(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】フィルムの立体加工方法、圧縮金型、フィルム、およびフィルム成形体
(51)【国際特許分類】
B29C 59/04 20060101AFI20241119BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241119BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
B29C59/02 Z
B65D33/00 Z
(21)【出願番号】P 2021530037
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025678
(87)【国際公開番号】W WO2021002360
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2019123572
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】畠 源英
(72)【発明者】
【氏名】石坂 公一
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】安海 隆裕
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046655(JP,A)
【文献】特開2015-147386(JP,A)
【文献】特開2010-076132(JP,A)
【文献】特開2012-180112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/04
B29C 59/02
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層および前記第1層よりも伸びが大きい第2層を有したフィルムを圧縮金型によってフィルムを厚み方向に冷間で圧縮することでフィルムに立体加工を施すフィルムの立体加工方法であって、
前記圧縮金型は、フィルム圧縮時に前記フィルムのフィルム被圧縮領域に実際に接触する山折用接触有効領域を含む山折用圧縮面を有した山折用凸部を備え、
前記山折用凸部の長手方向に直交する横方向における前記山折用接触有効領域の横幅が1.0mm~3.5mmになり、前記山折用接触有効領域の横方向の左右両端における前記横方向に対する傾斜角度が147°以上になり、前記山折用凸部による前記フィルムの圧縮成形割合が前記フィルムの厚みの20%以上になるように、前記山折用凸部によって前記フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、前記フィルムを前記第1層側に張り出させて、前記フィルムに山状に湾曲した山折部を形成し、
前記山折部は、前記フィルムを平坦な面に対して1.5~4.5g/cm
2の範囲におけるいずれかのバキューム条件で吸着した時に、前記平坦な面から離れるように膨らむ領域の横方向における横幅が、前記山折用接触有効領域の横方向における横幅の150%以上になる部位であることを特徴とする立体加工方法。
【請求項2】
前記山折用圧縮面は、前記山折用凸部の長手方向に直交する仮想面内で湾曲した凸状湾曲面を、少なくとも前記山折用接触有効領域の左右両端側に含むことを特徴とする請求項1に記載の立体加工方法。
【請求項3】
前記山折用接触有効領域の全体が、前記凸状湾曲面から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の立体加工方法。
【請求項4】
前記凸状湾曲面の曲率半径Rは、1~20mmで設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の立体加工方法。
【請求項5】
前記山折用接触有効領域の全体が、角が無い滑らかな面から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の立体加工方法。
【請求項6】
前記山折用接触有効領域の表面粗さ(Ra)は、2μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の立体加工方法。
【請求項7】
前記フィルムは、谷折用凸部によって圧縮成形を施される第2フィルム被圧縮領域を含み、
前記谷折用凸部は、フィルム圧縮時に前記第2フィルム被圧縮領域に実際に接触する谷折用接触有効領域を含む谷折用圧縮面を有し、
前記谷折用凸部の長手方向に直交する横方向における前記谷折用接触有効領域の横幅が1.0mm未満になり、前記谷折用凸部による前記フィルムの圧縮成形割合が前記フィルムの厚みの20%以上になるように、前記谷折用凸部によって前記第2フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、前記フィルムの第2層側に向けて前記第2フィルム被圧縮領域を凹ませた谷折部を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の立体加工方法。
【請求項8】
前記山折用凸部および前記谷折用凸部は、同じ前記圧縮金型に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の立体加工方法。
【請求項9】
第1層および前記第1層よりも伸びが大きい第2層を有したフィルムを厚み方向に冷間で圧縮することでフィルムに立体加工を施すための圧縮金型であって、
前記圧縮金型は、フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、前記フィルムを前記第1層側に張り出させて、前記フィルムに山状に湾曲した山折部を形成するための山折用凸部を含み、
前記山折用凸部は、フィルム圧縮時に前記フィルムのフィルム被圧縮領域に実際に接触する山折用接触有効領域を含む山折用圧縮面を有し、
前記山折用接触有効領域の表面粗さ(Ra)は、2μm以下であり、
前記山折用圧縮面は、前記山折用凸部の長手方向に直交する横方向における前記山折用接触有効領域の横幅が1.0mm~3.5mmになるとともに、前記山折用接触有効領域の横方向の左右両端における前記横方向に対する傾斜角度が147°以上になるように形成されていることを特徴とする圧縮金型。
【請求項10】
前記圧縮金型は、前記フィルムの第2フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、前記第2層側に向けて前記第2フィルム被圧縮領域を凹ませた谷折部を形成するための谷折用凸部を更に含み、
前記谷折用凸部は、フィルム圧縮時に前記第2フィルム被圧縮領域に実際に接触する谷折用接触有効領域を含む谷折用圧縮面を有し、
前記谷折用圧縮面は、前記谷折用凸部の長手方向に直交する横方向における前記谷折用接触有効領域の横幅が1.0mm未満になるように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の圧縮金型。
【請求項11】
山折部および谷折部が形成されたフィルムであって、
第1層および前記第1層よりも伸びが大きい第2層を有した積層フィルムとして形成され、
前記山折部は、前記第1層側に張り出して山状に湾曲した断面形状を有し、
前記谷折部は、前記第2層側に向けて谷状に凹んだ断面形状を有し、
前記山折部は、その中腹部分において前記山折部の長手方向に沿って延びる加工痕を、その頂部を挟んだ左右両側に有し、
前記長手方向に直交する横方向における左右の前記加工痕間の間隔は、
1.0mm以上3.5mm以下に形成され
、
前記谷折部は、その長手方向に沿って延びる前記第2層側に凹むように折れ曲がった形状の2本の谷状折れ線を有し、
前記2本の谷状折れ線の間隔は、1.0mm未満に設定されていることを特徴とするフィルム。
【請求項12】
前記山折部は、前記フィルムを平坦な面に対して1.5~4.5g/cm
2の範囲におけるいずれかのバキューム条件で吸着した時に、前記平坦な面から離れるように膨らむ領域の横方向における横幅が、前記横方向における左右の前記加工痕間の間隔の150%以上になる部分であることを特徴とする請求項11に記載のフィルム。
【請求項13】
請求項11
又は請求項12に記載のフィルムを有したフィルム成形体であって、
前記フィルムには、複数の前記山折部および複数の前記谷折部を組み合わせた立体形状が形成されていることを特徴とするフィルム成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを冷間で圧縮することでフィルムに立体加工を施すフィルムの立体加工方法、圧縮金型、フィルム、およびフィルム成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、飲料、洗剤等の半流動性又は流動性の内容物を充填するためのパウチ等のフィルム成形体においては、フィルムに立体加工を施すことにより、他社の製品との差別化を図り、商品価値を高めることが要求されている。
【0003】
このようなフィルムの立体成形としては、フィルムの所定部位を部分的に加熱・冷却してエンボス模様を形成する、エンボス模様付き袋状容器の成形方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の方法では、熱間でのプレス成形後に冷却時間を要するので加工時間が長くなり、また、加熱や冷却の必要があるのでエネルギー消費が大きいという問題や、設備内にフィルムの冷却区間を設ける必要があるため、既存設備に大幅な設計変更を加える必要が生じるという問題や、加熱されたフィルムに対してエンボス加工を施すことに起因して、フィルムに薄く破断を生じやすい箇所が形成されてしまい、フィルム強度が低下するおそれがあるといった問題がある。また、雄型及び雌型の間にフィルムを挟むことでエンボスを成形する場合は、細かな凹凸による複雑な形状を成形することが困難である。
【0005】
そこで、本発明者は、特許文献2等において、上述した熱間でのプレス加工における問題点を解決する1つの案として、フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することでフィルムに立体加工方法を施すことを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-142132号公報
【文献】特開2014-46655号公報
【文献】特開2010-168109号公報
【0007】
ここで、パウチ等のフィルム成形体に施される立体加工としては、局所的な凹凸をフィルムに付与することが所望される場合もあれば、特許文献3に開示されるような所謂ダイヤカット(ダイヤモンドカット)形状をフィルムに施す場合等、フィルム平面方向におけるフィルムの広範囲に亘ってなだらかな山状の湾曲を形成することが所望される場合もある。
【0008】
ところが、特許文献2に記載の立体加工方法は、フィルム被圧縮領域付近において局所的な凹凸を形成することには適しているものの、フィルム平面方向におけるフィルムの広範囲に亘ってなだらかな湾曲をフィルムに形成することには適していないことから、なだらかな湾曲をフィルムに形成するためには新たな工夫を必要とする。
【0009】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、加工時間の短縮およびエネルギー消費の低減、設備の大型化の抑制、複雑な形状の成形、フィルム強度の低下の回避を実現しつつ、なだらかな湾曲をフィルムに形成するフィルムの立体加工方法、圧縮金型、フィルム、およびフィルム成形体を提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフィルムの立体加工方法は、第1層および前記第1層よりも伸びが大きい第2層を有したフィルムを圧縮金型によってフィルムを厚み方向に冷間で圧縮することでフィルムに立体加工を施すフィルムの立体加工方法であって、前記圧縮金型は、フィルム圧縮時に前記フィルムのフィルム被圧縮領域に実際に接触する山折用接触有効領域を含む山折用圧縮面を有した山折用凸部を備え、前記山折用凸部の長手方向に直交する横方向における前記山折用接触有効領域の横幅が1.0mm~3.5mmになり、前記山折用接触有効領域の横方向の左右両端における前記横方向に対する傾斜角度が147°以上になり、前記山折用凸部による前記フィルムの圧縮成形割合が前記フィルムの厚みの20%以上になるように、前記山折用凸部によって前記フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、前記フィルムを前記第1層側に張り出させて、前記フィルムに山状に湾曲した山折部を形成し、前記山折部は、前記フィルムを平坦な面に対して1.5~4.5g/cm2の範囲におけるいずれかのバキューム条件で吸着した時に、前記平坦な面から離れるように膨らむ領域の横方向における横幅が、前記山折用接触有効領域の横方向における横幅の150%以上になる部位であることにより、前記課題を解決するものである。
本発明の圧縮金型は、第1層および前記第1層よりも伸びが大きい第2層を有したフィルムを厚み方向に冷間で圧縮することでフィルムに立体加工を施すための圧縮金型であって、前記圧縮金型は、フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、前記フィルムを前記第1層側に張り出させて、前記フィルムに山状に湾曲した山折部を形成するための山折用凸部を含み、前記山折用凸部は、フィルム圧縮時に前記フィルムのフィルム被圧縮領域に実際に接触する山折用接触有効領域を含む山折用圧縮面を有し、前記山折用接触有効領域の表面粗さ(Ra)は、2μm以下であり、前記山折用圧縮面は、前記山折用凸部の長手方向に直交する横方向における前記山折用接触有効領域の横幅が1.0mm~3.5mmになるとともに、前記山折用接触有効領域の横方向の左右両端における前記横方向に対する傾斜角度が147°以上になるように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本発明のフィルムは、山折部および谷折部が形成されたフィルムであって、第1層および前記第1層よりも伸びが大きい第2層を有した積層フィルムとして形成され、前記山折部は、前記第1層側に張り出して山状に湾曲した断面形状を有し、前記谷折部は、前記第2層側に向けて谷状に凹んだ断面形状を有し、前記山折部は、その中腹部分において前記山折部の長手方向に沿って延びる加工痕を、その頂部を挟んだ左右両側に有し、前記長手方向に直交する横方向における左右の前記加工痕間の間隔は、1.0mm以上3.5mm以下に形成され、前記谷折部は、その長手方向に沿って延びる前記第2層側に凹むように折れ曲がった形状の2本の谷状折れ線を有し、前記2本の谷状折れ線の間隔は、1.0mm未満に設定されていることにより、前記課題を解決するものである。
本発明のフィルム成形体は、前記フィルムを有したフィルム成形体であって、前記フィルムには、複数の前記山折部および複数の前記谷折部を組み合わせた立体形状が形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0011】
なお、本明細書における「冷間」とは、常温(20℃±15℃)を含む、フィルムのビカット軟化温度よりも低い温度域のことを意味する。
また、フィルムの「伸び」を示す指標としては様々あるが、例えば、弾性率、ヤング率、降伏伸度、破壊伸度が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルムに冷間で厚み方向に圧縮成形を施すことにより、熱間でのプレス成形によって立体加工を施す場合と比較して、加工時間の短縮およびエネルギー消費の低減、設備の大型化の抑制、複雑な形状の成形、フィルム強度の低下の回避、等を実現できるばかりでなく、以下に記載する効果を奏することができる。
【0013】
まず、請求項1、9、11、12、13に係る発明によれば、山折用圧縮面が、山折用接触有効領域の横方向の左右両端における横方向に対する傾斜角度が147°以上になるように形成されていることにより、簡素な構成で、フィルム圧縮時にフィルム被圧縮領域に接触する山折用接触有効領域の左右両端において、山折用圧縮面との接触によってフィルムの第1層側の動きが拘束されることを抑制することが可能であるため、フィルム被圧縮領域周辺を広範囲に亘ってなだらかに山状に湾曲させることができる。
すなわち、フィルム圧縮時に、山折用接触有効領域の左右両端において、山折用圧縮面との接触によってフィルムの第1層側の動きが拘束される場合には、当該拘束に起因して、フィルム圧縮時に変形を生じるフィルムのフィルム平面方向の範囲が限定的になる。つまり、フィルムが圧縮される部分と圧縮されない部分とで変形の差が大きくなる。そのため、フィルムの圧縮を解除したときに、圧縮部分と非圧縮部分との境界周辺において、大きな変形が生じる。一方、本請求項1に係る発明によれば、山折用圧縮面が、山折用接触有効領域の横方向の左右両端における横方向に対する傾斜角度が147°以上になるように形成されていることにより、山折用接触有効領域の左右両端において、山折用圧縮面との接触によってフィルムの第1層側の動きが拘束されることを抑制することが可能であるため、フィルム圧縮時に変形を生じるフィルムのフィルム平面方向の範囲が広範囲になるとともに、フィルム圧縮時におけるフィルムの各部が、大きく変形(フィルムの伸び等)することを抑制して、フィルム圧縮の解放後に、フィルム被圧縮領域周辺を広範囲に亘ってなだらかに山状に湾曲させることができる。
また、フィルム圧縮時におけるフィルムの変形具合にムラが生じることを抑制することが可能であるため、圧縮解放後に、フィルムの厚みが大きく変化することを抑制するとともに、フィルムに局所的な変形(起伏)が生じることを抑制する、または、フィルムに局所的な変形が生じた場合でも当該変形を小さくすることができ、これにより、フィルム強度の低下を抑制することができる。
また、凸型のみによって山折り形状を成形できるので、細かい形状でも成形することが可能である。
なお、本発明によれば、圧縮金型によって、フィルムの第1層側、第2層側いずれの方向からフィルムを圧縮しても、伸びの小さい第1層側にフィルムが張り出して、山折部を形成することができる。
【0014】
なお、20%以上の圧縮成形割合で第1層および第1層よりも伸びが大きい第2層を有したフィルムを冷間で厚み方向に圧縮した際に出現する第1層側への張り出し現象は、そのメカニズムが必ずしも明らかではないが、圧縮力を取り除いた後、フィルムの厚みが復元する際の挙動において、相対的に伸びが小さい第1層の復元が僅かであり、相対的に伸びが大きい第2層の復元が大きいことが、その要因だと考えられる。
【0015】
本請求項2~6に係る発明によれば、山折用圧縮面との接触によってフィルムの第1の面側の動きが拘束されてしまうことを良好に抑制して、フィルム被圧縮領域周辺をなだらかに山状に湾曲させることができる。
本請求項7、10、11に係る発明によれば、山折用凸部および谷折用凸部によってフィルムの同じ側からフィルムの圧縮を行うことで、フィルムに山折部および谷折部を形成することも可能であるため、フィルムの立体加工を容易に行うことができる。
なお、本発明によれば、圧縮金型によって、フィルムの第1層側、第2層側いずれの方向からフィルムを圧縮しても、伸びの大きい第2層側にフィルムが凹んで、谷折部を形成することができる。
本請求項8、10に係る発明によれば、山折用凸部および谷折用凸部が、同じ圧縮金型に形成されていることにより、圧縮金型によるフィルムの圧縮によって、山折部および谷折部をまとめて形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパウチを示す説明図。
【
図3】フィルムの立体加工方法を概略的に示す説明図。
【
図7】山折部の形成条件を確認するために行った試験で用いた試験用金型を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態であるフィルム成形体としてのパウチ10について、図面に基づいて説明する。
【0018】
まず、パウチ10は、
図1に示すように、材料となる各フィルム20の外縁を熱溶着することで袋状に形成され、洗剤やシャンプー等の内容液を収容するものである。
【0019】
パウチ10は、
図1に示すように、対向して配置される表裏のフィルム20と、パウチ10の底部において表裏のフィルム20の間に2つ折り状態で折り畳まれた状態で配置されるマチ部用フィルム(図示しない)とから構成され、各フィルム20を所定箇所で熱溶接着する製袋用のシール部を形成することで、その底部にマチ部が形成されたスタンディングパウチとして構成されている。
【0020】
各フィルム20は、
図3~
図5に示すように、フィルム20の第1の面20a側に配置された第1層21と、フィルム20の第2の面20b側に配置され、第1層21よりも伸びが大きい(第1層21よりも圧縮力を取り除いた後の復元が相対的に大きい性質を有した)第2層22とを積層して貼り合わせた積層フィルムとして形成されている。
各フィルム20は、第1層21がパウチ10の外側に向くように配置される。
【0021】
第1層21の具体的材料としては、延伸フィルムを好適に使用することができ、ナイロンフィルムなどのポリアミドフィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム等を好適に用いることができる。
また、第2層22の具体的材料としては、低-、中-、高-密度ポリエチレン(PE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LULDPE)、アイソタクティックポリプロピレン(PP)、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン系不飽和カルボン酸乃至その無水物でグラフト変性されたオレフィン樹脂等の変性オレフィン系樹脂等が用いられる。
【0022】
第1層21は、その厚さが10~40μm程度に設定され、第2層22は、その厚さが18~200μm程度に設定されている。第1層21の方が、第2層22よりも1.8~20倍程度薄く形成されている。
また、フィルム20の総厚みは、(フィルム20が第1層21、第2層22以外の層を有する場合には、当該他の層を含めて、)30~300μm程度で形成されている。
【0023】
各フィルム20には、
図1に示すように、複数の山折部30と複数の谷折部40とを組み合わせて成る立体形状が形成され、本実施形態の場合、所謂ダイヤカット形状が形成されている。
なお、ダイヤカット形状とは、平面方向に沿って直線状に延び、格子状に配置された複数の山折線と、複数の山折線によって形成された各矩形状の部分の対角線上において、平面方向に沿って直線状に延びた谷折線と、を組合せた形状である。本実施形態の場合、
図1に示すような立体形状は、具体的には、フィルム平面方向に沿って直線状に延び、格子状に配置された複数の山折部30と、複数の山折部30によって形成された各矩形状の部分の対角線上において、フィルム平面方向に沿って直線状に延びた谷折部40とを組み合わせて形成されたダイヤカット形状であり、各格子幅を22mmとしたものである。その他、格子幅16mm、10mmとしたダイヤカット形状も成形可能であり、本実施形態に係る山折部30及び谷折部40によれば、パウチ10の縦横幅等の大きさに応じて、適宜格子幅を選択して格子幅の広い形状から格子幅の狭い形状までダイヤカット形状を再現できる。
【0024】
山折部30は、
図4に示すように、(フィルム20の厚み方向全体に亘って)フィルム20の第1の面20a側に張り出すように山状に湾曲した断面形状を有した部位である。山折部30の頂部は、
図1に示すように、パウチ平面方向において直線状に延びている。
ここで、山折部30は、フィルム20を平坦な面(平坦状の被吸着面)に対して1.5~4.5g/cm
2の範囲におけるいずれかのバキューム条件(バキューム強度)で吸着した時に、前記平坦な面から離れるように膨らむ領域の横方向(前記領域の長手方向に直交する方向、
図4の紙面左右方向)における横幅が、後述する山折用凸部60の山折用接触有効領域61aの横方向(山折用接触有効領域61aの長手方向に直交する方向、
図4の紙面左右方向)における横幅W1の150%以上になる部位である。
【0025】
また、谷折部40は、
図5に示すように、(フィルム20の厚み方向全体に亘って)フィルム20の第2の面20b側に向けて谷状に凹んだ断面形状を有した部位である。谷折部40の底部は、
図1に示すように、フィルム平面方向において直線状に延びている。
【0026】
次に、フィルム20の立体加工に用いられる圧縮金型50について、以下に説明する。
【0027】
圧縮金型50は、
図3~
図5に示すように、フィルム20を挟んで反対側に配置されたアンビル80とでフィルム20を厚み方向に圧縮するものであり、
図1と
図2から分かるように、フィルム20の複数の山折部30および複数の谷折部40の配置関係に対応する配置関係で形成された複数の山折用凸部60および複数の谷折用凸部70を同じ面に有している。なお、本実施形態では、フィルム20の第1層21側から山折用凸部60及び谷折用凸部70によりフィルム20を圧縮する形態について説明するが、第2層22側から山折用凸部60及び谷折用凸部70によりフィルム20を圧縮しても、フィルム20が第1層21側へ張り出し、又は第2層22側へ凹む挙動は、第1層21側からフィルム20を圧縮する形態と略同じである。
【0028】
各山折用凸部60は、
図2に示すように、直線状に延びるように形成されている。
また、各山折用凸部60は、
図4に示すように、フィルム20を圧縮する部位(すなわち、フィルム圧縮時にフィルム20に接触する部位)である山折用圧縮面61を有している。
山折用圧縮面61(山折用接触有効領域61a)は、
図4に示すように、山折用凸部60の長手方向(
図4の紙面に垂直な方向)に直交する仮想面内で湾曲して形成され圧縮方向に向けて(アンビル80側に向けて)凸状の単一の凸状湾曲面から構成されている。
この山折用圧縮面61の凸状湾曲面の曲率半径Rは、1~20mmで設定されている。
また、山折用圧縮面61(山折用接触有効領域61a)の表面粗さ(Ra)は、2μm以下で設定されているのが好ましい。なお、山折用圧縮面61の表面粗さ(Ra)を低減させる手法としては、山折用圧縮面61に鏡面磨きを施す等、如何なるものでもよい。
山折用圧縮面61は、フィルム圧縮時(山折用凸部60によってフィルム20を圧縮した状態)においてフィルム20の第1フィルム被圧縮領域に実際に接触する部位である山折用接触有効領域61aを有している。
山折用圧縮面61は、
図4に示すように、山折用凸部60の長手方向(および山折用凸部60によるフィルム20の圧縮方向)に直交する横方向における山折用接触有効領域61aの横幅W1が1.0mm以上3.5mm以下になるように形成されている。
また、山折用圧縮面61は、山折用接触有効領域61aの横方向の左右両端における横方向に対する傾斜角度Θ(
図7を参照。本実施形態のように、山折用圧縮面61が凸状湾曲面で構成されている場合、山折用接触有効領域61aの左右両端における山折用圧縮面61の接線の横方向に対する傾斜角度)が、147°以上になるように形成されている。
【0029】
各谷折用凸部70は、
図2に示すように、直線状に延びるように形成されている。
また、各谷折用凸部70は、
図5に示すように、各谷折用凸部70は、直方体状の凸部として構成され、フィルム20を圧縮する(すなわち、フィルム圧縮時にフィルム20に接触する)部位である谷折用圧縮面71を有している。
本実施形態は、谷折用圧縮面71が、
図5に示すように、谷折用凸部70の長手方向(
図5の紙面に垂直な方向)に沿って延びる直角に曲がった2つの角部71bを有している。
谷折用圧縮面71は、フィルム圧縮時(谷折用凸部70によってフィルム20を圧縮した状態)においてフィルム20の第2フィルム被圧縮領域に実際に接触する部位である谷折用接触有効領域71aを有している。
谷折用圧縮面71は、谷折用凸部70の長手方向(および谷折用凸部70によるフィルム20の圧縮方向)に直交する横方向における谷折用接触有効領域71aの横幅W2が1.0mm未満になるように形成されている。
【0030】
次に、本実施形態におけるフィルム20の立体加工方法について、以下に説明する。
【0031】
まず、フィルム20の立体加工、すなわち、山折部30および谷折部40の形成は、
図3~
図5に示すように、圧縮金型50の山折用凸部60および谷折用凸部70と、フィルム20を挟んで反対側に配置され平坦面状の圧縮面を有したアンビル80との間で、フィルム20を挟み込んで圧縮することで行われる。ここで、アンビル80は、フィルム20の圧縮時にフィルム20に対して全面的に接触するように構成されている。
【0032】
以下に、山折用凸部60による山折部30の形成、および、谷折用凸部70による谷折部40の形成について、具体的に説明する。
【0033】
まず、山折部30については、
図4に示すように、山折用凸部60によってフィルム20の第1の面20a側から第1フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、フィルム20の第1フィルム被圧縮領域周辺を第1の面20a側に張り出させ、フィルム20に山状に湾曲した山折部30が形成される。
【0034】
ここで、フィルム20の第1の面20a側から第1フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮した場合にフィルム20が第1の面20a側に張り出す現象は、そのメカニズムが必ずしも明らかではないが、フィルム圧縮時におけるフィルム20の第1の面20a側の変形具合と第2の面20b側の変形具合との間に差が生じ、圧縮力を取り除いた後、フィルム20の厚みが復元する際の挙動において、フィルム20の第1の面20a側の復元と第2の面20b側の復元とに差が生じることが、その要因だと考えられる。
更に詳しく説明すると、本実施形態のように、フィルム20を第1層21と第1層21よりも伸びが大きい第2層22とから成る積層フィルムから構成した場合、圧縮力を取り除いた後、フィルム20の厚みが復元する際の挙動において、相対的に伸びが小さい第1層21の復元が僅かであり、相対的に伸びが大きい第2層22の復元が大きいことが、その要因だと考えられる。
【0035】
また、フィルム圧縮時に、山折用圧縮面61との接触によってフィルム20の第1の面20a側の動きが拘束されてしまう場合には、当該拘束に起因して、フィルム圧縮時に変形を生じるフィルム20のフィルム平面方向の範囲が限定的になる。つまり、フィルムが圧縮される部分と圧縮されない部分とで変形の差が大きくなる。そのため、フィルムの圧縮を解除したときに、圧縮部分と非圧縮部分との境界周辺において、大きな変形が生じる。
一方、本実施形態では、山折用接触有効領域61aの横方向の左右両端における横方向に対する山折用圧縮面61の傾斜角度Θが147°以上になるように形成されていることにより、山折用接触有効領域61aの左右両端において、山折用圧縮面61との接触によってフィルム20の第1の面20a側の動きが拘束されることを抑制することが可能であるため、フィルム圧縮時に変形を生じるフィルム20のフィルム平面方向の範囲が広範囲になるとともに、フィルム圧縮時におけるフィルム20の各部が、大きく変形することを抑制することが可能であるため、フィルム圧縮の解放後に、
図4に示すように、第1フィルム被圧縮領域周辺を広範囲に亘ってなだらかに山状に湾曲させることができる。
【0036】
また、山折用凸部60による山折部30の形成は、以下の条件で実施される。
【0037】
まず、
図4に示す山折用圧縮面61の山折用接触有効領域61aの横幅W1は、上述したように、1.0mm以上3.5mm以下に設定される。仮に、山折用接触有効領域61aの横幅W1が1.0mmよりも小さい場合には、フィルム20への山折用凸部60による圧力が高くなりすぎ、フィルム20が第1の面20a側に張り出しにくくなってしまう。
また、山折用凸部60によるフィルム20の圧縮成形割合は、上述したように、フィルム20の厚みの20%以上に設定される。仮に、当該圧縮成形割合が20%以上よりも小さい場合、フィルム20の第1の面20a側への張り出し現象が充分に生じない。ただし、圧縮成形割合が大きすぎると、フィルム20の伸びが過剰となってフィルム20の損傷が生じるため、圧縮成形割合20%以上において適宜設定する必要がある。
また、山折用圧縮面61の凸状湾曲面の曲率半径Rは、上述したように、1mm~20mmで設定され、当該Rが1mmよりも小さい場合、フィルム20が局所的に圧縮されることになり、
図4に示すような第1フィルム被圧縮領域周辺を広範囲に亘ってなだらかに湾曲した山形状をフィルム20に形成することができない。
【0038】
また、
図4の符号31で示す山折部30の中腹部分には、山折部30の長手方向(延在方向)に沿って延びる加工痕が、山折部30の頂部を挟んだ左右両側に形成される場合がある。
なお、本明細書における用語「中腹」とは、山折部30の頂部と左右両端との間の中央位置にその意味が限定されるものではなく、山折部30の頂部と左右両端との間におけるいずれかの位置のことを意味する。
これら加工痕は、
図4に示すように山折部30を断面視した場合の山折部30の輪郭線の曲率が大きく変化した箇所、または、山折部30の輪郭線が僅かに谷状に凹んだ(起伏した)箇所のことである。
これら加工痕が形成されるメカニズムは明確ではないが、
図4から分かるように、山折用凸部60の横方向(長手方向に直交する方向)における山折用圧縮面61の山折用接触有効領域61aの左右両端によって圧縮された箇所付近に加工痕が形成されることから、フィルム20を圧縮しきった時に、山折用圧縮面61のフィルム20と接触する左右両端付近において、フィルム20の変形具合に多少の偏りが生じることが、その要因だと考えられる。
そのため、山折部30の長手方向に直交する横方向における左右の加工痕間の間隔は、山折用圧縮面61の山折用接触有効領域61aの横幅W1と同様の1.0mm以上3.5mm以下になる。
【0039】
このようにして得られた山折部30は、フィルム20を平坦な面(平坦状の被吸着面)に対して1.5~4.5g/cm2の範囲におけるいずれかのバキューム条件で吸着した時に、前記平坦な面から離れるように膨らむ領域の横方向における横幅が、山折用凸部60の横方向における横幅W1(前記加工痕間の間隔)の150%以上になる。
【0040】
次に、谷折部40については、
図5に示すように、アンビル80によってフィルム20の第2の面20b側を支持した状態で、谷折用凸部70によってフィルム20の第1の面20a側から第2フィルム被圧縮領域を冷間で圧縮することで、フィルム20の第2の面20b側に向けて第2フィルム被圧縮領域を凹ませた谷折部40が形成される。
【0041】
ここで、谷折部40が形成される現象は、そのメカニズムが明らかではないが、谷折用圧縮面71の横幅W2が1.0mm未満の条件でフィルムの圧縮を行った場合、フィルム圧縮に起因して生じるフィルム20の第2の面20b側(第2層22側)の塑性変形の影響が大きく、フィルム20が第2の面20b側に向けて凹んだ状態が維持されることが、その要因だと考えられる。
【0042】
なお、谷折用凸部70によるフィルム20の圧縮成形割合は、フィルム20の厚みの20%以上に設定され、フィルム20の厚みの20%よりも小さく設定された場合、フィルム20の視覚的な変形は生じない。ただし、圧縮成形割合が大きすぎると、フィルム20の伸びが過剰となってフィルム20の損傷が生じるため、圧縮成形割合20%以上において適宜設定する必要がある。
【0043】
また、谷折用凸部の幅W2が1.0mm以上に設定された場合、フィルム20の第1の面20a側への張り出し現象が発現してしまい、また、谷折用凸部の幅W2を1.0mm未満で幅を小さくする場合、下限値は、適宜設定する必要があるが、概ね、谷折用凸部の幅W2が0.5mmよりも小さく設定された場合、フィルム20への圧力が過剰となってフィルム20の損傷等が生じやすくなる。
【0044】
また、谷折部40においては、
図5から分かるように、その底部の両サイドに、第2の面20b側に凹むように折れ曲がった形状の2本の谷状折れ線41が形成される。これら谷状折れ線41は、谷折部40の長手方向に沿って延びている。
これら谷状折れ線41が形成されるメカニズムも明確ではないが、
図5から分かるように、谷折用圧縮面71の角部71bによって圧縮された箇所付近に谷状折れ線41が形成されることから、フィルム圧縮時に、谷折用圧縮面71の角部71bによって圧縮された箇所付近(すなわち、谷折用圧縮面71の左右両端付近)において、フィルム20の変形具合に偏りが生じることが、その要因だと考えられる。
そのため、これら2本の谷状折れ線41の横方向における間隔は、谷折用圧縮面71の横幅W2と同様の1.0mm未満になる。
なお、圧縮条件にもよるが、2本の谷状折れ線41の間の領域には、フィルム20の第1の面20a側に凸状に僅かに張り出す現象が見られる場合もあり、2本の谷状折れ線41の間の領域がほぼ平坦面状に維持される場合もある。
【0045】
なお、上述したフィルム20の立体加工を行うタイミングについては、パウチ10内に内容物を充填する前であって、各フィルム20を熱溶着する前、または、充填開口部となる箇所以外についてフィルム20を熱溶着した製袋用のシール部を形成した後のいずれであってもよい。
【0046】
また、
図3(a)に示す例では、圧縮金型50およびアンビル80を直線状に接近させてフィルムを圧縮するように構成されているが、圧縮金型50やアンビル80の具体的態様はこれに限定されず、例えば、
図3(b)に示すように、ロール状の圧縮金型50とロール状のアンビル80とを回転させながらフィルム20を圧縮するように構成してもよい。
なお、
図3(a)および
図3(b)では、図を簡略化するために、山折用凸部60および谷折用凸部70を1つずつのみ図示した。
【0047】
次に、山折部30の形成条件を確認するために実施した試験について、
図7、8に基づいて以下に説明する。
【0048】
まず、本実験例では、先端部92の先端幅および先端部92の両側に形成された肩部93のR(曲率半径)を様々に変えた試験用金型90を用意して、後述するフィルム1~3を圧縮率約50%で圧縮し、フィルム圧縮時にフィルム1~3に実際に接触した試験用金型90の接触有効領域91aの横幅W1と接触有効領域91aの横方向の左右両端における横方向に対する傾斜角度θとを、金型とフィルムとの接触位置から推計するとともに、圧縮後のフィルム1~3に山折部30が形成されたか否かを確認した。具体的な実験条件等は、以下の通りである。
【0049】
[実験条件]
先端部92の先端幅:0mm、0.5mm、1mm、2mm、4mm
先端部92のR(曲率半径):64.9mm
肩部93のR(曲率半径):2mm、4mm、8mm
フィルム1:第1層21側から順に、15μmのナイロン(NY)、12μmのアルミ蒸着バリアフィルム(VMPET)、120μmの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を積層した積層フィルム
フィルム2:第1層21側から順に、12mのポリエチレンテレフタレート(PET)、12μmのアルミ箔、15μmのナイロン(NY)、60μmの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を積層した積層フィルム
フィルム3:第1層21側から順に、12mのポリエチレンテレフタレート(PET)、12μmのアルミ蒸着バリアフィルム(VMPET)、80μmの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を積層した積層フィルム
山折部30の確認方法:真空発生器(PISCO社製のVUH07-66A)を用いて、圧縮後のフィルム1~3を平坦な吸着面(正確には、複数の吸引用穴が形成された平坦な吸着面)に対して約1.57g/cm
2のバキューム条件で吸着した状態で、フィルム1~3のうち、平坦な吸着面から離れるように膨らんだ領域の横方向における横幅を測定した。そして、接触有効領域91aの横幅W1に対する上記のフィルム1~3の膨らんだ領域の横幅の割合が150%以上であった場合は、試験結果を「○(山折部30が形成された)」と判断した。なお、
図8に示す試験結果の「×(CS)」は、フィルム1~3の一部が第1層21側に張り出す現象が生じたものの、上記の接触有効領域91aの横幅W1に対する上記のフィルム1~3の膨らんだ領域の横幅の割合が150%未満であったものを示している。
【0050】
図8に示す本実験例の試験結果から、接触有効領域91aの横幅W1が1mm~3.5mmの場合であって、傾斜角度θが147°以上である場合に、山折部30が良好に形成されることが確認できた。
【0051】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、フィルム成形体がパウチ10であるものとして説明したが、フィルム成形体の具体的態様は、その構成要素の一部としてフィルム20を有するものであれば、如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、パウチ10がスタンディングパウチであるものとして説明したが、パウチ10の具体的態様は、パウチ10の両サイドにマチ部が形成された所謂横ガゼットパウチや、マチ部が形成されていない所謂平パウチ等、如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、山折部30や谷折部40が各フィルム20に形成されているものとして説明したが、山折部30や谷折部40を形成する位置については、如何なるものでもよく、例えば、表裏のフィルム20の一方のみに山折部30や谷折部40を形成してもよく、また、マチ部用フィルム(図示しない)に山折部30や谷折部40を形成してもよい。
また、上述した実施形態では、山折部30や谷折部40の両方を同じフィルム20に形成するものとして説明したが、フィルム20やマチ部用フィルム(図示しない)に山折部30又は谷折部40のみを形成してもよい。
また、上述した実施形態では、フィルム20に複数の山折部30が形成されているものとして説明したが、山折部30の数量については1つ以上であればよく、また、谷折部40を形成する場合、谷折部40の数量についても1つ以上であればよい。
また、上述した実施形態では、複数の山折部30と複数の谷折部40とを組み合わせて成る立体形状がダイヤカット形状であるものとして説明したが、前記立体形状については任意に決定すればよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、フィルム20が、第1層21および第2層22の2つの層のみを貼り合わせて形成されているものとして説明したが、第1層21および第2層22の間や、第1層21や第2層22の外側に、他の層(アルミ等から成る金属層、他の延伸樹脂フィルムから成る層、等)を設けてもよい。
また、上述した実施形態では、山折部30や谷折部40が、主にパウチ10の加飾やフィルム20の強度向上(パウチ10の立体性維持の向上)やパウチ10への機能付与を目的として形成されるものであるが、山折部30や谷折部40を形成する目的は、文字や点字加工や滑り止め等の付与等の如何なるものでもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、山折用凸部60および谷折用凸部70が、同じ圧縮金型50の同じ面に形成されているものとして説明したが、山折用凸部60および谷折用凸部70を異なる圧縮金型50に形成してもよく、この場合、山折用凸部60による山折部30の形成工程の前または後に谷折用凸部70による谷折部40の形成工程を行えばよい。
また、上述した実施形態では、山折用圧縮面61が、単一のR(曲率半径)で形成された凸状湾曲面から構成されているものとして説明したが、山折用圧縮面61の具体的態様は、如何なるものでもよく、例えば、曲面を有さずに、平面(断面視した場合に直線の部位)のみの組み合わせで構成されてもよい。例えば、
図6(a)に示すように、12角形の一部をなした形状としてもよい。また、曲面を有する場合には、凸状湾曲面と平坦面(すなわち、山折用凸部60を断面視した場合に直線状に延びる平坦面)とを組み合わせて山折用圧縮面61を構成してもよい。例えば、
図6(b)に示すように、圧縮面の最下面を直線としてもよい。ただし、直線部分の幅は、大きすぎると山折部30が形成されないため、適宜設定する必要がある。
なお、山折用凸部60の長手方向に直交する仮想面内で湾曲した凸状湾曲面を、少なくとも山折用接触有効領域61aの左右両端側に含むように山折用圧縮面61を形成するのが好ましい。
また、異なるR(曲率半径)を有した複数の凸状湾曲面を組み合わせて山折用圧縮面61を構成してもよく、凸状湾曲面を、その曲率半径が連続的に変化するように形成してもよい。この場合、山折用圧縮面61(山折用接触有効領域61a)の全体を、角が無い滑らかな面として構成するのが望ましい。
また、上述した実施形態では、谷折用凸部70が直方体状の凸部であるものとして説明したが、谷折用凸部70の具体的態様は如何なるものでもよく、例えば、山折用凸部60と同様に、谷折用圧縮面71が少なくとも1つの凸状湾曲面を含むように谷折用凸部70を形成してもよい。
また、上述した実施形態では、山折部30、谷折部40、山折用凸部60、および、谷折用凸部70が、直線状に延びるように形成されているものとして説明したが、これら各部30、40、60、70の具体的態様は、これに限定されず、曲線状に延びるものや、直線および曲線を組み合わせて形成されたもの等、如何なるものでもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 ・・・ パウチ(フィルム成形体)
20 ・・・ フィルム
20a ・・・ 第1の面
20b ・・・ 第2の面
21 ・・・ 第1層
22 ・・・ 第2層
30 ・・・ 山折部
31 ・・・ 加工痕
40 ・・・ 谷折部
41 ・・・ 谷状折れ線
50 ・・・ 圧縮金型
60 ・・・ 山折用凸部
61 ・・・ 山折用圧縮面
61a ・・・ 山折用接触有効領域
70 ・・・ 谷折用凸部
71 ・・・ 谷折用圧縮面
71a ・・・ 谷折用接触有効領域
71b ・・・ 角部
80 ・・・ アンビル