントは送信されない。
【0084】
乗客が起立しているか否かは画像に基づいて推定され、ポイント付与装置200に対するICカード300の近接に基づいて推定されるものではないため、ステップS23で乗客が認証された後、乗客はポイント付与装置200にICカード300を近接させ続けなくてもよい。
【0085】
以上の説明では、制御部210の起立推定部210dは、カメラ400が撮影した画像に基づいて乗客が起立していることを推定した。一方、起立推定部210dは、カメラ400から受信した画像と、ポイント付与装置200に対するICカード300の近接の双方に基づいて、認証された乗客が起立していることを推定してもよい。図10は、この場合の処理を示すシーケンス図である。図10では、第1の実施形態で説明した図5のシーケンス図に対して、ポイント付与装置200の処理としてステップS40およびステップS41が追加されている。図10においてステップS40およびステップS41以外の処理は第1の実施形態と基本的に同様であるので、以下では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0086】
ステップS23で制御部210の認証部210cがICカード300の認証情報を認証することで乗客を認証すると、制御部210の画像取得部210hが、カメラ400から車内ネットワークを介して送信された画像を取得する(ステップS40)。次に、起立推定部210dが、画像において、ポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されているか否かを判定する(ステップS41)。ポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されている場合、起立推定部210dは、認証された乗客が起立していると推定する(ステップS24)。ステップS24以降の処理は第1の実施形態と同様である。
【0087】
一方、ステップS41において、ポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されていない場合、起立推定部210dは、認証された乗客が起立していないと推定し、以降の処理が終了される。
【0088】
以上のように、図10の処理によれば、通信部220がICカード300と通信可能に近接しており、且つ、画像においてポイント付与装置200の通信部220から所定範囲に起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定される。したがって、乗客が起立しているか否かがより確実に推定される。
【0089】
図11は、吊り手100、ポイント付与装置200、およびその周辺を拡大して示す模式図であって、ポイント付与装置200にICカード300のホルダー250が設けられた例を示す図である。
【0090】
ホルダー250は、例えば袋状とされ、ホルダー250には上側からICカード300が挿入可能とされている。ICカード300がホルダー250に挿入されると、ポイント付与装置200とICカード300が近接した状態でICカード300がホルダー250に保持される。
【0091】
ICカード300がホルダー250に挿入されると、乗客が吊り手100に掴まりながらICカード300をポイント付与装置200に近接させる必要はないので、ICカード300にポイントを貯めようとする乗客の負担が軽減される。
【0092】
一方、第1の実施形態のように、ポイント付与装置200とICカード300が通信可能に近接していることをもって乗客が起立していると推定し、乗客のICカード300にポイントを送信する場合、乗客10がICカード300をホルダー250に入れた状態で着席した場合においても、ICカード300にポイントが付与されてしまう弊害が生じる。
【0093】
第2の実施形態では、認証されたICカード300の持ち主である乗客が起立しているか否かは、カメラ400が撮影した画像に基づいて推定される。したがって、乗客10がICカード300をホルダー250に入れた状態で着席した場合は、認証された乗客が起立していないと推定され、ICカード300にポイントが送信されることはない。したがって、ポイント付与装置200にICカード300のホルダー250を設けることが可能であり、乗客の利便性が高められる。
【0094】
以上説明したように第2の実施形態によれば、カメラ400から受信した画像において、乗客を認証したポイント付与装置200から所定範囲に起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定され、ICカード300に対してポイントが送信される。したがって、車両内の乗客に起立することを促すことが可能となり、乗客の健康増進を図ることができる。
【0095】
(変形例1)
上述した実施形態では、ICカード300の認証情報を認証することで乗客の認証を行ったが、乗客の認証はこれに限定されるものではない。ポイント付与装置200の制御部210の認証部210cは、静脈認証、指紋認証、顔認証などの生体認証等、他の認証方法により乗客を認証してもよい。
【0096】
図12は、図2と同様に、吊り手100、ポイント付与装置200、およびその周辺を拡大して示す模式図であって、吊り手100にポイント付与装置200とともに生体情報取得機器500が装着された例を示す図である。生体情報取得機器は、乗客が生体情報取得機器500に手をかざすと、乗客の生体情報を取得する。具体的には、生体情報取得機器500は、カメラであり、乗客の手の静脈、または指紋を撮影し、これらの生体情報を取得する。また、顔認証を行う場合、生体情報取得機器500は、乗客の顔を撮影することで生体情報を取得する。また、指紋認証を行う場合、生体情報取得機器500は、静電容量方式の指紋センサであってもよい。
【0097】
図13は、変形例1に係るポイント付与装置200のハードウェアの構成と、ポイント付与装置200の周辺の構成を示すブロック図である。図13に示すように、ポイント付与装置200は、第2の実施形態と同様に車内ネットワークを介してカメラ400と通信可能に接続され、更に車内ネットワークを介して生体情報取得機器500と通信可能に接続されている。ポイント付与装置200の基本的な構成は第2の実施形態と同様であるが、変形例1では、通信部220はNFC等に準拠した近接無線通信を行う機能を備えていなくてよい。したがって、変形例1に係るポイント付与装置200は、リーダライタの機能を備えていなくてよい。
【0098】
変形例1に係るポイント付与装置200に備えられた制御部210の機能ブロックの基本的な構成は図8で説明した第2の実施形態と同様に構成される。以下では第2の実施形態と相違する点を中心に説明する。なお、乗客が起立しているか否かはカメラ400から受信した画像に基づいて推定され、ポイント付与装置200に対するICカード300の近接に基づいて推定されるものではないため、近接判定部210bは設けられていなくてよい。
【0099】
静脈認証、指紋認証、顔認証などの生体認証を行う場合、ポイント付与装置200の制御部210の送受信部210aは、乗客を認証する認証情報として、静脈、指紋、または顔の生体情報を生体情報取得機器500から受信する。そして、ポイント付与装置200の制御部210の認証部210cは、乗客毎に予め登録された静脈、指紋、または顔の認証用登録情報と生体情報取得機器500から受信した認証情報を比較することで乗客の認証を行う。なお、静脈、指紋、または顔の認証用登録情報は、予め登録されてポイント付与装置200の記憶部230に記憶されている。
【0100】
ポイント付与装置200の制御部210の起立推定部210dは、生体認証により認証部210cが乗客を認証した後、カメラ400から受信した画像に基づいて、認証情報を送信した生体情報取得機器500から所定範囲に、起立した乗客が表されている場合に、認証された乗客が起立していると推定する。
【0101】
変形例1では、乗客がICカード300を保有していないため、乗客に付与されるポイントはポイント付与装置200側に記憶される。このため、ポイント付与装置200の記憶部230は、複数の乗客それぞれに関連付けてポイントを記憶する。例えば、記憶部230には、複数の乗客のそれぞれについて、乗客の生体情報(認証情報)とその乗客に関連付いたポイントとが組み合わされて記憶される。ポイント付与装置200の制御部210の送受信部210aは、認証された乗客に関連付けて(すなわち、認証情報に関連付けて)ポイントを記憶部230に送信する。乗客は、ポイントの利用時に、自身に関連付けて記憶部230に記憶されたポイントを利用することができる。
【0102】
以上のような構成により、静脈認証、指紋認証、顔認証などの生体認証等、他の認証方法により乗客を認証し、認証された乗客が起立している場合に、乗客に関連付けてポイントを記憶する記憶部230へポイントを送信することが可能となる。
【0103】
(変形例2)
変形例1において、乗客が起立しているか否かを、吊り手100に装着されたタッチセンサに乗客の手がタッチしているか否かにより推定してもよい。図14は、図12と同様に、吊り手100、ポイント付与装置200、およびその周辺を拡大して示す模式図であって、ポイント付与装置200および生体情報取得機器500に加えて、吊り手100にタッチセンサ600が装着された例を示す図である。タッチセンサ600は、例えば静電容量式または感圧式のセンサから構成される。
【0104】
図14に示すように、タッチセンサ600は吊り輪110に装着されている。このような構成により、乗客の手が吊り輪110に掴まると、乗客の手がタッチセンサ600にタッチするので、乗客の手が吊り輪110に掴まっていることを示す信号がタッチセンサ600から出力される。
【0105】
図15は、変形例2に係るポイント付与装置200のハードウェアの構成と、ポイント付与装置200の周辺の構成を示すブロック図である。図15に示すように、ポイント付与装置200は、変形例1と同様に車内ネットワークを介して生体情報取得機器500と通信可能に接続され、更に車内ネットワークを介してタッチセンサ600と通信可能に接続されている。図15に示す変形例2は、変形例1のカメラ400の代わりにタッチセンサ600が設けられている点で変形例1と相違する。ポイント付与装置200の基本的な構成は変形例1と同様である。
【0106】
変形例2に係るポイント付与装置200に備えられた制御部210の機能ブロックの基本的な構成は第1の実施形態と同様に構成されるので、以下では第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。なお、乗客が起立しているか否かはタッチセンサ600からの出力に基づいて推定され、ポイント付与装置200に対するICカード300の近接に基づいて推定されるものではないため、近接判定部210bは設けられていなくてよい。
【0107】
変形例1と同様、ポイント付与装置200の制御部210の送受信部210aは、乗客を認証する認証情報として、静脈、指紋、または顔の生体情報を生体情報取得機器500から受信する。そして、ポイント付与装置200の制御部210の認証部210cは、乗客毎に予め登録された静脈、指紋、または顔の認証用登録情報と生体情報取得機器500から受信した認証情報を比較することで乗客の認証を行う。
【0108】
ポイント付与装置200の制御部210の起立推定部210dは、タッチセンサ600から受信した信号に基づいて、タッチセンサ600に乗客の手がタッチしている場合は、認証された乗客が起立していると推定する。
【0109】
変形例2と同様、ポイント付与装置200の制御部210の送受信部210aは、認証情報に基づいて、認証された乗客に関連付けて記憶部230にポイントを送信する。
【0110】
変形例1および変形例2において、ポイントを付与された乗客は、ポイントの利用時に例えば上記と同様の認証を行い、自身の生体情報に関連付けて記憶部230に記憶されたポイントを利用することができる。このため、変形例1,2においては、ポイント付与装置200の制御部210、記憶部230などの構成要素は車両外のサーバに設けられていることがより好ましい。
【0111】
第1の実施形態および第2の実施形態では、送受信部210aは、ポイントを、認証情報に関連付けられたICカード300に送信する。一方、変形例1および変形例2では、送受信部210aは、ポイントを、認証された乗客に関連付けて(すなわち、認証情報に関連付けて)記憶部230に送信する。したがって、これらの実施形態および変形例を大きくまとめると、送受信部210aは、ポイントを、乗客に関連付けてポイントを記憶する記憶部であって、ICカード300などの通信装置やサーバなどに設けられた記憶部に送信する。
【符号の説明】
【0112】
10 乗客
12 腕
100 吊り手
110 吊り輪
120 連結部
150 支持パイプ
200 ポイント付与装置
210 制御部
210a 送受信部
210b 近接判定部
210c 認証部
210d 起立推定部
210e 時間計測部
210f ポイント計算部
210g 表示処理部
210h 画像取得部
220 通信部
230 記憶部
240 表示部
250 ホルダー
300 ICカード
310 制御部
320 通信部
330 記憶部
400 カメラ
500 生体情報取得機器
600 タッチセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15