(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】光路制御装置、表示装置、及び光路制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20241119BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20241119BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241119BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G02B26/08 D
G02B26/10 108
G03B21/00 D
G03B21/14 A
(21)【出願番号】P 2021102973
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕之
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0301118(US,A1)
【文献】特開2018-155989(JP,A)
【文献】特開2016-071232(JP,A)
【文献】特開2020-190673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08、26/10
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する光学部材を有する揺動部と、
前記揺動部を揺動させるアクチュエータと、
電流値をゼロとする第1期間と、前記第1期間より後であって前記第1期間と連続し、第1電流値で電流値を保持する第2期間とを含む波形の駆動信号を、前記アクチュエータに印加することで、前記アクチュエータに前記揺動部を揺動させて光路を制御する駆動部と、
を有し、
前記駆動部は、前記第1期間の長さが、
前記揺動部の固有振動数の逆数の半分の値と略同じ値となるように、前記駆動信号を印加する、
光路制御装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記第1期間より前であって前記第1期間と連続する第3期間において、前記第1電流値と正負が逆となる第2電流値で電流値が保持されるように、前記駆動信号を印加する、請求項
1に記載の光路制御装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の光路制御装置と、前記光学部材に光を照射する照射装置と、を含む、
表示装置。
【請求項4】
前記照射装置は、前記第2期間において、前記光学部材に光を照射する、請求項
3に記載の表示装置。
【請求項5】
光が入射する光学部材を含む揺動部を揺動させるアクチュエータに駆動信号を印加することで光路を制御する光路制御方法であって、
電流値をゼロとする第1期間と、前記第1期間より後であって前記第1期間と連続し、第1電流値で電流値を保持する第2期間とを含む波形の駆動信号を、前記アクチュエータに印加することで、前記アクチュエータに前記揺動部を揺動させるステップを有し、
前記第1期間の長さを、
前記揺動部の固有振動数の逆数の半分の値と略同じ値とする、
光路制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路制御装置、表示装置、及び光路制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、光が入射する光学部を揺動させることで、光軸をずらす光学デバイスが知られている。特許文献1には、光学部を揺動させて光学部を透過する光の光路をずらすことで、光変調装置の解像度よりも投射される画像の解像度を高くすることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように光路をずらす場合においては、光学部を高速に揺動し且つ安定的に静止させることが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、光学部を高速に揺動し且つ安定的に静止可能な光路制御装置、表示装置、及び光路制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる光路制御装置は、光が入射する光学部材を含む揺動部と、前記揺動部を揺動させるアクチュエータと、電流値をゼロとする第1期間と、前記第1期間より後であって前記第1期間と連続し、第1電流値で電流値を保持する第2期間とを含む波形の駆動信号を、前記アクチュエータに印加することで、前記アクチュエータに前記揺動部を揺動させて光路を制御する駆動部と、を有し、前記駆動部は、前記第1期間の長さが、前記揺動部の固有振動数に対応する値となるように、前記駆動信号を印加する。
【0007】
本発明の一態様にかかる表示装置は、前記光路制御装置と、前記光学部材に光を照射する照射装置と、を含む。
【0008】
本発明の一態様にかかる光路制御方法は、光が入射する光学部材を含む揺動部を揺動させるアクチュエータに駆動信号を印加することで光路を制御する光路制御方法であって、第1電流値から第2電流値まで電流値を変化させる第1期間と、前記第1期間と連続し、前記第2電流値で電流値を保持する第2期間とを含む波形の前記駆動信号を、前記アクチュエータに印加することで、前記アクチュエータに前記揺動部を揺動させるステップを有し、前記第1期間の長さを、前記揺動部の固有振動数に対応する値とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学部を高速に揺動し且つ安定的に静止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る表示装置の模式図である。
【
図2】
図2は、表示装置の回路構成を模式的に示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る駆動信号の波形を説明するグラフである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る光学部の揺動パターンを説明するグラフである。
【
図7】
図7は、第2実施形態における表示装置の回路構成を模式的に示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る駆動信号の波形を説明するグラフである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る光学部の揺動パターンを説明するグラフである。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る駆動信号の波形を説明するグラフである。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る光学部の揺動パターンを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
(表示装置)
図1は、第1実施形態に係る表示装置の模式図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る表示装置1は、光路制御装置10と照射装置100とを有する。照射装置100は、画像用の光Lを照射する装置であり、光路制御装置10は、光Lの光路を制御する装置である。本実施形態では、光路制御装置10は、光Lの光軸をずらすことにより、光Lによって表示される画像の位置をずらして、照射装置100による画像の解像度(すなわち後述の表示素子106の画素数)よりも、投影される画像の解像度を高くする。
【0013】
図1に示すように、照射装置100は、光源101、偏光板105R、105G、105B、表示素子106R、106G、106B、偏光板107R、107G、107B、色合成プリズム108、投射レンズ109、ダイクロイックミラー120、121、反射ミラー130、131、レンズ140~145、偏光変換素子150及び映像信号処理回路160を備える。表示素子106R、表示素子106G、及び表示素子106Bを区別しない場合は、表示素子106と記載する。
【0014】
光源101は、光を発生させて照射する光源である。光源101は、入射光L0を照射する。本実施形態は、入射光L0を照射する光源として、1つの光源101を用いることを例としているが、入射光L0を生成するための他の光学装置を有していてもよい。
【0015】
光源101からの入射光L0は、レンズ140に入射する。レンズ140及びレンズ141は例えばフライアイレンズである。入射光L0は、レンズ140及び141によって照明分布が均一化され、偏光変換素子150に入射される。偏光変換素子150は、入射光L0の偏光を揃える素子であり、例えば偏光ビームスプリッタと位相差板とを有する。例えば、偏光変換素子150は、入射光L0をp偏光に揃える。
【0016】
偏光変換素子150によって偏光が揃えられた入射光L0は、レンズ142を介してダイクロイックミラー120に照射される。レンズ142は例えば集光レンズである。
【0017】
ダイクロイックミラー120は、入射した入射光L0を、黄色光LRGと、青色帯域の成分を含む青色光LBとに分離する。ダイクロイックミラー120によって分離された黄色照明光LRGは、反射ミラー130を反射し、ダイクロイックミラー121に入射する。
【0018】
ダイクロイックミラー121は、入射した黄色光LRGを、赤色帯域の成分を含む赤色光LRと、緑色帯域の成分を含む緑色光LGとに分離する。
【0019】
ダイクロイックミラー121によって分離された赤色光LRは、レンズ143を介して偏光板105Rに照射される。ダイクロイックミラー121によって分離された緑色光LGは、レンズ144を介して偏光板105Gに照射される。ダイクロイックミラー120によって分離された青色光LBは、反射ミラー131により反射し、レンズ145を介して偏光板105Bに照射される。
【0020】
偏光板105R、105G、105Bは、s偏光及びp偏光のいずれか一方を反射し、他方を透過させる特性を有する。例えば、偏光板105R、105G、105Bがs偏光を反射し、p偏光を透過させる。偏光板105R、105G、105Bを反射型偏光板とも称する。
【0021】
p偏光である赤色光LRは、偏光板105Rを透過して表示素子106Rに照射される。p偏光である緑色光LGは、偏光板105Gを透過して、表示素子106Gに照射される。p偏光である青色光LBは、偏光板105Bを透過して、表示素子106Bに照射される。
【0022】
表示素子106R、表示素子106G、及び表示素子106Bは、例えば反射型液晶表示素子である。本実施形態では表示素子106R、表示素子106G、及び表示素子106Bが反射型液晶表示素子である場合を例に説明するが、反射型に限定されず、透過型液晶表示素子を使用する構成としても良い。また、液晶表示素子ではなく、他の表示素子を使用する構成にも種々応用可能である。
【0023】
表示素子106Rは、映像信号処理回路160によって制御される。映像信号処理回路160は、赤色の成分の画像データに基づいて表示素子106Rを駆動制御する。表示素子106Rは、映像信号処理回路160の制御に応じてp偏光の赤色光LRを光変調し、s偏光の赤色光LRを生成する。表示素子106Gは、映像信号処理回路160によって制御される。映像信号処理回路160は、緑色の成分の画像データに基づいて表示素子106Gを駆動制御する。表示素子106Gは、映像信号処理回路160の制御に応じてp偏光の緑色光LGを光変調し、s偏光の緑色光LGを生成する。表示素子106Bは、映像信号処理回路160によって制御される。映像信号処理回路160は、青色の成分の画像データに基づいて表示素子106Bを駆動制御する。表示素子106Bは、映像信号処理回路160の制御に応じて青色の成分の画像データに基づいてp偏光の青色光LBを光変調し、s偏光の青色光LBを生成する。
【0024】
偏光板107R、107G、107Bは、s偏光及びp偏光のいずれか一方を透過し、他方を反射又は吸収する特性を有する。例えば、偏光板107R、107G、107Bがs偏光を透過し、不要なp偏光を吸収する。
【0025】
表示素子106Rによって生成された、s偏光の赤色光LRは、偏光板105Rに反射され、偏光板107Rを透過して、色合成プリズム108に照射される。表示素子106Gによって生成された、s偏光の緑色光LGは、偏光板105Gに反射され、偏光板107Gを透過して、色合成プリズム108に照射される。表示素子106Bによって生成された、s偏光の青色光LBは、偏光板105Bに反射され、偏光板107Bを透過して、色合成プリズム108に照射される。
【0026】
色合成プリズム108は、入射した赤色光LR、緑色光LG、及び青色光LBを合成して、画像表示用の光Lとして、投射レンズ109に照射する。光Lは、投射レンズ109を介して、図示しないスクリーン等へ投射される。
【0027】
照射装置100は、以上のような構成となっているが、その構成は以上の説明に限られず、任意の構成となっていてよい。
【0028】
光路制御装置10は、光路制御機構12と、制御回路(制御部)14と、駆動回路(駆動部)16とを有する。光路制御機構12は、駆動回路16によって駆動されることで揺動する機構である。光路制御機構12は、光Lの光路に沿った方向における、色合成プリズム108と投射レンズ109との間に設けられる。光路制御機構12は、色合成プリズム108からの光Lが入射しつつ揺動することで、光Lの進行方向(光路)をシフトさせて投射レンズ109に向けて出射する。このように、光路制御装置10は、光Lの光路がシフトするように、光Lの光路を制御する。なお、光路制御機構12の設けられる位置は、色合成プリズム108と投射レンズ109との間に限られず、任意であってよい。
【0029】
図2は、表示装置の回路構成を模式的に示すブロック図である。
図2に示すように、映像信号処理回路160は、表示素子106R、106B、106Gを制御する。映像信号処理回路160には、表示素子106R、106B、106Gを制御するための画像データと、同期信号とを含む映像信号が入力される。映像信号処理回路160は、同期信号に基づいてタイミングを同期させつつ、画像データに基づいて表示素子106R、106B、106Gを制御する。制御回路14は、デジタル回路14A及び変換器14Bを有する。デジタル回路14Aには、映像信号処理回路160からの同期信号が入力される。デジタル回路14Aは、同期信号に基づいてタイミングを同期させつつ、光路制御機構12を駆動するためのデジタルの駆動信号を生成する。変換器14Bは、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器である。変換器14Bは、デジタル回路14Aで生成されたデジタルの駆動信号をアナログの駆動信号に変換する。駆動回路16は、変換器14Bからのアナログの駆動信号が入力され、アナログの駆動信号を増幅して、後述する光路制御機構12のアクチュエータ12Bに出力する。アクチュエータ12Bは、駆動信号に応じて駆動されて、後述の揺動部12Aを揺動させる。
【0030】
(光路制御機構)
光路制御機構12の構成について、より具体的に説明する。
図3は、光路制御機構の模式図であり、
図4は、
図3のA-A断面図である。
図3及び
図4に示すように、光路制御機構12は、光Lが入射する光学部材20を含む揺動部12Aと、揺動部12Aを揺動させるアクチュエータ12Bとを有する。より詳しくは、光路制御機構12は、光学部材20と、可動部22と、支持部24と、軸部25と、コイル26と、ヨーク27と、磁石28とを有する。
【0031】
光学部材20は、入射した光Lを透過する部材である。光学部材20は、一方の表面から光Lが入射して、入射した光Lを透過して、他方の表面から光Lを出射する。光学部材20は、本実施形態ではガラス板であるが、材料及び形状は任意であってよい。
【0032】
可動部22は、光学部材20を支持する部材である。可動部22は、光学部材20に対して固定されている。具体的には、本実施形態の可動部22は、中央に貫通穴が形成される板状の部材である。光学部材20は、可動部22の貫通穴にはめ込まれた状態で、可動部22に固定されている。なお、光学部材20は、可動部22と固定されるための固定部材や接着剤を介して、可動部22に固定されているが、光学部材20の可動部22への固定方法は任意であってよい。
【0033】
支持部24は、光学部材20が設けられた可動部22を揺動可能に支持する部材である。本実施形態では、支持部24は、枠状の部材であり、可動部22の外周を囲うように設けられている。軸部25は、可動部22を、支持部24に対して揺動可能に連結する部材である。本実施形態では、軸部25は、2つ設けられている。それぞれの軸部25は、矩形状の光学部材20の、互いに対向する頂点近傍の位置に設けられている。可動部22は、軸部25同士を結んだ軸である揺動軸AXまわりに揺動する。可動部22が揺動軸AXまわりに揺動することで、可動部22に設けられた光学部材20の姿勢が変化して、光学部材20を透過する光Lの光路をシフトさせる。
【0034】
コイル26は、可動部22に取り付けられており、可動部22に対して固定されている。コイル26は、可動部22の両端部にそれぞれ設けられている。ヨーク27は、磁路を形成する部材である。ヨーク27は、支持部24に取り付けられており、支持部24に対して固定されている。コイル26に対応して、可動部22の両端部にそれぞれ設けられている。磁石28は、永久磁石である。磁石28は、ヨーク27に取り付けられており、ヨーク27に対して固定されている。磁石28は、それぞれのコイル26と隣り合う位置に配置されている。コイル26には、駆動回路16からの駆動信号が入力される。
図4の例では、コの字状のヨーク27の一辺に磁石28が接着され、接着されていない磁石28の面と、ヨーク27のコの字状の対向する一辺との間にエアギャップが形成される。コイル26は、このエアギャップ内に配置される。コイル26は、駆動信号が入力される。これにより、磁石28による磁場内にある導電体であるコイル26に電流が流れて力が発生して、この力により、コイル26に固定された可動部22(揺動部12A)を揺動させる。すなわち、本実施形態に係るアクチュエータ12Bは、コイル26とヨーク27と磁石28とにより構成された、電磁アクチュエータであるといえる。
【0035】
本実施形態では、このように光学部材20が設けられた可動部22が揺動するため、光学部材20と可動部22とコイル26とが、揺動部12Aを構成するといえる。すなわち、光路制御機構12のうち、支持部24に対して揺動する部分が、揺動部12Aを指すといえる。なお、光学部材20を可動部22に固定するための固定部材や接着剤、コイル26に電流を流すための基板やリード線などが設けられている場合には、これらも支持部24に対して揺動するため、揺動部12Aに含まれる。
【0036】
なお、本実施形態のアクチュエータは、可動部22にコイル26を配置したいわゆるムービングコイル型であったが、それに限られず、例えば可動部22に磁石28を配置して支持部24にコイル26を配置した、いわゆるムービングマグネット型であってもよい。この場合、磁石28が光学部材20と共に揺動されるため、コイル26の代わりに磁石28が揺動部12Aに含まれることになる。
【0037】
光路制御機構12は、以上のような構成であるが、それに限られず、駆動信号が印加されたアクチュエータによって光学部が揺動することで、光学部による光Lの光路のシフトが可能な、任意の構成であってよい。
【0038】
光路制御機構12は、アクチュエータ12Bが、駆動信号に応じて揺動部12Aを揺動させる。すなわち、アクチュエータ12Bは、駆動信号に応じて、揺動部12Aが、揺動軸AXまわりの第1角度D1から第2角度D2への姿勢変化と、第2角度D2から第1角度D1への姿勢変化とを繰り返すように、揺動部12Aを揺動させる。揺動部12Aが第1角度D1と第2角度D2との間の揺動を繰り返すことで、光Lの光軸は、第1位置から第2位置へのシフトと、第2位置から第1位置へのシフトとが繰り返される。本実施形態では、光軸が第1位置である際に光Lによってスクリーンに投影される画像と、光軸が第2位置である際に光Lによってスクリーンに投影される画像とは、半画素分だけずれたものとなる。すなわち、スクリーンに投影される画像は、半画素分ずれて半画素分戻ることを繰り返す。これにより、見かけ上の画素数が増加して、スクリーンに投影される画像を高解像度化することができる。このように、本実施形態における光軸のシフト量は、画像の半画素分であるため、第1角度D1及び第2角度D2は、画像を半画素分シフト可能な角度に設定される。なお、画像のシフト量は、半画素分に限られず、例えば画素の1/4、1/8など、任意であってよい。第1角度D1及び第2角度D2も、画像のシフト量に合わせて適宜設定されてよい。
【0039】
(駆動信号)
次に、駆動回路16からアクチュエータ12Bに印加される駆動信号について説明する。
【0040】
図5は、第1実施形態に係る駆動信号の波形を説明するグラフである。駆動回路16からアクチュエータ12Bに印加される駆動信号は、電気信号であり、
図5に示すように、時間経過に従って電流値が変化する。以下、駆動信号の時間毎の電流値の変化を表す波形を、駆動信号の波形と記載する。
図5では、駆動信号の波形が実線で示されている。第1実施形態においては、駆動信号は、周期T毎に同じ波形が繰り返されるものとなっている。周期Tは、期間T1と、期間T1より後であって期間T1と連続する期間T2とを含む。期間T1は、光Lの光軸が第1位置となっている際の画像(ここでは半画素分ずれていない画像)が表示される期間に対応し、期間T2は、光Lの光軸が第2位置となっている際の画像(ここでは半画素分ずれた画像)が表示される期間に対応する。
【0041】
駆動信号は、期間T1のうちの第1期間TA1においては、電流値が、第1電流値A1から第2電流値A2まで変化する。さらに言えば、駆動信号は、第1期間TA1において、電流値が、第1電流値A1から第2電流値A2まで、時間の経過に従って直線状に変化する。すなわち、駆動信号は、第1期間TA1の開始タイミングにおいては、電流値が第1電流値A1であり、その後電流値が第1電流値A1から直線状に変化して、第1期間TA1の終了タイミングにおいて、電流値が第2電流値A2となる。第1電流値A1は、揺動部12Aを第1角度D1に保持可能な電流値であり、第1角度D1の数値に応じて設定される。第2電流値A2は、揺動部12Aを第2角度D2に保持可能な電流値であり、第2角度D2の数値に応じて設定される。第1電流値A1と第2電流値A2とは、正負が逆となる電流値であり、その絶対値は等しくてよい。
図5では、第1電流値A1が負であり第2電流値A2が正であることが例示されている。
【0042】
第1期間TA1の長さは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。上述のように、揺動部12Aは、光路制御機構12のうちの、支持部24に対して揺動する部分(本実施形態の例では光学部材20と可動部22とコイル26)を指す。すなわち、第1期間TA1の長さは、支持部24に対して揺動する部分の固有振動数に対応する値になっているといえる。より詳しくは、第1期間TA1の長さは、揺動部12Aの固有周期と略同じ値であることが好ましく、固有周期と同じ値であることがより好ましい。ここで、固有周期は、固有振動数の逆数である。また、「略同じ値」とは、固有周期に対して誤差範囲の程度ずれた値も許容することを意味する。例えば、固有周期に対してのずれが、固有周期の値に対して5%以内である場合にも、「略同じ値」としてよい。以降でも、「略同じ値」という記載は、同様の意味を指す。なお、固有振動(固有振動数の逆数)の値とは、固有振動数をf[Hz]とした場合、「1/f」[s]として表される。
【0043】
なお、揺動部12Aの固有振動数は、予め測定されてよい。例えば、アクチュエータ12Bにサイン波を0Hzから徐々に周波数を増やしつつ印加(スイープ)して、揺動部12Aの振動を測定し、揺動部12Aが最も大きく振動する周波数を、揺動部12Aの固有振動数としてよい。なお、振動の測定には、微小変位計を用いてよい。本実施形態においては、このようにして測定した揺動部12Aの固有振動数に基づき、第1期間TA1の長さを設定して、設定した長さの第1期間TA1において、第1電流値A1から第2電流値A2に変化するように、駆動信号の波形を設定する。
【0044】
駆動信号は、期間T1のうちの第2期間TB1においては、電流値が、第2電流値A2で保持される。第2期間TB1は、第1期間TA1より後であって第1期間TA1に連続する期間である。なお、揺動部12Aの固有振動数を大きくすることで、第1期間TA1を短くして、第2期間TB1を長くすることができる(例えば第1期間TA1より長くすることができる)ため、好ましい。なお、第2電流値A2に保持されるとは、電流値が第2電流値A2から厳密に変化しないことに限定されず、電流値が第2電流値A2から所定値の範囲でずれることも含まれてよい。ここでの所定値は、任意に設定されてよいが、例えば第2電流値A2の10%の値であってよい。
【0045】
このように、駆動信号は、期間T1において、電流値が第1電流値A1から第2電流値A2に徐々に変化し、電流値が第2電流値A2に到達したら、電流値が第2電流値A2に保持される。
【0046】
駆動信号は、期間T2のうちの第3期間TA2においては、電流値が、第2電流値A2から第1電流値A1まで変化する。第3期間TA2は、第2期間TB1より後であって第2期間TB1に連続する期間といえる。さらに言えば、駆動信号は、第3期間TA2において、電流値が、第2電流値A2から第1電流値A1まで、時間の経過に従って直線状に変化する。すなわち、駆動信号は、第3期間TA2の開始タイミングにおいては、電流値が第2電流値A2であり、その後電流値が第2電流値A2から直線状に変化して、第3期間TA2の終了タイミングにおいて、電流値が第1電流値A1となる。
【0047】
第3期間TA2の長さは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。より詳しくは、第3期間TA2の長さは、揺動部12Aの固有周期(固有振動数の逆数)と略同じ値であることが好ましく、固有周期と同じ値であることがより好ましい。第3期間TA2本実施形態では、第3期間TA2の長さは、第1期間TA1の長さと等しい。
【0048】
駆動信号は、期間T2のうちの第4期間TB2においては、電流値が、第1電流値A1で保持される。第4期間TB2は、第3期間TA2より後であって第3期間TA2に連続する期間である。また、第4期間TB2は、第1期間TA1より前であって第1期間TA1に連続する期間である。第4期間TB2は、本実施形態では第2期間TB1と等しい。揺動部12Aの固有振動数を大きくすることで、第3期間TA2を短くして、第4期間TB2を長くすることができる(例えば第3期間TA2より長くすることができる)ため、好ましい。なお、第1電流値A1に保持されるとは、電流値が第1電流値A1から厳密に変化しないことに限定されず、電流値が第1電流値A1から所定値の範囲でずれることも含まれてよい。ここでの所定値は、任意に設定されてよいが、例えば第1電流値A1の10%の値であってよい。
【0049】
このように、駆動信号は、期間T2において、電流値が第2電流値A2から第1電流値A1に徐々に変化し、電流値が第1電流値A1に到達したら、電流値が第1電流値A1に保持される。
【0050】
以上のように、第1実施形態においては、駆動信号の波形は台形状であり、電流値が変化する第1期間TA1、TA2が、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。
【0051】
なお、
図5の破線は、光Lが照射される期間を示している。照射装置100は、第1期間TA1において光Lを照射せず、第2期間TB1において光Lを照射することが好ましい。また、照射装置100は、第3期間TA2において光Lを照射せず、第4期間TB2において光Lを照射することが好ましい。
【0052】
(揺動パターン)
次に、駆動信号の印加による揺動部12Aの揺動パターンについて説明する。
図6は、第1実施形態に係る光学部の揺動パターンを説明するグラフである。揺動部12Aの揺動パターンとは、アクチュエータ12Bに駆動信号が印加された際の、時間毎の揺動部12Aの変位角(揺動軸AXまわりの角度)を指す。
図6では、揺動パターンが実線で示されている。
【0053】
第1期間TA1においては、駆動信号は、電流値が、第1電流値A1から第2電流値A2まで変化する。これにより、揺動部12Aは、第1期間TA1において、変位角が、第1角度D1から第2角度D2まで変化する。
【0054】
第2期間TB1においては、駆動信号は、電流値が、第2電流値A2に保持される。これにより、揺動部12Aは、第2期間TB1において、変位角が、第2角度D2に保持される。なお、第2角度D2に保持されるとは、変位角が第2角度D2から厳密に変化しないことに限定されず、変位角が第2角度D2から所定値の範囲でずれることも含まれてよい。ここでの所定値は、任意に設定されてよいが、例えば第2角度D2の10%の値であってよい。
【0055】
第3期間TA2においては、駆動信号は、電流値が、第2電流値A2から第1電流値A1まで変化する。これにより、揺動部12Aは、第3期間TA2において、変位角が、第2角度D2から第1角度D1まで変化する。
【0056】
第4期間TB2においては、駆動信号は、電流値が、第1電流値A1に保持される。これにより、揺動部12Aは、第4期間TB2において、変位角が、第1角度D1に保持される。なお、第1角度D1に保持されるとは、変位角が第1角度D1から厳密に変化しないことに限定されず、変位角が第1角度D1から所定値の範囲でずれることも含まれてよい。ここでの所定値は、任意に設定されてよいが、例えば第1角度D1の10%の値であってよい。
【0057】
なお、光Lは、第2期間TB1、TB2において照射される。従って、第2期間TB1においては、第2角度D2に保持された揺動部12Aに光Lが照射されて、光Lの光路が第1位置となる。第4期間TB2においては、第1角度D1に保持された揺動部12Aに光Lが照射されて、光Lの光路が第2位置にシフトして、画像が半画素分ずれる。
【0058】
光学部を揺動させることで光路をシフトさせる光路制御装置においては、光学部を安定的に揺動させることが求められている。本発明者は、鋭意研究の結果、第1期間TA1、TA2の長さを、揺動部12Aの固有振動数に対応する値とすることで、第2期間TB1、TB2において揺動部12Aが振動することを抑えて、揺動部12Aを安定的に揺動させることができることを発見した。すなわち、本実施形態においては、第1期間TA1、TA2の長さが、揺動部12Aの固有振動数に対応する値になっていることで、第2期間TB1、TB2における揺動部12Aの振動を抑制して、揺動部12Aを安定的に揺動させることができる。従って、本実施形態によると、揺動部12Aを高速に揺動し且つ安定的に静止させて、画像の劣化を抑制できる。
【0059】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る光路制御装置10は、光Lが入射する光学部材20を含む揺動部12Aと、揺動部12Aを揺動させるアクチュエータ12Bと、駆動信号をアクチュエータ12Bに印加することで、アクチュエータ12Bに揺動部12Aを揺動させて光路を制御する駆動回路16(駆動部)とを有する。駆動回路16は、第1電流値A1から第2電流値A2まで電流値を変化させる第1期間TA1と、第1期間TA1と連続し、第2電流値A2で電流値を保持する第2期間TB1とを含む波形の駆動信号を、アクチュエータ12Bに印加する。駆動回路16は、第1期間TA1の長さが、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となるように、駆動信号を印加する。
【0060】
このように、第1実施形態においては、第1期間TA1の長さを、揺動部12Aの固有振動数に対応する値とすることで、第2期間TB1において揺動部12Aが振動してしまうことを抑制して、揺動部12Aを安定的に揺動させることができる。また、揺動部12Aの固有振動数に対応する長さの第1期間TA1で電流値を変化させて、その後の第2期間TB1において電流値を保持する波形とすることで、波形の設定が複雑にならずに、揺動部12Aを安定的に揺動可能な波形を容易に設定できる。
【0061】
また、駆動回路16は、第1期間TA1の長さが、揺動部12Aの固有振動数の逆数になるように、駆動信号を印加する。第1期間TA1の長さを揺動部12Aの固有振動数の逆数とすることで、揺動部12Aをより安定的に揺動させることができる。
【0062】
また、駆動回路16は、第1期間TA1において、第1電流値A1から第2電流値A2まで、電流値が直線状に変化するように、駆動信号を印加する。第1期間TA1における電流値の変化を直線状にすることで、揺動部12Aをより安定的に揺動させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る表示装置1は、光路制御装置10と、揺動部12Aに光Lを照射する照射装置100とを含む。本実施形態に係る表示装置1は、光路制御装置10を備えることで、揺動部12Aを安定的に揺動させて、画像の劣化を抑制できる。
【0064】
また、照射装置100は、第2期間TB1において、揺動部12Aに光Lを照射する。第2期間TB1において光Lを照射することで、光路を適切にシフトさせることが可能となる。
【0065】
また、本実施形態に係る光路制御方法は、光Lが入射する揺動部12Aを揺動させるアクチュエータ12Bに駆動信号を印加することで光路を制御する。本方法は、第1電流値A1から第2電流値A2まで電流値を変化させる第1期間TA1と、第1期間TA1と連続し、第2電流値A2で電流値を保持する第2期間TB1とを含む波形の駆動信号を、アクチュエータ12Bに印加することで、アクチュエータ12Bに揺動部12Aを揺動させるステップを有する。本方法においては、第1期間TA1の長さを、揺動部12Aの固有振動数に対応する値とする。本方法によると、揺動部12Aを安定的に揺動させることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、駆動信号の波形が、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0067】
図7は、第2実施形態における表示装置の回路構成を模式的に示すブロック図である。
図7に示すように、第2実施形態に係る制御回路14は、デジタル回路14Aを含み、第1実施形態のようなDA変換器(変換器14B)を有さない。第2実施形態においては、デジタル回路14Aが生成したデジタルの駆動信号が駆動回路16に入力されて、駆動回路16は、デジタルの駆動信号を増幅して、アクチュエータ12Bに出力する。アクチュエータ12Bは、駆動信号に応じて駆動されて、揺動部12Aを揺動させる。このように、第2実施形態においては、デジタルの駆動信号が駆動回路16に入力されるが、それに限られず、第1実施形態と同様に変換器14Bでアナログ変換された駆動信号が入力されてもよい。
【0068】
(駆動波形)
図8は、第2実施形態に係る駆動信号の波形を説明するグラフである。
図8に示すように、第2実施形態においては、第1期間TA1においては、電流値がゼロに保持される。本実施形態では、デジタル回路14Aなどがデジタルのスイッチング回路を含むため、アクチュエータ12Bへの電流の供給を停止でき、電流の供給が停止されている期間が、電流値がゼロとされる期間となる。
【0069】
第1期間TA1の長さは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。より詳しくは、第1期間TA1の長さは、揺動部12Aの固有周期(固有振動数の逆数)の半分の値と略同じ値であることが好ましく、固有周期(固有振動数の逆数)の半分の値と同じ値であることがより好ましい。なお、固有周期の半分の値とは、固有振動数をf[Hz]とした場合、「1/(2・f)」[s]として表される。
【0070】
駆動信号は、第2期間TB1においては、電流値が、第2電流値A2で保持される。第2期間TB1は、第1期間TA1より後であって第1期間TA1に連続する期間である。すなわち、第2期間TB1の開始タイミング(第1期間TA1から第2期間TB1へ切り替わるタイミング)において、電流値が、ゼロから第2電流値A2に切り替わり、第2期間TB1の終了タイミングまで、電流値が第2電流値A2で保持される。
【0071】
このように、第2実施形態では、期間T1における駆動信号は、第1期間TA1において電流値がゼロに保持されて、第2期間TB1の開始タイミングで電流値が第2電流値A2に切り替わり、第2期間TB1において電流値が第2電流値A2に保持される。
【0072】
第2実施形態では、第3期間TA2においては、電流値がゼロに保持される。第3期間TA2は、第2期間TB1より後であって第2期間TB1に連続する期間といえる。すなわち、第3期間TA2の開始タイミング(第2期間TB1から第3期間TA2へ切り替わるタイミング)において、電流値が、第2電流値A2からゼロに切り替わり、第3期間TA2の終了タイミングまで、電流値がゼロで保持される。
【0073】
第3期間TA2の長さは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。より詳しくは、第3期間TA2の長さは、揺動部12Aの固有周期(固有振動数の逆数)の半分の値と略同じ値であることが好ましく、固有周期(固有振動数の逆数)の半分の値と同じ値であることがより好ましい。本実施形態では、第3期間TA2の長さは、第1期間TA1の長さと等しい。
【0074】
駆動信号は、第4期間TB2においては、電流値が、第1電流値A1で保持される。第4期間TB2は、第3期間TA2より後であって第3期間TA2に連続する期間である。すなわち、第4期間TB2の開始タイミング(第3期間TA2から第4期間TB2へ切り替わるタイミング)において、電流値が、ゼロから第1電流値A1に切り替わり、第4期間TB2の終了タイミングまで、電流値が第1電流値A1で保持される。
【0075】
このように、第2実施形態では、期間T2における駆動信号は、第3期間TA2において電流値がゼロに保持されて、第4期間TB2の開始タイミングで電流値が第1電流値A1に切り替わり、第4期間TB2において電流値が第1電流値A1に保持される。
【0076】
なお、第4期間TB2に後続する第1期間TA1においては、上述のように電流値がゼロに保持される。すなわち、第1期間TA1の開始タイミング(第4期間TB2から第1期間TA1へ切り替わるタイミング)において、電流値が、第1電流値A1からゼロに切り替わり、第1期間TA1の終了タイミングまで、電流値がゼロで保持される。
【0077】
図8の破線は、光Lが照射される期間を示している。照射装置100は、第1期間TA1において光Lを照射せず、第2期間TB1において光Lを照射することが好ましい。また、照射装置100は、第3期間TA2において光Lを照射せず、第4期間TB2において光Lを照射することが好ましい。
【0078】
(揺動パターン)
次に、駆動信号の印加による揺動部12Aの揺動パターンについて説明する。
図9は、第2実施形態に係る光学部の揺動パターンを説明するグラフである。
【0079】
第1期間TA1の開始タイミングにおいて、駆動信号は、電流値が第1電流値A1からゼロに切り替わり、第1期間TA1の終了タイミングまで、電流値がゼロに保持される。これにより、揺動部12Aは、第1期間TA1において、変位角が、第1角度D1から第2角度D2まで変化する。より詳しくは、第1角度D1まで捩られ第1電流値A1で保持されていた揺動部12Aは、電流がゼロになることで、捩りが解放されニュートラルの位置に戻り、さらに慣性力が働き、反対側の第2角度D2まで捩られることで、第2角度D2に到達する。
【0080】
第2期間TB1の開始タイミングにおいて、駆動信号は、電流値がゼロから第2電流値A2に切り替わり、第2期間TB1の終了タイミングまで、電流値が第2電流値A2に保持される。これにより、揺動部12Aは、第2期間TB1において、変位角が、第2角度D2に保持される。すなわち、第2角度D2まで捩られた揺動部12Aは、ニュートラルに位置に戻ろうとする力と第2電流値A2による力が釣りあい、第2角度D2に保持される。
【0081】
第3期間TA2の開始タイミングにおいて、駆動信号は、電流値が第2電流値A2からゼロに切り替わり、第3期間TA2の終了タイミングまで、電流値がゼロに保持される。これにより、揺動部12Aは、第3期間TA2において、変位角が、第2角度D2から第1角度D1まで変化する。
【0082】
第4期間TB2の開始タイミングにおいて、駆動信号は、電流値がゼロから第1電流値A1に切り替わり、第4期間TB2の終了タイミングまで、電流値が第1電流値A1に保持される。これにより、揺動部12Aは、第4期間TB2において、変位角が、第1角度D1に保持される。
【0083】
第2実施形態においては、電流値をゼロに切り替えてゼロに保持する第1期間TA1、TA2の長さが、揺動部12Aの固有振動数に対応する値になっていることで、第2期間TB1、TB2における揺動部12Aの振動を抑制して、揺動部12Aを安定的に揺動させることができる。従って、本実施形態によると、画像の劣化を抑制できる。さらに言えば、第1期間TA1、TA2において電流値をゼロとすることで、例えば第1実施形態のように電流値を徐々に切り替えるよりも、第1期間TA1、TA2の長さを短くして、第2期間TB1、TB2の長さを長くすることができる。これにより、光Lを照射する期間を長くして、画像の劣化をより好適に抑制できる。
【0084】
(効果)
以上説明したように、第2実施形態に係る光路制御装置10は、光Lが入射する揺動部12Aと、揺動部12Aを揺動させるアクチュエータ12Bと、駆動信号をアクチュエータ12Bに印加することで、アクチュエータ12Bに揺動部12Aを揺動させて光路を制御する駆動回路16(駆動部)とを有する。駆動回路16は、電流値をゼロとする第1期間TA1と、第1期間TA1より後であって第1期間TA1と連続し、第2電流値A2で電流値を保持する第2期間TB1とを含む波形の駆動信号を、アクチュエータ12Bに印加する。駆動回路16は、第1期間TA1の長さが、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となるように、駆動信号を印加する。
【0085】
このように、第2実施形態においては、第1期間TA1の長さを、揺動部12Aの固有振動数に対応する値とすることで、第2期間TB1において揺動部12Aが振動してしまうことを抑制して、揺動部12Aを安定的に揺動させることができる。また、揺動部12Aの固有振動数に対応する長さの第1期間TA1で電流値をゼロとし、その後の第2期間TB1において第2電流値A2に切り替えて保持する波形とすることで、波形の設定が複雑にならずに、揺動部12Aを安定的に揺動可能な波形を容易に設定できる。
【0086】
また、駆動回路16は、第1期間TA1の長さが、揺動部12Aの固有周期(固有振動数の逆数)の半分の値と略同じ値になるように、駆動信号を印加する。第1期間TA1の長さを揺動部12Aの固有振動数の逆数とすることで、揺動部12Aをより安定的に揺動させることができる。
【0087】
また、駆動回路16は、第1期間TA1より前であって第1期間TA1と連続する第4期間TB2(第3期間)において、第2電流値A2と正負が逆となる第1電流値A1で電流値が保持されるように、駆動信号を印加する。このように、第1期間TA1の前後で、正負が逆となる電流値を印加することで、揺動部12Aを、安定して適切に揺動させることができる。
【0088】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、駆動信号の波形が、第1実施形態とは異なる。第3実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0089】
第3実施形態に係る制御回路14も、第2実施形態と同様に、デジタル回路14Aを含み、第1実施形態のようなDA変換器(変換器14B)を有さなくてよい。すなわち、第3実施形態においては、デジタル回路14Aが生成したデジタルの駆動信号が駆動回路16に入力されて、駆動回路16は、不図示のスイッチング回路で駆動信号の電流の正負を切り替えて、すなわち方向が逆で電流値が同じとなるように電流を切り替えて、アクチュエータ12Bに出力する。このように、第3実施形態においては、デジタルの駆動信号が駆動回路16に入力されるが、それに限られず、第1実施形態と同様に変換器14Bでアナログ変換された駆動信号が入力されてもよい。
【0090】
(駆動波形)
図10は、第3実施形態に係る駆動信号の波形を説明するグラフである。
図10に示すように、第3実施形態においては、第1期間TA1においては、電流値を第2電流値A2に保持した後、電流値を第1電流値A1に保持する。すなわち、第1期間TA1のうちの期間TA1aにおいては、電流値が第2電流値A2に保持され、第1期間TA1のうちの期間TA1bにおいては、電流値が第1電流値A1に保持される。期間TA1bは、期間TA1aより後であって期間TA1aに連続する期間である。すなわち、期間TA1bの開始タイミング(期間TA1aから期間TA1bへ切り替わるタイミング)において、電流値が、第2電流値A2から第1電流値A1に切り替わり、期間TA1bの終了タイミングまで、電流値が第1電流値A1で保持される。
【0091】
第1期間TA1の長さは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。第1期間TA1の長さは、揺動部12Aの固有周期(固有振動数の逆数)の三分の一の値と略同じ値であることが好ましく、固有周期の三分の一の値と同じ値であることがより好ましい。なお、固有周期(固有振動数の逆数)の三分の一の値とは、固有振動数をf[Hz]とした場合、「1/(3・f)」[s]として表される。
【0092】
さらに言えば、第1期間TA1のうちの、期間TA1aの長さと、期間TA1bの長さとは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。期間TA1aの長さと、期間TA1bの長さとは、同じであることが好ましい。より詳しくは、期間TA1aの長さと、期間TA1bの長さとは、揺動部12Aの固有周期(固有振動数の逆数)の六分の一の値と略同じ値であることが好ましく、固有周期の六分の一の値と同じ値であることがより好ましい。なお、固有振動数の逆数の六分の一の値とは、固有振動数をf[Hz]とした場合、「1/(6・f)」[s]として表される。
【0093】
駆動信号は、第2期間TB1においては、電流値が、第2電流値A2で保持される。第2期間TB1は、第1期間TA1(期間TA1b)より後であって第1期間TA1(期間TA1b)に連続する期間である。すなわち、第2期間TB1の開始タイミング(期間TA1bから第2期間TB1へ切り替わるタイミング)において、電流値が、第1電流値A1から第2電流値A2に切り替わり、第2期間TB1の終了タイミングまで、電流値が第2電流値A2で保持される。
【0094】
このように、第3実施形態では、期間T1における駆動信号は、期間TA1aにおいて電流値が第2電流値A2に保持され、期間TA1bにおいて電流値が第1電流値A1に切り替わって保持され、第2期間TB1において電流値が第2電流値A2に切り替わって保持される。
【0095】
第3実施形態では、第3期間TA2においては、電流値を第1電流値A1に保持した後、電流値を第2電流値A2に保持する。すなわち、第3期間TA2のうちの期間TA2aの開始タイミング(第2期間TB1から期間TA2aへ切り替わるタイミング)で、電流値が第2電流値A2から第1電流値A1に切り替わり、期間TA2aの終了タイミングまで、第1電流値A1に保持される。期間TA2bは、期間TA2aより後であって期間TA2aに連続する期間である。すなわち、期間TA2bの開始タイミング(期間TA2aから期間TA2bへ切り替わるタイミング)において、電流値が、第1電流値A1から第2電流値A2に切り替わり、期間TA2bの終了タイミングまで、電流値が第2電流値A2で保持される。
【0096】
第3期間TA2の長さは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。第3期間TA2の長さは、揺動部12Aの固有周期(固有振動数の逆数)の三分の一の値と略同じ値であることが好ましく、固有周期の三分の一の値と同じ値であることがより好ましい。本実施形態では、第3期間TA2の長さは、第1期間TA1の長さと等しい。
【0097】
さらに言えば、第3期間TA2のうちの、期間TA2aの長さと、期間TA2bの長さとは、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となっている。期間TA2aの長さと、期間TA2bの長さとは、同じであることが好ましい。より詳しくは、期間TA2aの長さと、期間TA2bの長さとは、揺動部12Aの固有振動数の逆数の六分の一の値と略同じ値であることが好ましく、固有周期の六分の一の値と同じ値であることがより好ましい。本実施形態では、期間TA2aの長さは、期間TA1aの長さと等しく、期間TA2bの長さは、期間TA1bの長さと等しい。
【0098】
駆動信号は、第4期間TB2においては、電流値が、第1電流値A1で保持される。第4期間TB2は、第3期間TA2(期間TA2b)より後であって第3期間TA2(期間TA2b)に連続する期間である。すなわち、第4期間TB2の開始タイミング(期間TA2bから第4期間TB2へ切り替わるタイミング)において、電流値が、第2電流値A2から第1電流値A1に切り替わり、第4期間TB2の終了タイミングまで、電流値が第1電流値A1で保持される。
【0099】
このように、第3実施形態では、期間T2における駆動信号は、期間TA2aにおいて電流値が第1電流値A1に保持され、期間TA2bにおいて電流値が第2電流値A2に切り替わって保持され、第4期間TB2において電流値が第1電流値A1に切り替わって保持される。
【0100】
なお、第4期間TB2に後続する期間TA1aにおいては、上述のように電流値が第2電流値A2に保持される。すなわち、期間TA1aの開始タイミング(第4期間TB2から期間TA1aへ切り替わるタイミング)において、電流値が、第1電流値A1から第2電流値A2に切り替わり、期間TA1aの終了タイミングまで、電流値が第2電流値A2で保持される。
【0101】
図10の破線は、光Lが照射される期間を示している。照射装置100は、第1期間TA1において光Lを照射せず、第2期間TB1において光Lを照射することが好ましい。また、照射装置100は、第3期間TA2において光Lを照射せず、第4期間TB2において光Lを照射することが好ましい。
【0102】
(揺動パターン)
次に、駆動信号の印加による揺動部12Aの揺動パターンについて説明する。
図11は、第3実施形態に係る光学部の揺動パターンを説明するグラフである。
【0103】
駆動信号は、期間TA1aの開始タイミングにおいて、電流値が第1電流値A1から第2電流値A2に切り替わり、期間TA1aの終了タイミングまで電流値が第2電流値A2に保持され、期間TA1bの開始タイミングにおいて、電流値が第2電流値A2から第1電流値A1に切り替わり、期間TA1bの終了タイミングまで電流値が第1電流値A1に保持される。これにより、揺動部12Aは、第1期間TA1(期間TA1a、TA1b)において、変位角が、第1角度D1から第2角度D2まで変化する。より詳しくは、第1角度D1で捩り戻ろうとする力に対して、第2電流値A2で戻ろうとする方向に更に力を加えて、揺動部12Aを、第2角度D2方向に加速する。そのままだと慣性により第2角度D2より更に捩られてしまうため、本実施形態ではその後に第1電流値A1を流すことでブレーキを掛ける。このため、第2実施形態よりも更に高速に揺動させることができる。
【0104】
第2期間TB1の開始タイミングにおいて、駆動信号は、電流値が第1電流値A1から第2電流値A2に切り替わり、第2期間TB1の終了タイミングまで、電流値が第2電流値A2に保持される。これにより、揺動部12Aは、第2期間TB1において、変位角が、第2角度D2に保持される。
【0105】
駆動信号は、期間TA2aの開始タイミングにおいて、電流値が第2電流値A2から第1電流値A1に切り替わり、期間TA2aの終了タイミングまで電流値が第1電流値A1に保持され、期間TA2bの開始タイミングにおいて、電流値が第1電流値A1から第2電流値A2に切り替わり、期間TA2bの終了タイミングまで電流値が第2電流値A2に保持される。これにより、揺動部12Aは、第3期間TA2(期間TA2a、TA2b)において、変位角が、第2角度D2から第1角度D1まで変化する。
【0106】
第4期間TB2の開始タイミングにおいて、駆動信号は、電流値が第2電流値A2から第1電流値A1に切り替わり、第4期間TB2の終了タイミングまで、電流値が第1電流値A1に保持される。これにより、揺動部12Aは、第4期間TB2において、変位角が、第1角度D1に保持される。
【0107】
第3実施形態においては、電流値の正負を切り替える第1期間TA1、TA2の長さが、揺動部12Aの固有振動数に対応する値になっていることで、第2期間TB1、TB2における揺動部12Aの振動を抑制して、揺動部12Aを安定的に揺動させることができる。従って、本実施形態によると、画像の劣化を抑制できる。さらに言えば、第1期間TA1、TA2において電流値の正負を切り替えることで、例えば第1実施形態や第2実施形態よりも、第1期間TA1、TA2の長さを短くして、第2期間TB1、TB2の長さを長くすることができる。これにより、光Lを照射する期間を長くして、画像の劣化をより好適に抑制できる。
【0108】
(効果)
以上説明したように、第3実施形態に係る光路制御装置10は、光Lが入射する揺動部12Aと、揺動部12Aを揺動させるアクチュエータ12Bと、駆動信号をアクチュエータ12Bに印加することで、アクチュエータ12Bに揺動部12Aを揺動させて光路を制御する駆動回路16(駆動部)とを有する。駆動回路16は、電流値を第2電流値A2に保持した後、電流値を第2電流値A2とは正負が逆の第1電流値A1に保持する第1期間TA1と、第1期間TA1と連続し、電流値を第2電流値A2に保持する第2期間TB1と、を含む波形の駆動信号を、アクチュエータ12Bに印加する。駆動回路16は、第1期間TA1の長さが、揺動部12Aの固有振動数に対応する値となるように、駆動信号を印加する。
【0109】
このように、第3実施形態においては、第1期間TA1の長さを、揺動部12Aの固有振動数に対応する値とすることで、第2期間TB1において揺動部12Aが振動してしまうことを抑制して、揺動部12Aを安定的に揺動させることができる。また、揺動部12Aの固有振動数に対応する長さの第1期間TA1で電流値の正負を切り替えて、その後の第2期間TB1において第2電流値A2に切り替えて保持する波形とすることで、波形の設定が複雑にならずに、揺動部12Aを安定的に揺動可能な波形を容易に設定できる。
【0110】
また、駆動回路16は、第1期間TA1で第2電流値A2に保持する期間TA1aの長さと、第1期間TA1で第1電流値A1に保持する期間TA1bの長さとが同じとなるように、駆動信号を印加する。期間TA1a、TA1bの長さを等しくすることで、揺動部12Aをより安定的に揺動させることができる。
【0111】
また、駆動回路16は、第1期間TA1で第2電流値A2に保持する期間TA1aの長さと、第1期間TA1で第1電流値A1に保持する期間TA1bの長さとが、揺動部12Aの固有振動数の逆数の六分の一の値と略同じ値になるように、駆動信号を印加する。第1期間TA1の長さをこの範囲とすることで、揺動部12Aをより安定的に揺動させることができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、各実施形態の構成を組み合わせることも可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0113】
1 表示装置
10 光路制御装置
12 光路制御機構
12A 光学部
12B アクチュエータ
16 駆動回路(駆動部)
100 照射装置
A1 第1電流値
A2 第2電流値
D1 第1角度
D2 第2角度
L 光
TA1、TA2 第1期間
TB1、TB2 第2期間