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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ペダル装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20241119BHJP
   G05G 7/04 20060101ALI20241119BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G05G1/30 E
G05G7/04 A
B60K23/02 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022006958
(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公開番号】P2023105924
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】竹中 徹宏
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 彩乃
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-074926(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
G05G 7/04
B60K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって操作されるペダルと、前記ペダルに付勢力を付与して前記ペダルの操作力を低減するねじりコイルばねとを備え、前記ねじりコイルばねの二つのアームをそれぞれ前記ペダルおよび前記ペダルと別体の支持部材に取り付けて前記ペダルにプレロードを付与し、前記プレロードおよび前記ねじりコイルばねのばね特性に対応して前記ペダルの操作特性が定まるペダル装置であって
前記アームを取り付ける部分の位置または形状が異なる複数の取付部位を備えており、
いずれかの前記取付部位を選択して前記アームを取り付け、前記プレロードを設定するとともに、
前記アームを取り付ける前記取付部位を変更して、前記プレロードを変化させ、
前記ペダルと別体の部材であって、一方の前記アームを保持するとともに、保持した前記アームと共に前記支持部材に支持されるスプリングホールドを備え、
前記スプリングホールドに、前記複数の取付部位が形成されており、
前記支持部材に対する前記スプリングホールドの姿勢を変えて、前記アームを取り付ける前記取付部位を変更する
ことを特徴とするペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、クラッチペダルやブレーキペダル等のペダル装置であって、特に、ねじりコイルばねを用いてペダルの操作力(踏力)を軽減するように構成したペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを駆動力源とし、マニュアルトランスミッションを搭載した車両では、エンジンとマニュアルトランスミッションとの間の動力伝達を選択的に遮断するクラッチが設けられる。クラッチは、クラッチペダルを介して運転者によって操作される。すなわち、運転者によるクラッチペダルの踏み込み操作により、クラッチが解放側に動作する。そのような車両のクラッチペダルを対象にしたペダル装置が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたペダル装置は、車体側部材に支持されるクラッチペダルに対してそれぞれ反力を付与する、リターンスプリング、および、アシストスプリングを備えている。リターンスプリングは、クラッチペダルに戻り方向の反力を付与する。アシストスプリングは、クラッチペダルのセット位置(初期位置)からターンオーバー位置までの間は、クラッチペダルに戻り方向の反力を付与する。それとともに、アシストスプリングは、クラッチペダルがターンオーバー位置を超えてからは、クラッチペダルに踏み込み方向のアシスト力を付与する。そのアシストスプリングは、コイル部、および、一対の腕部(アーム)を有するねじりコイルばねによって構成されている。そして、特許文献1に記載されたペダル装置は、アシストスプリングが圧縮される際のスプリング倒れを防止するために、車体側部材側でアシストスプリングの腕部を保持する円筒状の車体側スプリング保持部材(固定点側のスプリングホールド)、および、クラッチペダル側でアシストスプリングの腕部を保持する円筒状のペダル側スプリング保持部材(荷重点側のスプリングホールド)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-65456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなマニュアルトランスミッションを搭載した車両では、エンジンの高出力・高トルク化に伴い、クラッチ荷重が増大すると、そのクラッチを操作するためのクラッチペダルの踏力(クラッチペダルを操作する際の操作力)が増大する。そのようなクラッチペダルの踏力を軽減するために、例えば、上記の特許文献1に記載されたペダル装置のようなねじりコイルばねによって構成したリターンスプリングが設けられる。リターンスプリングは、上記のように、クラッチペダルに対して、戻り方向および踏み込み方向の両方向の反力を付与するとともに、その反力の方向が切り替わるポイント、すなわち、ターンオーバー位置を設定する。そのため、上記の特許文献1に記載されたペダル装置では、リターンスプリングの特性に対応して、クラッチペダルのペダル特性または操作特性(クラッチペダルを操作する際の操作量またはストロークに対する踏力の関係)が決まる。リターンスプリングの特性は、基本的に、リターンスプリングを構成するねじりコイルばねのばね特性(ねじりコイルばねの荷重に対する変形量の関係)によって一義的に決まる。したがって、上記の特許文献1に記載されたペダル装置では、例えば、クラッチの仕様変更に伴ってクラッチペダルのペダル特性を変更する場合や、クラッチペダルのペダル特性をチューニングする際には、リターンスプリングをばね特性が異なる他のねじりコイルばねに交換しなければならない。そのため、容易にクラッチペダルのペダル特性の変更やチューニングを行うことができない。また、ねじりコイルばねの交換に伴い、それに付随する他の部品の仕様変更や新設等が必要になってしまい、その結果、コストアップを招いてしまうおそれがある。
【0005】
この発明は、上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、部品の交換や新設等によるコストアップを招くことなく、容易に、ペダル特性または操作特性を変更することが可能なペダル装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、運転者によって操作されるペダルと、前記ペダルに付勢力を付与して前記ペダルの操作力を低減するねじりコイルばねとを備え、前記ねじりコイルばねの二つのアームをそれぞれ前記ペダルおよび前記ペダルと別体の支持部材に取り付けて前記ペダルにプレロードを付与し、前記プレロードおよび前記ねじりコイルばねのばね特性に対応して前記ペダルの操作特性が定まるペダル装置であって、前記アームを取り付ける部分の位置または形状が異なる複数の取付部位を備えており、いずれかの前記取付部位を選択して前記アームを取り付け、前記プレロードを設定するとともに、前記アームを取り付ける前記取付部位を変更して、前記プレロードを変化させ、前記ペダルと別体の部材であって、一方の前記アームを保持するとともに、保持した前記アームと共に前記支持部材に支持されるスプリングホールドを備え、前記スプリングホールドに、前記複数の取付部位が形成されており、前記支持部材に対する前記スプリングホールドの姿勢を変えて、前記アームを取り付ける前記取付部位を変更することを特徴とするものである。
【0008】
なお、この発明における前記スプリングホールドに形成された少なくとも一つの前記取付部位は、取り付けられる前記アームとの接触部が前記操作力の変化に応じて、連続的に変化するように形成されていてもよい。
【0009】
また、この発明は、前記ペダルに、前記複数の取付部位が前記ペダルと一体に形成されていてもよく、その場合に、この発明は、前記ペダルと別体の部材であって、他方の(すなわち、前記荷重点側の)前記アームを保持するとともに、保持した前記アームと共に前記ペダルに支持される他の(支持部材側のスプリングホールドと異なる)スプリングホールドを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明のペダル装置は、ペダルに付勢力を付与して、ペダルの操作力または踏力、すなわち、ペダルを操作する際に必要な力を低減するためのねじりコイルばねを備えている。ねじりコイルばねは、ペダルにプレロードが掛かる状態で、例えば車両の車体側の支持部材とペダルとの間に取り付けられている。具体的には、ねじりコイルばねの一方のアームが、固定点側のアームとして支持部材に取り付けられ、ねじりコイルばねの他方のアームが、荷重点側のアームとしてペダルに取り付けられている。それにより、この発明のペダル装置は、ねじりコイルばねによって付与されるプレロードの大きさ、および、ねじりコイルばねのばね特性に対応して、ペダルの操作特性あるいはペダル特性が設定される。この発明のペダル装置において、ねじりコイルばねのばね特性は、ねじりコイルばねの荷重に対する変形量あるいはたわみ量の関係によって定められる。また、ペダルの操作特性(または、ペダル特性)は、ペダルを操作する際の操作量あるいはストロークに対するペダルの操作力あるいは踏力の関係によって定められる。そして、この発明のペダル装置では、ねじりコイルばねの二つのアームを、それぞれ、支持部材およびペダルに取り付ける取付部位が複数箇所設けられている。それら複数の取付部位は、ねじりコイルばねのアームを取り付ける部分の位置または形状がいずれも異なっている。それら複数の取付部位から選択したいずれかの取付部位にねじりコイルばねのアームを取り付けることにより、その選択した取付部位に応じて、ペダルに作用するねじりコイルばねのプレロードが決まる。ねじりコイルばねのばね特性は固有値であるので、結局、ねじりコイルばねのプレロードの大きさに応じて、すなわち、ねじりコイルばねのアームを取り付けた取付部位に応じて、ペダルの操作特性が設定される。更に、この発明のペダル装置の実使用段階において、上記のようにねじりコイルばねのアームを取り付ける取付部位を変更すること、すなわち、取付部位を変えてねじりコイルばねのアームを取り付け直すことにより、ペダルに作用するねじりコイルばねのプレロードの大きさを変化させることができる。そのため、容易に、ペダルの操作特性を変更することができる。
【0011】
また、この発明のペダル装置では、ねじりコイルばねのアームを取付部位に取り付ける際に、スプリングホールドが用いられる。スプリングホールドは、ねじりコイルばねのアームを保持するとともに、そのアームを保持した状態で、支持部材あるいはペダルに支持される。そのようなスプリングホールドを用いることにより、ねじりコイルばねのアームの先端部を延長することができる。そのため、ねじりコイルばねのアームに大きな荷重がかかる際に、アームの倒れを抑制するとともに、アームと、スプリングホールドにおけるアームの保持部分との接触部分の面圧を低減することができる。また、スプリングホールドは、例えば耐摩耗性に優れた樹脂材料によって形成される。それにより、取付部位の耐摩耗性を向上させることができ、ひいては、この発明のペダル装置の耐久性を向上させることができる。
【0012】
更に、この発明のペダル装置では、特に、支持部材側に取り付けるスプリングホールドに、上記のようにねじりコイルばねのアームを取り付ける部分の位置または形状が異なる複数の取付部位が形成されている。そして、支持部材に対するスプリングホールドの姿勢を変えること、例えば、支持部材に対するスプリングホールドの向きまたは角度を変えること、あるいは、支持部材に対するスプリングホールドの配置位置を変えることにより、スプリングホールドに形成された複数の取付部位からいずれかの取付部位が選択される。そして、その選択した取付部位に、ねじりコイルばねのアームと共にスプリングホールドが取り付けられる。そのため、上記のように支持部材に対するスプリングホールドの姿勢を変えるだけで、容易に、ペダルに作用するねじりコイルばねのプレロードの大きさを変化させることができる。すなわち、ペダルの操作特性を変更することができる。
【0013】
したがって、この発明のペダル装置によれば、部品の交換や新設等によるコストアップを招くことなく、容易に、ペダルの操作特性を変更することができる。すなわち、ペダルの操作特性を容易にチューニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明のペダル装置の一例を説明するための図であって、この発明のペダル装置を適用したクラッチペダルの概略の構成を示す図である。
図2】この発明のペダル装置におけるねじりコイルばねを説明するための図であって、(a)は、標準的な形状のねじりコイルばねを示す図であり、(b)は、ねじりコイルばねのアームの先端部を延長した(延長部を設けた)形状のねじりコイルばねを示す図である。
図3】この発明のペダル装置の特徴的な構成を説明するための図であって、この発明のペダル装置におけるペダル側の複数の取付部位、および、その取付部位に取り付けられたスプリングホールドの一例(ペダル側の取付部位に設けたU字形状のスプリングホールド)を示す図である。
図4図3で示したペダル側の取付部位、および、ペダル側のU字形状のスプリングホールドの具体的な形状を示す斜視図である。
図5】この発明のペダル装置の作用を説明するための図であって、(a)は、ペダル側の標準的な取付部位にねじりコイルばねのアームを取り付けた状態を示す図であり、(b)は、ペダル側の標準的な取付部位よりもプレロードが大きくなる取付部位にねじりコイルばねのアームを取り付けた状態を示す図である。
図6】この発明のペダル装置の特徴的な構成を説明するための図であって、この発明のペダル装置におけるペダル側の複数の取付部位、および、その取付部位に取り付けられたスプリングホールドの他の例(ペダル側の取付部位に設けた円筒形状のスプリングホールド)を示す図である。
図7図6で示したペダル側の円筒形状のスプリングホールドの具体的な形状を示す図であって、(a)は、単純な円筒形状のスプリングホールドを示す図であり、(b)は、大径のストッパを設けたスプリングホールドを示す図である。
図8】この発明のペダル装置の特徴的な構成を説明するための図であって、この発明のペダル装置における支持部材(車体側)に支持されるスプリングホールド、および、そのスプリングホールドに形成された複数の取付部位の一例(支持部材に対するスプリングホールドの姿勢を変えて、ねじりコイルばねのアームを取り付ける取付部位、および、プレロードを変更する例)を示すとともに、この発明のペダル装置の作用を説明するための図であって、(a)は、支持部材(車体)側のスプリングホールドに形成された標準的な取付部位にねじりコイルばねのアームを取り付けた状態を示す図であり、(b)は、支持部材(車体)側のスプリングホールドに形成された標準的な取付部位よりもプレロードが大きくなる取付部位にねじりコイルばねのアーム取り付けた状態を示す図である。
図9図8で示した支持部材(車体)側のスプリングホールドの具体的な形状を示す図である。
図10図8図9で示した支持部材(車体)側のスプリングホールドの具体的な形状を示す図であって、ねじりコイルばねのアームを保持するためにスプリングホールドに形成された差し込み孔を示す斜視図である。
図11】この発明のペダル装置における支持部材(車体)側のスプリングホールドの他の例(半径が異なる大小の円筒部を組み合わせて形成したスプリングホールド)を示す図である。
図12】この発明のペダル装置の特徴的な構成を説明するための図であって、この発明のペダル装置における支持部材(車体側)に支持されるスプリングホールド、および、そのスプリングホールドに形成された複数の取付部位の他の例(支持部材に対するスプリングホールドの姿勢を変えて、ねじりコイルばねのアームを取り付ける取付部位、および、レバー比を変更する例)を示すとともに、この発明のペダル装置の作用を説明するための図であって、(a)は、支持部材(車体)側のスプリングホールドに形成された標準的な取付部位にねじりコイルばねのアームを取り付けた状態を示す図であり、(b)は、支持部材(車体)側のスプリングホールドに形成された標準的な取付部位よりもレバー比が大きくなる(プレロードが大きくなる)取付部位にねじりコイルばねのアーム取り付けた状態を示す図である。
図13図12で示した支持部材(車体)側のスプリングホールドの具体的な形状を示す図である。
図14図12図13で示した支持部材(車体)側のスプリングホールドの他の例(スプリングホールドと、スプリングホールドに取り付けられるねじりコイルばねのアームとの接触部がペダルの操作力の変化に応じて連続的に変化するように形成したスプリングホールド)を示す図である。
図15】この発明のペダル装置の効果を説明するための図であって、ペダル踏力とペダルストロークとの関係を示す線図上で、ペダル踏力の低減、および、ターンオーバー点の変更(チューニング)等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0016】
図1に、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1の概略の構成を示してある。クラッチペダル1は、従来の“クラッチペダル”と基本的な部分は同じ構成である。図1に示す例では、クラッチペダル1は、主に、支持部材2、ペダルアーム部3、ペダル部4、マスターシリンダ5、補助付勢機構6、および、ねじりコイルばね7を備えている。
【0017】
支持部材2は、車体(図示せず)と一体の、または、車体に支持される固定部である。図1に示す例では、支持部材2と一体に形成された、または、支持部材2に支持される支持軸部2aを有している。支持軸部2aは、後述するクラッチペダル1のペダルアーム部3を回転可能に支持している。
【0018】
ペダルアーム部3は、クラッチペダル1の基体部分を構成する部材であり、上記のように、車体側の支持軸部2aに回転可能に支持されている。図1に示す例では、ペダルアーム部3は、第1ペダルアーム部3a、および、第2ペダルアーム部3bの二つの部材から構成されている。第1ペダルアーム部3aは、ペダルアーム部3の主要部分であり、一方の端部(図1の上側の端部)で、支持軸部2aに支持されている。それとともに、第1ペダルアーム部3aは、他方の端部(図1の下側の端部)に、後述するペダル部4を有している。第2ペダルアーム部3bは、一方の端部(図1の左上側の端部)で、第1ペダルアーム部3aと共に、支持軸部2aに支持されている。それとともに、第2ペダルアーム部3bは、その中間部分に、後述するマスターシリンダ5が連結されている。そして、第2ペダルアーム部3bは、他方の端部(図1の右下側の端部)に、後述するねじりコイルばね7の取付部位8が形成されている。第1ペダルアーム部3aと第2ペダルアーム部3bとは、互いに相対回転することなく、支持軸部2aを中心にして一体に回転する。
【0019】
ペダル部4は、クラッチペダル1が運転者によって踏み込み操作される部分であって、上記のように、第1ペダルアーム部3aの他方の端部に、一体に形成されている。または、第1ペダルアーム部3aの他方の端部に、一体に取り付けられている。
【0020】
マスターシリンダ5は、シリンダ5a、および、ピストン5b(図1では、ロッド部分のみを示す)から構成されている。シリンダ5aは、車体側の支持部材2に、ピン5cを介して揺動可能に支持されている。ピストン5bは、シリンダ5a内に収納され、そのピストン5bにクラッチペダル1のクラッチ操作角度に応じた変位が生じるように、第2ペダルアーム部3bにピン5dを介して係合されている。マスターシリンダ5は、クラッチペダル1が運転者によって踏み込み操作されることにより、シリンダ5aとピストン5bの間の加圧室(図示せず)内の作動油を加圧し、その油圧を、クラッチ(図示せず)のレリーズシリンダ(図示せず)側に供給するように構成されている。
【0021】
補助付勢機構6は、車体側の支持部材2に揺動可能に支持された嵌合部材6a、クラッチペダル1に揺動可能に支持されるとともに嵌合部材6aに摺動可能に嵌合する嵌合部材6b、および、嵌合部材6aと嵌合部材6bとの間に設けられ、嵌合部材6bを介してクラッチペダル1に補助付勢力を加える圧縮コイルばね6cから構成されている。嵌合部材6aは、車体側の支持部材2にピン6dを介して揺動可能に係合されている。嵌合部材6bは、クラッチペダル1の長手方向の中間位置にピン6eを介して揺動可能に係合されている。圧縮コイルばね6cは、クラッチペダル11の踏込み操作の初期段階で補助付勢力を発生しないように構成されている。補助付勢機構6は、クラッチペダル1の踏込み操作量が増加するほど、クラッチペダル1を操作開始位置側に復帰させる方向への付勢力を増加させる。
【0022】
そして、ねじりコイルばね7は、“アシストスプリング”や“ターンオーバースプリング”などと称される“付勢機構”であり、クラッチペダル1に付勢力を付与して、クラッチペダル1の操作力、または、踏力(すなわち、クラッチペダル1を操作する際に必要な力)を低減する。ねじりコイルばね7は、図2の(a)に示すように、従来、一般的な形状のものであり、アーム7a、および、アーム7b、ならびに、コイル部7cから構成されている。図1に示す例では、一方のアーム7aは、荷重点側の“アーム”として、クラッチペダル1から荷重が加えられるクラッチペダル1の第2ペダルアーム部3bに取り付けられる。他方のアーム7bは、固定点側の“アーム”として、車体側の支持部材2に取り付けられる。コイル部7cは、ねじりコイルばね7の主要部分であり、アーム7aとアーム7bとの間で付勢力を発生する。そして、ねじりコイルばね7は、アーム7aおよびアーム7bを互いに接近させた状態で、クラッチペダル1および支持部材2に組み付けられている。したがって、ねじりコイルばね7は、その組み付け状態において、アーム7aおよびアーム7bを、互いに離隔させる方向に常時付勢している。すなわち、ねじりコイルばね7は、クラッチペダル1に対してプレロードを付与し、クラッチペダル1の操作力を低減している。
【0023】
また、ねじりコイルばね7は、図1に仮想線(2点鎖線)で示す位置にクラッチペダル1が踏み込まれる際に、第2ペダルアーム部3bの後述する取付部位8に係合するねじりコイルばね7のアーム7bが、支持軸部2aの位置、および、支持部材2に支持されたピン2bの位置、ならびに、ねじりコイルばね7のばね特性、および、ねじりコイルばね7によるプレロードに基づいて規定される所定の平面(ターンオーバー平面:図示せず)を通過するように構成されている。ねじりコイルばね7のばね特性は、ねじりコイルばね7の荷重と、その荷重に対する変形量またはたわみ量との関係によって定められている。これにより、ねじりコイルばね7は、クラッチペダル1の踏込み操作量(ストローク)に応じて、クラッチペダル1の操作開始位置(図1に実線で示す位置)から、ねじりコイルばね7のアーム6bが上記のようなターンオーバー平面を通過するまでは、クラッチペダル1の踏込み操作を助勢する方向の付勢力を発生する。それとともに、ねじりコイルばね7は、ねじりコイルばね7のアーム6bが上記のようなターンオーバー平面を通過した後には、クラッチペダル1を操作開始位置側に復帰させる方向の付勢力を発生する。すなわち、ねじりコイルばね7のばね特性、および、ねじりコイルばね7によるプレロードに対応して、クラッチペダル1のターンオーバー点が設定される。
【0024】
そして、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1は、上記のようなねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付ける部分の位置または形状が異なる複数の取付部位8を備えている。図1では、クラッチペダル1側に形成された取付部位8a、および、取付部位8bの2箇所の取付部位8を示してある。後述するように、支持部材2(車体)側に、複数の取付部位11を備えていてもよい。それら、この発明の実施形態における複数の取付部位8,11について、以下で詳述する。
【0025】
図3図4に、クラッチペダル1側に設けられた複数の取付部位8の例を示してある。前述したように、従来のペダル装置では、例えば、“クラッチ”の仕様変更に伴って“クラッチペダル”のペダル特性(操作特性)を変更する場合や、“クラッチペダル”のペダル特性をチューニングする際には、“リターンスプリング(ねじりコイルばね)”をばね特性が異なる他の“ねじりコイルばね”に交換しなければならなかった。そこで、この発明の実施形態におけるペダル装置Pは、クラッチペダル1のペダル特性の変更やチューニングを容易にするために、複数の取付部位8を設けている。図1図3図4に示す例では、取付部位8a、および、取付部位8bの2箇所の取付部位8が設けられている。なお、この発明の実施形態におけるペダル装置Pでは、取付部位8は、2箇所だけに限定されるものではなく、3箇所以上の取付部位8が設けられていてもよい。
【0026】
取付部位8a,8bは、いずれも、クラッチペダル1のペダルアーム部3(具体的には、第2ペダルアーム部3b)に、ねじりコイルばね7のアーム7aを係合して取り付ける部分であり、ペダルアーム部3の第2ペダルアーム部3bに形成されている。そして、図3図4に示す例では、特に、図4に示すようなU字形状のスプリングホールド9を介して、取付部位8a,8bに、ねじりコイルばね7のアーム7aが取り付けられる。したがって、図1図3図4に示す例では、取付部位8a,8bは、いずれも、ペダルアーム部3の外部に開口した形状になっている。
【0027】
取付部位8aは、クラッチペダル1側の標準的な取付部位8を構成している。図5の(a)に示すように、この取付部位8aにねじりコイルばね7のアーム7aを係合して取り付けることにより、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準的な大きさのプレロードに設定される。一方、取付部位8bは、標準的な取付部位8aよりもプレロードが大きくなる取付部位8を構成している。図5の(b)に示すように、この取付部位8bにねじりコイルばね7のアーム7aを係合して取り付けることにより、アーム7aおよびアーム7bが、互いに、標準よりも距離D1の分だけ接近させられた状態で、クラッチペダル1および支持部材2に組み付けられる。そのため、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準よりも大きいプレロードに設定される。
【0028】
スプリングホールド9は、第2ペダルアーム部3bと別体の、U字形状の部材であって、ねじりコイルばね7の荷重点側のアーム7aを保持するとともに、その保持したアーム7aと共に第2ペダルアーム部3bに支持されている。なお、スプリングホールド9は、例えば、(金属以外の、すなわち、第2ペダルアーム部3bおよびねじりコイルばね7と異なる材料の)耐摩耗性を有する樹脂を材料にして形成されている。それにより、第2ペダルアーム部3bの取付部位8a,8bの耐摩耗性を向上させることができ、ひいては、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1の耐久性を向上させることができる。
【0029】
図6では、図7の(a)に示すような円筒形状のスプリングホールド10を介して、取付部位8a,8bに、ねじりコイルばね7のアーム7aが取り付けられた構成を示してある。この図6に示す例では、取付部位8a,8bは、いずれも、ペダルアーム部3に形成した円形の貫通孔になっている。
【0030】
図6に示す例においても、取付部位8aは、クラッチペダル1側の標準的な取付部位8を構成している。したがって、図5の(a)に示すように、この取付部位8aにねじりコイルばね7のアーム7aを係合して取り付けることにより、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準的な大きさのプレロードに設定される。一方、取付部位8bは、標準的な取付部位8aよりもプレロードが大きくなる取付部位8を構成している。したがって、図5の(b)に示すように、この取付部位8bにねじりコイルばね7のアーム7aを係合して取り付けることにより、アーム7aおよびアーム7bが、互いに、標準よりも距離D1の分だけ接近させられた状態で、クラッチペダル1および支持部材2に組み付けられる。そのため、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準よりも大きいプレロードに設定される。
【0031】
スプリングホールド10は、第2ペダルアーム部3bと別体の、円筒形状の部材であって、ねじりコイルばね7の荷重点側のアーム7aを保持するとともに、その保持したアーム7aと共に第2ペダルアーム部3bに支持されている。なお、スプリングホールド10は、例えば、(金属以外の、すなわち、第2ペダルアーム部3bおよびねじりコイルばね7と異なる材料の)耐摩耗性を有する樹脂を材料にして形成されている。それにより、第2ペダルアーム部3bの取付部位8a,8bの耐摩耗性を向上させることができ、ひいては、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1の耐久性を向上させることができる。
【0032】
図7の(a)で示した円筒形状のスプリングホールド10に対して、図7の(b)に示すような大径のストッパ10aを設けてもよい。ストッパ10aは、スプリングホールド10よりも大径の、円筒形状の部材であって、スプリングホールド10と一体に形成されている。あるいは、スプリングホールド10に一体に取り付けられている。ストッパ10aは、スプリングホールド10の内周部分にはめ込まれたアーム7aの先端と当接する。したがって、このようなストッパ10aを設けることにより、クラッチペダル1のペダルアーム部3の側面と、ねじりコイルばね7との干渉を防止することができる。また、ペダルアーム部3に対するスプリングホールド10の位置決めの機能も持たせることができる。
【0033】
上記のようなスプリングホールド9、または、スプリングホールド10を用いる場合に、図2の(b)に示すように、ねじりコイルばね7の荷重点側のアーム7aの先端部7dを延長した延長部7eを設けてもよい。ねじりコイルばね7のアーム7aに掛かる荷重が大きくなると、アーム7aの倒れが生じ、そのアーム7aと、スプリングホールド9、または、スプリングホールド10との接触面の面圧が高くなり、また、局部あたりや偏荷重が生じる場合がある。それに対して、この図2の(b)に示すような延長部7eを設けることにより、接触面の面圧を低減し、上記のような局部あたりや偏荷重の発生を抑制できる。同様に、図2の(b)に示すように、ねじりコイルばね7の固定点側のアーム7bに対しても、そのアーム7bの先端部7fを延長した延長部7gを設けてもよい。
【0034】
図8図9に、支持部材2側に設けられた複数の取付部位11の例を示してある。この図8図9に示す複数の取付部位11は、例えば、図9に示すような形状のスプリングホールド12の異なる複数の側面に形成されている。
【0035】
スプリングホールド12は、ペダルアーム部3と別体の部材であって、ねじりコイルばね7の固定点側のアーム7bを保持するとともに、その保持したアーム7bと共に車体側の支持部材2に支持されている。なお、スプリングホールド12は、上記のスプリングホールド9,10と同様に、例えば、(金属以外の、すなわち、支持部材2と異なる材料の)耐摩耗性を有する樹脂を材料にして形成されている。それにより、支持部材2の耐摩耗性を向上させることができ、ひいては、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1の耐久性を向上させることができる。
【0036】
スプリングホールド12には、支持部材2と一体のピン2bをはめ込む穴12aが形成されている。穴12aは、スプリングホールド12の長手方向(図9の左右方向)で、いずれかの端部に偏った位置に形成されている。図9に示す例では、穴12aは、スプリングホールド12の長手方向における左側の端部に偏った位置に形成されている。そして、図8図9に示す例では、スプリングホールド12の長手方向における両端の側面に、それぞれ、取付部位11a、および、取付部位11bが形成されている。図9に示す例では、穴12aに近い側(図9の左側)の側面に形成された取付部位11が、取付部位11aとなっている。一方、穴12aに遠い側(図9の右側)の側面に形成された取付部位11が、取付部位11bとなっている。
【0037】
取付部位11aは、支持部材2側の標準的な取付部位11を構成している。図8の(a)に示すように、この取付部位11aにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準的な大きさのプレロードに設定される。一方、取付部位11bは、標準的な取付部位8aよりもプレロードが大きくなる取付部位11を構成している。図8の(b)に示すように、支持部材2に対するスプリングホールド12の姿勢または向きを変えて、取付部位11bにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、アーム7aおよびアーム7bが、互いに、標準よりも距離D2の分だけ接近させられた状態で、クラッチペダル1および支持部材2に組み付けられる。そのため、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準よりも大きいプレロードに設定される。
【0038】
なお、図10に示すように、スプリングホールド12には、ねじりコイルばね7のアーム7bの先端部7fをはめ込む差し込み孔12bが形成されている。この差し込み孔12bにアーム7bの先端部7fがはめ込まれることにより、ねじりコイルばね7の固定点側のアーム7bが、スプリングホールド12によって確実に保持されている。
【0039】
図11では、支持部材2側に設けられた複数の取付部位13を示してある。この図11に示す複数の取付部位13は、半径が異なる大小の円筒部を組み合わせて形成したスプリングホールド14に形成されている。具体的には、スプリングホールド14は、半径がR1の小径の円筒部14a、および、半径がR2で、円筒部14aよりも大径の円筒部14bから構成されている。円筒部14aと円筒部14bとは一体に形成されている。または、円筒部14aおよび円筒部14bが、互いに、一体に取り付けられている。そして、この図11に示す例では、スプリングホールド14における小径の円筒部14aの外周面、および、スプリングホールド14における大径の円筒部14bの外周面に、それぞれ、取付部位13a、および、取付部位13bが形成されている。
【0040】
取付部位13aは、支持部材2側の標準的な取付部位13を構成している。この取付部位13aにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準的な大きさのプレロードに設定される。一方、取付部位13bは、標準的な取付部位13aよりもプレロードが大きくなる取付部位13を構成している。したがって、支持部材2に対するスプリングホールド14の配置位置を変えて、取付部位13bにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、アーム7aおよびアーム7bが、互いに、標準よりも接近させられた状態で、クラッチペダル1および支持部材2に組み付けられる。そのため、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準よりも大きいプレロードに設定される。
【0041】
図12図13に、支持部材2側に設けられた複数の取付部位15の例を示してある。この図12図13に示す複数の取付部位15は、例えば、図13に示すような形状のスプリングホールド16の異なる複数の側面に形成されている。
【0042】
スプリングホールド16は、ペダルアーム部3と別体の部材であって、ねじりコイルばね7の固定点側のアーム7bを保持するとともに、その保持したアーム7bと共に車体側の支持部材2に支持されている。なお、スプリングホールド16は、上記のスプリングホールド9,10,14と同様に、例えば、(金属以外の、すなわち、支持部材2と異なる材料の)耐摩耗性を有する樹脂を材料にして形成されている。それにより、支持部材2の耐摩耗性を向上させることができ、ひいては、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1の耐久性を向上させることができる。
【0043】
スプリングホールド16には、支持部材2と一体のピン2bをはめ込む穴16aが形成されている。穴16aは、スプリングホールド16の長手方向(図13の上下方向)で、いずれかの端部に偏った位置に形成されている。図13に示す例では、穴16aは、スプリングホールド16の長手方向における上側の端部に偏った位置に形成されている。そして、図12図13に示す例では、スプリングホールド16の短辺側の側面に、取付部位15aが形成され、スプリングホールド16の長辺側の側面に、取付部位16bが形成されている。
【0044】
取付部位16aは、支持部材2側の標準的な取付部位16を構成している。図12の(a)に示すように、この取付部位16aにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準的な大きさのプレロードに設定される。一方、取付部位16bは、標準的な取付部位16aよりもレバー比が大きくなる、すなわち、標準的な取付部位16aよりもプレロードが大きくなる取付部位16を構成している。図12の(b)に示すように、支持部材2に対するスプリングホールド12の姿勢または向きを変えて、取付部位16bにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、アーム長さαが、アーム長さαよりも短いアーム長さβになる。すなわち、レバー比が大きくなる。そのため、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準よりも大きいプレロードに設定される。
【0045】
図14では、支持部材2側に設けられた複数の取付部位17を示してある。この図14に示す複数の取付部位17は、上記の図12図13で示したスプリングホールド16を一部変形したスプリングホールド18に形成されている。具体的には、スプリングホールド18は、ペダルアーム部3と別体の部材であって、ねじりコイルばね7の固定点側のアーム7bを保持するとともに、その保持したアーム7bと共に車体側の支持部材2に支持されている。なお、スプリングホールド18は、上記のスプリングホールド9,10,14,16と同様に、例えば、(金属以外の、すなわち、支持部材2と異なる材料の)耐摩耗性を有する樹脂を材料にして形成されている。それにより、支持部材2の耐摩耗性を向上させることができ、ひいては、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1の耐久性を向上させることができる。
【0046】
スプリングホールド18には、支持部材2と一体のピン2bをはめ込む穴18aが形成されている。穴18aは、スプリングホールド18の長手方向(図14の上下方向)で、いずれかの端部に偏った位置に形成されている。図14に示す例では、穴18aは、スプリングホールド18の長手方向における上側の端部に偏った位置に形成されている。そして、図14に示す例では、スプリングホールド18の短辺側の側面に、取付部位17aが形成され、スプリングホールド18の長辺側の側面から湾曲側面18bにかけて、取付部位17bが形成されている。湾曲側面18bは、スプリングホールド18の長辺側の側面と、スプリングホールド18の短辺側の側面とを結ぶ部分であり、所定の曲率半径の湾曲面になっている。
【0047】
取付部位17aは、支持部材2側の標準的な取付部位17を構成している。この取付部位17aにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準的な大きさのプレロードに設定される。一方、取付部位17bは、標準的な取付部位17aよりもレバー比が大きくなる、すなわち、標準的な取付部位17aよりもプレロードが大きくなる取付部位17を構成している。前述の図12の(b)で示したスプリングホールド16と同様に、支持部材2に対するスプリングホールド18の姿勢または向きを変えて、取付部位17bにねじりコイルばね7のアーム7bを係合して取り付けることにより、レバー比が変更される。そのため、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが、標準のプレロードに対して変化する。その場合、この図14に示すスプリングホールド18では、上記のような湾曲側面18bが形成されていることにより、スプリングホールド18と、スプリングホールド18に取り付けられるねじりコイルばね7のアーム7bとの接触部が、クラッチペダル1の操作力の変化に応じて連続的に変化する。
【0048】
図15に、この発明の実施形態におけるペダル装置Pを適用したクラッチペダル1のペダル踏力とペダルストロークとの関係を示してある。上記のようにして構成したペダル装置Pにおいて、いずれかの“取付部位”を選択してねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付け、ねじりコイルばね7のプレロードの大きさを設定するとともに、ねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付ける“取付部位”を変更して、ねじりコイルばね7のプレロードの大きさを変化させることにより、クラッチペダル1の操作特性が変更されている。この図15に示す例では、ペダルストロークS3の付近において、ねじりコイルばね7によるアシスト荷重が増加している。それに伴って、クラッチペダル1のピークの踏力が低減されている。また、クラッチペダル1のターンオーバー点が、ペダルストロークS2付近から、ペダルストロークS1付近に変更されている。
【0049】
このように、この発明の実施形態におけるペダル装置Pでは、ねじりコイルばね7の二つのアーム7a,7bを、それぞれ、支持部材2およびクラッチペダル1に取り付ける“取付部位”が複数箇所設けられている。それら複数の“取付部位”は、ねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付ける部分の位置または形状がいずれも異なっている。それら複数の“取付部位”から選択したいずれかの“取付部位”にねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付けることにより、その選択した“取付部位”に応じて、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードが決まる。ねじりコイルばね7のばね特性は固有値であるので、結局、ねじりコイルばね7のプレロードの大きさに応じて、すなわち、ねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付けた“取付部位”に応じて、クラッチペダル1の操作特性が設定される。また、この発明の実施形態におけるペダル装置Pの実使用段階において、上記のようにねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付ける“取付部位”を変更すること、すなわち、“取付部位”を変えてねじりコイルばね7のアーム7a,7bを取り付け直すことにより、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードの大きさを変化させることができる。そのため、容易に、クラッチペダル1の操作特性を変更することができる。
【0050】
更に、この発明の実施形態におけるペダル装置Pでは、特に、支持部材2側に取り付ける“スプリングホールド”に、上記のようにねじりコイルばね7のアーム7bを取り付ける部分の位置または形状が異なる複数の“取付部位”が形成されている。そして、支持部材2に対する“スプリングホールド”の姿勢を変えること、例えば、支持部材2に対する“スプリングホールド”の向きまたは角度を変えること、あるいは、支持部材2に対する“スプリングホールド”の配置位置を変えることにより、“スプリングホールド”に形成された複数の“取付部位”からいずれかの“取付部位”が選択される。そして、その選択した“取付部位”に、ねじりコイルばね7のアーム7bと共に“スプリングホールド”が取り付けられる。そのため、上記のように支持部材2に対する“スプリングホールド”の姿勢を変えるだけで、容易に、クラッチペダル1に作用するねじりコイルばね7のプレロードの大きさを変化させることができる。すなわち、クラッチペダル1の操作特性を容易に変更することができる。
【0051】
したがって、この発明の実施形態におけるペダル装置Pによれば、部品の交換や新設等によるコストアップを招くことなく、容易に、クラッチペダル1の操作特性を変更することができる。すなわち、クラッチペダル1の操作特性を容易にチューニングすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 クラッチペダル
2 支持部材
2a (クラッチペダル1を支持する)支持軸部
2b (スプリングホールド12を係合する)ピン
3 ペダルアーム部
3a (ペダルアーム部3の)第1ペダルアーム部
3b (ペダルアーム部3の)第2ペダルアーム部
4 ペダル部
5 マスターシリンダ
5a (マスターシリンダ5の)シリンダ
5b (マスターシリンダ5の)ピストン
5c (マスターシリンダを係合する)ピン
6 補助付勢機構
6a (補助付勢機構6の支持部材側の)嵌合部材
6b (補助付勢機構6のペダル側の)嵌合部材
6c (補助付勢機構6の)圧縮コイルばね
6d (補助付勢機構6の嵌合部材6aを係合する)ピン
6e (補助付勢機構6の嵌合部材6bを係合する)ピン
7 ねじりコイルばね
7a (ねじりコイルばね7の荷重点側の)アーム
7b (ねじりコイルばね7の固定点側の)アーム
7c (ねじりコイルばね7の)コイル部
7d (ねじりコイルばね7のアーム7aの)先端部
7e (ねじりコイルばね7の先端部7dに設けた)延長部
7f (ねじりコイルばね7のアーム7bの)先端部
7g (ねじりコイルばね7の先端部7fに設けた)延長部
8 (クラッチペダル1側の)取付部位
8a (取付部位8における標準的なプレロードを設定する方の)取付部位
8b (取付部位8における大きなプレロードを設定する方の)取付部位
9 (クラッチペダル1側の取付部位8に設けたU字形状の)スプリングホールド
10 (クラッチペダル1側の取付部位8に設けた円筒形状の)スプリングホールド
10a (スプリングホールド10に設けた)ストッパ
11 (支持部材2側の)取付部位
11a (取付部位11における標準的なプレロードを設定する方の)取付部位
11b (取付部位11における大きなプレロードを設定する方の)取付部位
12 (支持部材2側の複数の取付部位11が形成された)スプリングホールド
12a (スプリングホールド12に形成された)穴
12b (スプリングホールド12に形成された)差し込み孔
13 (支持部材2側の)取付部位
13a (取付部位13における標準的なプレロードを設定する方の)取付部位
13b (取付部位13における大きなプレロードを設定する方の)取付部位
14 (支持部材2側の複数の取付部位13が形成された)スプリングホールド
14a (スプリングホールド14を形成する小径の)円筒部
14b (スプリングホールド14を形成する大径の)円筒部
15 (支持部材2側の)取付部位
15a (取付部位13における標準的なプレロードを設定する方の)取付部位
15b (取付部位13における大きなプレロードを設定する方の)取付部位
16 (支持部材2側の複数の取付部位15が形成された)スプリングホールド
16a (スプリングホールド16に形成された)穴
17 (支持部材2側の)取付部位
17a (取付部位13における標準的なプレロードを設定する方の)取付部位
17b (取付部位13における大きなプレロードを設定する方の)取付部位
18 (支持部材2側の複数の取付部位15が形成された)スプリングホールド
18a (スプリングホールド16に形成された)穴
P ペダル装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15