(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御装置の制御方法、分散型発電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20241119BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20241119BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/00 130
H02J3/32
(21)【出願番号】P 2021516074
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016875
(87)【国際公開番号】W WO2020218191
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019085131
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌央
(72)【発明者】
【氏名】本郷 真一
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166379(JP,A)
【文献】特開2012-222908(JP,A)
【文献】特開2014-180130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と連系し
EMSコントローラを有さない分散型電源用の電力制御装置であって、
前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換を行う変換回路と、
前記電力系統の受電点の受電電力が目標値になるように前記変換回路を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記分散型電源の発電量の予測値と需要設備の消費電力の予測値とに基づいて
電力の需給バランスを予測し、前記受電電力の目標値制御により電力の需給調整を行うことにより、前記電力系統の周波数を安定させる、電力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御装置であって、
前記制御装置は、電気の供給過多が予想される場合、前記受電電力の目標値制御により電気の需要を増加させる又は電気の供給を減少させることにより、前記電力系統の周波数上昇を抑える、電力制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力制御装置であって、
前記制御装置は、電気の需要過多が予想される場合、前記受電電力の目標値制御により電気の供給を増加させる又は電気の需要を減少させることにより、前記電力系統の周波数低下を抑える、電力制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電力制御装置であって、
前記変換回路は、前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換又は前記電力系統から供給される電力を交流から直流に変換して出力する順変換を選択的に行う双方向の変換回路であり、
前記変換回路には、前記分散型電源と並列に蓄電装置が接続され、
前記制御装置は、
電気の供給過多が予想される場合、前記受電電力の目標値を前記需要設備の消費電力よりも大きな値に変更し、前記変換回路を順変換動作させて、前記蓄電装置を充電する、電力制御装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の電力制御装置であって、
前記変換回路は、前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換又は前記電力系統から供給される電力を交流から直流に変換して出力する順変換を選択的に行う双方向の変換回路であり、
前記変換回路には、前記分散型電源と並列に蓄電装置が接続され、
前記制御装置は、
電気の需要過多が予想される場合、前記受電電力の目標値を前記需要設備の消費電力よりも小さい値に変更し、前記変換回路を逆変換動作させて、前記蓄電装置を放電する、電力制御装置。
【請求項6】
電力系統と連系する分散型電源用の電力制御装置であって、
前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換を行う変換回路と、
前記変換回路を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記分散型電源の発電量の予測値と、需要設備の消費電力の予測値とに基づいて、前記電力系統の受電点の受電電力の目標値を変更し、
前記受電点の前記受電電力が目標値になるように、前記変換回路の出力を制御し、
前記変換回路は、前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換又は前記電力系統から供給される電力を交流から直流に変換して出力する順変換を選択的に行う双方向の変換回路であり、
前記変換回路には、前記分散型電源と並列に蓄電装置が接続され、
前記制御装置は、
前記分散型電源の発電量の予測値が前記消費電力の予測値よりも大きい場合、前記受電電力の目標値を前記消費電力よりも大きな値に変更し、前記変換回路を順変換動作させて、前記蓄電装置を充電する、電力制御装置。
【請求項7】
電力系統と連系する分散型発電システムであって、
請求項1~
請求項6のいずれか一項に記載の電力制御装置と、
前記電力制御装置に接続された分散型電源と、
前記電力制御装置に接続された蓄電装置と、を備え、
EMSコントローラを有さない、分散型発電システム。
【請求項8】
EMSコントローラを有さない分散型電源用の電力制御装置の制御方法であって、
電力系統の受電点の受電電力が目標値になるように前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換を行う変換回路を制御し、
前記分散型電源の発電量の予測値と需要設備の消費電力の予測値とに基づいて電力の需給バランスを予測し、前記電力系統の受電点の受電電力の目標値制御により電力の需給調整を行うことにより、前記電力系統の周波数を安定させる、電力制御装置の制御方法。
【請求項9】
EMSコントローラを有さない分散型発電システムであって、
電力系統に対して並列に接続された複数の電力制御装置と、
複数の前記電力制御装置にそれぞれ接続された複数の分散型電源と、
複数の前記電力制御装置にそれぞれ接続された複数の蓄電装置と、を備え、
複数の前記電力制御装置は、
マスタ装置と、前記マスタ装置に対して通信可能に接続されたスレーブ装置と、を含み、
前記マスタ装置は、前記電力系統の受電点の受電電力が目標値になるように、前記マスタ装置及び前記スレーブ装置の出力電力を統合制御し、
前記マスタ装置は、
前記分散型電源の発電量の予測値と需要設備の消費電力の予測値とに基づいて電力の需給バランスを予測し、前記受電電力の目標値制御により電力の需給調整を行うことにより、前記電力系統の周波数を安定させる、分散型発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電力系統と連系する分散型電源の電力制御装置、電力制御装置の制御方法、分散型発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に対する依存の低減や環境問題の観点から、太陽光発電システム(PVシステム)に代表される分散型電源の導入が進められている。PVシステムは太陽光発電パネルで発電された電力を、電力制御装置のインバータ回路を用いて、直流から交流に変換して出力している。
【0003】
近年では、EMS(Energy Management System)が注目されている。EMSは、エネルギーの使用状況を監視して最適化するシステムである。EMS技術の1つに、デマンドレスポンス(DR)がある。デマンドレスポンスは、電気の需要調整であり、下げDRにより電気の需要を減らし、上げDRにより電気の需要を増やすことで、電気の需給バランスをとる。下記特許文献1には、電力事業者から発せられるDR指令に応答して、需要家の消費電力を、HEMSコントローラ(判定装置100)を用いて制御する点について、開示がある。
【0004】
下記特許文献2は、電力貯蔵型太陽光発電システムにおいて、分散型電源の発電電力と電力貯蔵手段からの電力の両方の出力時に、受電電力検出手段によって検出された受電電力が所定の電力を下回らないように、第2の電力変換手段を制御する技術を開示している。これにより、電力貯蔵手段からの電力が電力系統に逆潮流することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-134494号公報
【文献】特許第4765162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力を効率的に運用するため、分散型電源システムにEMS技術を適用することに対するニーズが高まっている。分散型電源システムに専用のEMSコントローラを設置すると、システム構成が複雑になり、高いコストがかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る、電力系統と連系する分散型電源用の電力制御装置は、前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換を行う変換回路と、前記変換回路を制御する制御装置と、を有する。前記制御装置は、前記分散型電源の発電量の予測値と、需要設備の消費電力の予測値とに基づいて、前記電力系統の受電点の受電電力の目標値を変更し、前記受電点の前記受電電力が目標値になるように、前記変換回路の出力を制御する。
【0008】
この技術は電力制御装置の制御方法及び分散型発電システムに適用することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
この技術により、専用のEMSコントローラを使用せずに、EMS技術を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
電力を効率的に運用するため、分散型電源システムにEMS技術を適用することが課題となっていた。専用のEMSコントローラを設置すると、システム構成が複雑になり、コストがかかるという問題があった。発明者は、EMSコントローラの機能を、電力制御装置で実現し、EMSコントローラを廃止することを検討した。発明者は、受電電力の目標値を制御する技術(例えば、特許文献2に開示の技術)を改良することで、電力制御装置において、電気の需給調整機能を実現するに至った。
【0012】
電力系統と連系する分散型電源用の電力制御装置は、前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換を行う変換回路と、前記変換回路を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記分散型電源の発電量の予測値と、需要設備の消費電力の予測値とに基づいて、前記電力系統の受電点の受電電力の目標値を変更し、前記受電点の前記受電電力が目標値になるように、前記変換回路の出力を制御する。
需要設備は、消費電力の予測が可能な(予測がしやすい)構内負荷(on-premise load)であることが好ましい。
【0013】
受電電力の目標値変更により、電力系統から受電点に流れる電力潮流を調整できる。そのため、電気の需要調整が出来、電力を効率的に運用することが出来る。電気の需給予測及び需要調整を電力制御装置が行うので、専用のEMSコントローラが不要となり、システムの低コスト化に有効である。
【0014】
前記変換回路は、前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換又は前記電力系統から供給される電力を交流から直流に変換して出力する順変換を選択的に行う双方向の変換回路であり、前記変換回路には、前記分散型電源と並列に蓄電装置が接続され、前記制御装置は、前記分散型電源の発電量の予測値が前記消費電力の予測値よりも大きい場合、前記受電電力の目標値を前記消費電力の予測値よりも大きな値に変更し、前記変換回路を順変換動作させて、前記蓄電装置を充電してもよい。
【0015】
分散型電源の発電量の予測値が構内負荷の消費電力の予測値よりも大きい場合、電気の供給が需要を上回る状態であり、供給過多である。このような場合、蓄電装置を充電して電気の需要を増やすことで、電気の需給バランスを図ることが出来る。
【0016】
前記変換回路は、前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換又は前記電力系統から供給される電力を交流から直流に変換して出力する順変換を選択的に行う双方向の変換回路であり、前記変換回路には、前記分散型電源と並列に蓄電装置が接続され、前記制御装置は、前記消費電力の予測値が前記分散型電源の発電量の予測値よりも大きい場合、前記受電電力の目標値を前記消費電力の予測値よりも小さい値に変更し、前記変換回路を逆変換動作させて、前記蓄電装置を放電してもよい。
【0017】
構内負荷の消費電力の予測値が分散型電源の発電量の予測値よりも大きい場合、電気の需要が供給を上回る状態であり、需要過多である。このような場合、蓄電装置を放電して電力系統に電気を供給することで、電気の需給バランスを図ることが出来る。
【0018】
<実施形態1>
1.太陽光発電システムS1の説明
図1は太陽光発電システムS1のブロック図である。
太陽光発電システムS1は、太陽光発電パネル10と、蓄電装置15と、パワーコンディショナ20と、から構成されている。太陽光発電パネル10は、分散型電源の一例、パワーコンディショナ20は、電力制御装置の一例である。太陽光発電システムS1は、分散型発電システムの一例である。
【0019】
太陽光発電システムS1は、専用のEMSコントローラを有さないシステムである。専用のEMSコントローラは、EMS制御を行う専用のコントローラであり、パワーコンディショナとは別装置である。専用のEMSコントローラは、例えば、分散型電源システムの状態を監視し、電気の需給バランスに基づいて、分散型電源システムの出力を制御することで、電気のデマンドを調整する装置である。
【0020】
パワーコンディショナ20は、第1コンバータ回路21と、第2コンバータ回路23と、DCリンク部25と、双方向インバータ回路31と、リレー37と、制御装置50と、直流電圧検出部27と、出力電流検出部33と、出力電圧検出部35と、を備えている。
【0021】
第1コンバータ回路21には、太陽光発電パネル10が接続されている。第1コンバータ回路21は、DC/DCコンバータであり、太陽光発電パネル10の出力電圧(直流)を昇圧して出力する。第1コンバータ回路21はチョッパでもよい。
【0022】
第2コンバータ回路23には、蓄電装置15が接続されている。蓄電装置15は、例えば、二次電池である。第2コンバータ回路23は、蓄電装置15の放電と充電を行う双方向のDC/DCコンバータである。第2コンバータ回路23は双方向チョッパでもよい。
【0023】
太陽光発電パネル10と蓄電装置15は、第1コンバータ回路21と第2コンバータ回路23を介して、DCリンク部25に対して並列に接続されている。
【0024】
DCリンク部25は、コンバータ回路の接続点24と双方向インバータ回路31の間に位置している。DCリンク部25には、電解コンデンサC1が設けられている。電解コンデンサC1は、DCリンク部25の電圧Vdcを安定させるために設けられている。
【0025】
直流電圧検出部27は、DCリンク部25の電圧Vdcを検出する。直流電圧検出部27により検出されたDCリンク部25の電圧Vdcは、制御装置50に対して入力される。
【0026】
双方向インバータ回路31は、DCをACに変換する逆変換(インバート)と、ACをDCに変換する順変換(コンバート)を選択的に行う、双方向の変換回路である。双方向インバータ回路31は、DCリンク部25に接続されており、逆変換動作時には、DCリンク部25より入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。詳細には、双方向インバータ回路31には、太陽光発電パネル10の発電によりDCリンク部25において基準値より増加した電圧分に相当する電力が入力される。従って、基準値より増加した電圧分に相当する電力が、直流から交流に変換され、双方向インバータ回路31から出力される。
【0027】
蓄電装置15は、第2コンバータ回路23を介して、太陽光発電パネル10の余剰電力を蓄電することが出来る。蓄電装置15は、太陽光発電パネル10の発電量PGが不足している場合、第2コンバータ回路23を介して、放電して発電量PGの不足を補うことが出来る。
【0028】
双方向インバータ回路31は、リレー37を介して、系統電源2を交流電源とする電力系統1に接続されている。電力系統は電力事業者のものでもよいし、大型パワーコンディショナの自立運転出力で成り立っている独立した電力系統でもよい。
【0029】
リレー37は、電力系統1との連系用として設置されている。リレー37を閉じることで、太陽光発電システムS1を電力系統1に連系させることが出来る。
【0030】
出力電流検出部33は、双方向インバータ回路31の出力電流Iinvを検出する。出力電圧検出部35は、双方向インバータ回路31の出力側に位置しており、双方向インバータ回路31の出力電圧Vinvを検出する。
【0031】
出力電流検出部33により検出された双方向インバータ回路31の出力電流Iinvと、出力電圧検出部35により検出された双方向インバータ回路31の出力電圧Vinvは、制御装置50に対して入力される。制御装置50は、双方向インバータ回路31の出力電流Iinvと出力電圧Vinvとに基づいて、双方向インバータ回路31の出力電力(有効電力)Pinvを算出する。出力電力Pinvは、逆変換時を「正」とし、順変換時を「負」とする。
【0032】
双方向インバータ回路31と電力系統1とを接続する電力線5には、分岐線4を介して、需要設備である構内負荷Lが接続されている。構内負荷Lに対して、パワーコンディショナ20と電力系統1の双方から電力を供給することが出来る。
【0033】
受電点3は、電力系統1による電力の供給地点であり、
図1に示すように、電力系統1と需要設備である構内負荷Lが設けられた構内との境界付近に位置する。受電点3(受電ライン)は、構内負荷L又は分岐線4が電力線5に接続された点と、系統電源2との間に位置する。
【0034】
電力系統1には、受電点3の電力検出用の計器として、外部トランスデューサ等の外部計測器40が設けられている。
【0035】
外部計測器40は、受電電流検出部41と、系統電圧検出部43とを有している。外部計測器40は受電点3に対応して設置されており、受電電流検出部41は、受電点3の受電電流Igridを検出する。系統電圧検出部43は電力系統1の系統電圧Vgridを検出する。
【0036】
外部計測器40は、受電電流Igridと系統電圧Vgridとに基づいて、受電電力(有効電力)Pgridを算出する。外部計測器40により検出された受電電力Pgridは、制御装置50に対して入力される。受電電力Pgridは、電力潮流(以下、単に潮流とする)の状態判定に使用することが出来る。外部計測器40は受電点3の受電電力Pgridを計測する計測器である。
【0037】
受電電力Pgridは、順潮流(
図1:電力系統から構内に向かう電気の潮流)を「正」とし、逆潮流(
図2:構内から電力系統に向かう電気の潮流)を「負」とする。
【0038】
制御装置50は、CPU51とメモリ53を有する。メモリ53には、電力の需給予測を行うプログラムや、受電点3の受電電力Pgridの目標値を変更するプログラムが記憶されている。
【0039】
制御装置50は、双方向インバータ回路31に指令を与えることで、順変換動作、逆変換動作の切り換えを制御でき、双方向インバータ回路31の出力、つまり出力電力Pinvを制御できる。出力電力Pinvは、出力電流Iinvの調整により制御できる。
【0040】
制御装置50は、第1コンバータ回路21の入り切りにより、DCリンク部25に対する太陽光発電パネル10の接続/非接続を制御でき、第2コンバータ回路23の入り切りにより、DCリンク部25に対する蓄電装置15の接続/非接続を制御できる。制御装置50は、第2コンバータ回路23を介して、蓄電装置15の充電と放電の切り換えを制御でき、第2コンバータ回路23を介して、蓄電装置15の充電電流、放電電流を制御できる。
【0041】
2.電力の需給予測
制御装置50は、太陽光発電パネル10の発電量PGの予測データを入手して、メモリ53に記憶する。発電量PGの予測データは、ネットワークNWを介して、予測データ提供所70から入手することが出来る。予測データ提供所70は、パワーコンディショナ20のサプライヤによる提供所でもいいし、発電事業者の提供所でもよい。太陽光発電パネル10の発電量PGの予測値は、日射量Xの予測値から求めることが出来る。例えば、日射量Xの予測値がX1の場合、X-PGの相関特性(
図3参照)から、発電量はPG1であると予測できる。日射量Xの予測値は気象情報から得るとよい。
【0042】
制御装置50は、構内負荷Lの消費電力PLを予測して、メモリ53に記憶する。構内負荷Lの消費電力PLは、過去のデータから予測することができる。例えば、数日間の消費電力PLのデータを統計的に処理することで翌日の消費電力PLのデータを予測することが出来る。
【0043】
構内負荷Lの消費電力PLは、受電点3の受電電力Pgridと双方向インバータ回路31の出力電力Pinvとから求めることが出来る。順潮流(Pgrid>0)の場合、構内負荷Lの消費電力PLは出力電力Pinvと受電電力Pgridの合計である。逆潮流(Pgrid<0)の場合、構内負荷Lの消費電力PLは出力電力Pinvと受電電力Pgridの差である。
【0044】
PL=Pinv+Pgrid (1)
PL=Pinv-Pgrid (2)
【0045】
3.電力の需給予測に基づく受電電力Pgridの目標値制御
制御装置50は、太陽光発電パネル10の発電量予測と構内負荷Lの消費電力予測とから、電力の需給バランスを数時間単位で予測し、受電電力Pgridの目標値制御を行う。
【0046】
図4は、受電電力Pgridの目標値制御のフローチャートである。受電電力Pgridの目標値制御は、太陽光発電パネル10の発電可能期間、つまり日の出から日の入りまでの期間を対象に行われる。
【0047】
制御装置50は、目標値制御がスタートすると、太陽光発電パネル10の発電量予測と、構内負荷Lの消費電力予測をメモリ53から読み出す(S10)。
【0048】
制御装置50は、発電量予測と消費電力予測から電力の需給バランスを求めて、許容範囲か、判断する(S20)。(3)式で示すように、構内負荷Lの消費電力PLと太陽光発電パネル10の発電量PGの差PL-PGの絶対値が許容値Kよりも小さい場合、電力の需給バランスは、許容範囲と判断できる。
【0049】
|PL-PG|<K (3)
【0050】
電力の需給バランスが許容範囲であり、蓄電装置15が放電している場合(S20:YES)、制御装置50は、受電点3の受電電力Pgridの目標値を第1目標値に設定する(S30)。第1目標値は、正の値であり一例として500Wである。
【0051】
制御装置50は、次に双方向インバータ回路31の出力調整を行う(S50)。この場合、制御装置50は、受電点3の受電電力Pgridが、第1目標値を下回らないように制御する。つまり、受電電力Pgridの計測値が第1目標値(500W)より低い場合、蓄電装置15の放電を絞ることにより双方向インバータ回路31の出力電力Pinvを下げて、受電電力Pgridの計測値が第1目標値を下回らないようにする。これにより、蓄電装置15から放電した電力が、電力系統1に逆潮流することを抑制できる。
【0052】
蓄電装置15が放電していない場合、制御装置50は、第1目標値に基づく出力電力Pinvの調整を行わずに、太陽光電池パネル10で発電した電力を、双方向インバータ回路31で交流に変換して出力してもよい。
【0053】
その後、S60では、受電電力Pgridの目標値制御を終了するか、否かが判定される。太陽光発電パネル10の発電可能期間内であれば、S10に戻り、次の数時間の発電量予測と消費電力予測をメモリ53から読み出す。
【0054】
電力の需給バランスが許容範囲である場合、上記の制御が継続される。そして、日の入りに伴って、太陽光発電パネル10の発電が停止すると、S60にて、YES判定され、一連の処理は終了する。
【0055】
太陽光発電パネル10の発電量PGは日射にほぼ比例するため天候により変動する。構内負荷Lの消費電力PLも季節や曜日により変動する。そのため、電力の需要バランスが崩れて、許容範囲から逸脱する場合がある。
【0056】
構内負荷Lの消費電力PLと太陽光発電パネル10の発電量PGの差PL-PGの絶対値が許容値K以上の場合、電力の需給バランスは、許容範囲外と判断できる。
【0057】
電力の需給バランスが許容範囲外である場合(S20:NO)、制御装置50は、太陽光発電パネル10の発電量PGの予測値と構内負荷Lの消費電力PLの予測値との大小関係に基づいて、受電電力Pgridの目標値を変更する(S40)。
【0058】
図5は、目標値変更処理のフローチャートである。目標値変更処理は、S41、S43、S45の3つのステップからなる。制御装置50は、S41にて、発電予測と構内負荷の負荷予測の大小関係を判断する。
【0059】
(電気の供給過多の場合)
太陽光発電パネル10の発電量PGの予測値が構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも大きい場合(S41:YES)、制御装置50は、受電電力Pgridの目標値を、構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも大きな値にする。受電電力Pgridの目標値を、構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも大きな値にすることで、双方向インバータ回路31は順変換動作となる。例えば、
図6に示すように、構内負荷Lの消費電力PLの予測値が5kW、パワーコンディショナ20の最大出力が10kWの場合、制御装置50は、受電電力Pgridの目標値を15kWにする。15kWは、消費電力PLの予測値である5kWにパワーコンディショナ20の最大出力である10kWを加えた値である。
【0060】
制御装置50は、受電電力Pgridの計測値が、変更後の目標値に一致するように、双方向インバータ回路31の出力電力Pinvを調整する(S50)。この場合、双方向インバータ回路31の出力電力Pinvは、
図6に示すように、-10kWに調整される。つまり、双方向インバータ回路31は、電力系統1から入力される交流電力を直流に変換して蓄電装置15に出力する順変換動作となり、蓄電装置15を、太陽光電池パネル10で発電した電力と、電力系統1に接続された構外の分散型電源で発電した電力で充電することが出来る。構外の分散型電源は、太陽光電池パネルなど新エネルギーを利用した電源で、不図示である。
【0061】
その後、S60では、受電電力Pgridの目標値制御を終了するか、否かが判定される。太陽光発電パネル10の発電可能期間内であれば、S10に戻り、発電量予測と消費電力予測が新たに取得される。
【0062】
太陽光発電パネル10の発電量PGが構内負荷Lの消費電力PLよりも大で、電力の需給バランスが許容範囲外である状態が継続していれば、受電電力Pgridの目標値は、変更後の目標値に維持される。そのため、蓄電装置15を、太陽光発電パネル10の出力とパワーコンディショナ20の最大出力10kWで充電する状態が継続する。
【0063】
電力の需給バランスが許容範囲外である状態の継続中に、構内負荷Lの消費電力PLの予測値が当初の予測値から増減する場合、受電電力Pgridの目標値を、変更後の目標値から更に変更してもよい。例えば、消費電力PLの予測値が5kWから1kWに減少した場合、受電電力Pgridの目標値を15kWから11kWに変更してもよい。
【0064】
11kWは、消費電力PLの増減後の予測値である1kWに、パワーコンディショナ20の最大出力である10kWを加えた値である。構内負荷Lの負荷変動に応じて、受電電力Pgridの目標値を変更することで、太陽光発電パネル10の出力分に加え、パワーコンディショナ20の最大出力で、蓄電装置15を常に充電することが出来る。
【0065】
太陽光発電パネル10の発電量PGが構内負荷Lの消費電力PLよりも大きい場合、電気の供給過多であり、電力系統1の系統電圧の周波数が上昇する傾向となる。電気が供給過多である場合、蓄電装置15を充電して構内負荷として使用することで、電気の需要を増やすことができ、電力系統1の周波数の上昇を抑えることが出来る。
【0066】
(電気の需要過多の場合)
構内負荷Lの消費電力PLの予測値が太陽光発電パネル10の発電量PGの予測値よりも大きい場合(S41:NO)、制御装置50は、受電電力Pgridの目標値を、構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも小さい値にする。受電電力Pgridの目標値を、構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも小さい値にすることで、双方向インバータ回路31は逆変換動作となる。受電電力Pgridの目標値は、構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも小さい値であれば、プラス(順潮流)でもいいし、マイナス(逆潮流)でもよい。例えば、
図7に示すように、構内負荷Lの消費電力PLの予測値が5kW、パワーコンディショナ20の最大出力が10kWの場合、制御装置50は、受電電力Pgridの目標値を-5kWにする。-5kWは、消費電力PLの予測値である5kWからパワーコンディショナ20の最大出力である10kWを引いた値である。
【0067】
制御装置50は、受電電力Pgridの計測値が、変更後の目標値に一致するように、双方向インバータ回路31を調整する(S50)。この場合、双方向インバータ回路31の出力電力Pinvは、制御装置50により10kWに調整される。出力電力Pinvの調整は、第2コンバータ回路23を介して蓄電装置15の放電量を調整することで行ってもよい。
図7に示すように、双方向インバータ回路31は、太陽光電池パネル10及び蓄電装置15から入力される直流電力を交流に変換して出力する逆変換動作となり、パワーコンディショナ20の出力10kWと構内負荷Lの消費電力5kWの差分が、パワーコンディショナ20から電力系統1に対して逆潮流する。
【0068】
その後、S60では、受電電力Pgridの目標値制御を終了するか、否かが判定される。太陽光発電パネル10が発電中であれば、S10に戻り、発電量予測と消費電力予測が新たに取得される。
【0069】
構内負荷Lの消費電力PLが太陽光発電パネル10の発電量PGよりも大で、電力の需給バランスが許容範囲外である状態が継続していれば、受電電力Pgridの目標値は、変更後の目標値に維持される。そのため、蓄電装置15を、パワーコンディショナ20の最大出力10kWで放電して、パワーコンディショナ20から電力系統1に逆潮流する状態が継続する。
【0070】
電力の需給バランスが許容範囲外である状態の継続中に、構内負荷Lの消費電力PLの予測値が当初の予測値から増減する場合、受電電力Pgridの目標値を、変更後の目標値から更に変更してもよい。例えば、消費電力PLの予測値が5kWから1kWに減少した場合、受電電力Pgridの目標値を-5kWから-9kWに変更してもよい。
【0071】
-9kWは、消費電力PLの増減後の予測値である1kWからパワーコンディショナ20の最大出力である10kWを引いた値である。構内負荷Lの負荷変動に応じて、受電電力Pgridの目標値を変更することで、蓄電装置15を、パワーコンディショナ20の最大出力で常に放電することが出来る。
【0072】
構内負荷Lの消費電力PLが太陽光発電パネル10の発電量PGよりも大きい場合、電気の需要過多であり、電力系統1の系統電圧の周波数が低下する傾向となる。電気が需要過多である場合に、太陽光発電パネル10の余剰電力でそれまでに充電した蓄電装置15を放電して電源として使用することで、電気の供給を増やすことができ、電力系統1の周波数の低下を抑えることが出来る。
【0073】
4.効果
本実施形態では、パワーコンディショナ20で、電気の需給バランスを予測して、電気の需要調整(デマンドレスポンス)を行う。そのため、専用のEMSコントローラを使用せずに、EMS技術を実現することが出来る。
本技術は、離島など、化石燃料の運搬コストが高いことや再生可能エネルギーの有効利用などを理由に分散型電源システムの導入が望まれる土地において、比較的小規模なスマートシティを実現することに適している。そうした土地では、太陽光を遮る高層建築物などの障害物が少なく、太陽光発電パネル10の発電量PGを予測しやすい傾向がある。
【0074】
<実施形態2>
図8は太陽光発電システムS2のブロック図である。太陽光発電システムS2は、3つのパワーコンディショナ20A、パワーコンディショナ20B及びパワーコンディショナ20Cを有している。
3つのパワーコンディショナ20A、20B、20Cは、分岐線5A、5B、5Cを介して、電力線5に接続されている。3つのパワーコンディショナ20A、20B、20Cは、電力系統1に並列に接続されている。
【0075】
パワーコンディショナ20Aは、制御装置50Aを有している。パワーコンディショナ20Aには、太陽光発電パネル10Aと蓄電装置15Aが並列に接続されている。
【0076】
パワーコンディショナ20Bは、制御装置50Bを有している。パワーコンディショナ20Bには、太陽光発電パネル10Bと蓄電装置15Bが並列に接続されている。パワーコンディショナ20Bは通信線R1を介してパワーコンディショナ20Aと接続されており、パワーコンディショナ20Aと通信可能である。
【0077】
パワーコンディショナ20Cは、制御装置50Cを有している。パワーコンディショナ20Cには、太陽光発電パネル10Cと蓄電装置15Cが並列に接続されている。パワーコンディショナ20Cは通信線R2を介してパワーコンディショナ20Bと接続されており、パワーコンディショナ20Bを介して、パワーコンディショナ20Aと通信可能である。
【0078】
パワーコンディショナ20Aは、パワーコンディショナ20B及びパワーコンディショナ20Cと制御機能が異なっており、パワーコンディショナ20Aは3つのパワーコンディショナ20A、20B、20Cの出力電力を統合制御するマスタ装置である。パワーコンディショナ20B及びパワーコンディショナ20Cは、パワーコンディショナ20Aからの指令により、出力電力を調整するスレーブ装置である。
【0079】
構内には、第1構内負荷Lo、第2構内負荷La、第3構内負荷Lb及び第4構内負荷Lcが設けられている。第1構内負荷Loは電力線5に接続されている。第2構内負荷La、第3構内負荷Lb、第4構内負荷Lcは、分岐線5A、5B、5Cにそれぞれ接続されている。
【0080】
電力系統1には、受電点3の電力検出用の計器として、外部計測器40が設けられている。外部計測器40は、受電電流検出部41と、系統電圧検出部43とを有している。受電電流検出部41は、受電点3の受電電流Igridを検出する。系統電圧検出部43は電力系統1の系統電圧Vgridを検出する。
【0081】
外部計測器40は、受電電流Igridと系統電圧Vgridとに基づいて、受電電力(有効電力)Pgridを算出する。外部計測器40により検出された受電電力Pgridは、パワーコンディショナ20Aの制御装置50Aに対して入力される。
【0082】
パワーコンディショナ20Aは、太陽光発電パネル10A、10B、10Cの発電予測と構内負荷Lo、La、Lb、Lcの負荷予測から電気の需給バランスを求め、電気の需給バランスに応じて、受電点3の受電電力Pgridの目標値を算出する。
【0083】
そして、パワーコンディショナ20Aは、受電点3の受電電力Pgridが目標値に一致するように、並列に接続された3つのパワーコンディショナ20A、20B、20Cの出力電力を統括制御する。つまり、受電点3の受電電力Pgridが目標値に一致していない場合、パワーコンディショナ20Aは、調整量の分担を決定し、パワーコンディショナ20Bとパワーコンディショナ20Cに指令を送る。そして、各パワーコンディショナ20A、20B、20Cにて、出力電力を調整することで、受電点3の受電電力Pgridを目標値に追従させることが出来る。
【0084】
例えば、受電点3の受電電力Pgridが目標値よりも「Y」プラスしている場合、パワーコンディショナ20Aから、パワーコンディショナ20Bとパワーコンディショナ20Cに対して指令を送り、3台のパワーコンディショナ20A~20Cの出力電力を現在値からそれぞれ「Y/3」増加させる。
【0085】
3台のパワーコンディショナ20A、20B、20Cの出力電力をそれぞれ「Y/3」増加させることで、パワーコンディショナ20A、20B、20Cの全体の出力電力は「Y」増加する。これにより、受電点3の受電電力Pgridを「Y」減少させて、目標値に一致させることが出来る。
【0086】
パワーコンディショナ20A、20B、20Cの分担比は、蓄電装置15のSOC(充電状態)に応じて決定してもよい。
【0087】
例えば、蓄電装置の充電により電気の需要を増やす時に、蓄電装置15CのSOCが、蓄電装置15A及び蓄電装置15BのSOCよりも高い場合、
図9に示すように、パワーコンディショナ20Aとパワーコンディショナ20Bの出力電力をそれぞれ「-Y/2」として、SOCの低い2つの蓄電装置15Aと蓄電装置15Bだけを充電してもよい。このようにすることで、SOCの低い2つの蓄電装置15Aと蓄電装置15Bが充電されるため、蓄電装置15A、15B、15CのSOC差を抑えることが出来、3つの蓄電装置15A、15B、15Cを均等に使用できる。そのため、太陽光発電システムS2の長寿命化に有効である。
【0088】
図10は太陽光発電システムの比較例である。
図10のシステムS3は、並列に接続された3つのパワーコンディショナ120A、パワーコンディショナ120B、パワーコンディショナ120Cを有している。3つのパワーコンディショナ120A、120B、120Cは、分岐線5A、5B、5Cを介して、電力線5に分岐接続されており、並列接続されている。
【0089】
分岐線5A、5B、5Cには、電力計130A、130B、130Cが設けられている。電力計130A、130B、130Cは、構内負荷点6A、6B、6Cの受電電力を計測する。
【0090】
パワーコンディショナ120Aの制御部150Aは、電力計130Aの計測値をモニタして、構内負荷点6Aの受電電力が目標値となるように、出力電力を制御する。
【0091】
パワーコンディショナ120Bの制御部150Bは、電力計130Bの計測値をモニタして、構内負荷点6Bの受電電力が目標値となるように、出力電力を制御する。同様に、パワーコンディショナ120Cの制御部150Cは、電力計130Cの計測値をモニタして、構内負荷点6Cの受電電力が目標値となるように、出力電力を制御する。
【0092】
受電点3の受電電力Pgridは、構内負荷点6Aの受電電力と構内負荷点6Bの受電電力と構内負荷点6Cの受電電力を合計したものである。そのため、パワーコンディショナ120A、120B、120Cにて、構内負荷点6A、6B、6Cの受電電力が目標値となるように出力を独立して制御することで、受電点3の受電電力Pgridを目標値に制御することが出来る。
【0093】
パワーコンディショナ120A、120B、120Cにて、出力を独立して制御すると、あるパワーコンディショナで行った出力調整が他のパワーコンディショナの出力に影響を及ぼす結果、指令値のハンチングが生じ、受電点3の潮流が不安定になることが懸念される。
【0094】
図9に示した太陽光発電システムS2は、パワーコンディショナ20Aが、3つのパワーコンディショナ20A、20B、20Cの出力電力を統括制御する。そのため、指令値のハンチングを抑制して、受電点3の潮流を安定させることが出来る。
【0095】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0096】
(1)実施形態1、2では、分散型電源は、太陽光発電パネル10であった。分散型電源は、需要地に隣接して分散配置される小規模な発電設備全般の総称であり、例えば、太陽光発電パネル10以外に、風力発電装置、バイオマス発電装置でもよい。風力発電装置やバイオマス発電装置等の交流発電装置の場合、発電装置の出力を整流器で整流して直流に変換してから、コンバータ回路を介して、DCリンク部25に接続するとよい。
【0097】
(2)実施形態1、2では、電気の供給過多の場合(
図6)、蓄電装置15を充電して、電気の需要量を増加した。電気の需要過多の場合(
図7)、蓄電装置15を放電して電気の供給量を増加した。これらの調整はいずれか一方のみ行ってもよい。つまり、電気の供給過多の場合に、電気の需要量を増加する調整だけ行ってもいいし、電気の需要過多の場合に、電気の供給を増加する調整だけを行ってもよい。電気の供給量の調整は、蓄電装置15の放電量の調整に限らず、双方向インバータ回路31の力率で調整してもよい。
【0098】
(3)実施形態1、2では、電気の供給過多の場合(
図6の場合)、蓄電装置15を、太陽光電池パネル10で発電した電力と、電力系統1に接続された構外の分散型電源からの電力で充電した。蓄電装置15の充電は、太陽光電池パネル10で発電した電力だけで行ってもいいし、電力系統1に接続された構外の分散型電源からの電力だけで行ってもいい。太陽光電池パネル10で発電した電力だけで、蓄電装置15を充電する場合、双方向インバータ回路31を停止するか、リレー37をオープンしてパワーコンディショナ20を電力系統1から切り離してもよい。受電電力Pgridの目標値を、構内負荷Lの消費電力PLと等しくして、電力系統1から構内負荷Lに対して電力供給するとよい。
【0099】
(4)実施形態1、2では、変換回路は、双方向インバータ回路31であった。変換回路は、分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力する逆変換を行うことが出来ればよく、双方向でなくてもよい。分散型電源は、必ずしも蓄電装置15を備えなくてもよい。
【0100】
(5)実施形態1、2では、制御装置50は、発電量PGの予測データを、ネットワークNWを介して予測データ提供所70から入手した。発電量PGは、制御装置50にて、予測してもよい。
【0101】
(6)実施形態1、2では、制御装置50は、電力の需給バランスが許容範囲外である場合に、電気の需給調整を行った。具体的には、PG>PLの場合、受電電力Pgridの目標値を構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも大きくして、電気の需要を増やす制御(S43)を行った。PL>PGの場合、受電電力Pgridの目標値を、構内負荷Lの消費電力PLの予測値よりも小さくして、電気の供給を増やす制御(S45)を行った。
【0102】
電気の需要を増やす制御(S43)は、PG>PLの条件が満たされればいつ行ってもよく、電力の需給バランスが許容範囲である時に行ってもよい。電気の供給を増やす制御(S45)は、PL>PGの条件が満たされればいつ行ってもよく、電力の需給バランスが許容範囲である時に行ってもよい。PG>PLの場合に電気の需要が増加(電気の供給が減少)し、PL>PGの場合に電気の供給が増加(電気の需要が減少)すればよく、受電電力Pgridの目標値は、Pgrid1>0、Pgrid2<0であってもよい。Pgrid1は、PG>PLの場合における受電電力Pgridの目標値、Pgrid2は、PL>PGの場合における受電電力Pgridの目標値である。また、Pgrid1>Pgrid2の条件が満たされてもよい。
【0103】
(7)実施形態1、2では、電気の需要過多の場合(
図7の場合)、Pgrid2を-5kWにするため、蓄電装置15を放電した。蓄電装置15を放電しなくても、受電電力をPgrid2に制御できる場合(例えば、Pgrid2>0の場合)、蓄電装置15は放電しなくてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 電力系統
2 系統電源
3 受電点
10 太陽光発電パネル(本発明の「分散型電源」の一例)
15 蓄電装置
20 パワーコンディショナ(本発明の「電力制御装置」の一例)
21 第1コンバータ回路
23 第2コンバータ回路
31 インバータ回路
40 外部計測器
50 制御装置
120A マスタ装置
120B スレーブ装置
120C スレーブ装置