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特許7589697車載装置、管理装置、劣化判断方法、変化要因判別方法、異常要因判別方法および異常要因判別プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車載装置、管理装置、劣化判断方法、変化要因判別方法、異常要因判別方法および異常要因判別プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/08 20220101AFI20241119BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H04L43/08
H04L12/28 100A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021574467
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040818
(87)【国際公開番号】W WO2021152946
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020012081
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】一丸 智弘
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092621(JP,A)
【文献】特開2014-232351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0134215(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/08
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定する測定部と、
前記測定部によって第1のタイミングにおいて測定された前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を取得する取得部と、
前記測定部によって前記第1のタイミングより後の第2のタイミングにおいて測定された前記特性、および前記取得部によって取得された前記劣化情報に基づいて、前記伝送路の劣化度合いを判断する判断部とを備え
前記取得部は、前記伝送路の配索状態ごとの複数の前記特性にそれぞれ対応する複数の前記劣化情報の中から特定された、前記第1のタイミングにおいて前記測定部によって測定された前記特性に対応する前記劣化情報を取得する、車載装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記第1のタイミングにおいて測定された前記特性に基づいて前記車両の外部における装置によって特定された前記劣化情報を取得する、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記特性と、前記劣化度合いとの対応関係を示す劣化対応情報を前記劣化情報として取得する、請求項1または請求項2に記載の車載装置
【請求項4】
車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の第1のタイミングにおける測定結果を前記車両から受信し、前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を特定し、特定した前記劣化情報を前記車両へ送信する配信部と、
前記伝送路の特性の前記第1のタイミングより後の第2のタイミングにおける測定結果を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記測定結果に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行う判別部とを備え
前記配信部は、前記伝送路の配索状態ごとの複数の前記特性にそれぞれ対応する複数の前記劣化情報の中から、前記第1のタイミングにおいて測定された前記特性に対応する前記劣化情報を特定する、管理装置。
【請求項5】
前記配信部は、前記判別処理の結果に基づいて前記劣化情報を更新し、更新後の前記劣化情報を前記車両へ送信する、請求項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記取得部は、さらに、前記伝送路に接続された車載装置の前記車両における位置を示す搭載位置情報を取得し、
前記判別部は、前記取得部によって取得された前記搭載位置情報にさらに基づいて、前記判別処理を行う、請求項または請求項に記載の管理装置。
【請求項7】
前記取得部は、さらに、前記車両の位置情報および前記車両に対応する気象情報を取得し、
前記判別部は、前記取得部によって取得された、前記位置情報および前記気象情報にさらに基づいて、前記判別処理を行う、請求項から請求項のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
前記取得部は、さらに、前記伝送路における通信品質を示す品質情報を取得し、
前記判別部は、前記取得部によって取得された前記品質情報にさらに基づいて、前記判別処理を行う、請求項から請求項のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
車両に搭載される車載装置における劣化判断方法であって、
前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を第1のタイミングにおいて測定するステップと、
前記第1のタイミングにおいて測定した前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を取得するステップと、
前記伝送路の特性を前記第1のタイミングより後の第2のタイミングにおいて測定するステップと、
前記第2のタイミングにおいて測定した前記特性、および取得した前記劣化情報に基づいて、前記伝送路の劣化度合いを判断するステップとを含み、
前記劣化情報を取得するステップにおいては、前記伝送路の配索状態ごとの複数の前記特性にそれぞれ対応する複数の前記劣化情報の中から特定された、前記第1のタイミングにおいて測定した前記特性に対応する前記劣化情報を取得する、劣化判断方法
【請求項10】
管理装置における異常要因判別方法であって、
車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の第1のタイミングにおける測定結果を前記車両から受信し、前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を特定するステップと、
特定した前記劣化情報を前記車両へ送信するステップと、
前記伝送路の特性の前記第1のタイミングより後の第2のタイミングにおける測定結果を取得するステップと、
取得した前記測定結果に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行うステップとを含み、
前記劣化情報を特定するステップにおいては、前記伝送路の配索状態ごとの複数の前記特性にそれぞれ対応する複数の前記劣化情報の中から、前記第1のタイミングにおいて測定された前記特性に対応する前記劣化情報を特定する、異常要因判別方法。
【請求項11】
管理装置において用いられる異常要因判別プログラムであって、
コンピュータを、
車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の第1のタイミングにおける測定結果を前記車両から受信し、前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を特定し、特定した前記劣化情報を前記車両へ送信する配信部と、
前記伝送路の特性の前記第1のタイミングより後の第2のタイミングにおける測定結果を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記測定結果に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行う判別部、
として機能させるためのプログラムであり、
前記配信部は、前記伝送路の配索状態ごとの複数の前記特性にそれぞれ対応する複数の前記劣化情報の中から、前記第1のタイミングにおいて測定された前記特性に対応する前記劣化情報を特定する、異常要因判別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、管理装置、劣化判断方法、変化要因判別方法、異常要因判別方法および異常要因判別プログラムに関する。
この出願は、2020年1月29日に出願された日本出願特願2020-12081号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2016-143963号公報)には、以下のような車載通信システムが開示されている。すなわち、車載通信システムは、第1バス(7)を介して通信可能に接続された複数の車載装置(5)と、車両(3)の外部に存在する装置である車外装置(9)がコネクタ(11)を介して接続される第2バス(13)と、前記第1バス及び前記第2バスに接続され、前記コネクタを介して前記第2バスに接続された前記車外装置と前記車載装置との間のデータ通信を中継する中継装置(15)と、を備える車載通信システム(1)において、前記第2バスに接続されて、前記車外装置からのDoS攻撃(Denial Of Service attack)を検出する監視装置(17)を備え、前記監視装置は、前記DoS攻撃が発生したと判定すると、前記中継装置へ、前記DoS攻撃が発生したことを示す攻撃通知を送信し(S110~S150)、前記中継装置は、前記攻撃通知を受信すると、前記中継を停止すること(S320,S330)、を特徴とする。
【0003】
また、特許文献2(特開2012-90193号公報)には、以下のような故障予測システムが開示されている。すなわち、故障予測システムは、データを送受信するデータ通信器と、該データ通信器へ送信データを出力する、または、該データ通信器から受信データを入力されるマイクロコントローラを有するデータ通信システムにおいて、前記データ通信器の入出力電圧レベルから劣化進行度を判別する劣化判定部と、該劣化判定部の判定結果に基づき警報を出力する警報出力部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-143963号公報
【文献】特開2012-90193号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を取得する取得部と、前記測定部によって測定された前記特性および前記取得部によって取得された前記劣化情報に基づいて、前記伝送路の劣化度合いを判断する判断部とを備える。
【0006】
本開示の車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定する測定部と、前記測定部による前記特性の測定結果に基づいて、前記特性の変化を検知し、前記変化の要因を判別する判別処理を行う判別部とを備える。
【0007】
本開示の管理装置は、車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の測定結果、前記伝送路に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および前記車両の所定の状況からの経過時間を取得する取得部と、前記取得部によって取得された、前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行う判別部とを備える。
【0008】
本開示の劣化判断方法は、車両に搭載される車載装置における劣化判断方法であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定するステップと、測定した前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を取得するステップと、測定した前記特性および取得した前記劣化情報に基づいて、前記伝送路の劣化度合いを判断するステップとを含む。
【0009】
本開示の変化要因判別方法は、車両に搭載される車載装置における変化要因判別方法であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定するステップと、前記特性の測定結果に基づいて、前記特性の変化を検知し、前記変化の要因を判別する判別処理を行うステップとを含む。
【0010】
本開示の異常要因判別方法は、管理装置における異常要因判別方法であって、車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の測定結果、前記伝送路に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および前記車両の所定の状況からの経過時間を取得するステップと、取得した前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行うステップとを含む。
【0011】
本開示の異常要因判別プログラムは、管理装置において用いられる異常要因判別プログラムであって、コンピュータを、車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の測定結果、前記伝送路に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および前記車両の所定の状況からの経過時間を取得する取得部と、前記取得部によって取得された、前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行う判別部、として機能させるためのプログラムである。
【0012】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現され得るだけでなく、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載装置における処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得たり、車載装置を含むシステムとして実現され得る。
【0013】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える管理装置として実現され得るだけでなく、管理装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、管理装置を含むシステムとして実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の第1の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ネットワークの構成を示す図である。
図3図3は、本開示の第1の実施の形態に係るマスタ装置の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムのイーサネットケーブルにおける挿入損失の測定結果の一例を示す図である。
図5図5は、本開示の第1の実施の形態に係るサーバにおける対応情報の一例を示す図である。
図6図6は、本開示の第1の実施の形態に係るサーバにおける劣化対応情報の一例を示す図である。
図7図7は、本開示の第1の実施の形態に係るサーバの構成を示す図である。
図8図8は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムにおいてマスタ装置が対象ケーブルの劣化度合いを判断する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図9図9は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムにおいてサーバが伝送路の異常の要因を判別する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図10図10は、本開示の第1の実施の形態に係る通信システムにおける伝送路の劣化度合いを判断する処理および伝送路の異常の要因を判別する処理のシーケンスの一例を示す図である。
図11図11は、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置の構成を示す図である。
図12図12は、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システムにおけるマスタ装置が対象ケーブルの特性の変化の要因を判別する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図13図13は、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システムのマスタ装置が判別処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来、車載ネットワークの劣化の診断および予測をする技術、ならびに車載ネットワークの伝送線路における信号の歪みを補償する技術が知られている。
【0016】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1および2に記載の技術を超えて、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することが可能な技術が望まれる。
【0017】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することが可能な車載装置、管理装置、劣化判断方法、変化要因判別方法、異常要因判別方法および異常要因判別プログラムを提供することである。
【0018】
[本開示の効果]
本開示によれば、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0020】
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を取得する取得部と、前記測定部によって測定された前記特性および前記取得部によって取得された前記劣化情報に基づいて、前記伝送路の劣化度合いを判断する判断部とを備える。
【0021】
このように、劣化情報として、たとえば伝送路の特性の測定結果に基づいて識別可能な伝送路の製造元等に対応する劣化情報を取得し、測定結果および取得した劣化情報に基づいて伝送路の劣化度合いを判断する構成により、たとえば伝送路の製造元ごとに、伝送路の劣化度合いを正確に判断することができる。したがって、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0022】
(2)好ましくは、前記取得部は、前記車両の外部における装置から前記劣化情報を取得する。
【0023】
このような構成により、たとえば、複数の車両における伝送路に関する情報に基づいて生成または更新された劣化情報を用いて、伝送路の劣化度合いを判断することができるため、伝送路の劣化度合いをより正確に判断することができる。
【0024】
(3)好ましくは、前記取得部は、前記特性と、前記劣化度合いとの対応関係を示す劣化対応情報を前記劣化情報として取得する。
【0025】
このような構成により、劣化対応情報を用いたより簡易な処理で伝送路の劣化度合いを判断することができる。
【0026】
(4)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定する測定部と、前記測定部による前記特性の測定結果に基づいて、前記特性の変化を検知し、前記変化の要因を判別する判別処理を行う判別部とを備える。
【0027】
このように、伝送路の特性の測定結果に基づいて、伝送路の特性の変化の要因を判別する構成により、たとえば伝送路の断線および伝送路の長さの変化等を、伝送路の特性の変化の要因として正確に判別することができる。したがって、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0028】
(5)好ましくは、前記車載装置は、さらに、前記測定部における前記特性の測定結果に基づいて、前記車載ネットワークのトポロジの変化を検知する検知部を備え、前記判別部は、前記検知部によって前記トポロジの変化が検知された場合、前記測定部における前記特性の測定結果に関わらず、前記変化の要因は所定要因であると判別する。
【0029】
このような構成により、車載ネットワークのトポロジの変化が検知された場合に、たとえばトポロジの変更および不正な車載装置の接続等を、伝送路の特性の変化の要因として判別することができる。
【0030】
(6)好ましくは、前記判別部は、前記判別処理において、前記要因の複数の候補の中から1または複数の候補を選択し、前記車両が走行している場合、前記複数の候補の一部を選択対象から除外する。
【0031】
このような構成により、伝送路の特性の変化の要因を車両の走行中に生じ得る要因に絞り込むことができる。
【0032】
(7)より好ましくは、前記判別部は、前記判別処理において、前記要因の複数の候補の中から1または複数の候補を選択し、前記車両が走行している場合、前記所定要因を選択対象から除外する。
【0033】
車両の走行中においては、車載ネットワーク310のトポロジが変更されたり、不正な車載装置が接続されたりする可能性は低いところ、このような構成により、伝送路の特性の変化の要因を、トポロジの変更および不正な車載装置の接続以外の要因に絞り込むことができる。
【0034】
(8)本開示の実施の形態に係る管理装置は、車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の測定結果、前記伝送路に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および前記車両の所定の状況からの経過時間を取得する取得部と、前記取得部によって取得された、前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行う判別部とを備える。
【0035】
このように、伝送路の特性の測定結果、温度情報および経過時間に基づいて伝送路の異常の要因を判別する構成により、たとえば高温環境下における劣化および経年劣化等の異常の要因を正確に判別することができる。したがって、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0036】
(9)好ましくは、前記取得部は、さらに、前記伝送路に接続された車載装置の前記車両における位置を示す搭載位置情報を取得し、前記判別部は、前記取得部によって取得された前記搭載位置情報にさらに基づいて、前記判別処理を行う。
【0037】
このような構成により、車両における伝送路の使用環境に基づいて、異常の要因をより正確に判別することができる。
【0038】
(10)好ましくは、前記取得部は、さらに、前記車両の位置情報および前記車両に対応する気象情報を取得し、前記判別部は、前記取得部によって取得された、前記位置情報および前記気象情報にさらに基づいて、前記判別処理を行う。
【0039】
このような構成により、車両の利用地域における気象情報に基づいて、異常の要因をより正確に判別することができる。
【0040】
(11)好ましくは、前記取得部は、さらに、前記伝送路における通信品質を示す品質情報を取得し、前記判別部は、前記取得部によって取得された前記品質情報にさらに基づいて、前記判別処理を行う。
【0041】
このような構成により、たとえば伝送路における通信品質の変化に基づいて、異常の要因をより正確に判別することができる。
【0042】
(12)本開示の実施の形態に係る劣化判断方法は、車両に搭載される車載装置における劣化判断方法であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定するステップと、測定した前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を取得するステップと、測定した前記特性および取得した前記劣化情報に基づいて、前記伝送路の劣化度合いを判断するステップとを含む。
【0043】
このように、劣化情報として、たとえば伝送路の特性の測定結果に基づいて識別可能な伝送路の製造元等に対応する劣化情報を取得し、測定結果および取得した劣化情報に基づいて伝送路の劣化度合いを判断する方法により、たとえば伝送路の製造元ごとに、伝送路の劣化度合いを正確に判断することができる。したがって、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0044】
(13)本開示の実施の形態に係る変化要因判別方法は、車両に搭載される車載装置における変化要因判別方法であって、前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定するステップと、前記特性の測定結果に基づいて、前記特性の変化を検知し、前記変化の要因を判別する判別処理を行うステップとを含む。
【0045】
このように、伝送路の特性の測定結果に基づいて、伝送路の特性の変化の要因を判別する方法により、たとえば伝送路の断線および伝送路の長さの変化等を、伝送路の特性の変化の要因として正確に判別することができる。したがって、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0046】
(14)本開示の実施の形態に係る異常要因判別方法は、管理装置における異常要因判別方法であって、車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の測定結果、前記伝送路に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および前記車両の所定の状況からの経過時間を取得するステップと、取得した前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行うステップとを含む。
【0047】
このように、伝送路の特性の測定結果、温度情報および経過時間に基づいて伝送路の異常の要因を判別する方法により、たとえば高温環境下における劣化および経年劣化等の異常の要因を正確に判別することができる。したがって、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0048】
(15)本開示の実施の形態に係る異常要因判別プログラムは、管理装置において用いられる異常要因判別プログラムであって、コンピュータを、車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の測定結果、前記伝送路に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および前記車両の所定の状況からの経過時間を取得する取得部と、前記取得部によって取得された、前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行う判別部、として機能させるためのプログラムである。
【0049】
このように、伝送路の特性の測定結果、温度情報および経過時間に基づいて伝送路の異常の要因を判別する構成により、たとえば高温環境下における劣化および経年劣化等の異常の要因を正確に判別することができる。したがって、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0050】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0051】
<第1の実施の形態>
[通信システム]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【0052】
図1を参照して、通信システム500は、サーバ400と、1または複数の車載通信システム300とを備える。車載通信システム300は、車両1に搭載される。サーバ400は、管理装置の一例である。
【0053】
サーバ400は、車両1における伝送路2の特性の測定結果等の情報を取得し、取得した情報に基づいて、車両1の伝送路2において発生した異常の要因を判別する。サーバ400についての詳細な説明は後述する。
【0054】
[車載通信システム]
車載通信システム300は、マスタ装置100と、スレーブ装置200とを備える。マスタ装置100は、車載装置の一例である。マスタ装置100およびスレーブ装置200は、車両1に搭載される。
【0055】
マスタ装置100およびスレーブ装置200は、車両1に搭載される車載ネットワークにおける伝送路2を介して接続される。
【0056】
なお、車載通信システム300は、複数のスレーブ装置200が対応の伝送路2を介して1つのマスタ装置100と接続される構成であってもよいし、複数のマスタ装置100が対応の伝送路2を介して1つのスレーブ装置200と接続される構成であってもよい。
【0057】
マスタ装置100およびスレーブ装置200は、伝送路2を介して通信を行うことが可能である。
【0058】
伝送路2は、たとえば差動伝送路である。具体的には、伝送路2は、たとえばイーサネット(登録商標)ケーブルである。
【0059】
マスタ装置100は、伝送路2の特性を測定する。たとえば、マスタ装置100は、伝送路2の伝送特性を測定する。より詳細には、マスタ装置100は、伝送路2における特性インピーダンスおよび伝送路2における挿入損失の少なくともいずれか一方を測定する。
【0060】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ネットワークの構成を示す図である。
【0061】
図2を参照して、車載ネットワーク310は、スイッチ装置110A,110B,110Cと、ミリ波センサ120A,120B,120Cと、温度センサ121と、自動運転ECU(Electronic Control Unit)130と、運転制御ECU140A,140B,140Cと、TCU150と、位置検出装置160とを備える。車載ネットワーク310は、車両1に搭載される。
【0062】
たとえば、運転制御ECU140A,140B,140Cは、それぞれ、アクセル制御ECU、ブレーキ制御ECUおよびステアリング制御ECUである。
【0063】
以下、スイッチ装置110A,110B,110Cの各々を、スイッチ装置110とも称する。ミリ波センサ120A,120B,120Cの各々を、ミリ波センサ120とも称する。運転制御ECU140A,140B,140Cの各々を、運転制御ECU140とも称する。
【0064】
車載ネットワーク310におけるスイッチ装置110、ミリ波センサ120、温度センサ121、自動運転ECU130、運転制御ECU140、TCU150および位置検出装置160は、車載装置の一例である。より詳細には、これらの車載装置は、マスタ装置100の一例であり、かつスレーブ装置200の一例である。
【0065】
すなわち、この例では、車載装置は、マスタ装置100として動作することも可能であるし、かつスレーブ装置200として動作することも可能である。なお、車載装置は、マスタ装置100およびスレーブ装置200のいずれか一方として動作する構成であってもよい。
【0066】
車載ネットワーク310における、スイッチ装置110、ミリ波センサ120、温度センサ121、自動運転ECU130、運転制御ECU140、TCU150および位置検出装置160の接続関係は、たとえば固定されている。
【0067】
スイッチ装置110Aおよびスイッチ装置110Bは、イーサネットケーブル3を介して互に接続されている。スイッチ装置110Aは、イーサネットケーブル3を介して、ミリ波センサ120、温度センサ121および自動運転ECU130と接続されている。スイッチ装置110Bは、イーサネットケーブル3を介してTCU150および位置検出装置160と接続されている。スイッチ装置110Cは、イーサネットケーブル3を介して、運転制御ECU140および自動運転ECU130と接続されている。
【0068】
車載ネットワーク310では、各車載装置間において、データの送受信が行われる。具体的には、車載ネットワーク310では、たとえば、IEEE802.3の通信規格に従って、各車載装置間においてイーサネットフレームの送受信が行われる。
【0069】
なお、車載ネットワーク310では、IEEE802.3の通信規格に限らず、CAN(Controller Area Network)(登録商標)、FlexRay(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport)(登録商標)およびLIN(Local Interconnect Network)等の通信規格に従って、各車載装置間においてデータの送受信が行われる構成であってもよい。すなわち、伝送路2は、イーサネットケーブル3に限らず、他の種類のケーブルであってもよい。
【0070】
スイッチ装置110は、各車載装置間においてやり取りされるイーサネットフレームを中継する。
【0071】
TCU150は、車両1の外部のサーバ400と通信を行うことが可能である。詳細には、図1および図2を参照して、TCU150は、たとえば、IPパケットを用いて無線基地局装置402経由でサーバ400と通信することが可能である。
【0072】
より詳細には、TCU150は、たとえば、LTE(Long Term Evolution)または3G等の通信規格に従って、車両1の外部の無線基地局装置402と無線通信を行うことが可能である。
【0073】
具体的には、無線基地局装置402は、サーバ400から外部ネットワーク401経由でIPパケットを受信すると、受信したIPパケットを無線信号に含めてTCU150へ送信する。
【0074】
TCU150は、たとえば、サーバ400からのIPパケットを含む無線信号を無線基地局装置402から受信すると、受信した無線信号からIPパケットを取得し、取得したIPパケットをイーサネットフレームに格納してスイッチ装置110Bへ送信する。
【0075】
また、TCU150は、スイッチ装置110Bからイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームからIPパケットを取得し、取得したIPパケットを無線信号に含めて無線基地局装置402へ送信する。
【0076】
無線基地局装置402は、TCU150から無線信号を受信すると、受信した無線信号からIPパケットを取得し、取得したIPパケットを外部ネットワーク401経由でサーバ400へ送信する。
【0077】
位置検出装置160は、定期的または不定期に、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)の測位衛星からの電波に基づいて自己の車両1の現在位置を取得し、取得した現在位置を示す位置情報を、スイッチ装置110BおよびTCU150経由でサーバ400へ送信する。
【0078】
温度センサ121は、定期的または不定期に、車両1の内部の温度を計測し、計測結果を示す温度情報を、スイッチ装置110A,110BおよびTCU150経由でサーバ400へ送信する。
【0079】
ミリ波センサ120は、たとえば、自己の車両1の周辺における物体との間の距離等を計測し、計測結果を示すセンサ情報を含むイーサネットフレームを生成する。ミリ波センサ120は、生成したイーサネットフレームをスイッチ装置110A経由で自動運転ECU130へ送信する。
【0080】
自動運転ECU130は、ミリ波センサ120からスイッチ装置110A経由でイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームからセンサ情報を取得する。自動運転ECU130は、センサ情報の示す計測結果に基づいて、運転制御ECU140を制御する。
【0081】
具体的には、自動運転ECU130は、計測結果に基づいて、たとえば車両1のアクセル、ブレーキおよびステアリングを制御するための各種制御情報を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームをスイッチ装置110C経由で運転制御ECU140へ送信する。
【0082】
運転制御ECU140は、自動運転ECU130からイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームから制御情報を取得する。運転制御ECU140は、取得した制御情報に従って、車両1のアクセル、ブレーキおよびステアリングを制御する。
【0083】
運転制御ECU140は、車両1のアクセル、ブレーキおよびステアリングの制御を完了すると、制御を完了した旨を示す完了情報を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームをスイッチ装置110C経由で自動運転ECU130へ送信する。
【0084】
[マスタ装置]
図3は、本開示の第1の実施の形態に係るマスタ装置の構成を示す図である。
【0085】
図3を参照して、マスタ装置100は、通信部10と、処理部20と、測定部30と、取得部40と、判断部50と、記憶部60と、通信ポート91A,91Bと、フロントエンド回路92A,92Bとを備える。
【0086】
通信部10、処理部20、測定部30、取得部40および判断部50は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって実現される。記憶部60は、たとえばフラッシュメモリである。記憶部60は、車両1が製造工場から出荷された時刻である出荷時刻を記憶している。
【0087】
通信ポート91A,91Bは、たとえば、イーサネットケーブル3のコネクタを接続可能な端子である。以下、通信ポート91A,91Bの各々を通信ポート91とも称する。
【0088】
なお、マスタ装置100は、2つの通信ポート91を備える構成に限らず、1つまたは3つ以上の通信ポート91を備える構成であってもよい。たとえば、マスタ装置100は、自己に接続される車載装置の数に応じた数の通信ポート91を備える構成であってもよい。具体的には、マスタ装置100の一例としてのスイッチ装置110Cは、自己に接続される車載装置である自動運転ECU130および運転制御ECU140に対応する4つの通信ポート91を備える。
【0089】
フロントエンド回路92Aは、通信ポート91Aおよび通信部10の間のノードN1と接地ノードとの間に接続される。フロントエンド回路92Bは、通信ポート91Bおよび通信部10の間のノードN2と接地ノードとの間に接続される。以下、フロントエンド回路92A,92Bの各々をフロントエンド回路92とも称する。フロントエンド回路92は、たとえば双方向ツェナーダイオードにより構成される。
【0090】
処理部20は、他の車載装置へ送信すべきイーサネットフレームを通信部10へ出力する。
【0091】
たとえば、ミリ波センサ120における処理部20は、計測結果を示すセンサ情報を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームを通信部10へ出力する。あるいは、たとえば、マスタ装置100としての自動運転ECU130は、各種制御情報を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームを通信部10へ出力する。
【0092】
通信部10は、自己に接続されたイーサネットケーブル3を介して他の車載装置と通信する。
【0093】
より詳細には、通信部10は、処理部20から受けたイーサネットフレームを、当該イーサネットフレームに含まれる宛先MAC(Media Access Control)アドレスに対応する車載装置へ、対応の通信ポート91経由で送信する。
【0094】
また、通信部10は、他の車載装置から通信ポート91を介して自己のマスタ装置100宛のイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームを処理部20へ出力する。
【0095】
処理部20は、通信部10からイーサネットフレームを受けると、受けたイーサネットフレームを用いて所定の処理を行う。
【0096】
たとえば、自動運転ECU130における処理部20は、ミリ波センサ120からのイーサネットフレームに含まれるセンサ情報の示す計測結果に基づいて、各種制御情報を含むイーサネットフレームを生成する処理を行う。そして、処理部20は、生成したイーサネットフレームを通信部10および通信ポート91経由で他の車載装置すなわち運転制御ECU140へ送信する。
【0097】
あるいは、たとえば、スイッチ装置110における処理部20は、イーサネットフレームの中継処理を行う。具体的には、処理部20は、送信元の車載装置から通信ポート91および通信部10経由でイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームを宛先の車載装置へ通信部10および通信ポート91経由で送信する。
【0098】
スレーブ装置200は、測定部30、取得部40および判断部50を備えないこと以外は、マスタ装置100と同じ構成である。
【0099】
[測定部]
再び図2および図3を参照して、たとえば、測定部30は、定期的または不定期に、自己の車載装置であるマスタ装置100とスレーブ装置200とを接続する伝送路2すなわちイーサネットケーブル3における通信品質を測定する。以下、マスタ装置100とスレーブ装置200とを接続するイーサネットケーブル3を「対象ケーブル3」とも称する。
【0100】
より詳細には、測定部30は、対象ケーブル3における通信品質として、対象ケーブル3における通信のSN(Signal-Noise)比、または対象ケーブル3における通信のBER(Bit Error Rate)を測定し、通信品質の測定結果を示す品質情報を生成して記憶部60に保存する。
【0101】
また、測定部30は、車載ネットワーク310における伝送路2すなわちイーサネットケーブル3の特性を測定する。より詳細には、測定部30は、対象ケーブル3の特性たとえば伝送特性を測定する。
【0102】
測定部30は、車両1のアクセサリー電源オン、車両1のイグニッション電源オン、車載装置の初期化、車載ネットワーク310の構成変更および車載ネットワーク310における通信エラーの発生などの所定の測定契機(Trigger)において、対象ケーブル3の特性を測定する。なお、測定部30は、対象ケーブル3の特性を定期的に測定する構成であってもよい。
【0103】
たとえば、測定部30は、対象ケーブル3の特性として、対象ケーブル3における特性インピーダンスを測定する。
【0104】
より詳細には、測定部30は、スレーブ装置200において終端処理を行った状態において、TDR(Time Domain Reflectometry)に従う手法を用いて、対象ケーブル3における特性インピーダンスを測定する。
【0105】
具体的には、測定部30は、高速パルス信号またはステップ信号などの測定用信号を通信部10および通信ポート91経由で対象ケーブル3へ出力し、出力した測定用信号に対する反射信号を通信ポート91および通信部10経由で受信する。
【0106】
そして、測定部30は、受信した反射信号に基づいて、対象ケーブル3における特性インピーダンスを測定する。
【0107】
あるいは、測定部30は、対象ケーブル3の特性として、対象ケーブル3における挿入損失を測定する。
【0108】
より詳細には、測定部30は、スレーブ装置200において終端処理を行った状態において、周波数の異なる複数の測定用信号を、対象ケーブル3を介して自己と接続されるスレーブ装置200へ通信部10および通信ポート91経由で送信する。
【0109】
スレーブ装置200は、マスタ装置100における測定部30から受信した測定用信号を測定し、測定結果を示す応答信号をマスタ装置100へ送信する。
【0110】
マスタ装置100における測定部30は、対象ケーブル3、通信ポート91および通信部10経由でスレーブ装置200から応答信号を受信すると、受信した応答信号および自己が送信した測定用信号を用いて、対象ケーブル3における挿入損失を測定する。
【0111】
なお、測定部30は、対象ケーブル3の特性として、対象ケーブル3における特性インピーダンスまたは挿入損失を測定する構成に限定されない。測定部30は、対象ケーブル3の特性として、対象ケーブル3における特性インピーダンスおよび挿入損失の両方を測定する構成であってもよいし、対象ケーブル3における反射損失およびSパラメータの少なくともいずれか一方を測定する構成であってもよい。特性インピーダンス、挿入損失、反射損失およびSパラメータは、伝送特性の一例である。
【0112】
測定部30は、対象ケーブル3の特性を測定すると、テストフレームを通信部10経由でスレーブ装置200へ送信する。
【0113】
スレーブ装置200は、マスタ装置100における測定部30からテストフレームを受信すると、自己のIPアドレスおよびMACアドレス等の、自己のIDを含む応答フレームを生成し、生成した応答フレームをマスタ装置100へ送信する。
【0114】
マスタ装置100における測定部30は、通信部10経由でスレーブ装置200から応答フレームを受信すると、受信した応答フレームからスレーブ装置200のIDを取得する。
【0115】
そして、測定部30は、自己のマスタ装置100のID、スレーブ装置200のID、および対象ケーブル3の特性の測定結果を含む測定情報を生成し、生成した測定情報を取得部40および判断部50へ出力する。以下、マスタ装置100のIDをマスタIDとも称し、スレーブ装置200のIDをスレーブIDとも称する。
【0116】
なお、測定部30は、応答フレームを受信できなかった場合、または応答フレームからスレーブIDを取得することができなかった場合、スレーブIDを含まず、かつマスタIDおよび対象ケーブル3の特性の測定結果を含む測定情報を生成して取得部40および判断部50へ出力する。
【0117】
また、測定部30は、記憶部60における出荷時刻および現在時刻に基づいて、車両1が製造工場から出荷された時点からの経過時間を算出する。
【0118】
そして、測定部30は、記憶部60から品質情報を取得し、取得した品質情報、算出した経過時間、および測定情報を含む車両測定情報を生成し、生成した車両測定情報を、通信部10、TCU150および無線基地局装置402経由でサーバ400へ送信する。
【0119】
たとえば、測定部30は、上述した測定契機に従うタイミングにおいて、車両測定情報をサーバ400へ送信する。
【0120】
[取得部]
取得部40は、測定部30によって測定された特性に対応する、伝送路2すなわちイーサネットケーブル3の劣化に関する情報である劣化情報を取得する。
【0121】
たとえば、取得部40は、対象ケーブル3の特性と、対象ケーブル3の劣化度合いとの対応関係を示す劣化対応情報T2を劣化情報として取得する。
【0122】
たとえば、取得部40は、車両1の外部における装置たとえばサーバ400から劣化対応情報T2を取得する。
【0123】
より詳細には、取得部40は、車両1の出荷前に、対象ケーブル3の特性の測定結果を含む劣化情報要求を生成し、生成した劣化情報要求を、通信部10、TCU150および無線基地局装置402経由でサーバ400へ送信する。
【0124】
サーバ400は、車載通信システム300のマスタ装置100における測定部30から劣化情報要求を受信すると、受信した劣化情報要求が示す測定結果に対応する劣化対応情報を、無線基地局装置402およびTCU150経由で車載通信システム300におけるマスタ装置100へ送信する。
【0125】
より詳細には、サーバ400は、イーサネットケーブル3の特性と、劣化対応情報T2との対応関係を示す対応情報を保持している。
【0126】
ここで、イーサネットケーブル3は、製造元および車載ネットワーク310におけるイーサネットケーブル3の配索状態に応じた固有の特性を有する。なお、車載ネットワーク310におけるイーサネットケーブル3の配索状態とは、たとえば、車載ネットワーク310における配索されたイーサネットケーブル3の、長さ、曲率半径、他のイーサネットケーブル3との結束により受ける力、結束により他のイーサネットケーブル3と並走する部分の長さ、および中継端子の有無を意味するものとする。
【0127】
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムのイーサネットケーブルにおける挿入損失の測定結果の一例を示す図である。なお、図4において、縦軸は挿入損失[dB]を示し、横軸は対象信号の周波数[Hz]を示す。
【0128】
図4を参照して、挿入損失波形Aは、X社製であり、かつ長さが10mであるイーサネットケーブル3Aにおける挿入損失を示す。挿入損失波形Bは、X社製であり、長さが10mであり、かつ他のイーサネットケーブルと並走するイーサネットケーブル3Bにおける挿入損失を示す。挿入損失波形Cは、X社製であり、かつ長さが5mであるイーサネットケーブル3Cにおける挿入損失を示す。このように、イーサネットケーブル3の挿入損失の波形は、イーサネットケーブル3の長さおよび配索状態に応じて異なる。
【0129】
また、マスタ装置100における測定部30による対象ケーブル3の特性の測定結果は、マスタ装置100におけるチップの製造元の別、マスタ装置100における回路の製造元の別、マスタ装置100における通信ポート91の製造元の別、スレーブ装置200におけるチップの製造元の別、スレーブ装置200における回路の製造元の別、スレーブ装置200における通信ポート91の製造元の別、およびイーサネットケーブル3の製造元の別に応じた影響を受ける。
【0130】
そこで、サーバ400は、対応情報として、マスタ装置100における各部の製造元、スレーブ装置200における各部の製造元、イーサネットケーブル3の製造元、およびイーサネットケーブル3の配索状態ごとの複数の特性と、劣化対応情報との対応関係を示す対応情報T1を保持している。
【0131】
図5は、本開示の第1の実施の形態に係るサーバにおける対応情報の一例を示す図である。
【0132】
図5を参照して、サーバ400は、車載通信システム300のマスタ装置100における測定部30から劣化情報要求を受信すると、自己が保持する対応情報T1における特性のうち、受信した劣化情報要求が示す測定結果と一致または類似する特性を特定し、特定した特性に対応する劣化対応情報を取得する。
【0133】
図6は、本開示の第1の実施の形態に係るサーバにおける劣化対応情報の一例を示す図である。図6は、挿入損失Eと、劣化度合いとの対応関係を示す劣化対応情報T2を示している。劣化対応情報T2において、劣化度合いは、相当する経年劣化時間または断線状態により表される。
【0134】
サーバ400は、取得した劣化対応情報T2を、無線基地局装置402およびTCU150経由で車載通信システム300におけるマスタ装置100へ送信する。
【0135】
マスタ装置100における取得部40は、TCU150および通信部10経由でサーバ400から劣化対応情報T2を受信すると、受信した劣化対応情報T2を記憶部60に保存する。
【0136】
そして、取得部40は、車両1の出荷後、測定部30から測定情報を受けると、記憶部60から劣化対応情報T2を取得して判断部50へ出力する。
【0137】
なお、取得部40は、車両1の出荷後、定期的または不定期に、サーバ400から劣化対応情報T2を取得する構成であってもよい。たとえば、取得部40は、車載ネットワーク310のトポロジが変更されると、サーバ400から劣化対応情報T2を取得する。
【0138】
取得部40は、車両1の出荷後にサーバ400から劣化対応情報T2を取得すると、記憶部60における劣化対応情報T2を、新たに取得した劣化対応情報T2に更新する。
【0139】
[判断部]
判断部50は、測定部30によって測定された特性および取得部40によって取得された劣化情報に基づいて、伝送路2の劣化度合いを判断する。
【0140】
たとえば、判断部50は、測定部30から受けた測定情報、および取得部40から受けた劣化情報たとえば劣化対応情報T2に基づいて、対象ケーブル3の劣化度合いを判断する。
【0141】
より詳細には、判断部50は、劣化対応情報T2において、測定部30から受けた測定情報が示す挿入損失の値に最も近い挿入損失Eに対応する劣化度合いを特定する。
【0142】
判断部50は、特定した劣化度合いを、車両1における表示または音声出力によってユーザへ通知するとともに、通信部10およびTCU150経由でサーバ400へ通知する。
【0143】
[サーバ]
図7は、本開示の第1の実施の形態に係るサーバの構成を示す図である。
【0144】
図7を参照して、サーバ400は、取得部410と、判別部420と、配信部430と、記憶部440とを備える。記憶部440は、たとえばフラッシュメモリである。
【0145】
再び図5を参照して、記憶部440は、対応情報T1を記憶している。また、たとえば、記憶部440は、車両1の車種ごとに、車載ネットワーク310における各車載装置のIDおよび各車載装置の接続関係を示す接続情報を記憶している。
【0146】
[配信部]
再び図5および図6を参照して、配信部430は、車載通信システム300のマスタ装置100における測定部30から劣化情報要求を受信すると、記憶部440における対応情報T1における特性のうち、受信した劣化情報要求が示す測定結果と一致または類似する特性を特定し、特定した特性に対応する劣化対応情報T2を取得する。
【0147】
たとえば、配信部430は、イーサネットケーブル3の挿入損失波形を含む劣化情報要求を受信すると、受信した劣化情報要求が示す挿入損失波形、および対応情報T1の各挿入損失波形において、各周波数に対応する挿入損失を比較することにより、対応情報T1における挿入損失波形のうち、受信した劣化情報要求が示す挿入損失波形と一致または類似する挿入損失波形を特定する。そして、配信部430は、特定した挿入損失波形に対応する劣化対応情報T2を取得する。
【0148】
配信部430は、取得した劣化対応情報T2を、無線基地局装置402およびTCU150経由で車載通信システム300におけるマスタ装置100へ送信する。
【0149】
[取得部]
取得部410は、車両1に搭載される車載ネットワーク310における伝送路2の特性の測定結果、伝送路2に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および車両1の所定の状況からの経過時間を取得する。より詳細には、取得部410は、車両1の所定の状況からの経過時間として、車両1が製造工場から出荷された時点からの経過時間を取得する。たとえば、取得部410は、伝送路2の特性の測定結果として、伝送路2の伝送特性の測定結果を取得する。
【0150】
また、たとえば、取得部410は、伝送路2に接続された車載装置の車両1における位置を示す搭載位置情報、車両1の位置情報および車両1に対応する気象情報、ならびに伝送路2における通信品質を示す品質情報をさらに取得する。
【0151】
より詳細には、取得部410は、無線基地局装置402経由で車載通信システム300のマスタ装置100における測定部30から車両測定情報を受信すると、受信した車両測定情報から、車載ネットワーク310における、測定情報、品質情報および経過時間を取得する。
【0152】
取得部410は、取得した測定情報に含まれる対象ケーブル3の特性の測定結果を、伝送路2の特性の測定結果として記憶部440に保存する。以下、伝送路2の特性の測定結果を「特性測定結果」とも称する。
【0153】
また、取得部410は、取得した品質情報を、伝送路2における通信品質を示す品質情報として記憶部440に保存する。
【0154】
また、取得部410は、取得した経過時間を記憶部440に保存する。
【0155】
また、取得部410は、取得した測定情報に含まれるマスタIDおよびスレーブID、ならびに記憶部440における接続情報に基づいて、マスタ装置100およびスレーブ装置200の車両1における位置を特定し、特定した位置を示す搭載位置情報を記憶部440に保存する。
【0156】
また、取得部410は、無線基地局装置402経由で車載通信システム300における位置検出装置160から位置情報を受信すると、受信した位置情報を記憶部440に保存する。
【0157】
また、取得部410は、受信した位置情報が示す車両1の位置に対応する地域の気象情報を、外部ネットワーク401経由で気象庁のサーバ等から受信し、受信した気象情報を記憶部440に保存する。
【0158】
また、取得部410は、無線基地局装置402経由で車載通信システム300における温度センサ121から温度情報を受信すると、受信した温度情報を、伝送路2に接続された車載装置の温度を示す温度情報として記憶部440に保存する。
【0159】
たとえば、取得部410は、ある車両1における複数の伝送路2の、特性測定結果、品質情報および搭載位置情報を取得して記憶部440に保存する。また、たとえば、取得部410は、複数の車両1の、経過時間、位置情報、気象情報および温度情報を取得して記憶部440に保存する。
【0160】
[判別部]
判別部420は、取得部410によって取得された、特性測定結果、温度情報および経過時間に基づいて、伝送路2の異常の要因を判別する判別処理を行う。
【0161】
より詳細には、判別部420は、記憶部440における1または複数の伝送路2の特性測定結果と、所定値であるしきい値Thとを比較し、比較結果に基づいて、当該伝送路2に異常が発生しているか否かを判断する。
【0162】
そして、判別部420は、伝送路2に異常が発生していると判断した場合、特性測定結果、温度情報および経過時間に基づいて、異常の要因を判別する。以下、判別部420の判別処理の対象である伝送路2を「対象伝送路2」とも称する。
【0163】
たとえば、判別部420は、記憶部440に蓄積された、ある対象伝送路2についての複数の特性測定結果に基づいて、特性測定結果の時系列データを生成し、生成した時系列データに基づいて、当該対象伝送路2の劣化の傾向および劣化が進行した時期等を分析する。
【0164】
また、判別部420は、生成した時系列データ、温度情報および経過時間に基づいて、たとえば、車両1内の温度、および対象伝送路2の経年劣化等を、対象伝送路2の異常の要因の一つとして特定する。
【0165】
たとえば、判別部420は、取得部410によって取得された特性測定結果等の、1または複数の車両1の各種情報のうち、少なくともいずれか1つの車両1の各種情報に基づいて、対象伝送路2の異常の要因を判別する。また、判別部420は、車種が異なる複数の車両1の各種情報に基づいて判別処理を行うことにより、車種ごとの車両1の構造を、対象伝送路2の異常の要因の一つとして特定する。
【0166】
(判別処理の他の例1)
判別部420は、記憶部440における搭載位置情報にさらに基づいて、判別処理を行う。
【0167】
たとえば、判別部420は、搭載位置情報が示す対象伝送路2の位置が、エンジンの近傍等の高温環境下である場合、対象伝送路2の周囲の温度を、対象伝送路2の異常の要因の一つとして特定する。
【0168】
また、たとえば、判別部420は、搭載位置情報および接続情報に基づいて、対象伝送路2と他の伝送路2との並走、対象伝送路2の曲げ部分の曲率半径、および対象伝送路2の結束箇所等の配索環境を、対象伝送路2の異常の要因の一つとして特定する。
【0169】
(判別処理の他の例2)
判別部420は、記憶部440における位置情報および気象情報にさらに基づいて、判別処理を行う。
【0170】
たとえば、判別部420は、位置情報および気象情報が示す車両1の利用地域が、高温地域、温度変化が激しい地域、高湿地域および塩害地域である場合、車両1の利用環境を、対象伝送路2の異常の要因の一つとして特定する。
【0171】
また、たとえば、判別部420は、位置情報および気象情報が示す車両1の利用地域が、台風、洪水および冠水等の災害が発生した地域である場合、これらの災害を、対象伝送路2の異常の要因の一つとして特定する。
【0172】
(判別処理の他の例3)
判別部420は、記憶部440における品質情報にさらに基づいて、判別処理を行う。
【0173】
たとえば、判別部420は、記憶部440に蓄積された、ある対象伝送路2についての複数の品質情報に基づいて、対象伝送路2における通知品質の時系列データを生成し、生成した時系列データに基づいて、当該対象伝送路2における通知品質の変化の傾向および通信品質が悪化した時期等を分析する。
【0174】
そして、判別部420は、生成した時系列データおよび取得部410によって取得された温度情報等の他の情報に基づいて、判別処理を行う。
【0175】
(劣化対応情報T2の更新)
判別部420は、判別処理の結果に基づいて、劣化対応情報T2を更新する。
【0176】
たとえば、判別部420は、同一車種の複数の車両1における各対象伝送路2についての判別処理の結果に基づいて、劣化対応情報T2における劣化度合いが示す経年劣化時間を、より正確な値に変更する。
【0177】
たとえば、配信部430は、判別部420によって劣化対応情報T2が更新されると、更新後の劣化対応情報T2を無線基地局装置402およびTCU150経由で車載通信システム300におけるマスタ装置100へ送信する。
【0178】
マスタ装置100における取得部40は、通信部10経由でサーバ400における配信部430から更新後の劣化対応情報T2を受信すると、記憶部60における劣化対応情報T2を、受信した劣化対応情報T2に更新する。
【0179】
[動作の流れ]
本開示の実施の形態に係る通信システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0180】
図8は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムにおいてマスタ装置が対象ケーブルの劣化度合いを判断する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0181】
図8を参照して、まず、マスタ装置100は、たとえば車両1の出荷前に、対象ケーブル3の特性を測定する(ステップS102)。
【0182】
次に、マスタ装置100は、対象ケーブル3の特性に対応する劣化対応情報T2をサーバ400から取得する(ステップS104)。
【0183】
次に、マスタ装置100は、たとえば車両1の出荷後、車両1のアクセサリー電源オン等の所定の測定契機を待ち受け(ステップS106でNO)、所定の測定契機において(ステップS106でYES)、対象ケーブル3の特性を測定する(ステップS108)。
【0184】
次に、マスタ装置100は、対象ケーブル3の特性の測定結果および劣化対応情報T2に基づいて、対象ケーブル3の劣化度合いを判断する(ステップS110)。
【0185】
次に、マスタ装置100は、対象ケーブル3における通信品質を示す品質情報、車両1の出荷時点からの経過時間、対象ケーブル3の特性の測定結果、マスタIDおよびスレーブIDを含む車両測定情報をサーバ400へ送信する(ステップS112)。
【0186】
次に、マスタ装置100は、新たな測定契機を待ち受ける(ステップS106でNO)。
【0187】
なお、上記ステップS110とS112との順番は、上記に限らず、順番を入れ替えてもよい。
【0188】
図9は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムにおいてサーバが伝送路の異常の要因を判別する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0189】
図9を参照して、まず、サーバ400は、車載通信システム300におけるマスタ装置100からの車両測定情報を待ち受け(ステップS202でNO)、車両測定情報を受信すると(ステップS202でYES)、車両測定情報に含まれる特性測定結果に基づいて、伝送路2に異常が発生しているか否かを判断する(ステップS204)。
【0190】
次に、サーバ400は、伝送路2に異常が発生していないと判断した場合(ステップS206でNO)、マスタ装置100からの新たな車両測定情報を待ち受ける(ステップS202でNO)。
【0191】
一方、サーバ400は、伝送路2に異常が発生していると判断した場合(ステップS206でYES)、車両測定情報に含まれる特性測定結果および経過時間等の各種情報、車両1の位置に対応する地域の気象情報、マスタ装置100およびスレーブ装置200の車両1における位置を示す搭載位置情報、ならびに車載通信システム300における温度センサ121から受信した温度情報に基づいて、伝送路2の異常の要因を判別する(ステップS208)。
【0192】
次に、サーバ400は、判別処理の結果に基づいて、劣化対応情報T2を更新する(ステップS210)。
【0193】
次に、サーバ400は、更新後の劣化対応情報T2を車載通信システム300におけるマスタ装置100へ送信する(ステップS212)。
【0194】
次に、サーバ400は、マスタ装置100からの新たな車両測定情報を待ち受ける(ステップS202でNO)。
【0195】
図10は、本開示の第1の実施の形態に係る通信システムにおける伝送路の劣化度合いを判断する処理および伝送路の異常の要因を判別する処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0196】
図10を参照して、まず、マスタ装置100は、たとえば車両1の出荷前に、対象ケーブル3の特性を測定する(ステップS302)。
【0197】
次に、マスタ装置100は、対象ケーブル3の特性の測定結果を含む劣化情報要求をサーバ400へ送信する(ステップS304)。
【0198】
次に、サーバ400は、マスタ装置100から受信した劣化情報要求が示す測定結果と一致または類似する特性を特定し、特定した特性に対応する劣化対応情報T2をマスタ装置100へ送信する(ステップS306)。
【0199】
次に、マスタ装置100は、たとえば車両1の出荷後、車両1の内部の温度の計測結果を示す温度情報、および車両1の現在位置を示す位置情報をサーバ400へ送信する(ステップS308)。
【0200】
次に、サーバ400は、受信した位置情報が示す車両1の位置に対応する地域の気象情報を取得する(ステップS310)。
【0201】
次に、マスタ装置100は、車両1のアクセサリー電源オン等の所定の測定契機において、対象ケーブル3の特性を測定する(ステップS312)。
【0202】
次に、マスタ装置100は、対象ケーブル3の特性の測定結果および劣化対応情報T2に基づいて、対象ケーブル3の劣化度合いを判断する(ステップS314)。
【0203】
次に、マスタ装置100は、対象ケーブル3における通信品質を示す品質情報、車両1の出荷時点からの経過時間、対象ケーブル3の特性の測定結果、自己のマスタIDおよびスレーブIDを含む車両測定情報をサーバ400へ送信する(ステップS316)。
【0204】
次に、サーバ400は、車両測定情報に含まれる特性測定結果に基づいて、伝送路2に異常が発生していると判断すると、車両測定情報に含まれる特性測定結果等の各種情報、気象情報、マスタ装置100およびスレーブ装置200の車両1における位置を示す搭載位置情報、ならびに温度情報に基づいて、伝送路2の異常の要因を判別する(ステップS318)。
【0205】
次に、サーバ400は、判別処理の結果に基づいて、劣化対応情報T2を更新する(ステップS320)。
【0206】
次に、サーバ400は、更新後の劣化対応情報T2を車載通信システム300におけるマスタ装置100へ送信する(ステップS322)。
【0207】
次に、マスタ装置100は、記憶部60における劣化対応情報T2を、サーバ400から受信した劣化対応情報T2に更新する(ステップS324)。
【0208】
なお、本開示の第1の実施の形態に係るマスタ装置100では、取得部40は、車両1の外部における装置であるサーバ400から劣化対応情報T2を取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。取得部40は、たとえばDoIP(Diagnostics over Internet Protocol)により車載ネットワーク310に接続された外部装置から劣化対応情報T2を取得する構成であってもよい。
【0209】
また、取得部40は、車両1における自己のマスタ装置100以外の車載装置から劣化対応情報T2を取得する構成であってもよい。
【0210】
また、本開示の第1の実施の形態に係るマスタ装置100では、取得部40は、対象ケーブル3の特性と、対象ケーブル3の劣化度合いとの対応関係を示す劣化対応情報T2を劣化情報として取得する構成であるとしたが、これに限定するものではない。取得部40は、対象ケーブル3の特性の変化量と、対象ケーブル3の劣化度合いとの対応関係を示す情報を劣化情報として取得する構成であってもよい。
【0211】
また、本開示の第1の実施の形態に係るサーバ400では、判別部420は、特性の測定結果、温度情報、車両1の所定の状況からの経過時間、搭載位置情報、位置情報、気象情報および品質情報に基づいて判別処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。判別部420は、搭載位置情報、位置情報、気象情報および品質情報の一部または全部を判別処理に用いない構成であってもよい。
【0212】
ところで、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することが可能な技術が望まれる。
【0213】
たとえば、シェアカーの普及および自動運転技術の普及により、個人所有車の稼働率が現在の約5%を超えて増大し、自動車部品のライフサイクルが短くなることが予想される。そこで、車載ネットワークにおける伝送路の劣化度合いを正確に判断することが可能な技術、および車載ネットワークにおける伝送路の異常の要因を正確に判別することが可能な技術が望まれる。
【0214】
これに対して、本開示の第1の実施の形態に係るマスタ装置100では、測定部30は、車両1に搭載される車載ネットワーク310における伝送路2の特性を測定する。取得部40は、測定部30によって測定された特性に対応する、伝送路2の劣化に関する情報である劣化情報を取得する。判断部50は、測定部30によって測定された特性および取得部40によって取得された劣化情報に基づいて、伝送路2の劣化度合いを判断する。
【0215】
また、本開示の第1の実施の形態に係る劣化判断方法は、車両1に搭載されるマスタ装置100における劣化判断方法である。この劣化判断方法では、まず、マスタ装置100が、車両1に搭載される車載ネットワーク310における伝送路2の特性を測定する。次に、マスタ装置100が、測定した特性に対応する、伝送路2の劣化に関する情報である劣化情報を取得する。次に、マスタ装置100が、測定した特性および取得した劣化情報に基づいて、伝送路2の劣化度合いを判断する。
【0216】
このように、劣化情報として、たとえば伝送路の特性の測定結果に基づいて識別可能な伝送路の製造元等に対応する劣化情報を取得し、測定結果および取得した劣化情報に基づいて伝送路の劣化度合いを判断する構成および方法により、たとえば伝送路の製造元ごとに、伝送路の劣化度合いを正確に判断することができる。
【0217】
したがって、本開示の第1の実施の形態に係るマスタ装置および劣化判断方法では、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0218】
また、本開示の第1の実施の形態に係るサーバ400では、取得部410は、車両1に搭載される車載ネットワークにおける伝送路2の特性の測定結果、伝送路2に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および車両1の所定の状況からの経過時間を取得する。判別部420は、取得部410によって取得された、測定結果、温度情報および経過時間に基づいて、伝送路2の異常の要因を判別する判別処理を行う。
【0219】
また、本開示の第1の実施の形態に係る異常要因判別方法は、サーバ400における異常要因判別方法である。この異常要因判別方法では、まず、サーバ400が、車両1に搭載される車載ネットワーク310における伝送路2の特性の測定結果、伝送路2に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および車両1の所定の状況からの経過時間を取得する。次に、サーバ400が、取得した測定結果、温度情報および経過時間に基づいて、伝送路2の異常の要因を判別する判別処理を行う。
【0220】
このように、伝送路の特性の測定結果、温度情報および経過時間に基づいて伝送路の異常の要因を判別する構成および方法により、たとえば高温環境下における劣化および経年劣化等の異常の要因を正確に判別することができる。
【0221】
したがって、本開示の第1の実施の形態に係るサーバおよび異常要因判別方法では、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0222】
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0223】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る通信システムと比べて、対象ケーブル3の特性の変化を検知し、変化の要因を判別する判別処理を行う通信システムに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る車載通信システムと同様である。
【0224】
[マスタ装置]
図11は、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置の構成を示す図である。
【0225】
図11を参照して、マスタ装置101は、通信部10と、処理部20と、測定部31と、検知部70と、判別部80と、記憶部60と、通信ポート91A,91Bと、フロントエンド回路92A,92Bとを備える。
【0226】
通信部10、処理部20、測定部31、検知部70および判別部80は、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサによって実現される。記憶部60は、たとえばフラッシュメモリである。
【0227】
測定部31の動作および機能は、生成した測定情報を検知部70および判別部80へ出力すること以外は、第1の実施の形態に係るマスタ装置100における測定部30の動作および機能と同様である。
【0228】
記憶部60は、対象ケーブル3を介して自己のマスタ装置100における通信ポート91に接続される1または複数のスレーブ装置200の各々のスレーブIDを、通信ポート91ごとに記憶している。
【0229】
[検知部]
検知部70は、測定部31による対象ケーブル3の特性の測定結果に基づいて、車載ネットワーク310のトポロジの変化を検知する。
【0230】
より詳細には、検知部70は、測定部30から測定情報を受けると、受けた測定情報に含まれるスレーブIDを取得し、取得したスレーブIDと記憶部60におけるスレーブIDとを比較し、比較結果に基づいて、車載ネットワーク310のトポロジの変化の有無を判断する。
【0231】
検知部70は、測定情報から取得したスレーブIDが記憶部60におけるスレーブIDと異なる場合、車載ネットワーク310のトポロジの変化として、自己のマスタ装置100における通信ポート91に接続される車載装置が変更されたことを検知する。
【0232】
具体的には、たとえば、検知部70は、対象ケーブル3を介して、自己のマスタ装置100における通信ポート91に接続されていたスレーブ装置200の代わりに、他のスレーブ装置200が接続されたと判断する。
【0233】
あるいは、検知部70は、対象ケーブル3を介して自己のマスタ装置100における通信ポート91に接続されていたスレーブ装置200の代わりに、他の対象ケーブル3を介して他のスレーブ装置200が接続されたと判断する。
【0234】
検知部70は、測定部30から測定情報を受けるたびに、受けた測定情報に基づくトポロジの変化の検知結果を判別部80へ通知する。
【0235】
たとえば、検知部70は、自己のマスタ装置100における通信ポート91に他のスレーブ装置200が接続されたことを検知すると、トポロジ変化が検知された旨および当該他のスレーブ装置200のスレーブIDを含む検知情報を判別部80へ出力する。
【0236】
また、検知部70は、記憶部60における対応のスレーブIDを、自己のマスタ装置100における通信ポート91に接続された当該他のスレーブ装置200のスレーブIDに更新する。
【0237】
一方、検知部70は、自己のマスタ装置100に他のスレーブ装置200が接続されていないと判断した場合、すなわち測定情報から取得したスレーブIDが記憶部60におけるスレーブIDと一致した場合、トポロジ変化が検知されなかった旨を示す検知情報を判別部80へ出力する。
【0238】
[判別部]
判別部80は、測定部31における特性の測定結果に基づいて、対象ケーブル3の特性の変化を検知し、変化の要因を判別する判別処理を行う。
【0239】
より詳細には、判別部80は、測定部31から測定情報を受けると、受けた測定情報に含まれる対象ケーブル3の特性の測定結果を取得し、取得した測定結果を時系列データの1つとして記憶部60に蓄積する。
【0240】
また、判別部80は、測定部31から測定情報を受けると、受けた測定情報から取得した測定結果を、記憶部60に蓄積された時系列データにおける直近の測定結果と比較し、比較結果に基づいて、対象ケーブル3の特性の変化を検知する。
【0241】
たとえば、判別部80は、測定情報から取得した測定結果と、記憶部60における直近の測定結果との差分を算出し、算出した差分が所定のしきい値以上である場合、対象ケーブル3の特性が変化したと判断し、判別処理を行う。
【0242】
たとえば、記憶部60は、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化量に関するしきい値ThAと、対象ケーブル3の特性インピーダンスの絶対値に関するしきい値ThB,ThCとを記憶している。なお、しきい値ThCは、しきい値ThBより大きいものとする。
【0243】
判別部80は、測定情報から取得した特性インピーダンスの測定結果と、記憶部60における直近の特性インピーダンスの測定結果との差分D1を算出し、差分D1がしきい値ThAより大きい場合、対象ケーブル3の特性インピーダンスが変化したと判断し、判別処理を行う。
【0244】
(判別処理)
たとえば、判別部80は、判別処理において、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因の複数の候補の中から1または複数の候補を選択する。
【0245】
たとえば、判別部80は、判別処理において、車載ネットワーク310のトポロジの変更である「トポロジ変更」、不正な車載装置の接続である「不正接続」、車載装置の故障である「車載装置故障」、および対象ケーブル3の断線または短絡である「ケーブル異常」の中から、1または複数の候補を選択する。以下、「トポロジ変更」、「不正接続」、「車載装置故障」および「ケーブル異常」の各々を、要因候補とも称する。
【0246】
たとえば、判別部80は、車両1が走行している場合、要因候補の一部を選択対象から除外する。より詳細には、判別部80は、車両1が走行している場合、要因候補のうち、所定要因たとえば「トポロジ変更」および「不正接続」を選択対象から除外する。
【0247】
より詳細には、判別部80は、車両1に搭載される図示しない速度センサ等による計測結果に基づいて、車両1が走行していると判断した場合、要因候補のうち、「トポロジ変更」および「不正接続」を選択対象から除外する。
【0248】
そして、判別部80は、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、たとえば、「トポロジ変更」および「不正接続」以外の要因候補の中から、「車載装置故障」および「ケーブル異常」の2つの候補を選択する。
【0249】
(判別結果の例1)
判別部80は、検知部70によって車載ネットワーク310のトポロジの変化が検知された場合、測定部31における特性インピーダンスの測定結果に関わらず、変化の要因は所定要因であると判別する。
【0250】
より詳細には、判別部80は、検知部70からトポロジ変化が検知された旨を示す検知情報を受けた場合、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、要因候補の中から、トポロジ変更および不正接続の2つの候補を選択する。
【0251】
(判別結果の例2)
判別部80は、検知部70からトポロジ変化が検知されなかった旨を示す検知情報を受けた場合、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、要因候補の中から、不正接続、車載装置故障、およびケーブル異常の3つの候補を選択する。
【0252】
(判別結果の例3)
判別部80は、検知部70からトポロジ変化が検知されなかった旨を示す検知情報を受けた場合であって、測定部31から受けた測定情報にスレーブIDが含まれておらず、かつ測定情報から取得した特性インピーダンスの測定結果がしきい値ThB未満またはしきい値ThCより大きい場合、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、要因候補の中から、車載装置故障およびケーブル異常の2つの候補を選択する。この場合において、特に、判別部80は、測定情報から取得した特性インピーダンスの測定結果がしきい値ThB未満である場合、対象ケーブル3が短絡している可能性があると判断し、測定情報から取得した特性インピーダンスの測定結果がしきい値ThCより大きい場合、対象ケーブル3が断線している可能性があると判断する。
【0253】
(判別結果の通知)
判別部80は、判別処理において、要因候補の中から1または複数の候補を選択すると、判別結果すなわち候補の選択結果を通信部10へ通知するとともに、当該選択結果を車両1における表示または音声出力によってユーザへ通知する。
【0254】
たとえば、通信部10は、車載装置故障およびケーブル異常を示す選択結果の通知を判別部80から受けると、対象ケーブル3を介した通信を停止するとともに、他のイーサネットケーブル3を含む冗長経路を介した通信を開始する。
【0255】
また、判別部80は、判別処理において、要因候補の中から1または複数の候補を選択すると、判別結果すなわち候補の選択結果を含む選択情報を通信部10およびTCU150経由でサーバ400へ送信する。
【0256】
たとえば、サーバ400は、トポロジ変更および不正接続を示す選択結果を含む選択情報を判別部80から受信すると、当該要因を正当なトポロジ変更および不正接続のいずれか一方に特定する。サーバ400は、特定結果を示す特定情報を、無線基地局装置402およびTCU150経由で車載通信システム300におけるマスタ装置101へ送信する。たとえば、サーバ400は、当該要因を正当なトポロジ変更に特定すると、劣化対応情報T2を無線基地局装置402およびTCU150経由でマスタ装置100へ送信する。
【0257】
通信部10は、無線基地局装置402およびTCU150経由でサーバ400から特定情報を受信すると、受信した特定情報に含まれる特定結果を取得する。
【0258】
通信部10は、取得した特定結果が示す対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因が、正当なトポロジ変更である場合、車載ネットワーク310のトポロジが変更された旨を車両1における表示または音声出力によってユーザへ通知する。
【0259】
一方、通信部10は、取得した特定結果が示す対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因が、不正接続である場合、処理部20から受けたイーサネットフレームのスレーブ装置200への送信、およびスレーブ装置200から受信したイーサネットフレームの処理部20への出力を停止する。
【0260】
[動作の流れ]
図12は、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システムにおけるマスタ装置が対象ケーブルの特性の変化の要因を判別する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0261】
図12を参照して、まず、マスタ装置101は、車両1のアクセサリー電源オン等の所定の測定契機を待ち受け(ステップS302でNO)、所定の測定契機において(ステップS302でYES)、対象ケーブル3の特性たとえば特性インピーダンスを測定する(ステップS304)。
【0262】
次に、マスタ装置101は、対象ケーブル3の特性インピーダンスの測定結果に基づいて、車載ネットワーク310のトポロジの変化の有無を判断する(ステップS306)。
【0263】
次に、マスタ装置101は、特性インピーダンスの測定結果と、直近の特性インピーダンスの測定結果との差分D1を算出し、算出した差分D1としきい値ThAとを比較する(ステップS308)。
【0264】
次に、マスタ装置101は、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化量を示す差分D1がしきい値ThA以下である場合(ステップS310でNO)、新たな測定契機を待ち受ける(ステップS302でNO)。
【0265】
一方、マスタ装置101は、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化量を示す差分D1がしきい値ThAより大きい場合(ステップS310でYES)、対象ケーブル3の特性インピーダンスが変化したと判断し、判別処理を行う(ステップS312)。
【0266】
次に、マスタ装置101は、判別処理による判別結果をサーバ等へ通知する(ステップS314)。
【0267】
次に、マスタ装置101は、新たな測定契機を待ち受ける(ステップS302でNO)。
【0268】
図13は、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システムにおけるマスタ装置が判別処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図13のフローチャートは、図12におけるステップS312の詳細を示している。
【0269】
図13を参照して、まず、マスタ装置101は、車両1が走行中であるか否かを判断する(ステップS402)。
【0270】
次に、マスタ装置101は、車両1が走行中であると判断した場合(ステップS404でYES)、要因候補のうち、「トポロジ変更」および「不正接続」を選択対象から除外し、対象ケーブル3の特性たとえば特性インピーダンスの変化の要因として、たとえば、「車載装置故障」および「ケーブル異常」の2つの候補を選択する(ステップS406)。
【0271】
一方、マスタ装置101は、車両1が走行中ではないと判断し(ステップS404でNO)、かつ車載ネットワーク310のトポロジの変化が検知された場合(ステップS408でYES)、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、「トポロジ変更」および「不正接続」の2つの候補を選択する(ステップS410)。
【0272】
一方、マスタ装置101は、車両1が走行中ではないと判断し(ステップS404でNO)、かつ車載ネットワーク310のトポロジの変化が検知されなかった場合(ステップS408でNO)、特性インピーダンスの測定結果としきい値ThBとを比較する(ステップS412)。
【0273】
次に、マスタ装置101は、特性インピーダンスの測定結果がしきい値ThBより小さい場合(ステップS414でYES)、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、「車載装置故障」および「ケーブル異常」の2つの候補を選択する(ステップS416)。
【0274】
一方、マスタ装置101は、特性インピーダンスの測定結果がしきい値ThB以上である場合(ステップS414でNO)、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、「不正接続」、「車載装置故障」および「ケーブル異常」の3つの候補を選択する(ステップS418)。
【0275】
なお、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置101では、判別部80は、判別処理において、トポロジ変更、不正接続、車載装置故障、およびケーブル異常の中から1または複数の候補を選択する構成であるとしたが、これに限定するものではない。判別部80は、トポロジ変更、不正接続、車載装置故障およびケーブル異常以外を、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として特定する構成であってもよい。
【0276】
また、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置101では、判別部80は、検知部70から検知情報を受けた場合、測定部31における特性インピーダンスの測定結果に関わらず、対象ケーブル3の特性インピーダンスの変化の要因として、要因候補の中から、トポロジ変更および不正接続の2つの候補を選択する構成であるとしたが、これに限定するものではない。判別部80は、特性インピーダンスの測定結果および検知情報に基づいて、トポロジ変更および不正接続以外の他の候補を選択する構成であってもよい。
【0277】
また、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置101は、検知部70を備えない構成であってもよい。
【0278】
また、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置101では、判別部80は、車両1が走行している場合、要因候補の一部を選択対象から除外する構成であるとしたが、これに限定するものではない。判別部80は、車両1が走行している場合であっても、要因候補の一部を選択対象から除外することなく、すべての要因候補の中から1または複数の候補を選択する構成であってもよい。
【0279】
また、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置101では、判別部80は、車両1が走行している場合、要因候補のうち「トポロジ変更」および「不正接続」を選択対象から除外する構成であるとしたが、これに限定するものではない。判別部80は、車両1が走行している場合であっても、「トポロジ変更」および「不正接続」の少なくともいずれか一方を選択対象から除外しない構成であってもよい。
【0280】
ところで、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することが可能な技術が望まれる。
【0281】
たとえば、シェアカーの普及により、自動車部品のライフサイクルが短くなることが予想されるだけでなく、不特定多数のユーザが利用するシェアカーにおいて、車載ネットワークに不正な車載装置が接続されることが想定される。そこで、車載ネットワークにおける伝送路の特性が変化した場合に、変化の要因を正確に判別することが可能な技術が望まれる。
【0282】
これに対して、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置101では、測定部30は、車両1に搭載される車載ネットワーク310における伝送路2の特性を測定する。判別部80は、測定部30による特性の測定結果に基づいて、特性の変化を検知し、変化の要因を判別する判別処理を行う。
【0283】
また、本開示の第2の実施の形態に係る変化要因判別方法は、車両1に搭載されるマスタ装置101における変化要因判別方法である。この変化要因判別方法では、まず、マスタ装置101が、車両1に搭載される車載ネットワーク310における伝送路2の特性を測定する。次に、マスタ装置101が、特性の測定結果に基づいて、特性の変化を検知し、変化の要因を判別する判別処理を行う。
【0284】
このように、伝送路の特性の測定結果に基づいて、伝送路の特性の変化の要因を判別する構成および方法により、たとえば伝送路の断線および伝送路の長さの変化等を、伝送路の特性の変化の要因として正確に判別することができる。
【0285】
したがって、本開示の第2の実施の形態に係るマスタ装置および変化要因判別方法では、車載ネットワークにおける伝送路に関する優れた機能を実現することができる。
【0286】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0287】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記特性に対応する、前記伝送路の劣化に関する情報である劣化情報を取得する取得部と、
前記測定部によって測定された前記特性および前記取得部によって取得された前記劣化情報に基づいて、前記伝送路の劣化度合いを判断する判断部とを備え、
前記取得部は、前記特性と、前記劣化度合いとの対応関係を示す劣化対応情報を前記劣化情報として取得し、
前記取得部は、前記伝送路の製造元および前記伝送路の配索状態ごとの複数の前記特性に対応する複数の前記劣化対応情報のうち、前記測定部によって測定された前記特性に対応する前記劣化対応情報を取得する、車載装置。
【0288】
[付記2]
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性を測定する測定部と、
前記測定部による前記特性の測定結果に基づいて、前記特性の変化を検知し、前記変化の要因を判別する判別処理を行う判別部とを備え、
前記判別部は、前記判別処理において、前記要因の候補である、前記車載ネットワークのトポロジの変更、前記車載装置と不正な車載装置との接続、前記車載装置の故障、および前記伝送路の異常の中から、1または複数の候補を選択する、車載装置。
【0289】
[付記3]
車両に搭載される車載ネットワークにおける伝送路の特性の測定結果、前記伝送路に接続された車載装置の温度を示す温度情報、および前記車両の所定の状況からの経過時間を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された、前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記伝送路の異常の要因を判別する判別処理を行う判別部とを備え、
前記判別部は、複数の前記車両の各々における、前記測定結果、前記温度情報および前記経過時間に基づいて、前記複数の車両のうち少なくともいずれか1つの前記車両における前記伝送路の異常の要因を判別する、管理装置。
【符号の説明】
【0290】
1 車両
2 伝送路
3 イーサネットケーブル
10 通信部
20 処理部
30 測定部
31 測定部
40 取得部
50 判断部
60 記憶部
70 検知部
80 判別部
91 通信ポート
92 フロントエンド回路
100 マスタ装置
101 マスタ装置
110 スイッチ装置
120 ミリ波センサ
121 温度センサ
130 自動運転ECU
140 運転制御ECU
150 TCU
160 位置検出装置
200 スレーブ装置
300 車載通信システム
310 車載ネットワーク
400 サーバ
401 外部ネットワーク
402 無線基地局装置
410 取得部
420 判別部
430 配信部
440 記憶部
500 通信システム
図1
図2
図3
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図5
図6
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