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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】熱転写シート
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/44 20060101AFI20241119BHJP
   B41M 5/395 20060101ALI20241119BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B41M5/44 310
B41M5/395 300
B41M5/44 320
B41M5/42 310
B41M5/42 320
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021540994
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2020031773
(87)【国際公開番号】W WO2021033778
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019152217
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】太田 光洋
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-217625(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152457(WO,A1)
【文献】特開平05-318991(JP,A)
【文献】特開平08-282135(JP,A)
【文献】特開平10-157307(JP,A)
【文献】特開平09-175098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/035
B41M 5/26- 5/52
B44C 1/16- 1/175
B32B 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた転写層と、を備えた熱転写シートであって、
前記転写層は、少なくとも剥離層と、前記剥離層上に設けられた着色層と、を備え、
前記剥離層が、ポリエステル及びアリル樹脂を含み、前記剥離層における、前記ポリエステルの含有量と前記アリル樹脂の含有量との比(ポリエステルの含有量/アリル樹脂の含有量)が、質量基準で、10/90以上85/15以下であり、
前記着色層が、着色材、ビニル樹脂及びアリル樹脂を含み、前記着色層における、前記ビニル樹脂の含有量と前記アリル樹脂の含有量との比(ビニル樹脂の含有量/アリル樹脂の含有量)が、質量基準で、10/90以上60/40以下である、熱転写シート。
【請求項2】
前記転写層は、前記着色層上に設けられた保護層をさらに備え、
前記保護層が、アリル樹脂を含む、請求項に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記転写層が、最表面に、アリル樹脂を含む接着層を備える、請求項1または2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記接着層が、着色材を含む、請求項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記アリル樹脂が、重合成分として、ジアリルフタレートを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記アリル樹脂が、下記一般式(1)~(4)からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式(1)~(4)中、m、n、及びoは、1以上の整数を表す。)
【請求項7】
前記アリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、5,000以上100,000以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項8】
前記接着層が、ビニル樹脂をさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項9】
前記接着層における、前記ビニル樹脂の含有量と前記アリル樹脂の含有量との比(ビニル樹脂の含有量/アリル樹脂の含有量)が、質量基準で、10/90以上60/40以下である、請求項に記載の熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材と転写層とを備える熱転写シートに対して、サーマルヘッド等を用いてエネルギーを印加し、紙やプラスチックシート等の被転写体上に、転写層を転写し、画像形成や保護層形成を行う、熱溶融転写方式が知られている。
熱溶融転写方式により形成される画像は、高濃度で鮮鋭性に優れているため、該方式は、文字、線画等の2値画像の記録に適している。熱溶融転写方式によれば、宛名、顧客情報、ナンバリング、バーコード等の可変情報を、コンピューター及び熱転写プリンターを用いて、被転写体に記録できる。
【0003】
通常、このような熱転写シートには、抜けやカスレの生じていない良好な画像を形成できる、高い転写性を有していることが求められる。このような熱転写シートには、微細な画像をツブレやカスレを生じさせることなく形成できる、高い細線印字性を有していることが求められる。このような要求を満足させるため、転写層に剥離層を設けたり、基材側に非転写性の離型層を設けたりすることが提案されている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-052278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、転写層が備える剥離層に、アリル樹脂を含有させることにより、熱転写シートの転写性及び細線印字性を顕著に改善できるとの知見を得た。
【0006】
本開示は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、高い転写性及び細線印字性を有する熱転写シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下の通りである。
基材と、前記基材上に設けられた転写層と、を備えた熱転写シートであって、
前記転写層は、少なくとも剥離層を備え、
前記剥離層が、アリル樹脂を含む、熱転写シート。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高い転写性及び細線印字性を有する熱転写シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図2】本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図3】本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図4】本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図5】本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図6】本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図7】本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[熱転写シート]
本開示による熱転写シートの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1図7は、本開示による熱転写シートの一実施形態を示した概略断面図である。
本開示による熱転写シート10は、図1に示すように、基材11と、少なくとも剥離層12を備える転写層13とを備える。
一実施形態において、転写層13は、図2に示すように、剥離層12上に着色層14を備える。
一実施形態において、図3に示すように、転写層13は、剥離層12上に、保護層15を備える。転写層13が着色層14を備える場合、保護層15は、図4に示すように、着色層14上に設けられる。
一実施形態において、転写層13は、着色層14を2層以上備えてもよく、保護層15を2層以上備えてもよい。転写層13が、着色層14及び保護層15をそれぞれ2層以上ずつ備える場合、図5に示すように、着色層14が連続して設けられ、この上に連続した保護層15が設けられてもよいし、図6に示すように、着色層14と保護層15とが交互に連続して設けられてもよい。
一実施形態において、転写層13は、図7に示すように、最表面に、接着層16を備える。
一実施形態において、図1~7に示すように、熱転写シート10は、基材11の転写層13が設けられた面とは反対の面に背面層17を備える。
以下、本開示による熱転写シートが備える各層について説明する。
【0011】
(基材)
基材は、熱転写時に加えられる熱エネルギーに耐え得る耐熱性を有し、基材上に設けられる転写層等を支持できる機械的強度や耐溶剤性を有するものであれば、特に制限なく使用できる。
【0012】
基材として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル;ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂;ポリビニルアセトアセタール及びポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂;ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド及びポリエーテルイミド等のイミド樹脂;セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂;ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂;ポリカーボネート;並びにアイオノマー樹脂等の樹脂材料から構成されるフィルム(以下、単に「樹脂フィルム」という。)を使用できる。
上記した樹脂材料の中でも、耐熱性及び機械的強度という観点から、PET及びPEN等のポリエステルが好ましく、PETが特に好ましい。
なお、本開示において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の両方を包含する。「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を包含する。
【0013】
上記した樹脂フィルムの積層体を基材として使用することもできる。樹脂フィルムの積層体は、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法及びエクストリュージョン法等を利用することにより作製できる。
【0014】
基材が樹脂フィルムである場合、該樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても、未延伸フィルムであってもよいが、強度という観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムを使用することが好ましい。
【0015】
基材の厚さは、特に制限されることはないが、基材の機械的強度及び熱転写時の熱エネルギーの伝達性の観点から、3.0μm以上25.0μm以下が好ましい。
【0016】
(転写層)
本開示の熱転写シートは、基材上に転写層を備える。転写層は、少なくとも剥離層を備える。本開示において、剥離層とは、転写層を構成する層のうち、基材と転写層とが接する面に配置される層である。
一実施形態において、転写層は、剥離層上に着色層を備える。他の実施形態において、転写層は、剥離層上に保護層を備える。転写層が着色層を備える場合、保護層は、着色層上に設けられる。さらに他の実施形態において、転写層は、最表面に接着層を備える。ここで、最表面とは、転写層が被転写体に転写される際に、被転写体と接する面を意味する。
一実施形態において、転写層は、着色層を2層以上備えてもよく、保護層を2層以上備えてもよい。転写層が、着色層及び保護層をそれぞれ2層以上ずつ備える場合、着色層が連続して設けられ、この上に連続した保護層が設けられてもよく、着色層と保護層とが交互に設けられてもよい。
【0017】
(剥離層)
剥離層は、少なくとも1種のアリル樹脂を含む。本明細書において、アリル樹脂とは、重合成分として、少なくとも1種のアリルモノマーを含む樹脂をいう。アリルモノマーとしては、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、アリルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメリット酸トリアリル、ピロメリット酸テトラアリル、ソルビン酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、クエン酸ジアリル及びブタンテトラカルボン酸テトラアリル等が挙げられる。これらの中でも、熱転写シートの転写性及び細線印字性という観点から、ジアリルフタレートが好ましい。
【0018】
アリル樹脂は、アリルモノマー以外の化合物を共重合成分として含んでもよい。アリル樹脂におけるその他の化合物由来の構成単位の割合は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
アリル樹脂のヨウ素価は、転写層の耐可塑材性の観点から、40g/100g以上95g/100g以下が好ましく、45g/100g以上70g/100g以下がより好ましい。
【0020】
アリル樹脂は、下記一般式(1)~(4)で表される樹脂のいずれか1種または2種以上であることが好ましい。このような構造のアリル樹脂を剥離層に含有させることにより、熱転写シートの転写性及び細線印字性がより向上する。耐久性と耐可塑剤性を考慮すると、下記一般式(1)または(3)で表される樹脂がより好ましく、下記一般式(1)で表される樹脂が特に好ましい。なお、剥離層は、一般式(1)~(4)で表される樹脂を共に含むものであってもよい。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0021】
上記一般式(1)~(4)において、m、n及びoは、1以上の整数を表す。
このようなアリル樹脂は、市販品を使用してもよく、一般式(1)で表されるアリル樹脂として、(株)大阪ソーダ製のダイソーダップ(登録商標)A、ダイソーダップ(登録商標)S及びダイソーダップ(登録商標)K等を使用できる。一般式(2)で表されるアリル樹脂として、大阪ソーダ製のダイソーイソダップを使用できる。一般式(3)で表されるアリル樹脂として、(株)大阪ソーダ製のラドパー(登録商標)AD-032を使用できる。
【0022】
アリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、熱転写シートの転写性及び細線印字性の観点から、5,000以上100,000以下が好ましく、15,000以上70,000以下がより好ましい。なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した値を意味し、JIS K 7252-1に準拠した方法により測定した値である。
【0023】
剥離層におけるアリル樹脂の含有量は、熱転写シートの転写性及び細線印字性の観点から、20質量%以上100質量%以下が好ましく、35質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0024】
アリル樹脂は、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させたり、あるいは過酸化物等の重合開始剤を併用して加熱することで硬化させることができるが、本開示においては、硬化させない方が望ましい。
【0025】
剥離層は、アリル樹脂以外の樹脂材料(以下、その他の樹脂材料という)を含むことができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、イミド樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、転写層の箔持ち性の観点から、剥離層はポリエステルを含むことが好ましい。ここで、転写層の箔持ち性とは、転写層の意図しない基材からの剥離が抑制されることを意味する。
剥離層は、転写層の耐久性の観点から、ビニル樹脂、特には、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。
【0026】
ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、転写層の耐久性の観点から、8,000以上20,000以下が好ましく、12,000以上16,000以下がより好ましい。なお、本明細書において数平均分子量(Mn)は、ポリスチレンを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した値を意味し、JIS K 7252-1に準拠した方法により測定した値である。
【0027】
ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、製品形態での安定性を維持する観点から、45℃以上85℃以下が好ましい。なお、本明細書においてガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準拠して、示査走査熱量測定(DSC)により求めた値である。
【0028】
剥離層における、ポリエステルの含有量とアリル樹脂の含有量との比(ポリエステルの含有量/アリル樹脂の含有量)は、細線印字性及び転写層の箔持ち性の両観点から、質量基準で、10/90以上85/15以下が好ましく、15/85以上60/40以下がより好ましく、25/75以上55/45以下が更に好ましい。
【0029】
剥離層におけるポリエステルの含有量は、細線印字性及び転写層の箔持ち性の両観点から、15質量%以上85質量%以下が好ましく、18質量%以上60質量%以下がより好ましく、25質量%以上75質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
ビニル樹脂の数平均分子量(Mn)は、転写層の耐久性の観点から、13,000以上37,000以下が好ましく、14,000以上30,000以下がより好ましい。
【0031】
ビニル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、転写層の耐久性の観点から、63℃以上83℃以下が好ましく、65℃以上80℃以下がより好ましい。
【0032】
剥離層における、ビニル樹脂の含有量とアリル樹脂の含有量との比(ビニル樹脂の含有量/アリル樹脂の含有量)は、細線印字性と転写層の耐久性の両観点から、質量基準で、10/90以上85/15以下が好ましく、15/85以上60/40以下がより好ましい。
【0033】
剥離層におけるビニル樹脂の含有量は、細線印字性と転写層の耐久性の両観点から、15質量%以上85質量%以下が好ましく、18質量%以上60質量%以下がより好ましく、25質量%以上58質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
ビニル樹脂として、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を使用した場合に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの構成割合は、剥離層の耐可塑剤性の観点から、質量基準で5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。剥離層の耐久性の観点からは、酢酸ビニルの構成割合は、質量基準で、30質量%以下が好ましい。
【0035】
剥離層は、充填材、可塑材、帯電防止材、紫外線吸収材、無機粒子、有機粒子、離型材及び分散材等の添加材を含んでもよい。
【0036】
剥離層の厚さは、転写性及び細線印字性の観点から、0.1μm以上5.0μmが好ましく、0.2μm以上1.5μmがより好ましい。
【0037】
剥離層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、公知の手段により、塗工液を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることにより形成できる。公知の塗工手段としては、例えば、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等が挙げられる。
【0038】
(着色層)
一実施形態において、転写層は、着色材及び上記アリル樹脂を含む着色層を備える。
着色層に含まれる着色材は、特に限定されるものではなく、染料であっても、顔料であってもよく、カドミウムレッド、カドモポンレッド、クロムレッド、バーミリオン、ベンガラ、アゾ系顔料、アリザリンレーキ、キナクリドン、コチニールレーキペリレン等の赤系着色材;イエローオーカー、オーレオリン、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、クロムイエロー、ジンクイエロー、ネイプルスイエロー、ニッケルイエロー、アゾ系顔料、グリニッシュイエロー等の黄系着色材;ウルトラマリン、岩群青、コバルト、フタロシアニン、アントラキノン、インジコイド等の青系着色材、シナバーグリーン、カドミウムグリーン、クロムグリーン、フタロシアニン、アゾメチン、ペリレン等の緑系着色材;カーボンブラック等の黒系着色材;シリカ、炭酸カルシウム及び酸化チタン等の白系着色材;アルミニウム、ニッケル、クロム、真鍮、錫、黄銅、青銅、亜鉛、銀、白金、金及びこれらの酸化物、並びに金属蒸着が施されたガラス等の粒子等金属顔料;並びにチタン、鉄、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム及びセリウム等の金属酸化物により被覆された鱗系状アルミナ顔料及び雲母顔料等のパール顔料等が挙げられる。
【0039】
着色層における着色材の含有量は、使用する着色材の種類に応じ適宜変更することができ、例えば、50質量%以上85質量%以下とすることができる。
【0040】
着色層における上記アリル樹脂の含有量は、熱転写シートの転写性及び細線印字性の観点から、7質量%以上35質量%以下が好ましく、13質量%以上33質量%以下がより好ましい。
【0041】
着色層は、上記その他の樹脂材料を含んでもよい。その他の樹脂材料の中でも、転写層の耐久性の観点から、ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。ビニル樹脂の数平均分子量(Mn)及びガラス転移(Tg)の好ましい範囲は上述した通りである。
【0042】
着色層における、ビニル樹脂の含有量とアリル樹脂の含有量との比(ビニル樹脂の含有量/アリル樹脂の含有量)は、細線印字性及び転写層の耐久性の両観点から、質量基準で、10/90以上60/40以下が好ましく、15/85以上40/60以下がより好ましい。
【0043】
着色層におけるビニル樹脂の含有量は、細線印字性及び転写層の耐久性の両観点から、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上6質量%以下がより好ましい。
【0044】
着色層は、上記添加材を含んでもよい。
【0045】
着色層の厚さは、被転写体上に形成される画像濃度の観点から、1.0μm以上10.0μm以下が好ましく、1.0μm以上5.0μm以下がより好ましい。
【0046】
着色層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、公知の手段により、塗工液を剥離層上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることにより形成できる。公知の塗工手段としては、上記した方法が挙げられる。
【0047】
(保護層)
一実施形態において、転写層は、転写層の箔持ち性の観点から、剥離層又は着色層上に、上記アリル樹脂を含む保護層を備えてもよい。
【0048】
保護層は、上記その他の樹脂材料を含んでもよい。その他の樹脂材料の中でも、転写層の箔持ち性の観点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルの数平均分子量(Mn)及びガラス転移(Tg)、アリル樹脂との含有量比、及び保護層における含有量の好ましい範囲は、剥離層における場合と同様である。
保護層は、転写層の耐久性の観点から、ビニル樹脂、特には塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。ビニル樹脂の数平均分子量(Mn)及びガラス転移(Tg)、アリル樹脂との含有量比、及び保護層におけるビニル樹脂の含有量の好ましい範囲は、剥離層における場合と同様である。
【0049】
保護層は、上記添加材を含んでもよい。
【0050】
保護層の厚さは、転写層の箔持ち性、熱転写シートの転写性及び細線印字性の観点から、0.1μm以上3.0μm以下が好ましく、0.2μm以上1.5μm以下がより好ましい。
【0051】
保護層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、公知の手段により、塗工液を剥離層又は着色層上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることにより形成できる。公知の塗工手段としては、上記した方法が挙げられる。
【0052】
(接着層)
一実施形態において、転写層は、最表面(即ち、転写層が被転写体に転写される際に、被転写体と接する面)に、上記アリル樹脂を含む接着層を備える。接着層に着色材が含まれていると、接着層と被転写体との密着性が低下し、熱転写シートの転写性及び細線印字性の低下を引き起こしうるが、接着層にアリル樹脂を含有させることにより、接着層と被転写体との密着性の低下を抑制でき、被転写体に形成される画像濃度を効果的に向上できる。
【0053】
接着層に含まれるアリル樹脂の軟化温度は、熱転写シートの転写性及び細線印字性の観点から、55℃以上120℃以下が好ましく、60℃以上115℃以下がより好ましい。なお、本明細書において軟化温度は、JIS K 2207の環球法に準拠した方法で測定した温度を意味する。
【0054】
接着層におけるアリル樹脂の含有量は、熱転写シートの転写性及び細線印字性の観点から、7質量%以上55質量%以下が好ましく、13質量%以上55質量%以下がより好ましい。
【0055】
一実施形態において、接着層は、上記着色材を含む。この着色材は、着色層に含まれる着色材と同一でもよく、異なってもよい。
【0056】
接着層における着色材の含有量は、使用する着色材の種類に応じ適宜変更することができ、例えば、50質量%以上85質量%以下である。
【0057】
接着層は、上記その他の樹脂材料を含んでもよい。その他の樹脂材料の中でも、熱転写シートの転写性及び細線印字性、並びに転写層の耐久性の観点から、ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における好ましい酢酸ビニルの構成割合、ビニル樹脂の数平均分子量(Mn)及びガラス転移(Tg)の好ましい範囲は、上述した通りである。アリル樹脂との含有量比及びビニル樹脂の含有量の好ましい範囲は、着色層における場合と同様である。
【0058】
接着層は、上記添加材を含んでもよい。
【0059】
接着層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、公知の手段により、塗工液を剥離層等の上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることにより形成できる。公知の塗工手段としては、上記した方法が挙げられる。
【0060】
(背面層)
一実施形態において、本開示の熱転写シートは、基材の主面のうち、転写層が設けられていない基材の面側に、背面層を備える。熱転写シートが背面層を備えることにより、熱転写時の加熱によるスティッキングやシワの発生等を抑制できる。
【0061】
一実施形態において、背面層は、樹脂材料を含み、例えば、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン変性ポリウレタン、フッ素変性ポリウレタン、及び(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0062】
一実施形態において、背面層は、イソシアネート化合物等との併用により硬化する2液硬化型の樹脂を樹脂材料として含む。このような樹脂としては、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール等が挙げられる。
【0063】
一実施形態において、背面層は、スティッキングやシワの抑制の観点から、無機又は有機の粒子を含んでもよい。
【0064】
無機粒子としては、例えば、タルク及びカオリン等の粘土鉱物、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化物、硫酸カルシウム等の硫酸塩、シリカ等の酸化物、グラファイト、硝石、並びに窒化ホウ素等の無機粒子が挙げられる。これら無機粒子は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、シリコーン樹脂、ラウロイル樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、スチレン樹脂及びポリアミド等からなる有機樹脂粒子、又はこれらを架橋材と反応させた架橋樹脂粒子等が挙げられる。これら有機粒子は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
背面層の厚さは、熱転写時の熱エネルギーの伝達性及びスティッキングやシワの抑制の両観点から、0.1μm以上2μm以下が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。
【0066】
背面層は、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、公知の手段により、塗工液を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることにより形成できる。公知の塗工手段としては、上記した方法が挙げられる。
【0067】
本開示は、例えば以下の[1]~[12]に関する。
[1] 基材と、前記基材上に設けられた転写層と、を備えた熱転写シートであって、
前記転写層は、少なくとも剥離層を備え、
前記剥離層が、アリル樹脂を含む、熱転写シート。
[2] 前記転写層は、前記剥離層上に設けられた着色層をさらに備え、
前記着色層が、着色材及びアリル樹脂を含む、[1]に記載の熱転写シート。
[3] 前記転写層は、前記剥離層上又は前記着色層上に設けられた保護層をさらに備え、
前記保護層が、アリル樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の熱転写シート。
[4] 前記転写層が、最表面に、アリル樹脂を含む接着層を備える、[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[5] 前記接着層が、着色材を含む、[4]に記載の熱転写シート。
[6] 前記アリル樹脂が、重合成分として、ジアリルフタレートを含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[7] 前記アリル樹脂が、下記一般式(1)~(4)からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
(式(1)~(4)中、m、n、及びoは、1以上の整数を表す。)
[8] 前記アリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、5,000以上100,000以下である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[9]前記剥離層が、ポリエステルをさらに含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[10]前記剥離層における、前記ポリエステルの含有量と前記アリル樹脂の含有量との比(ポリエステルの含有量/アリル樹脂の含有量)が、質量基準で、10/90以上85/15以下である、[9]に記載の熱転写シート。
[11]前記接着層が、ビニル樹脂をさらに含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[12]前記接着層における、前記ビニル樹脂の含有量と前記アリル樹脂の含有量との比(ビニル樹脂の含有量/アリル樹脂の含有量)が、質量基準で、10/90以上60/40以下である、[11]に記載の熱転写シート。
【実施例
【0068】
次に実施例を挙げて、本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1
厚さ4.5μmのPETフィルムの一方の面に、下記組成の剥離層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1.0μmの剥離層を形成した。
<剥離層形成用塗工液>
・アリル樹脂A 100質量部
((株)大阪ソーダ製、ダイソーダップ(登録商標)A、Mw50,000~60,000、軟化温度70~110℃、ヨウ素価50~60g/100g)
・メチルエチルケトン(MEK) 200質量部
・トルエン 200質量部
【0070】
上記のようにして形成した剥離層上に、下記組成の着色層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1.5μmの着色層を形成させた。
<着色層形成用塗工液>
・酸化チタン 80質量部
・アリル樹脂A 20質量部
・MEK 50質量部
・トルエン 50質量部
【0071】
上記のようにして形成した着色層上に、下記組成の保護層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1.0μmの保護層を形成した。
<保護層形成用塗工液>
・アリル樹脂A 100質量部
・MEK 200質量部
・トルエン 200質量部
【0072】
上記のようにして形成した保護層上に、下記組成の接着層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1.5μmの着色層を形成した。
<接着層形成用塗工液>
・酸化チタン 80質量部
・アリル樹脂A 20質量部
・MEK 50質量部
・トルエン 50質量部
【0073】
PETフィルムの他方の面に、下記組成の背面層形成用塗工液を、塗布、乾燥し、厚さ0.3μmの背面層を形成し、熱転写シートを得た。
<背面層形成用塗工液>
・ポリビニルブチラール 2.0質量部
(積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)BX-1)
・ポリイソシアネート 9.2質量部
(DIC(株)製、バーノック(登録商標)D750)
・リン酸エステル系界面活性剤 1.3質量部
(第一工業製薬(株)製、プライサーフ(登録商標)A208N)
・タルク 0.3質量部
(日本タルク工業(株)製、ミクロエース(登録商標)P-3)
・トルエン 43.6質量部
・MEK 43.6質量部
【0074】
実施例2~36及び比較例1~5
剥離層の構成及び剥離層の厚さを表1~3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを作製した。
なお、表1~3中の各成分の詳細は以下の通りである。
・アリル樹脂B:(株)大阪ソーダ製、ダイソーダップ(登録商標)S、Mw30,000~40,000、軟化温度70~105℃、ヨウ素価50~60g/100g
・アリル樹脂C:(株)大阪ソーダ製、ダイソーダップ(登録商標)K、Mw50,000~60,000、軟化温度65~100℃、ヨウ素価50~60g/100g
・アリル樹脂D:(株)大阪ソーダ製、ダイソーイソダップ(登録商標)、Mw30,000~50,000、軟化温度50~80℃、ヨウ素価75~90g/100g
・アリル樹脂E:(株)大阪ソーダ製、ラドパー(登録商標)AD-032、Mw30,000~60,000、軟化温度60~100℃、ヨウ素価55~70g/100g
・ポリエステルA:東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)226、Mn15,000、Tg65℃
・ポリエステルB:東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)240、Mn15,000、Tg60℃
・ポリエステルC:東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)GK250、Mn10,000、Tg60℃
・ポリエステルD:東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)GK880、Mn18,000、Tg84℃
・ポリエステルE:東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)600、Mn16,000、Tg47℃
・ポリエステルF:東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)885、Mn8,000、Tg79℃
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体A:日信化学工業(株)製、ソルバイン(登録商標)CNL、Mn16,000、Tg76℃、酢酸ビニルの構成割合10質量%(なお、表中では、塩酢ビAと表記する)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体B:日信化学工業(株)製、ソルバイン(登録商標)A、Mn35,000、Tg76℃、酢酸ビニルの構成割合3質量%(なお、表中では、塩酢ビBと表記する)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体C:日信化学工業(株)製、ソルバイン(登録商標)AL、Mn27,000、Tg76℃、酢酸ビニルの構成割合2質量%(なお、表中では、塩酢ビCと表記する)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体D:日信化学工業(株)製、ソルバイン(登録商標)TAO、Mn15,000、Tg77℃、酢酸ビニルの構成割合2質量%(なお、表中では、塩酢ビDと表記する)
・ポリビニルアセタールA:積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)KS-1、Tg107℃、水酸基価25質量%
・ポリビニルアセタールB:積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)KS-10、Tg106℃、水酸基価25質量%
・(メタ)アクリル樹脂A:三菱ケミカル(株)製、ダイヤナール(登録商標)BR-87、Mn25,000、Tg105℃
・(メタ)アクリル樹脂B:三菱ケミカル(株)製、ダイヤナール(登録商標)BR-83、Mn40,000、Tg105℃
【0075】
<転写性評価>
カードプリンター(HID-5000、HID社製、サーマルヘッド:主走査方向解像度300dpi、副走査方向解像度300dpi)を使用し、上記実施例及び比較例において得られた熱転写シートが備える転写層を、塩化ビニル製カード上に転写することでベタ画像(0/255画像階調)を形成し、印画物を得た。
形成した画像を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1~3に示す。
(評価基準)
A:抜け及びカスレの発生が見られなかった。
B:抜け及びカスレの発生が少し見られた。
C:抜け及びカスレの発生が見られた。
NG:転写層が転写されず、実用上問題があった。
【0076】
<細線印字性評価>
カードプリンター(HID-5000、HID社製、サーマルヘッド:主走査方向解像度300dpi、副走査方向解像度300dpi)を使用し、上記実施例及び比較例において得られた熱転写シートが備える転写層を、塩化ビニル製カード上に転写することで3dot分の細線を含む画像を形成し、印画物を得た。
形成した画像を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1~3に示す。
(評価基準)
A:ツブレ及びカスレの発生が見られなかった。
B:ツブレ及びカスレの発生が少し見られた。
C:ツブレ及びカスレの発生が見られた。
NG:ツブレ及びカスレの発生が多く見られ、実用上問題があった。
【0077】
<耐久性評価>
上記転写性試験において得られた印画物に対して、テーバー試験機(摩耗輪CS-10F)を用いて、ANSI-INCITS322-2002、5.9 Surface Abrasionに準拠するテーバー試験(荷重500gf、60サイクル/min.)を実施した。
50サイクル完了ごとに、画像の濃度を上記同様に測定し、画像濃度が50%低下した際のサイクル数を確認し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1~3に示す。なお、比較例1及び2については、転写層を転写できなかったため、「-」とした。(評価基準)
A:400サイクル以上
B:300サイクル以上400サイクル未満
C:200サイクル以上300サイクル未満
D:200サイクル未満
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
<耐可塑材性評価>
上記転写性試験において、実施例1~10の熱転写シートを用いて得られた印画物と、可塑材入り軟質塩化ビニルシート(三菱ケミカル(株)製、アルトロン(登録商標))とを重ね合わせ、40g/cmの荷重をかけた状態で、50℃の環境で60時間静置した。
静置後、軟質塩化ビニルシートを除き、印画物に形成された画像を目視により観察し、下記評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表4に示す。
(評価基準)
A:試験前後で画像に変化が見られず、高い耐可塑材性を確認できた。
B:画像に滲みが生じた。
【0082】
【表4】
【0083】
当業者であれば理解するように、本発明は上記実施例の記載によって限定されるものではなく、上記実施例及び明細書は本開示の原理を説明するためのものにすぎず、本開示の主旨及び範囲から逸脱しない限り、様々な改変又は改善を行うことができ、これら改変又は改善はいずれも保護請求している本開示の範囲内に含まれる。さらに本開示が保護請求している範囲は、請求の範囲の記載のみならずその均等物を含む。
【符号の説明】
【0084】
10:熱転写シート、11:基材、12:剥離層、13:転写層、14:着色層、15:保護層、16:接着層、17:背面層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7