(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】膜形成用組成物、レジスト下層膜、膜形成方法、レジストパターン形成方法、有機下層膜反転パターン形成方法、膜形成用組成物の製造方法及び金属含有膜パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20241119BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20241119BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20241119BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
G03F7/40 511
G03F7/26 511
H01L21/30 573
(21)【出願番号】P 2021522832
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020989
(87)【国際公開番号】W WO2020241712
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019101806
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020016988
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】大坪 裕介
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 優貴
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一憲
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044212(JP,A)
【文献】特開2001-272788(JP,A)
【文献】特開2010-066676(JP,A)
【文献】特開2009-300533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0280541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/40
G03F 7/26
H01L 21/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物と、含窒素有機化合物と、溶媒とを含有し、
上記含窒素有機化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物又はこれらの混合物であり、
上記金属化合物が、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解縮合物又はこれらの混合物であり、
上記金属化合物に含まれる金属原子が、周期表第2族~第13族の第3周期及び周期表第2族~第14族の第4周期~第7周期に属
し、
上記含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物が、
上記含窒素芳香族複素環に結合した1以上の炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基と、
この各脂肪族炭化水素基に結合した1以上のヒドロキシ基とを有する膜形成用組成物。
【請求項2】
上記含窒素有機化合物が、上記金属化合物中の金属原子に配位しているか、又は上記金属化合物中の金属原子から遊離している請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
上記窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物が下記式(1)で表される請求項1又は請求項2に記載の膜形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、m+nは3であり、mは2又は3であり、nは0又は1である。R
1は炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基であり、複数のR
1は互いに同一又は異なる。R
2は、水素原子、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基又は下記式(1-1)で表される基である。)
【化2】
(式(1-1)中、R
2Aは、炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基である。R
2B及びR
2Cは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基又は-R
2D-OHである。R
2Dは、炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基である。pは、1~4の整数である。pが2以上の場合、複数のR
2Aは互いに同一又は異なり、複数のR
2Cは互いに同一又は異なる。*は、上記式(1)における窒素原子と結合する部位を示す。)
【請求項4】
上記金属原子が、周期表第4族に属する請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
レジスト下層膜形成用である請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
有機下層膜反転パターン形成用である請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
基板に直接又は間接に請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の膜形成用組成物を塗工する工程を備える膜形成方法。
【請求項8】
基板に直接又は間接に金属含有膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記金属含有膜形成用組成物塗工工程により形成された金属含有膜に直接又は間接に有機下層膜を形成する工程と、
上記有機下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記金属含有膜にパターンを形成する工程と
を備え、
上記金属含有膜形成用組成物が、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の膜形成用組成物である金属含有膜パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、レジスト下層膜、膜形成方法、レジストパターン形成方法、有機下層膜反転パターン形成方法、膜形成用組成物の製造方法及び金属含有膜パターン形成方法に関する。
【技術分野】
【0002】
半導体用素子等の製造においては、金属アルコキシドの加水分解縮合物を用いることが提案されている(特開2014-134592号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の金属アルコキシドの加水分解縮合物は保存安定性及びパターンが形成された基板への埋め込み性が不十分である。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、保存安定性及び埋め込み性に優れる膜形成用組成物、レジスト下層膜、膜形成方法、レジストパターン形成方法、有機下層膜反転パターン形成方法、膜形成用組成物の製造方法及び金属含有膜パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、金属化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)と、含窒素有機化合物(以下、「[X]化合物」ともいう)と、溶媒(以下、「[C]溶媒」ともいう)とを含有し、[X]化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物(以下、「[X1]化合物」ともいう)、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物(以下、「[X2]化合物」ともいう)、又はこれらの混合物である膜形成用組成物(以下、「組成物(J)」ともいう)である。
【0007】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、膜形成用組成物により形成されるレジスト下層膜であって、上記膜形成用組成物が、金属化合物([A]化合物)と、含窒素有機化合物([X]化合物)と、溶媒(「[C]溶媒)とを含有し、[X]化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物([X1]化合物)、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物([X2]化合物)又はこれらの混合物であるレジスト下層膜である。
【0008】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接に膜形成用組成物を塗工する工程を備え、上記膜形成用組成物が、金属化合物([A]化合物)と、含窒素有機化合物([X]化合物)と、溶媒(「[C]溶媒)とを含有し、[X]化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物([X1]化合物)、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物([X2]化合物)又はこれらの混合物である膜形成方法である。
【0009】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接に膜形成用組成物を塗工する工程と、上記膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接に有機レジスト膜形成用組成物を塗工する工程と、上記有機レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成された有機レジスト膜を放射線により露光する工程と、上記露光された有機レジスト膜を現像する工程とを備え、上記膜形成用組成物が、金属化合物([A]化合物)と、含窒素有機化合物([X]化合物)と、溶媒(「[C]溶媒)とを含有し、[X]化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物([X1]化合物)、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物([X2]化合物)又はこれらの混合物であるレジストパターン形成方法である。
【0010】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接に有機下層膜を形成する工程と、上記有機下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記有機下層膜にパターンを形成する工程と、有機下層膜反転パターン形成用組成物を用い、上記有機下層膜パターンに直接有機下層膜反転パターン形成用膜を形成する工程と、上記有機下層膜パターンの除去により有機下層膜反転パターンを形成する工程とを備え、上記有機下層膜反転パターン形成用組成物が、金属化合物([A]化合物)と、含窒素有機化合物([X]化合物)と、溶媒(「[C]溶媒)とを含有し、[X]化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物([X1]化合物)、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物([X2]化合物)又はこれらの混合物である有機下層膜反転パターン形成方法である。
【0011】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、金属アルコキシドと、含窒素有機化合物([X]化合物)とを混合する工程と、上記混合工程で得られた混合物に水を加える工程とを備え、[X]化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物([X1]化合物)、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物([X2]化合物)又はこれらの混合物である膜形成用組成物の製造方法である。
【0012】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接に金属含有膜形成用組成物を塗工する工程と、上記金属含有膜形成用組成物塗工工程により形成された金属含有膜に直接又は間接に有機下層膜を形成する工程と、上記有機下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記金属含有膜にパターンを形成する工程とを備え、上記金属含有膜形成用組成物が、金属化合物([A]化合物)と、含窒素有機化合物([X]化合物)と、溶媒([C]溶媒)とを含有し、上記含窒素有機化合物が、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物([X1]化合物)、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物([X2]化合物)又はこれらの混合物である金属含有膜パターン形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の膜形成用組成物は、保存安定性及び埋め込み性に優れる。
【0014】
さらに、本発明の膜形成用組成物によれば、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる膜を形成することができる。本発明のレジスト下層膜は、当該膜形成用組成物により形成されるので、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる。本発明の膜形成方法によれば、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる膜を形成することができる。本発明のレジストパターン形成方法によれば、当該膜形成用組成物を用いるので、良好なレジストパターンを形成することができる。本発明のレジスト下層膜反転パターン形成方法によれば、当該膜形成用組成物をレジスト下層膜反転パターン形成用組成物として用いるので、良好な反転パターンを形成することができる。本発明の膜形成用組成物の製造方法によれば、保存安定性及び埋め込み性に優れる膜形成用組成物を製造することができる。
【0015】
本発明の金属含有膜パターン形成方法によれば、金属含有膜形成用組成物として当該膜形成用組成物を用いるので、良好な金属含有膜パターンを形成することができる。
【0016】
従って、これらは、さらなる微細化が要求されている半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスの製造におけるリソグラフィー工程に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、金属含有膜として例えば50nm以上の厚い膜を形成することができる膜形成用組成物が要求されているというニーズを察知した。しかしながら、上記従来の金属アルコキシドの加水分解縮合物を用いた膜形成用組成物では、厚い膜を形成する際の塗工性が良好でなく、また厚い膜を形成した場合、膜にクラックが発生するという問題が生じることを新たに見出した。
【0018】
本発明者らは、上述の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、本発明の膜形成用組成物によれば、厚い膜を形成する際の塗工性が良好であり、また厚い膜を形成した場合であっても膜へのクラックの発生を抑制できることを見出した。
【0019】
したがって、本発明の膜形成用組成物は厚い膜を形成する際の塗工性に優れる。さらに、本発明の膜形成用組成物によれば、クラックの発生が抑制された厚い膜を形成することができる。なお、本明細書において「厚い膜」又は「厚膜」とは、平均厚みが50nm以上である膜を意味する。なお、平均厚みは分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「A2000D」)を用いて測定した値である。
【0020】
さらに、本発明の金属含有膜パターン形成方法によれば、金属含有膜形成用組成物として当該膜形成用組成物を用いることでクラックの発生が抑制された厚い膜を形成することができるため、良好な金属含有膜パターンを形成することができる。
【0021】
<組成物(J)>
組成物(J)は、[A]化合物と、[X]化合物と、[C]溶媒とを含有する。組成物(J)は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0022】
組成物(J)は、[A]化合物と、[X]化合物と、[C]溶媒とを含有することで、保存安定性及び埋め込み性に優れる。組成物(J)が上記構成を備えることで、上記効果を備える理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[X]化合物の窒素原子及びヒドロキシ基が[A]化合物の金属原子に配位するか、又はこの金属原子の周囲に存在することにより、塗工時の流動性を高くすることができ、その結果、組成物(J)の埋め込み性が向上すると考えられる。加えて、[X]化合物の窒素原子及びヒドロキシ基が[A]化合物の金属原子に配位するか、又はこの金属原子の周囲に存在することにより、[A]化合物の経時的な変質を抑制することができ、その結果、組成物(J)の保存安定性が向上すると考えられる。
【0023】
また、組成物(J)により形成される膜は、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる。組成物(J)により形成される膜が上記効果を備える理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[X]化合物の窒素原子及びヒドロキシ基が[A]化合物の金属原子に配位するか、又はこの金属原子の周囲に存在することにより、組成物(J)により形成される膜のエッチング耐性及び除去性が向上すると考えられる。加えて、[X]化合物の窒素原子及びヒドロキシ基が[A]化合物の金属原子に配位するか、又はこの金属原子の周囲に存在することにより、[A]化合物の経時的な変質を抑制することができ、その結果、組成物(J)により形成される膜の膜厚変化抑制性が向上すると考えられる。
【0024】
さらに、組成物(J)は、厚い膜を形成する際の塗工性に優れる。このような効果を奏する理由としては、[X]化合物の窒素原子及びヒドロキシ基が[A]化合物の金属原子に配位するか、又はこの金属原子の周囲に存在することにより、塗工時の流動性を高くすることができるためであると考えられる。
【0025】
加えて、組成物(J)により形成される膜は、厚い膜であってもクラックの発生を抑制することができる。このような効果を奏する理由としては、[X]化合物の窒素原子及びヒドロキシ基が[A]化合物の金属原子に配位するか、又はこの金属原子の周囲に存在することにより、膜を加熱した場合に、膜の変質を抑制することができ、その結果、クラックの発生を抑制できると考えられる。
【0026】
以下、組成物(J)が含有する各成分について説明する。
【0027】
[[A]化合物]
[A]化合物は、金属アルコキシド(以下、「[M]化合物」ともいう)、[M]化合物の加水分解縮合物、又はこれらの混合物である。ここで「加水分解縮合」とは、[M]化合物が有するアルコキシ基が加水分解して-OHに変換され、得られた2個の-OHから脱水縮合により1個の水分子が脱離して-O-結合が形成される反応をいう。組成物(J)は、1種又は2種以上の[A]化合物を含有することができる。
【0028】
当該組成物(J)において、[X]化合物は、[A]化合物に含まれる金属原子(以下、「金属原子(L)ともいう」)に配位していてもよく、[A]化合物に含まれる金属原子(L)から遊離していてもよい。具体的には、例えば、[X]化合物の一部が[A]化合物中の金属原子(L)に配位し、[X]化合物の残りが[A]化合物中の金属原子(L)から遊離していてもよい。[X]化合物が[A]化合物中の金属原子(L)に配位している場合、[X]化合物は単座配位子又は多座配位子として金属原子(L)に配位していてもよい。
【0029】
[A]化合物に含まれる金属原子(L)としては、周期表第2族~第14族の第3周期~第7周期に属するものが挙げられる。
【0030】
第2族の金属原子(L)としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が、
第3族の金属原子(L)としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン等のランタノイドに属する原子、アクチニウム等のアクチノイドに属する原子などが、
第4族の金属原子(L)としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等が、
第5族の金属原子(L)としては、バナジウム、ニオブ、タンタル等が、
第6族の金属原子(L)としては、クロム、モリブデン、タングステン等が、
第7族の金属原子(L)としては、マンガン、レニウム等が、
第8族の金属原子(L)としては、鉄、ルテニウム、オスミウム等が、
第9族の金属原子(L)としては、コバルト、ロジウム、イリジウム等が、
第10族の金属原子(L)としては、ニッケル、パラジウム、白金等が、
第11族の金属原子(L)としては、銅、銀、金等が、
第12族の金属原子(L)としては、亜鉛、カドミウム、水銀等が、
第13族の金属原子(L)としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が、
第14族の金属原子(L)としては、スズ、鉛等が挙げられる。
【0031】
[A]化合物は1種又は2種以上の金属原子(L)を有していてもよい。また、[M]化合物は1個又は2個以上の金属原子(L)を有していてもよい。
【0032】
これらのうち、金属原子(L)としては、周期表第3族、第4族又は第13族に属するものが好ましく、周期表第4族に属するものがより好ましい。
【0033】
[M]化合物に含まれるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0034】
[M]化合物としては、例えば
チタンを含む化合物として、ジイソプロポキシビス(2,4-ペンタンジオナート)チタン(IV)、テトラn-ブトキシチタン(IV)、テトラn-プロポキシチタン(IV)、テトライソプロポキシチタン(IV)、トリn-ブトキシモノステアレートチタン(IV)、チタン(IV)ブトキシドオリゴマー、アミノプロピルトリメトキシチタン(IV)、トリエトキシモノ(2,4-ペンタンジオナート)チタン(IV)、トリn-プロポキシモノ(2,4-ペンタンジオナート)チタン(IV)、トリイソプロポキシモノ(2,4-ペンタンジオナート)チタン、ジn-ブトキシビス(2,4-ペンタンジオナート)チタン(IV)等が、
ジルコニウムを含む化合物として、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム(IV)、ジn-ブトキシビス(2,4-ペンタンジオナート)ジルコニウム(IV)、テトラn-ブトキシジルコニウム(IV)、テトラn-プロポキシジルコニウム(IV)、テトライソプロポキシジルコニウム(IV)、アミノプロピルトリエトキシジルコニウム(IV)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシジルコニウム(IV)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシジルコニウム(IV)、3-イソシアノプロピルトリメトキシジルコニウム(IV)、トリエトキシモノ(2,4-ペンタンジオナート)ジルコニウム(IV)、トリn-プロポキシモノ(2,4-ペンタンジオナート)ジルコニウム(IV)、トリイソプロポキシモノ(2,4-ペンタンジオナート)ジルコニウム(IV)、トリ(3-メタクリロキシプロピル)メトキシジルコニウム(IV)、トリ(3-アクリロキシプロピル)メトキシジルコニウム(IV)等が、
ハフニウムを含む化合物として、ジイソプロポキシビス(2,4-ペンタンジオナート)ハフニウム(IV)、テトラブトキシハフニウム(IV)、テトライソプロポキシハフニウム(IV)、テトラエトキシハフニウム(IV)、ジクロロビス(シクロペンタジエニル)ハフニウム(IV)等が、
タンタルを含む化合物として、テトラブトキシタンタル(IV)、ペンタブトキシタンタル(V)、ペンタエトキシタンタル(V)等が、
タングステンを含む化合物として、テトラブトキシタングステン(IV)、ペンタブトキシタングステン(V)、ペンタメトキシタングステン(V)、ヘキサブトキシタングステン(VI)、ヘキサエトキシタングステン(VI)、ジクロロビス(シクロペンタジエニル)タングステン(IV)等が、
鉄を含む化合物として、塩化鉄(III)等が、
ルテニウムを含む化合物として、ジアセタト[(S)-(-)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル]ルテニウム(II)等が、
コバルトを含む化合物として、ジクロロ[エチレンビス(ジフェニルホスフィン)]コバルト(II)等が、
亜鉛を含む化合物として、ジイソプロポキシ亜鉛(II)、酢酸亜鉛(II)等が、
アルミニウムを含む化合物として、トリイソプロポキシアルミニウム(III)、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム(III)、酢酸アルミニウム(III)等が、
インジウムを含む化合物として、酢酸インジウム(III)、トリイソプロポキシインジウム(III)等が、
スズを含む化合物として、テトラエチルジアセトキシスタノキサン、テトラブトキシスズ(IV)、テトライソプロポキシスズ(IV)、t-ブチルトリス(ジエチルアミド)スズ(IV)等が、
ゲルマニウムを含む化合物として、テトライソプロポキシゲルマニウム(IV)等が挙げられる。
【0035】
[A]化合物の含有割合の下限としては、組成物(J)に含有される全成分に対して、2質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、6質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、組成物(J)に対して、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。
【0036】
[[X]化合物]
[X]化合物は、[X1]化合物、[X2]化合物又はこれらの混合物である。組成物(J)は、1種又は2種以上の[X]化合物を含有することができる。
【0037】
([X1]化合物)
[X1]化合物は、窒素原子、脂肪族炭化水素基及び2以上のヒドロキシ基を有する化合物である。
【0038】
[X1]化合物は、1以上の窒素原子を有する。[X1]化合物中の窒素原子の個数としては、1~10が好ましく、1~7がより好ましく、2~5がさらに好ましい。また、[X1]化合物において、窒素原子は、上記脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合していることが好ましい。
【0039】
[X1]化合物は、1以上の脂肪族炭化水素基を有する。[X1]化合物中の脂肪族炭化水素基の個数としては、2~10が好ましく、2~7がより好ましく、2~5がさらに好ましい。[X1]化合物は、窒素原子とヒドロキシ基とに結合する(すなわち、窒素原子とヒドロキシ基との間に介在する)脂肪族炭化水素基を有することが好ましい。これに加えて、[X1]化合物が2以上の窒素原子を有する場合、脂肪族炭化水素基が各窒素原子の間に結合している(すなわち、2以上の窒素原子の間に介在する)ことが好ましい。このような脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0040】
「脂肪族炭化水素基」には、鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。
【0041】
炭素数1~10の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メタンジイル基、エタンジイル基、n-プロパンジイル基、i-プロパンジイル基、n-ブタンジイル基、i-ブタンジイル基、sec-ブタンジイル基、t-ブタンジイル基等のアルカンジイル基、
エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等のアルケンジイル基、
エチンジイル基、プロピンジイル基、ブチンジイル基等のアルキンジイル基などが挙げられる。
【0042】
炭素数3~10の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環のシクロアルカンジイル基、
シクロプロペンジイル基、シクロブテンジイル基、シクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基等の単環のシクロアルケンジイル基、
ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、トリシクロデカンジイル基等の多環のシクロアルカンジイル基、
ノルボルネンジイル基、トリシクロデセンジイル基等の多環のシクロアルケンジイル基などが挙げられる。
【0043】
2価の脂肪族炭化水素基の炭素数の上限としては、10が好ましく、6がより好ましく、4がさらに好ましい。上記炭素数の下限としては、例えば1である。
【0044】
[X1]化合物は、2以上のヒドロキシ基を有する。上述の通り、このヒドロキシ基は、上記脂肪族炭化水素基に結合していることが好ましい。[X1]化合物中のヒドロキシ基の個数としては、2~10が好ましく、2~7がより好ましく、2~5がさらに好ましい。
【0045】
[X1]化合物としては、例えば下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0046】
【0047】
上記式(1)中、m+nは3であり、mは2又は3であり、nは0又は1である。R1は炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基であり、複数のR1は互いに同一又は異なる。R2は、水素原子、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基又は下記式(1-1)で表される基である。
【0048】
【0049】
上記式(1-1)中、R2Aは、炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基である。pは、1~4の整数である。R2B及びR2Cは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基又は-R2D-OHである。R2Dは、炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基である。pが2以上の場合、複数のR2Aは互いに同一又は異なり、複数のR2Cは互いに同一又は異なる。*は、上記式(1)の窒素原子と結合する部位を示す。
【0050】
R2Aで表される炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基としては、上述の[X1]化合物が有する脂肪族炭化水素基における2価の脂肪族炭化水素基として例示した基等が挙げられる。
【0051】
R2B及びR2Cで表される炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~10の1価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0052】
炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基、
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0053】
炭素数3~10の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基、
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の多環のシクロアルキル基、
シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基、
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0054】
R2Dで表される炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば上述の[X1]化合物が有する脂肪族炭化水素基における2価の脂肪族炭化水素基として例示した基等が挙げられる。
【0055】
これらのうち、R2B及びR2Cとしては、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はR2Dが炭素数1~6の2価のアルキル基である-R2D-OHが好ましい。
【0056】
([X2]化合物)
[X2]化合物は、含窒素芳香族複素環及び1以上のヒドロキシ基を有する化合物である。[X2]化合物は、例えば上記含窒素芳香族複素環に結合した1以上の炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基と、この各脂肪族炭化水素基に結合した1以上のヒドロキシ基とを有する。
【0057】
上記含窒素芳香族複素環としては、例えばヘテロ原子として窒素原子のみを有する芳香族複素環、ヘテロ原子として窒素原子及び窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族複素環等が挙げられる。窒素原子以外のヘテロ原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。上記含窒素芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子のみを有する芳香族複素環が好ましく、例えばイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピリダジン環等の単環の含窒素芳香族複素環、キナゾリン環、プリン環等の多環の含窒素芳香族複素環などが挙げられる。これらのうち、含窒素芳香族複素環としては、単環の含窒素芳香族複素環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。
【0058】
[X2]化合物は、1以上のヒドロキシ基を有する。このヒドロキシ基は、含窒素芳香族複素環に直接又は他の基を介して結合していることが好ましく、含窒素芳香族複素環に他の基を介して結合していることがより好ましい。ヒドロキシ基が含窒素芳香族複素環に他の基を介して結合している場合、この他の基としては、例えば炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。[X2]化合物中のヒドロキシ基の個数としては、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
【0059】
[X]化合物としては、例えば後述する化学式(X-1)~(X-10)で表される化合物等が挙げられる。
【0060】
[X]化合物の含有量の下限としては、[M]化合物1モルに対して、0.3モルが好ましく、0.5モルがより好ましく、1.0モルがさらに好ましい。上記含有量の上限としては、[M]化合物1モルに対して、10.0モルが好ましく、5.0モルがより好ましく、3.0モルがさらに好ましい。
【0061】
[X]化合物の含有量を上記範囲とすることで、保存安定性、埋め込み性、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性をより向上させることができる。
【0062】
[[C]溶媒]
[C]溶媒は、[X]化合物以外の溶媒である。[C]溶媒は、後述する組成物[J]の製造における溶媒として用いることができる。
【0063】
[C]溶媒としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒等が挙げられる。組成物(J)は、1種又は2種以上の[C]有機溶媒を含有することができる。
【0064】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒などが挙げられる。
【0065】
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒などが挙げられる。
【0066】
エーテル系溶媒としては、例えばn-ブチルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル系溶媒などの多価アルコールエーテル系溶媒、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0067】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸モノエステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒などが挙げられる。
【0068】
含窒素系溶媒としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド等の鎖状含窒素系溶媒、N-メチルピロリドン等の環状含窒素系溶媒などが挙げられる。
【0069】
[C]溶媒としては、エーテル系溶媒及び/又はエステル系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテル系溶媒及び/又は多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル及び/又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。
【0070】
組成物(J)中の[C]溶媒の含有量の下限としては、[A]化合物100質量部に対して、300質量部がより好ましく、500質量部が好ましく、700質量部がより好ましい。上記含有量の上限としては、[A]化合物100質量部に対して、5,000質量部が好ましく、3,000質量部がより好ましく、2000質量部がより好ましい。
【0071】
組成物(J)中の[C]溶媒の含有量の下限としては、組成物(J)に対して、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、組成物(J)に対して、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。
【0072】
[C]溶媒の含有量を上記範囲とすることで、組成物(J)の調製を容易にすることができる。
【0073】
組成物(J)は、レジスト下層膜形成用の組成物として好適に用いることができる組成物(J)をレジスト下層膜形成用組成物として用いることで、形成されたレジスト下層膜が、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる。また、レジスト下層膜をパターンの隙間に埋め込む際の埋め込み性に優れる。
【0074】
また、組成物(J)は、有機下層膜反転パターン形成用の組成物として好適に用いることができる組成物(J)が有機下層膜反転パターン形成用であることで、有機下層膜反転パターンを形成する際の埋め込み性に優れる。また、形成された有機下層膜反転パターンが、膜厚(パターンの厚み)変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる。よって、組成物(J)が有機下層膜反転パターン形成用であることで、良好な反転パターンを形成することができる。
【0075】
上述の通り、組成物(J)は塗工性に優れており、組成物(J)により形成される膜は厚い膜を形成した場合であってもクラックの発生が抑制されている。したがって、組成物(J)は、厚膜形成用の組成物として好適に用いることができる。この場合、組成物(J)は、半導体用素子等の製造において、平均厚みが厚い金属含有膜が要求されるプロセス等において好適に用いることができる。組成物(J)は、平均厚みが50nm以上の膜を形成するための組成物として用いることができる。上記平均厚みの下限としては、100nmが好ましく、500nmがより好ましく、1,000nmがさらに好ましく、3,000nmがより一層好ましく、4,000nmが特に好ましい。
【0076】
[その他の任意成分]
組成物(J)は、[A]化合物、[X]化合物及び[C]溶媒以外の他の成分として、例えば酸発生剤、高分子添加剤、界面活性剤等を含有していてもよい。
【0077】
酸発生剤は、放射線の照射及び/又は加熱により酸を発生する化合物である。組成物(J)は、1種又は2種以上の酸発生剤を含有することができる。
【0078】
酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。
【0079】
組成物(J)は、高分子添加剤を含有することで、基板や有機下層膜への塗工性をより高めることができる。また、組成物(J)により形成された膜を加熱した後に、この膜へのクラックの発生をより抑制することができる。組成物(J)は、1種又は2種以上の高分子添加剤を含有することができる。
【0080】
高分子添加剤としては、例えば(ポリ)オキシアルキレン系高分子化合物、含フッ素系高分子化合物、非フッ素系高分子化合物等が挙げられる。
【0081】
(ポリ)オキシアルキレン系高分子化合物としては、例えば(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類、ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、炭素数12~14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3-メチル-1-ブチン-3-オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類、ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類、(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類などが挙げられる。
【0082】
含フッ素系高分子化合物としては、例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。含フッ素系高分子化合物としては、例えばフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、2以上(好ましくは5以上)のアルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位とを含む化合物等が挙げられる。
【0083】
非フッ素系高分子化合物としては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐状のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(-(CH2CH2O)n-構造を有する、n=1~17)(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー等に由来する繰り返し単位を1種又は2種以上含む化合物等が挙げられる。
【0084】
組成物(J)は、界面活性剤を含有することで、基板や有機下層膜への塗工性をより高めることができる。また、組成物(J)により形成された膜を加熱した後に、この膜へのクラックの発生をより抑制することができる。組成物(J)は、1種又は2種以上の界面活性剤を含有することができる。
【0085】
界面活性剤の市販品としては、例えば「Newcol 2320」、「Newcol 714-F」、「Newcol 723」、「Newcol 2307」、「Newcol 2303」(以上、日本乳化剤(株))、「パイオニンD-1107-S」、「パイオニンD-1007」、「パイオニンD-1106-DIR」、「ニューカルゲンTG310」、「ニューカルゲンTG310」、「パイオニンD-6105-W」、「パイオニンD-6112」、「パイオニンD-6512」(以上、竹本油脂(株))、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール2502」(以上、日本エアープロダクツ(株))、「メガファックF171」、「同F172」、「同F173」、「同F176」、「同F177」、「同F141」、「同F142」、「同F143」、「同F144」、「同R30」、「同F437」、「同F475」、「同F479」、「同F482」、「同F562」、「同F563」、「同F780」、「同R-40」、「同DS-21」、「同RS-56」、「同RS-90」、「同RS-72-K」(以上、DIC(株))、「フロラードFC430」、「同FC431」(以上、住友スリーエム(株))、「アサヒガードAG710」、「サーフロンS-382」、「同SC-101」、「同SC-102」、「同SC-103」、「同SC-104」、「同SC-105」、「同SC-106」(以上、AGC(株))、「FTX-218」、「NBX-15」((株)ネオス)等が挙げられる。
【0086】
組成物(J)がその他の任意成分を含有する場合、組成物(J)におけるその他の任意成分の含有量は用いるその他の任意成分の種類等に応じて適宜決定することができる。その他の任意成分の含有量の上限としては、[A]化合物及び[X]化合物の合計100質量部に対して、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましい。
【0087】
<組成物の製造方法>
当該組成物(組成物(J))の製造方法は、[M]化合物及び[X]化合物を混合する工程(以下、「混合工程」ともいう)と、上記混合工程で得られた混合物に水を加える工程(以下、「水添加工程」ともいう)とを備える。
【0088】
当該組成物の製造方法は、上記混合工程後であって上記水添加工程前に、上記混合工程で得られた混合物を[B]溶媒で希釈する工程(以下、「希釈工程」)をさらに備えていてもよい。また、当該組成物の製造方法は、上記水添加工程後に、上記水添加工程で得られた混合物に[C]溶媒を加える工程(以下、「溶媒添加工程」ともいう)と、上記溶媒添加工程で得られた混合物から余剰の水及び余剰の[B]溶媒を除去する工程(以下、「脱溶媒工程」ともいう)とをさらに備えていてもよい。さらに、当該組成物の製造方法は、上記脱溶媒工程後、さらに[C]溶媒を加える工程(以下、「溶媒再添加工程」ともいう)をさらに備えてもよい。
【0089】
[混合工程]
本工程では、[M]化合物と[X]化合物とを混合する。具体的には、例えば[M]化合物に[X]化合物を所定の時間をかけて滴下し、所定の温度で加熱した後、30℃以下に冷却する。上記所定の時間は、適宜設定され得る。例えば上記所定の滴下時間の下限としては、10分間が好ましく、20分間がより好ましい。一方、上記所定の滴下時間の上限としては、60分間が好ましく、40分間がより好ましい。上記所定の温度は、適宜設定され得る。例えば上記所定の加熱温度の下限としては、45℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、上記所定の加熱温度の上限としては、75℃が好ましく、70℃がより好ましい。
【0090】
なお、当該組成物の製造方法では、混合工程において[M]化合物と[X]化合物とを混合し、後述する水添加工程において水を添加することで[M]化合物の加水分解縮合反応を進行させる、すなわち、予め[M]化合物と[X]化合物とを混合し、[X]化合物の存在下で[X]化合物の加水分解縮合反応を進行させることで、埋め込み性及び保存安定性に優れる組成物(J)を調製することができる。
【0091】
[希釈工程]
本工程では、上記混合工程後に、上記混合工程で得られた混合物を[B]溶媒で希釈する。具体的には、上記混合工程で得られた混合物に、[M]化合物が所定の濃度となるよう[B]溶媒で希釈する。当該組成物の製造方法が希釈工程を備えることにより、[M]化合物の濃度を調整でき、その結果、金属含有膜の膜厚を調整することができる。
【0092】
[B]溶媒は、[M]化合物及び[A]化合物並びに必要に応じて含有する他の成分を溶解又は分散することができれば特に限定されない。[B]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒等が挙げられる。これらの各溶媒としては、例えば上述の組成物(J)が含有する[C]溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。本工程では、1種又は2種以上の[B]溶媒を用いることができる。
【0093】
[B]溶媒としては、アルコール系溶媒がより好ましい。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、1-ブタノール等が挙げられる。
【0094】
[水添加工程]
本工程では、上記混合物に水を加える。当該組成物の製造方法が上記希釈工程を備える場合、本工程では、上記希釈後の混合物に水を加える。具体的には、例えば上記希釈後の混合物を攪拌しながら、この混合物に、室温(25℃~30℃)で所定の時間をかけて水を滴下する。上記所定の滴下時間は適宜設定され得る。例えば上記所定の滴下時間の下限としては、5分間が好ましく、10分間がより好ましい。一方、上記所定の滴下時間の上限としては、40分間が好ましく、30分間がより好ましい。
【0095】
上記混合物に水を加えることにより、[M]化合物の加水分解縮合反応が生じる。[M]化合物の加水分解縮合反応の進行状況等に応じて、上記混合物に水を加えた後、加熱してもよい。この加熱により、[M]化合物の加水分解縮合反応を促進させることができる。この加熱を行う場合、加熱温度は適宜設定され得る。上記加熱温度の下限としては、45℃が好ましく、50℃がより好ましい。加熱温度の上限としては、75℃が好ましく、70℃がより好ましい。上記加熱を行う場合、加熱時間は適宜設定され得る。加熱時間の下限としては、60分間が好ましく、90分間がより好ましい。加熱時間の下限としては、180分間が好ましく、150分間がより好ましい。
【0096】
[溶媒添加工程]
本工程では、上記加水分解縮合工程で得られた混合物に、[C]溶媒を加える。本工程で用いる[C]溶媒は、上述の組成物(J)における[C]溶媒として説明している。[C]溶媒としては、エーテル系溶媒及び/又はエステル系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテル系溶媒及び/又は多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル及び/又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。
【0097】
[脱溶媒工程]
本工程では、上記溶媒添加工程で得られた混合物から、余剰の水及び余剰の[B]溶媒を除去する。この余剰の水及び余剰の[B]溶媒の除去には、例えばロータリーエバポレーターを用いることができる。また、上記脱溶媒工程で得られた溶液を孔径0.2μm以下のフィルター等でろ過してもよい。本工程により得られた混合物(以下、「[Z]混合物」ともいう)は、そのまま組成物(J)として用いてもよいし、後述する溶媒再添加工程に供して得られたものを組成物(J)として用いてもよい。
【0098】
[溶媒再添加工程]
本工程では、脱溶媒工程後、さらに[C]溶媒を加える。具体的には、上記脱溶媒工程により得られた[Z]混合物に[C]溶媒を加える。当該組成物の製造方法が本工程を備えることにより、[Z]混合物に含まれる溶媒以外の成分の濃度を調整できる。
【0099】
<レジスト下層膜>
当該レジスト下層膜は、組成物(J)をレジスト下層膜形成用組成物として用いることによって形成される。当該レジスト下層膜は、金属含有膜である。当該レジスト下層膜は、組成物(J)を用いることによって形成されるので、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる。
【0100】
当該レジスト下層膜の平均厚みとしては特に限定されず、適宜決定することができる。レジスト下層膜の平均厚みとの下限としては、1nmが好ましく、5nmがより好ましく、10nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、10,000nmが好ましく、7,000nmがより好ましく、6,000nmがさらに好ましい。
【0101】
上述の通り、組成物(J)により形成されるレジスト下層膜は厚い膜を形成した場合であってもクラックの発生が抑制されている。したがって、当該レジスト下層膜は、半導体用素子等の製造における平均厚みが厚いレジスト下層膜が要求されるプロセス等において好適に用いることができる。このような用途に当該レジスト下層膜を用いる場合の平均厚みの下限としては、100nmが好ましく、500nmがより好ましく、1,000nmがさらに好ましく、3,000nmがより一層好ましく、4,000nmが特に好ましい。
【0102】
<膜形成方法>
当該膜形成方法は、基板に直接又は間接に膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「膜形成用組成物塗工工程」ともいう。)を備える。上記膜形成用組成物塗工工程では、膜形成用組成物として上述の組成物(J)を用いる。当該膜形成方法によれば、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる膜を形成することができる。
【0103】
以下、当該膜形成方法が備える膜有形成用組成物塗工工程について説明する。
【0104】
[膜形成用組成物塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に膜形成用組成物を塗工する。本工程では、膜形成用組成物として上述の組成物(J)を用いる。本工程により、基板に直接又は間接に塗工膜が形成される。この塗工膜から[C]溶媒が揮発等することにより、膜が形成される。本工程により形成される膜は、金属含有膜である。
【0105】
基板としては、例えば金属基板、シリコンウェハ等が挙げられる。「金属基板」とは、表層の少なくとも一部に金属原子を含む基板をいう。金属基板が含む金属原子としては、金属元素の原子であれば特に限定されない。ケイ素及びホウ素は、金属原子に含まれない。金属原子としては、例えば銅、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、スズ、タングステン、ジルコニウム、チタン、タンタル、ゲルマニウム、モリブデン、ルテニウム、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等が挙げられる。金属基板としては、例えば金属製の基板、金属で被覆したシリコンウェハ等が挙げられる。金属基板の一部に窒化ケイ素膜、アルミナ膜、二酸化ケイ素膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜等が形成されていてもよい。
【0106】
基板としては、パターンが形成されていない基板であってもよいし、パターンが形成された基板であってもよい。
【0107】
パターンが形成された基板のパターンとしては、例えばスペース部の線幅が2,000nm以下、1,000nm以下、500nm以下、さらには50nm以下のラインアンドスペースパターン又はトレンチパターンや、直径が300nm以下、150nm以下、100nm以下、さらには50nm以下のホールパターン等が挙げられる。
【0108】
また、基板に形成されたパターンの寸法として、例えば高さが100nm以上、200nm以上、さらには300nm以上、幅が50nm以下、40nm以下、さらには30nm以下、アスペクト比(パターンの高さ/パターン幅)が、3以上、5以上、さらには10以上の微細なパターンなどが挙げられる。
【0109】
なお、基板としてパターンが形成された基板を用いる場合、この基板に当該塗工膜形成用組成物を塗工することで形成される塗工膜は、パターンの凹部を埋め込めるものであることが好ましい。
【0110】
本工程では、膜の形成を促進させるために、上記塗工膜を加熱してもよい。上記塗工膜の加熱の加熱を行う雰囲気としては、大気下、窒素雰囲気下等が挙げられる。加熱における温度の下限としては、60℃が好ましい。上記温度の上限としては、150℃が好ましい。加熱における時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、300秒が好ましく、180秒がより好ましい。
【0111】
上記塗工膜の加熱を予備加熱として行い、この予備加熱後の塗工膜をさらに加熱してもよい。この加熱は、通常、大気下で行われるが、窒素雰囲気下で行ってもよい。加熱における温度の下限としては、200℃が好ましく、250℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。加熱における時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、1,200秒が好ましく、600秒がより好ましい。
【0112】
当該膜形成方法においては、露光と加熱とを組み合わせることもできる。この露光に用いられる放射線としては、酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線から適宜選択される。
【0113】
形成される膜の平均厚みとしては特に限定されず、適宜決定することができる。膜の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、5nmがより好ましく、10nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、10,000nmが好ましく、7,000nmがより好ましく、6,000nmがさらに好ましい。
【0114】
上述の通り、組成物(J)により形成される膜は厚い膜を形成した場合であってもクラックの発生が抑制されている。したがって、当該膜形成方法は、半導体用素子等の製造における平均厚みが厚い金属含有膜が要求されるプロセス等において好適に採用することができる。このようなプロセスに当該膜形成方法を採用する場合、形成される膜の平均厚みの下限としては、50nmが好ましく、100nmがより好ましく、200nmがさらに好ましく、500nmがより一層好ましく、1,000nmが特に好ましい。
【0115】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板に直接又は間接に膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「膜形成用組成物塗工工程」ともいう)と、上記膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接に有機レジスト膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「有機レジスト膜形成用組成物塗工工程」ともいう)と、上記有機レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成された有機レジスト膜を放射線により露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光された有機レジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。
【0116】
当該レジストパターン形成方法は、上記膜形成用組成物塗工工程前に、上記基板に、直接又は間接に有機下層膜を形成する工程(以下、「有機下層膜形成工程」ともいう)をさらに備えることができる。また、当該レジストパターン形成方法は、上記現像工程後に、上記現像工程により形成されたレジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程(以下、「エッチング工程」ともいう)をさらに備えることができる。当該レジストパターン形成方法は、必要に応じて、上記有機レジスト膜形成用組成物塗工工程前に、上記膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜にケイ素含有膜を形成する工程(以下、「ケイ素含有膜形成工程」)を備えていてもよい。
【0117】
当該レジストパターン形成方法によれば、組成物(J)を用いるので、良好なレジストパターンを形成することができる。
【0118】
以下、当該レジストパターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0119】
[有機下層膜形成工程]
本工程では、基板に有機下層膜を形成する。基板としては、上述の当該膜形成方法における膜形成工程で用いる基板と同様のものが挙げられる。有機下層膜としては、例えば後述する有機下層膜反転パターン形成方法で形成される有機下層膜と同様のものが挙げられる。
【0120】
[膜形成用組成物塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に膜形成用組成物を塗工する。基板に間接に膜形成用組成物を塗工する場合としては、例えば上記有機下層膜形成工程により基板上に形成された有機下層膜に膜形成用組成物を塗工する場合等が挙げられる。本工程では、膜形成用組成物として上述の組成物(J)を用いる。本工程により、基板に直接又は間接にレジスト下層膜が形成される。本工程は、上述した当該膜形成方法における膜形成用組成物塗工工程と同様である。
【0121】
[ケイ素含有膜形成工程]
本工程では、上記膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜にケイ素含有膜を形成する。
【0122】
ケイ素含有膜は、ケイ素含有膜形成用組成物を上記レジスト下層膜に塗工して形成された塗膜を、通常、露光及び/又は加熱することにより硬化等させることにより、形成される。上記ケイ素含有膜形成用組成物の市販品としては、例えば、JSR(株)の「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」等を用いることができる。
【0123】
上記露光に用いられる放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線などが挙げられる。
【0124】
塗膜を加熱する際の温度の下限としては、90℃が好ましく、150℃がより好ましく、180℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、550℃が好ましく、450℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。
【0125】
[有機レジスト膜形成用組成物塗工工程]
本工程では、上記膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に、有機レジスト膜形成用組成物を塗工する。上記ケイ素含有膜形成工程を行った場合には、上記有機レジスト膜形成用組成物を上記ケイ素含有膜に塗工する。
【0126】
本工程では、具体的には、得られる有機レジスト膜が所定の厚みとなるように、有機レジスト膜形成用組成物を塗工した後、加熱することによって塗膜中の溶媒を揮発させることにより、有機レジスト膜を形成する。
【0127】
有機レジスト膜形成用組成物としては、例えば感放射線性酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とを含有するポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とを含有するネガ型レジスト組成物等が挙げられる。
【0128】
有機レジスト膜形成用組成物は、一般に、例えば孔径0.2μm以下のフィルターでろ過して、有機レジスト膜の形成に供される。なお、本工程では、市販の有機レジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0129】
有機レジスト膜形成用組成物の塗工方法としては特に限定されず、例えば回転塗工法等が挙げられる。また、加熱の温度としては、使用される有機レジスト膜形成用組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、上記温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。加熱の時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0130】
[露光工程]
本工程では、上記有機レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成された有機レジスト膜を放射線により露光する。
【0131】
露光に用いられる放射線としては、有機レジスト膜形成用組成物に使用される感放射線性酸発生剤、キノンジアジド系感光剤及び架橋剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線から適切に選択される。これらの中で、遠紫外線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2エキシマレーザー光(波長157nm)、Kr2エキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)又は極端紫外線(波長13.5nm等、EUV)がより好ましく、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EUV又は極端紫外線がさらに好ましい。
【0132】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため加熱を行うことができる。この加熱の温度としては、使用される有機レジスト膜形成用組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、上記温度の下限としては、50℃が好ましく、70℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。上記加熱の時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0133】
[現像工程]
本工程では、上記露光された有機レジスト膜を現像する。この現像は、アルカリ現像であっても有機溶媒現像であってもよい。現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等の塩基性水溶液が挙げられる。これらの塩基性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類などの水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適量添加することもできる。また、有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば上述の組成物(J)の[C]溶媒として例示した種々の有機溶媒等が挙げられる。
【0134】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0135】
[エッチング工程]
本工程では、上記現像工程により形成されたレジストパターンをマスクとしたエッチングを行う。これにより、基板にパターンが形成される。エッチングの回数としては1回でも、複数回、すなわちエッチングにより得られるパターンをマスクとして順次エッチングを行ってもよいが、より良好な形状のパターンを得る観点からは、複数回が好ましい。複数回のエッチングを行う場合、ケイ素含有膜、レジスト下層膜、基板の順に順次エッチングを行う。エッチングの方法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング等が挙げられる。これらの中で、基板のパターンの形状をより良好なものとする観点から、ドライエッチングが好ましい。このドライエッチングには、例えば酸素プラズマ等のガスプラズマ等が用いられる。上記エッチングの後、所定のパターンを有するパターニングされた基板が得られる。
【0136】
<有機下層膜反転パターン形成方法>
当該有機下層膜反転パターン形成方法は、基板に直接又は間接に有機下層膜を形成する工程(以下、「有機下層膜形成工程」ともいう)と、上記有機下層膜の上面に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程(以下、「レジストパターン形成工程」ともいう)と、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記有機下層膜にパターンを形成する工程(以下、「有機下層膜パターン形成工程」ともいう)と、組成物(J1)を用い、上記有機下層膜パターンに直接又は間接に有機下層膜反転パターン形成用膜を形成する工程(以下、「有機下層膜反転パターン形成用膜形成工程」ともいう)と、上記有機下層膜パターンの除去により有機下層膜反転パターンを形成する工程(以下、「有機下層膜反転パターン形成工程」ともいう)とを備える。当該有機下層膜反転パターン形成方法では、必要に応じて、上記レジストパターン形成工程前に、上記有機下層膜形成工程により形成された有機下層膜にレジスト中間膜を形成する工程(以下、「レジスト中間膜形成工程」ともいう)を備えていてもよい。上記有機下層膜反転パターン形成用膜形成工程では、上述の組成物(J)を用いて有機下層膜反転パターン形成用膜を形成する。
【0137】
当該有機下層膜反転パターン形成方法によれば、組成物(J)を用いるので、良好な反転パターンを形成することができる。
【0138】
以下、当該有機下層膜反転パターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0139】
[有機下層膜形成工程]
本工程では、基板に有機下層膜を形成する。基板としては、上述した膜形成工程で用いる基板と同様のものが挙げられる。
【0140】
有機下層膜は、有機化合物により形成することができる。上記有機化合物としては、市販品として、例えばJSR(株)の「NFC HM8006」等が挙げられる。有機下層膜は、有機下層膜形成用組成物をスピンコート法等により塗布して塗膜を形成した後、加熱することにより形成することができる。
【0141】
形成される有機下層膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、1000nmが好ましく、500nmがより好ましい。
【0142】
[レジスト中間膜形成工程]
本工程では、上記有機下層膜形成工程により形成された有機下層膜にレジスト中間膜を形成する。上記レジスト中間膜としては、市販品として、例えば「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」(以上、JSR(株))等が挙げられる。また、CVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化タングステン等を用いることができる。中間層の形成方法は特に限定されないが、例えば塗布法やCVD法等を用いることができる。これらの中でも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、有機下層膜を形成した後、レジスト中間膜を連続して形成することができる。
【0143】
[レジストパターン形成工程]
本工程では、上記有機下層膜及び上記レジスト中間膜にレジストパターンを形成する。本工程において、レジストパターンを形成する方法としては、例えばレジスト組成物を用いる方法、ナノインプリントリソグラフィー法を用いる方法等の従来の公知の方法で形成することができる。
【0144】
[有機下層膜パターン形成工程]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとして、有機下層膜のエッチングを行う。このエッチングの方法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング等が挙げられる。上記ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチ膜の元素組成にもよるが、例えば、CHF3、CF4、C2F6、C3F8、SF6等のフッ素系ガス、Cl2、BCl3等の塩素系ガス、O2、O3等の酸素系ガス、H2、NH3、CO、CO2、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H4、C3H6、C3H8、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH3、BCl3等の還元性ガス、He、N2、Ar等の不活性ガス等が用いられ、これらのガスは混合して用いることもできる。レジスト中間膜を形成する場合におけるレジスト中間膜のドライエッチングには、通常、フッ素系ガスが用いられ、有機下層膜のドライエッチングには酸素系ガスが好適に用いられる。
【0145】
パターンが形成された有機下層膜のパターンとしては、例えばスペース部の線幅が2,000nm以下、1,000nm以下、500nm以下、さらには50nm以下のラインアンドスペースパターン又はトレンチパターンや、直径が300nm以下、150nm以下、100nm以下、さらには50nm以下のホールパターン等が挙げられる。
【0146】
また、有機下層膜パターンの寸法として、例えば高さが100nm以上、200nm以上、さらには300nm以上、幅が50nm以下、40nm以下、さらには30nm以下、アスペクト比(パターンの高さ/パターン幅)が、3以上、5以上、さらには10以上の微細なパターンなどが挙げられる。
【0147】
[有機下層膜反転パターン形成用膜形成工程]
本工程では、上記有機下層膜パターンの間隙に組成物(J)が埋め込まれる。具体的には、上記有機下層膜パターンが形成された基板上に、組成物(J)が、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、上記基板上に塗工されて、上記有機下層膜パターンの間隙に埋め込まれる。また、本工程においては、組成物(J)を上記有機下層膜パターンの間隙に埋め込んだ後に、乾燥工程を設けることが好ましい。上記乾燥手段は特に限定されないが、例えば、焼成することにより、組成物中の有機溶媒を揮発させることができる。この焼成条件は、樹脂組成物の配合組成によって適宜調整されるが、焼成温度は通常80~250℃、好ましくは80~200℃である。この焼成温度が、80~180℃である場合には、後述の平坦化工程、特にウェットエッチバック法による平坦化加工を円滑に行うことができる。なお、この加熱時間は通常10~300秒間、好ましくは30~180秒間である。また、乾燥後に得られる有機下層膜反転パターン形成用膜の厚みは特に限定されないが、通常10~1000nmであり、好ましくは20~500nmである。
【0148】
[有機下層膜反転パターン形成工程]
本工程では、上記有機下層膜パターンが除去され、有機下層膜反転パターンが形成される。
【0149】
具体的には、まず、好ましくは上記有機下層膜パターンの上表面を露出するための平坦化加工が行われる。次に、ドライエッチング又は溶解除去により上記有機下層膜パターンが除去され、所定の有機下層膜反転パターンが得られる。
【0150】
この有機下層膜反転パターン形成工程により、通常のリソグラフィープロセスでは困難な高アスペクト比の微細なパターンを基板上に形成することができる。これにより、基板に微細なパターンを転写することができる。
【0151】
上記平坦化加工で利用される平坦化法としては、ドライエッチバック、ウェットエッチバック等のエッチング法や、CMP法等を用いることができる。これらのなかでも、フッ素系ガス等を用いたドライエッチバック、ウェットエッチバック法が低コストで好ましい。なお、平坦化加工における加工条件は特に限定されず、適宜調整できる。
【0152】
また、有機下層膜パターンの除去にはドライエッチングが好ましく、具体的には、酸素系ガスエッチング、オゾンエッチング等が好ましく用いられる。上記ドライエッチングには、酸素プラズマ灰化装置、オゾンアッシング装置等の公知の装置を用いることができる。なお、エッチング加工条件は特に限定されず、適宜調整できる。
【0153】
[金属含有膜除去工程]
本工程では、上記有機下層膜反転パターンを、酸又は塩基を含有する除去液(I)で除去する。
【0154】
酸を含有する除去液(I)としては、例えば酸及び水を含む液、酸、過酸化水素及び水の混合により得られる液等が挙げられる。酸としては、例えば硫酸、フッ化水素酸、塩酸、リン酸等が挙げられる。酸を含有する除去液(I)としては、より具体的には、例えばフッ化水素酸及び水の混合により得られる液、硫酸、過酸化水素及び水の混合により得られる液、塩酸、過酸化水素及び水の混合により得られる液等が挙げられる。
【0155】
塩基を含有する除去液(I)としては、例えば塩基及び水を含む液、塩基、過酸化水素及び水の混合により得られる液等が挙げられ、塩基、過酸化水素及び水の混合により得られる液が好ましい。
【0156】
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。これらの中でも、アンモニアが好ましい。
【0157】
除去工程における温度の下限としては、20℃が好ましく、40℃がより好ましく、50℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、300℃が好ましく、100℃がより好ましい。
【0158】
除去工程における時間の下限としては、5秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、10分が好ましく、180秒がより好ましい。
【0159】
<金属含有膜パターン形成方法>
当該金属含有膜パターン形成方法は、基板に直接又は間接に金属含有膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「金属含有膜形成用組成物塗工工程」ともいう)と、上記金属含有膜形成用組成物塗工工程により形成された金属含有膜に直接又は間接に有機下層膜を形成する工程(以下、「有機下層膜形成工程」ともいう)と、上記有機下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程(以下、「レジストパターン形成工程」ともいう)と、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記金属含有膜にパターンを形成する工程(以下、「エッチング工程」ともいう)とを備える。上記金属含有膜形成用組成物塗工工程では、金属含有膜形成用組成物として上述の組成物(J)を用いる。当該金属含有膜パターン形成方法は、必要に応じて、上記レジストパターン形成工程前に、上記有機下層膜にケイ素含有膜を形成する工程(以下、「ケイ素含有膜形成工程」)を備えていてもよい。
【0160】
当該金属含有膜パターン形成方法によれば、良好な金属含有膜パターンを形成することができる。
【0161】
以下、当該金属含有膜パターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0162】
[金属含有膜形成用組成物塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に金属含有膜形成用組成物を塗工する。本工程では、金属含有膜形成用組成物として上述の組成物(J)を用いる。本工程により、基板に直接又は間接に塗工膜が形成される。この塗工膜から[C]溶媒が揮発等することにより、金属含有膜が形成される。
【0163】
基板としては、上述の当該膜形成方法における膜形成工程で用いる基板として例示したものと同様のものが挙げられる。また、本工程は、上述の当該膜形成方法における膜形成工程と同様にして行うことができる。
【0164】
本工程により形成される金属含有膜の平均厚みとしては特に限定されず、適宜決定することができる。金属含有膜の平均厚みとの下限としては、1nmが好ましく、5nmがより好ましく、10nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、10,000nmが好ましく、7,000nmがより好ましく、6,000nmがさらに好ましい。
【0165】
上述の通り、組成物(J)により形成される膜は厚い膜を形成した場合であってもクラックの発生が抑制されている。したがって、本工程により形成される金属含有膜は、厚い膜であってもよい。この場合の金属含有膜の平均厚みの下限としては、100nmが好ましく、500nmがより好ましく、1,000nmがさらに好ましく、3,000nmがより一層好ましく、4,000nmが特に好ましい。金属含有膜が厚い膜である場合、当該金属含有膜パターン形成方法により形成される金属含有膜パターンの高さが高くなる。したがって、例えばこの金属含有膜パターンをマスクとしてエッチングを行う場合、金属含有膜パターンよりも下層にある膜や基板をより深くエッチングすることができる。
【0166】
[有機下層膜形成工程]
本工程では、上記金属含有膜形成用組成物塗工工程により形成された金属含有膜に直接又は間接に有機下層膜を形成する。本工程により、上記金属含有膜に直接又は間接に有機下層膜が形成される。本工程は、上述の当該有機下層膜反転パターンにおける有機下層膜形成工程と同様である。
【0167】
[ケイ素含有膜形成工程]
本工程では、上記有機下層膜にケイ素含有膜を形成する。本工程は、上述のレジストパターン形成方法におけるケイ素含有膜膜形成工程と同様である。
【0168】
[レジストパターン形成工程]
本工程では、上記有機下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する。本工程により、上記有機下層膜に直接又は間接にレジストパターンが形成される。本工程は、上述の当該有機下層膜反転パターンにおけるレジストパターン形成工程と同様である。
【0169】
[エッチング工程]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記金属含有膜にパターンを形成する。本工程により、金属含有膜パターンが形成される。本工程は、上述の当該レジストパターン形成方法におけるエッチング工程と同様である。なお、エッチングにより金属含有膜にパターンを形成する際、金属含有膜に直接又は間接に形成された有機下層膜もエッチングされる。
【実施例】
【0170】
以下、実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0171】
本実施例における[Z]混合物中の溶媒以外の成分の濃度、[Z]混合物中の加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)及び膜の平均厚みは下記の方法により測定した。
【0172】
[[Z]混合物中の溶媒以外の成分の濃度]
[Z]混合物0.5gを250℃で30分間焼成した後の残渣の質量を測定し、この残渣の質量を[Z]混合物の質量で除することにより、[Z]混合物中の溶媒以外の成分の濃度(質量%)を算出した。
【0173】
[[Z]混合物中の加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)]
GPCカラム(東ソー(株)の「AWA-H」2本、「AW-H」1本及び「AW2500」2本)を使用し、流量:0.3mL/分、溶出溶媒:N,N’-ジメチルアセトアミドにLiBr(30mM)及びクエン酸(30mM)を添加したもの、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0174】
[膜の平均厚み]
膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「A2000D」)を用いて測定した。
【0175】
<[Z]混合物の調製>
[M]化合物、[X]化合物、[B]溶媒、及び[C]溶媒を以下に示す。以下の合成例においては特に断りのない限り、「質量部」は使用した[M]化合物の質量を100質量部とした場合の値を意味する。また、「モル比」は使用した[M]化合物の物質量を1とした場合の値を意味する。
【0176】
[M]化合物として、以下の化合物を用いた。
M-1:テトライソプロポキシチタン(IV)
M-2:トリイソプロポキシアルミニウム(III)
M-3:テトライソプロポキシハフニウム(IV)
M-4:ペンタエトキシタンタル(V)
M-5:テトラ-n-ブトキシジルコニウム(IV)
【0177】
[X]化合物として、下記式(X-1)~(X-10)、及び(x-1)で表される化合物(以下、「化合物(X-1)~化合物(X-10)」、及び「化合物(x-1)」ともいう)を用いた。
【0178】
【0179】
[B]溶媒として、以下の化合物を用いた。
B-1:イソプロピルアルコール
B-2:エタノール
B-3:1-ブタノール
【0180】
[C]溶媒として、以下の化合物を用いた。
C-1:プロピレングリコールモノエチルエーテル
C-2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
C-3:トリプロピレングリコール
C-4:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
C-5:トリエチレングリコール
C-6:テトラエチレングリコールモノメチルエーテル
【0181】
[合成例1-1](実施例1-1:[Z]混合物(Z-1)の調製)
N2雰囲気下、反応容器内に化合物(M-1)を投入し、室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、化合物(X-1)(モル比1)を30分かけて滴下した。次いで、60℃で反応を2時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液を、溶媒(B-1)(900質量部)で希釈した。上記希釈した反応溶液を室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、水(モル比0.75)を10分かけて滴下した。次いで、60℃で加水分解縮合反応を2時間実施した。加水分解縮合反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液に、溶媒(C-1)1000質量部を加えた後、エバポレーターを用いて、水、溶媒(B-1)、加水分解縮合反応により生成したアルコール及び余剰の溶媒(C-1)を除去して、混合物(Z-1)を得た。混合物(Z-1)中の加水分解縮合物のMwは1,800であった。混合物(Z-1)中の溶媒以外の成分の濃度は、7.4質量%であった。
【0182】
[合成例1-2~1-17](実施例1-2~1-17:[Z]混合物(Z-2)~(Z-17)の調製)
下記表1に示す種類及び使用量の[M]化合物、[X]化合物、[B]溶媒、縮合時水分量、及び[C]溶媒を使用した以外は、合成例1-1と同様にして、混合物(Z-2)~(Z-17)を得た。[Z]混合物中の加水分解縮合物のMw、及び[Z]混合物中の溶媒以外の成分の濃度(質量%)を表1に併せて示す。
【0183】
[合成例1-18](実施例1-18:[Z]混合物(Z-18)の調製)
N2雰囲気下、反応容器内において化合物(M-1)を投入し、室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、化合物(X-1)(モル比2)を30分かけて滴下した。次いで、60℃で反応を2時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液を、溶媒(B-1)(330質量部)で希釈した。上記希釈した反応溶液を室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、水(モル比0.75)を10分かけて滴下した。次いで、60℃で加水分解縮合反応を2時間実施した。加水分解縮合反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液に、溶媒(C-1)430質量部を加えた後、エバポレーターを用いて、水、溶媒(B-1)、反応により生成したアルコール、及び余剰の溶媒(C-1)を除去して、混合物(Z-18)を得た。混合物(Z-18)中の加水分解縮合物のMwは1,400であった。混合物(Z-18)中の溶媒以外の成分の濃度は、32.1質量%であった。
【0184】
[合成例1-19](実施例1-19:[Z]混合物(Z-19)の調製)
N2雰囲気下、反応容器内において化合物(M-1)を投入し、室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、化合物(X-1)(モル比2)を30分かけて滴下した。次いで、60℃で反応を2時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液を、溶媒(B-1)(70質量部)で希釈した。上記希釈した反応溶液を室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、水(モル比0.75)を10分かけて滴下した。次いで、60℃で加水分解縮合反応を2時間実施した。加水分解縮合反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液に、溶媒(C-1)170質量部を加えた後、エバポレーターを用いて、水、溶媒(B-1)、反応により生成したアルコール、及び余剰の溶媒(C-1)を除去して、混合物(Z-19)を得た。混合物(Z-19)中の加水分解縮合物のMwは1,450であった。混合物(Z-19)中の溶媒以外の成分の濃度は、53.2質量%であった。
【0185】
[合成例1-20](比較例1-1:[z]混合物(z-1)の調製)
下記表1に示す種類及び使用量の[M]化合物、[X]化合物、[B]溶媒、水、及び溶媒[C]を使用した以外は、合成例1-1と同様にして、混合物(z-1)を得た。
【0186】
[合成例1-21](比較例1-2:[z]混合物(z-2)の調製)
N2雰囲気下、反応容器内において化合物(M-1)を投入し、室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、化合物(x-1)(モル比2)を30分かけて滴下した。次いで、60℃で反応を2時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液を、溶媒(B-1)(270質量部)で希釈した。上記希釈した反応溶液を室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、水(モル比2.0)を10分かけて滴下した。次いで、60℃で加水分解縮合反応を2時間実施した。加水分解縮合反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液に、溶媒(C-1)370質量部を加えた後、エバポレーターを用いて、水、イソプロパノール、反応により生成したアルコール、水及び余剰の溶媒(C-1)を除去して、混合物(z-2)を得た。混合物(z-2)中の加水分解縮合物のMwは1,650であった。混合物(z-2)中の溶媒以外の成分の濃度は、13.0質量%であった。
【0187】
【0188】
<膜形成用組成物の調製(1)>
[実施例2-1]膜形成用組成物(J-1)の調製
下記表2に示すように、[Z]混合物としての(Z-1)と[C]溶媒としての(C-1)とを、[Z]混合物中の溶媒以外の成分4質量部に対して、[C]溶媒が96質量部([Z]混合物に含まれる[C]溶媒も含む)となるように混合した。得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、膜形成用組成物(J-1)を調製した。
【0189】
[実施例2-2~2-17]膜形成用組成物(J-2)~(J-17)の調製
各成分の種類及び含有量を下記表2に示す通りとした以外は、実施例2-1と同様に操作して、膜形成用組成物(J-2)~(J-17)を調製した。
【0190】
[比較例2-1]膜形成用組成物(j-1)の調製
各成分の種類及び含有量を下記表2に示す通りとした以外は、実施例2-1と同様に操作して、膜形成用組成物(j-1)を調製した。
【0191】
【0192】
[比較例2-2]膜形成用組成物(j-2)の調製
シュウ酸1.61gを水96.45gに加熱溶解させて、シュウ酸水溶液を調製した。その後、テトラメトキシシラン25.70g(70モル%)、メチルトリメトキシシラン9.86g(30モル%)、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル366.39gを入れたフラスコに、冷却管と、調製したシュウ酸水溶液を入れた滴下ロートをセットした。次に、上記フラスコをオイルバスにて60℃に加熱した後、シュウ酸水溶液をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してから、エバポレーターにセットして減圧濃縮し、ポリシロキサン溶液360gを得た。得られたポリシロキサン溶液中の溶媒以外の成分の濃度は9.8質量%であった。また、得られたポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は1,500であった。上記ポリシロキサン溶液とプロピレングリコールモノエチルエーテルを混合して、ポリシロキサン溶液中の溶媒以外の成分の濃度を4質量%に調製して、膜形成用組成物(j-2)を調製した。
【0193】
<評価>
上記調製した各膜形成用組成物を用い、保存安定性、膜厚変化抑制性、酸素系ガスエッチング耐性、埋め込み性及び除去性を下記方法に従って評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0194】
[保存安定性]
膜形成用組成物の保存安定性を時間経過による塗工性の差異により評価した。上記調製した直後の膜形成用組成物(T=0)をシリコンウェハ(基板)上にスピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT8」)を用い、1,500rpm及び30秒間の条件で回転塗工法により塗工した後、得られた塗工膜を90℃で60秒間加熱することにより金属含有膜を形成した。塗工性について、形成された金属含有膜を光学顕微鏡で観察し、塗工ムラが見られない場合は「A」(良好)と、塗工ムラが見られる場合は「B」(不良)と評価した。また、上記塗工性を評価した組成物を20℃で60日間保存したもの(T=60)について、上記同様に塗工性評価を行い、上記同様に評価した。保存安定性は、T=0における塗工性とT=60における塗工性とが共に「A」(良好)であると評価された場合には保存安定性が良好であり、そうでない場合には保存安定性が不良であると評価できる。
【0195】
[膜厚変化抑制性]
8インチシリコンウェハ上に上記調製した膜形成用組成物を上記スピンコーターを用い、1,500rpm及び30秒間の条件で回転塗工法により塗工した後、所定の時間経過後に250℃で60秒間加熱し、23℃で30秒間冷却することにより、金属含有膜を形成した。上記金属含有膜として、上記所定の時間を30秒とした場合の「金属含有膜(a0)」と、上記所定の時間を300秒とした場合の「金属含有膜(a1)」とをそれぞれ形成し、金属含有膜(a0)の平均厚みをT0とし、金属含有膜(a1)の平均厚みをT1としたとき、膜厚変化率(%)を下記式により求め、膜厚変化抑制性の指標とした。
膜厚変化率(%)=|T1-T0|×100/T0
膜厚変化抑制性は、膜厚変化率が1.7%未満の場合は「A」(良好)と、1.7%以上の場合は「B」(不良)と評価した。
【0196】
[酸素系ガスエッチング耐性]
8インチシリコンウェハ上に上記調製した膜形成組成物を上記スピンコーターによる回転塗工法により塗工し、220℃で60秒間加熱した後、23℃で30秒間冷却することにより平均厚み100nmの金属含有膜を形成した。
上記金属含有膜が形成された基板を、エッチング装置(東京エレクトロン(株)の「Tactras-Vigus」)を用いて、O2=400sccm、PRESS.=25mT、HF RF(プラズマ生成用高周波電力)=200W、LF RF(バイアス用高周波電力)=0W、DCS=0V、RDC(ガスセンタ流量比)=50%、60secの条件にてエッチング処理し、処理前後の平均膜厚からエッチング速度(nm/分)を算出し、酸素系ガスエッチング耐性を評価した。酸素系ガスエッチング耐性は、上記エッチング速度が1.0nm/分未満の場合は「A」(良好)と、1.0nm/分以上の場合は「B」(不良)と評価した。
【0197】
[埋め込み性]
有機下層膜形成材料(JSR(株)の「HM8006」)を用いて、深さ300nm、幅30nmのトレンチパターンが形成された窒化ケイ素基板上に、上記調製した膜形成用組成物を、上記スピンコーターによる回転塗工法により塗工した。スピンコートの回転速度は、上記[酸素系ガスエッチング耐性]の評価において、シリコンウェハ上に平均厚み100nmの膜を形成する場合と同じとした。次いで、大気雰囲気下にて250℃で60秒間加熱した後、23℃で30秒間冷却することにより、金属含有膜が形成された基板を得た。得られた基板の断面について、電界放出形走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズの「S-4800」)を用い、埋め込み不良(ボイド)の有無を確認した。埋め込み性は、埋め込み不良が見られなかった場合は「A」(良好)と、埋め込み不良が見られた場合は「B」(不良)と評価した。
【0198】
[除去性]
<金属含有膜付き基板の形成>
8インチシリコンウェハ上に、上記調製した膜形成用組成物を上記スピンコーターによる回転塗工法により塗工した後、220℃で60秒間加熱し、その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚み100nmの金属含有膜を形成し、表面に金属含有膜が形成された金属含有膜付き基板を作製した。
【0199】
<金属含有膜の除去>
上記作製した各金属含有膜付き基板を、下記に示す膜除去条件により処理を行った。各金属含有膜付き基板の表面に、パドル法により、下記表3に示す除去液を接触させた後、スピンコーターによる回転により乾燥させた。
【0200】
(膜除去条件-1)
上記得られた各金属含有膜付き基板を、65℃に加温した除去液(R-1)(25質量%アンモニア水溶液/30質量%過酸化水素水/水=1/1/5(体積比)混合水溶液)に5分間浸漬した。
【0201】
(膜除去条件-2)
上記得られた金属含有膜付き各基板を、50℃に加温した除去液(R-2)(96質量%硫酸/30質量%過酸化水素水=3/1(体積比)混合水溶液))に5分間浸漬した。
【0202】
(膜除去条件-3)
上記得られた金属含有膜付き各基板を、50℃に加温した除去液(R-3)(リン酸85質量%水溶液)に5分間浸漬した。
【0203】
<評価>
以下の方法により、金属含有膜の除去性を評価した。
上記得られた各金属含有膜付き基板を、断面SEMにて観察し、金属含有膜が残存していない場合は「A」(良好)と、金属含有膜が残存している場合は「B」(不良)と評価した。
【0204】
【0205】
上記表3の結果から、実施例の膜形成用組成物は、保存安定性及び埋め込み性に優れることが分かる。さらに、上記表3の結果から、実施例の膜形成用組成物により形成された膜は、膜厚変化抑制性、酸素系ガスエッチング耐性及び除去性に優れていることが分かる。
【0206】
<膜形成用組成物の調製(2)>
[その他の任意成分]として、以下の化合物を用いた。
D-1:界面活性剤((株)ネオスの「NBX-15」)
D-2:界面活性剤(DIC(株)の「F563」)
D-3:ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)
【0207】
[実施例3-1]膜形成用組成物(J-18)の調製
下記表4に示すように、[Z]混合物としての(Z-18)と[C]溶媒としての(C-1)とを、[Z]混合物中の溶媒以外の成分4質量部に対して、[C]溶媒が96質量部([Z]混合物に含まれる[C]溶媒も含む)となるように混合した。得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、膜形成用組成物(J-18)を調製した。
【0208】
[実施例3-2~3-21]膜形成用組成物(J-19)~(J-38)の調製
各成分の種類及び含有量を下記表4に示す通りとした以外は、実施例3-1と同様に操作して、膜形成用組成物(J-19)~(J-38)を調製した。
【0209】
[比較例3-1~3-2]膜形成用組成物(j-3)~(j-4)の調製
各成分の種類及び含有量を下記表4に示す通りとした以外は、実施例3-1と同様に操作して、膜形成用組成物(j-3)~(j-4)を調製した。
【0210】
【0211】
<評価>
上記調製した各膜形成用組成物を用い、塗工性及びクラックの発生を下記方法に従って評価した。評価結果を下記表4に示す。
【0212】
[塗工性]
8インチシリコンウェハ上に上記調製した膜形成用組成物を上記スピンコーターを用い、回転塗工法により塗工した後、下記表4に示す温度(℃)及び時間(秒)の条件で加熱し、23℃で30秒間冷却することにより、下記表4に示す膜厚の金属含有膜(実施例3-1~3-26及び比較例3-1~3-2)を形成した。金属含有膜について、中心から円周方向に向かう筋状の欠陥(ストリエーション)の有無を目視にて観察した。塗工性は、筋状の欠陥がない場合には「A」(良好)、筋状の欠陥があった場合には「B」(不良)と評価した。
【0213】
[クラックの発生]
8インチシリコンウェハ上に上記調製した膜形成用組成物を上記スピンコーターを用い、回転塗工法により塗工した後、下記表4に示す温度(℃)及び時間(秒)の条件で加熱し、23℃で30秒間冷却することにより、下記表4に示す膜厚の金属含有膜(実施例3-1~3-26及び比較例3-1~3-2)を形成した。また、実施例3-25及び3-26については、金属含有膜に浄空気中で10分間UVを暴露した。UV光源は、Xeエキシマランプ(ウシオ電機(株)、波長172nm、10mW/cm2)を用いた。形成した金属含有膜の表面を光学顕微鏡で観察した。クラックの発生について、金属含有膜のひび割れ又は剥がれが見られなかった場合は「A」(良好)と、金属含有膜のひび割れ又は剥がれが見られた場合は「B」(不良)と評価した。
【0214】
【0215】
上記表5の結果から、実施例の膜形成用組成物は塗工性に優れており、形成された膜はクラックの発生を抑制できていることが分かる。さらに、上記表5の結果から、実施例の膜形成用組成物は、厚い膜を形成する場合であっても、クラックの発生を抑制できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明の膜形成用組成物は、保存安定性及び埋め込み性に優れる。さらに、本発明の膜形成用組成物により形成される膜は、エッチング耐性、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性にも優れる。本発明のレジスト下層膜は、当該膜形成用組成物により形成されるので、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる。本発明の膜形成方法によれば、当該膜形成用組成物を用いるので、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性に優れる膜を形成することができる。本発明のレジストパターン形成方法によれば、当該膜形成用組成物を用いるので、良好なレジストパターンを形成することができる。本発明のレジスト下層膜反転パターン形成方法によれば、当該膜形成用組成物をレジスト下層膜反転パターン形成用組成物として用いるので、良好な反転パターンを形成することができる。本発明の膜形成用組成物の製造方法によれば、保存安定性及び埋め込み性に優れ、さらに、エッチング耐性、膜厚変化抑制性、エッチング耐性及び除去性にも優れる膜形成用組成物を製造することができる。
【0217】
本発明の金属含有膜パターン形成方法によれば、金属含有膜形成用組成物として当該膜形成用組成物を用いるので、良好な金属含有膜パターンを形成することができる。
【0218】
本発明の膜形成用組成物は厚い膜を形成する際の塗工性に優れる。さらに、本発明の膜形成用組成物によれば、クラックの発生が抑制された厚い膜を形成することができる。
【0219】
さらに、本発明の金属含有膜パターン形成方法によれば、金属含有膜形成用組成物として当該膜形成用組成物を用いることでクラックの発生が抑制された厚い膜を形成することができるため、良好な金属含有膜パターンを形成することができる。
【0220】
従って、これらは、さらなる微細化が要求されている半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスの製造におけるリソグラフィー工程に好適に用いることができる。