(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ハイブリッド電気車両及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/13 20160101AFI20241119BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20241119BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241119BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241119BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20241119BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20241119BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241119BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241119BHJP
【FI】
B60W20/13
B60K6/445 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W20/12
B60L50/16
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2022023640
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 友希
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104755(JP,A)
【文献】特開2022-013179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180599(US,A1)
【文献】特開2003-095042(JP,A)
【文献】特開2008-265594(JP,A)
【文献】特開2014-191456(JP,A)
【文献】特開2018-086970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/13
B60K 6/445
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/26
B60W 20/12
B60L 50/16
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と1又は複数の電動機の協働によるハイブリッド走行及び発電と、前記内燃機関を作動させずに前記1又は複数の電動機によって行う電気走行と、を実行可能なパワートレーンと、
前記パワートレーンとの間で電力を授受するバッテリと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記内燃機関の運転が制限される特定区間が予測走行経路上に存在する場合、前記特定区間を前記電気走行によって走破するための必要電池残量にマージンを加えた特定電池残量を確保するための前記バッテリの電池残量の管理を走行支援として実行し、
前記走行支援の実行履歴の有無及び前記電池残量に基づいて、前記特定区間への進入前の走行モードを、前記電気走行を行うBEVモード、前記電池残量を維持しつつ前記ハイブリッド走行を行うHEVモード、及び、前記電池残量を増やしつつ前記ハイブリッド走行を行う充電モードの中から選択する選択処理を実行
し、
前記選択処理において、前記制御装置は、
前記実行履歴がなく且つ前記電池残量が前記特定電池残量より少ない場合には、前記電池残量が前記特定電池残量にまで増えるように前記充電モードを選択し、
前記実行履歴がある場合、前記電池残量が前記特定電池残量より少なく前記必要電池残量以上であれば前記HEVモードを選択し、前記電池残量が前記必要電池残量より少なければ前記電池残量が前記特定電池残量にまで増えるように前記充電モードを選択する
ハイブリッド電気車両。
【請求項2】
請求項
1に記載のハイブリッド電気車両であって、
前記選択処理において、前記制御装置は、前記電池残量が前記特定電池残量以上である場合、前記BEVモードを選択する
ハイブリッド電気車両。
【請求項3】
内燃機関と1又は複数の電動機の協働によるハイブリッド走行及び発電と、前記内燃機関を作動させずに前記1又は複数の電動機によって行う電気走行と、を実行可能なパワートレーンと、
前記パワートレーンとの間で電力を授受するバッテリと、
を備えるハイブリッド電気車両を制御する制御方法であって、
前記内燃機関の運転が制限される特定区間が予測走行経路上に存在する場合、前記特定区間を前記電気走行によって走破するための必要電池残量にマージンを加えた特定電池残量を確保するための前記バッテリの電池残量の管理を走行支援として実行することと、
前記走行支援の実行履歴の有無及び前記電池残量に基づいて、前記特定区間への進入前の走行モードを、前記電気走行を行うBEVモード、前記電池残量を維持しつつ前記ハイブリッド走行を行うHEVモード、及び、前記電池残量を増やしつつ前記ハイブリッド走行を行う充電モードの中から選択する
選択処理を実行することと、
を含
み、
前記選択処理は、
前記実行履歴がなく且つ前記電池残量が前記特定電池残量より少ない場合には、前記電池残量が前記特定電池残量にまで増えるように前記充電モードを選択することと、
前記実行履歴がある場合、前記電池残量が前記特定電池残量より少なく前記必要電池残量以上であれば前記HEVモードを選択し、前記電池残量が前記必要電池残量より少なければ前記電池残量が前記特定電池残量にまで増えるように前記充電モードを選択することと、
を含む
ハイブリッド電気車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド電気車両及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両用の発電制御装置を開示している。走行経路全体における燃料の消費を低減するために、発電制御装置は、車両の走行予定経路の内容に基づいて車両用発電機の発電電圧の制御を行う。走行予定経路は、例えば、市街地、郊外、高速の3種類の走行内容に分類されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-095042号公報
【文献】特開2008-265594号公報
【文献】特開2014-191456号公報
【文献】特開2018-086970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関を作動させずに電動機を用いた電気走行(BEV走行)を実行可能なハイブリッド電気車両において、内燃機関の運転が制限される特定区間をBEV走行で走破するための必要電池残量を確保するための適切な電池残量の管理を走行支援として行うことが考えられる。
【0005】
上述のような電池残量の管理は、必要電池残量の予測誤差及び走行ばらつき等の誤差要因を考慮するためのマージンを必要電池残量とともに確保できるようにしつつ行われることが望まれる。その一方で、例えば、電池残量の確保のために内燃機関の動力を利用した過度な充電がなされると、燃費悪化を招くことになる。
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の運転が制限される特定区間をBEV走行で走破するための電池残量の管理を適切に行えるようにしたハイブリッド電気車両及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るハイブリッド電気車両は、パワートレーンと、バッテリと、制御装置と、を備える。パワートレーンは、内燃機関と1又は複数の電動機の協働によるハイブリッド走行及び発電と、内燃機関を作動させずに1又は複数の電動機によって行う電気走行と、を実行可能に構成されている。バッテリは、パワートレーンとの間で電力を授受する。制御装置は、内燃機関の運転が制限される特定区間が予測走行経路上に存在する場合、特定区間を電気走行によって走破するための必要電池残量にマージンを加えた特定電池残量を確保するためのバッテリの電池残量の管理を走行支援として実行する。制御装置は、走行支援の実行履歴の有無及び電池残量に基づいて、特定区間への進入前の走行モードを、電気走行を行うBEVモード、電池残量を維持しつつハイブリッド走行を行うHEVモード、及び、電池残量を増やしつつハイブリッド走行を行う充電モードの中から選択する選択処理を実行する。
選択処理において、制御装置は、実行履歴がなく且つ電池残量が特定電池残量より少ない場合には、電池残量が特定電池残量にまで増えるように充電モードを選択し、実行履歴がある場合、電池残量が特定電池残量より少なく必要電池残量以上であればHEVモードを選択し、電池残量が必要電池残量より少なければ電池残量が特定電池残量にまで増えるように充電モードを選択する。
【0009】
選択処理において、制御装置は、電池残量が特定電池残量以上である場合、BEVモードを選択してもよい。
【0011】
本開示に係るハイブリッド電気車両の制御方法は、内燃機関と1又は複数の電動機の協働によるハイブリッド走行及び発電と、内燃機関を作動させずに1又は複数の電動機によって行う電気走行と、を実行可能なパワートレーンと、パワートレーンとの間で電力を授受するバッテリと、を備えるハイブリッド電気車両を制御する制御方法である。この制御方法は、内燃機関の運転が制限される特定区間が予測走行経路上に存在する場合、特定区間を電気走行によって走破するための必要電池残量にマージンを加えた特定電池残量を確保するためのバッテリの電池残量の管理を走行支援として実行することと、走行支援の実行履歴の有無及び電池残量に基づいて、特定区間への進入前の走行モードを、電気走行を行うBEVモード、電池残量を維持しつつハイブリッド走行を行うHEVモード、及び、電池残量を増やしつつハイブリッド走行を行う充電モードの中から選択する選択処理を実行することと、を含む。
選択処理は、実行履歴がなく且つ電池残量が特定電池残量より少ない場合には、電池残量が特定電池残量にまで増えるように充電モードを選択することと、実行履歴がある場合、電池残量が特定電池残量より少なく必要電池残量以上であればHEVモードを選択し、電池残量が必要電池残量より少なければ電池残量が特定電池残量にまで増えるように充電モードを選択することと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、特定区間を電気走行(BEV走行)で走破するための電池残量の管理を適切に行えるようになる。
【0013】
具体的には、本開示によれば、内燃機関の運転が制限される特定区間が予測走行経路上に存在する場合、当該特定区間を電気走行によって走破するための必要電池残量にマージンを加えた特定電池残量を確保するための電池残量の管理が走行支援として実行される。これにより、上述の必要電池残量の予測誤差及び走行ばらつき等の誤差要因を考慮して適切な電池残量の管理を行える。そして、本開示によれば、特定区間への進入前の走行モードが、当該走行支援の実行履歴の有無及び電池残量に基づいてBEVモード、HEVモード、及び充電モードの中から選択される。これにより、例えば、当該走行支援によってマージンを満たす特定電池残量が得られた後はHEVモードを選択することにより、過度な充電を控えつつ特定区間の走破のために特定電池残量相当の電池残量を確保(維持)しておくことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係るハイブリッド電気車両の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示すハイブリッド電気車両の制御系の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態に係る特定区間BEV制御(SOC管理)に基づく動作の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る特定区間BEV制御に関する課題が生じる比較例を説明するための図である。
【
図5】
図4と同じSOC条件における実施の形態に係る特定区間BEV制御の動作を説明するための図である。
【
図6】実施の形態に係る特定区間BEV制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。ただし、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る技術思想が限定されるものではない。
【0016】
1.ハイブリッド電気車両(HEV)の構成例
図1は、実施の形態に係るハイブリッド電気車両1の構成の一例を概略的に示す図である。
図2は、
図1に示すハイブリッド電気車両1の制御系の機能構成を示すブロック図である。ハイブリッド電気車両(以下、単に「車両」とも称する)1は、一例として動力分割式のハイブリッドシステムを構成するパワートレーン10を備える。
【0017】
パワートレーン10は、動力源としての内燃機関12並びに2つの電動機14及び16とともに、動力分割機構18、減速機20、及び駆動軸22を含む。以下に説明されるように、パワートレーン10は、内燃機関12と電動機14及び16の協働により、ハイブリッド走行(HEV(Hybrid Electric Vehicle)走行)及び発電を実行可能に構成されている。また、パワートレーン10は、内燃機関12を作動させずに電動機16によって行う電気走行(BEV(Battery Electric Vehicle)走行)を実行可能に構成されている。
【0018】
電動機14及び16は、それぞれ発電機としても機能する。より詳細には、電動機14は主に発電機として機能し、電動機16は主に電動機として機能する。電動機14及び16は、例えば交流同期電動機である。電動機14及び内燃機関12は、動力分割機構18により互いに接続されている。動力分割機構18及び電動機16は、減速機20を介して互いに接続されている。減速機20は、ディファレンシャルギアを含み、駆動軸22を介して車輪24(
図1に示す例では、前輪24F)に接続されている。動力分割機構18は、内燃機関12の動力を電動機(発電機)14及び減速機20に分配する。減速機20は、動力分割機構18を介して伝達される内燃機関12の動力及び電動機16の動力を減速し、駆動軸22を介して車輪24に伝達する。
【0019】
また、車両1は、バッテリ26と、電力制御ユニット(PCU)28とを備える。バッテリ26は、PCU28を介してパワートレーン10(より詳細には、電動機14及び16のそれぞれ)との間で電力を授受する。PCU28は、インバータを含み、バッテリ26に蓄えられた電力を直流から交流に変換して電動機16に供給する。その結果、電動機16が駆動される。また、電動機14は、内燃機関12の動力によって駆動されることにより電力を生成可能である。電動機16は、車輪24の回転によって駆動されることにより電力を生成可能である。電動機14又は電動機16によって生成される電力は、PCU28によって交流から直流に変換された後にバッテリ26に蓄えられる。このように、バッテリ26は、電動機14及び16で生じた電力によって充電され、電動機16で消費される電力により放電される。
【0020】
さらに、車両1は、車両1を制御する「制御装置」に相当する電子制御ユニット(ECU)30を備えている。以下の説明では、ECU30は、車両制御ECU30とも称される。ECU30は、プロセッサ及び記憶装置を備えている。ECU30は、車両1に取り付けられたセンサ類32からセンサ信号を取り込むとともに、パワートレーン10(内燃機関12、電動機14及び16)及びPCU28に対して操作信号を出力する。記憶装置には、パワートレーン10及びPCU28を制御するための各種の制御プログラムが記憶されている。プロセッサは、制御プログラムを記憶装置から読み出して実行し、これにより、パワートレーン10及びPCU28に関する各種制御が実現される。なお、下記のECU30の機能は複数のECUによって実現されてもよい。
【0021】
センサ類32は、車速センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキポジションセンサ、及びSOCセンサ等のパワートレーン10の制御に用いられる各種センサを含む。SOCセンサは、バッテリ26の残量(換言すると、充電状態(SOC))を検出する。以下の説明では、バッテリ26の残量のことを「電池残量SOC」と称する。
【0022】
ECU30は、車両1の走行モードとして、「BEVモード」、「HEVモード」、及び「充電モード」を含む複数の走行モードを選択的に実行可能である。
【0023】
BEVモードは、内燃機関12を作動させずに電動機16を用いて行われるBEV走行を行うモードである。
【0024】
HEVモードは、電池残量SOCを維持しつつ、HEV走行(内燃機関12と電動機14、16の協働による車両走行)を行うモードである。より詳細には、
図1に示す車両1の例では、HEVモードは、内燃機関12の動力を用いて電動機14が生成した電力をバッテリ26の充電及び電動機16への供給に利用しつつ、内燃機関12及び電動機16の駆動力を用いて車輪24を駆動することによって実行される。また、電池残量SOCの維持は、ECU30が、(実)電池残量SOCを例えば現在の電池残量SOCと等しい目標電池残量(目標SOC)に近づけるように、内燃機関12の運転、電動機14及び16の作動、並びにバッテリ26の充電を制御することによって実現される。
【0025】
充電モードは、電池残量SOCを増やしつつ、HEV走行を行うモード(換言すると、第2のHEVモード)である。より詳細には、車両1の例では、充電モードによって電池残量SOCを増やすことは、現在の電池残量SOCよりも高い目標SOCを設定しつつ、HEV走行中に当該目標SOCが満たされるように内燃機関12の運転、電動機14及び16の作動、並びにバッテリ26の充電を制御することによって実現される。
【0026】
なお、上述のBEVモード、HEVモード、及び充電モードを実行可能である限り、本開示に係る「ハイブリッド電気車両」のハイブリッドシステムは、上述の動力分割式に代え、シリーズ方式又はパラレル方式等の他の方式であってもよい。また、本開示に係る「ハイブリッド電気車両」は、外部充電可能なプラグインハイブリッド電気車両(PHEV)として構成されていてもよい。さらに、「ハイブリッド電気車両」は、ユーザによって運転操作されるものに限られず、外部装置によって遠隔操作されてもよく、又は自動運転システムによって運転操作の少なくとも一部が自動化されていてもよい。
【0027】
また、
図1及び2に示すように、車両1は、ナビゲーションECU(以下、「ナビECU」とも称する)34を備えている。ナビECU34は、プロセッサ及び記憶装置を備えている。ナビECU34は、無線通信ネットワークを介して外部システムと互いに通信可能に構成されており、外部システムから様々なデータを取得できる。
【0028】
例えば、ナビECU34は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して車両1の現在位置を取得する。さらに、ナビECU34は、例えば外部のサーバから地図情報を取得することで、地図上の車両1の現在位置を特定できる。ここでいう地図情報には、内燃機関12の運転を伴う車両1の走行が制限される「特定区域IA」に関する情報、及び地理的情報(例えば、速度制限、距離、及び道路種別)が含まれる。特に限定されないが、このような特定区域IA(例えば、ローエミッションゾーン)は、環境負荷の低減を目的として、特定の市街地区域に定められていたり、例えば時間帯若しくは交通状況に応じて一時的に定められたりすることがある。ナビECU34は、VICS(登録商標;Vehicle Information and Communication System)センタのような交通情報センタから、渋滞情報、規制情報、及び交通事故情報等の各種の交通情報を取得することもできる。ナビECU34は、このような様々な情報をHMI(Human Machine Interface)機器36を用いて車両1のユーザに通知することができる。HMI機器36は、例えば、車両1の室内に設けられた表示部及び入力部を含む。表示部は、例えば、ナビゲーションシステムのディスプレイ、又はインストルメントパネルに設置されたメータである。入力部は、タッチパネル又はスイッチ類である。
【0029】
ナビECU34は、さらに、HMI機器36を介してユーザによる操作を受け付けることができる。例えば、ユーザがHMI機器36を操作して目的地を入力すると、ナビECU34は、車両1の現在位置から目的地までの予測走行経路PRを作成し、HMI機器36に表示する。なお、ナビECU34は、必ずしもユーザによって入力された目的地に基づいて予測走行経路PRを作成する必要はない。一例として、ナビECU34は、過去の走行データに基づいて車両1が走行すると推定される予測走行経路PRを作成してもよい。また、特定区域IAは、例えば、HMI機器36を操作するユーザによって設定されてもよい。
【0030】
また、ナビECU34は、過去の走行データ、及び、地図情報に含まれる路面の種類又は勾配等の情報の少なくとも一方に基づいて、予測走行経路PRの各走行区間を走行するのに要する所要走行パワーの推定値EPを算出することができる。また、ナビECU34は、予測走行経路PRにおける所要走行パワーの推定値EPを積算することによって、予測走行経路PRを走破するのに要する所要エネルギーの推定値EPtを算出することもできる。付け加えると、ナビECU34は、後述の特定区間ISをBEV走行で走破するために必要とされる所要エネルギーの推定値Ezevを算出することもできる。
【0031】
図2に示すように、ナビECU34は、例えばCAN(Controller Area Network)通信によって、車両制御ECU30と通信可能に接続されている。これにより、車両制御ECU30は、前述した予測走行経路PRと、予測走行経路PRに関する各種情報(先読み情報)とを含む様々な情報をナビECU34から取得できる。先読み情報は、予測走行経路PRに沿った各走行区間に関する情報である。具体的には、先読み情報は、例えば、上述の地図情報(特定区域IAに関する情報、及び地理的情報(例えば、速度制限、距離、及び道路種別))と、交通情報(例えば、渋滞情報、規制情報、及び交通事故情報等)と、車速と、所要走行パワーの推定値EPと、を含む。
【0032】
なお、車両制御ECU30に送信される様々な情報(予測走行経路PR及び先読み情報を含む)の少なくとも一部は、車両1に搭載されたナビECU34に代え、或いはそれとともに、クラウドサーバ及びユーザの携帯端末の少なくとも一方によって作成及び取得されてもよい。
【0033】
2.走行モードの自動選択制御
車両制御ECU30は、先読み情報を利用して車両1の走行モードを自動的に選択する自動選択制御として、次のような「基本制御A」と「特定区間BEV制御」とを実行する。なお、自動選択制御として、基本制御Aは実行されずに特定区間BEV制御のみが実行されてもよい。
【0034】
2-1.基本制御A
基本制御Aは、ユーザによる車両1の高燃費走行を支援するために、ナビECU34から取得される上述の先読み情報を用いて実行される。基本制御Aにおいて、ECU30は、先読み情報に基づいて予測走行経路PRの全体の走行負荷を先読みし、予測走行経路PRを複数の走行区間に区分する。そして、ECU30は、高燃費走行を実現するうえで最適な走行モードとなるように、区分された走行区間のそれぞれで用いられる走行モードを選択する。
【0035】
基本制御Aにおける走行モードの選択は、一例として次のように行うことができる。すなわち、ECU30は、予測走行経路PRの全体から見てエンジン効率が相対的に低くなる低負荷区間についてはBEVモードを選択し、当該低負荷区間以外の走行区間についてはHEVモードを選択する。このような走行モード選択のための先読み情報として、例えば、各走行区間の所要走行パワーの推定値EP、走行区間の長さ、及び車速の情報が用いられる。より詳細には、例えば、ECU30は、推定値EPが閾値未満の場合にはBEVモードを選択し、推定値EPが当該閾値以上の場合にはHEVモードを選択する。
【0036】
2-2.特定区間BEV制御(SOC管理)
予測走行経路PRは、上述の特定区域IA(内燃機関12の運転が制限される区域)を通過するように作成される場合がある。以下の説明では、特定区域IAに含まれる予測走行経路PR上の走行区間は「特定区間IS」と称される。
【0037】
特定区間BEV制御は、例えば基本制御Aの実行中に、車両1の予測走行経路PR上に特定区間ISが存在する場合に実行される。特定区間BEV制御は、特定区間ISをBEV走行で走破するために必要とされる適切な電池残量SOCの管理(SOC管理)を車両1の走行支援機能の1つとして行うものである。
【0038】
具体的には、特定区間ISをBEV走行で走破するために必要とされる所要エネルギーの推定値Ezevは、上述のようにナビECU34によって算出される。特定区間BEV制御(SOC管理)の概要は、車両1が特定区間ISに到達する前に推定値Ezevに相当する必要電池残量SOCrが確保されるように電池残量SOCを制御する(残す/増やす)というものである。
【0039】
ここで、先読み情報に基づく必要電池残量SOCr(推定値Ezev)の予測(推定)には、誤差が含まれ得る。また、ユーザによる車両1の走行には、ばらつきが含まれ得る。特定区間BEV制御によるSOC管理は、このような必要電池残量SOCrの予測誤差及び走行ばらつき等の誤差要因を考慮するための電池残量SOCのマージンαを必要電池残量SOCrとともに確保できるようにしつつ行われることが望まれる。
【0040】
そこで、上述のような誤差要因を考慮した適切な電池残量SOCの確保に関する課題と、詳細は
図4を参照して後述される過度な充電の抑制に関する課題とに鑑み、本実施形態に係る特定区間BEV制御は、次のように実行される。
【0041】
すなわち、ECU30は、予測走行経路PR上に特定区間ISが存在する場合、必要電池残量SOCrにマージンαを加えた特定電池残量SOCxを確保するためのSOC管理を走行支援として実行する。そして、ECU30は、当該走行支援(SOC管理)の実行履歴の有無及び電池残量SOCに基づいて、特定区間ISへの進入前の走行モードをBEVモード、HEVモード、及び充電モードの中から選択する。以下、説明の便宜上、このように走行モードを選択する処理は「選択処理」と称される。
【0042】
具体的には、選択処理において、ECU30は、上記の実行履歴がない場合にはBEVモード又は充電モードを選択する。一方、実行履歴がある場合には、ECU30は、BEVモード、HEVモード、及び充電モードの何れか1つを選択する。
【0043】
より詳細には、選択処理において、ECU30は、電池残量SOCが特定電池残量SOCx(=SOCr+α)以上である場合、実行履歴の有無によらずにBEVモードを選択する。
【0044】
また、選択処理において、ECU30は、実行履歴がなく、且つ電池残量SOCが特定電池残量SOCxより少ない場合には、電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで増えるように充電モードを選択する。一方、実行履歴がある場合、電池残量SOCが特定電池残量SOCxより少なく必要電池残量SOCr以上であれば、HEVモードを選択し、電池残量SOCが必要電池残量SOCrより少なければ、電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで増えるように充電モードを選択する。
【0045】
図3(A)及び3(B)は、実施の形態に係る特定区間BEV制御(SOC管理)に基づく動作の一例を示す図である。
図3(A)及び3(B)には、特定区間ISが表されている。地点P1は、特定区間BEV制御によるSOC管理を開始する地点に相当する。地点P1は、予測走行経路PRの出発地又は通過点の何れであってもよい。また、特定区間ISの終了地点P4は、予測走行経路PRの目的地又は通過点の何れであってもよい。
【0046】
図3(A)に示す例では、地点P1において、バッテリ26は、必要電池残量SOCrに上記マージンαを加えて得られる「特定電池残量SOCx(=SOCr+α)」より多い電池残量SOC1を有している。この場合、特定区間BEV制御に従い、ECU30は、地点P1からBEVモードを選択する。
【0047】
地点P2は、地点P1からのBEVモードに従うBEV走行によって電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで低下した地点に相当する。ECU30は、この地点P2において、走行モードをBEVモードからHEVモードに切り替える。これにより、
図3(A)に示すように、車両1は、地点P2における電池残量SOCの値(すなわち、特定電池残量SOCx)を維持するようにHEV走行を行う。
【0048】
上述した
図3(A)に示す例のように、マージンαを含む特定電池残量SOCx以上の電池残量SOC(例えば、SOC1)を有する状態でSOC管理が開始された場合には、BEVモードが選択された後、特定電池残量SOCxを残して地点P3において特定区間ISに進入できるようにHEVモードが選択される。
【0049】
次に、
図3(B)に示す例では、地点P1において、バッテリ26は、必要電池残量SOCrより少ない電池残量SOC2しか有していない。この場合、特定区間BEV制御に従い、ECU30は、地点P1から充電モードを選択する。その結果、電池残量SOCを増やしつつ、HEV走行が行われる。
【0050】
地点P5は、地点P1からの充電モードに従うHEV走行によって電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで増加した地点に相当する。ECU30は、この地点P5において、走行モードを充電モードからHEVモードに切り替える。これにより、
図3(B)に示すように、車両1は、地点P5における電池残量SOCの値(すなわち、特定電池残量SOCx)を維持するようにHEV走行を行う。
【0051】
上述した
図3(B)に示す例のように、必要電池残量SOCrより少ない電池残量SOC(例えば、SOC2)しか有しない状態でSOC管理が開始された場合には、充電モードが選択され、特定電池残量SOCxが得られるように電池残量SOCが増やされる。そして、特定電池残量SOCxが確保された後は、特定電池残量SOCxを残して特定区間ISに進入できるようにHEVモードが選択される。
【0052】
次に、
図4は、実施の形態に係る特定区間BEV制御に関する課題が生じる比較例を説明するための図である。上述の
図3(A)及び3(B)とは異なり、
図4は、地点P1において、電池残量SOCが必要電池残量SOCrを満たしているけれどもマージンαを含む特定電池残量SOCxは満たしていないSOC条件(SOCr≦SOC<SOCx)を表している。
【0053】
HEV走行を利用した充電モードは、内燃機関12と電動機(発電機)14の協働により生成される電力を利用する。このため、電池残量SOCの確保のために内燃機関12を用いて過度な充電がなされると、燃費悪化を招くことになる。そこで、上記SOC条件においては、必要電池残量SOCrが満たされていることを理由として、
図4に示す比較例のように地点P1からHEVモードを選択することが考えられる。しかしながら、このようなSOC条件においてHEVモードが継続的に選択されると、特定区間ISに到達する地点P3において、
図4に示す比較例のように必要電池残量SOCrに対するマージンが十分に確保されなくなることが生じ得る。その結果、上述の誤差要因に起因して特定区間ISをBEV走行にて走破できなくなる可能性がある。より詳細には、
図4に示す比較例では、特定区間ISの途中の地点P6において、BEV走行を実行可能な電池残量SOCの範囲の下限値にまで電池残量SOCが低下してしまい、BEVモードからHEVモードへの切り替えが行われている。
【0054】
図5は、
図4と同じSOC条件(SOCr≦SOC<SOCx)における実施の形態に係る特定区間BEV制御(SOC管理)の動作を説明するための図である。本実施形態では、
図5に示すSOC条件下で地点P1において特定区間BEV制御(走行支援)を開始する場合、ECU30は、特定電池残量SOCxを確保するために充電モードを選択する。
【0055】
図5中の地点P7は、充電モードの選択後に電池残量SOCが特定電池残量SOCxに到達した地点に相当する。ECU30は、一例として、この地点P7において、特定区間BEV制御(すなわち、SOC管理)による走行支援の実行履歴(実績)があるか否かを示す実行履歴フラグをONとする。なお、実行履歴フラグは、地点P7から地点P3までの走行区間において車両1のパワースイッチ(イグニッションスイッチ)がユーザによってOFFにされても、当該走行支援が中止されていない場合にはON状態で保持される。
【0056】
このことは、上述の
図3(A)に示す例のように、地点P1において特定電池残量SOCxよりも多い電池残量SOC(例えば、SOC1)を有する状態から特定区間BEV制御(走行支援)を開始した場合においても同様である。すなわち、
図3(A)に示す例では、電池残量SOCが特定電池残量SOCxよりも多い値から特定電池残量SOCxにまで低下した地点P2において、実行履歴フラグがONとされる。
【0057】
また、
図5及び
図3(A)に示す例のように走行支援開始後に電池残量SOCが特定電池残量SOCxとなる状態(すなわち、マージンαが確保された状態)でHEVモードに切り替わった後に、HEVモードによる電池残量SOCの制御中の電池残量SOCの変動に起因して電池残量SOCが特定電池残量SOCxを下回る可能性がある。本実施形態では、このようにHEVモードの実行中に電池残量SOCが特定電池残量SOCxを下回って上記SOC条件(SOCr≦SOC<SOCx)が満たされても、特定電池残量SOCxを再び確保するために充電モードに切り替えることは実行されない。
【0058】
その理由は、HEVモードは、上述のように電池残量SOCを維持するように実行されるためである。より詳細には、走行支援の実行履歴がある場合、HEVモードによれば、HEVモードへの切り替えが行われた時の電池残量SOCの値(すなわち、特定電池残量SOCx)を維持するようにHEV走行が行われる。このため、HEVモードの実行中には、電池残量SOCが特定電池残量SOCxを下回ることがあっても、電池残量SOCが特定電池残量SOCxから大きく離れることはないといえる。また、マージンαは、HEVモードによって電池残量SOCを特定電池残量SOCxに維持しようとする際に生じ得る電池残量SOCの変動に対するマージンとしても機能するといえる。
【0059】
したがって、上述のように走行支援の実行履歴がある場合においてHEVモードが選択された後は上記SOC条件となっても充電モードへの切り替えを行わないことにより、過度な充電の回避によって燃費悪化を抑制しつつ、特定区間ISをBEV走行で走破できるようになる。
【0060】
2-2-1.ECUによる処理
図6は、実施の形態に係る特定区間BEV制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、先読み情報を利用した走行モードの自動選択制御の実行中に繰り返し実行される。
【0061】
ステップS100において、ECU30は、ナビECU34からの通知の有無に基づいて、自動選択制御のための先読み情報が更新されたか否かを判定する。既に説明されたように、先読み情報は、予測走行経路PRに沿った各走行区間に関する情報(例えば、特定区域IAに関する情報、車速、所要走行パワーの推定値EP、距離、道路種別、及び渋滞情報)である。なお、先読み情報は、例えば、ユーザのHMI機器36の操作による目的地の変更に起因する予測走行経路PRの変更に伴って更新される。そして、先読み情報が更新されると、所要走行パワーの推定値EPも変化し得る。
【0062】
先読み情報が更新された場合には、処理はステップS102に進む。ステップS102において、ECU30は、最新の先読み情報をナビECU34から取得する。その後、処理はステップS104に進む。また、先読み情報が更新されていない場合にも、処理はステップS104に進む。
【0063】
ステップS104において、ECU30は、支援開始条件が成立したか否かを判定する。ここでいう支援開始条件は、特定区間BEV制御による走行支援(SOC管理)を開始可能な時に成立する条件であり、例えば、車両1が道路上にあること、及び、車両1に異常が生じていないことを含む。支援開始条件が不成立の場合には処理はステップS100に戻り、一方、支援開始条件が成立している場合には処理はステップS106に進む。なお、支援開始条件の成立に伴って、自動選択制御が上述の基本制御Aから特定区間BEV制御に切り替わる。
【0064】
ステップS106において、ECU30は、ナビECU34からの通知の有無に基づいて、予測走行経路PRの前方に特定区間ISがあるか否かを判定する。その結果、特定区間ISがない場合には処理はステップS100に戻り、一方、特定区間ISがある場合には処理はステップS108に進む。
【0065】
ステップS108において、ECU30は、ステップS106において存在すると判定された特定区間ISをBEV走行で走破するために必要とされる所要エネルギーの推定値Ezev(すなわち、必要電池残量SOCr)を、ナビECU34から取得する。なお、当該推定値Ezev(必要電池残量SOCr)の演算は、車両制御ECU30によって行われてもよい。
【0066】
次いで、ステップS110において、ECU30は、ナビECU34によって特定された地図上の車両1の位置情報に基づいて、車両1が特定区間ISに進入したか否かを判定する。その結果、当該判定結果がNoの場合(すなわち、車両1が特定区間ISへの進入前の走行区間を走行している場合)には、処理はステップS112に進む。
【0067】
ステップS112において、ECU30は、特定区間BEV制御(SOC管理)による走行支援に関する実行履歴フラグがOFFであるか否かを判定する。その結果、実行履歴フラグがOFFの場合(つまり、当該走行支援の実行履歴(実績)がない場合)には、処理はステップS114に進む。
【0068】
ステップS114の処理は、処理がステップS106からステップS108~S112を介して最初にステップS114に進んだ場合に走行モードを選択(判定)するために実行される。ステップS114の処理は、上述の「選択処理」に相当する。
【0069】
ステップS114において、ECU30は、現在の電池残量SOCと特定電池残量SOCx(=必要電池残量SOCr+マージンα)とを比較する。マージンαの大きさは、例えば、上述の予測誤差及び走行ばらつき等の誤差要因を考慮して事前に決定されている。より詳細には、さらに、マージンαは、特定電池残量SOCxを維持するようにHEVモードが実行された際に、HEVモードによって制御される電池残量SOCが必要電池残量SOCrを下回ることがないような大きさを有するように決定されている。
【0070】
ステップS114において現在の電池残量SOCが特定電池残量SOCx以上の場合(SOC≧SOCx)には、ECU30はBEVモードを選択(実行)する。一方、現在の電池残量SOCが特定電池残量SOCxより少ない場合(SOC<SOCx)には、ECU30は、電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで増えるように充電モードを選択(実行)する。
【0071】
上述のステップS114の処理が実行されることにより、走行支援(SOC管理)の開始時の電池残量SOCが特定電池残量SOCxより少ない場合を含め、マージンαを満たす特定電池残量SOCxが確保されるように当該走行支援がなされたといえる。そこで、続くステップS116において、ECU30は、実行履歴フラグをONとする。
【0072】
一方、ステップS112において実行履歴フラグがONの場合(つまり、当該走行支援の実行履歴(実績)がある場合)には、処理はステップS118に進む。ステップS118の処理も、上述の「選択処理」に相当する。
【0073】
ステップS118において、ECU30は、現在の電池残量SOCを特定電池残量SOCx又は必要電池残量SOCrと比較する。具体的には、現在の電池残量SOCが特定電池残量SOCx以上の場合(SOC≧SOCx)には、ステップS114と同様に、ECU30はBEVモードを選択(実行)する。また、現在の電池残量SOCが特定電池残量SOCxより少なく必要電池残量SOCr以上となる場合(SOXr≦SOC<SOCx)には、ECU30は、HEVモードを選択(実行)する。さらに、現在の電池残量SOCが必要電池残量SOCrより少ない場合(SOC<SOCr)には、ECU30は、電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで増えるように充電モードを選択(実行)する。
【0074】
一方、ステップS110の判定結果がYesの場合(すなわち、車両1が特定区間ISに進入した場合)には、ステップS120において、ECU30はBEVモードを選択(実行)する。
【0075】
また、ステップS116、S118、又はS120の処理に続くステップS122において、ECU30は、支援終了条件が成立したか否かを判定する。ここでいう支援終了条件は、特定区間BEV制御による走行支援(SOC管理)を終了させる時に成立する条件である。支援終了条件は、例えば、車両1が特定区域IAから退出する時、又は、ユーザがHMI機器36を操作して当該走行支援を中止した時、又は、ナビゲーションシステムによる径路案内自体を中止した時に成立する。
【0076】
ステップS122において支援終了条件が成立しない間は、ステップS100以降の処理を繰り返し実行する。一方、支援終了条件が成立した場合には、特定区間BEV制御が終了し、また、ステップS124において、ECU30は実行履歴フラグをOFFとする。すなわち、今回の走行支援の履歴がクリアされる。なお、実行履歴フラグは、支援終了条件が成立した時だけでなく、例えば、走行支援の実行中に目的地又は予測走行経路PRが更新された場合にOFFとされてもよい。
【0077】
3.効果
以上説明したように、本実施形態によれば、特定区間BEV制御の実行により、特定区間ISをBEV走行によって走破するための必要電池残量SOCrにマージンαを加えた特定電池残量SOCxを確保するためのSOC管理が走行支援として実行される。これにより、上述の予測誤差及び走行ばらつき等の誤差要因を考慮して適切な電池残量SOCの管理を行える。
【0078】
そして、本実施形態によれば、特定区間ISへの進入前の走行モードが、当該走行支援の実行履歴の有無及び電池残量SOCに基づいてBEVモード、HEVモード、及び充電モードの中から選択される。具体的には、
図6に示すステップS112~S118の処理によれば、ステップS114において走行支援の開始後の初回にBEVが選択された場合には、その後に電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで低下した際にHEVモードが選択されることになる(
図3(A)参照)。すなわち、マージンαが確保された状態でHEVモードへの移行が行われる。また、ステップS114において充電モードが選択された場合には、その後に電池残量SOCが特定電池残量SOCxにまで増えた際にHEVモードが選択されることになる(
図5参照)。すなわち、この場合にも、マージンαが確保された状態でHEVモードへの移行が行われる。HEVモードによれば、過度な充電を控えつつ特定区間ISの走破のために特定電池残量SOCx相当の電池残量SOCを確保(維持)しておくことが可能となる。このように、本実施形態によれば、特定区間ISをBEV走行で走破するための適切な電池残量SOCの管理を行えるようになる。より詳細には、特定区間ISをBEV走行で走破するための適切な電池残量SOCの確保と過度な充電の抑制とを両立可能な電池残量SOCの管理を行えるようになる。
【符号の説明】
【0079】
1 ハイブリッド電気車両(HEV)
10 パワートレーン
12 内燃機関
14、16 電動機
18 動力分割機構
20 減速機
22 駆動軸
24 車輪
26 バッテリ
30 車両制御ECU
32 センサ類
34 ナビゲーションECU
36 HMI機器