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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】スイッチの駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241119BHJP
   H03K 17/0812 20060101ALI20241119BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20241119BHJP
   H03K 17/605 20060101ALI20241119BHJP
   H03K 17/64 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/0812
H03K17/08 C
H03K17/605
H03K17/64
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021162232
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051502
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】本橋 勇人
(72)【発明者】
【氏名】林 慶徳
(72)【発明者】
【氏名】朝子 陽介
(72)【発明者】
【氏名】西端 幸一
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161856(JP,A)
【文献】特開2011-055470(JP,A)
【文献】特開2020-120244(JP,A)
【文献】特開2014-155257(JP,A)
【文献】特開2018-157712(JP,A)
【文献】特開2017-158319(JP,A)
【文献】特開2010-142074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数の上アームスイッチ(SWAH,SWBH)と、並列接続された複数の下アームスイッチ(SWAL,SWBL)とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にするスイッチの駆動装置において、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、一方を自アームスイッチとし、他方を対向アームスイッチとする場合、前記各対向アームスイッチのうち、オン状態からオフ状態への切り替えが最も遅いスイッチである最遅延スイッチが、オフ状態に切り替えられたか否かを判定するオフ判定部(43,73)と、
前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたと判定された場合、オフ状態にされている前記各自アームスイッチをオン状態に切り替えるオン操作部(41,42,71,72,SC,SD1,SD2,Dr)と、
前記各対向アームスイッチがオフ操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が0に低下するまでの期間の途中における同一タイミングにおいて、前記各対向アームスイッチのゲートの充放電経路の電圧を検出する検出部(LAH,LBH,43,LAL,LBL,73)と、
前記各対向アームスイッチのうち、検出された電圧が最も高い電圧に対応する対向アームスイッチを前記最遅延スイッチとして特定する特定部(43,73)と、
を備え、
前記オフ判定部は、特定された前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたか否かを判定する、スイッチの駆動装置。
【請求項2】
並列接続された複数の上アームスイッチ(SWAH,SWBH)と、並列接続された複数の下アームスイッチ(SWAL,SWBL)とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にするスイッチの駆動装置において、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、一方を自アームスイッチとし、他方を対向アームスイッチとする場合、前記各対向アームスイッチのうち、オン状態からオフ状態への切り替えが最も遅いスイッチである最遅延スイッチが、オフ状態に切り替えられたか否かを判定するオフ判定部(43,73)と、
前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたと判定された場合、オフ状態にされている前記各自アームスイッチをオン状態に切り替えるオン操作部(41,42,71,72,SC,SD1,SD2,Dr)と、
前記各対向アームスイッチがオン操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が電源電圧に上昇するまでの期間の途中における同一タイミングにおいて、前記各対向アームスイッチのゲートの充放電経路の電圧を検出する検出部(LAH,LBH,43,LAL,LBL,73)と、
記各対向アームスイッチのうち、検出された電圧が最も低い電圧に対応する対向アームスイッチを前記最遅延スイッチとして特定する特定部(43,73)と、
を備え、
前記オフ判定部は、特定された前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたか否かを判定する、スイッチの駆動装置。
【請求項3】
並列接続された複数の上アームスイッチ(SWAH,SWBH)と、並列接続された複数の下アームスイッチ(SWAL,SWBL)とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にするスイッチの駆動装置において、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、一方を自アームスイッチとし、他方を対向アームスイッチとする場合、前記各対向アームスイッチのうち、オン状態からオフ状態への切り替えが最も遅いスイッチである最遅延スイッチが、オフ状態に切り替えられたか否かを判定するオフ判定部(43,73)と、
前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたと判定された場合、オフ状態にされている前記各自アームスイッチをオン状態に切り替えるオン操作部(41,42,71,72,SC,SD1,SD2,Dr)と、
前記各対向アームスイッチがオフ操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が0に低下するまでの期間の途中、又は前記各対向アームスイッチがオン操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が電源電圧に上昇するまでの期間の途中において、前記各対向アームスイッチのゲートの充放電経路の電圧変化速度を検出する検出部(LAH,LBH,43,LAL,LBL,73)と、
記各対向アームスイッチのうち、検出された変化速度が最も低い変化速度に対応する対向アームスイッチを前記最遅延スイッチとして特定する特定部(43,73)と、
を備え、
前記オフ判定部は、特定された前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたか否かを判定する、スイッチの駆動装置。
【請求項4】
並列接続された複数の上アームスイッチ(SWAH,SWBH)と、並列接続された複数の下アームスイッチ(SWAL,SWBL)とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にするスイッチの駆動装置において、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチは、自身に流れる電流と相関を有する微小電流が流れるセンス端子(StAH,StBH,StAL,StBL)を有し、
前記センス端子に接続されたセンス抵抗体(35AH,35BH,35AL,35BL)と、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、一方を自アームスイッチとし、他方を対向アームスイッチとする場合、前記各対向アームスイッチのうち、オン状態からオフ状態への切り替えが最も遅いスイッチである最遅延スイッチが、オフ状態に切り替えられたか否かを判定するオフ判定部(43,73)と、
前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたと判定された場合、オフ状態にされている前記各自アームスイッチをオン状態に切り替えるオン操作部(41,42,71,72,SC,SD1,SD2,Dr)と、
前記各対向アームスイッチがオフ操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が0に低下するまでの期間の途中における同一タイミングにおいて、前記各対向アームスイッチに対応する、前記センス抵抗体の両端の電位差であるセンス電圧を検出する検出部(43,73)と、
記各対向アームスイッチのうち、検出されたセンス電圧が最も高いセンス電圧に対応する対向アームスイッチを前記最遅延スイッチとして特定する特定部(43,73)と、
を備え、
前記オフ判定部は、特定された前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたか否かを判定する、スイッチの駆動装置。
【請求項5】
並列接続された複数の上アームスイッチ(SWAH,SWBH)と、並列接続された複数の下アームスイッチ(SWAL,SWBL)とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にするスイッチの駆動装置において、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチは、自身に流れる電流と相関を有する微小電流が流れるセンス端子(StAH,StBH,StAL,StBL)を有し、
前記センス端子に接続されたセンス抵抗体(35AH,35BH,35AL,35BL)と、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、一方を自アームスイッチとし、他方を対向アームスイッチとする場合、前記各対向アームスイッチのうち、オン状態からオフ状態への切り替えが最も遅いスイッチである最遅延スイッチが、オフ状態に切り替えられたか否かを判定するオフ判定部(43,73)と、
前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたと判定された場合、オフ状態にされている前記各自アームスイッチをオン状態に切り替えるオン操作部(41,42,71,72,SC,SD1,SD2,Dr)と、
前記各対向アームスイッチがオン操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が電源電圧に上昇するまでの期間の途中における同一タイミングにおいて、前記各対向アームスイッチに対応する、前記センス抵抗体の両端の電位差であるセンス電圧を検出する検出部(43,73)と、
記各対向アームスイッチのうち、検出されたセンス電圧が最も低いセンス電圧に対応する対向アームスイッチを前記最遅延スイッチとして特定する特定部(43,73)と、
を備え、
前記オフ判定部は、特定された前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたか否かを判定する、スイッチの駆動装置。
【請求項6】
並列接続された複数の上アームスイッチ(SWAH,SWBH)と、並列接続された複数の下アームスイッチ(SWAL,SWBL)とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にするスイッチの駆動装置において、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチは、自身に流れる電流と相関を有する微小電流が流れるセンス端子(StAH,StBH,StAL,StBL)を有し、
前記センス端子に接続されたセンス抵抗体(35AH,35BH,35AL,35BL)と、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、一方を自アームスイッチとし、他方を対向アームスイッチとする場合、前記各対向アームスイッチのうち、オン状態からオフ状態への切り替えが最も遅いスイッチである最遅延スイッチが、オフ状態に切り替えられたか否かを判定するオフ判定部(43,73)と、
前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたと判定された場合、オフ状態にされている前記各自アームスイッチをオン状態に切り替えるオン操作部(41,42,71,72,SC,SD1,SD2,Dr)と、
前記各対向アームスイッチがオフ操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が0に低下するまでの期間の途中、又は前記各対向アームスイッチがオン操作に切り替えられてから前記各対向アームスイッチのゲート電圧が電源電圧に上昇するまでの期間の途中において、前記各対向アームスイッチに対応する、前記センス抵抗体の両端の電位差であるセンス電圧の変化速度を検出する検出部(43,73)と、
前記各対向アームスイッチのうち、検出した変化速度が最も低い電圧に対応する対向アームスイッチを前記最遅延スイッチとして特定する特定部(43,73)と、
を備え、
前記オフ判定部は、特定された前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたか否かを判定する、スイッチの駆動装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記各対向アームスイッチのうち、前記最遅延スイッチのみに対応して設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載のスイッチの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置としては、上アームスイッチと下アームスイッチとを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にする装置が知られている。
【0003】
ここで、上,下アームスイッチのうち、オン状態に切り替えられようとしているスイッチを自アームスイッチとし、残りのスイッチを対向アームスイッチとする。デッドタイムを短縮するには、対向アームスイッチがオフ状態に切り替えられたことを迅速に把握して自アームスイッチがオン状態に切り替えられる必要がある。特許文献1には、自アームスイッチのゲート駆動回路に、対向アームスイッチのスイッチング状態を事前に通知する信号が入力される技術が記載されている。ゲート駆動回路は、入力された情報に基づいて対向アームスイッチがオフ状態であると判定した場合、自アームスイッチをオン状態に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-96444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動装置としては、並列接続された複数の上アームスイッチと、並列接続された複数の下アームスイッチとを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にする装置も知られている。ここで、スイッチの特性値のばらつきに起因して、並列接続された各対向アームスイッチのオン状態からオフ状態への切り替えタイミングにばらつきが発生し得る。この場合、各対向アームスイッチのうち、例えば最も早くオフ状態に切り替えられる対向アームスイッチがオフ状態に切り替えることをもって各自アームスイッチをオン状態に切り替えてしまうと、上下アーム短絡が発生し得る。
【0006】
本発明は、上下アーム短絡の発生を抑制しつつ、デッドタイムを短縮できるスイッチの駆動装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、並列接続された複数の上アームスイッチと、並列接続された複数の下アームスイッチとを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態にするスイッチの駆動装置において、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、一方を自アームスイッチとし、他方を対向アームスイッチとする場合、前記各対向アームスイッチのうち、オン状態からオフ状態への切り替えが最も遅いスイッチである最遅延スイッチが、オフ状態に切り替えられたか否かを判定するオフ判定部と、
前記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたと判定された場合、オフ状態にされている前記各自アームスイッチをオン状態に切り替えるオン操作部と、
を備える。
【0008】
本発明では、並列接続された各自アームスイッチのオン状態への切り替えに、並列接続された各対向アームスイッチのうち、上記最遅延スイッチがオフ状態に切り替えられたとの判定結果が用いられる。このため、上下アーム短絡の発生を的確に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図2】ドライブIC及びドライブIC周辺の回路を示す図。
図3】駆動信号及びゲート電圧の推移を示すタイムチャート。
図4】各スイッチの特性値とスイッチング速度との関係を示す図。
図5】上,下アーム駆動信号等の推移を示すタイムチャート。
図6】第2実施形態に係る駆動信号及びゲート電圧の推移を示すタイムチャート。
図7】第2実施形態の変形例に係る駆動信号及びゲート電圧の推移を示すタイムチャート。
図8】第2実施形態の変形例に係る駆動信号及びゲート電圧の推移を示すタイムチャート。
図9】第2実施形態の変形例に係る駆動信号及びゲート電圧の推移を示すタイムチャート。
図10】第3実施形態に係るドライブIC及びドライブIC周辺の回路を示す図。
図11】駆動信号及びセンス電圧の推移を示すタイムチャート。
図12】第3実施形態の変形例に係る駆動信号及びセンス電圧の推移を示すタイムチャート。
図13】第4実施形態に係るドライブIC及びドライブIC周辺の回路を示す図。
図14】制御基板に対する半導体モジュールの取り付け態様を示す図。
図15】半導体モジュールの斜視図。
図16】第5実施形態に係るドライブIC及びドライブIC周辺の回路を示す図。
図17】コンデンサの有無がスイッチング速度に及ぼす影響を示す図。
図18】第6実施形態に係るドライブIC及びドライブIC周辺の回路を示す図。
図19】第1,第2放電スイッチの駆動状態の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る駆動装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の駆動装置が備えられる制御システムは、移動体、ロボット(例えば産業用ロボット)、発電機又はエレベータ等に適用することができる。移動体は、例えば、自動車、航空機、船舶又は鉄道車両である。
【0011】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10と、インバータ20と、直流電源21とを備えている。本実施形態において、回転電機10は、星形結線された3相の巻線11を備えている。回転電機10は、例えば同期機である。なお、制御システムが自動車に適用される場合、回転電機10は、自動車の駆動輪に一体に設けられるインホイールモータ、又は自動車の車体に備えられるオンボードモータであってもよいし、インバータ20及び図示しない変速機と一体化されていてもよい。
【0012】
回転電機10は、インバータ20を介して、直流電源21に接続されている。直流電源21は、例えば2次電池である。インバータ20は、平滑コンデンサ22を備えている。なお、平滑コンデンサ22は、インバータ20の外部に設けられていてもよい。
【0013】
インバータ20は、3相分の上,下アームスイッチを備えている。上,下アームのそれぞれは、並列接続された2つの半導体パワー素子で構成されている。上アーム側のスイッチは、第1上アームスイッチSWAH及び第2上アームスイッチSWBHである。下アーム側のスイッチは、第1下アームスイッチSWAL及び第2下アームスイッチSWBLである。
【0014】
本実施形態において、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、具体的にはSiのIGBTである。このため、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLにおいて、高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。本実施形態において、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLは、同じ仕様のスイッチである。このため、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLは、スレッショルド電圧Vthの設計値が同じ値であり、ゲート電荷容量Qgの設計値が同じ値である。
【0015】
なお、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLは、例えば、ボディダイオードを有するNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLにおいて、高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。
【0016】
各相において、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHの高電位側端子には、平滑コンデンサ22の第1端が接続されている。各相において、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHの低電位側端子には、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLの高電位側端子が接続されている。各相において、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLの低電位側端子には、平滑コンデンサ22の第2端が接続されている。各相において、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHの低電位側端子と、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLの高電位側端子とには、回転電機10の巻線11の第1端が接続されている。各相の巻線11の第2端は、中性点で接続されている。
【0017】
制御システムは、制御基板25、マイコン30、及び上,下アームドライブIC40,70を備えている。マイコン30は、回転電機10の制御量を指令値に制御すべく、インバータ20の各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLのスイッチング制御を行う。制御量は、例えばトルクである。マイコン30は、各相において、各上アームスイッチSWAH,SWBHと、各下アームスイッチSWAL,SWBLとを交互にオン状態にすべく、各上アームスイッチSWAH,SWBHに対応する上アーム主駆動信号GH*と、各下アームスイッチSWAL,SWBLに対応する下アーム主駆動信号GL*とを生成する。本実施形態において、各主駆動信号GH*,GL*は、論理Hによりオン指令であることを示し、論理Lによりオフ指令であることを示す。
【0018】
マイコン30は、低圧領域に設けられている。一方、回転電機10、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBL、上,下アームドライブIC40,70、直流電源21及び平滑コンデンサ22は、高圧領域に設けられている。
【0019】
続いて、図2を用いて、マイコン30、及び上,下アームドライブIC40,70について説明する。
【0020】
制御システムは、上アームアイソレータ31H及び下アームアイソレータ31Lを備えている。上,下アームアイソレータ31H,31Lは、低圧領域及び高圧領域の境界を跨るように設けられている。上,下アームアイソレータ31H,31Lは、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、マイコン30から出力された上,下アーム主駆動信号GH*,GL*を高圧領域側に伝達する。本実施形態において、上,下アームアイソレータ31H,31Lは、デジタルアイソレータであり、例えば、コイルを備える磁気絶縁方式又はコンデンサを備える容量絶縁方式のアイソレータである。例えば、磁気絶縁方式のデジタルアイソレータは、入力信号をパルス信号に変換するエンコーダと、変換されたパルス信号を低圧領域から高圧領域に伝達するトランスと、トランスから出力されたパルス信号を変換するデコータとを備えている。なお、上,下アームアイソレータ31H,31Lは、デジタルアイソレータに代えて、例えば、光絶縁方式のフォトカプラであってもよい。
【0021】
上アームドライブIC40は、上アーム信号生成部41及び上アームドライバ42を備えている。上アーム信号生成部41には、上アームアイソレータ31Hからの上アーム主駆動信号GH*が入力される。上アーム信号生成部41は、オン指令又はオフ指令の上アーム駆動信号GHrを生成して上アームドライバ42に出力する。
【0022】
上アームドライバ42には、第1上アームゲート抵抗体32AHを介して第1上アームスイッチSWAHのゲートが接続され、第2上アームゲート抵抗体32BHを介して第2上アームスイッチSWBHのゲートが接続されている。
【0023】
上アームドライバ42は、入力された上アーム駆動信号GHrがオン指令であると判定した場合、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのオン操作を行う。本実施形態において、オン操作は、第1上アームゲート抵抗体32AHを介して第1上アームスイッチSWAHのゲートに充電電流を供給し、第2上アームゲート抵抗体32BHを介して第2上アームスイッチSWBHのゲートに充電電流を供給する操作である。これにより、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧がスレッショルド電圧VthA,VthB以上になり、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHがオン状態に切り替えられる。
【0024】
一方、上アームドライバ42は、入力された上アーム駆動信号GHrがオフ指令であると判定した場合、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのオフ操作を行う。本実施形態において、オフ操作は、第1上アームスイッチSWAHのゲート電荷を第1上アームゲート抵抗体32AHを介して放電し、第2上アームスイッチSWBHのゲート電荷を第2上アームゲート抵抗体32BHを介して放電する操作である。これにより、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧がスレッショルド電圧VthA,VthB未満になり、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHがオフ状態に切り替えられる。
【0025】
上アームドライブIC40は、上アーム判定部43及び上アーム記憶部44を備えている。上アームドライバ42と第1上アームスイッチSWAHのゲートとを接続する充放電経路と、上アーム判定部43とは、第1上アーム経路LAHにより接続されている。上アーム判定部43は、第1上アーム経路LAHを介して第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VgAHを検出する。上アームドライバ42と第2上アームスイッチSWBHのゲートとを接続する充放電経路と、上アーム判定部43とは、第2上アーム経路LBHにより接続されている。上アーム判定部43は、第2上アーム経路LBHを介して第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHを検出する。
【0026】
上アーム記憶部44は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。上アーム判定部43は、上アーム記憶部44の記憶情報を読み出すことができる。
【0027】
下アームドライブIC70は、下アーム信号生成部71及び下アームドライバ72を備えている。下アーム信号生成部71には、下アームアイソレータ31Lからの下アーム主駆動信号GL*が入力される。下アーム信号生成部71は、オン指令又はオフ指令の下アーム駆動信号GLrを生成して下アームドライバ72に出力する。
【0028】
下アームドライバ72には、第1下アームゲート抵抗体32ALを介して第1下アームスイッチSWALのゲートが接続され、第2下アームゲート抵抗体32BLを介して第2下アームスイッチSWBLのゲートが接続されている。
【0029】
下アームドライバ72は、入力された下アーム駆動信号GLrがオン指令であると判定した場合、第1下アームゲート抵抗体32ALを介して第1下アームスイッチSWALのゲートに充電電流を供給し、第2下アームゲート抵抗体32BLを介して第2下アームスイッチSWBLのゲートに充電電流を供給するオン操作を行う。これにより、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのゲート電圧がスレッショルド電圧VthA,VthB以上になり、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLがオン状態に切り替えられる。
【0030】
一方、下アームドライバ72は、入力された下アーム駆動信号GLrがオフ指令であると判定した場合、第1下アームスイッチSWALのゲート電荷を第1下アームゲート抵抗体32ALを介して放電し、第2下アームスイッチSWBLのゲート電荷を第2下アームゲート抵抗体32BLを介して放電するオフ操作を行う。これにより、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのゲート電圧がスレッショルド電圧VthA,VthB未満になり、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLがオフ状態に切り替えられる。
【0031】
下アームドライブIC70は、下アーム判定部73及び下アーム記憶部74を備えている。下アームドライバ72と第1下アームスイッチSWALのゲートとを接続する充放電経路と、下アーム判定部73とは、第1下アーム経路LALにより接続されている。下アーム判定部73は、第1下アーム経路LALを介して第1下アームスイッチSWALのゲート電圧VgALを検出する。下アームドライバ72と第2下アームスイッチSWBLのゲートとを接続する充放電経路と、下アーム判定部73とは、第2下アーム経路LBLにより接続されている。下アーム判定部73は、第2下アーム経路LBLを介して第2下アームスイッチSWBLのゲート電圧VgBLを検出する。
【0032】
なお、下アーム判定部73及び上アーム判定部43は、例えば、コンパレータ回路、ロジック回路又はダイオードオア(DiOR)回路により構成されていればよい。本実施形態において、下アーム判定部73及び上アーム判定部43が「オフ判定部」に相当する。
【0033】
下アーム記憶部74は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。下アーム判定部73は、下アーム記憶部74の記憶情報を読み出すことができる。
【0034】
制御システムは、第1アイソレータ33と、第2アイソレータ34とを備えている。第1アイソレータ33及び第2アイソレータ34は、高圧領域に設けられている。第1アイソレータ33は、上アームドライブIC40及び下アームドライブIC70の間を電気的に絶縁しつつ、下アーム判定部73から出力された下アーム信号PLを上アーム信号生成部41に伝達する。第2アイソレータ34は、上アームドライブIC40及び下アームドライブIC70の間を電気的に絶縁しつつ、上アーム判定部43から出力された上アーム信号PHを下アーム信号生成部71に伝達する。本実施形態において、第1,第2アイソレータ33,34は、上,下アームアイソレータ31H,31Lと同様のデジタルアイソレータである。
【0035】
ところで、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLは、同じ仕様であるものの、個体差等に起因して、スレッショルド電圧及びゲート電荷容量等の特性値がばらつく。このため、上アーム側を例にして説明すると、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHに対する操作を同時にオフ操作に切り替えたとしても、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧の低下速度が異なる。その結果、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのうち、一方のスイッチが先にオフ状態に切り替えられ、続いて他方のスイッチがオフ状態に切り替えられる。
【0036】
本実施形態では、第2上アームスイッチSWBHのスレッショルド電圧VthBが、第1上アームスイッチSWAHのスレッショルド電圧VthAよりも高い。また、第2上アームスイッチSWBHのゲート電荷容量QgBが、第1上アームスイッチSWAHのゲート電荷容量QgAよりも大きい。これにより、第2上アームスイッチSWBHのスイッチング速度が、第1上アームスイッチSWAHのスイッチング速度よりも低い。したがって、第2上アームスイッチSWBHが「最遅延スイッチ」に相当する。
【0037】
また、同様の理由により、第2下アームスイッチSWBLのスイッチング速度が、第1下アームスイッチSWALのスイッチング速度よりも低い。したがって、第2下アームスイッチSWBLが「最遅延スイッチ」に相当する。
【0038】
図3を用いて、上アーム側を例にして、スイッチング速度の高低について説明する。図3(a)は上アーム駆動信号GHrの推移を示し、図3(b)は第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧VgAH,VgBHの推移を示す。
【0039】
時刻t1において上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられると、上アームドライバ42により第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲートが充電され始める。
【0040】
その後、時刻t2において、第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VgAHがスレッショルド電圧VthAに到達し、時刻t3において、第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHがスレッショルド電圧VthBに到達する。このため、第2上アームスイッチSWBHよりも第1上アームスイッチSWAHの方が先にオン状態に切り替えられる。なお、図3に示す例では、第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VgAHが電源電圧Vomに到達するタイミングは、第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHがスレッショルド電圧VthBに到達するタイミングよりも先である。
【0041】
時刻t4において上アーム駆動信号GHrがオフ指令に切り替えられると、上アームドライバ42により第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電荷が放電され始める。
【0042】
その後、時刻t5において、第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VgAHがスレッショルド電圧VthAを下回り、時刻t6において、第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHがスレッショルド電圧VthBを下回る。このため、第2上アームスイッチSWBHよりも第1上アームスイッチSWAHの方が先にオフ状態に切り替えられる。なお、図3に示す例では、第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VgAHが0に到達するタイミングは、第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHがスレッショルド電圧VthBを下回るタイミングよりも先である。
【0043】
各アームにおいて、並列接続されたスイッチのスイッチング速度が異なることに鑑み、上アーム判定部43及び下アーム判定部73が設けられている。上アーム判定部43は、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHがオン操作からオフ操作に切り替えられた場合において、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのうち、スイッチング速度が低い方のスイッチがオフ状態に切り替えられたことを示す上アーム信号PHを出力する。本実施形態では、上アーム信号PHがHの場合、スイッチング速度が低い方の第2上アームスイッチSWBHのオフ状態への切り替えが完了したこと、つまり、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHの双方のオフ状態への切り替えが完了していることを示す。一方、上アーム信号PHがLの場合、第2上アームスイッチSWBHのオフ状態への切り替えが完了していないことを示す。
【0044】
下アーム判定部73は、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLがオン操作からオフ操作に切り替えられた場合において、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのうち、スイッチング速度が低い方のスイッチがオフ状態に切り替えられたことを示す下アーム信号PLを出力する。本実施形態では、下アーム信号PLがHの場合、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのオフ状態への切り替えが完了していることを示す。一方、下アーム信号PLがLの場合、スイッチング速度が低い方の第2下アームスイッチSWBLのオフ状態への切り替えが完了していないことを示す。
【0045】
上アーム記憶部44には、図4に示すように、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのスレッショルド電圧及びゲート電荷容量の情報が記憶されている。上アーム判定部43は、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのうち、スレッショルド電圧及びゲート電荷容量が高い方のスイッチが最遅延スイッチであると特定する「特定部」として機能する。ちなみに、上アーム記憶部44には、スレッショルド電圧及びゲート電荷容量のいずれかの情報が記憶されていてもよい。この場合、上アーム判定部43は、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのうち、スレッショルド電圧が高い方のスイッチ、又はゲート電荷容量が高い方のスイッチが最遅延スイッチであると特定すればよい。
【0046】
図5を用いて、上アーム判定部43の処理について説明する。図5(a),(b)は上,下アーム主駆動信号GH*,GL*の推移を示し、図5(c)は下アーム信号PLの推移を示し、図5(d)は上アーム駆動信号GHrの推移を示す。図5(e)は上アーム信号PHの推移を示し、図5(f)は下アーム駆動信号GLrの推移を示す。図5において、Tswは、各スイッチSWAH,SWBH,SWAL,SWBLのスイッチング周期を示す。各スイッチング周期Tswにおいて、各主駆動信号GH*,GL*は、1回ずつオン指令となる。図5に示す例では、下アーム主駆動信号GL*のオフ指令への切り替わりタイミングに対して、上アーム主駆動信号GH*のオン指令への切り替わりタイミングが規定期間DT*だけ遅延させられている。また、上アーム主駆動信号GH*のオフ指令への切り替わりタイミングに対して、下アーム主駆動信号GL*のオン指令への切り替わりタイミングが規定期間DT*だけ遅延させられている。規定期間DT*は、スイッチング周期Tswに対して非常に短い期間である。なお、上アーム主駆動信号GH*のオン指令への切り替わりタイミングと、下アーム主駆動信号GL*のオフ指令への切り替わりタイミングとが同じタイミングに設定され、上アーム主駆動信号GH*のオフ指令への切り替わりタイミングと、下アーム主駆動信号GL*のオン指令への切り替わりタイミングとが同じタイミングに設定されていてもよい。
【0047】
上アーム判定部43は、最遅延スイッチである第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHの検出値に基づいて、第2上アームスイッチSWBHがオフ状態であるか否かを判定する。本実施形態において、上アーム判定部43は、検出したゲート電圧VgBHが、上アーム記憶部44に記憶されたスレッショルド電圧VthB未満であると判定した場合、第2上アームスイッチSWBHがオフ状態であると判定し、上アーム信号PHをHにする。一方、上アーム判定部43は、検出したゲート電圧VgBHがスレッショルド電圧VthB以上であると判定した場合、第2上アームスイッチSWBHがオン状態であると判定し、上アーム信号PHをLにする。
【0048】
下アーム信号生成部71は、第2アイソレータ34を介して入力された上アーム信号PHがLであると判定した場合、入力された下アーム主駆動信号GL*の論理にかかわらず、下アーム駆動信号GLrをL(オフ指令)に維持する。つまり、対向アーム側の上アーム信号PHがLであると判定されている場合には、自アームスイッチである第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのオン状態への切り替えが禁止される。図5の時刻taでは、下アーム主駆動信号GL*がオン指令に切り替えられたにもかかわらず、上アーム信号PHがLであるため、下アーム駆動信号GLrがオン指令に切り替えられない。
【0049】
一方、下アーム信号生成部71は、時刻tbにおいて、上アーム信号PHがHであって、かつ、下アーム主駆動信号GL*がオン指令(H)であると判定した場合、下アーム駆動信号GLrをオン指令(H)に切り替える。つまり、上アーム信号PHがHであると判定されている場合には、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのオン状態への切り替えが許可される。
【0050】
下アーム信号生成部71は、時刻tcにおいて、下アーム主駆動信号GL*がオフに切り替えられたと判定し、下アーム駆動信号GLrをオフ指令に切り替える。なお、時刻tdにおいて、上アーム信号PHがLに切り替えられる。なお、本実施形態において、下アーム信号生成部71及び下アームドライバ72が下アーム側の「オン操作部」に相当する。
【0051】
続いて、下アーム判定部73及び下アーム記憶部74について説明する。なお、下アーム側の構成は、上アーム側の構成と同様であるため、説明を適宜省略する。
【0052】
下アーム記憶部74には、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのスレッショルド電圧及びゲート電荷容量の情報が記憶されている。下アーム判定部73は、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのうち、スレッショルド電圧及びゲート電荷容量が高い方のスイッチが最遅延スイッチであると特定する「特定部」として機能する。
【0053】
下アーム判定部73は、最遅延スイッチである第2下アームスイッチSWBLのゲート電圧VgBLを検出し、検出したゲート電圧VgBLが、下アーム記憶部74に記憶されたスレッショルド電圧VthB未満であると判定した場合、第2下アームスイッチSWBLがオフ状態であると判定し、下アーム信号PLをHにする。一方、下アーム判定部73は、検出したゲート電圧VgBLがスレッショルド電圧VthB以上であると判定した場合、第2下アームスイッチSWBLがオン状態であると判定し、下アーム信号PLをLにする。
【0054】
上アーム信号生成部41は、第1アイソレータ33を介して入力された対向アーム側の下アーム信号PLがLであると判定した場合、入力された上アーム主駆動信号GH*の論理にかかわらず、自アーム側の上アーム駆動信号GHrをL(オフ指令)に維持する。図5の時刻t1では、上アーム主駆動信号GH*がオン指令に切り替えられたにもかかわらず、下アーム信号PLがLであるため、上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられない。
【0055】
一方、上アーム信号生成部41は、時刻t2において、下アーム信号PLがHであって、かつ、上アーム主駆動信号GH*がオン指令(H)であると判定した場合、上アーム駆動信号GHrをオン指令(H)に切り替える。
【0056】
上アーム信号生成部41は、時刻t3において、上アーム主駆動信号GH*がオフに切り替えられたと判定し、上アーム駆動信号GHrをオフ指令に切り替える。なお、時刻t4において、下アーム信号PLがLに切り替えられる。なお、本実施形態において、上アーム信号生成部41及び上アームドライバ42が上アーム側の「オン操作部」に相当する。
【0057】
ちなみに、上アーム記憶部44及び下アーム記憶部74には、例えば、スイッチの駆動装置の製造工程において、データ書き込み装置により、スレッショルド電圧及びゲート電荷容量の情報が書き込まれればよい。
【0058】
また、マイコン30のメモリにスレッショルド電圧及びゲート電荷容量の情報が書き込まれてもよい。この場合、マイコン30から各記憶部44,74にスレッショルド電圧及びゲート電荷容量の情報が送信されればよい。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、上下アーム短絡の発生を的確に防止することができる。
【0060】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各判定部43,73は、ゲート電圧の検出値に基づいて、最遅延スイッチがどちらのスイッチであるかを特定する。
【0061】
まず、図6を用いて、上アーム判定部43の処理について説明する。
【0062】
時刻t1において上アーム駆動信号GHrがオフ指令に切り替えられ、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧VgAH,VgBHが電源電圧Vomから低下し始める。上アーム判定部43は、時刻t1から、ゲート電圧VgAH,VgBHが0になるまでの期間の途中(t2)において、第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VoffAと、第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VoffBとを検出する。上アーム判定部43は、検出したゲート電圧VоffA,VоffBのうち、高い方のVoffBに対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0063】
なお、上アーム判定部43は、特定した最遅延スイッチの情報を上アーム記憶部44に記憶させてもよい。この場合、上アーム判定部43は、上アーム記憶部44に記憶された最遅延スイッチの情報に基づいて、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧VgAH,VgBHのうち、上アーム信号PHの生成に用いるゲート電圧をどちらにするかを選択すればよい。本実施形態において、第1上アーム経路LAH、第2上アーム経路LBH及び上アーム判定部43が、上アーム側の「検出部」に相当する。
【0064】
続いて、下アーム判定部73の処理について説明する。
【0065】
下アーム駆動信号GLrがオフ指令に切り替えられ、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのゲート電圧VgAL,VgBLが電源電圧Vomから低下し始める。下アーム判定部73は、下アーム駆動信号GLrがオフ指令に切り替えられてから、ゲート電圧VgAL,VgBLが0になるまでの期間の途中において、第1下アームスイッチSWALのゲート電圧VoffAと、第2下アームスイッチSWBLのゲート電圧VoffBとを検出する。下アーム判定部73は、検出したゲート電圧VоffA,VоffBのうち、高い方のVoffBに対応する第2下アームスイッチSWBLを最遅延スイッチとして特定する。
【0066】
なお、下アーム判定部73は、上アーム判定部43と同様に、特定した最遅延スイッチの情報を下アーム記憶部74に記憶させてもよい。本実施形態において、第1下アーム経路LAL、第2下アーム経路LBL及び下アーム判定部73が、下アーム側の「検出部」に相当する。
【0067】
ちなみに、上,下アーム判定部43,73による最遅延スイッチの特定処理は、例えば、制御システムが起動してから停止するまでの1トリップにおいて、制御システムの起動時に実行されればよい。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、製造工程において最遅延スイッチの情報を各記憶部44,74に書き込む工程を削減することができる。また、本実施形態によれば、例えば、並列接続された2つスイッチの特性値(Vth,Qg)の大小が経年変化により逆転する場合があったとしても、各判定部43,73による最遅延スイッチの特定処理により、上下アーム短絡の発生を的確に防止することができる。
【0069】
<第2実施形態の変形例>
最遅延スイッチの特定方法は、以下(A)~(C)に説明する方法であってもよい。以下、上アーム判定部43の処理を例にして説明する。
【0070】
(A)図7の時刻t1において上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられ、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧VgAH,VgBHが0から電源電圧Vomに向かって上昇し始める。上アーム判定部43は、時刻t1から、ゲート電圧VgAH,VgBHが電源電圧Vomになるまでの期間の途中(t2)において、第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VonAと、第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VonBとを検出する。上アーム判定部43は、検出したゲート電圧VоnA,VоnBのうち、低い方のVonBに対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0071】
(B)図8の時刻t1において上アーム駆動信号GHrがオフ指令に切り替えられ、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧VgAH,VgBHが電源電圧Vomから低下し始める。上アーム判定部43は、時刻t1から、ゲート電圧VgAH,VgBHが0になるまでの期間のうち、所定期間Δtにおける第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VgAHの低下速度及び第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHの低下速度を算出する。上アーム判定部43は、算出した低下速度のうち、低い方の低下速度に対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0072】
(C)図9の時刻t1において上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられ、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲート電圧VgAH,VgBHが0から電源電圧Vomに向かって上昇し始める。上アーム判定部43は、時刻t1から、ゲート電圧VgAH,VgBHが電源電圧Vomになるまでの期間のうち、所定期間Δtにおける第1上アームスイッチSWAHのゲート電圧VgAHの上昇速度及び第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧VgBHの上昇速度を算出する。上アーム判定部43は、算出した上昇速度のうち、低い方の上昇速度に対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0073】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ゲート電圧に代えて、センス電圧に基づいて最遅延スイッチが特定される。
【0074】
図10に、本実施形態の各ドライブIC40,70及びそれらの周辺回路を示す。なお、図10において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を記載している。
【0075】
第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHは、第1,第2上アームセンス端子StAH,StBHを備えている。第1,第2上アームセンス端子StAH,StBHには、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのコレクタ電流と相関を有する微小電流が流れる。第1,第2上アームセンス端子StAH,StBHには、第1,第2上アームセンス抵抗体35AH,35BHの第1端が接続され、第1,第2上アームセンス抵抗体35AH,35BHの第2端には、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのエミッタが接続されている。
【0076】
第1上アームセンス抵抗体35AHの第1端と、上アーム判定部43とは、第1上アーム検出経路で接続されている。上アーム判定部43は、第1上アーム検出経路を介して、第1上アームセンス抵抗体35AHの電位差を第1上アームセンス電圧VsAHとして検出する。第2上アームセンス抵抗体35BHの第1端と、上アーム判定部43とは、第2上アーム検出経路で接続されている。上アーム判定部43は、第2上アーム検出経路を介して、第2上アームセンス抵抗体35BHの電位差を第2上アームセンス電圧VsBHとして検出する。なお、本実施形態において、第1,第2上アーム検出経路及び上アーム判定部43が、上アーム側の「検出部」に相当する。
【0077】
第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLは、第1,第2下アームセンス端子StAL,StBLを備えている。第1,第2下アームセンス端子StAL,StBLには、第1,第2下アームセンス抵抗体35AL,35BLの第1端が接続され、第1,第2下アームセンス抵抗体35AL,35BLの第2端には、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのエミッタが接続されている。
【0078】
第1下アームセンス抵抗体35ALの第1端と、下アーム判定部73とは、第1下アーム検出経路で接続されている。下アーム判定部73は、第1下アーム検出経路を介して、第1下アームセンス抵抗体35ALの電位差を第1下アームセンス電圧VsALとして検出する。第2下アームセンス抵抗体35BLの第1端と、下アーム判定部73とは、第2下アーム検出経路で接続されている。下アーム判定部73は、第2下アーム検出経路を介して、第2下アームセンス抵抗体35BLの電位差を第2下アームセンス電圧VsBLとして検出する。なお、本実施形態において、第1,第2下アーム検出経路及び下アーム判定部73が、下アーム側の「検出部」に相当する。
【0079】
図11を用いて、上アーム判定部43の処理について説明する。
【0080】
時刻t1において上アーム駆動信号GHrがオフ指令に切り替えられ、第1,第2上アームセンス電圧VsAH,VsBHが定常値から低下し始める。センス電圧の定常値は、例えば、スイッチのゲート電圧が電源電圧Vomになっている場合におけるセンス電圧である。上アーム判定部43は、時刻t1から、センス電圧VsAH,VsBHが0になるまでの期間の途中(t2)において、第1上アームセンス電圧SoffAと、第2上アームセンス電圧SoffBとを検出する。スイッチのゲート電圧が0になると、コレクタ電流が流れなくなるため、センス電圧が0になる。上アーム判定部43は、検出したセンス電圧SоffA,SоffBのうち、高い方のSoffBに対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0081】
続いて、下アーム判定部73の処理について説明する。
【0082】
下アーム駆動信号GLrがオフ指令に切り替えられ、第1,第2下アームセンス電圧VsAL,VsBLが定常値から低下し始める。下アーム判定部73は、下アーム駆動信号GLrがオフ指令に切り替えられてから、センス電圧VsAL,VsBLが0になるまでの期間の途中において、第1下アームセンス電圧SoffAと、第2下アームセンス電圧SoffBとを検出する。下アーム判定部73は、検出したセンス電圧SоffA,SоffBのうち、高い方のSoffBに対応する第2下アームスイッチSWBLを最遅延スイッチとして特定する。
【0083】
以上説明した本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
<第3実施形態の変形例>
最遅延スイッチの特定方法は、以下(D)~(E)に説明する方法であってもよい。以下、上アーム判定部43の処理を例にして説明する。
【0085】
(D)図12の時刻t1において上アーム駆動信号GHrがオフ指令に切り替えられ、第1,第2上アームセンス電圧VsAH,VsBHが定常値から低下し始める。上アーム判定部43は、時刻t1から、センス電圧VsAH,VsBHが0になるまでの期間のうち、所定期間Δtにおける第1,第2上アームセンス電圧VsAH,VsBHの低下速度を算出する。上アーム判定部43は、算出した低下速度のうち、低い方の低下速度に対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0086】
(E)上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられ、第1,第2上アームセンス電圧VsAH,VsBHが0から上昇し始める。上アーム判定部43は、上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられてから、センス電圧VsAH,VsBHが定常値になるまでの期間のうち、所定期間Δtにおける第1,第2上アームセンス電圧VsAH,VsBHの上昇速度を算出する。上アーム判定部43は、算出した上昇速度のうち、低い方の上昇速度に対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0087】
(F)上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられ、第1,第2上アームセンス電圧VsAH,VsBHが0から上昇し始める。上アーム判定部43は、上アーム駆動信号GHrがオン指令に切り替えられてから、センス電圧VsAH,VsBHが定常値になるまでの期間の途中において、第1,第2上アームセンス電圧を検出する。上アーム判定部43は、検出した第1,第2上アームセンス電圧のうち、低い方のセンス電圧に対応する第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチとして特定する。
【0088】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのうち、第1上アームスイッチSWAHが最遅延スイッチであるとする。図13に示すように、第2上アームスイッチSWBHのゲート電圧を検出する第2上アーム経路LBHが設けられていない。また、本実施形態では、第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLのうち、第1下アームスイッチSWALが最遅延スイッチであるとする。図13に示すように、第2下アームスイッチSWBLのゲート電圧を検出する第2下アーム経路LBLが設けられていない。なお、図13において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を記載している。
【0089】
第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHは、図14及び図15に示すように、上アーム半導体モジュールMdHに収容されている。上アーム半導体モジュールMdHは、扁平な直方体形状をなしている。上アーム半導体モジュールMdHは、第1上アームスイッチSWAHのゲートに接続された第1上アームゲート端子CAHと、第2上アームスイッチSWBHのゲートに接続された第2上アームゲート端子CBHとを備えている。各相の上アーム半導体モジュールMdHは、第1上アームゲート端子CAHが第1上アーム経路LAHに電気的に接続されるように、各上アームゲート端子CAH,CBHを介して制御基板25に取り付けられている。
【0090】
第1,第2下アームスイッチSWAL,SWBLは、下アーム半導体モジュールMdLに収容されている。下アーム半導体モジュールMdLは、扁平な直方体形状をなしている。下アーム半導体モジュールMdLは、第1下アームスイッチSWALのゲートに接続された第1下アームゲート端子CALと、第2下アームスイッチSWBLのゲートに接続された第2下アームゲート端子CBLとを備えている。各相の下アーム半導体モジュールMdLは、第1下アームゲート端子CALが第1下アーム経路LALに電気的に接続されるように、各下アームゲート端子CAL,CBLを介して制御基板25に取り付けられている。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、ゲートの充放電経路と判定部とを接続する電圧の検出経路を最遅延スイッチ側にのみ設ける構成を実現できる。その結果、制御システムの構成の簡素化を図ることができる。
【0092】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図16に示すように、第1上アームスイッチSWAHのゲート及びエミッタが、受動素子である上アームコンデンサ36Hにより接続されている。また、第1下アームスイッチSWALのゲート及びエミッタが、下アームコンデンサ36Lにより接続されている。なお、図16において、先の図13に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を記載している。
【0093】
上アーム側を例にして説明すると、図17に示すように、コンデンサが設けられる場合の破線にて示すゲート電圧VgAHの上昇速度及び低下速度は、コンデンサが設けられない場合の実線にて示すゲート電圧VgAHの上昇速度及び低下速度よりも低い。このため、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのうち、上アームコンデンサ36Hが設けられた第1上アームスイッチSWAHを最遅延スイッチにすることができる。
【0094】
<第5実施形態の変形例>
第1上アームスイッチSWAHのゲート及びエミッタ間に加え、第2上アームスイッチSWBHのゲート及びエミッタ間もコンデンサにより接続されていてもよい。この場合、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHに設けられたコンデンサのうち、最遅延スイッチにする方のコンデンサの静電容量を大きくすればよい。なお、下アーム側も同様である。
【0095】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ドライブIC及びその周辺回路が変更されている。以下、上アーム側を例にして説明する。
【0096】
図18に、本実施形態の上アームドライブIC40及びその周辺回路を示す。なお、図18において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を記載している。
【0097】
上アームドライブIC40は、電源37、充電スイッチSC、充電抵抗体38、第1,第2放電抵抗体39A,39B及び第1,第2放電スイッチSD1,SD2を備えている。充電スイッチSC、第1放電スイッチSD1、第2放電スイッチSD2及び駆動制御部Drは、先の図2の上アームドライバ42に相当する。
【0098】
電源37は、上記各実施形態で記載した電源電圧Vomを出力する定電圧電源である。電源37には、充電スイッチSC及び充電抵抗体38を介して、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのゲートが接続されている。
【0099】
第1上アームスイッチSWAHのゲートには、第1放電抵抗体39A及び第1放電スイッチSD1を介して、第1上アームスイッチSWAHのエミッタが接続されている。第2上アームスイッチSWBHのゲートには、第2放電抵抗体39B及び第2放電スイッチSD2を介して、第2上アームスイッチSWBHのエミッタが接続されている。本実施形態では、第1放電抵抗体39Aの抵抗値RAと、第2放電抵抗体39Bの抵抗値RBとが同じである。ちなみに、充電抵抗体38及び各放電抵抗体39A,39Bは、上アームドライブIC40の外部に設けられていてもよい。
【0100】
上アームドライブIC40は、駆動制御部Drを備えている。駆動制御部Drには、上アーム信号生成部41により生成された上アーム駆動信号GHrが入力される。駆動制御部Drは、上アーム駆動信号GHrがオン指令であると判定した場合、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのオン操作を行う。本実施形態において、オン操作は、充電スイッチSCをオン状態にし、各放電スイッチSD1,SD2をオフ状態にする操作である。
【0101】
一方、駆動制御部Drは、上アーム駆動信号GHrがオフ指令であると判定した場合、第1,第2上アームスイッチSWAH,SWBHのオフ操作を行う。本実施形態において、オフ操作は、充電スイッチSCをオフ状態にし、各放電スイッチSD1,SD2をオン状態にする操作である。詳しくは、図19に示すように、駆動制御部Drは、時刻t1において第1放電スイッチSD1をオン状態に切り替える。その後、駆動制御部Drは、時刻t2において第2放電スイッチSD2をオン状態に切り替えた後、時刻t3において第1,第2放電スイッチSD1,SD2をオフ状態に切り替える。これにより、第2上アームスイッチSWBHのオフ状態への切り替えタイミングが、第1上アームスイッチSWAHのオフ状態への切り替えタイミングよりも後になる。その結果、第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチにすることができる。
【0102】
なお、上アーム判定部43は、第1上アーム経路LAHを介して検出したゲート電圧VgAHに基づいて、上アーム信号PHを生成する。また、本実施形態において、駆動制御部Drが「遅延駆動部」に相当する。
【0103】
<第6実施形態の変形例>
各放電スイッチSD1、SD2のオン状態への切り替えタイミングを同時にしてもよい。この場合、以下(G),(H)の構成を採用すればよい。
【0104】
(G)第2放電抵抗体39Bの抵抗値RBを、第1放電抵抗体39Aの抵抗値RAよりも大きくする。これにより、第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチにできる。
【0105】
(H)第1放電スイッチSD1の両端のうち、第1放電抵抗体39Aとは反対側を、第1上アームスイッチSWAHのエミッタの電位よりも低い電位を有する構成(例えば、負電圧を有する負電源)に接続する。これにより、第1上アームスイッチSWAHのゲート電荷の放電速度を第2上アームスイッチSWBHよりも高くし、第2上アームスイッチSWBHを最遅延スイッチにできる。
【0106】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0107】
・スイッチがオフ状態であるか否かを判定するために判定部43,73が用いるパラメータは、例えば、スイッチのコレクタ及びエミッタ間電圧Vceであってもよい。
【0108】
・インバータ20の上,下アームのそれぞれは、並列接続された3つ以上のスイッチで構成されていてもよい。
【0109】
・判定部43,73は、ドライブIC40,70の外部に設けられていてもよい。
【0110】
・上,下アームスイッチを備える電力変換器としては、インバータに限らず、例えばDCDCコンバータであってもよい。
【符号の説明】
【0111】
20…インバータ、40…上アームドライブIC、70…下アームドライブIC、SWAH,SWBH…上アームスイッチ、SWAL,SWBL…下アームスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19