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特許7589693組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、パターニングされた基板の製造方法及び化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、パターニングされた基板の製造方法及び化合物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20241119BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241119BHJP
   C07C 13/62 20060101ALI20241119BHJP
   C07C 69/616 20060101ALI20241119BHJP
   C07D 209/14 20060101ALI20241119BHJP
   C07D 317/54 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C07C13/62 CSP
C07C69/616
C07D209/14
C07D317/54
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021546921
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034969
(87)【国際公開番号】W WO2021054337
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019168529
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】野坂 直矢
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翼
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将人
(72)【発明者】
【氏名】高梨 和憲
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/164267(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/20
C07C 13/62
C07C 69/616
C07D 209/14
C07D 317/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程
を備え、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
下記式(A1-1)~(A1-8)で表される化合物と、
溶媒と
を含有するレジスト下層膜の形成方法。
【化1】
【化2】
(式(A1-1)~(A1-8)中、Xは、下記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)で表される基である。)
【化3】
(式(i)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(ii)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iii)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iv)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
上記R、R、R、R、R及びRで表される炭素数1~20の1価の有機基が、下記式(x-1)~(x-12)で表される基である。)
【化4】
(式(x-1)~(x-12)中、**は、上記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)における炭素原子又は窒素原子との結合部位である。)
【請求項2】
基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程と
を備え、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
下記式(A1-1)~(A1-8)で表される化合物と、
溶媒と
を含有するパターニングされた基板の製造方法。
【化5】
【化6】
(式(A1-1)~(A1-8)中、Xは、下記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)で表される基である。)
【化7】
(式(i)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(ii)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iii)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iv)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
上記R、R、R、R、R及びRで表される炭素数1~20の1価の有機基が、下記式(x-1)~(x-12)で表される基である。)
【化8】
(式(x-1)~(x-12)中、**は、上記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)における炭素原子又は窒素原子との結合部位である。)
【請求項3】
上記レジストパターン形成工程前に、
上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に対し直接又は間接にケイ素含有膜を形成する工程
をさらに備える請求項2に記載のパターニングされた基板の製造方法。
【請求項4】
下記式(A1-1)~(A1-8)で表される化合物と、
溶媒と
を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【化9】
【化10】
(式(A1-1)~(A1-8)中、Xは、下記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)で表される基である。)
【化11】
(式(i)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(ii)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iii)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iv)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
上記R、R、R、R、R及びRで表される炭素数1~20の1価の有機基が、下記式(x-1)~(x-12)で表される基である。)
【化12】
(式(x-1)~(x-12)中、**は、上記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)における炭素原子又は窒素原子との結合部位である。)
【請求項5】
Xが上記式(i)又は(ii)で表される基である請求項4に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、パターニングされた基板の製造方法及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造にあっては、例えば、基板上に有機下層膜、ケイ素含有膜などのレジスト下層膜を介して積層されたレジスト膜を露光及び現像してレジストパターンを形成する多層レジストプロセスが用いられている。このプロセスでは、このレジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクとしてさらに基板をエッチングすることで、基板に所望のパターンを形成し、パターニングされた基板を得ることができる(特開2004-177668号公報参照)。
【0003】
このようなレジスト下層膜形成用組成物に用いられる材料について、種々の検討が行われている(国際公開第2011/108365号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】国際公開第2011/108365号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層レジストプロセスにおいて、レジスト下層膜としての有機下層膜にはエッチング耐性及び耐熱性が要求される。
【0006】
また、最近では、複数種のトレンチ、特に互いに異なるアスペクト比を有するトレンチを有する基板にパターンを形成する場合が増えてきている。この場合、レジスト下層膜を形成するための組成物には、これらのトレンチを十分に埋め込むことができること、すなわち埋め込み性に優れることも要求される。
【0007】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れる膜を形成することができる組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、パターニングされた基板の製造方法及び化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、芳香族炭化水素環構造及び下記式(1)で表される部分構造を有する化合物(以下、「[A1]化合物」ともいう)と、溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう)とを含有し、上記芳香族炭化水素環構造の炭素数が25以上である組成物である。
【化1】
(式(1)中、Xは、下記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)で表される基である。*はそれぞれ、上記芳香族炭化水素環構造を構成する隣接する2の炭素原子との結合部位である。)
【化2】
(式(i)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(ii)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iii)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iv)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。)
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該組成物から形成されるレジスト下層膜である。
【0010】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程を備え、上記レジスト下層膜形成用組成物が当該組成物であるレジスト下層膜の形成方法である。
【0011】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程と、上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程とを備え、上記レジスト下層膜形成用組成物が当該組成物であるパターニングされた基板の製造方法である。
【0012】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、芳香族炭化水素環構造及び下記式(2)で表される部分構造を有し、
上記芳香族炭化水素環構造の炭素数が25以上である化合物(以下、「[A2]化合物」ともいう)である。
【化3】
(式(2)中、Yは、下記式(v)、(vi)、(vii)又は(viii)で表される基である。*はそれぞれ、上記芳香族炭化水素環構造を構成する隣接する2の炭素原子との結合部位である。)
【化4】
(式(v)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
式(vi)中、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
式(vii)中、R11は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
式(viii)中、R12は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の組成物によれば、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れる膜を形成することができる。本発明のレジスト下層膜は、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れる。本発明のレジスト下層膜の形成方法によれば、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のパターニングされた基板の製造方法によれば、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れたレジスト下層膜を形成するため、良好なパターニングされた基板を得ることができる。本発明の化合物は、レジスト下層膜を形成するための組成物の成分として好適に用いることができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、パターニングされた基板の製造方法及び化合物について詳説する。
【0015】
<組成物>
当該組成物は、[A1]化合物と[B]溶媒とを含有する。当該組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
【0016】
当該組成物は、[A1]化合物と[B]溶媒とを含有することにより、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れる膜を形成することができる。したがって、当該組成物は膜を形成するための組成物として用いることができる。より詳細には、当該組成物は、多層レジストプロセスにおけるレジスト下層膜を形成するための組成物として好適に用いることができる。
【0017】
以下、当該組成物が含有する各成分について説明する。
【0018】
<[A1]化合物>
[A1]化合物は、芳香族炭化水素環構造(以下、「芳香族炭化水素環構造(I)」ともいう)及び後述する下記式(1)で表される部分構造(以下、「部分構造(II)」ともいう)を有する化合物である。
【0019】
[芳香族炭化水素環構造(I)]
芳香族炭化水素環構造(I)は、炭素数が25以上の芳香族炭化水素環構造である。本明細書において「芳香族炭化水素環構造(I)の炭素数」とは、芳香族炭化水素環構造(I)の環構造を構成する炭素原子の原子数を意味する。「芳香族炭化水素環構造(I)の炭素数」には、部分構造(II)を構成する炭素原子の原子数は含まれない。
【0020】
芳香族炭化水素環構造(I)の炭素数の下限としては、25であり、35が好ましく、40がさらに好ましい。上記炭素数の上限としては特に限定されず、例えば100である。芳香族炭化水素環構造(I)の炭素数が25以上であることにより、エッチング耐性及び耐熱性に優れる膜を形成することができる。
【0021】
芳香族炭化水素環構造(I)としては、縮合多環構造を含む構造、環集合構造を含む構造、又はこれらを組み合わせた構造が挙げられる。本明細書において、「縮合多環構造」とは、2以上の芳香族炭化水素環を有する多環構造のうち、ある芳香族炭化水素環と他の芳香族炭化水素環とが2つの炭素原子を共有して結合している環構造を意味する。「環集合構造」とは、2以上の芳香族炭化水素環を有する多環構造のうち、ある芳香族炭化水素環と他の芳香族炭化水素環とが炭素原子を共有して結合しておらず、単結合を介して結合している環構造を意味する。
【0022】
縮合多環構造としては、炭素数が25以上のものであれば特に限定されず、例えばトリナフチレン構造(炭素数30)、ヘプタフェン構造(炭素数30)、ヘプタセン構造(炭素数30)、ピラントレン構造(炭素数30)、オバレン構造(炭素数32)、ヘキサベンゾコロネン構造(炭素数42)等が挙げられる。縮合多環構造としては、ヘキサベンゾコロネン構造が好ましい。
【0023】
縮合多環構造は、一般に、縮合多環構造の名称の語尾に応じて、語尾-aceneをもつ一直線縮合環系構造、語尾-apheneをもつ翼状縮合環系構造、語尾-aleneをもつ2個の同じ環が並んだ縮合環系構造、及び語尾-phenyleneをもつ1個の環を中心にベンゼン環が集中した縮合環系構造の4種に分類される。この分類において縮合多環構造としては、語尾-phenyleneをもつ1個の環を中心にベンゼン環が集中した縮合環系構造が好ましい。縮合多環構造が語尾-phenyleneをもつ1個の環を中心にベンゼン環が集中した縮合環系構造である場合には、他の縮合多環構造と比較して、炭素数が同じ場合であっても炭素原子の含有割合が高くなるため、当該組成物により形成される膜のエッチング耐性をより向上させることができる。なお、上述のヘキサベンゾコロネン構造は、語尾-phenyleneをもつ1個の環を中心にベンゼン環が集中した縮合環系構造に包含される。
【0024】
環集合構造としては、炭素数が25以上のものであれば特に限定されず、例えばテトラフェニルベンゼン構造(炭素数30)、ペンタフェニルベンゼン構造(炭素数36)、ヘキサフェニルベンゼン構造(炭素数42)等が挙げられる。環集合構造としては、ヘキサフェニルベンゼン構造が好ましい。
【0025】
縮合多環構造と環集合構造とを組み合わせた構造としては、炭素数が25以上のものであれば特に限定されず、例えばジフェニルピレン構造(炭素数28)、ジナフチルピレン構造(炭素数36)、テトラフェニルピレン構造(炭素数40)等が挙げられる。
【0026】
芳香族炭化水素環構造(I)としては、縮合多環構造を含む構造が好ましい。芳香族炭化水素環構造(I)が縮合多環構造を含む構造であることにより、当該組成物により形成される膜のエッチング耐性及び耐熱性をより向上させることができる。
【0027】
[部分構造(II)]
部分構造(II)は、下記式(1)で表される部分構造である。
【0028】
【化5】
【0029】
上記式(1)中、Xは、後述する下記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)で表される基(以下、「基(X)」ともいう)である。*はそれぞれ、上記芳香族炭化水素環構造(芳香族炭化水素環構造(I))を構成する隣接する2の炭素原子との結合部位である。
【0030】
[A1]化合物において、部分構造(II)は芳香族炭化水素環構造(I)と結合している。より詳細には、部分構造(II)は芳香族炭化水素環構造(I)を構成する隣接する2の炭素原子に結合している。
【0031】
[A1]化合物における部分構造(II)の数の下限としては、1であり、2であることが好ましい。上記部分構造(II)の数の上限としては特に限定されず、10であることが好ましく、6であることがより好ましい。なお、[A1]化合物が2以上の部分構造(II)を有する場合、上記式(1)におけるXは互いに同一又は異なる。
【0032】
(基(X))
基(X)は、下記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)で表される基(以下、「基(X-i)~(X-iv)」ともいう)である。
【0033】
【化6】
【0034】
上記式(i)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
【0035】
上記式(ii)中、Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
【0036】
上記式(iii)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
【0037】
上記式(iv)中、Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。
【0038】
本明細書において、「有機基」とは、少なくとも1の炭素原子を含む基を意味する。
【0039】
、R、R、R、R及びRで表される炭素数1~20の1価の有機基としては、炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間に2価のヘテロ原子含有基を有する基(以下、「基(α)」ともいう)、上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基(以下、「基(β)」ともいう)、上記基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基(以下、「基(γ)」ともいう)等が挙げられる。
【0040】
本明細書において、「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」には、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基が含まれる。「鎖状炭化水素基」とは、環構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基を意味し、直鎖状炭化水素基及び分岐鎖状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味し、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む(但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい)。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する(但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環構造や鎖状構造を含んでいてもよい)。
【0041】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0042】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0043】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の橋かけ環飽和炭化水素基、ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の橋かけ環不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0044】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0045】
2価又は1価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0046】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-CO-、-CS-、-NH-、-O-、-S-、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0047】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えばヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0048】
、R、R、R、R及びRで表される炭素数1~20の1価の有機基としては、加熱により[A1]化合物から脱離する性質及び[A1]化合物の[B]溶媒への溶解性を高める性質を有する基(以下、「基(x)」ともいう)であることが好ましい。基(x)が[A1]化合物から脱離する性質を有することにより、当該組成物により形成される膜の炭素原子の含有率が高まり、結果としてエッチング耐性をより向上させることができる。また、基(x)が[A1]化合物の[B]溶媒への溶解性を高める性質を有することにより、当該組成物の塗工性を向上させることができる。なお、基(x)が[A1]化合物から脱離する加熱の条件としては、例えば後述する当該レジスト下層膜の形成方法が備える加熱工程における加熱の条件と同様の条件等が挙げられる。
【0049】
基(x)としては、例えば下記式(x-1)~(x-12)で表される基(以下、「基(x-1)~(x-12)」ともいう)等が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
上記式(x-1)~(x-12)中、**は、上記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)における炭素原子又は窒素原子との結合部位である。
【0052】
基(x)としては、基(x-1)、基(x-3)基(x-8)又は基(x-9)が好ましい。
【0053】
基(X)としては、基(X-i)又は基(X-ii)が好ましい。
【0054】
[A1]化合物としては、例えば下記式(A1-1)~(A1-8)で表される化合物(以下、「化合物(A1-1)~(A1-8)」ともいう)が挙げられる。
【0055】
【化8】
【0056】
【化9】
【0057】
上記式(A1-1)~(A1-8)中、Xは、上記式(1)と同義である。
【0058】
[A1]化合物としては、化合物(A1-1)、化合物(A1-2)、化合物(A1-3)又は化合物(A1-5)が好ましく、化合物(A1-1)、化合物(A1-2)又は化合物(A1-3)がより好ましい。
【0059】
[A1]化合物は、上述の芳香族炭化水素環構造(I)及び部分構造(II)以外の置換基を有していてもよいし、上記置換基を有していなくてもよい。[A1]化合物としては、上記置換基を有していないものが好ましい。[A1]化合物が置換基を有しない場合、置換基を有する場合よりも[A1]化合物の炭素原子の含有割合が高くなるため、当該組成物により形成される膜のエッチング耐性をより向上させることができる。
【0060】
上記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~20の1価の有機基等が挙げられる。上記置換基としての炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(i)~(iv)のR~Rで表される炭素数1~20の1価の有機基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0061】
[A1]化合物が置換基を有する場合、置換基が結合する箇所としては特に限定されず、上記芳香族炭化水素環構造(I)に結合していてもよいし、上記部分構造(II)に結合していてもよい。
【0062】
[A1]化合物の分子量の下限としては、600が好ましく、700がより好ましく、800がさらに好ましく、900が特に好ましい。上記分子量の上限としては、5,000が好ましく、4,000がより好ましく、3,500がさらに好ましく、3,000が特に好ましい。
【0063】
当該組成物における[A]化合物の含有割合の下限としては、当該組成物における[B]溶媒以外の全成分に対して、60質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましく、90質量%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、例えば100質量%である。
【0064】
[[A1]化合物の合成方法]
[A1]化合物の合成方法としては、常法により、例えば下記の合成スキームに従って合成することができる。
【0065】
【化10】
【0066】
反応1では、ビス(2-フルオレニル)アセチレン同士を反応させることにより、中間体である上記式(a-3)で表される化合物を合成する。
【0067】
反応2では、反応1で合成した上記式(a-3)で表される化合物を触媒等の存在下で環化反応させることにより、上記式(a-4)で表される化合物を合成する。反応3では、反応2で合成した上記式(a-4)で表される化合物と、上記基(x)を与える化合物としてのアクリル酸-t-ブチルとを反応させることにより、上記式(A-3)で表される化合物を合成する。なお、上記式(A-3)で表される化合物は、上記化合物(A1-2)の一例である。
【0068】
反応4では、反応1で合成した上記式(a-3)で表される化合物と、上記基(x)を与える化合物としての臭化プロパルギルとを反応させることにより、上記式(A-5)で表される化合物を合成する。なお、上記式(A-5)で表される化合物は、上記化合物(A1-5)の一例である。
【0069】
<[B]溶媒>
[B]溶媒は、[A1]化合物及び必要に応じて含有する任意成分を溶解又は分散することができれば特に限定されない。
【0070】
[B]溶媒としては、例えば炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、含窒素系溶媒などが挙げられる。[B]溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0072】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸モノエステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒などが挙げられる。
【0073】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒などが挙げられる。
【0074】
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒などが挙げられる。
【0075】
エーテル系溶媒としては、例えばn-ブチルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒等の多価アルコールエーテル系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0076】
含窒素系溶媒としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド等の鎖状含窒素系溶媒、N-メチルピロリドン等の環状含窒素系溶媒などが挙げられる。
【0077】
[B]溶媒としては、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒又は環状ケトン系溶媒がより好ましく、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル又はシクロヘキサノンがさらに好ましい。
【0078】
当該組成物における[B]溶媒の含有割合の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、99.9質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。
【0079】
[任意成分]
当該組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば酸発生剤、架橋剤、界面活性剤等が挙げられる。任意成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。当該組成物における任意成分の含有割合は任意成分の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0080】
[組成物の調製方法]
当該組成物は、[A1]化合物、[B]溶媒、及び必要に応じて任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.1μm以下のメンブランフィルター等でろ過することにより調製できる。
【0081】
<レジスト下層膜>
当該レジスト下層膜は、上述の当該組成物から形成される。当該レジスト下層膜は、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れる。
【0082】
<レジスト下層膜の形成方法>
当該レジスト下層膜の形成方法は、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)を備える。
【0083】
当該レジスト下層膜の形成方法では、上記塗工工程においてレジスト下層膜形成用組成物として上述の当該組成物を用いるため、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み生に優れたレジスト下層膜を形成することができる。
【0084】
当該レジスト下層膜の形成方法は、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
【0085】
以下、当該レジスト下層膜の形成方法が備える各工程について説明する。
【0086】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する。本工程ではレジスト下層膜形成用組成物として、上述の当該組成物を用いる。
【0087】
レジスト下層膜形成用組成物の塗工方法としては特に限定されず、例えば回転塗工、流延塗工、ロール塗工などの適宜の方法で実施することができる。これにより塗工膜が形成され、[B]溶媒の揮発などが起こることによりレジスト下層膜が形成される。
【0088】
基板としては、例えばシリコン基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、クロム基板、モリブデン基板、タングステン基板、銅基板、タンタル基板、チタン基板等の金属又は半金属基板などが挙げられ、これらの中でもシリコン基板が好ましい。上記基板は、窒化ケイ素膜、アルミナ膜、二酸化ケイ素膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜などが形成された基板でもよい。
【0089】
基板に間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する場合としては、例えば上記基板に形成された後述のケイ素含有膜上にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する場合などが挙げられる。
【0090】
[加熱工程]
本工程では、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する。塗工膜の加熱によりレジスト下層膜の形成が促進される。より詳細には、塗工膜の加熱により、上述の[A1]化合物からの基(x)の脱離や[B]溶媒の揮発等が促進される。
【0091】
上記塗工膜の加熱は、大気雰囲気下で行ってもよいし、窒素雰囲気下で行ってもよい。加熱温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。上記加熱温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましい。加熱における時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、1,200秒が好ましく、600秒がより好ましい。
【0092】
形成されるレジスト下層膜の平均厚みの下限としては、30nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、3,000nmが好ましく、2,000nmがより好ましく、500nmがさらに好ましい。レジスト下層膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した値である。
【0093】
<パターニングされた基板の製造方法>
当該パターニングされた基板の製造方法は、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する工程(以下、「レジストパターン形成工程」ともいう)と、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程(以下、「エッチング工程」ともいう)とを備える。
【0094】
当該パターニングされた基板の製造方法によれば、上記塗工工程においてレジスト下層膜形成用組成物として上述の当該組成物を用いることにより、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み生に優れたレジスト下層膜を形成することができるため、良好なパターン形状を有するパターニングされた基板を製造することができる。
【0095】
当該パターニングされた基板の製造方法は、必要に応じて、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。
【0096】
当該パターニングされた基板の製造方法は、必要に応じて、上記塗工工程又は上記加熱工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する工程(以下、「ケイ素含有膜形成工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。
【0097】
以下、当該パターニングされた基板の製造方法が備える各工程について説明する。
【0098】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物を塗工する。本工程は、上述の当該レジスト下層膜の形成方法における塗工工程と同様である。
【0099】
[加熱工程]
本工程では、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する。本工程は、上述の当該レジスト下層膜の形成方法における加熱工程と同様である。
【0100】
[ケイ素含有膜形成工程]
本工程では、上記塗工工程又は上記加熱工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する。上記レジスト下層膜に間接にケイ素含有膜を形成する場合としては、例えば上記レジスト下層膜上にレジスト下層膜の表面改質膜が形成された場合などが挙げられる。上記レジスト下層膜の表面改質膜とは、例えば水との接触角が上記レジスト下層膜とは異なる膜である。
【0101】
ケイ素含有膜は、ケイ素含有膜形成用組成物の塗工、化学蒸着(CVD)法、原子層堆積(ALD)などにより形成することができる。ケイ素含有膜をケイ素含有膜形成用組成物の塗工により形成する方法としては、例えばケイ素含有膜形成用組成物を当該レジスト下層膜に直接又は間接に塗工して形成された塗工膜を、露光及び/又は加熱することにより硬化等させる方法などが挙げられる。上記ケイ素含有膜形成用組成物の市販品としては、例えば「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」(以上、JSR(株))等を用いることができる。化学蒸着(CVD)法又は原子層堆積(ALD)により、例えば酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸化窒化ケイ素膜、アモルファスケイ素膜などを形成することができる。
【0102】
上記露光に用いられる放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線などが挙げられる。
【0103】
塗工膜を加熱する際の温度の下限としては、90℃が好ましく、150℃がより好ましく、200℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、550℃が好ましく、450℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。
【0104】
ケイ素含有膜の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、10nmがより好ましく、20nmがさらに好ましい。上記上限としては、20,000nmが好ましく、1,000nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。ケイ素含有膜の平均厚みは、レジスト下層膜の平均厚みと同様に、上記分光エリプソメータを用いて測定した値である。
【0105】
[レジストパターン形成工程]
本工程では、上記レジスト下層膜に直接又は間接にレジストパターンを形成する。この工程を行う方法としては、例えばレジスト組成物を用いる方法、ナノインプリント法を用いる方法、自己組織化組成物を用いる方法などが挙げられる。上記レジスト下層膜に間接にレジストパターンを形成する場合としては、例えば、上記ケイ素含有膜上にレジストパターンを形成する場合などが挙げられる。
【0106】
上記レジスト組成物を用いる方法は、具体的には、形成されるレジスト膜が所定の厚みとなるようにレジスト組成物を塗工した後、プレベークすることによって塗工膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト膜を形成する。
【0107】
上記レジスト組成物としては、例えば感放射線性酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とを含有するポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とを含有するネガ型レジスト組成物などが挙げられる。
【0108】
上記レジスト組成物における溶媒以外の全成分の含有割合の下限としては、0.3質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。また、レジスト組成物は、一般に、例えば孔径0.2μm以下のフィルターでろ過して、レジスト膜の形成に供される。なお、本工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0109】
レジスト組成物の塗工方法としては、例えば回転塗工法等が挙げられる。プレベークの温度及び時間は、使用されるレジスト組成物の種類などに応じて適宜調整することができる。上記温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。上記時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0110】
次に、選択的な放射線照射により上記形成されたレジスト膜を露光する。露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される感放射線性酸発生剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線などが挙げられる。これらの中で、遠紫外線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)、Krエキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)又は極端紫外線(波長13.5nm等、以下、「EUV」ともいう)がより好ましく、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光又はEUVがさらに好ましい。
【0111】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるためポストベークを行うことができる。このポストベークの温度及び時間は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。上記温度の下限としては、50℃が好ましく、70℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。ポストベークの時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0112】
次に、上記露光されたレジスト膜を現像液で現像してレジストパターンを形成する。この現像は、アルカリ現像であっても有機溶媒現像であってもよい。現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネンなどの塩基性水溶液が挙げられる。これらの塩基性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類などの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適量添加することもできる。また、有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば上述の当該組成物の[B]溶媒として例示した種々の有機溶媒等が挙げられる。
【0113】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0114】
[エッチング工程]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う。エッチングの回数としては1回でも、複数回、すなわちエッチングにより得られるパターンをマスクとして順次エッチングを行ってもよい。より良好な形状のパターンを得る観点からは、複数回が好ましい。複数回のエッチングを行う場合、例えばケイ素含有膜、レジスト下層膜及び基板の順に順次エッチングを行う。エッチングの方法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング等が挙げられる。基板のパターンの形状をより良好なものとする観点からは、ドライエッチングが好ましい。このドライエッチングには、例えば酸素プラズマ等のガスプラズマなどが用いられる。上記エッチングにより、所定のパターンを有するパターニングされた基板が得られる。
【0115】
ドライエッチングとしては、例えば公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、マスクパターン、エッチングされる膜の元素組成等により適宜選択することができ、例えばCHF、CF、C、C、SF等のフッ素系ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、O、O、HO等の酸素系ガス、H、NH、CO、CO、CH、C、C、C、C、C、C、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH、BCl等の還元性ガス、He、N、Ar等の不活性ガスなどが挙げられる。これらのガスは混合して用いることもできる。レジスト下層膜のパターンをマスクとして基板をエッチングする場合には、通常、フッ素系ガスが用いられる。
【0116】
<[A2]化合物>
[A2]化合物は、芳香族炭化水素環構造(以下、「芳香族炭化水素環構造(I’)」ともいう)及び後述する下記式(2)で表される部分構造(以下、「部分構造(II’)」ともいう)を有し、上記芳香族炭化水素環構造の炭素数が25以上である化合物である。
【0117】
[A2]化合物は、上述の当該組成物の成分として好適に用いることができる。また、[A2]化合物は、上述の[A1]化合物を合成する際の中間体としても用いることができる。
【0118】
[芳香族炭化水素環構造(I’)]
芳香族炭化水素環構造(I’)は、炭素数が25以上の芳香族炭化水素環構造である。芳香族炭化水素環構造(I’)は、上述の[A1]化合物における芳香族炭化水素環構造(I)と同様である。
【0119】
[部分構造(II’)]
部分構造(II’)は、下記式(2)で表される部分構造である。
【0120】
【化11】
【0121】
上記式(2)中、Yは、後述する下記式(v)、(vi)、(vii)又は(viii)で表される基(以下、「基(Y)」ともいう)である。*はそれぞれ、上記芳香族炭化水素環構造(芳香族炭化水素環構造(I’))を構成する隣接する2の炭素原子との結合部位である。
【0122】
[A2]化合物において、部分構造(II’)は芳香族炭化水素環構造(I’)と結合している。より詳細には、部分構造(II’)は芳香族炭化水素環構造(I’)を構成する隣接する2の炭素原子に結合している。
【0123】
[A2]化合物における部分構造(II’)の数の下限としては、1であり、2であることが好ましい。上記部分構造(II’)の数の上限としては特に限定されず、10であることが好ましく、6であることがより好ましい。なお、[A2]化合物が2以上の部分構造(II’)を有する場合、上記式(2)におけるYは互いに同一又は異なる。
【0124】
(基(Y))
基(Y)は、下記式(v)、(vi)、(vii)又は(viii)で表される基(以下、「基(Y-v)~(Y-viii)」ともいう)である。
【0125】
【化12】
【0126】
上記式(v)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
【0127】
上記式(vi)中、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
【0128】
上記式(vii)中、R11は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
【0129】
上記式(viii)中、R12は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
【0130】
、R、R、R10、R11及びR12で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(i)~(iv)のR~Rで表される炭素数1~20の1価の有機基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0131】
基(Y)としては、上記式(v)~(viii)の各式におけるR~R12がいずれも水素原子である場合(以下、「基(Y-1)」ともいう)、又は上記式(v)~(viii)の各式におけるR~R12の少なくとも1つが炭素数1~20の1価の有機基である場合(以下、「基(Y-2)」ともいう)が好ましい。
【0132】
[A2]化合物が基(Y-1)を有する場合、この[A2]化合物は、上述の[A1]化合物の中間体として有用である。
【0133】
[A2]化合物が基(Y-2)を有する場合、この[A2]化合物は、上述の[A1]化合物と同様に、上述の当該組成物の成分として好適に用いることができる。
【0134】
基(Y)としては、基(Y-v)が好ましい。
【0135】
[A2]化合物としては、例えば下記式(A2-1)~(A2-8)で表される化合物(以下、「化合物(A2-1)~(A2-8)」ともいう)が挙げられる。
【0136】
【化13】
【0137】
【化14】
【0138】
上記式(A2-1)~(A2-8)中、Yは、上記式(2)と同義である。
【0139】
[A2]化合物としては、化合物(A2-1)、化合物(A2-2)、化合物(A2-3)又は化合物(A2-5)が好ましく、化合物(A2-1)、化合物(A2-2)又は化合物(A2-3)がより好ましい。
【0140】
[A2]化合物は、上述の芳香族炭化水素環構造(I’)及び部分構造(II’)以外の置換基を有していてもよいし、上記置換基を有していなくてもよい。[A2]化合物としては、上記置換基を有していないものが好ましい。
【0141】
上記置換基としては、例えば上述の[A1]化合物が有する場合がある置換基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0142】
[A2]化合物が置換基を有する場合、置換基が結合する箇所としては特に限定されず、上記芳香族炭化水素環構造(I’)に結合していてもよいし、上記部分構造(II’)に結合していてもよい。
【0143】
[A2]化合物の分子量の下限としては、600が好ましく、700がより好ましく、800がさらに好ましく、900が特に好ましい。上記分子量の上限としては、5,000が好ましく、4,000がより好ましく、3,500がさらに好ましく、3,000が特に好ましい。
【0144】
[[A2]化合物の合成方法]
[A2]化合物は、例えば上述の[A1]化合物の合成方法において例示した合成スキームと同様にして合成することができる。なお、上記合成スキームにおける式(a-3)で表される化合物は上記化合物(A2-5)の一例であり、式(a-4)で表される化合物は上記化合物(A2-2)の一例である。
【実施例
【0145】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0146】
<[A]化合物の合成>
下記式(a-1)~(a-8)、(A-1)~(A-12)、(ca-1)及び(CA-1)で表される化合物(以下、「化合物(a-1)~(a-8)、(A-1)~(A-12)、(ca-1)、(CA-1)」ともいう)を以下に示す手順により合成した。
【0147】
【化15】
【0148】
【化16】
【0149】
【化17】
【0150】
【化18】
【0151】
【化19】
【0152】
[合成例1](化合物(a-1)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、2-フェニルエチニルフルオレン20.0g及び1,4-ジオキサン200gを仕込み、50℃にて溶解させた。次いで、オクタカルボニル二コバルト1.28gを添加し、110℃に加熱して12時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、600gのメタノール及び水60.0gを加えて沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ紙で回収し、多量のメタノールで洗浄、乾燥して化合物(a-1)を得た。化合物(a-1)の分子量は、799であった。
【0153】
[合成例2](化合物(a-2)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、上記化合物(a-1)15.0g及びジクロロメタン760gを仕込み、室温にて溶解させた後、0℃に冷却した。次いで、無水塩化鉄(III)60.9gをニトロメタン380gに溶解させた溶液を滴下した。0℃で2時間反応させた後、20℃に加温してさらに2時間反応させた。反応終了後、1,140gのメタノールを加えて沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ紙で回収し、多量のメタノール、テトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう)で洗浄、乾燥して化合物(a-2)を得た。化合物(a-2)の分子量は、787であった。
【0154】
[合成例3](化合物(a-3)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、ビス(2-フルオレニル)アセチレン20.0g及び1,4-ジオキサン600gを加え、50℃で攪拌した後、オクタカルボニル二コバルト3.85gを添加し、110℃に加熱して12時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、600gのメタノール及び水60.0gを加えて沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ紙で回収し、多量のTHF/ヘキサン=50/50質量%溶液で洗浄、乾燥して化合物(a-3)を得た。化合物(a-3)の分子量は、1,063であった。
【0155】
[合成例4](化合物(a-4)の合成)
上記化合物(a-1)15.0gに代えて上記化合物(a-3)20.0gを使用したこと以外は、合成例2と同様にして化合物(a-4)を得た。化合物(a-4)の分子量は、1,051であった。
【0156】
[合成例5](化合物(a-5)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、ビス(2-フルオレニル)アセチレン20.0g、テトラフェニルシクロペンタジエノン21.7g及びスルホラン125gを加え、50℃で攪拌した後、210℃に加熱して8時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、125gのメタノール及び水50.0gを加えて沈殿物を得た。得られた沈殿物をトルエンにより再結晶し、乾燥して化合物(a-5)を得た。化合物(a-5)の分子量は、711であった。
【0157】
[合成例6](化合物(a-6)の合成)
上記化合物(a-1)15.0gに代えて上記化合物(a-5)13.9gを使用したこと以外は、合成例2と同様にして化合物(a-6)を得た。化合物(a-6)の分子量は、699であった。
【0158】
[合成例7](化合物(A-1)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、上記化合物(a-2)10.0g、アクリル酸-t-ブチル14.7g及びTHF162gを加え、攪拌した後、50質量%水酸化カリウム水溶液15.4g及びテトラブチルアンモニウムブロミド2.46gを加え、60℃で4時間反応させた。反応終了後、室温に冷却した後、メチルイソブチルケトン162gを加えた。水相を除去した後、1質量%シュウ酸水溶液及び水による分液抽出を行い、有機層をヘキサンに投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して化合物(A-1)を得た。化合物(A-1)の分子量は、1,556であった。
【0159】
[合成例8](化合物(A-2)の合成)
アクリル酸-t-ブチル22.3gに代えてアクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル21.5gを使用したこと以外は、合成例7と同様にして化合物(A-2)を得た。化合物(A-2)の分子量は、1,916であった。
【0160】
[合成例9](化合物(A-3)の合成)
上記化合物(a-2)10.0gに代えて上記化合物(a-4)6.5gを使用したこと以外は、合成例7と同様にして化合物(A-3)を得た。化合物(A-3)の分子量は、2,589であった。
【0161】
[合成例10](化合物(A-4)の合成)
上記化合物(a-2)10.0gに代えて上記化合物(a-6)14.0gを使用したこと以外は、合成例7と同様にして化合物(A-4)を得た。化合物(A-4)の分子量は、1,212であった。
【0162】
[合成例11](化合物(A-5)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、上記化合物(a-3)10.0g、THF200g及びカリウムt-ブトキシド19.0gを加えて60℃で30分攪拌した。次いで、-40℃に冷却した後、臭化プロパルギル20.1gを滴下し、0℃で2時間反応させた。反応終了後、5質量%シュウ酸水溶液500g及びメチルイソブチルケトン100gを加えた。水相を除去した後、水による分液抽出を行い、有機層をヘキサンに投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して化合物(A-5)を得た。化合物(A-5)の分子量は、1,520であった。
【0163】
[合成例12](化合物(A-6)の合成)
上記化合物(a-3)10.0gに代えて上記化合物(a-2)14.0gを使用したこと以外は、合成例11と同様にして化合物(A-6)を得た。化合物(A-6)の分子量は、1,015であった。
【0164】
[合成例13](化合物(A-7)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、上記化合物(a-3)10.0g、3-エチニルベンズアルデヒド8.81g、及びN-メチルピロリドン94.1gを加え、攪拌した後、ジアザビシクロウンデセン17.2gを添加し、120℃で24時間反応させた。反応終了後、5質量%シュウ酸水溶液500g及びメチルイソブチルケトン100gを加えた。水相を除去した後、水による分液抽出を行い、有機層をヘキサンに投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して化合物(A-7)を得た。化合物(A-7)の分子量は、1,736であった。
【0165】
[合成例13](化合物(A-8)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、上記化合物(a-1)10.0g、インドール-3-カルボキシアルデヒド6.54g、及びm-キシレン82.7gを加え、攪拌した後、ジアザビシクロウンデセン17.2gを添加し、140℃で24時間反応させた。反応終了後、5質量%シュウ酸水溶液500g及びメチルイソブチルケトン100gを加えた。水相を除去した後、水による分液抽出を行い、有機層をヘキサンに投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して化合物(A-8)を得た。化合物(A-8)の分子量は、1,180であった。
【0166】
[合成例14](化合物(A-9)の合成)
インドール-3-カルボキシアルデヒド6.54gに代えてピペロナール6.76gを使用したこと以外は、合成例13と同様にして化合物(A-9)を得た。化合物(A-9)の分子量は、1,195であった。
【0167】
[合成例15](化合物(a-7)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、1,3,6,8-テトラブロモピレン10.0g、9H-フルオレン-2-ボロン酸ピナコール33.86g及びテトラヒドロフラン300gを加え、攪拌した後、20質量%炭酸カリウム水溶液169g及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物1.28gを添加し、70℃に加熱して24時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、300gのメチルイソブチルケトン及び水100gを加えて沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ紙で回収し、多量のテトラヒドロフランで洗浄、乾燥して化合物(a-7)を得た。化合物(a-7)の分子量は、859であった。
【0168】
[合成例16](化合物(a-8)の合成)
1,3,6,8-テトラブロモピレン10.0gに代えて1,6-ジブロモピレン14.0gを使用したこと以外は、合成例15と同様にして化合物(a-8)を得た。化合物(a-8)の分子量は、531であった。
【0169】
[合成例17](化合物(A-10)の合成)
上記化合物(a-3)10.0gに代えて上記化合物(a-7)23gを使用したこと以外は、合成例11と同様にして化合物(A-10)を得た。化合物(A-10)の分子量は、1,163であった。
【0170】
[合成例18](化合物(A-11)の合成)
上記化合物(a-1)10.0g、インドール-3-カルボキシアルデヒド6.54gに代えて、上記化合物(a-8)10.0g、3-エチニルベンズアルデヒド5.88gを使用したこと以外は、合成例13と同様にして化合物(A-11)を得た。化合物(A-11)の分子量は、755であった。
【0171】
[合成例19](化合物(A-12)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、上記化合物(a-3)10.0g、1-ホルミルピレン14.3g、及びテトラヒドロフラン121.5gを加え、攪拌した後、25質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液52.8g、及びテトラブチルアンモニウムブロミド1.82gを添加し、60℃で12時間反応させた。反応終了後、5質量%シュウ酸水溶液500g及びメチルイソブチルケトン100gを加えた。水相を除去した後、水による分液抽出を行い、有機層をヘキサンに投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して化合物(A-12)を得た。化合物(A-12)の分子量は、2,337であった。
【0172】
[比較合成例1](化合物(ca-1)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、2-アセチルフルオレン20.0g及びm-キシレン20.0gを仕込み、110℃にて溶解させた。次いで、ドデシルベンゼンスルホン酸3.14gを添加し、140℃に加熱して16時間反応させた。反応終了後、本反応溶液にキシレン80gを加えて希釈した後、50℃に冷却し、500gのメタノールに投入し再沈殿した。得られた沈殿物をトルエンで洗浄した後、固体をろ紙で回収し、乾燥して化合物(ca-1)を得た。
【0173】
[比較合成例2](化合物(CA-1)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、上記化合物(ca-1)10.0g、臭化プロパルギル18.8g及びトルエン50gを加え、攪拌した後、50質量%水酸化ナトリウム水溶液25.2g及びテトラブチルアンモニウムブロミド1.7gを加え、92℃で12時間反応させた。反応液を50℃に冷却した後、テトラヒドロフラン25gを加えた。水相を除去した後、1質量%シュウ酸水溶液50gを加えて分液抽出を行った後、ヘキサンに投入し再沈殿した。沈殿物をろ紙で回収し、乾燥して化合物(CA-1)を得た。化合物(CA-1)の分子量は、799であった。
【0174】
<組成物の調製>
組成物の調製に用いた[B]溶媒について以下に示す。
【0175】
[[B]溶媒]
B-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
B-2:シクロヘキサノン
【0176】
[実施例1-1](組成物(J-1)の調製)
[A]化合物としての(A-1)10質量部を[B]溶媒としての(B-1)90質量部に溶解した。得られた溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、組成物(J-1)を調製した。
【0177】
[実施例1-2~1-12及び比較例1-1](組成物(J-2)~(J-12)及び(CJ-1)の調製)
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を使用したこと以外は実施例1と同様にして、組成物(J-2)~(J-12)及び(CJ-1)を調製した。
【0178】
【表1】
【0179】
<膜の形成>
[実施例2-1~2-12及び比較例2-1]
上記調製した組成物を、シリコンウエハ(基板)上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「LITHIUS Pro Z」)を用いて回転塗工法により塗工した。次いで、大気雰囲気下、400℃で60秒加熱した後、23℃で600秒冷却することにより、平均厚み200nmの膜が形成された膜付き基板を得た。
【0180】
<評価>
上記<組成物の調製>において調製した組成物及び上記<膜の形成>で得られた膜付き基板について、下記方法によりエッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性を評価した。評価結果を下記表2に合わせて示す。
【0181】
[エッチング耐性]
上記膜付き基板における膜を、エッチング装置(東京エレクトロン(株)の「TACTRAS」)を用いて、CF/Ar=110/440sccm、PRESS.=30MT、HF RF(プラズマ生成用高周波電力)=500W、LF RF(バイアス用高周波電力)=3000W、DCS=-150V、RDC(ガスセンタ流量比)=50%、30秒の条件にて処理し、処理前後の膜の平均厚みからエッチング速度(nm/分)を算出した。次いで、比較例2-1のエッチング速度を基準として比較例2-1に対する比率を算出し、エッチング耐性の尺度とした。エッチング耐性は、上記比率が0.90未満の場合は「A」(極めて良好)と、0.90以上1.00未満の場合は「B」(良好)と、1.00以上の場合は「C」(不良)と評価した。なお、下記表2中の「*」は、エッチング耐性の評価基準であることを示す。
【0182】
[耐熱性]
上記膜付き基板を、さらに、窒素雰囲気下、450℃で600秒間加熱した後、23℃で60秒間冷却する処理を行った。この処理前後の膜の平均厚みを測定した。処理前の膜の平均厚みをX、処理後の膜の平均厚みをXとして、(X-X)×100/Xで求められる数値の絶対値を算出し、膜厚変化率(%)とした。耐熱性は、膜厚変化率が2%未満の場合は「A」(極めて良好)と、2%以上5%未満の場合は「B」(良好)と、5%以上の場合は「C」(不良)と評価した。
【0183】
[埋め込み性]
上記組成物を、深さ100nm、幅100nmのライン・アンド・スペース・パターンが形成された基板上に、上記スピンコーターを用いて回転塗工法により塗工した。上記スピンコーターの回転条件は平均厚み200nmの膜が形成された膜付き基板を得る場合と同じ条件とした。次に、大気雰囲気下にて、400℃で60秒間加熱した後、23℃で60秒間冷却した。上記基板の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズの「S-4800」)にて観察し、埋め込み性を評価した。埋め込み性は、膜が上記基板のスペースパターンの底部まで埋め込まれている場合は「A」(良好)と、膜がスペースパターンの底部まで埋め込まれていない場合は「B」(不良)と評価した。
【0184】
【表2】
【0185】
表2の結果から、実施例の組成物から形成された膜は、比較例の組成物から形成された膜と比較して、エッチング耐性及び耐熱性に優れていた。また、実施例の組成物は比較例の組成物と同等の埋め込み性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明の組成物によれば、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れる膜を形成することができる。本発明のレジスト下層膜は、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れる。本発明のレジスト下層膜の形成方法によれば、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のパターニングされた基板の製造方法によれば、エッチング耐性、耐熱性及び埋め込み性に優れたレジスト下層膜を形成するため、良好なパターニングされた基板を得ることができる。本発明の化合物は、レジスト下層膜を形成するための組成物の成分として好適に用いることができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。