(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20241119BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B60K20/02 Z
G01B7/00 102M
(21)【出願番号】P 2021125716
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 信二
(72)【発明者】
【氏名】西口 薫
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 繁
(72)【発明者】
【氏名】三ツ井 崇
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/142522(WO,A1)
【文献】特開2019-064312(JP,A)
【文献】特開2011-163782(JP,A)
【文献】特開2019-089540(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017131144(DE,A1)
【文献】国際公開第2010/066215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーと、
前記シフトレバーの第1操作方向への操作に伴って、XY平面に平行な第1仮想平面に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動し、前記シフトレバーの第2操作方向への操作に伴って、前記第1仮想平面とは異なる第2仮想平面に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する磁石と、
前記磁石の位置に応じて変化する空間座標データを出力する磁気センサと、
前記空間座標データに基づいて、前記シフトレバーの操作ポジションを判定する判定回路と、を備え、
前記磁気センサは、Z軸方向での正面視で、X軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された、シフト装置。
【請求項2】
前記磁石が前記第1仮想平面に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する第1範囲は、前記磁石が前記第2仮想平面に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する第2範囲よりも広く、
Z軸方向での正面視で、前記第1仮想平面に沿って位置する前記磁石の中心から前記磁気センサまでの最短距離は、前記第2仮想平面に沿って位置する前記磁石の中心から前記磁気センサまでの最短距離に比べて短い、請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記磁気センサは、前記シフトレバーが所定の操作ポジションにあるとき、Z軸方向での正面視で、前記磁石と少なくとも一部が重なるように配置された、請求項2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記磁石は、前記シフトレバーの第3操作方向への操作に伴って、ZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動し、
前記第1範囲は、前記第3操作方向への操作前に前記磁石が移動する範囲であり、
前記第2範囲は、前記第3操作方向への操作後に前記磁石が移動する範囲である、請求項2又は3に記載のシフト装置。
【請求項5】
前記磁石は、前記シフトレバーの第3操作方向への操作に伴って、ZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシフト装置。
【請求項6】
前記磁気センサから前記第3操作方向の操作前に位置する前記磁石までの距離のZ軸方向成分の長さは、前記磁気センサから前記第3操作方向の操作後に位置する前記磁石までの距離のZ軸方向成分の長さよりも短い、請求項4又は5に記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シフトレバーのシフト方向の揺動に従って移動する磁石と、磁石の移動による磁束の変化を検出する磁気センサとを備え、磁気センサの検出結果に基づいて、シフトレバーのシフト方向における操作ポジションを判定するシフト装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、磁石の位置に応じて変化する空間座標データを出力する磁気センサ(三次元磁気センサ)によって、シフトレバーの操作ポジションを判定するシフト装置の開発が進んでいる。しかしながら、シフトレバーの操作ポジションの判定に三次元磁気センサを使用する場合、操作ポジションの判定精度が低下することがある。
【0005】
本開示は、シフトレバーの操作ポジションの判定精度を向上させたシフト装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、
シフトレバーと、
前記シフトレバーの第1操作方向への操作に伴って、XY平面に平行な第1仮想平面に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動し、前記シフトレバーの第2操作方向への操作に伴って、前記第1仮想平面とは異なる第2仮想平面に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する磁石と、
前記磁石の位置に応じて変化する空間座標データを出力する磁気センサと、
前記空間座標データに基づいて、前記シフトレバーの操作ポジションを判定する判定回路と、を備え、
前記磁気センサは、Z軸方向での正面視で、X軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された、シフト装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、シフトレバーの操作ポジションの判定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るシフト装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係るシフト装置を、ハーネス及び筐体を取り除いて示す斜視図である。
【
図3】一実施形態に係るシフト装置の要部を
図2とは別方向から示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す要部の一部を、回路基板を取り除いて、
図4とは別方向から示す図である。
【
図6】シフトレバーをガイドするガイド溝を示す斜視図である。
【
図7】磁気センサとシフトレバーの位置関係をY軸方向での平面視で模式的に示す図である。
【
図8】シフトレバーのセレクト方向の操作をX軸方向での側面視で模式的に示す図である。
【
図9】三次元の空間座標データを二次元の座標データに変換する方法を説明するための図である。
【
図10】XY平面及びZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動する磁石と、Z軸方向での正面視でX軸方向に沿って配置された磁気センサとの第1配置形態を示す図である。
【
図11】
図10の第1配置形態において、空間座標データの角度変換により得られた二次元座標データの軌跡を示す図である。
【
図12】XY平面及びZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動する磁石と、Z軸方向での正面視でX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された磁気センサとの第2配置形態を示す図である。
【
図13】
図12の第2配置形態において、空間座標データの角度変換により得られた二次元座標データの軌跡を示す図である。
【
図14】XY平面及びZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動する磁石と、Z軸方向での正面視でX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された磁気センサとの第3配置形態を示す図である。
【
図15】
図14の第3配置形態において、空間座標データの角度変換により得られた二次元座標データの軌跡を示す図である。
【
図16】操作ポジションがD側操作ポジションかM側操作ポジションかを判別する方法を説明するための図である。
【
図17】キャリブレーション前後の二次元座標データの軌跡を示す図である。
【
図18】一次元の距離データrに応じて操作ポジションを判定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の作用及び効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、ZY平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。また、磁石が平面に沿って移動するとは、磁石が平面に完全に平行移動することに限られず、磁石が平面に略平行に移動することを含んでよい。
【0010】
図1は、一実施形態に係るシフト装置を示す斜視図である。
図1に示すシフト装置1は、車両に搭載される自動変速機等に使用される操作装置である。シフト装置1は、シフトレバー11の操作ポジションを後述の磁気センサ21によって判定する。シフト装置1によって判定(特定)された操作ポジションに応じて、自動変速機のレンジの切り替えが可能となる。
【0011】
シフト装置1は、シフトレバー11、筐体10及びハーネス12を備える。筐体10は、シフト装置1の内部部品を収容する。ハーネス12は、筐体10の内部回路と筐体10の外部回路との間で電気信号を伝送するための部材である。ハーネス12は、例えば、後述の判定回路25によって判定された操作ポジションの情報を筐体10の外部回路に伝送する。
【0012】
筐体10の外部回路は、例えば、ハーネス12を介して取得した情報が示す操作ポジションに応じて、変速機のレンジを切り替える信号を出力する。筐体10の外部回路は、例えば、ハーネス12を介して取得した情報が示す操作ポジションをインジケータに表示させる。
【0013】
図2は、
図1に示すシフト装置1を、ハーネス12及び筐体10を取り除いて示す斜視図である。シフト装置1は、シフトレバー11、筐体10及びハーネス12の他に、レバーホルダ16、ベース13及び回路基板18を備える。
【0014】
シフトレバー11は、ユーザが操作可能なレバーである。シフトレバー11は、レバーホルダ16内の揺動中心17を支点として揺動可能なように、レバーホルダ16及び筐体10に保持されている。筐体10は、その略中央部分にレバーホルダ16を保持することによりシフトレバー11を揺動可能に保持する。シフトレバー11が揺動可能な方向は、ベース13に設けられたガイド溝14にガイドされた方向に規制されている。具体的には、Y軸方向での平面視において、シフトレバー11の上端部(Y軸方向の正側端部)がZ軸方向に沿って移動するセレクト方向と、シフトレバー11の上端部がX軸方向に沿って移動するシフト方向とに、シフトレバー11の揺動可能な方向は、規制されている。
【0015】
レバーホルダ16は、シフトレバー11の上端部(Y軸方向の正側端部)に対して下方(Y軸方向の負側)に設けられ、揺動中心17を支点としてシフトレバー11を揺動可能に保持する。レバーホルダ16は、シフトレバー11が挿入されることによりシフトレバー11と一体化されている。レバーホルダ16は、その外表面が肉抜きされているが、全体的に略球形状に形成されている。
【0016】
ベース13は、ガイド溝14が設けられた台座である。ガイド溝14は、シフトレバー11を複数の操作ポジションにガイドする。シフトレバー11の下端部15(Y軸方向の負側端部)は、ガイド溝14に挿入されている。
【0017】
回路基板18は、回路基板18の板面がXY平面と平行となるように配置されている。回路基板18は、筐体10に収容される。
【0018】
図3は、
図2に示すシフト装置1の要部を
図2とは別方向から示す斜視図である。シフト装置1は、磁気センサ21及び判定回路25を備える。磁気センサ21及び判定回路25は、回路基板18に実装されている。
【0019】
図4は、
図3に示す要部の一部を拡大した図である。
図5は、
図4に示す要部の一部を、回路基板18を取り除いて、
図4とは別方向から示す図である。
【0020】
磁気センサ21は、シフトレバー11の揺動方向を検出する検出部材として、回路基板18に配置されている。磁気センサ21は、磁石ホルダ20により保持された磁石19(
図5参照)に対向可能な位置に配置されている。磁気センサ21は、磁石19による磁界の強さ(磁束密度でもよい)と磁界の向きをホール素子により検出する。
【0021】
磁気センサ21は、磁石19による磁界ベクトルの変化を検出し、磁石19の位置に応じて変化する空間座標データを出力する三次元磁気センサである。三次元磁気センサを採用することで、三つの移動方向成分の検出に複数個必要となる一次元磁気センサに比べて、センサの使用個数の削減やセンサの配置スペースの縮小ができるので、シフト装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる。磁気センサ21は、磁界の強さのX軸方向成分を表す磁界成分Bx、磁界の強さのY軸方向成分を表す磁界成分By、及び、磁界の強さのZ軸方向成分を表す磁界成分Bzを検出する。磁気センサ21は、検出された磁界成分Bx,By,Bzを、空間座標データ(Bx,By,Bz)として出力する。磁気センサ21が空間座標データ(Bx,By,Bz)を出力する形式は、特に限定されないが、例えば、シリアル通信、パルス幅変調、アナログ電圧などが挙げられる。
【0022】
磁気センサ21は、互いに直交する三方向の基準方向に従って、磁界成分Bx,By,Bzを検出する。磁気センサ21は、例えば、外形が略直方体状にモールドされた集積回路である。この例では、磁気センサ21は、磁気センサ21の長手方向で検出された磁界ベクトル成分を、磁界成分Bxとして出力し、磁気センサ21の短手方向で検出された磁界ベクトル成分を、磁界成分Byとして出力し、磁気センサ21の高さ方向(厚さ方向)で検出された磁界ベクトル成分を、磁界成分Bzとして出力する。
【0023】
磁気センサ21の個数は、センサの冗長性を確保するため、一つに限られず、複数でもよい。この例では、2つの磁気センサ21A,21Bが示されている。磁気センサ21A,21Bは、いずれも、磁石19の位置に応じて変化する空間座標データを出力する三次元磁気センサである。
【0024】
磁石ホルダ20は、シフトレバー11及びレバーホルダ16と一体化された部分である。磁石ホルダ20は、シフトレバー11に対して直角になるようにレバーホルダ16からZ軸方向の正側に突出する。磁石ホルダ20は、Z軸方向の正側の先端部に配置された磁石19を保持する。磁石19は、非磁性体のクリップ26によって、磁石ホルダ20のZ軸方向の正側の先端部に固定される。
【0025】
磁石19は、N極とS極のうち、一方の磁極が磁気センサ21と対向する第1主面に着磁され、他方の磁極が第1主面とは反対側の第2主面に着磁されている。あるいは、N極とS極が磁気センサ21と対向するように着磁されていてもよい。この場合、極の境目においては急峻な磁束の変化となるため、この変化を考慮して検出ロジックを組む、または、磁力線の方向が同じ領域だけを使うなどの方法が考えられる。なお、磁石19は円柱状の外形のものを用いているが、リング状、角状、球状等でもよい。
【0026】
判定回路25(
図3参照)は、磁気センサ21から出力された空間座標データ(Bx,By,Bz)に基づいて、シフトレバー11の操作ポジションを判定する。判定回路25は、公知の判定方法を用いて操作ポジションを判定してもよいし、後述の判定方法を用いて操作ポジションを判定してもよい。
【0027】
判定回路25は、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有するマイクロコンピュータである。判定回路25の機能は、メモリに記憶されたプログラムによってプロセッサが動作することにより実現される。判定回路25の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0028】
図6は、シフトレバー11をガイドするガイド溝14を示す斜視図である。ガイド溝14は、ベース13のY軸方向の正側の表面に形成されている。ガイド溝14は、上側(Y軸方向の正側)へ開放する溝であり、Y軸方向での平面視で略H形状に形成されている。具体的には、ガイド溝14は、略X軸方向に延伸する第1シフト溝22と、第1シフト溝22のZ軸方向の負側において略X軸方向に延伸する第2シフト溝23と、略Z軸方向に延伸するセレクト溝24と、を有する。セレクト溝24は、第1シフト溝22及び第2シフト溝23の各々のX軸方向中間部同士を接続する。第1シフト溝22、第2シフト溝23及びセレクト溝24は、シフトレバー11が揺動中心17を支点としてセレクト方向又はシフト方向に揺動できるように、シフトレバー11の下端部15をガイドする。
【0029】
ガイド溝14は、例えば、Rポジション(後退)、Dポジション(走行)、Hポジション(ホーム位置、中立位置)、Mポジション(手動操作位置)、+ポジション(シフトアップ)、-ポジション(シフトダウン)のシフトポジションにシフトレバー11の揺動範囲を規制するように、シフトレバー11の下端部15をガイドする。シフトレバー11がD側操作ポジション(Rポジション、Dポジション、Hポジションなど)に操作されるときは、下端部15は第1シフト溝22に沿ってシフト方向に移動する。シフトレバー11がM側操作ポジション(Mポジション、+ポジション、-ポジションなど)に操作されるときは、下端部15は第2シフト溝23に沿ってシフト方向に移動する。シフトレバー11がD側操作ポジションの配列とM側操作ポジションの配列との間で操作されるときは、下端部15はセレクト溝24に沿ってセレクト方向に移動する。
【0030】
図7は、磁気センサ21とシフトレバー11の位置関係をY軸方向での平面視で模式的に示す図である。
図8は、シフトレバーのセレクト方向の操作をX軸方向での側面視で模式的に示す図である。
【0031】
D側操作ポジションの配列に沿った第1シフト方向(以下、"D側シフト方向"ともいう)へのシフトレバー11の操作に伴って、磁石19は、XY平面に平行な第1仮想平面p1に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する。例えば、シフトレバー11がD側シフト方向に移動するとき、シフトレバー11は、揺動中心17を通るXY平面に沿って、揺動中心17を支点に揺動(回転移動)する。シフトレバー11がこのように回転移動すると、磁石19は、第1仮想平面p1に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する。D側シフト方向は、シフトレバー11の第1操作方向の一例である。
【0032】
M側操作ポジションの配列に沿った第2シフト方向(以下、"M側シフト方向"ともいう)へのシフトレバー11の操作に伴って、磁石19は、第1仮想平面p1とは異なる第2仮想平面p2に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する。第2仮想平面p2は、この例では、第1仮想平面p1に対して傾斜(交差)する。例えば、シフトレバー11がM側シフト方向に移動するとき、シフトレバー11は、揺動中心17を通るXY平面に対してZ軸方向の正側に傾いた状態で、揺動中心17を支点に揺動(回転移動)する。シフトレバー11がこのように回転移動すると、磁石19は、第2仮想平面p2に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する。M側シフト方向は、シフトレバー11の第2操作方向の一例である。
【0033】
シフトレバー11がM側操作ポジションの配列からD側操作ポジションの配列へ又はD側操作ポジションの配列からM側操作ポジションの配列へセレクト方向に移動するとき、シフトレバー11は、揺動中心17を通るZY平面に沿って、揺動中心17を支点に揺動(回転移動)する。シフトレバー11がこのように回転移動すると、磁石19は、揺動中心17を通るZY平面に沿って、曲線状の軌跡で移動する。セレクト方向は、シフトレバー11の第3操作方向の一例である。
【0034】
この例では、磁気センサ21からセレクト方向の操作前に第1仮想平面p1に沿って位置する磁石19までの距離のZ軸方向成分の長さは、磁気センサ21からセレクト方向の操作後に第2仮想平面p2に沿って位置する磁石19までの距離のZ軸方向成分の長さよりも短い。
【0035】
シフトレバー11のD側シフト方向への操作に伴って、磁石19が第1仮想平面p1に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動すると、磁気センサ21によって検出される磁界ベクトルが変化する。磁気センサ21は、第1仮想平面p1に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する磁石19の位置に対応する第1空間座標データ(Bx1,By1,Bz1)を出力する。判定回路25は、D側操作ポジション(Rポジション、Dポジション、Hポジションなど)のうち、磁気センサ21から取得した第1空間座標データ(Bx1,By1,Bz1)に対応する操作ポジションを特定(判定)する。
【0036】
シフトレバー11のM側シフト方向への操作に伴って、磁石19が第2仮想平面p2に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動すると、磁気センサ21によって検出される磁界ベクトルが変化する。磁気センサ21は、第2仮想平面p2に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する磁石19の位置に対応する第2空間座標データ(Bx2,By2,Bz2)を出力する。判定回路25は、M側操作ポジション(Mポジション、+ポジション、-ポジションなど)のうち、磁気センサ21から取得した第2空間座標データ(Bx2,By2,Bz2)に対応する操作ポジションを特定(判定)する。
【0037】
図9は、三次元の空間座標データを二次元の座標データに変換する方法を説明するための図である。判定回路25は、磁気センサ21から出力された三次元の空間座標データB(Bx,By,Bz)を、第1角度データαと第2角度データβで決まる二次元の第1座標データ(α,β)に変換する。
【0038】
第1角度データαは、ZX直交座標系におけるZX座標(Bz,Bx)の偏角である。第1角度データαは、ZX直交座標系の原点OからZ軸の正側に延びる半直線と、ZX直交座標系の原点OからZX座標(Bz,Bx)に延びる半直線(二次元ベクトル)との間の角度を表す。第1角度データαは、
α=atan2(Bz,Bx) ・・・式1
という関係式が成立する。"atan2"は、二つの引数を取るアークタンジェント関数である。判定回路25は、例えば、磁気センサ21により検出されたZ軸方向の磁界成分Bz及びX軸方向の磁界成分Bxに基づいて、式1により第1角度データαを算出する。
【0039】
第2角度データβは、ZY直交座標系におけるZY座標(Bz,By)の偏角である。つまり、第2角度データβは、ZY直交座標系の原点OからZ軸の正側に延びる半直線と、ZY直交座標系の原点OからZY座標(Bz,By)に延びる半直線(二次元ベクトル)との間の角度を表す。第2角度データβは、
β=atan2(Bz,By) ・・・式2
という関係式が成立する。判定回路25は、例えば、磁気センサ21により検出されたZ軸方向の磁界成分Bz及びY軸方向の磁界成分Byに基づいて、式2により第2角度データβを算出する。
【0040】
第1角度データαと第2角度データβで決まる二次元の第1座標データ(α,β)は、磁石19の位置に対応した座標データであり、シフトレバー11の操作ポジションに対応した座標データである。したがって、判定回路25は、複数の操作ポジションのうち、第1角度データαと第2角度データβで決まる二次元の第1座標データ(α,β)に対応する操作ポジションを判定(特定)できる。
【0041】
しかしながら、磁気センサ21の配置形態によっては、操作ポジションの判定精度が低下することがある。
【0042】
図10は、XY平面及びZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動する磁石19と、Z軸方向での正面視でX軸方向に沿って配置された磁気センサ21(21A,21B)との第1配置形態を示す図である。磁気センサ21(21A,21B)は、磁界成分Bxの検出基準方向がX軸方向に平行になるように配置されている。Z軸方向での正面視において、磁石19は、XY平面(第1仮想平面p1)に沿ってX軸方向に略平行な軌跡t1(Y軸方向に僅かに湾曲した軌跡)で移動するので、磁石19がY軸方向に移動する範囲は、磁石19がX軸方向に移動する範囲に比べて狭い。そのため、Z軸方向での正面視で磁気センサ21がX軸方向に沿って配置された
図10の形態では、磁石19が軌跡t1で移動するとき、第1角度データαが変動する範囲は、比較的広いのに対し、第2角度データβが変動する範囲は、狭い(
図11参照)。
【0043】
図11は、
図10の第1配置形態において、磁気センサ21から出力された三次元の空間座標データB(Bx,By,Bz)の角度変換により得られた二次元の第1座標データ(α,β)の軌跡を示す図である。
図11に示す軌跡上のプロット点は、各操作ポジションに対応する。
図11に示すように、D側シフト方向で操作ポジションが変わる場合も、M側シフト方向で操作ポジションが変わる場合も、第2角度データβの変化幅は、第1角度データαの変化幅よりも狭い。そのため、
図10の第1配置形態では、判定回路25が第1座標データ(α,β)に基づいてシフトレバー11の操作ポジションを判定する精度は、低下することがある。
【0044】
図12は、XY平面及びZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動する磁石19と、Z軸方向での正面視でX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された磁気センサ21(21A,21B)との第2配置形態を示す図である。磁気センサ21(21A,21B)は、磁界成分Bxの検出基準方向がX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置されている。Z軸方向での正面視において、磁石19は、XY平面(第1仮想平面p1)に沿ってX軸方向に略平行な軌跡t1(Y軸方向に僅かに湾曲した軌跡)で移動するので、磁石19がY軸方向に移動する範囲は、磁石19がX軸方向に移動する範囲に比べて狭い。しかしながら、Z軸方向での正面視で磁気センサ21がX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された
図12の形態では、磁石19が軌跡t1で移動するとき、第1角度データαが変動する範囲も、第2角度データβが変動する範囲も、比較的広い(
図13参照)。
【0045】
図13は、
図12の第2配置形態において、磁気センサ21から出力された三次元の空間座標データB(Bx,By,Bz)の角度変換により得られた二次元の第1座標データ(α,β)の軌跡を示す図である。
図13に示す軌跡上のプロット点は、各操作ポジションに対応する。
図13に示すように、D側シフト方向で操作ポジションが変わる場合も、M側シフト方向で操作ポジションが変わる場合も、第1角度データαの変化幅及び第2角度データβの変化幅は、広い。そのため、
図12の第2配置形態では、判定回路25は、第1座標データ(α,β)に対応する操作ポジションを高精度に判定できる。例えば、シフトレバー11の操作ポジションを実際の操作ポジションに隣接する操作ポジションと誤判定する可能性は低減し、操作ポジションを判定精度の低下が抑制される。
【0046】
図14は、XY平面及びZY平面に沿って曲線状の軌跡で移動する磁石19と、Z軸方向での正面視でX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された磁気センサ21(21A,21B)との第3配置形態を示す図である。磁気センサ21(21A,21B)は、磁界成分Bxの検出基準方向がX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置されている。Z軸方向での正面視において、磁石19は、XY平面(第1仮想平面p1)に沿ってX軸方向に略平行な軌跡t1(Y軸方向に僅かに湾曲した軌跡)で移動するので、磁石19がY軸方向に移動する範囲は、磁石19がX軸方向に移動する範囲に比べて狭い。しかしながら、Z軸方向での正面視で磁気センサ21がX軸方向及びY軸方向に対して傾けて配置された
図14の形態では、磁石19が軌跡t1で移動するとき、第1角度データαが変動する範囲も、第2角度データβが変動する範囲も、比較的広い(
図15参照)。
【0047】
図15は、
図14の第3配置形態において、磁気センサ21から出力された三次元の空間座標データB(Bx,By,Bz)の角度変換により得られた二次元の第1座標データ(α,β)の軌跡を示す図である。
図15に示す軌跡上のプロット点は、各操作ポジションに対応する。
図15に示すように、D側シフト方向で操作ポジションが変わる場合も、M側シフト方向で操作ポジションが変わる場合も、第1角度データαの変化幅及び第2角度データβの変化幅は、広い。そのため、
図14の第3配置形態では、判定回路25は、第1座標データ(α,β)に対応する操作ポジションを高精度に判定できる。例えば、シフトレバー11の操作ポジションを実際の操作ポジションに隣接する操作ポジションと誤判定する可能性は低減し、操作ポジションを判定精度の低下が抑制される。
【0048】
第1座標データ(α,β)に基づく操作ポジションの判定の精度低下を抑制する点で、
図12,14に示すように、磁気センサ21は、Z軸方向での正面視で、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに対して10°以上傾けて配置されているのが好ましい。磁気センサ21は、Z軸方向での正面視で、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに対して20°以上傾けて配置されているのがより好ましく、30°以上傾けて配置されているのがさらに好ましい。
図12,14では、磁気センサ21は、Z軸方向での正面視で、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに対して45°傾けて配置されている。
【0049】
図12,14では、磁気センサ21は、シフトレバー11が上記のような所定の操作ポジションにあるとき、Z軸方向での正面視で、磁石19と少なくとも一部が重なるように配置されている。これにより、磁気センサ21は、磁束密度が比較的高い領域に配置されるので、磁石19の磁界ベクトルの検出精度が向上する。よって、判定回路25は、磁気センサ21により得られた第1座標データ(α,β)に基づいて、シフトレバー11の操作ポジションを高精度に判定できる。
【0050】
図12,14では、磁気センサ21は、Z軸方向での正面視で、磁気センサ21の外形が磁石19からはみ出ないように配置されている。これにより、磁気センサ21は、磁束密度がより高い領域に配置されるので、磁石19の磁界ベクトルの検出精度が向上する。よって、判定回路25は、磁気センサ21により得られた第1座標データ(α,β)に基づいて、シフトレバー11の操作ポジションをより高精度に判定できる。
【0051】
図12,14では、複数の磁気センサ21A,21Bは、Z軸方向での正面視で、複数の磁気センサ21A,21Bの外形が磁石19からはみ出ないように配置されている。これにより、磁気センサ21Aも磁気センサ21Bも、磁束密度がより高い領域に配置されるので、磁石19の磁界ベクトルの検出精度が向上する。よって、判定回路25は、磁気センサ21により得られた第1座標データ(α,β)に基づいて、シフトレバー11の操作ポジションをより高精度に判定できる。
【0052】
図13,15に示すように、D側操作ポジションを表すプロット点が変動する範囲は、M側操作ポジションを表すプロット点が変動する範囲よりも広い。つまり、磁石19が第1仮想平面p1に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する第1範囲が、磁石19が第2仮想平面p2に沿ってX軸方向に略平行な軌跡で移動する第2範囲よりも広い場合がある。第1範囲は、シフトレバー11のセレクト方向(第3操作方向の一例)への操作前に磁石19が移動する範囲の一例であり、
図12~
図15に示す例では、シフトレバー11がD側シフト方向に移動するときに磁石19が移動する範囲に相当する。第2範囲は、シフトレバー11のセレクト方向への操作後に磁石19が移動する範囲の一例であり、
図12~
図15に示す例では、シフトレバー11がM側シフト方向に移動するときに磁石19が移動する範囲に相当する。
【0053】
図14に示す例では、Z軸方向での正面視で、D側の第1仮想平面p1に沿って位置する磁石19の中心19dから、磁気センサ21までの最短距離d1は、M側の第2仮想平面p2に沿って位置する磁石19の中心19mから、磁気センサ21までの最短距離d2に比べて長い。最短距離d1が最短距離d2に比べて長いと、
図15に示すように、D側操作ポジションを表す複数のプロット点の軌跡の湾曲が大きくなり、D側操作ポジションの判定精度が低下することがある。例えば、湾曲した軌跡は、一次直線で近似することが難しいので、後述の判定方法のように、直線近似を利用して操作ポジションを判定する方法では、D側操作ポジションの判定精度が低下することがある。
【0054】
これに対し、
図12に示す例では、Z軸方向での正面視で、D側の第1仮想平面p1に沿って位置する磁石19の中心19dから、磁気センサ21までの最短距離d1は、M側の第2仮想平面p2に沿って位置する磁石19の中心19mから、磁気センサ21までの最短距離d2に比べて短い。最短距離d1が最短距離d2に比べて短いと、
図13に示すように、M側操作ポジションを表す複数のプロット点の軌跡は直線に近づき、D側操作ポジションを表す複数のプロット点の軌跡も直線に近づく。これにより、後述の判定方法のように、直線近似を利用して操作ポジションを判定すると、D側操作ポジション及びM側操作ポジションの判定精度の低下を抑えることができる。
図12に示す例では、磁気センサ21(21A,21B)は、Z軸方向での正面視で、D側の第1仮想平面p1に沿って位置する磁石19から磁気センサ21(21A,21B)の外形がはみ出ないように配置されている。これにより、磁気センサ21は、磁束密度がより高い領域に配置されるので、磁石19の磁界ベクトルの検出精度が向上し、D側操作ポジション及びM側操作ポジションの判定精度の低下をより抑えることができる。
【0055】
次に、
図16~
図18を参照して、直線近似を利用して操作ポジションを判定する方法の好適な例について説明する。
【0056】
<ステップS10(第1座標データ(α,β)の算出)>
図16において、判定回路25は、磁気センサ21から出力された三次元の空間座標データB(Bx,By,Bz)を、第1角度データαと第2角度データβで決まる二次元の第1座標データ(α,β)に変換する。判定回路25は、上記の式1及び式2を用いて、第1角度データαと第2角度データβを算出し、操作ポジションの位置を二次元データで表す第1座標データ(α,β)を導出する。
【0057】
上述の通り、
図12に示すような配置形態では、D側操作ポジションを表す複数のプロット点の軌跡も、M側操作ポジションを表す複数のプロット点の軌跡も、直線に近づく。
図16に示す例では、シフトレバー11をD側シフト方向に操作すると、第1座標データ(α,β)は、一次の近似直線L1に沿って遷移し、シフトレバー11をM側シフト方向に操作すると、第1座標データ(α,β)は、一次の近似直線L2に沿って遷移する。
【0058】
<ステップS20(D側とM側の判別)>
判定回路25は、αβ直交座標系で第1座標データ(α,β)が位置する領域に応じて、シフトレバー11の操作ポジションがD側シフト方向の操作ポジション(D側操作ポジション)なのかM側シフト方向の操作ポジション(M側操作ポジション)なのかを判別する。例えば、判定回路25は、ステップS10で導出した第1座標データ(α,β)を所定の中間線L3(
図16参照)と比較することで、シフトレバー11の操作ポジションが、D側操作ポジションなのかM側操作ポジションなのかを判別する。
【0059】
中間線L3は、二次元直交座標系を区画する閾値線の一例であり、この例では、傾きAjで切片Bjの一次直線である。中間線L3を決める二つの係数Aj,Bjは、事前のキャリブレーションにより予め導出される値である。中間線L3(係数Aj,Bj)の導出のための事前キャリブレーションについては後述する。
【0060】
判定回路25は、ステップS10で導出した第1座標データ(α,β)が、中間線L3に対して、D側操作ポジションが分布する領域(D側領域)にあるのか、M側操作ポジションが分布する領域(M側領域)にあるのかを判別する。
図16に示す例では、判定回路25は、ステップS10で導出した第1座標データ(α,β)に関して、「β-(Aj×α+Bj)」が正の値の場合、シフトレバー11の現在の操作ポジションはD側操作ポジションと判定する。一方、判定回路25は、ステップS10で導出した第1座標データ(α,β)に関して、「β-(Aj×α+Bj)」が負の値の場合、シフトレバー11の現在の操作ポジションはM側操作ポジションと判定する。
【0061】
<ステップS30(キャリブレーション値の参照)>
判定回路25は、ステップS10で導出した第1座標データ(α,β)を、αβ二次元直交座標系の四象限のうち一の象限上の第2座標データ(α
C,β
C)に変換するためのキャリブレーション値を読み込む。
図17は、第1座標データ(α,β)が、ステップS30で読み込んだキャリブレーション値によって、第一象限上の第2座標データ(α
C,β
C)に変換される場合を例示する。他の変換例として、第1座標データ(α,β)は、第二象限、第三象限及び第四象限のうちの一の象限上の第2座標データ(α
C,β
C)に変換されてもよい。
【0062】
判定回路25は、ステップS20でD側操作ポジションと判定された場合、D側操作ポジションのキャリブレーション用の第1キャリブレーション値を読み込む。一方、判定回路25は、ステップS20でM側操作ポジションと判定された場合、M側操作ポジションのキャリブレーション用の第2キャリブレーション値を読み込む。
【0063】
<ステップS40(キャリブレーション値による補正)>
判定回路25は、ステップS30で読み込んだキャリブレーション値a,b,kにより、ステップS10で導出した第1角度データα及び第2角度データβを下記の補正式c1,c2で補正することで、第1座標データ(α,β)を第2座標データ(αC,βC)に変換する。
【0064】
α
C=α+k ・・・式c1
β
C=β/a-b/a+k ・・・式c2
補正式c1,c2は、
図17に示すように、αβ二次元直交座標系の一次の近似直線Lに沿って位置する複数の第1座標データ(α,β)を、原点Oを通り傾きが1の一次の近似直線L
Cに沿って第一象限に位置する複数の第2座標データ(α
C,β
C)に変換するための補正式である。
【0065】
<ステップS50(一次元データ(原点Oからの距離)への変換)>
判定回路25は、αβ二次元直交座標系の原点Oから、ステップS40で得られた第2座標データ(αC,βC)までの距離(=√(αC
2+βC
2))を算出することで、第2座標データ(αC,βC)を一次元の距離データrに変換する。
【0066】
<ステップS60(操作ポジションの判定)>
距離データrは、磁石19の位置に対応した一次元データであり、シフトレバー11の操作ポジションに対応した一次元データであるので、判定回路25は、複数の操作ポジションのうち、ステップS50で導出された距離データrに対応する操作ポジションを特定できる。このように、判定回路25は、ステップS50で導出された距離データrに応じて、シフトレバー11の操作ポジションを特定(判定)する。
【0067】
図18は、一次元の距離データrに応じて操作ポジションを判定する方法を説明するための図である。
図18は、Mポジション、+ポジション及び-ポジションの3つのM側操作ポジションの中から、シフトレバー11の現在の操作ポジションを特定する場合を例示する。判定回路25は、ステップS50で導出された距離データrの大小に応じて、シフトレバー11の操作ポジションが、3つのM側操作ポジションのうちのどの操作ポジションなのかを判別する。例えば、判定回路25は、ステップS50で導出された距離データrを複数の異なる判定閾値と比較することで、シフトレバー11の操作ポジションが、3つのM側操作ポジションのうちのどの操作ポジションなのかを判別する。
【0068】
複数の異なる判定閾値は、予め決められた値である。第1の座標データ(α,β)から第2の座標データ(αC,βC)に変換するためのキャリブレーション値が変わると、複数の異なる判定閾値も変わる。そのため、複数の異なる判定閾値は、キャリブレーション値が導出された以後に決められる。
【0069】
図18に示す例では、例えば、判定回路25は、距離データrが第1判定閾値未満の場合、+ポジションと判定し、距離データrが第1判定閾値以上第2判定閾値未満の場合、Mポジションと判定し、距離データrが第2判定閾値以上の場合、-ポジションと判定する。同様に、判定回路25は、D側操作ポジションを判定する。
【0070】
判定回路25は、D側シフト方向への操作のときの距離データrを、D側シフト方向への操作のときの操作ポジション(D側操作ポジション)の判定用の第1閾値(例えば、上述の第1判定閾値及び第2判定閾値)と比較する。判定回路25は、D側シフト方向への操作のときの距離データrを第1閾値と比較することで、D側操作ポジションを特定する。一方、M側シフト方向への操作のときの距離データrを、M側シフト方向への操作のときの操作ポジション(M側操作ポジション)の判定用の第2閾値(例えば、上述の第1判定閾値及び第2判定閾値)と比較する。判定回路25は、M側シフト方向への操作のときの距離データrを第2閾値と比較することで、M側操作ポジションを特定する。
【0071】
このように、本実施形態では、三次元の空間座標データを最終的に一次元の距離データに変換することで、操作ポジションの判定閾値の設定が容易になる。これにより、キャリブレーション値を判定閾値に反映させることも容易になる。また、操作ポジションの判定アルゴリズムをシンプルに構築できる。
【0072】
なお、原点Oは、αβ二次元直交座標系の基準点の一例である。判定回路25は、原点Oからの距離データrに応じて操作ポジションを判定しているが、原点Oの近傍点(基準点の他の一例)からの距離データrに応じて操作ポジションを判定してもよい。
【0073】
次に、事前キャリブレーションについて説明する。事前キャリブレーションは、個々のシフト装置で行われることが好ましいが、一部のシフト装置で行われた事前キャリブレーションの結果が他のシフト装置に反映されてもよい。
【0074】
判定回路25は、全ての操作ポジションの空間座標データ(Bx,By,Bz)を磁気センサ21から取得し、複数のD側操作ポジションの第1座標データ(α,β)と、複数のM側操作ポジションの第1座標データ(α,β)とを導出する。判定回路25は、複数のD側操作ポジションの第1座標データ(α,β)の軌跡を直線近似することで近似直線L1を導出し、複数のM側操作ポジションの第1座標データ(α,β)の軌跡を直線近似することで近似直線L2を導出する。判定回路25は、所定のαβ平面内において、近似直線L1と近似直線L2との間に挟まれる直線を中間線L3として設定する。判定回路25は、所定のαβ平面内において、中間線L3が近似直線L1と近似直線L2との間に挟まれる線分となるように、中間線L3を特定する二つの係数Aj,Bjを決定する。
【0075】
一方、判定回路25は、複数のD側操作ポジションの第1座標データ(α,β)の軌跡を直線近似することで、近似直線L1の傾きa及び切片bを導出する。そして、判定回路25は、近似直線L1に沿って位置する複数の第1座標データ(α,β)を、一次の第1近似直線LC1に沿って第一象限に位置する複数の第2座標データ(αC,βC)に変換するための第1キャリブレーション値a,b,kを導出する。一次の第1近似直線LC1は、原点Oを通り、傾きが1の線分である。kは、複数の第2座標データ(αC,βC)が第一象限に存在するように補正するためのキャリブレーション値である。D側操作ポジションのキャリブレーション用の上記の補正式c1,c2は、第1キャリブレーション値a,b,kによって定義される。
【0076】
同様に、判定回路25は、複数のM側操作ポジションの第1座標データ(α,β)の軌跡を直線近似することで、近似直線L2の傾きa及び切片bを導出する。そして、判定回路25は、近似直線L2に沿って位置する複数の第1座標データ(α,β)を、一次の第2近似直線LC2に沿って第一象限に位置する複数の第2座標データ(αC,βC)に変換するための第2キャリブレーション値a,b,kを導出する。一次の第2近似直線LC2は、原点Oを通り、傾きが1の線分である。kは、複数の第2座標データ(αC,βC)が第一象限に存在するように補正するためのキャリブレーション値である。M側操作ポジションのキャリブレーション用の上記の補正式c1,c2は、第2キャリブレーション値a,b,kによって定義される。
【0077】
以上、実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0078】
例えば、シフト装置は、変速機用に限られず、ターンシグナルスイッチ装置やワイパースイッチ装置などのコンビネーションスイッチ装置に適用されてもよい。
【0079】
また、磁気センサは、ホール素子を利用するセンサに限られず、磁気抵抗素子などの他の素子を利用するセンサでもよい。
【0080】
また、X軸の"X"、Y軸の"Y"、Z軸の"Z"は、互いに直交する3軸を区別するための単なるラベルである。シフトレバーの第1操作方向又は第2操作方向への操作に伴って磁石が移動する方向に略平行な方向を、X軸方向と定義したにすぎず、シフトレバーの第1操作方向又は第2操作方向への操作に伴って磁石が移動する方向に略平行な平面をXY平面と定義したにすぎず、そのXY平面に垂直な方向をZ軸方向と定義したにすぎない。
【符号の説明】
【0081】
1 シフト装置
10 筐体
11 シフトレバー
12 ハーネス
13 ベース
14 ガイド溝
15 下端部
16 レバーホルダ
17 揺動中心
18 回路基板
19 磁石
20 磁石ホルダ
21,21A,21B 磁気センサ
22 第1シフト溝
23 第2シフト溝
24 セレクト溝
25 判定回路
26 クリップ
p1 第1仮想平面
p2 第2仮想平面