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特許7589663車両修理支援システムおよび車両修理支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両修理支援システムおよび車両修理支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241119BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021155042
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046447
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 才夫
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-164578(JP,A)
【文献】米国特許第10540529(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0125261(US,A1)
【文献】特開2020-086611(JP,A)
【文献】特開2017-102553(JP,A)
【文献】特開2004-318536(JP,A)
【文献】特開2016-148910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障車両の修理を支援するための車両修理支援システムであって、
予め登録された複数のドナー車両のIDと、前記ドナー車両に搭載された部品とを紐付けて記憶する記憶装置と、
前記故障車両の不具合情報に応じた前記故障車両の修理に必要な修理部品の情報を提供する故障情報管理装置と、
前記故障車両の修理に必要な前記修理部品を前記故障情報管理装置に照会して前記故障車両の前記不具合情報に応じた前記修理部品を特定すると共に、前記記憶装置に記憶された情報に基づいて前記複数のドナー車両の中から前記修理部品を搭載した前記ドナー車両を抽出する支援管理装置と、
前記支援管理装置により抽出された前記ドナー車両の所有者に前記修理部品の提供依頼を通知する依頼通知装置と、
を備える車両修理支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記支援管理装置は、前記修理部品の提供依頼を受諾した前記所有者にインセンティブを付与する車両修理支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記支援管理装置は、前記ドナー車両から提供された前記修理部品の劣化度合が小さい場合、前記劣化度合が大きい場合に比べて前記所有者に付与される前記インセンティブを高くする車両修理支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記ドナー車両から少なくとも走行距離を含む使用状態情報を取得すると共に前記使用状態情報に基づいて前記ドナー車両に搭載された前記部品の前記劣化度合を導出する部品劣化診断装置を更に備え、
前記支援管理装置は、前記部品劣化診断装置から取得した前記修理部品の前記劣化度合に基づいて前記所有者に付与される前記インセンティブを定める車両修理支援システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記故障車両のユーザへの修理の請求額を算出すると共に、前記故障車両が前記ドナー車両として登録されている場合、前記ドナー車両として登録されていない場合に比べて前記請求額を減額する請求額算出装置を更に備える車両修理支援システム。
【請求項6】
請求項1からの何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記不具合情報は、前記故障車両の修理依頼を受け付けた事業者から前記支援管理装置に送信され、前記依頼通知装置は、前記事業者に設置されている車両修理支援システム。
【請求項7】
請求項1からの何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記支援管理装置は、前記故障車両の修理予定日と、前記ドナー車両の非稼働予定日を示す非稼働日情報とに基づいて、前記修理部品を搭載した前記ドナー車両を絞り込む車両修理支援システム。
【請求項8】
請求項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記非稼働日情報は、前記ドナー車両の前記所有者から提供される前記非稼働予定日と前記ドナー車両の使用状況とに基づいて設定される前記ドナー車両が前記非稼働予定日に非稼働となる確率を含み、
前記記憶装置は、前記非稼働日情報を前記ドナー車両のIDに紐付けて記憶し、
前記支援管理装置は、前記非稼働日情報に基づいて前記修理部品を搭載した前記ドナー車両の中から前記確率が高い前記ドナー車両を優先して抽出する車両修理支援システム。
【請求項9】
請求項1からの何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記支援管理装置は、少なくとも前記ドナー車両の位置と前記ドナー車両から前記修理部品を取り外す施工業者の所在地との距離を取得し、前記修理部品を搭載した前記ドナー車両の中から前記距離が短い前記ドナー車両を優先して抽出する車両修理支援システム。
【請求項10】
請求項1からの何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記ドナー車両から取り外された前記修理部品が前記故障車両に装着され、前記ドナー車両には、別途取り寄せられた取り寄せ部品が装着される車両修理支援システム。
【請求項11】
請求項1からの何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記ドナー車両から取り外された前記修理部品は、前記故障車両に一時的に装着された後、前記ドナー車両に戻され、前記故障車両には、別途取り寄せられた取り寄せ部品が装着される車両修理支援システム。
【請求項12】
請求項1からの何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記ドナー車両から取り外された前記修理部品が前記故障車両に一時的に装着された後、前記ドナー車両および前記故障車両の各々に別途取り寄せられた取り寄せ部品が装着され、前記故障車両から取り外された前記修理部品は、ストックされる車両修理支援システム。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の車両修理支援システムにおいて、
前記複数のドナー車両は、自家用車、中古車、カーシェアリング車両、展示車およびレンタカーの少なくとも何れかを含む車両修理支援システム。
【請求項14】
故障車両の修理を支援するための車両修理支援方法であって、
予め登録された複数のドナー車両のIDと、前記ドナー車両に搭載された部品とを紐付けて記憶装置に記憶させると共に、前記故障車両の不具合情報に応じた前記故障車両の修理に必要な修理部品の情報を故障情報管理装置に記憶させておき、
コンピュータに、前記故障車両の修理に必要な前記修理部品を前記故障情報管理装置に照会させて前記故障車両の前記不具合情報に応じた前記修理部品を特定させると共に、前記記憶装置に記憶された情報に基づいて前記複数のドナー車両の中から前記修理部品を搭載した前記ドナー車両を抽出させ
前記コンピュータまたは前記コンピュータとは異なる他のコンピュータに、前記コンピュータにより抽出された前記ドナー車両の所有者に前記修理部品の提供を依頼させる
車両修理支援方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、故障車両の修理を支援するための車両修理支援システムおよび車両修理支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の故障の状況を自動的に把握し、必要な補修部品や交換部品の手配およびロードサービス車やタクシー等の手配を自動的に行うと共に、補修部品や交換部品を入手可能にするアフターサービス支援システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このアフターサービス支援システムは、自動車の状態に関する情報を受信するデータ通信制御部と、自動車の状態に関する情報に基づいて自動車を修理するための受発注情報を作成する支援計画生成部と、受発注情報に基づいて修理作業の予約および/または部品の予約を修理工場および/または生産工場に送信する受発注情報制御部とを含む。かかるアフターサービスによれば、自動車の故障が発生した際に、当該自動車の所有者の手間を省くことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-251490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のアフターサービス支援システムのように、補修部品や交換部品の手配が自動的に行われたとしても、故障の発生から実際に部品が納入されて交換されるまでには、ある程度の時間を要してしまう。一方、販売店や修理工場で各種部品がストックされていれば、故障車両を迅速に修理することが可能となるが、部品のストックにはスペースやコストを要し、ストックされた部品が使用されずに無駄になってしまうおそれもある。
【0005】
そこで、本開示は、部品のストックを削減しつつ、故障車両の修理に必要な修理部品の速やかな調達を可能にする車両修理支援システムおよび車両修理支援方法の提供を主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両修理支援システムは、故障車両の修理を支援するための車両修理支援システムであって、予め登録された複数のドナー車両のIDと、前記ドナー車両に搭載された部品とを紐付けて記憶する記憶装置と、前記故障車両の不具合情報に基づいて前記故障車両の修理に必要な修理部品を特定すると共に、前記記憶装置に記憶された情報に基づいて前記複数のドナー車両の中から前記修理部品を搭載した前記ドナー車両を抽出する支援管理装置と、前記支援管理装置により抽出された前記ドナー車両の所有者に前記修理部品の提供依頼を通知する依頼通知装置とを含むものである。
【0007】
本開示の車両修理支援システムは、故障車両の修理に際して、主として部品の調達を支援するものであり、記憶装置、支援管理装置、および依頼通知装置を含む。記憶装置は、予め登録された複数のドナー車両のIDと、ドナー車両に搭載された部品とを紐付けて記憶する。また、支援管理装置は、故障車両の不具合情報に基づいて当該故障車両の修理に必要な修理部品を特定すると共に、記憶装置に記憶された情報に基づいて複数のドナー車両の中から修理部品を搭載したドナー車両を抽出する。更に、依頼通知装置は、支援管理装置により抽出されたドナー車両の所有者に修理部品の提供依頼を通知する。これにより、ドナー車両の所有者によって修理部品の提供依頼が受諾されれば、当該ドナー車両から修理部品を取り外して故障車両に装着し、当該故障車両の故障を解消することができる。この結果、車両の販売店や整備工場等における部品のストックを削減しつつ、故障車両の修理に必要な修理部品を速やかに調達することが可能になる。
【0008】
また、前記支援管理装置は、前記修理部品の提供依頼を受諾した前記所有者にインセンティブを付与するものであってもよい。これにより、ドナー車両の所有者に修理部品の提供依頼の承諾を促すことができるので、修理部品をより速やかに調達することが可能となる。
【0009】
更に、前記支援管理装置は、前記ドナー車両から提供された前記修理部品の劣化度合が小さい場合、前記劣化度合が大きい場合に比べて前記所有者に付与される前記インセンティブを高くするものであってもよい。これにより、ドナー車両が比較的新しいものであっても、当該ドナー車両の所有者が修理部品の提供に抵抗感をもつことを抑制することができるので、程度のよい修理部品の調達が可能となる。
【0010】
また、前記車両修理支援システムは、前記ドナー車両から少なくとも走行距離を含む使用状態情報を取得すると共に前記使用状態情報に基づいて前記ドナー車両に搭載された前記部品の前記劣化度合を導出する部品劣化診断装置を更に含むものであってもよく、前記支援管理装置は、前記部品劣化診断装置から取得した前記修理部品の前記劣化度合に基づいて前記所有者に付与される前記インセンティブを定めるものであってもよい。これにより、ドナー車両に搭載された部品の劣化度合を適正に評価すると共に、ドナー車両からの修理部品の調達の信頼性を良好に確保することが可能となる。
【0011】
更に、前記車両修理支援システムは、前記故障車両のユーザへの修理の請求額を算出すると共に、前記故障車両が前記ドナー車両として登録されている場合、前記ドナー車両として登録されていない場合に比べて前記請求額を減額する請求額算出装置を更に含むものであってもよい。このように、ドナー車両の所有者に故障発生時の費用負担の軽減というメリットを与えることで、ドナー車両の登録をより促進させて当該ドナー車両の登録台数を増やすことが可能となる。
【0012】
また、前記車両修理支援システムは、前記不具合情報に応じた前記修理部品の情報を提供する故障情報管理装置を更に含むものであってもよく、前記支援管理装置は、前記故障車両の修理に必要な前記修理部品を前記故障情報管理装置に照会するものであってもよい。これにより、故障車両の修理に必要な修理部品を容易かつ迅速に特定することが可能となる。
【0013】
更に、前記不具合情報は、前記故障車両の修理依頼を受け付けた事業者から前記支援管理装置に送信されてもよく、前記依頼通知装置は、前記事業者に設置されてもよい。これにより、ドナー車両の所有者と、故障車両の修理の窓口となる事業者との間で作業日程等を直接取り決めることができるので、故障車両の修理依頼から修理完了までの時間をより短くすることが可能となる。
【0014】
また、前記支援管理装置は、前記故障車両の修理予定日と、前記ドナー車両の非稼働予定日を示す非稼働日情報とに基づいて、前記修理部品を搭載した前記ドナー車両を絞り込むものであってもよい。これにより、稼働を理由に修理予定日までに修理部品を提供し得ないドナー車両の所有者に当該修理部品の提供依頼が通知されてしまうのを抑制し、修理部品の提供依頼が受諾される蓋然性をより高くすることが可能となる。
【0015】
更に、前記非稼働日情報は、前記ドナー車両の前記所有者から提供される前記非稼働予定日と前記ドナー車両の使用状況とに基づいて設定される前記ドナー車両が前記非稼働予定日に非稼働となる確率を含むものであってもよく、前記記憶装置は、前記非稼働日情報を前記ドナー車両のIDに紐付けて記憶するものであってもよく、前記支援管理装置は、前記非稼働日情報に基づいて前記修理部品を搭載した前記ドナー車両の中から前記確率が高い前記ドナー車両を優先して抽出するものであってもよい。これにより、稼働を理由に修理予定日までに修理部品を提供し得ないドナー車両の所有者に修理部品の提供依頼が通知されてしまうのを極めて良好に抑制することが可能となる。
【0016】
また、前記支援管理装置は、少なくとも前記ドナー車両の位置と前記ドナー車両から前記修理部品を取り外す施工業者の所在地との距離を取得し、前記修理部品を搭載した前記ドナー車両の中から前記距離が短い前記ドナー車両を優先して抽出するものであってもよい。これにより、故障車両の修理依頼から修理部品を取得するまでの時間をより短縮化すると共に、部品の調達に要する物流コストを低減することが可能となる。
【0017】
更に、前記ドナー車両から取り外された前記修理部品が前記故障車両に装着されてもよく、前記ドナー車両には、別途取り寄せられた取り寄せ部品が装着されてもよい。すなわち、修理部品の提供に応じて、新たな部品がドナー車両の所有者にインセンティブとして供与されてもよい。
【0018】
また、前記ドナー車両から取り外された前記修理部品は、前記故障車両に一時的に装着された後、前記ドナー車両に戻されてもよく、前記故障車両には、別途取り寄せられた取り寄せ部品が装着されてもよい。これにより、当初から装着された部品の継続使用を希望するドナー車両の所有者の意向に沿うことが可能となる。
【0019】
更に、前記ドナー車両から取り外された前記修理部品が前記故障車両に一時的に装着された後、前記ドナー車両および前記故障車両の各々に別途取り寄せられた取り寄せ部品が装着されてもよく、前記故障車両から取り外された前記修理部品は、ストックされてもよい。
【0020】
また、前記複数のドナー車両は、自家用車、中古車、カーシェアリング車両、展示車およびレンタカーの少なくとも何れかを含んでもよい。これにより、非稼働の自家用車やレンタカー、カーシェアリング車両、中古車等の遊休車両等に搭載された部品を有効に活用して、故障車両を速やかに修理することが可能となるので、当該故障車両のダウンタイムを良好に低減することができる。
【0021】
本開示の車両修理支援方法は、故障車両の修理を支援するための車両修理支援方法であって、予め登録された複数のドナー車両のIDと、前記ドナー車両に搭載された部品とを紐付けて記憶装置に記憶させておき、前記故障車両の不具合情報に基づいて前記故障車両の修理に必要な修理部品を特定し、前記記憶装置に記憶された情報に基づいて前記複数のドナー車両の中から前記修理部品を搭載した前記ドナー車両を抽出し、抽出した前記ドナー車両の所有者に前記修理部品の提供を依頼するものである。
【0022】
かかる方法によれば、車両の販売店や整備工場等における部品のストックを削減しつつ、故障車両の修理に必要な修理部品を速やかに調達することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の車両修理支援システムを示す概略構成図である。
図2】本開示の車両修理支援システムにおいて用いられる非稼働日情報を例示する説明図である。
図3】本開示の車両修理支援システムによる故障車両の修理の支援手順の一例を説明するための説明図である。
図4】本開示の車両修理支援システムによる故障車両の修理の支援手順を示すフローチャートである。
図5】本開示の車両修理支援システムによる支援を受けて行われる作業の流れを示すフローチャートである。
図6】本開示の車両修理支援システムによる故障車両の修理の支援手順を示すフローチャートである。
図7】本開示の車両修理支援システムによる故障車両の修理の支援手順を他の例を説明するための説明図である。
図8】本開示の車両修理支援システムによる故障車両の修理の支援手順を更に他の例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1は、本開示の車両修理支援システム1を示す概略構成図である。同図に示すように、車両修理支援システム1は、故障車両Vbの修理に際して、主として部品の調達を支援するものである。より詳細には、車両修理支援システム1は、故障車両Vbの修理に必要な修理部品を予め登録された複数のドナー車両Vdから調達することを支援する。ドナー車両Vdは、その所有者が故障車両Vbの修理を受け付けた車両販売店Dや車両整備工場F等からの依頼に応じて当該ドナー車両Vdに搭載された何れか1つまたは複数の部品を提供することに同意している車両である。修理部品の提供依頼を受諾したドナー車両Vdの所有者には、車両修理支援システム1からインセンティブが付与される。
【0026】
本実施形態において、ドナー車両Vdは、例えば車両取得時あるいは取得後に当該ドナー車両Vdの所有者からの申請に応じて車両修理支援システム1に登録される。また、ドナー車両Vdには、個人が所有する自家用車の他に、中古車販売事業者Uにより販売されている中古車、カーシェアリング運営事業者CSにより所有、管理されているカーシェアリング車両、図示しないレンタカー事業者により所有、管理されているレンタカー、車両販売店D等に展示されている展示車等が含まれる。
【0027】
図1に示すように、車両修理支援システム1は、修理支援サーバ2と、故障情報管理サーバ(故障情報管理装置)3と、車両診断サーバ(部品劣化診断装置)4と、部品流通管理サーバ(部品流通管理装置)5と、中古車販売事業者Uの在庫管理装置6と、カーシェアリング運営事業者CSのスケジュール管理装置7と、車両販売店Dに設置された端末8と、車両整備工場Fに設置された端末9とを含む。これらの修理支援サーバ2、故障情報管理サーバ3、車両診断サーバ4、部品流通管理サーバ5、在庫管理装置6、スケジュール管理装置7および端末8,9は、例えばインターネット等のネットワークを介して相互に情報をやり取り可能である。
【0028】
修理支援サーバ2は、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むコンピュータであり、本実施形態では例えば自動車製造者により設置・管理される。修理支援サーバ2には、CPUやROM,RAMといったハードウエアと、予めインストールされた各種プログラムとの協働により、故障車両Vbの修理に関連した各種支援処理を実行する支援管理モジュール(支援管理装置)20が構築されている。更に、修理支援サーバ2は、故障車両Vbの修理の支援に必要な情報を複数のドナー車両Vdごとに格納したデータベースを記憶する記憶装置25を含む。当該データベースは、ドナー車両VdのIDに、車台番号あるいは車両識別番号等の車両情報や、当該ドナー車両Vdから提供され得る(取り外し可能な)部品のID、ドナー車両Vdの所有者のID、連絡先、住所または所在地といった情報を紐付けて格納するものであり、新たなドナー車両Vdが登録されるたびに更新されていく。
【0029】
また、修理支援サーバ2は、ドナー車両Vdの所有者(個人)や故障車両Vbのユーザが保有するスマートフォンやパーソナルコンピュータといったユーザ端末10と上記ネットワークを介して情報をやり取り可能である。本実施形態において、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、ドナー車両Vdの所有者(個人)に対して、当該ドナー車両Vdが使用される予定のない日である非稼働予定日の連絡要請を所定の間隔で送信する。ドナー車両Vdの所有者は、非稼働予定日の連絡要請を受けた際、あるいは使用予定が決まった際に、自己のドナー車両Vdの非稼働予定日を修理支援サーバ2に送信する。修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、ドナー車両Vdの所有者から送信された非稼働予定日に基づいて図2に示すような例えば1ヶ月単位の非稼働日情報を作成し、当該非稼働日情報をドナー車両VdのIDに紐付けて上記データベースに格納する。
【0030】
更に、各ドナー車両Vdの非稼働日情報には、図2に示すように、当該ドナー車両Vdが非稼働予定日に実際に非稼働となる確率を示す非稼働確率が含まれている。すなわち、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、例えば毎日の夜間等に各ドナー車両Vdに搭載された車載通信機から当該ドナー車両Vdの使用状況(走行の有無)を取得し、各ドナー車両Vdが非稼働予定日に実際に非稼働であったか否かを判定する。そして、支援管理モジュール20は、当該使用状況に基づいて各ドナー車両Vdの非稼働確率を導出し、非稼働日情報を更新していく。
【0031】
本実施形態において、非稼働確率は、10段階の整数により表され、支援管理モジュール20は、例えばドナー車両Vdが非稼働予定日に非稼働になっていれば非稼働確率を現在の値に保持する。また、支援管理モジュール20は、例えば非稼働予定日に稼働した日が10日のうち1日あった場合、非稼働確率を“1”だけ減らし、非稼働予定日に稼働した日が10日のうち2日以上あった場合、非稼働確率を“2”だけ減らす。更に、支援管理モジュール20は、例えば非稼働確率が10未満の整数であって、非稼働予定日に稼働した日が10日のうち1日もなかった場合、非稼働確率を“1”だけ増加させる。
【0032】
故障情報管理サーバ3は、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むコンピュータであり、本実施形態では例えば自動車製造者により設置・管理される。故障情報管理サーバ3には、CPUやROM,RAMといったハードウエアと、予めインストールされた各種プログラムとの協働により、当該自動車製造者により製造・販売されている車両で発生した故障(不具合)に応じた修理部品の情報を提供するための各種処理を実行する故障情報処理モジュール30が構築されている。更に、故障情報管理サーバ3は、複数のダイアグノーシスコードごとに故障情報を格納したデータベースを記憶する記憶装置35を含む。当該データベースは、複数のダイアグノーシスコードに、診断条件、異常状態、異常期間、不具合の具体的症状、点検部位、交換すべき部品のIDといった故障情報を紐付けて格納するものである。
【0033】
車両診断サーバ4は、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むコンピュータであり、本実施形態では例えば自動車製造者により設置・管理される。車両診断サーバ4には、CPUやROM,RAMといったハードウエアと、予めインストールされた各種プログラムとの協働により、当該自動車製造者により製造・販売されている車両および当該車両に搭載された部品の劣化度合を診断する劣化診断モジュール40が構築されている。劣化診断モジュール40は、ドナー車両Vdを含む多数の車両に搭載された車載通信機から当該車両の走行距離、エンジン回転数、負荷(トルク)、車速、ブレーキオン時間、操舵角といった使用状態情報を逐次取得し、各車両並び各車両に搭載されている部品の劣化度合を導出する。更に、車両診断サーバ4は、車両や各部品の劣化度合を複数の車両ごとに格納したデータベースを記憶する記憶装置45を含む。当該データベースは、車両の車台番号あるいは車両識別番号に劣化診断モジュール40により導出された当該車両や各部品の劣化度合を紐付けて格納するものである。劣化診断モジュール40は、車両や各部品の劣化度合を導出するたびに、当該データベースを更新する。
【0034】
部品流通管理サーバ5は、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むコンピュータであり、本実施形態では例えば自動車製造者により設置・管理される。部品流通管理サーバ5には、CPUやROM,RAMといったハードウエアと、予めインストールされた各種プログラムとの協働により、当該自動車製造者により製造・販売されている車両に搭載される部品の在庫や入荷状況、受注、発送等を管理する流通管理モジュール50が構築されている。更に、部品流通管理サーバ5は、多数の部品ごとに、在庫や入荷状況等を格納したデータベースを記憶する記憶装置55を含む。流通管理モジュール50は、部品の在庫状況等が変化するたびに、当該データベースを更新する。
【0035】
中古車販売事業者Uの在庫管理装置6は、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むコンピュータであり、当該中古車販売事業者Uが取り扱っている中古車の在庫状況等を管理するものである。また、在庫管理装置6は、中古車販売事業者Uが車両修理支援システム1に登録しているドナー車両Vdの非稼働予定日を修理支援サーバ2に定期的に送信する。修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、在庫管理装置6から送信された非稼働予定日に基づいて例えば1ヶ月単位の非稼働日情報を作成し、当該非稼働日情報を中古車販売事業者Uのドナー車両VdのIDに紐付けて上記データベースに格納する。
【0036】
カーシェアリング運営事業者CSのスケジュール管理装置7は、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むコンピュータであり、当該カーシェアリング運営事業者CSが取り扱っている車両の稼働状況等を管理するものである。また、スケジュール管理装置7は、カーシェアリング運営事業者CSが車両修理支援システム1に登録しているドナー車両Vdの非稼働予定日を修理支援サーバ2に定期的に送信する。修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、スケジュール管理装置7から送信された非稼働予定日に基づいて例えば1ヶ月単位の非稼働日情報を作成し、当該非稼働日情報をカーシェアリング運営事業者CSのドナー車両VdのIDに紐付けて上記データベースに格納する。
【0037】
車両販売店Dや車両整備工場Fの端末8,9は、何れもCPU,ROM,RAM、入出力装置等を含むコンピュータである。各端末8,9は、修理支援サーバ2等に加えて、ドナー車両Vdの所有者(個人、中古車販売事業者U、カーシェアリング運営事業者CS等)や故障車両Vbのユーザが保有するユーザ端末10と上記ネットワークを介して情報をやり取り可能である。
【0038】
続いて、図3から図6を参照しながら、車両修理支援システム1による故障車両Vbの修理の支援手順について説明する。
【0039】
図3に示すように、故障車両Vbのユーザから例えば車両販売店Dに修理依頼の連絡が入ると、当該車両販売店Dの担当者は、故障車両Vbのインストルメントパネルに表示されたダイアグノーシスコードや、不具合(故障)の具体的症状を当該故障車両Vbのユーザから聞き取る。また、当該担当者は、ユーザの予定や車両整備工場F(または車両販売店Dの整備施設)のスケジュールを踏まえて、故障車両Vbの修理予定日を決定すると共に、当該ユーザに対し、故障車両Vbが自走可能である場合、最寄りの車両整備工場Fまたは当該車両販売店Dへの入庫を依頼し、故障車両Vbが自走不能である場合には、現在位置での待機を依頼する。更に、車両販売店Dの担当者は、端末8から修理支援サーバ2にアクセスし、例えば所定のフォームに当該ユーザから聞き取ったダイアグノーシスコードや不具合の具体的症状といった不具合情報、修理予定日、ドナー車両Vdから部品を取り外す施工業者(車両整備工場F等)の所在地等を入力することにより、これらの情報を修理支援サーバ2に送信する。
【0040】
不具合情報等が修理支援サーバ2に送信されると、当該修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、図4に示すように、車両販売店Dからの不具合情報、修理予定日および施工業者の所在地を取得する(ステップS100)。更に、支援管理モジュール20は、故障車両Vbで発生した故障が部品交換により解消されるか否かを判別するために、取得した不具合情報を故障情報管理サーバ3に送信する(ステップS110)。故障情報管理サーバ3は、修理支援サーバ2からの不具合情報(ダイアグノーシスコード)と、記憶装置35に記憶された故障情報とに基づいて、部品交換による対応の可否および故障車両Vbの修理に必要な1つまたは複数の修理部品Pu(図3参照)のIDを取得する。更に、故障情報管理サーバ3は、部品交換による対応の可否および修理部品PuのIDとを示す情報を修理支援サーバ2に送信し、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、故障情報管理サーバ3からの情報に基づいて、部品交換による対応の可否および修理部品Puを特定する(ステップS110)。
【0041】
修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、故障情報管理サーバ3からの情報に基づいて故障車両Vbで発生した故障が部品交換により解消されると判定した場合(ステップS120:YES)、ステップS110にて特定した修理部品Puと同一若しくは互換性のある部品(以下、「取り寄せ部品」という。)Poの取り寄せを依頼してからの納期、すなわち車両販売店Dまたは車両整備工場Fへの取り寄せ部品Poの到着予定日を部品流通管理サーバ5に問い合わせ、当該部品流通管理サーバ5から当該到着予定日を取得する(ステップS130)。本実施形態において、取り寄せ部品Poは、修理部品Puを提供したドナー車両Vdに当該修理部品Puの代わりに装着されるものである。更に、支援管理モジュール20は、ステップS110にて特定した1つまたは複数の修理部品PuのIDと、記憶装置25に記憶された情報とに基づいて、当該修理部品Puを搭載したドナー車両Vdを抽出する(ステップS140)。ここで、ステップS140にて抽出されるドナー車両Vdは、部品の共通化が進められていることから、故障車両Vbと同一車種には限られず、故障車両Vbとは異なる車種を含むこともある。
【0042】
次いで、支援管理モジュール20は、記憶装置25からステップS140にて抽出したドナー車両Vdの非稼働日情報を取得し、当該非稼働日情報と、ステップS100にて取得した修理予定日と、ステップS130にて取得した取り寄せ部品Poの到着予定日とに基づいて、ステップS140にて抽出したドナー車両Vdの絞り込みを行う(ステップS150)。ステップS150において、支援管理モジュール20は、まず、ステップS140にて抽出したドナー車両Vdの中から、上記非稼働確率が予め定められた閾値未満であるものを除外する。本実施形態において、修理予定日が当日である場合には、非稼働確率の高いドナー車両Vdを選択するために、当該閾値として、修理予定日が翌日以降である場合に比べて大きい値が用いられる。
【0043】
また、ステップS150において、支援管理モジュール20は、修理予定日が当日である場合、ステップS140にて抽出したドナー車両Vdの中から、修理予定日が非稼働日になっていないものを除外し、修理予定日が翌日以降である場合、ステップS140にて抽出したドナー車両Vdの中から、例えば修理予定日およびその前日が非稼働日になっていないものを除外する。更に、ステップS150において、支援管理モジュール20は、ステップS140にて抽出したドナー車両Vdの中から、例えばステップS120にて取得した取り寄せ部品Poの到着予定日およびその翌日が非稼働日になっていないものを除外する。
【0044】
ステップS150の処理の後、支援管理モジュール20は、記憶装置25に格納されたデータベースからステップS150にて絞り込まれたドナー車両Vdの所有者の住所または所在地を取得すると共に、当該所有者の住所または所在地とステップS100にて取得した施工業者の所在地との地図上での距離を算出する(ステップS160)。更に、ステップS160において、支援管理モジュール20は、ステップS150にて絞り込まれたドナー車両Vdの中から、算出した距離が予め定められた閾値以下であるものを候補車両として選択する。そして、支援管理モジュール20は、ステップS160にて少なくとも1つのドナー車両Vdを選択した場合(ステップS170:YES)、選択したドナー車両Vdに関連した情報を上記車両販売店Dの端末8に送信し(ステップS180)、図4の一連の処理を終了させる。
【0045】
ステップS180において修理支援サーバ2から端末8に送信される情報には、ドナー車両VdのID、当該ドナー車両Vdの所有者、連絡先、住所または所在地、取り寄せ部品Poの到着予定日、ドナー車両Vdの非稼働確率等が含まれる。また、本実施形態において、ステップS160にて複数のドナー車両Vdが選択された場合、ステップS180にて複数のドナー車両Vdに関連した情報が非稼働確率あるいはステップS160にて算出された距離等に基づいてランク付けされた形で端末8に送信される。
【0046】
一方、ステップS120にて故障情報管理サーバ3からの情報に基づいて故障車両Vbで発生した故障が部品交換により解消されないと判定した場合(ステップS120:NO)、支援管理モジュール20は、故障車両Vbの故障に部品交換では対応し得ない旨を車両販売店Dの端末8に通知し(ステップS190)、図4の一連の処理を終了させる。この場合、車両販売店Dの担当者は、故障車両Vbを自走またはレッカー移動により車両整備工場Fに入庫させ、当該車両整備工場Fにおいて、必要な検査を経て故障車両Vbの修理作業が行われる。
【0047】
また、図4の一連の処理により条件を満たすドナー車両Vdが見つからなかった場合(ステップS170:NO)、支援管理モジュール20は、故障車両Vbの故障に対応し得ない旨を車両販売店Dの端末8に通知し(ステップS190)、図4の一連の処理を終了させる。この場合、支援管理モジュール20は、ステップS190において取り寄せ部品Poの到着予定日を車両販売店Dの端末8に通知し、車両販売店Dの担当者は、取り寄せ部品Poの到着予定日を故障車両Vbのユーザに伝えて修理の日程を調整するか、あるいはドナー車両Vdの探索条件を適宜変更してドナー車両Vdの再探索を修理支援サーバ2に要求する。
【0048】
図5は、修理支援サーバ2から車両販売店Dの端末8にドナー車両Vdに関連した情報が送信された後に車両販売店Dや車両整備工場Fで行われる作業の流れを示すフローチャートである。修理支援サーバ2からのドナー車両Vdに関連した情報が端末8により受信されると、車両販売店Dの担当者は、取得した情報に基づいて車両整備工場Fとの間で適宜調整を行った上で、ドナー車両Vdの所有者(個人)のユーザ端末10あるいは中古車販売事業者U等の端末に修理部品Puの提供依頼を送信する(ステップS200)。本実施形態において、ステップS200における修理部品Puの提供依頼には、修理予定日等に応じた車両販売店D側の希望部品取り外し日、取り寄せ部品Poの予定装着日、ドナー車両Vdの移動の要否等が含まれる。
【0049】
ドナー車両Vdの移動の要否は、修理部品Puの取り外しやすさに応じて定められ、本実施形態では、大がかりな作業を施すこと無くドナー車両Vdから修理部品Puを取り外すことができる場合、車両整備工場F等(施工業者)から作業者が当該ドナー車両Vdの所有者の自宅等に出向いて修理部品Puの取り外しを行う。また、ドナー車両Vdからの修理部品Puの取り外しが煩雑である場合には、修理部品Puの提供依頼において、所有者に車両整備工場F等へのドナー車両Vdの入庫が依頼される。なお、ステップS200における修理部品Puの提供依頼は、電話を介して行われてもよい。更に、修理支援サーバ2により複数のドナー車両Vd(候補車両)が提示された場合、ステップS200において複数の所有者に一括して(同時に)修理部品Puの提供依頼が通知されてもよく、修理支援サーバ2により設定されたランク順に当該提供依頼が通知されてもよい。
【0050】
修理部品Puの提供依頼の通知後、車両販売店Dの担当者は、所有者からの回答を受領すると共に必要な調整を行って、修理部品Puの提供元となるドナー車両Vdを決定する(ステップS210)。ドナー車両Vdが決定されると(ステップS220:YES)、当該担当者は、ドナー車両Vdの所有者との間で修理部品Puの取り外し場所および取り外し日時並びに取り寄せ部品Poの装着場所および装着日時を正式に決定すると共に、故障車両Vbのユーザとの間で修理場所および修理日時を正式に決定する(ステップS230)。故障車両Vbの修理場所は、基本的には、車両整備工場Fまたは車両販売店Dの整備施設となるが、故障車両Vbが自走不能であって当該故障車両Vbへの修理部品Puの装着が容易である場合には、故障車両Vbのユーザの自宅等あるいは故障車両Vbの停車位置(駐車場、路肩等)が修理場所とされてもよい。
【0051】
また、修理部品Puの取り外し日時が到来すると、事前に定められた取り外し場所でドナー車両Vdから修理部品Puが取り外される(ステップS240)。更に、故障車両Vbの修理日時が到来すると、事前に定められた修理場所でドナー車両Vdから取り外された修理部品Puが故障車両Vbに装着される(ステップS250)。修理部品Puの装着により故障(不具合)が解消されて故障車両Vbの修理が完了すると、車両販売店Dの端末8あるいは車両整備工場Fの端末9から、車台番号あるいは車両識別番号といった故障車両Vbの車両情報や、修理費用すなわち工賃および部品代(取り寄せ部品Poの代金)の通知を含む修理完了通知が修理支援サーバ2(および車両販売店D)に送信され(ステップS260)、図5の一連の処理が完了する。
【0052】
一方、修理支援サーバ2から情報に基づいて修理部品Puの提供元となるドナー車両Vdを決定し得なかった場合(ステップS220:NO)、車両販売店Dの担当者は、取り寄せ部品Poの到着予定日を故障車両Vbのユーザに伝えて修理の日程を調整するか、あるいはドナー車両Vdの探索条件を適宜変更してドナー車両Vdの再探索を修理支援サーバ2に要求する。また、修理部品Puを提供したドナー車両Vdには、上記装着日時に事前に定められた装着場所で別途取り寄せられた取り寄せ部品Poが装着されることになる(図3参照)。
【0053】
図6に示すように、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、車両販売店Dの端末8あるいは車両整備工場Fの端末9からの修理完了通知を受信すると、故障車両Vbの車両情報や修理費用を取得する(ステップS300)。次いで、支援管理モジュール20は、ステップS300にて取得した修理費用に、修理支援サーバ2の運営費(インセンティブ、図3における星印参照)と、ドナー車両Vdの所有者へのインセンティブのベース値(図3における星印参照)に相当する金額とを加算して故障車両Vbのユーザへの修理の請求額を算出する(ステップS310)。
【0054】
更に、支援管理モジュール20は、ステップS300にて取得した故障車両Vbの車両情報と記憶装置25に記憶された情報とに基づいて、当該故障車両Vbが車両修理支援システム1にドナー車両Vdとして登録されているか否かを判定する(ステップS320)。支援管理モジュール20は、故障車両Vbが車両修理支援システム1にドナー車両Vdとして登録されていると判定した場合(ステップS320:YES)、ステップS310にて算出した請求額を予め定められた金額だけ減額する(ステップS330)。また、故障車両Vbが車両修理支援システム1にドナー車両Vdとして登録されていないと判定した場合(ステップS320:NO)、支援管理モジュール20は、ステップS330の処理をスキップし、ステップS310にて算出した請求額を維持する。
【0055】
ステップS310またはS320の処理の後、支援管理モジュール20は、ドナー車両Vdから取り外された修理部品Puの劣化度合を取得するために、当該ドナー車両VdのIDおよび修理部品PuのIDを車両診断サーバ4に送信する(ステップS340)。車両診断サーバ4は、受信したドナー車両Vdおよび修理部品PuのIDに対応した劣化度合を記憶装置45に記憶されたデータベースから取得し、修理支援サーバ2に送信する(ステップS340)。支援管理モジュール20は、ステップS340にて車両診断サーバ4から修理部品Puの劣化度合を取得すると、当該劣化度合が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する(ステップS350)。
【0056】
修理部品Puの劣化度合が上記閾値以下であると判定した場合(ステップS350:YES)、支援管理モジュール20は、修理部品Puの状態が極めて良好であるとみなし、上記ベース値に予め定められた金額に相当する値を加算することによりドナー車両Vdの所有者へのインセンティブを高くする(ステップS360)。また、支援管理モジュール20は、修理部品Puの劣化度合が上記閾値を上回っていると判定した場合(ステップS350:NO)、上記ベース値に予め定められた金額に相当する値を加算することによりドナー車両Vdの所有者へのインセンティブを高くする(ステップS360)。そして、支援管理モジュール20は、ステップS310またはS360にて設定した請求額を車両販売店Dの端末8に送信すると共に。修理部品Puの提供に応じて付与されるインセンティブの金額をドナー車両Vdの所有者に通知し(ステップS370)、図6の精算処理を終了させる。
【0057】
修理支援サーバ2による精算処理の完了後、車両販売店Dは、修理支援サーバ2から送信された請求額を故障車両Vbのユーザに請求する。当該ユーザから請求額が入金されると、入金された金銭のうちの上記修理費用に相当する分が車両販売店Dおよび/または車両整備工場Fへの対価となり、残余が修理支援サーバ2の運営費に充当される。また、ドナー車両Vdの所有者へのインセンティブは、金銭であってもよく、車両販売店Dや車両整備工場F等における点検整備等の費用や関連施設での支払いに充当可能なポイントがインセンティブとして付与されもよい。
【0058】
以上説明したように、車両修理支援システム1は、故障車両Vbの修理に際して、主として部品の調達を支援するものであり、支援管理装置としての支援管理モジュール20および記憶装置25を有する修理支援サーバ2と、依頼通知装置としての端末8とを含む。修理支援サーバ2の記憶装置25は、予め登録された複数のドナー車両VdのIDと、ドナー車両Vdに搭載された部品(ID)とを紐付けて記憶する。また、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、端末8から送信された故障車両Vbの不具合情報に基づいて当該故障車両Vbの修理に必要な修理部品Puを特定すると共に、記憶装置25に記憶された情報に基づいて複数のドナー車両Vdの中から修理部品Puを搭載したドナー車両Vdを抽出する(図4のステップS100-S160)。更に、依頼通知装置としての端末8は、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20により抽出されたドナー車両Vdの所有者に修理部品Puの提供依頼を通知する(図5のステップS200)。
【0059】
これにより、ドナー車両Vdの所有者によって修理部品Puの提供依頼が受諾されれば、当該ドナー車両Vdから修理部品Puを取り外して故障車両Vbに装着し、当該故障車両Vbの故障を解消することができる。この結果、車両販売店Dや車両整備工場F等における部品のストックを削減しつつ、故障車両Vbの修理に必要な修理部品Puを速やかに調達することが可能になる。更に、車両修理支援システム1では、修理部品Puを速やかに調達することができるので、故障が発生した当日に故障車両Vbの修理を完了させることも可能となり、故障の発生から故障車両Vbの修理が完了するまでの時間を大幅に短縮化して当該故障車両Vbのダウンタイムを良好に低減することができる。
【0060】
また、車両修理支援システム1において、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、修理部品Puの提供依頼を受諾した所有者にインセンティブを付与する(図6のステップS310,S350-S360)。これにより、ドナー車両Vdの所有者に修理部品Puの提供依頼の承諾を促すことができるので、修理部品Puをより速やかに調達することが可能となる。
【0061】
更に、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、ドナー車両Vdから提供された修理部品Puの劣化度合が小さい場合、当該劣化度合が大きい場合に比べて所有者に付与されるインセンティブを高くする(図6のステップS340-S360)。これにより、ドナー車両Vdが比較的新しいものであっても、当該ドナー車両Vdの所有者が修理部品Puの提供に抵抗感をもつことを抑制することができるので、程度のよい修理部品Puの調達が可能となる。
【0062】
また、車両修理支援システム1は、ドナー車両Vdから少なくとも走行距離を含む使用状態情報を取得すると共に当該使用状態情報に基づいてドナー車両Vdに搭載された部品の劣化度合を導出する部品劣化診断装置としての車両診断サーバ4を含む。更に、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、当該車両診断サーバ4から修理部品Puの劣化度合を取得し、取得した劣化度合に基づいて所有者に付与されるインセンティブを定める(図6のS340-S360)。これにより、ドナー車両Vdに搭載された部品の劣化度合を適正に評価すると共に、ドナー車両Vdからの修理部品Puの調達の信頼性を良好に確保することが可能となる。
【0063】
なお、車両修理支援システム1において、図4のステップS160の処理の後、選択されたドナー車両Vdの修理部品Puについて図6のステップS340-S360と同様の処理が実行されてもよく、修理部品Puの提供依頼に際して、修理部品Puの劣化度合に基づいて定められたインセンティブがドナー車両Vdの所有者に通知されてもよい。これにより、比較的新しいドナー車両Vdの所有者に、修理部品Puの提供によって高いインセンティブが得られることを知らせて、修理部品Puの提供依頼の承諾を促すことが可能となる。
【0064】
更に、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、故障車両Vbのユーザへの修理の請求額を算出すると共に、当該故障車両Vbがドナー車両Vdとして登録されている場合、ドナー車両Vdとして登録されていない場合に比べて当該請求額を減額する請求額算出装置(図6のステップS300-S330)として機能する。このように、ドナー車両Vdの所有者に故障発生時の費用負担の軽減というメリットを与えることで、ドナー車両Vdの登録をより促進させて当該ドナー車両Vdの登録台数を増やすことが可能となる。
【0065】
また、車両修理支援システム1は、ダイアグノーシスコード等を含む不具合情報に応じた修理部品Puの情報を提供する故障情報管理サーバ3を含み、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、故障車両Vbの修理に必要な修理部品Puを故障情報管理サーバ3に照会する(図4のステップS110)。これにより、故障車両Vbの修理に必要な修理部品Puを容易かつ迅速に特定することが可能となる。
【0066】
更に、車両修理支援システム1では、故障車両Vbの不具合情報が、当該故障車両Vbの修理依頼を受け付けた事業者としての車両販売店Dに設置された端末8から修理支援サーバ2(支援管理モジュール20)に送信され、当該端末8がドナー車両Vdの所有者に修理部品Puの提供依頼を通知する依頼通知装置として機能する。これにより、ドナー車両Vdの所有者と、故障車両Vbの修理の窓口となる車両販売店Dとの間で作業日程等を直接取り決めることができるので、故障車両Vbの修理依頼から修理完了までの時間をより短くすることが可能となる。
【0067】
ただし、車両修理支援システム1において、修理部品Puの提供依頼は、依頼通知装置としての車両整備工場Fの端末9からドナー車両Vdの所有者に通知されてもよい。更に、修理部品Puの提供依頼は、図4のステップS170の処理の後、依頼通知装置としての支援管理モジュール20からドナー車両Vdの所有者に通知されてもよい。すなわち、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、支援管理装置および依頼通知装置の双方として機能するものであってもよい。
【0068】
また、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、故障車両Vbの修理予定日と、ドナー車両Vdの非稼働予定日を示す非稼働日情報とに基づいて、修理部品Puを搭載したドナー車両Vdを複数のドナー車両Vdを絞り込む(図4のステップS150)。これにより、稼働を理由に修理予定日までに修理部品Puを提供し得ないドナー車両Vdの所有者に当該修理部品Puの提供依頼が通知されてしまうのを抑制し、修理部品Puの提供依頼が受諾される蓋然性をより高くすることが可能となる。
【0069】
更に、車両修理支援システム1において、非稼働日情報は、ドナー車両Vdの所有者から提供される非稼働予定日とドナー車両Vdの使用状況とに基づいて設定されるドナー車両Vdが非稼働予定日に非稼働となる非稼働確率を含む。また、修理支援サーバ2の記憶装置25は、非稼働日情報をドナー車両VdのIDに紐付けて記憶する。更に、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、当該稼働日情報に基づいて、修理部品Puを搭載したドナー車両Vdの中から非稼働確率が高いドナー車両Vdを優先して抽出する(図4のステップS150)。これにより、稼働を理由に修理予定日までに修理部品Puを提供し得ないドナー車両Vdの所有者に修理部品Puの提供依頼が通知されてしまうのを極めて良好に抑制することが可能となる。
【0070】
また、修理支援サーバ2の支援管理モジュール20は、少なくともドナー車両Vdの位置(所有者の住所または所在地等)とドナー車両Vdから修理部品Puを取り外す施工業者(車両整備工場F等)の所在地との距離を取得し、修理部品Puを搭載したドナー車両Vdの中から当該距離が短いドナー車両Vdを優先して抽出(選択)する(図4のステップS160)。これにより、故障車両Vbの修理依頼から修理部品Puを取得するまでの時間をより短縮化すると共に、部品の調達に要する物流コストを低減することが可能となる。
【0071】
更に、車両修理支援システム1では、図3に示すように、ドナー車両Vdから取り外された修理部品Puが故障車両Vbに装着され、ドナー車両Vdには、別途取り寄せられた取り寄せ部品Poが装着される。これにより、修理部品Puの提供に応じて、新たな部品である取り寄せ部品Poをドナー車両Vdの所有者にインセンティブとして供与することができる。ただし、図7に示すように、ドナー車両Vdから取り外された修理部品Puは、故障車両Vbに一時的に装着された後、ドナー車両Vdに戻されてもよく、その後、故障車両Vbには、別途取り寄せられた取り寄せ部品Poが装着されてもよい。これにより、当初から装着された部品(修理部品Pu)の継続使用を希望するドナー車両Vdの所有者の意向に沿うことが可能となる。また、図8に示すように、ドナー車両Vdから取り外された修理部品Puが故障車両Vbに一時的に装着された後、ドナー車両Vdおよび故障車両Vbの各々に別途取り寄せられた取り寄せ部品Poが装着されてもよく、故障車両Vbから取り外された修理部品Puは、ドナー部品として適所にストックされてもよい。
【0072】
そして、車両修理支援システム1において、複数のドナー車両Vdは、自家用車、中古車、カーシェアリング車両、展示車およびレンタカーの少なくとも何れかを含む。これにより、非稼働の自家用車やレンタカー、カーシェアリング車両、中古車等の遊休車両等に搭載された部品を有効に活用して、故障車両Vbを速やかに修理することが可能となるので、当該故障車両Vbのダウンタイムを良好に低減することができる。
【0073】
なお、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の発明は、車両の製造販売業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 車両修理支援システム、2 修理支援サーバ、20 支援管理モジュール(支援管理装置)、25 記憶装置、3 故障情報管理サーバ(故障情報管理装置)、30 故障情報処理モジュール、35 記憶装置、4 車両診断サーバ(部品劣化診断装置)、40 劣化診断モジュール、45 記憶装置、5 部品流通管理サーバ(部品流通管理装置)、50 流通管理モジュール、55 記憶装置、6 在庫管理装置、7 スケジュール管理装置、8,9 端末、10 ユーザ端末、CS カーシェアリング運営事業者、D 車両販売店、F 車両整備工場、Pu 修理部品、Po 取り寄せ部品、U 中古車販売事業者、Vb 故障車両、Vd ドナー車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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