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  • 特許-車両と通信端末とのペアリングシステム 図1
  • 特許-車両と通信端末とのペアリングシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両と通信端末とのペアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20241119BHJP
   G06Q 50/43 20240101ALI20241119BHJP
【FI】
E05B49/00 K
G06Q50/43
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021170087
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060460
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】武藤 大輔
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-14372(JP,A)
【文献】特開2016-204912(JP,A)
【文献】特開2020-68023(JP,A)
【文献】特開2019-121369(JP,A)
【文献】特開昭59-32544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60R 25/00-99/00
G06Q 50/00-50/20
G06Q 50/26-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と対象車両とのペアリングを実行するシステムであって、
前記対象車両の利用を管理するサーバにして、
前記対象車両の利用者の通信端末の識別情報を登録する手段と、
前記利用者の前記対象車両の利用希望を受信したときに、前記登録された通信端末へ前記対象車両の利用に際して利用の度に異なる前記利用者が実行するべき操作の内容を示す操作指示情報を送信する手段と、
前記対象車両から発信される操作確認情報を受信する手段と、
前記操作確認情報を受信したときに、前記通信端末を前記対象車両の車両キーとして使用可能に設定する手段と
を含むサーバと、
前記利用者の通信端末に備えられ、前記操作指示情報の操作指示の内容を表示する手段と、
前記対象車両に備えられ、前記操作指示情報にて指示された操作が前記対象車両に対して実行されたことを感知したときに前記操作確認情報を発信する手段と
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の解施錠、始動その他の作動操作のための車両のキーシステムに係り、より詳細には、スマートフォンなどの通信端末を車両キーとして用いるためのペアリングシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
車両の解施錠、始動その他の作動操作のためのキー(車両キー)として、既にスマートキーを用いたシステムが普及しており、更に、スマートフォンなどの通信端末を車両キーとして用いるための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1では、車両の近傍にて車両専用の電子キーと車両の制御部とが認証された状態に於いてのみ、車両の制御部に対してスマートフォンのID登録を可能として、その後、スマートフォンが車両キーとして使用できるようにして、スマートフォンを車両キーとして利用する際のセキュリティの向上を図ることが提案されている。また、特許文献2に於いては、或るユーザに車両を貸し出す際に、ユーザの携帯通信端末へ車両を利用するための電子鍵(情報)を送信することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-147926
【文献】特開2021-103453
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スマートフォンなどの通信端末を車両キーとして使用できるようにする場合、セキュリティを如何に保障して、通信端末と利用対象の車両(対象車両)との間の相互通信の確立(ペアリング)を達成するか、即ち、第三者の通信端末による対象車両への通信の侵入を如何に防止するか、が問題となる。この点に関し、例えば、特許文献1では、スマートフォンと対象車両とのペアリングが、鍵情報を担持する物理的な専用の電子機器(電子キー、第一の携帯機器)が近傍に存在している場合にのみ実行できるようにして、第三者のスマートフォンが対象車両とペアリングされることの防止が図られている。しかしながら、その場合には、スマートフォンと対象車両とのペアリングを実行する場所まで電子機器を持っていく必要がある。そうすると、例えば、カーシェアサービスなどの、種々の場所で様々な者に車両を利用させる場合に、その都度、車両の利用を予定する者の元に、専用の電子機器を届ける必要があり、その分、車両の利用までに時間やコストを要することとなる。また、単に、スマートフォンなどの通信端末へ電子鍵情報を送信するだけでは、何かの理由で、その情報が第三者の通信端末で受信されてしまうと、その通信端末を車両キーとして対象車両の操作が可能となってしまう。そこで、もし専用の物理的な電子鍵などの電子機器を要せずに、車両の利用を予定する者が所持している通信端末だけでセキュリティを担保した状態で通信端末と対象車両とのペアリングが可能なシステムがあれば有利である。
【0005】
かくして、本発明の一つの課題は、対象車両の利用を予定する者が所持しているスマートフォンなどの通信端末を車両キーとして使用できるようにするために、通信端末と対象車両とのペアリングを、通信端末の他に物理的な電子機器を要せずに、セキュリティを担保した状態で達成できる新規なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、通信端末と対象車両とのペアリングを実行するシステムであって、
前記対象車両の利用を管理するサーバにして、
前記対象車両の利用者の通信端末の識別情報を登録する手段と、
前記利用者の前記対象車両の利用希望を受信したときに、前記登録された通信端末へ前記対象車両の利用に際して利用の度に異なる前記利用者が実行するべき操作の内容を示す操作指示情報を送信する手段と、
前記対象車両から発信される操作確認情報を受信する手段と、
前記操作確認情報を受信したときに、前記通信端末を前記対象車両の車両キーとして使用可能に設定する手段と
を含むサーバと、
前記利用者の通信端末に備えられ、前記操作指示情報の操作指示の内容を表示する手段と、
前記対象車両に備えられ、前記操作指示情報にて指示された操作が前記対象車両に対して実行されたことを感知したときに前記操作確認情報を発信する手段と
を含むシステムによって達成される。
【0007】
上記の本発明の構成に於いて、
「通信端末」とは、利用者が携帯可能な任意の通信端末であってよく、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどであってよい。
「対象車両」とは、通信端末が車両キーとして使用可能となる操作対象の車両である。
「通信端末の識別情報」とは、その通信端末を特定する情報であり、利用者の通信端末への操作入力によって通信端末からサーバへ送信され、「登録する手段」に登録されてよい。
「対象車両の利用希望」とは、利用者の特定の対象車両の利用を希望する旨の情報であり、利用者が自身の通信端末を操作入力して、通信端末から発信される。
「前記対象車両の利用に際して利用の度に異なる前記利用者が実行するべき操作指示の内容」とは、例えば、対象車両のドアノブをXX秒間引く→YY秒間離す→ZZ秒間引く、などの、利用者に実行が要求される車両の任意の部位に対する操作の具体的な内容であり、その内容は、その利用機会毎に変更され、その内容を担持する「操作指示情報」が利用者の通信端末へ送信され、通信端末に於いて、その内容が表示されて、利用者が確認できることとなる。
「操作確認情報」とは、対象車両に備えられた手段から送信される情報であり、操作指示情報にて指示された操作が対象車両に対して実行されたことを感知したときに発信される。なお、対象車両の各部位には、利用者により種々の操作が実行されたことを感知するタッチセンサなどの検出器が備えられる。
「通信端末を前記対象車両の車両キーとして使用可能に設定する」とは、その通信端末を、車両のスマートキーと同様に、車両の解施錠、駆動装置の始動許可、その他の機器操作が可能な機器として設定するということある。
なお、サーバと通信端末と対象車両の通信手段との間の通信は、任意の近距離無線通信などの無線通信技術により達成されてよい。
【0008】
上記の本発明のシステムに於いては、端的に述べれば、システムに登録された利用者が対象車両の利用を希望すると、サーバから、利用者の通信端末へ、対象車両に対して実行するべき操作の内容(操作指示情報)が送信される。そして、利用者がその指示通りの操作を対象車両に対して実行すると、その情報(操作確認情報)がサーバへ送信され、サーバは、操作指示情報の送信された通信端末を車両キーとして使用可能となるように設定する(通信端末と対象車両とのペアリング)。かかる構成に於いて、利用者が車両に対して実行されるべき操作の内容は、利用者の通信端末にしか送信されず、通常、利用者しかその内容を確認できず、且つ、そのとき限りの操作内容となるので、通信端末を所持している利用者以外の第三者は、知ることができないこととなり、セキュリティが担保される。また、上記の構成から理解される如く、通信端末と対象車両とのペアリングに際して、別の電子鍵(スマートキー)の如き専用の電子機器を要せず、利用者の元には通信端末があるだけでよいので、専用の電子機器を配送する時間、労力、コストが必要なくなる点で有利である。また、本発明のシステムに於いて、通信端末の登録と車両に対する操作といった多段階の認証プロセスによって、セキュリティの向上が図られることとなる。
【0009】
実施の形態に於いては、本発明のシステムは、カーシェアサービスなどに於いて有利に用いられる。利用者は、サーバに対して、車両の利用予約を行い、サーバが予約の確認を送信するようになっていてよい。また、その場合、利用時間になり、利用者が対象車両に近づき、通信端末に於いて、専用のアプリケーションを起動すると、その情報がサーバへ伝達され、これに応答して、サーバから操作指示情報が送信されるようになっていてよい。そして、サーバは、操作確認情報を受信すると、車両の解錠を実行するように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0010】
かくして、上記の本発明のシステムによれば、スマートフォンなどの通信端末を車両キーとして利用できるようにするために、通信端末と車両とのペアリングを実行する際に、利用者は、その手元に物理的な電子鍵などの専用の電子機器を準備する必要はなく、専用の電子機器を手配するのに要する手間、時間、コストがかからないこととなる。また、通信端末と車両とのペアリングの際に利用者が実行するべき車両に対する操作内容が車両の利用の度に異なるので、利用者以外の者に於いて通信端末と車両とのペアリングがなされるおそれは殆どなく、セキュリティが担保されることとなる。本発明のシステムは、不特定の者が利用するカーシェアサービスに於ける利用者への車両の貸し出しの際などに有利に利用される。
【0011】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、本実施形態による車両と通信端末とのペアリングシステムの構成例の概略を示す図である。図1(B)は、本実施形態のシステムの構成例をブロック図の形式で表わした図である。
図2図2は、本実施形態による車両と通信端末とのペアリングシステムに於ける処理の流れをフローチャートの形式で表した図である。
【符号の説明】
【0013】
10…車両
12…利用者通信端末
14…サーバ
P…利用者
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0015】
システムの構成
図1(A)を参照して、実施形態の好ましい態様の一つである車両と通信端末とのペアリングシステムは、車両10と利用者Pの所持する通信端末12とサーバ14とから構成されてよい。車両10は、自動車等の車両であってよく、スマートキーによる操作により、開施錠、駆動装置の始動又は停止、その他種々の車両機器の作動制御が実行されるよう構成されてよい。利用者Pが所持する通信端末12は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどの、利用者Pがシステムに対して種々の入力操作を行うことができ、システムからの情報の表示の閲覧が可能な任意の機器であってよい。また、後に説明される如く、通信端末12は、車両とペアリングが為されると、上記のスマートキーと同様の機能を果たすよう構成されてよい。サーバ14は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するコンピュータ及び駆動回路を含むコンピュータ装置であり、通信端末12と間及び車両10との間で通信をして、後に説明される車両10と通信端末12とペアリングのための種々の処理を実行する。サーバ14と車両10の間、サーバ14と通信端末12との間の情報の伝達は、近距離無線通信などの任意の形式の無線通信によって達成されてよい。
【0016】
上記の本実施形態のシステムの制御構成に於いては、図1(B)に示されている如く、通信端末は、本実施形態のシステムの処理に関連して、通信端末の識別情報をサーバに登録するための送信機能、車両の利用予約を管理する機能、サーバからの情報を表示する機能、車両キーとして認証されたときの車両キーの機能を有する。車両には、本実施形態のシステムの処理に関連して、後に説明される如き利用者が車両に対して実行する操作を検出するセンサ、サーバ及び通信端末との間の通信を行う通信部、及び、通信部からの指示に従って種々の機器を作動する制御部が備えられる。そして、サーバは、本実施形態のシステムの処理に関連して、通信端末の識別情報を登録する機能、通信端末からの利用者の車両の利用予約の申込みを受け付けて管理する機能、利用者が車両の利用時に実行するべき操作内容の指示を決定し、通信端末へ送信する機能、利用者が車両の利用時に実行した操作が車両にて感知されたこと(操作確認情報)を車両から受信する機能、及び、通信端末を車両の車両キーとして認証し、通信端末と車両とへその認証情報を送信する機能を果たすように構成される。なお、上記の通信端末、サーバ及び車両に於ける各構成及び機能は、それぞれ、プログラムに従ったコンピュータの作動により実現される。
【0017】
システムの作動
本実施形態システムに於いては、端的に述べれば、利用者による車両の利用に際して、利用者の通信端末と車両とのペアリングのために、即ち、通信端末を、車両の種々の機器の操作を可能にする車両キーとして設定するために、通信端末の識別情報をサーバに登録した状態で、サーバから通信端末へ利用者が車両に対して実行するべき操作指示の内容を送り、利用者がその指示を参照して、車両に対してその操作を実行すると、その情報が車両からサーバへ送信され、サーバにて通信端末と車両とのペアリングが実行される。ここで、利用者が車両に対して実行するべき操作指示は、利用の度に変更され、これにより、実行されるべき操作は、基本的には、通信端末を所持する利用者のみが知ることができるので、利用者以外が、指示された操作を実行することはない。従って、指示された操作が車両に対して実行されたことをもって、予定された利用者の通信端末と車両とのペアリングに於けるセキリュティが担保されることとなる。
【0018】
本実施形態システムがカーシェアサービスに於いて適用される場合の処理は、図2の如く実行されてよい。同図を参照して、先ず、車両の利用に先立って、利用者は、通信端末を用いて、サーバに対して車両の利用予約の申込みを送信する。ここに於いて、予約の申込みと同時に通信端末の識別情報がサーバへ送信されてサーバにて登録されてよい。また、予約の申込みには、利用したい車両と時刻の情報が含まれていてよい。サーバは、予約申込みを受信すると、通信端末の識別情報を登録すると共に、予約完了の通知を通信端末へ送信し、通信端末は、その通知を受信すると、表示部にその情報が表示され、利用者が予約の完了を確認することができることとなる。
【0019】
かくして、車両の利用予約が完了し、利用時刻になると、利用者は、利用する車両の側に移動し、通信端末のアプリケーションを起動すると、その旨がサーバへ送信される。そうすると、サーバは、利用者が車両に対して実行すべき操作内容の指示を決定して通信端末へ送信し、通信端末は、その指示を受信すると、表示部に表示する。なお、車両に対して実行すべき操作内容とは、例えば、対象車両のドアノブをXX秒間引く→YY秒間離す→ZZ秒間引く、或いは、ドアノブをN回擦る、などの車両の部位に対して実行する操作であってよい。また、ここで、車両に対して実行すべき操作内容は、車両の利用の度に変更され、従って、実行されるべき操作の内容は、操作内容の指示が通信端末に表示されたときに、それを参照した利用者しか知ることができないこととなる。
【0020】
しかる後、利用者が、指示された操作内容を実行すると、そのことが車両に於いて感知され、その旨を表わす操作確認情報が車両の通信部からサーバへ送信される。なお、車両に於ける利用者の操作は、ドアノブ等に備えられたタッチセンサにより感知可能である。
【0021】
そして、上記の操作確認情報がサーバに届くと、通信端末を車両キーとして認証し、その認証のための情報が通信端末と車両とへ送信され、通信端末に鍵情報がインストールされ、通信端末が車両キーとして利用できることとなる(ペアリングの完了)。なお、ペアリングが完了したときに、車両の解錠が実行されてよい。
【0022】
上記の一連の処理から理解される如く、本実施形態のシステムに於いて、専用の電子鍵等の電子機器を用いずに、利用者以外の車両の利用を防ぐセキリュティを担保した状態で、利用者の通信端末と車両とのペアリングが達成されることとなる。
【0023】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2