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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20241119BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20241119BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20241119BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20241119BHJP
   B60W 40/076 20120101ALI20241119BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20241119BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/12
B60W30/18
B60W40/08
B60W40/076
B60W50/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022038843
(22)【出願日】2022-03-14
(65)【公開番号】P2023133716
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024290(JP,A)
【文献】特開2020-104829(JP,A)
【文献】特開2021-109559(JP,A)
【文献】特開2017-144808(JP,A)
【文献】特開2019-156059(JP,A)
【文献】特開2019-182328(JP,A)
【文献】特開2018-043569(JP,A)
【文献】特開2019-119327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0353925(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を撮影して画像データを取得するカメラを含み、前記画像データに基いて、前記車両が走行している車線である走行車線を区画する区画線についての情報及び前記区画線と前記車両との車線幅方向の位置関係を示す情報を含む区画線情報を取得する区画線情報取得装置と、
前記車両の速度である車速を変更可能な車速変更アクチュエータと、
前記車両の舵角を変更可能な舵角アクチュエータと、
前記車両の走行状態を表す走行状態パラメータを取得可能な走行状態センサと、
前記車両の運転者の状態を表す運転者状態パラメータを取得する運転者状態センサと、
前記車両の現時点の位置を表す現時点位置パラメータ取得する位置取得装置と、
前記車両の位置に基いて前記走行車線の形状を表すパラメータを含む車線情報を取得する車線情報取得装置と、
前記区画線情報に基いて前記車両が前記走行車線に沿って走行するように前記舵角アクチュエータを制御する車線維持制御を実行するとともに、少なくとも前記走行状態パラメータに基いて前記車線維持制御の実行中に当該車線維持制御に対して予め定められている制御限界条件が成立したと判定した場合に前記車線維持制御の実行を停止する、コントロールユニットと、
を備える車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、
前記運転者状態パラメータに基いて前記運転者が前記車両の運転を行うことが不能な異常状態に陥っていると確定することが可能な異常確定状態が発生しているか否かを判定し、
前記異常確定状態が発生しているとの判定がなされた場合、前記車両を第1減速度にて減速させたと仮定したときに前記車両が停止するまでに前記制御限界条件が成立する特定状況が発生するか否かを、前記走行状態パラメータ、前記現時点位置パラメータ及び前記車線情報に基いて推定し、
前記特定状況が発生すると推定した場合、前記車両が前記第1減速度の絶対値よりも大きな絶対値を有する第2減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御し、
前記特定状況が発生しないと推定した場合、前記車両が前記第1減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御する、
ように構成された、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、
前記運転者状態パラメータに基いて前記運転者が前記異常状態に陥っている可能性があるが前記異常確定状態が発生しているとは判定できない状態である仮異常状態が発生しているか否かを判定し、
前記仮異常状態が発生しているとの判定がなされた場合、前記仮異常状態が発生しているとの判定がなされた時点から、前記車両が前記第1減速度の絶対値以下の絶対値を有する第3減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御する、
ように構成された、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、
前記異常確定状態が発生しているか否かの判定及び前記仮異常状態が発生しているか否かの判定を、前記車線維持制御の実行中に行うように構成された、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記コントロールユニットは、
前記特定状況が発生しないと推定した場合であっても、前記車両を前記第1減速度にて減速させたと仮定したときに前記車両が停止するまでに前記走行車線が所定角度以上の傾斜角を有する登坂路に進入し、且つ、前記車両を前記第2減速度にて減速させたと仮定したときに前記車両が前記登坂路に進入する前に停止可能であると判定したときには、前記車両が前記第2減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御する、
ように構成された、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が車両の運転を行うことが不能な状態に陥った場合に同車両を減速して停止させる車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転者が車両の運転を行うことが不能な状態である異常状態(即ち、運転者が車両を運転する能力を失っている状態であり、例えば、居眠り運転状態及び心身機能停止状態等)に陥っているか否かを判定し、そのような判定がなされた場合に車両を制御する装置が提案されている。例えば、このような装置の一つ(以下、「従来装置」と称呼する。)は、車線維持制御の実行中に運転者が異常状態に陥ったと判定すると、車線維持制御、減速制御及び警報制御を実行する(例えば、特許文献1を参照。)。車線維持制御は、車両が走行車線に沿って走行するように車両の舵角を自動的に変更する制御である。減速制御は、車両を減速させて停止させる制御である。警報制御は、音及び/又は光などを用いて車両の内外に警報を発生する制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-144808号公報(例えば、段落0083乃至段落0086)
【発明の概要】
【0004】
ところで、車線維持制御は、例えば、走行車線が曲線路であって車両の横加速度が予め定められた制御限界横加速度を超えるような場合、自動的に停止(キャンセル)される。従来装置は、運転者が異常状態に陥っていると判定されている場合であっても、車線維持制御が停止される状況が発生すると、「車線維持制御」のみでなく「減速制御及び警報制御」も停止してしまう。即ち、従来装置によれば、運転者が異常状態に陥っているとの判定がなされている場合であっても、その判定を活用できない事態が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、運転者が異常状態に陥っているとの判定がなされた時点以降において車線維持制御がその制御限界に至ることによって停止されるような状況にあっても、運転者が異常状態に陥っているとの判定を活用することが可能な車両制御装置を提供することにある。
【0006】
本発明の車両制御装置の一態様は、
車両の前方を撮影して画像データを取得するカメラを含み、前記画像データに基いて、前記車両が走行している車線である走行車線を区画する区画線についての情報及び前記区画線と前記車両との車線幅方向の位置関係を示す情報を含む区画線情報を取得する区画線情報取得装置(17b)と、
前記車両の速度である車速を変更可能な車速変更アクチュエータ(31、41)と、
前記車両の舵角を変更可能な舵角アクチュエータ(51、52)と、
前記車両の走行状態を表す走行状態パラメータを取得可能な走行状態センサ(11、12、14、15、16、19a、19b)と、
前記車両の運転者の状態を表す運転者状態パラメータを取得する運転者状態センサ(11、12、13、14、15、80)と、
前記車両の現時点の位置を表す現時点位置パラメータ取得する位置取得装置(20、21)と、
前記車両の位置に基いて前記走行車線の形状を表すパラメータを含む車線情報を取得する車線情報取得装置(20、22)と、
前記区画線情報に基いて前記車両が前記走行車線に沿って走行するように前記舵角アクチュエータを制御する車線維持制御を実行するとともに(ステップ1130)、少なくとも前記走行状態パラメータに基いて前記車線維持制御の実行中に当該車線維持制御に対して予め定められている制御限界条件が成立したと判定した場合に前記車線維持制御の実行を停止する(ステップ1120:Yes、ステップ1160)、コントロールユニット(10、50)と、
を備える。
【0007】
更に、前記コントロールユニットは、
前記運転者状態パラメータに基いて前記運転者が前記車両の運転を行うことが不能な異常状態に陥っていると確定することが可能な異常確定状態が発生しているか否かを判定し(ステップ665)、
前記異常確定状態が発生しているとの判定がなされた場合、前記車両を第1減速度にて減速させたと仮定したときに前記車両が停止するまでに前記制御限界条件が成立する特定状況が発生するか否かを、前記走行状態パラメータ、前記現時点位置パラメータ及び前記車線情報に基いて推定し(ステップ850、ステップ1220)、
前記特定状況が発生すると推定した場合、前記車両が前記第1減速度の絶対値よりも大きな絶対値を有する第2減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御し(ステップ850及びステップ860、ステップ920、ステップ1220及びステップ1240)、
前記特定状況が発生しないと推定した場合、前記車両が前記第1減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御する(ステップ850及びステップ830、ステップ920、ステップ1220及びステップ1230)、
ように構成されている。
【0008】
この態様によれば、前記異常確定状態が発生しているとの判定がなされた場合、前記車両を第1減速度にて減速させたと仮定したときに前記車両が停止するまでに車線維持制御の制御限界条件が成立する特定状況が発生するか否かが推定(判定)される。そして、特定状況が発生しないと推定される場合、車両は第1減速度にて減速させられる。これにより、過度な減速が行われず、且つ、車両は車線維持制御によって走行車線を走行しながらスムーズに停止させられる。
【0009】
これに対し、特定状況が発生すると推定される場合、車両は第1減速度の絶対値よりも大きな絶対値を有する第2減速度にてにて減速させられる。これにより、車線維持制御が停止される前に車両を停止する可能性を高めることができる。更に、車線維持制御が停止したとしても、その時点までに車両の速度を大きく低下させておくことができ、安全性を高めることができる。
【0010】
本発明装置の一態様において、
前記コントロールユニットは、
前記運転者状態パラメータに基いて前記運転者が前記異常状態に陥っている可能性があるが前記異常確定状態が発生しているとは判定できない状態である仮異常状態が発生しているか否かを判定し(ステップ645)、
前記仮異常状態が発生しているとの判定がなされた場合、前記仮異常状態が発生しているとの判定がなされた時点から、前記車両が前記第1減速度の絶対値以下の絶対値を有する第3減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御する(ステップ710、ステップ720、ステップ920)。
【0011】
この態様によれば、運転者が前記異常状態に陥っている疑いがある場合、車両を徐々に減速させることができる。
【0012】
本発明装置の一態様において、
前記コントロールユニットは、
前記異常確定状態が発生しているか否かの判定及び前記仮異常状態が発生しているか否かの判定を、前記車線維持制御の実行中に行うように構成される(ステップ610)。
【0013】
一般に、車線維持制御の実行中、運転者は例えばステアリングホイールを把持すること(所定時間以上に渡ってステアリングホイールを把持しない状態が続かないこと)が求められる。よって、この態様によれば、異常確定状態が発生しているか否かの判定及び前記仮異常状態が発生しているか否かの判定を、精度良く行うことができる。
【0014】
本発明装置の一態様において、
前記コントロールユニットは、
前記特定状況が発生しないと推定した場合であっても、前記車両を前記第1減速度にて減速させたと仮定したときに前記車両が停止するまでに前記走行車線が所定角度以上の傾斜角を有する登坂路に進入し(ステップ1610:Yes)、且つ、前記車両を前記第2減速度にて減速させたと仮定したときに前記車両が前記登坂路に進入する前に停止可能であると判定したときには(ステップ1620:Yes)、前記車両が前記第2減速度にて減速するように前記車速変更アクチュエータを制御する(ステップ1240)、
ように構成される。
【0015】
この態様によれば、運転者が異常状態に陥っている車両を、急登坂路の手前にて停止させる可能性を高めることができる。従って、後続車に急な制動を行わせる必要が生じる可能性を低下させることができる。
【0016】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両制御装置(第1装置)の概略構成図である。
図2】第1装置の作動を説明するための図である。
図3】第1装置の作動を説明するための図である。
図4】第1装置の作動を説明するための図である。
図5】第1装置の作動を説明するための図である。
図6】第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図7】第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図8】第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図9】第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図10】第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図11】第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図12】本発明の第2実施形態に係る車両制御装置(第2装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図13】本発明の第3実施形態に係る車両制御装置(第3装置)の作動を説明するための図である。
図14】第3装置の作動を説明するための図である。
図15】第3装置の作動を説明するための図である。
図16】第3装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
図17】第3装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態に係る車両制御装置について図面を参照しながら説明する。
【0019】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る車両制御装置(以下、「第1装置」と称呼される場合がある。)は、車両(以下において、他の車両と区別するために、「自車両」と称呼される場合がある。)に適用される。図1に示したように、第1装置は、運転支援(車両制御)ECU10、ナビゲーションECU20、パワートレインECU30、ブレーキECU40、ステアリングECU50、メータECU60、及び、ボディECU70を備えている。
【0020】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、CAN(Controller Area Network)を介して相互に情報を送信可能及び受信可能に接続されている。本明細書において、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェースI/F等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。換言すると、CPUはプログラムされたプロセッサである。これらのECU及び後述するECUは、その幾つか又は全部が一つのECUに統合されてもよい。
【0021】
運転支援ECU10は、以下に列挙するセンサ(スイッチを含む。)と接続されていて、それらのセンサの検出信号又は出力信号を受信するようになっている。なお、各センサは、運転支援ECU10以外のECUに接続されていてもよい。その場合、運転支援ECU10は、センサが接続されたECUからCANを介してそのセンサの検出信号又は出力信号を受信する。
【0022】
アクセルペダル操作量センサ11は、車両のアクセルペダル11aの操作量(アクセル開度)を検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を出力するようになっている。
ブレーキペダル操作量センサ12は、車両のブレーキペダル12aの操作量を検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を出力するようになっている。
【0023】
タッチセンサ13は、運転者が操舵ハンドルSWに触れているときにハイレベル信号を出力し、運転者が操舵ハンドルSWに触れていないときにローレベル信号を出力するようになっている。
操舵角センサ14は、車両の操舵角を検出し、操舵角θを表す信号を出力するようになっている。
操舵トルクセンサ15は、操舵ハンドルSWの操作により車両のステアリングシャフトUSに加わる操舵トルクを検出し、操舵トルクTraを表す信号を出力するようになっている。
車速センサ16は、車両の走行速度(車速)を検出し、車速SPDを表す信号を出力するようになっている。
【0024】
レーダセンサ17aは、ミリ波帯の電波を用いて、車両の前方の道路、及び、その道路に存在する立体物(物標)に関する情報(以下、「レーダ物標情報」と称呼する。)を取得するようになっている。レーダ物標情報は、検出した各物標(n)に対する、自車両からの縦距離Dfx(n)、相対速度Vfx(n)、及び、方位H(n)等を含む。
【0025】
カメラ装置17bは、何れも図示しない「ステレオカメラ及び画像処理部(ECU)」を備えている。
ステレオカメラは、車両前方の左側領域及び右側領域の風景であって車両の前後方向の軸を中心とした所定の水平方向の画角内の風景を撮影して左右一対の画像データを取得する。
画像処理部は、ステレオカメラが撮影した左右一対の画像データに基づいて、道路の左及び右の白線などのレーンマーカー(以下、単に「白線」と称呼する。)を認識する。画像処理部は、その認識した白線についての情報に基いて、車両が現時点において走行している車線(以下、「走行車線」と称呼する。)の曲率半径(又は、曲率半径の逆数である曲率)、及び、白線と車両との車線幅方向の位置関係を示すパラメータ等を取得するようになっている。
【0026】
即ち、カメラ装置17bは、車両の前方を撮影して画像データを取得するカメラを含み、その画像データに基いて、車両が走行している車線である走行車線を区画する区画線(白線)についての情報及び区画線と車両との車線幅方向の位置関係を示す情報を含む区画線情報を取得する区画線情報取得装置を構成している。なお、カメラ装置17bは、区画線情報を取得できる限り、ステレオカメラに代えて単眼カメラを備えていてもよい。更に、カメラ装置17bは、車両の前方の道路に存在する立体物に関する情報(以下、「カマラ物標情報」と称呼する。)を取得する。
【0027】
操作スイッチ18は、運転者により操作されるスイッチである。運転者は、操作スイッチ18を操作することにより、後述する「車線維持制御(LTA:レーン・トレーシング・アシスト・コントロール)」を実行するか否かを選択することができる。更に、運転者は、操作スイッチ18を操作することにより、追従車間距離制御(ACC:アダプティブ・クルーズ・コントロール)を実行するか否かを選択することができる。
【0028】
なお、追従車間距離制御は、レーダセンサ17a及びカメラ装置17bにより取得される物標情報に基いて、車両の直前を走行している先行車(追従対象車両)と車両との車間距離を所定の距離に維持しながら、車両を先行車に追従させる制御である。更に、追従車間距離制御は、追従対象車両が存在していない場合、車両の実際の車速が所定の目標車速に一致するように車両を走行させる制御である。追従車間距離制御自体は周知であるので、詳細な説明を省略する(例えば、特開2014-148293号公報、特開2006-315491号公報、特許第4172434号明細書、及び、特許第4929777号明細書等を参照。)。
【0029】
ヨーレートセンサ19aは、車両のヨーレートを検出し、実ヨーレートYRaを出力するようになっている。
横加速度センサ19bは、車両の横加速度を検出し、実横加速度Gyを出力するようになっている。
【0030】
なお、アクセルペダル操作量センサ11、ブレーキペダル操作量センサ12、操舵角センサ14、操舵トルクセンサ15、車速センサ16、ヨーレートセンサ19a及び横加速度センサ19b等は、車両の走行状態を表す走行状態パラメータを取得可能な走行状態センサである。
更に、アクセルペダル操作量センサ11、ブレーキペダル操作量センサ12、タッチセンサ13、操舵角センサ14及び操舵トルクセンサ15等は、車両の運転者の状態を表す運転者状態パラメータを取得する運転者状態センサである。なお、操舵角センサは、運転者状態センサとして含まれていなくてもよく、上記以外の他のセンサが運転者状態センサとして含まれていてもよい。
【0031】
ナビゲーションECU20は、車両の位置を検出するためのGPS信号を受信するGPS受信機21、地図情報等を記憶した地図データベース22、及び、タッチパネル式ディスプレイ23等と接続されている。ナビゲーションECU20は、GPS信号に基いて現時点の車両の位置(現在の位置)Pnowを取得するとともに、車両の位置Pnow及び地図データベース22に記憶されている地図情報等に基づいて各種の演算処理を行い、ディスプレイ23を用いて経路案内を行う。車両の位置は緯度及び経度により表される。ナビゲーションECU20及びGPS受信機21は、車両の現時点の位置(Pnow)を表す現時点位置パラメータを取得する位置取得装置を構成している。
【0032】
地図データベース22に記憶されている地図情報には、車線情報(道路情報)が含まれている。車線情報には、車線(道路)の区間毎における車線の形状を示すパラメータ(例えば、車線の曲率半径又は曲率、及び、傾斜角等)が含まれている。
【0033】
従って、ナビゲーションECU20及び地図データベース22は、走行車線の形状及び走行車線の傾斜角を表すパラメータを含む車線情報を取得することができる車線情報取得装置を構成している。なお、ナビゲーションECU20は図示しない通信装置を用いて、車両の外部(例えば、情報センター)から走行車線の形状及び走行車線の傾斜角を表すパラメータを含む車線情報を取得するように構成されていてもよい。
【0034】
パワートレインECU30は、パワートレインアクチュエータ31に接続されている。パワートレインアクチュエータ31は、パワートレイン(内燃機関及び/又は電動機)32を制御して車両の駆動輪に伝達される駆動力を変更するためのアクチュエータである。
【0035】
ブレーキECU40は、ブレーキアクチュエータ41に接続されている。ブレーキアクチュエータ41は、摩擦ブレーキ装置42を制御して車両に付与される制動力(摩擦制動力)を変更するためのアクチュエータである。
【0036】
なお、パワートレインアクチュエータ31及びブレーキアクチュエータ41は、車両の速度(車速)を変更可能な車速変更アクチュエータと称呼される場合がある。
【0037】
ステアリングECU50は、周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であって、モータドライバ51に接続されている。モータドライバ51は、転舵用モータ52に接続されている。転舵用モータ52は、図示しない車両の「操舵ハンドル、操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフト及び操舵用ギア機構等を含むステアリング機構」に組み込まれている。転舵用モータ52は、モータドライバ51から供給される電力によってトルクを発生し、このトルクによって左右の操舵輪の転舵角(即ち、車両の舵角)を変更することができる。なお、モータドライバ51及び転舵用モータ52等は、車両の舵角を変更可能な舵角アクチュエータを構成している。
【0038】
メータECU60は、ハザードランプ61、ストップランプ62、ブザー(車室内警報音発生装置)63、メータディスプレイ64等と接続されていて、これらを制御することができる。
【0039】
ボディECU70は、ホーン(車外警報音発生装置)71に接続されている。
【0040】
更に、運転支援ECU10は、確認ボタン80と接続されている。確認ボタン80は、運転者により操作可能な位置に配設されていて、操作されていない場合にはローレベル信号を出力し、押動操作されるとハイレベル信号を出力するようになっている。
【0041】
(作動の概要)
第1装置は、走行車線が直線路及び曲率半径が一定の曲線路の組み合わせから構成されているという前提に基いて設計されている。
第1装置は、車線維持制御の実行中において、運転者が「車両の運転を行うことが不能な(不適切な)状態(即ち、異常状態)」に陥っている可能性があるか否かを、「運転者状態センサにより取得された運転者状態パラメータ」に基づいて判定している。
【0042】
第1装置は、運転者が異常状態に陥っている可能性があると判定した場合(即ち、仮異常判定がなされた場合)、その後に車線維持制御の制御限界が到来して車線維持制御が停止(キャンセル)されるか否かに関わらず車両を最小減速度DGminにて緩やかに減速して停止させる。
【0043】
例えば、図2に示した例では、車両が地点P21に到達したときに仮異常判定がなされ、その地点P21以降において車両は最小減速度DGminにて減速される。従って、車両が地点P22から曲線路C2に進入した後も車両は最小減速度DGminにて減速され、この例では地点P23にて停止する。この場合、車両が地点P22と地点P23との間を走行しているときに車線維持制御の制御限界が到来して車線維持制御が停止(キャンセル)されたとしても、車両は停止するまで最小減速度DGminにて減速され続ける。
【0044】
第1装置は、車線維持制御の実行中において、仮異常判定がなされた後、運転者が異常状態に陥っていると確定することができるか否かを運転者状態パラメータに基づいて判定している。
【0045】
第1装置は、運転者が異常状態に陥っていると確定することができると判定すると(即ち、異常確定判定がなされた場合)、車両を「最小減速度DGminより大きい通常減速度DGnor」にて減速した場合に車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が到来するか否かを予測(判定)する。
【0046】
第1装置は、車線維持制御の制御限界が到来しないと予測(判定)した場合、車両を通常減速度DGnorにて減速して停止させる。
【0047】
例えば、図3に示した例では、車両が地点P31に到達したときに仮異常判定がなされ、その地点P31以降において車両は最小減速度DGminにて減速される。その後、車両が地点P32に到達したときに異常確定判定がなされている。この例では、第1装置は、車両が曲線路C3に進入した後も車線維持制御の制御限界が到来しないと予測している。よって、第1装置は地点P32以降において車両を通常減速度DGnorにて減速する。そして、この例では、車線維持制御が実行されながら車両が曲線路C3を通過した後の地点P34に到達したとき、車両は停止する。
【0048】
これに対し、第1装置は、異常確定判定がなされたとき、車両を通常減速度DGnorにて減速した場合に車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が到来すると予測した場合、車両を「通常減速度DGnorより大きい最大減速度DGmax」にて減速して停止させる。
【0049】
例えば、図4に示した例では、車両が地点P41に到達したときに仮異常判定がなされ、その地点P41以降において車両は最小減速度DGminにて減速される。その後、車両が地点P42に到達したときに異常確定判定がなされている。この例では、第1装置は、車両が曲線路C4に進入した後に車線維持制御の制御限界が到来すると予測している。よって、第1装置は地点P42以降において車両を最大減速度DGmaxにて減速する。その結果、この例では、車両が曲線路C4に進入する前の地点P43にて停止する。
【0050】
例えば、図5に示した例では、車両が地点P51に到達したときに仮異常判定がなされ、その地点P51以降において車両は最小減速度DGminにて減速される。その後、車両が地点P52に到達したときに異常確定判定がなされている。この例では、第1装置は、車両が曲線路C5に進入した後に車線維持制御の制御限界が到来すると予測している。よって、第1装置は地点P52以降において車両を最大減速度DGmaxにて減速する。そして、この例では、車両が曲線路C5に進入した後の地点P54にて停止する。この場合、車両が地点P53と地点P54との間を走行しているときに車線維持制御の制御限界が到来して車線維持制御が停止(キャンセル)されたとしても、車両は最大減速度DGmaxにて減速される。
【0051】
(具体的作動)
次に、第1装置に係るECU10のCPUの作動について説明する。CPUは、所定時間が経過する毎に図6乃至図11にフローチャートにより示したルーチンのそれぞれを実行するようになっている。
【0052】
・運転者の異常判定
所定のタイミングになると、CPUは図6のステップ600から処理を開始してステップ605に進み、異常確定判定フラグXHijoの値が「0」であるか否かを判定する。
【0053】
この異常確定判定フラグXHijoの値は図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUにより実行される図示しないイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定される。更に、後述するように、異常確定判定フラグXHijoの値は、自車両の運転者が「自車両の運転を行うことが不能な状態(即ち、異常状態)に陥っている」との判定が確定したときに「1」に設定される。
【0054】
異常確定判定フラグXHijoの値が「0」でなければ(「1」であれば)、CPUはステップ605にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0055】
これに対し、フラグXHijoの値が「0」であるとき、CPUはステップ605にて「Yes」と判定してステップ610に進み、現時点において車線維持制御が実行されているか否かを判定する。
【0056】
車線維持制御が実行中でない場合、CPUはステップ610にて「No」と判定し、以下に述べる「ステップ615及びステップ620」の処理を順に行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0057】
ステップ615:CPUは、後述する異常判定タイマTijoの値を「0」に設定する。
ステップ620:CPUは、仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値のそれぞれを「0」に設定する。
【0058】
この仮異常判定フラグXKijoの値は上述したイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定され、後述するように、運転者が「異常状態に陥っている可能性がある」と判定されたとき(即ち、仮異常判定がなされたとき)に「1」に設定される。
【0059】
これに対し、車線維持制御が実行されている場合、CPUはステップ610にて「Yes」と判定してステップ625に進み、現時点が運転無操作状態であるか否かを判定する。運転無操作状態とは、運転者によって「アクセルペダル操作量AP、ブレーキペダル操作量BP、操舵トルクTra及びタッチセンサ13から出力されているローレベル信号」の一つ以上の組み合わせからなるパラメータの何れもが、「現時点から所定時間前の時点」から「現時点」までの間に変化しない状態である。
【0060】
現時点が運転無操作状態でない場合、CPUはステップ625にて「No」と判定し、上述した「ステップ615及びステップ620の処理」を順に行い、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0061】
現時点が運転無操作状態である場合、CPUはステップ625にて「Yes」と判定してステップ630に進む。CPUはステップ630にて、異常判定タイマTijoの値を「1」だけ増大させる。従って、異常判定タイマTijoの値は、運転無操作状態の継続時間を示す。
【0062】
次に、CPUはステップ635に進み、異常判定タイマTijoの値が警告開始閾値時間Tkeikoku以上であるか否かを判定する。異常判定タイマTijoの値が警告開始閾値時間Tkeikoku未満であれば、CPUはステップ635にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0063】
これに対し、異常判定タイマTijoの値が警告開始閾値時間Tkeikoku以上であると、CPUはステップ635にて「Yes」と判定してステップ640に進む。CPUはステップ640にて、メータECU60に指示信号を送信することにより、ブザー63から警告音を発生させ、メータディスプレイ64に「ウォーニングランプ」を点滅表示させるとともに「アクセルペダル11a、ブレーキペダル12a及び操舵ハンドルSWの何れかを操作することを促す警告メッセージ」を表示させる。
【0064】
次に、CPUはステップ645に進み、異常判定タイマTijoの値が仮異常判定閾値時間TKijoth以上であるか否かを判定する。仮異常判定閾値時間TKijothは、警告開始閾値時間Tkeikokuよりも長い時間に設定されている。異常判定タイマTijoの値が仮異常判定閾値時間TKijoth未満であれば、CPUはステップ645にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0065】
これに対し、異常判定タイマTijoの値が仮異常判定閾値時間TKijoth以上であると、CPUはステップ645にて「Yes」と判定してステップ650に進む。CPUは、ステップ650にて、仮異常判定フラグXKijoの値を「1」に設定する。即ち、CPUは、運転無操作状態の継続時間が仮異常判定閾値時間TKijothに相当する時間以上に渡って継続したとき、運転者が自車両の運転を行うことが不能な状態(即ち、異常状態)に陥っている可能性があると判定する。
【0066】
次に、CPUはステップ655に進み、異常判定タイマTijoの値が異常確定判定閾値時間THijoth以上であるか否かを判定する。異常確定判定閾値時間THijothは、仮異常判定閾値時間TKijothよりも長い時間に設定されている。異常判定タイマTijoの値が異常確定判定閾値時間THijoth未満であれば、CPUはステップ655にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0067】
これに対し、異常判定タイマTijoの値が異常確定判定閾値時間THijoth以上であると、CPUはステップ655にて「Yes」と判定してステップ660に進む。CPUはステップ660にて、仮異常判定フラグXKijoの値を「0」に設定するとともに異常確定判定フラグXHijoの値を「1」に設定する。そして、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、CPUは、運転無操作状態の継続時間が異常確定判定閾値時間THijothに相当する時間以上に渡って継続したとき、運転者が自車両の運転を行うことが不能な状態(即ち、異常状態)に陥っているとの判定を確定する。
【0068】
このように、運転無操作状態が警告開始閾値時間Tkeikokuに相当する時間以上になると運転者に対して運転操作を促す警告が行われる。その後、運転無操作状態が仮異常判定閾値時間TKijothに相当する時間以上になると運転者が異常状態に陥っている可能性があると判定され、仮異常判定フラグXKijoの値が「1」に設定される。即ち、仮異常判定がなされる。更に、運転無操作状態が異常確定判定閾値時間THijothに相当する時間以上になると運転者が異常状態に陥っているとの判定が確定され、異常確定判定フラグXHijoの値が「1」に設定される。即ち、異常確定判定がなされる。
【0069】
・仮異常判定中の目標減速度設定処理
所定のタイミングになると、CPUは図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、現時点が仮異常判定がなされている状態であるか否か(即ち、仮異常判定フラグXKijoの値が「1」であるか否か)を判定する。現時点が仮異常判定がなされている状態でなければ(即ち、仮異常判定フラグXKijoの値が「0」であれば)、CPUはステップ710にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0070】
これに対し、現時点が仮異常判定がなされている状態であるとき(即ち、仮異常判定フラグXKijoの値が「1」であるとき)、CPUはステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進む。CPUはステップ720にて、目標減速度DGtgtの値を一定の最小減速度DGminに設定する。なお、本明細書において、減速度は正の値により表され、単位時間内における車速の低下量の大きさを表す。従って、減速度が大きいほど、車速は速やかに減少する。その後、CPUはステップ795に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
このように、現時点が仮異常判定がなされている状態であるとき、目標減速度DGtgtの値は最小減速度DGminに設定される。なお、最小減速度DGminは便宜上「第3減速度」と称呼される場合がある。
【0072】
・異常確定判定時の目標減速度設定処理
所定のタイミングになると、CPUは図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、現時点が異常確定判定がなされた時点の直後であるか否かを判定する。換言すると、CPUは、現時点が「異常確定判定フラグXHijoの値が「0」から「1」へと変更された時点」の直後であるか否かを判定する。
【0073】
現時点が異常確定判定がなされた時点の直後でなければ、CPUはステップ810にて「No」と判定し、ステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0074】
これに対し、現時点が異常確定判定がなされた時点の直後であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進む。CPUはステップ820にて、車両が現時点において走行している車線(即ち、走行車線)が直線路であるか否かを、カメラ装置17bが取得している曲率半径Rに基いて判定する。より具体的に述べると、CPUは、曲率半径Rが曲線路判定閾値Rctthより大きいとき、走行車線は直線路であると判定する。
【0075】
走行車線が直線路でない場合(即ち、曲線路である場合)、現時点において車線維持制御が実行されていることから、その後に車線維持制御の制御限界が到来して車線維持制御が停止(キャンセル)されることはないと考えられる。従って、この場合、CPUはステップ820にて「No」と判定し、ステップ830に進む。CPUは、ステップ830にて、目標減速度DGtgtの値を「最小減速度DGmin以上の一定の通常減速度DGnor(最小減速度DGminの絶対値以上の絶対値を有する通常減速度DGnor)」に設定する。その後、CPUはステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、通常減速度DGnorは便宜上「第1減速度」と称呼される場合がある。通常減速度DGnorの絶対値は、最小減速度DGminの絶対値と等しくてもよいが、最小減速度DGminの絶対値よりも大きいことが好ましい。
【0076】
一方、CPUはステップ820に進んだ時点において、走行車線が直線路である場合、CPUはそのステップ820にて「Yes」と判定してステップ840に進む。CPUはステップ840にて、車両が現時点の車速から通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する前に車両が曲線路に進入するか否かを判定する。具体的には、CPUは、現時点の車速SPD、通常減速度DGnor及びナビゲーションECU20を介して地図データベース22から取得される情報(車線情報)に基いて、車両が停止するまでに通過するであろう走行車線上に「曲率半径Rが曲線路判定閾値Rctth以下になる部分」が存在するか否かを判定する。
【0077】
車両が通常減速度DGnorにて減速した場合に車両が停止する前に車両が曲線路に進入しないとき、CPUはステップ840にて「No」と判定し、ステップ830の処理を実行し、その後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、この場合、目標減速度DGtgtの値は通常減速度DGnorに設定される。
【0078】
これに対し、車両が通常減速度DGnorにて減速した場合に車両が停止する前に車両が曲線路に進入するとき、CPUはステップ840にて「Yes」と判定してステップ850に進む。CPUはステップ850にて、車両が現時点の車速から通常減速度DGnorにて減速した場合に、進入すると予測される曲線路において車線維持制御の制御限界条件が成立することがないか否かを判定する。つまり、CPUは、車線維持制御がキャンセル(停止)されることなく車両が曲線路を走破することが可能(車両が曲線路走行中に停止する場合も含む。)であるか否かを判定する。車線維持制御の制御限界条件は、例えば、少なくとも「車両の横加速度が制御限界横加速度Gyth以上である」とき成立する。
【0079】
より具体的に述べると、CPUは車両を現時点の車速から通常減速度DGnorにて減速した場合に進入することが予測される曲線路の入口時点での車速(以下、「曲線路進入車速」と称呼する。)を計算により予測する。そして、CPUは、ステップ850にて、曲線路進入車速とその曲線路の曲率半径とから車両の横加速度を推定し、その推定した横加速度が制御限界横加速度未満であるか否かを判定する。
【0080】
進入すると予測される曲線路において車線維持制御の制御限界条件が成立することがない場合(即ち、推定した横加速度が制御限界横加速度未満である場合)、CPUはステップ850にて「Yes」と判定してステップ830に進む。CPUはステップ830にて、目標減速度DGtgtの値を通常減速度DGnorに設定する。その後、CPUはステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0081】
これに対し、進入すると予測される曲線路において車線維持制御の制御限界条件が成立する場合(即ち、推定した横加速度が制御限界横加速度以上であり、曲線路を走破不能である場合)、CPUはステップ850にて「No」と判定しステップ860に進む。CPUはステップ860にて、目標減速度DGtgtの値を「通常減速度DGnorより大きい一定の最大減速度DGmax(通常減速度DGnorの絶対値より大きい絶対値を有する最大減速度DGmax)」に設定する。その後、CPUはステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、最大減速度DGmaxは、システム上許容されている自車両の減速度のの最大値であり、便宜上「第2減速度」と称呼される場合がある。
【0082】
・異常判定時の減速制御
所定のタイミングになると、CPUは図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進み、仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の何れか一方が「1」であるか否かを判定する。仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の何れもが「0」である場合、CPUはステップ910にて「No」と判定し、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0083】
これに対し、仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の何れか一方が「1」である場合、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進む。
【0084】
CPUはステップ920にて、車両の実際の減速度(車速SPDの単位時間あたりの減少量の絶対値)が目標減速度DGtgtに一致するように車両を減速させる。次に、CPUはステップ930に進み、車内及び車外に対して警報を行う。より具体的に述べると、CPUはメータECU60に指示を送信し、ハザードランプ61を点滅させ、ストップランプ62を点灯させ、ブザー63から車内警報音を発生させ、且つ、メータディスプレイ64に警告を表示させる。更に、CPUは、ボディECU70に指示を送信し、ホーン71から車外警報音を発生させる。その後、CPUはステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0085】
・車線維持制御の開始許可判定
所定のタイミングになると、CPUは図10のステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、車線維持制御許可フラグXLTAの値が「0」であるか否かを判定する。車線維持制御許可フラグXLTAの値は上述したイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定される。車線維持制御許可フラグXLTAの値が「0」でなければ(「1」であれば)、CPUはステップ1010にて「No」と判定し、ステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0086】
これに対し、車線維持制御許可フラグXLTAの値が「0」である場合、CPUはステップ1010にて「Yes」と判定してステップ1020に進む。CPUはステップ1020にて、車線維持制御の開始許可条件が成立しているか否かを判定する。
【0087】
車線維持制御の開始許可条件は、以下の条件が総て成立するとき、成立する。
(条件A1)操作スイッチ18の操作によって、車線維持制御が選択された直後である。
(条件A2)追従車間距離制御の実行中である。
(条件A3)実横加速度Gyの大きさが制御限界横加速度Gyth未満である。
(条件A4)道路の左及び右のレーンマーカー(白線)がカメラ装置17bによって認識されている。
【0088】
車線維持制御の開始許可条件が成立していない場合、CPUはステップ1020にて「No」と判定し、ステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0089】
これに対し、車線維持制御の開始許可条件が成立している場合、CPUはステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1030に進む。CPUはステップ1030にて、車線維持制御許可フラグXLTAの値を「1」に設定し、ステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0090】
・車線維持制御の実行及び終了判定
所定のタイミングになると、CPUは図11のステップ1100から処理を開始してステップ1110に進み、車線維持制御許可フラグXLTAの値が「1」であるか否かを判定する。車線維持制御許可フラグXLTAの値が「1」でなければ、CPUはステップ1110にて「No」と判定し、ステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、車線維持制御は実行されない。
【0091】
これに対し、車線維持制御許可フラグXLTAの値が「1」である場合、CPUはステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1120に進み、車線維持制御の制御限界条件が実際に成立しているか否かを判定する。この場合、CPUは、実横加速度Gyが制御限界横加速度Gyth以上であるか否かを判定する。
【0092】
車線維持制御の制御限界条件が成立していない場合、CPUはステップ1120にて「No」と判定してステップ1130に進み、車線維持制御を実行する。車線維持制御は、車両の車線幅方向の位置が「走行車線(その車両が走行しているレーン)」内の目標走行ライン付近に維持されるように、操舵トルクをステアリング機構に付与して運転者の操舵操作を支援する周知の制御である(例えば、特開2008-195402号公報、特開2009-190464号公報、特開2010-6279号公報、及び、特許第4349210号明細書、等を参照。)。従って、以下、簡単に説明する。
【0093】
CPUは、カメラ装置17bから送信された画像データに基づいて走行車線を規定している「左白線LL及び右白線LR」を認識(取得)し、それらの一対の白線の中央位置を目標走行ラインLdとして決定する。更に、CPUは、目標走行ラインLdの曲率半径(カーブ半径)Rと、走行車線における車両の位置及び向きと、を演算する。
【0094】
そして、CPUは、車両の前端中央位置と目標走行ラインLdとの間の車線路幅方向の距離Dc(以下、「センター距離Dc」と称呼する。)と、目標走行ラインLdの方向と車両の進行方向とのずれ角θy(以下、「ヨー角θy」と称呼する。)と、を演算する。
【0095】
更に、CPUは、センター距離Dcとヨー角θyと曲率ν(=1/曲率半径R)とを下記(1)式に適用することにより、目標ヨーレートYRtgtを算出する。(1)式において、K1、K2及びK3は制御ゲインである。目標ヨーレートYRtgtは、車両が目標走行ラインLdに沿って走行できるように設定されるヨーレートである。

YRtgt=K1×Dc+K2×θy+K3×ν …(1)
【0096】
CPUは、この目標ヨーレートYRtgtと実ヨーレートYRaとに基づいて、目標ヨーレートYRtgtを得るための目標操舵トルクTrtgtを算出する。より具体的に述べると、ECU10は、目標ヨーレートYRtgt、実ヨーレートYRa及び車速と、目標操舵トルクTrtgtと、の関係をルックアップテーブルの形式にて予め記憶している。CPUは、このテーブルに、上記のようにして得られた「目標ヨーレートYRtgt、実ヨーレートYRa及び車速SPD」を適用することにより目標操舵トルクTrtgtを算出する。そして、運転支援ECU10は、実際の操舵トルクTraが目標操舵トルクTrtgtに一致するように、ステアリングECU50を用いて転舵用モータ52を制御する。以上が、車線維持制御の概要である。
【0097】
次に、CPUはステップ1140に進み、車線維持制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。車線維持制御の終了条件は、例えば、操作スイッチ18の操作によって、車線維持制御の終了が選択された場合に成立する。
【0098】
車線維持制御の終了条件が成立していなければ、CPUはステップ1140にて「No」と判定し、ステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、車線維持制御の終了条件が成立していると、CPUはステップ1140にて「Yes」と判定し、ステップ1150に進む。そして、CPUはステップ1150にて車線維持制御許可フラグXLTAの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0099】
一方、CPUがステップ1120に進んだとき、車線維持制御の制御限界条件が成立している場合、CPUはステップ1120にて「Yes」と判定してステップ1160に進む。CPUはステップ1160にて車線維持制御を一時的に停止(即ち、中断又はキャンセル)する。その後、CPUはステップ1140に進む。
【0100】
以上、説明したように、第1装置は、仮異常判定がなされると、車両を最小減速度DGminにて緩やかに減速する。第1装置は、その状態において異常確定判定がなされると、車両を「最小減速度DGminより大きい通常減速度DGnor」にて減速する。但し、異常確定判定がなされた時点から車両を通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が超えることが予測されるとき、第1装置は車両を「通常減速度DGnorより大きい最大減速度DGmax」にて減速する。この最小減速度DGmin、通常減速度DGnor及び最大減速度DGmaxの何れかに従う車両の減速制御は、車線維持制御の制御限界が到来して車線維持制御が実際に一時的に停止(キャンセル)されるか否かに関わらず行われる。
【0101】
これにより、「運転者に対する異常確定判定がなされた状態にて車両が直線路から曲線路へ進入して車線維持制御の制御限界が到来し、車線維持制御がキャンセルされ、その車線維持制御のキャンセルに伴って異常確定判定に基づく車両の減速制御が停止されてしまう事態」を回避することができる。更に、車線維持制御の制御限界が到来することが予測される場合、車両が最大減速度DGmaxにて減速させられるので、車両が曲線路に進入する前に車両を停止することができる可能性を高くすることができる。加えて、仮に車両が曲線路に進入して車線維持制御の制御限界が到来したとしても、その時点までに車速を十分に低下させておくことができる。
【0102】
<第1実施形態の変形例>
この変形例に係る運転支援ECU10のCPUは、図8のステップ850にて、以下の条件C1及び条件D1の少なくとも一方が成立したとき、「車両が進入すると予測される曲線路において車線維持制御の制御限界条件が成立する」と判定する。
(条件C1)車両が進入すると予測される曲線路において予測される車両の横加速度が制御限界横加速度Gyth以上になる。
(条件D1)車両が進入すると予測される曲線路の曲率半径が、制御限界半径閾値Rltth以下である。制御限界半径閾値Rltthは、カメラ装置17bのカメラによって取得された画像データに車両の近傍の白線が含まれないほど(つまり、車両の近傍の白線がカメラの撮影範囲外になる程度に)曲線路が急カーブであることを示す値に設定されている。
【0103】
更に、この変形例に係る運転支援ECU10のCPUは、図11のステップ1120にて、以下の条件C2及び条件D2の少なくとも一方が成立したとき、車線維持制御の制御限界条件が実際に成立していると判定する。
(条件C2)実横加速度Gyが制御限界横加速度Gyth以上である。
(条件D2)カメラ装置17bが車両の近傍の「左白線LL及び右白線LR」の少なくとも一方を認識できていない。
【0104】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る車両制御装置(以下、「第2装置」と称呼される場合がある。)は、一つの曲線路の曲率が当該曲線路の開始時点から終了地点までの区間において変化するという前提に基いて設計されている。第2装置は、運転支援ECU10のCPUが、図8に示されたルーチンに代えて、図12にフローチャートにより示されたルーチンを実行する点のみにおいて第1装置と相違している。以下、この相違点を中心に説明する。
【0105】
所定のタイミングになると、CPUは図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進み、現時点が異常確定判定がなされた時点の直後であるか否かを判定する。換言すると、CPUは、現時点が「異常確定判定フラグXHijoの値が「0」から「1」へと変更された時点」の直後であるか否かを判定する。
【0106】
現時点が異常確定判定がなされた時点の直後でなければ、CPUはステップ1210にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0107】
これに対し、現時点が異常確定判定がなされた時点の直後であると、CPUはステップ1210にて「Yes」と判定してステップ1220に進む。CPUはステップ1220にて、車両が現時点の車速から一定の通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する前に、車線維持制御の制御限界条件が成立するか否かを判定する。つまり、CPUは、車両が停止する前に車線維持制御がキャンセル(停止)される可能性があるか否かを判定する。車線維持制御の制御限界条件は、例えば、少なくとも「車両の横加速度が制御限界横加速度Gyth以上である」とき成立する。
【0108】
より具体的に述べると、CPUは、車両が現時点の車速から通常減速度DGnorにて減速を開始したと仮定した場合に、時間t後の「車速SPD(t)及び車両の位置P(t)」を、現時点の車速SPDnow及び現時点の位置Pnowに基いて算出する。次に、CPUは位置P(t)における曲率半径R(t)をナビゲーションECU20を介して地図データベース22から読み取る。そして、CPUは、車速SPD(t)及び曲率半径R(t)から時間t後の車両の横加速度Gy(t)を推定し、その推定されて横加速度Gy(t)が制御限界横加速度Gyth以上であるか否かを判定する。CPUは、時間tが「車両が通常減速度DGnorにて減速したときに停止するまでに要する時間」になるまで、時間tを「0」から微小時間Δtずつ増加させながら上述した判定を繰り返す。
【0109】
そして、車両が通常減速度DGnorにて減速したときに停止するまでに、推定された横加速度Gy(t)が制御限界横加速度Gyth以上とならない場合(即ち、車線維持制御がその制御限界を迎えないと推定される場合)、CPUはステップ1220にて「No」と判定してステップ1230に進み、目標減速度DGtgtの値を通常減速度DGnorに設定する。その後、CPUはステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0110】
これに対し、車両が通常減速度DGnorにて減速したときに停止するまでに、推定されて横加速度Gy(t)が制御限界横加速度Gyth以上となる場合(即ち、車線維持制御がその制御限界を迎えると推定される場合)、CPUはステップ1220にて「Yes」判定してステップ1240に進む。CPUはステップ1240にて、目標減速度DGtgtの値を最大減速度DGmaxに設定する。その後、CPUはステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0111】
以上、説明したように、第2装置は、仮異常判定がなされると、車両を最小減速度DGminにて緩やかに減速する。第2装置は、その状態において異常確定判定がなされると、車両を通常減速度DGnorにて減速する。但し、異常確定判定がなされた時点から車両を通常減速度DGnorにて減速した場合に車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が超えることが予測されるとき、第2装置は車両を最大減速度DGmaxにて減速する。この最小減速度DGmin、通常減速度DGnor及び最大減速度DGmaxの何れかに従う車両の減速制御は、車線維持制御の制御限界が到来して車線維持制御が実際に一時的に停止(キャンセル)されるか否かに関わらず行われる。更に、第2装置は、曲線路の曲率が当該曲線路の開始時点から終了地点までの区間において変化する場合であっても(例えば、曲線路の入口直後の区間及び出口手前の区間がクロソイド曲線の区間であっても)、異常確定判定がなされた時点から車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が超えるか否かを精度良く推定することができる。
【0112】
<第2実施形態の変形例>
この変形例に係る運転支援ECU10のCPUは、図12のステップ1220にて、以下の条件C3及び条件D3の少なくとも一方が成立したとき、車両が停止する前に車線維持制御の制御限界条件が成立すると判定する。
(条件C3)車両が現時点の車速から一定の通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する前に、予測される車両の横加速度が制御限界横加速度Gyth以上になる。
(条件D3)車両が現時点の車速から一定の通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する前に、曲率半径が制御限界半径閾値Rltth以下となる部分が存在する。
【0113】
なお、この変形例に係る運転支援ECU10のCPUは、図11のステップ1120にて、上述した「条件C2及び条件D2」の少なくとも一方が成立したとき、車線維持制御の制御限界条件が実際に成立していると判定する。
【0114】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る車両制御装置(以下、「第3装置」と称呼される場合がある。)は、走行車線に急勾配の登坂路を含む場合、以下のように作動する点において第2装置と相違する。
【0115】
第3装置は、仮異常判定ながされると、第1装置と同様、車両を最小減速度DGminにて緩やかに減速する(図13の地点P61から地点P63を参照。)。但し、車速SPDが停止直前車速SPDthにまで低下した時点において車両が走行している車線が急勾配の登坂路であるとき、第3装置は、その時点の車速を維持する(図13の地点P63から地点P64を参照。)。その後、車両が走行している車線が急勾配の登坂路でなくなれば、第3装置は車両が停止するまで車両を最小減速度DGminにて緩やかに減速する(図13の地点P64から地点P65を参照。)。
【0116】
第3装置は、異常確定判定ながされると、車両を通常減速度DGnorにて減速する。但し、異常確定判定がなされた時点から車両を通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が超えることが予測されるとき、第3装置は、第2装置と同様、車両を「通常減速度DGnorより大きい最大減速度DGmax」にて減速する。加えて、第3装置は、異常確定判定がなされた時点から車両を通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が超えることが予測されない場合であっても、異常確定判定がなされた時点から車両を通常減速度DGnorにて減速した場合に車両が停止する時点までに車両が急勾配の登坂路に進入すると予測されるとき、車両を最大減速度DGmaxにて減速すれば車両が急勾配の登坂路に進入する前に停止可能か否かを判定する。第3装置は、車両を最大減速度DGmaxにて減速すれば車両が急勾配の登坂路に進入する前に停止可能であるとき、車両を最大減速度DGmaxにて減速させる(図14の地点P72から地点P73を参照。)。
【0117】
これに対し、異常確定判定がなされた時点から車両を通常減速度DGnorにて減速した場合に車両が停止する時点までに車線維持制御の制御限界が超えることが予測されないとき、異常確定判定ながされた時点から車両を最大減速度DGmaxにて減速しても車両が急勾配の登坂路に進入すると予測される場合、第3装置は車両を通常減速度DGnorにて減速する(図15の地点P82から地点P84を参照。)。そして、車速SPDが停止直前車速SPDthにまで低下した時点において車両が走行している車線が急勾配の登坂路であるとき、第3装置は、その時点の車速を維持する(図15の地点P84から地点P85を参照。)。その後、車両が走行している車線が急勾配の登坂路でなくなれば、第3装置は車両が停止するまで車両を通常減速度DGnorにて減速する(図15の地点P85から地点P86を参照。)。
【0118】
(具体的作動)
第3装置は、運転支援ECU10のCPUが、図12に示されたルーチンに代えて図16にフローチャートにより示されたルーチンを実行する点、及び、図9に示されたルーチンに代えて図17にフローチャートにより示されたルーチンを実行する点、のみにおいて第2装置と相違している。以下、この相違点を中心に説明する。
【0119】
所定のタイミングになると、CPUは図16のステップ1600から処理を開始してステップ1210に進み、現時点が異常確定判定がなされた時点の直後であるか否かを判定する。このステップは、図12のステップ1210と同じステップである。現時点が異常確定判定がなされた時点の直後でなければ、CPUはステップ1210にて「No」と判定し、ステップ1695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0120】
これに対し、現時点が異常確定判定がなされた時点の直後であると、CPUは図16のステップ1210にて「Yes」と判定して図16のステップ1220に進む。CPUはこのステップ1220にて、車両を現時点の車速から一定の通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する前に車線維持制御の制御限界条件が成立するか否かを判定する。このステップは、図12のステップ1220と同じステップである。
【0121】
車線維持制御がその制御限界を迎えると推定される場合、CPUは図16のステップ1220にて「Yes」と判定して図16のステップ1240に進み、目標減速度DGtgtの値を最大減速度DGmaxに設定する。その後、CPUはステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0122】
一方、車線維持制御がその制御限界を迎えないと推定される場合、CPUは図16のステップ1220にて「No」と判定してステップ1610に進む。CPUはステップ1610にて、車両を現時点の車速から一定の通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が停止する前に、車両が走行している車線(即ち、走行車線)が「傾斜角が所定角度以上の登坂路(急登坂路)」へと変化するか否かを判定する。なお、CPUはナビゲーションECU20を介して地図データベース22から取得される情報に基いて、走行車線の傾斜角を取得する。
【0123】
車両が走行している車線が「傾斜角が所定角度以上の登坂路(急登坂路)」へと変化する場合、CPUはステップ1610にて「Yes」と判定してステップ1620に進む。CPUはステップ1620にて、車両を現時点の車速から一定の最大減速度DGmaxにて減速した場合、車両が走行している車線が急登坂路へと変化する前に車両が停止可能であるか否かを判定する。
【0124】
車両が走行している車線が急登坂路へと変化する前に車両が停止可能である場合、CPUはステップ1620にて「Yes」と判定してステップ1240に進み、目標減速度DGtgtの値を最大減速度DGmaxに設定する。その後、CPUはステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0125】
一方、車両を現時点の車速から一定の通常減速度DGnorにて減速した場合、車両が走行している車線が急登坂路へと変化しない場合、CPUはステップ1610にて「No」と判定してステップ1230に進む。CPUはステップ1230にて目標減速度DGtgtの値を通常減速度DGnorに設定する。その後、CPUはステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0126】
更に、車両を現時点の車速から一定の通常減速度DGnorにて減速した場合に車両が走行している車線が急登坂路へと変化し、且つ、車両を現時点の車速から最大減速度DGmaxにて減速したとしても車両が走行している車線が急登坂路へと変化する前に車両が停止不能であるとき、CPUはステップ1610にて「Yes」と判定し且つステップ1620にて「No」と判定する。そして、CPUはステップ1230に進んで目標減速度DGtgtの値を通常減速度DGnorに設定し。その後、ステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0127】
所定のタイミングになると、CPUは図17のステップ1700から処理を開始してステップ1710に進み、仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の何れか一方が「1」であるか否かを判定する。仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の何れもが「0」である場合、CPUはステップ1710にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0128】
これに対し、仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の何れか一方が「1」である場合、CPUはステップ1710にて「Yes」と判定してステップ1720に進む。
【0129】
CPUはステップ1720にて、現時点にて走行中の車線が「傾斜角が所定角度以上の登坂路(即ち、急登坂路)」であるか否かを車線情報に基いて判定する。現時点にて走行中の車線が急登坂路でなければ、CPUはステップ1720にて「No」と判定してステップ1730に進む。
【0130】
CPUはステップ1730にて、車両の実際の減速度が目標減速度DGtgtに一致するように車両を減速させる。次に、CPUはステップ1740に進み、車内及び車外に対して警報を行う。このステップ1740は、図9のステップ930と同じ処理(車内外警報処理)を行うステップである。その後、CPUはステップ1795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0131】
一方、CPUがステップ1720に進んだとき、現時点にて走行中の車線が急登坂路であると、CPUはステップ1720にて「Yes」と判定しステップ1750に進む。CPUはステップ1750にて車速SPDが停止直前車速SPDth以下であるか否かを判定する。車速SPDが停止直前車速SPDth以下でない場合、CPUはステップ1750にて「No」と判定し、ステップ1730及びステップ1740の処理を行い、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0132】
これに対し、車速SPDが停止直前車速SPDth以下である場合、CPUはステップ1750にて「Yes」と判定し、ステップ1760に進む。CPUはステップ1760にて、車速SPDが現時点の値に維持されるように車速SPDを制御する。その後、CPUはステップ1740の処理を行い、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0133】
この結果、車両は停止直前車速SPDthにて走行する。そして、車両が急登坂路を抜けると、CPUはステップ1720にて「No」と判定し、ステップ1730に進む。その結果、車両の実際の減速度が目標減速度DGtgtに一致するように車両が減速させられる。
【0134】
このように、第3装置は、仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の何れか一方が「1」である場合、車両を急登坂路にて停止させないようにすることができる。
【0135】
以上、説明したように、本発明の各実施形態及び変形例に係る車両制御装置は、仮異常判定がなされた場合及び異常確定判定がなされた場合、車線維持制御の制御限界が到来して車線維持制御が停止(キャンセル)される場合であっても、車両を運転者の状態の判定結果(即ち、仮異常判定状態にあるか、異常確定判定状態にあるか)に応じた適切な減速度にて減速して停止させることができる。
【0136】
本発明は上記実施形態及び変形例に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0137】
例えば、運転者が異常状態に陥っているか否かを、確認ボタン80が操作されたか否かで実施してもよい。即ち、CPUは、図6のステップ640にて「運転者に確認ボタン80を操作することを促す警告メッセージ」をメータディスプレイ64に表示させる。
【0138】
そして、その状態において第1時間に渡り確認ボタン80が操作されないとき、CPUは運転者が異常状態に陥っている可能性があると判定する(即ち、仮異常判定を行う。)。更に、その後、第2時間に渡り確認ボタン80が操作されないとき、CPUは運転者が異常状態に陥っているとの判定を確定する(即ち、異常確定判定を行う。)。なお、この場合、第1時間が経過する前及び第2時間が経過する前に確認ボタン80が操作されると、CPUは図6のステップ615及びステップ620に進む。このように、確認ボタン80からの信号は車両の運転者の状態を表す運転者状態パラメータとして機能する。
【0139】
別の変形例として、特開2013-152700号公報等に開示されている所謂「ドライバモニタ技術」を採用することにより、運転者が異常状態に陥っているか否かを判定してもよい。より具体的に述べると、この変形例は、車室内の部材(例えば、ステアリングホイール及びピラー等)に設けられたカメラを用いて運転者を撮影し、その撮影画像を用いて運転者の視線の方向及び/又は顔の向きを監視する。
【0140】
そして、この変形例は、運転者の視線の方向又は顔の向きが車両の通常の運転中には長時間向くことがない方向に仮異常判定閾値時間TKijoth継続して向いている場合、仮異常判定フラグXKijoの値を「1」に設定する。更に、この変形例は、運転者の視線の方向又は顔の向きが車両の通常の運転中には長時間向くことがない方向に異常確定判定閾値時間THijoth継続して向いている場合、仮異常判定フラグXKijoの値を「0」に設定するとともに異常確定判定フラグXHijoの値を「1」に設定する。このように、運転者の視線の方向又は顔の向きは車両の運転者の状態を表す運転者状態パラメータとして機能する。
【0141】
上記実施形態及び変形例は、仮異常判定及び異常確定判定を車線維持制御の実行中に行っていたが、仮異常判定及び異常確定判定を車線維持制御が実行されているか否かに関わらず行ってもよい。この場合、図6のステップ610が省略され、CPUはステップ605にて「Yes」と判定したときステップ625に進むように進む。更に、この場合、CPUは図10のステップ1010にて、上記条件A1乃至条件A4が総て成立した場合のみならず、下記の条件A5及び上記条件A2乃至条件A4が総て成立した場合にも、車線維持制御の開始許可条件が成立したと判定する。
(条件A5)仮異常判定フラグXKijoの値及び異常確定判定フラグXHijoの値の少なくとも一方が「1」である。
【0142】
更に、上記実施形態及び変形例は、仮異常判定フラグXKijoの値が「0」から「1」へと変化した時点において、車両を最小減速度DGminにて減速した場合に車両が車両進入禁止区間に進入すると判定される場合、車両を最大減速度DGmaxにて減速してもよい。なお、CPUは、ナビゲーションECU20及び図示しない通信装置を用いて取得される情報に基いて、進入禁止区間についての位置情報を取得すればよい。
【符号の説明】
【0143】
10…運転支援(車両制御)ECU、13…タッチセンサ、14…操舵角センサ、15…操舵トルクセンサ、16…車速センサ、17a…レーダセンサ、17b…カメラ装置、19b…横加速度センサ、20…ナビゲーションECU、21…GPS受信機、22…地図データベース、31…パワートレインアクチュエータ、41…ブレーキアクチュエータ、51…モータドライバ、52…転舵用モータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
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図15
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