(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20241119BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20241119BHJP
B60T 13/66 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T7/02 D
B60T13/66 Z
(21)【出願番号】P 2021107132
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】舘野 允人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】遊磨 隆史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙祐
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-217214(JP,A)
【文献】特開2010-149797(JP,A)
【文献】特開2008-137433(JP,A)
【文献】特開2015-203367(JP,A)
【文献】特開平05-319250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0071723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 7/02
B60T 13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキの操作量に応じて昇圧させられるマスタシリンダのマスタシリンダ圧に基づいて前記ブレーキの操作判定を行い、前記マスタシリンダ圧の検出手段に異常が生じた場合、
ブレーキペダルが踏み込まれている間にストップランプスイッチ
から出力される出力信号に基づいて前記ブレーキの操作判定を行う車両の制動制御装置であって、
前記マスタシリンダ圧の検出手段によって検出される前記マスタシリンダ圧が所定値以下の状態下において、前記ストップランプスイッチの出力信号に
非出力状態から出力状態へおよび出力状態から非出力状態への二回の変化が生じた場合に、前記ストップランプスイッチの信頼性を判断する信頼性判定フラグを立ち上げ、前記信頼性判定フラグが立ち上がっている期間に前記ストップランプスイッチの出力信号が
非出力状態から出力状態へ変化した場合、前記ブレーキの操作が行われたと判定する
ことを特徴とする車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられるブレーキの操作判定に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、踏力センサの出力電圧に基づいてブレーキ操作に関する制御を行うものにおいて、踏力センサに異常が生じたときには、ブレーキスイッチの信号に基づいてブレーキ操作に関する制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の踏力センサに代わって、マスタシリンダのマスタシリンダ圧を検出するセンサを設け、そのセンサによって検出されるマスタシリンダ圧に基づいてブレーキ操作に関する制御を行うことが考えられる。このような場合において、例えばブレーキの機械的な故障によってマスタシリンダ圧が上昇しない場合、センサが正常であってもマスタシリンダ圧が低くなるため、ブレーキ操作が行われたかを判定することができない。これに対して、ブレーキスイッチの信号に基づいてブレーキ操作が行われたかを判定することが考えられるが、ブレーキスイッチの信号に基づいてブレーキ操作が行われたかを判定するに当たり、例えばブレーキスイッチがON側(作動側)に固着する故障が発生した場合には、ブレーキ操作が行われていないにも拘わらずブレーキ操作が行われていたと誤判定されてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、運転者によるブレーキ操作が行われたか否かを精度良く判定することができる制動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)ブレーキの操作量に応じて昇圧させられるマスタシリンダのマスタシリンダ圧に基づいてブレーキの操作判定を行い、前記マスタシリンダ圧の検出手段に異常が生じた場合、ブレーキペダルが踏み込まれている間にストップランプスイッチから出力される出力信号に基づいて前記ブレーキの操作判定を行う車両の制動制御装置であって、(b)前記マスタシリンダ圧の検出手段によって検出される前記マスタシリンダ圧が所定値以下の状態下において、前記ストップランプスイッチの出力信号に非出力状態から出力状態へおよび出力状態から非出力状態への二回の変化が生じた場合に、前記ストップランプスイッチの信頼性を判断する信頼性判定フラグを立ち上げ、前記信頼性判定フラグが立ち上がっている期間に前記ストップランプスイッチの出力信号が非出力状態から出力状態へ変化した場合、前記ブレーキの操作が行われたと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、例えばブレーキの機械的な故障などに起因して、ブレーキが操作されてもマスタシリンダ圧が所定値以下となる状態下では、ストップランプスイッチの出力信号に非出力状態から出力状態へおよび出力状態から非出力状態への二回の変化が生じた場合に信頼性判定フラグを立ち上げ、その信頼性判定フラグが立ち上がっている期間にストップランプスイッチの出力信号が非出力状態から出力状態へ変化した場合、ブレーキの操作が行われていたと判定するため、ストップランプスイッチが正常と判断される状態で、ストップランプスイッチの出力信号に基づいてブレーキの操作が行われたかが判定され、ストップランプスイッチの固着などに起因する誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明が適用された車両に備えられるブレーキおよびブレーキ等を制御する制動制御装置の概略構成を示す図である。
【
図2】電子制御装置の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであり、ストップランプスイッチが正常であるかを判定する制御作動を説明するフローチャートである。
【
図3】電子制御装置の制御作動の要部を説明するための他のフローチャートであり、ブレーキ操作が行われたか否かを判定する制御作動を説明するフローチャートである。
【
図4】電子制御装置の制御機能の要部を説明するためのさらに他のフローチャートであり、信頼性判定フラグを「OFF」に切り替えるか否かを判定する制御作動を説明するフローチャートである。
【
図5】電子制御装置による制御状態を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、好適には、前記信頼性判定フラグを立ち上げるに当たって、制動制御装置は、さらに前記ストップランプスイッチの出力信号に変化が生じた時点より所定時間経過したかを判定する。このようにすれば、所定時間を適切に調整することで、運転者の誤操作など運転者の意図しないブレーキ操作を排除して、ブレーキ操作が行われたかを精度良く判定することができる。
【0010】
また、好適には、ブレーキ操作が行われたかを判定するに当たって、前記信頼性判定フラグが立ち上がっている期間において、制動制御装置は、前記ストップランプスイッチの出力信号に変化が生じた時点より第2の所定時間経過したかを判定する。このようにすれば、第2の所定時間を適切に調整することで、ブレーキが正常な場合と同じタイミングでブレーキの操作が行われたことを判定することができる。
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明が適用された車両に備えられるブレーキ10およびブレーキ10等を制御する電子制御装置12の概略構成を示す図である。ブレーキ10は、運転者によって操作されるブレーキペダル14、運転者によるブレーキペダル14の踏込量(操作量)応じて昇圧させられるマスタシリンダ圧Pm/cを発生させるマスタシリンダ16、各車輪のブレーキ力を調整するアクチュエータ18、および各車輪に設けられアクチュエータ18から供給された油圧によって作動する油圧ブレーキ20a~20cを、含んで構成される。なお、ブレーキ10は公知の技術であるため、具体的な構造や作動の説明については省略する。
【0013】
電子制御装置12は、ブレーキECU22およびSFT-ECU24を含んで構成されている。ブレーキECU22およびSFT-ECU24は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、ブレーキ10の制動制御をはじめとする車両の各種制御を実行するように構成されている。なお、電子制御装置12が、本発明の車両の制動制御装置に対応している。
【0014】
ブレーキECU22は、車両に備えられるブレーキ10(制動装置)を制御する機能を専ら有し、運転者によるブレーキペダル14の踏込操作や車両の走行状態に基づいてブレーキ10の作動状態を制御する。ブレーキECU22には、例えばブレーキ10を構成するマスタシリンダ16のマスタシリンダ圧Pm/c(以下、M/C圧Pm/c)を検出するM/C圧センサ28からのM/C圧Pm/cを表す油圧信号などが入力される。ブレーキECU22からは、ブレーキ10を制御する図示しない各種ソレノイドバルブへの指令信号Sbrkが出力される。また、ブレーキECU22を経由して、M/C圧センサ28によって検出されたM/C圧Pm/cがSFT-ECU24に送信される。また、M/C圧センサ28の異常が検出されると、そのM/C圧センサ28の異常を表す情報(M/C圧センサ異常情報)がブレーキECU22からSFT-ECU24に送信される。M/C圧センサ28の異常は、例えばM/C圧センサ28が有するセルフチェック機能によって判断されたり、M/C圧センサ28によって検出されるM/C圧Pm/cに基づいてブレーキECU22によって判断されたりする。なお、M/C圧センサ28が、本発明のマスタシリンダ圧の検出手段に対応している。
【0015】
SFT-ECU24は、車両に備えられる変速機30のシフトレンジを制御する機能を専ら有し、例えば運転者によるシフト操作に基づいて変速機30のシフトレンジを切り替えるアクチュエータ等に指令信号を出力する。SFT-ECU24には、例えばストップランプスイッチ32(ブレーキランプスイッチともいう)から出力される、ストップランプの作動状態を切り替えるための出力信号Sstpなどが入力される。SFT-ECU24からは、例えば変速機30をパーキングロック状態に切り替えるSBW-ACT34へのパーキングロック切替信号Sparkなどが出力される。
【0016】
例えば車両が停止状態と判定され、且つ、ブレーキペダル14が踏み込まれていると判定される場合において、運転者によってシフトレバーがパーキングポジション(Pポジション)に操作されると、SFT-ECU24は、SBW-ACT34を作動させてシフトレンジをパーキングレンジに切り替える。さらに、SFT-ECU24は、例えば車両が停止状態と判定され、且つ、ブレーキペダル14が踏み込まれていると判定された場合において、運転者によってシフトレバーがPポジションから他のシフトポジション(Dポジションなど)に切り替えられると、SFT-ECU24は、SBW-ACT34を作動させてシフトレンジをパーキングレンジ以外のレンジ(Dレンジなど)に切り替える。
【0017】
SFT-ECU24は、シフトレンジの制御を行うに当たって、ブレーキペダル14が運転者によって踏み込まれているか否か、すなわちブレーキ操作が行われているか否かを判定するブレーキ操作判定手段としてのブレーキ操作判定部50を機能的に備えている。
【0018】
ブレーキ操作判定部50は、M/C圧センサ28によって検出されるM/C圧Pm/cが予め規定されている所定値αよりも高いか否かに基づいてブレーキ操作が行われたか否かの操作判定を行う。具体的には、ブレーキ操作判定部50は、M/C圧Pm/cが所定値αよりも高圧になると、ブレーキ操作が行われているものと判定する。所定値αは、予め実験的または設計的に求められ、運転者によってブレーキ操作が行われたと判断できる閾値に設定されている。
【0019】
ここで、M/C圧センサ28に異常が発生すると、M/C圧Pm/cに基づいてブレーキ操作が行われたかを判定することが困難になる。このような場合には、ブレーキ操作判定部50は、ストップランプスイッチ32(以下、ストップランプSW32)から出力される、ストップランプの作動状態を切り替えるための出力信号Sstpに基づいてブレーキ操作が行われたか否かの操作判定を行う。ストップランプSW32は、例えばブレーキペダル14の近傍に設けられ、ブレーキペダル14が運転者によって踏み込まれている間、出力信号Sstpを出力するように構成されている。また、ストップランプSW32は、ブレーキペダル14が僅かに踏まれた場合であっても出力信号Sstpが出力されるように構成されている。従って、ストップランプSW32の出力信号Sstpに基づいてブレーキ操作が行われたかを判定することができる。ブレーキ操作判定部50は、ブレーキECU22からM/C圧センサ28の異常を表す情報(M/C圧センサ異常情報)が送信された場合には、ストップランプSW32の出力信号Sstpが出力されているか否かを判定し、ストップランプSW32から出力信号Sstpが出力されている間においてブレーキ操作が行われているものと判定する。
【0020】
ところで、M/C圧センサ28が正常であっても、マスタシリンダ16に機械的な故障が生じたり、運転者のブレーキペダル14の踏込が浅かったりしてM/C圧Pm/cが低圧の場合には、M/C圧センサ28によって検出されるM/C圧Pm/cが所定値α以下となり、ブレーキ操作が行われたかの判定が困難となる。このような場合においても、ストップランプSW32によってブレーキ操作が行われたかを判定することが考えられる。しかしながら、例えばストップランプSW32が固着してストップランプSW32から出力信号Sstpが常時出力されるオン故障が発生した場合には、ブレーキ操作が行われなくても運転者がブレーキ操作を行っていると誤判定される可能性がある。このとき、運転者がブレーキ操作を行わない状態で、運転者によってシフトレバーがPポジションから他のシフトポジションに操作された場合、ブレーキ操作が誤判定されてしまい、意図せずシフトレンジがパーキングレンジ以外のレンジに切り替わる虞がある。
【0021】
これに対して、ブレーキ操作判定部50は、M/C圧センサ28によって検出されるM/C圧Pm/cが所定値α以下の状態下において、ストップランプSW32の出力信号Sstpに変化が生じた場合に、ストップランプSW32の信頼性を判断する信頼性判定フラグFtrustを立ち上げ(Ftrust:「ON」)、信頼性判定フラグFtrustが立ち上がっている期間にストップランプSW32の出力信号Sstpが変化した場合、ブレーキ操作が行われていたと判定する。このように、M/C圧Pm/cが所定値α以下の状態下において、ストップランプSW32の出力信号Sstpの変化を検出することでストップランプSW32が正常であることを判定し、ストップランプSW32が正常であると判定された状態でストップランプSW32の出力信号Sstpに基づいてブレーキ操作が行われたかを判定するため、ストップランプSW32の故障によるブレーキ操作の誤判定を防止することができる。以下、例えばマスタシリンダ16が故障した場合や運転者のブレーキペダル14の踏み込みが浅い場合など、M/C圧センサ28によって検出されるM/C圧Pm/cが低圧(所定値α以下)の状態下である場合の制御について説明する。
【0022】
ブレーキ操作判定部50は、以下に示す条件(a)~条件(d)が全て成立したか否かに基づいてストップランプSW32が正常であることを判断する信頼性判定フラグFtrustを立ち上げるか否か、すなわち信頼性判定フラグFtrustを「ON」にするか否かを判定する。なお、信頼性判定フラグFtrustが「ON」になることは、ストップランプSW32が正常であることを示している。条件(a)は、M/C圧センサ28によって検出されるM/C圧Pm/cが所定値α以下であること、条件(b)は、ストップランプSW32の出力信号Sstpが出力されたこと、すなわち出力信号Sstpが「OFF(非出力状態)」から「ON(出力状態)」に切り替わったこと、条件(c)は、出力状態にあるストップランプSW32の出力信号Sstpが出力されなくなったこと、すなわち出力信号Sstpが「ON」から「OFF」に切り替わったこと、条件(d)は、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わった時点、すなわちストップランプSW32の出力信号Sstpが最初に変化した時点より所定時間ta経過したことである。
【0023】
条件(a)は、M/C圧センサ28が正常であっても、ブレーキ10の機械的な故障でM/C圧Pm/cが上昇しなかったり、ブレーキペダル14の踏み込みが浅い状態であったりすることを確認するものである。条件(b)および条件(c)は、ストップランプSW32の出力信号Sstpに変化が生じたかを確認するものである。具体的には、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わり、さらに出力信号Sstpが「ON」から「OFF」に切り替わったことを確認するものである。すなわち、ストップランプSW32の出力信号Sstpの「OFF」から「ON」、および、出力信号Sstpの「ON」から「OFF」への二回の変化を確認する。これらの条件(b)および条件(c)が成立することで、ストップランプSW32の固着がなく、ストップランプSW32が正常に作動することを確認できる。条件(d)は、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わった時点より所定時間ta経過したかに基づいて、運転者にブレーキ操作の意図があるかを確認するための条件である。ブレーキ操作判定部50は、これら条件(a)~条件(d)が全て成立した場合、ストップランプSW32が正常であると判定し、信頼性判定フラグFtrustを「OFF」から「ON」に立ち上げる。
【0024】
また、ブレーキ操作判定部50は、以下に示す条件(e)~条件(g)が全て成立したか否かに基づいてブレーキ操作が行われたか否かを判定する。条件(e)は、信頼性判定フラグFtrustが「ON」であること、条件(f)は、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わったこと、条件(g)は、ストップランプSW32が「OFF」から「ON」に切り替わった時点より所定時間tb経過したこと、すなわち信頼性判定フラグFtrustが「ON」の期間においてストップランプSW32の出力信号Sstpが最初に変化した時点より所定時間tb経過したことである。
【0025】
条件(e)は、ストップランプSW32が正常である、すなわちストップランプSW32の信頼性が高いことを担保するものである。条件(f)は、ストップランプSW32が正常である状態下でブレーキ操作が行われたことを確認するものである。条件(g)は、条件(f)が成立した時点より所定時間tb経過したことを確認することで、ブレーキ10が正常であるときと同様のタイミングでブレーキ操作を判定するための条件である。すなわち、条件(g)は、ブレーキ10が正常であるときと同様のブレーキ操作感を運転者に与えるための条件である。所定時間tbは、例えば、ブレーキ10が正常な場合において、ブレーキペダル14が踏み込まれた時点からM/C圧Pm/cが所定値α以上となる時間に設定されている。
【0026】
ブレーキ操作判定部50は、これら条件(e)~条件(g)が全て成立した場合、ブレーキ操作が行われたものと判定し、ブレーキ操作が行われていることを表すブレーキ判定フラグFbrkを「ON」にする。ブレーキ判定フラグFbrkは、条件(e)~条件(f)が全て成立し、ブレーキ操作が行われていると判定された場合に「ON」とされ、条件(e)~条件(f)の何れかが成立しない場合に「OFF」とされる。これより、信頼性判定フラグFtrustが「ON」の状態で、ストップランプSW32の出力信号Sstpの変化からブレーキ操作が行われたかが判定されるため、ストップランプSW32が正常な状態でストップランプSW32の出力信号Sstpに基づいてブレーキ操作が判定されることとなる。
【0027】
また、ブレーキ操作判定部50は、以下に示す条件(h)および条件(i)が全て成立したか否かに基づいて、信頼性判定フラグFtrustを「ON」から「OFF」に切り替えるか否かを判定する。条件(h)は、信頼性判定フラグFtrustが「ON」の状態であること、条件(i)は、ブレーキ判定フラグFbrkが「ON」から「OFF」に切り替わったことである。ブレーキ操作判定部50は、条件(h)および条件(i)が全て成立すると、信頼性判定フラグFtrustを「OFF」にする。
【0028】
図2は、電子制御装置12の制御作動の要部を説明するためのフローチャートであり、ストップランプSW32が正常であるかを判定する制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両走行中において繰り返し実行される。
【0029】
先ず、ブレーキ操作判定部50の制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略)S10において、条件(a)~条件(d)が全て成立するか否かが判定される。具体的には、M/C圧センサ28によって検出されるM/C圧Pm/cが所定値α以下であり(条件(a))、且つ、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わり(条件(b))、且つ、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「ON」に切り替わった状態から「OFF」に切り替わり(条件(c))、且つ、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」に切り替わった時点より所定時間ta経過した(条件(d))か否かが判定される。S10の判定が否定される場合、本ルーチンが終了させられる。一方、S10の判定が肯定される場合、ブレーキ操作判定部50の制御機能に対応するS11において、ストップランプSW32の信頼性判定フラグFtrustが「OFF」から「ON」に切り替えられる。
【0030】
図3は、電子制御装置12の制御作動の要部を説明するための他のフローチャートであり、ブレーキ操作が行われたか否かを判定する制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両走行中において繰り返し実行される。
【0031】
先ず、ブレーキ操作判定部50の制御機能に対応するS20において、条件(e)~条件(g)が全て成立するか否かが判定される。具体的には、ストップランプSW32の信頼性判定フラグFtrustが「ON」の状態であり(条件(e))、且つ、ストップランプSW32が「OFF」から「ON」に切り替わり(条件(f))、且つ、ストップランプSW32が「OFF」から「ON」に切り替わった時点より所定時間tb経過した(条件(g))か否かが判定される。S20の判定が否定される場合、ブレーキ操作判定部50の制御機能に対応するS22において、ブレーキ判定フラグFbrkが「OFF」とされる。すなわち、ブレーキ操作が行われていないものと判定される。一方、S20の判定が肯定される場合、ブレーキ操作判定部50の制御機能に対応するS21において、ブレーキ判定フラグFbrkが「ON」とされる。すなわち、ブレーキ操作が行われているものと判定される。
【0032】
図4は、電子制御装置12の制御機能の要部を説明するためのさらに他のフローチャートであり、ストップランプSW32の信頼性判定フラグFtrustを「OFF」に切り替えるか否かを判定する制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両走行中において繰り返し実行される。
【0033】
先ず、ブレーキ操作判定部50の制御機能に対応するS30において、条件(h)および条件(i)が全て成立するか否かが判定される。具体的には、ストップランプSW32の信頼性判定フラグFtrustが「ON」の状態であり(条件(h))、且つ、ブレーキ判定フラグFbrkが「ON」から「OFF」に切り替わった(条件i)か否かが判定される。S30の判定が否定される場合、本ルーチンが終了させられる。一方、S30の判定が肯定される場合、ブレーキ操作判定部50の制御機能に対応するS31において、ストップランプSW32の信頼性判定フラグFtrustが「ON」から「OFF」に切り替えられる。
【0034】
図5は、電子制御装置12による制御状態を説明するタイムチャートである。
図5において、横軸は時間tを示し、縦軸は上から順番に、ストップランプSW32の出力信号Sstp、マスタシリンダ16のM/C圧Pm/c、ブレーキ判定フラグFbrk、ストップランプSW32の信頼性判定フラグFtrust、をそれぞれ示している。
図5において左側に位置するタイムチャートは、ブレーキ10に故障が発生していない正常時でのブレーキ操作の判定を示している。また、
図5において右側に位置するタイムチャートは、ブレーキ10に機械的な故障が発生したり、ブレーキペダル14の踏込が浅かったりすることで、M/C圧Pm/cが所定値α以下の場合に対応している。
【0035】
先ず、
図5の左側のタイムチャートについて説明する。正常な状態では、t1時点においてブレーキペダル14が踏み込まれることで、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わる。また、t1時点から所定時間経過したt2時点において、M/C圧Pm/cが所定値α以上になったことを条件にして、ブレーキ操作が行われたことを表すブレーキ判定フラグFbrkが「OFF」から「ON」に切り替わる。また、t3時点においてブレーキペダルの踏み込みが解除されると、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「ON」から「OFF」に切り替わり、M/C圧Pm/cについても低下する。これに伴って、ブレーキ判定フラグFbrkが「ON」から「OFF」に切り替わる。
【0036】
次に、
図5の右側のタイムチャートについて説明する。t11時点においてブレーキペダル14が踏まれることで、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わる。このとき、ブレーキ10のマスタシリンダ16等の故障またはブレーキペダル14の踏込が浅いことでM/C圧Pm/cが上昇せず、M/C圧Pm/cがブレーキ判定フラグFbrkを「ON」に切り替える判定値である所定値αに到達しない。なお、
図5の破線で示すM/C圧Pm/cは、ブレーキ10が正常またはブレーキペダル14が十分に踏み込まれた場合のM/C圧Pm/cに対応している。ブレーキ10が正常またはブレーキペダル14が十分に踏み込まれた場合には、破線で示すようにt12時点においてM/C圧Pm/cが所定値αを超える。しかしながら、実線で示すようにM/C圧Pm/cが上昇しないためにブレーキ判定フラグFbrkが「OFF」から「ON」に切り替わらない。t13時点では、ブレーキペダル14の踏込が解除されることで、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「ON」から「OFF」に切り替わる。このとき、M/C圧Pm/cが所定値α以下であり、ストップランプSW32の出力信号Sstpがt11時点で「OFF」から「ON」に切り替わるとともに、t13時点で「ON」から「OFF」に切り替わり、さらにt11時点からの経過時間tが所定時間taを経過したことで、t13時点において信頼性判定フラグFtrustが「OFF」から「ON」に切り替わる。
【0037】
t14時点においてブレーキペダル14が踏まれることで、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わっている。t15時点では、信頼性判定フラグFtrustが「ON」の状態であり、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「OFF」から「ON」に切り替わり、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「ON」に切り替わったt14時点からの経過時間tが所定時間tbに到達したことで、ブレーキ判定フラグFbrkが「OFF」から「ON」に切り替わることとなる。また、所定時間tbは、ブレーキ10が正常な場合において、ブレーキペダル14が踏み込まれた時点からM/C圧Pm/cが所定値α以上となる時間に設定されている。これより、ブレーキ10が正常な場合と同じタイミングでブレーキ判定フラグFbrkが「ON」に切り替わることとなり、ブレーキ10が正常な場合と同様のブレーキ操作感を運転者に与えることができる。
【0038】
t16時点においてブレーキペダル14の踏込が解除されることで、ストップランプSW32の出力信号Sstpが「ON」から「OFF」に切り替わったことで、ブレーキ判定フラグFbrkが「ON」から「OFF」に切り替わっている。このとき、信頼性判定フラグFtrustが「ON」の状態であり、且つ、ブレーキ判定フラグFbrkが「ON」から「OFF」に切り替わったことで、信頼性判定フラグFtrustが「ON」から「OFF」に切り替わる。このように、運転者による二回目のブレーキ操作が完了すると、信頼性判定フラグFtrustが「OFF」に切り替わることとなる。
【0039】
上述のように、本実施例によれば、例えばブレーキ10の故障に起因して、ブレーキ操作されてもM/C圧Pm/cが所定値α以下となる状態下では、ストップランプSW32の出力信号Sstpに変化が生じた場合に信頼性判定フラグFtrustを立ち上げ、その信頼性判定フラグFtrustが立ち上がっている期間にストップランプSW32の出力信号Sstpが変化した場合、ブレーキ操作が行われていたと判定するため、ストップランプSW32が正常な状態で、ストップランプSW32の出力信号Sstpに基づいてブレーキ操作が行われたかが判定され、ストップランプSW32の固着などに起因する誤判定を防止することができる。
【0040】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0041】
例えば、前述の実施例では、ブレーキECU22およびSFT-ECU24が別個に設けられていたが、これらが共通のECUから構成されるものであっても構わない。
【0042】
また、前述の実施例では、ブレーキ10はブレーキペダル14の踏込によって操作されるものであったが、必ずしもブレーキペダル14に限定されず、レバーなどで手動操作されるものであっても構わない。
【0043】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
10:ブレーキ
12:電子制御装置(制動制御装置)
16:マスタシリンダ
28:M/C圧センサ(マスタシリンダ圧の検出手段)
32:ストップランプスイッチ
Pm/c:マスタシリンダ圧
Sstp:出力信号(ストップランプスイッチの出力信号)
Ftrust:信頼性判定フラグ
α:所定値