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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】スタッカークレーン
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20241119BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B65G1/04 537B
B65G1/00 511F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022038961
(22)【出願日】2022-03-14
(65)【公開番号】P2023133775
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】清川 渉
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009088(JP,A)
【文献】特開2002-362706(JP,A)
【文献】特開2020-187660(JP,A)
【文献】特開2001-089096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/20
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って走行する走行台車と、
前記走行台車に固定され、上下方向に沿うように設けられたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に支持されて、搬送対象の物品を保持すると共に移載対象箇所との間で前記物品の移載を行う移載装置と、を備えたスタッカークレーンであって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、前記走行方向の一方側を走行方向第1側とし、前記走行方向の他方側を走行方向第2側として、
前記走行経路上であって前記走行台車に対して前記走行方向第1側に設定された第1検出範囲に存在する障害物を検出する第1センサと、
前記走行経路上であって前記走行台車に対して前記走行方向第2側に設定された第2検出範囲に存在する障害物を検出する第2センサと、
前記昇降体に対して下側に設定された第3検出範囲に存在する障害物を検出する第3センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記物品を搬送する動作を自動的に実行する自動モードと、ユーザの操作を受け付ける受付部からの信号に応じて前記走行台車及び前記昇降体を動作させる手動モードと、にモード切り替え可能であり、
前記自動モードでは、前記走行台車が前記走行方向第1側へ向かって走行している場合に前記第1センサを有効にし、前記走行台車が前記走行方向第2側へ向かって走行している場合に前記第2センサを有効にし、前記昇降体が下降している場合に前記第3センサを有効にするように、前記第1センサ、前記第2センサ、及び、前記第3センサを制御し、
前記手動モードでは、前記第1センサ及び前記第2センサを無効にし、前記昇降体が下降している場合に前記第3センサを有効にするように、前記第1センサ、前記第2センサ、及び、前記第3センサを制御する、スタッカークレーン。
【請求項2】
前記制御装置は、点検中に実行される強制動作モードにもモード切り替え可能であり、
前記強制動作モードでは、前記第1センサ、前記第2センサ、及び前記第3センサを無効にする、請求項1に記載のスタッカークレーン。
【請求項3】
前記制御装置は、前記自動モードでは、
前記走行台車が前記走行方向第1側へ向かって走行している場合に前記第2センサを無効にし、
前記走行台車が前記走行方向第2側へ向かって走行している場合に前記第1センサを無効にし、
前記昇降体が上昇している場合に前記第3センサを無効にする、請求項1又は2に記載のスタッカークレーン。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲の前記走行方向の長さを、前記走行台車の走行速度が高くなるに従って連続的又は段階的に大きくする、請求項1から3の何れか一項に記載のスタッカークレーン。
【請求項5】
前記走行経路は有端の経路であり、
前記制御装置は、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲の前記走行方向の長さを、前記走行台車が前記走行経路の端部に近づくに従って連続的又は段階的に小さくする、請求項1から4の何れか一項に記載のスタッカークレーン。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第3検出範囲の前記上下方向の長さを、前記昇降体の昇降速度が高くなるに従って連続的又は段階的に大きくする、請求項1から5の何れか一項に記載のスタッカークレーン。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第3検出範囲の前記上下方向の長さを、前記昇降体が床面に近づくに従って連続的又は段階的に小さくする、請求項1から6の何れか一項に記載のスタッカークレーン。
【請求項8】
前記走行方向の少なくとも一方側に向けてレーザ光を照射し、前記走行台車の前記走行方向の位置を検出するレーザ距離センサを備え、
前記第1センサ及び前記第2センサは、超音波センサである、請求項1から7の何れか一項に記載のスタッカークレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路に沿って走行する走行台車と、走行台車に固定されたマストと、マストに沿って昇降する昇降体と、昇降体に支持された移載装置とを備えたスタッカークレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002-362706号公報には、有端の走行経路(6)を走行するスタッカークレーン(2)と、走行経路(6)の端部との間に存在する障害物を検出するセンサ(a~h、A~H)を備えた搬送台車システムが開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。走行経路(6)の一端には、センサの受光部(A~D)が走行経路の延在方向に直交する方向(幅方向)に並んで備えられ、当該一端に対抗するスタッカークレーン(2)の一端側には、センサの投光部(a~d)が幅方向に並んで備えられている。つまり、スタッカークレーン(2)と走行経路(6)の一端との間は、幅方向の位置を変えることによって互いに平行する4つの監視エリアが設定されている。走行経路(6)の他端(受光部(E~H))と、スタッカークレーン(2)の他端側(投光部(e~h))との間にも同様に互いに平行する4つの監視エリアが設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-362706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスタッカークレーンは、幅方向に物品を収容する収容棚を備えた倉庫等において用いられる。また、多くの場合、スタッカークレーンは、コンピュータ制御によって自動走行する。その際、走行経路に落下した物品などがスタッカークレーンに接触すると走行の妨げとなるだけで無く、スタッカークレーンが破損するおそれもある。従って、上記のようにセンサを備えて障害物を検出可能であることが望ましい。但し、このような倉庫には、スタッカークレーンの点検や調整を行ったり、障害物が存在した場合に当該障害物を撤去したり、撤去後にスタッカークレーンを再起動させたりするためなどに、作業者も存在する。そして、作業者は、スタッカークレーンの稼働状態を確認するために走行経路の近傍に位置し、作業者の指示による手動走行によってスタッカークレーンを動作させる場合がある。このような場合に、当該センサによって作業者が障害物として検出されると、スタッカークレーンが停止するため、点検、調整、再起動等のための動作を適切に行うことができないおそれがある。
【0005】
上記背景に鑑みて、障害物を検出するセンサを備えたスタッカークレーンにおいて、スタッカークレーンの作動を妨げる被検出物を障害物として適切に検出しつつ、作業者などの障害物ではない被検出物を障害物として検出しない技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みたスタッカークレーンは、走行経路に沿って走行する走行台車と、前記走行台車に固定され、上下方向に沿うように設けられたマストと、前記マストに沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に支持されて、搬送対象の物品を保持すると共に移載対象箇所との間で前記物品の移載を行う移載装置と、を備えたスタッカークレーンであって、前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、前記走行方向の一方側を走行方向第1側とし、前記走行方向の他方側を走行方向第2側として、前記走行経路上であって前記走行台車に対して前記走行方向第1側に設定された第1検出範囲に存在する障害物を検出する第1センサと、前記走行経路上であって前記走行台車に対して前記走行方向第2側に設定された第2検出範囲に存在する障害物を検出する第2センサと、前記昇降体に対して下側に設定された第3検出範囲に存在する障害物を検出する第3センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記物品を搬送する動作を自動的に実行する自動モードと、ユーザの操作を受け付ける受付部からの信号に応じて前記走行台車及び前記昇降体を動作させる手動モードと、にモード切り替え可能であり、前記自動モードでは、前記走行台車が前記走行方向第1側へ向かって走行している場合に前記第1センサを有効にし、前記走行台車が前記走行方向第2側へ向かって走行している場合に前記第2センサを有効にし、前記昇降体が下降している場合に前記第3センサを有効にするように、前記第1センサ、前記第2センサ、及び、前記第3センサを制御し、前記手動モードでは、前記第1センサ及び前記第2センサを無効にし、前記昇降体が下降している場合に前記第3センサを有効にするように、前記第1センサ、前記第2センサ、及び、前記第3センサを制御する。
【0007】
この構成によれば、自動モードでは、走行台車の進行方向に存在する障害物を検出することにより走行台車が障害物に衝突することを適切に回避できる。また、自動モードでは、昇降体の下側に存在する障害物を検出することにより昇降体が障害物に接触することを適切に回避できる。一方、手動モードでは、第1センサ及び第2センサを無効にすることにより、第1センサ又は第2センサが受付部を操作するユーザを含む作業者等を検出することでユーザの指令に応じて走行台車が走行できなくなることを回避することができる。この場合においても、第3センサは有効であるから、昇降体がユーザを含む障害物に誤って接触することは適切に回避できる。このように、本構成によれば、障害物を検出するセンサを備えたスタッカークレーンにおいて、スタッカークレーンの作動を妨げる被検出物を障害物として適切に検出しつつ、作業者などの障害物ではない被検出物を障害物として検出しないようにすることができる。
【0008】
スタッカークレーンのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】物品搬送設備の斜視図
図2】スタッカークレーンの斜視図
図3】スタッカ-クレーンの模式的な制御ブロック図
図4】センサの検出範囲を模式的に示す図
図5】第3センサの検出範囲を模式的に示す図
図6】走行速度(昇降速度)と検出範囲の長さとの関係の一例を示すグラフ
図7】端部(昇降体の下端位置)からの距離と検出範囲の長さとの関係の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、スタッカークレーンの実施形態を、物品搬送設備において物品搬送車として用いられるスタッカークレーンを例として図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、スタッカークレーン20は、走行台車21と、マスト22と、昇降体24と、移載装置26とを備えている。走行台車21は、走行経路4に沿って走行する。マスト22は、この走行台車21に固定され、上下方向Zに沿うように設けられている。昇降体24は、このマスト22に沿って昇降する。移載装置26は、昇降体24に支持され、搬送対象の物品2をフォーク等の保持部27により保持すると共に移載対象箇所3との間で物品2の移載を行う。
【0011】
走行経路4は、走行レール7によって形成されている。走行レール7は、床面5に設けられている。走行台車21は、走行レール7の走行面を転動する走行輪28(図4参照)を備えている。走行台車21は、後述する制御装置1(図3参照)によって制御される。制御装置1は、走行台車21が備える不図示の走行用駆動部(例えば、サーボモータ等の電動モータ)を駆動制御することで、走行台車21を走行させる。ここで、走行経路4に沿った方向を走行方向Lと称し、走行方向Lの一方側を走行方向第1側L1と称し、走行方向Lの他方側を走行方向第2側L2と称する。また、走行方向L及び上下方向Z(鉛直方向)の双方に直交する方向を経路幅方向Wと称する。尚、上下方向Zにおいて上方を上側Z1、下方を下側Z2と称する。
【0012】
図1に示すように、物品搬送設備100は、複数の収納棚30を備えている。本実施形態では、収納棚30は、走行経路4に対して経路幅方向Wの両側に設けられている。それぞれの収納棚30は、走行方向Lが棚横幅方向となり且つ経路幅方向Wが棚奥行方向となる向きで配置されている。それぞれの収納棚30は、収納棚30の前面側(収納棚30に対して物品2が出し入れされる側)が走行経路4の側を向くように配置されている。収納棚30には、物品2を収納する複数の収納部31が備えられている。複数の収納部31は、上下方向Zに複数段且つ走行方向Lに複数列配置されている。収納部31は、移載対象箇所3に相当する。
【0013】
図1に示すように、マスト22は、上下方向Zに沿う姿勢で走行台車21に支持されている。マスト22は、走行台車21から上側Z1に向かって延びるように走行台車21に立設されている。本実施形態では、2本のマスト22が、走行方向Lに並ぶ状態で走行台車21に支持されている。2本のマスト22のそれぞれの上端部は、上部フレーム等の連結部23によって連結されている。連結部23は、天井部6(図4参照)等の天井側に設けられた案内レール8に案内される案内輪80(図2参照)を備えており、連結部23は、案内レール8に案内されながら走行方向Lに移動する。
【0014】
昇降体24は、制御装置1により駆動される昇降装置25により昇降される。制御装置1は、昇降装置25が備える昇降用駆動部(例えば、サーボモータ等の電動モータ)を駆動制御することで、昇降体24を昇降させる。昇降装置25は、例えば、昇降体24に連結されたワイヤが巻回される巻き取りドラムを回転させて、ワイヤを巻き取り又は繰り出すことで、昇降体24を上昇又は下降させる。昇降体24は、走行方向Lに並ぶ2つのマスト22の間に配置された状態で昇降する。昇降体24は、例えば、ワイヤにより吊り下げられた状態で、マスト22に沿って昇降する。
【0015】
昇降体24は、移載装置26を支持している。図1に示すように、移載装置26は、物品2を保持する保持部27を備えており、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2の移載動作を行う。移載装置26は、走行台車21の走行動作と昇降体24の昇降動作とにより移載対象箇所3に対応する位置(具体的には、移載対象箇所3と経路幅方向Wに対向する位置)に配置された状態で、移載動作を行う。保持部27は、物品2を下側Z2から支持する(載置支持する)ことで、当該物品2を保持する。移載装置26も制御装置1によって制御される。制御装置1は、移載装置26が備える移載用駆動部(例えば、サーボモータ等の電動モータ)の駆動を制御することで、移載装置26を駆動制御する。
【0016】
本実施形態では、図4に示すように、走行経路4は、有端の経路である。従って、走行台車21は、走行経路4の走行方向第1側L1の端部4e(走行レール7の端部7e)と、走行方向第2側L2の端部4e(走行レール7の端部7e)との間を往復する。また、本実施形態では、走行経路4は、直線の経路である。
【0017】
スタッカークレーン20は、図4に示すように、走行方向Lにおけるスタッカークレーン20の位置(走行台車21の位置)を検出する位置検出センサ10を備えている。本実施形態では、位置検出センサ10として、光学式の距離検出センサ、具体的にはレーザ光を照射して位置を検出するレーザ距離センサを例示している。位置検出センサ10は、反射板50に向けて検出光を投射し、反射板50からの反射光を受光することで、位置検出センサ10と反射板50との間の距離を検出する。制御装置1は、位置検出センサ10と反射板50との間の距離に基づき、走行方向Lにおけるスタッカークレーン20の位置を導出する。
【0018】
反射板50は、天井部6や床面5等の走行方向Lの位置が変化しない箇所に固定される。位置検出センサ10は、スタッカークレーン20において位置が変化せず固定された部位に固定される。つまり、昇降体24等の上下方向Zにおける位置が変化する部位ではなく、マスト22や走行台車21に配置される。反射板50が天井部6に固定される場合、位置検出センサ10はマスト22の上方や連結部23に固定されていると好適である。また、反射板50が床面5に固定されている場合、位置検出センサ10は、走行台車21やマスト22の下方に固定されていると好適である。また、ここでは、位置検出センサ10がスタッカークレーン20に備えられ、反射板50が天井部6又は床面5に備えられている形態を例示したが、逆であってもよい。つまり、位置検出センサ10が天井部6又は床面5に備えられ、反射板50がスタッカークレーン20に備えられていてもよい。尚、位置検出センサ10が天井部6や床面5に備えられている場合、位置検出センサ10による検出結果がワイヤレス通信等によってスタッカークレーン20の制御装置1に伝達されると好適である。
【0019】
また、スタッカークレーン20は、図4に示すように、上下方向Zにおける昇降体24の位置を検出する高さ検出センサ19を備えている。本実施形態では、高さ検出センサ19として、光学式の距離検出センサ、具体的にはレーザ光を照射して位置を検出するレーザ距離センサを例示している。高さ検出センサ19は、昇降体24の下面に設置された不図示の反射板に向けて検出光を投射し、反射板からの反射光を受光することで、高さ検出センサ19と当該反射板との間の距離を検出する。制御装置1は、高さ検出センサ19と反射板50との間の距離に基づき、上下方向Zにおける昇降体24の位置を導出する。
【0020】
本実施形態では、高さ検出センサ19は、スタッカークレーン20における上下方向Zの位置が変化しない箇所(ここでは走行台車21)に固定されている。尚、高さ検出センサ19が昇降体24に設けられ、反射板が走行台車21に備えられていてもよい。尚、制御装置1は好適には走行台車21に配置されており、高さ検出センサ19が昇降体24に備えられている場合、高さ検出センサ19による検出結果がワイヤレス通信等によって制御装置1に伝達されると好適である。
【0021】
また、図2から図4に示すように、スタッカークレーン20は、第1センサ11と、第2センサ12と、第3センサ13とを備えている。第1センサ11は、走行経路4上であって走行台車21に対して走行方向第1側L1に設定された第1検出範囲S1に存在する障害物OBを検出する障害物検出センサである。第2センサ12は、走行経路4上であって走行台車21に対して走行方向第2側L2に設定された第2検出範囲S2に存在する障害物OBを検出する障害物検出センサである。本実施形態では、第1センサ11は、走行台車21の走行方向第1側L1の端面に配置されている。また、第2センサ12は、走行台車21の走行方向第2側L2の端面に配置されている。第3センサ13は、昇降体24に対して下側Z2に設定された第3検出範囲S3に存在する障害物OBを検出する障害物センサである。本実施形態では、第3センサ13は、昇降体24の上下方向Zにおける下側Z2の端面に配置されている。
【0022】
第1センサ11は、図2に示すように、上下方向Zに沿った方向から見て、走行台車21の経路幅方向Wの全域が検出範囲(第1検出範囲S1)となるように配置されている。第1センサ11は、1つのセンサ素子によって構成されていても良いし、複数のセンサ素子を有した1つのセンサユニットとして構成されていても良いし、1つのセンサ素子を有したセンサユニットを複数個備えて構成されていても良い。また、複数の第1センサ11が備えられることによって、経路幅方向Wの全域が第1検出範囲S1に含まれるように構成されていてもよい。
【0023】
同様に、第2センサ12も、上下方向Zに沿った方向から見て、走行台車21の経路幅方向Wの全域が検出範囲(第2検出範囲S2)となるように配置されている。第2センサ12は、1つのセンサ素子によって構成されていても良いし、複数のセンサ素子を有した1つのセンサユニットとして構成されていても良いし、1つのセンサ素子を有したセンサユニットを複数個備えて構成されていても良い。また、複数の第2センサ12が備えられることによって、経路幅方向Wの全域が第2検出範囲S2に含まれるように構成されていてもよい。
【0024】
また、第3センサ13は、図5に示すように、マスト22を挟んで経路幅方向Wの両側に少なくとも1つずつ配置されていると好適である。上述したように、収納棚30は、走行経路4に対して経路幅方向Wの両側に設けられている。従って、図5に示すように、それぞれの第3センサ13は、床面5において、それぞれの収納棚30の走行経路4の側の仮想面が交差する位置までを検出範囲(第3検出範囲S3)に含むように設置されていると好適である。
【0025】
尚、第1検出範囲S1、第2検出範囲S2、第3検出範囲S3は、それぞれ障害物OBを検出するために設定される範囲である。従って、第1センサ11、第2センサ12、第3センサ13の検出可能範囲は、それぞれ第1検出範囲S1、第2検出範囲S2、第3検出範囲S3よりも広い範囲である。即ち、第1センサ11は、少なくとも第1検出範囲S1内に存在する障害物OBを検出する障害物センサであり、第2センサ12は、少なくとも第2検出範囲S2内に存在する障害物OBを検出する障害物センサであり、第3センサ13は、少なくとも第3検出範囲S3内に存在する障害物OBを検出する障害物センサである。
【0026】
上述したように、本実施形態では位置検出センサ10は、走行方向Lの少なくとも一方側に向けてレーザ光を照射し、走行台車21の走行方向Lの位置を検出するレーザ距離センサである。本実施形態では、図4に示すように走行方向第1側L1に向けてレーザ光を照射して走行台車21の走行方向Lの位置を検出する1つのレーザ距離センサを位置検出センサ10として備える形態を例示している。また、上述したように、走行方向第1側L1における障害物OBを検出するように、第1センサ11が備えられている。この場合、第1センサ11は、位置検出センサ10とは検出方式が異なるセンサ、例えば超音波センサであると好適である。
【0027】
位置検出センサ10と、第1センサ11は、走行方向Lにおいて同じ側(ここでは走行方向第1側L1)に検出範囲が設定されているため、両センサの検出範囲が重複する場合がある。位置検出センサ10と、第1センサ11の検出方式が同じ場合、干渉によって位置検出センサ10又は第1センサ11の検出精度が低下するおそれがある。しかし、第1センサ11を、検出方式がレーザ距離センサとは異なる超音波方式センサとすることによって、センサ同士の干渉を回避することができる。尚、第1センサ11と第2センサ12とは、検出方式が同じセンサである方が検出結果を利用し易いため、この場合には干渉を考慮しなくてもよい第2センサ12も第1センサ11と同様に、超音波センサであると好適である。
【0028】
尚、本実施形態のように、位置検出センサ10が天井部6の側に配置され、第1センサ11が床面5の側に配置されている場合には、位置検出センサ10と第1センサ11との検出方式が同じであっても干渉が生じにくい。当然ながら、両センサの検出方式が異なれば干渉が発生する可能性をほぼなくすことができるが、本実施形態のようにセンサの配置よって干渉が抑制される場合などでは、両センサの検出方式が同じであることを妨げるものではない。
【0029】
また、本実施形態では、走行方向第1側L1に向けてレーザ光を照射して走行台車21の走行方向Lの位置を検出する位置検出センサ10を例示しているが、位置検出センサ10は、走行方向第2側L2に向けてレーザ光を照射して走行台車21の走行方向Lの位置を検出する形態であってもよい。この場合、第2センサ12は、位置検出センサ10とは検出方式が異なるセンサ、例えば超音波センサであると好適である。また、上述したように、第1センサ11と第2センサ12とは、検出方式が同じセンサである方が検出結果を利用し易いため、この場合には干渉を考慮しなくてもよい第1センサ11も第2センサ12と同様に、超音波センサであると好適である。
【0030】
また、位置検出センサ10は、走行方向第1側L1に向けてレーザ光を発射する第1の位置検出センサと、走行方向第2側L2に向けてレーザ光を発射する第2の位置検出センサとの2つにより構成されていてもよい。この場合には、第1センサ11及び第2センサ12が、位置検出センサ10とは検出方式が異なるセンサ、例えば超音波センサであると好適である。
【0031】
即ち、スタッカークレーン20が、走行方向Lの少なくとも一方側に向けてレーザ光を照射し、走行台車21の前記走行方向Lの位置を検出する位置検出センサ10を備えている場合、第1センサ11及び第2センサ12が超音波センサであると好適である。
【0032】
同様に、高さ検出センサ19がレーザ距離センサの場合、第3センサ13は、高さ検出センサ19とは検出方式が異なるセンサ、例えば超音波センサであると好適である。
【0033】
尚、位置検出センサ10として、光学式の距離検出センサ以外のセンサ(例えば、走行輪28の回転を検出するロータリエンコーダ、超音波センサ等)を用いてもよい。位置検出センサ10が超音波センサの場合、第1センサ11及び第2センサ12は、超音波式の位置検出センサ10とは異なる検出方式の、例えば光学式のセンサによって構成されていると好適である。位置検出センサ10がロータリエンコーダの場合、第1センサ11及び第2センサ12の検出方式が光学式であっても、超音波式でもあっても干渉は発生しないので、第1センサ11及び第2センサ12は、何れの方式であってもよい。
【0034】
同様に、高さ検出センサ19として、光学式の距離検出センサ以外のセンサ(例えば、昇降体24に備えられた不図示のガイド輪の回転を検出するロータリエンコーダ、巻き取りドラムからのワイヤの繰り出し量を検出するセンサ(これがロータリエンコーダであってもよい)、超音波センサ等)を用いてもよい。高さ検出センサ19が、超音波センサ等の場合、第3センサ13は、高さ検出センサ19とは異なる検出方式の、例えば光学式のセンサによって構成されていると好適である。高さ検出センサ19がロータリエンコーダやワイヤの繰出し量を検出するセンサの場合、第3センサ13の検出方式が光学式であっても、超音波式でもあっても干渉は発生しないので、第3センサ13は、何れの方式であってもよい。
【0035】
図3に示すように、スタッカークレーン20は、スタッカークレーン20の種々の動作を制御する制御装置1を備えている。制御装置1は、マイクロコンピュータなどの演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムやパラメータ等のソフトウェアとの協働により走行台車21、昇降装置25、移載装置26を制御する。具体的には、制御装置1は、物品搬送設備100における上位の設備制御装置(不図示)からの搬送指令に基づき、位置検出センサ10の検出結果を用いて走行台車21を走行させ、高さ検出センサ19の検出結果を用いて昇降装置25を昇降させ、さらに移載装置26を出退させて物品2を自律制御により搬送する。尚、移載装置26の出退に際しても、不図示のセンサによる検出結果が用いられていてもよい。また、設備制御装置と制御装置1とは、ワイヤレス通信によって相互に情報を伝達可能であると好適である。
【0036】
制御装置1は、物品2を搬送する動作を自動的に実行する自動モードと、作業者(ユーザ)の操作を受け付ける受付部29からの信号に応じて走行台車21、昇降体24及び移載装置26を動作させる手動モードとにモード切り替え可能である。例えば、自動モードでは、設備制御装置からの搬送指令に基づいて、走行台車21、昇降体24、移載装置26が連続して駆動制御される。手動モードでは、受付部29からの信号に基づいて、走行台車21、昇降体24、移載装置26の内、動作指示を与えられた1以上の対象が駆動制御される。尚、受付部29は、スタッカークレーン20に搭載された操作パネル(タッチパネルなど)、スイッチ等により構成されていても良いし、作業者が形態する携帯端末(リモートコントローラ、スマートフォン、携帯情報端末、ノートブック型コンピュータ等)であってもよい。また、設備制御装置に対して、スタッカークレーン20を指定して手動モードの実行を入力することができる場合には、設備制御装置が受付部29として機能してもよい。受付部29がスタッカークレーン20とは別に設けられている場合、受付部29と制御装置1とが、ワイヤレス通信可能であると好適である。
【0037】
また、制御装置1は、第1センサ11、第2センサ12、第3センサ13から検出結果を受け取るだけではなく、第1センサ11、第2センサ12、第3センサ13を制御する。第1センサ11、第2センサ12、第3センサ13の制御とは、それぞれのセンサの検出範囲の設定や、それぞれのセンサによる検出を行うか行わないかの切り替えを含む。尚、それぞれのセンサの検出範囲の設定は、制御装置1が各センサの検出範囲(距離等)を直接設定する形態に限らず、制御装置1から各センサに対して予め規定された検出モード番号などを送信し、各センサが具体的な検出範囲を設定する形態であってもよい。また、それぞれのセンサによる検出を行うか行わないかの切り替えは、検出を行わない場合に各センサを停止させる形態に限らず、各センサからの検出結果の伝達経路を遮断する、各センサからの検出結果を制御装置1が受け取っても利用しない(無視する)等の形態も含む。
【0038】
上述したように,制御装置1は、スタッカークレーン20を自動モードと手動モードとに切り替え可能である。自動モードでは、制御装置1は、走行台車21が走行方向第1側L1へ向かって走行している場合に第1センサ11を有効にし、走行台車21が走行方向第2側L2へ向かって走行している場合に第2センサ12を有効にし、昇降体24が下降している場合に前記第3センサ13を有効にするように、第1センサ11、第2センサ12、及び第3センサ13を制御する。即ち、自動モードでは、制御装置1は下記表1のように各センサを制御する。
【0039】
【表1】
【0040】
また、手動モードでは、下記表2に示すように、制御装置1は、第1センサ11及び第2センサ12を無効にし、昇降体24が下降している場合に第3センサ13を有効にするように、第1センサ11、第2センサ12、及び第3センサ13を制御する。
【0041】
【表2】
【0042】
自動モードでは、第1センサ11及び第2センサ12が、走行台車21の進行方向に存在する障害物OBを検出することにより走行台車21が障害物OBに衝突することを適切に回避できる。また、自動モードでは、第3センサ13が、昇降体24の下側Z2に存在する障害物OBを検出することにより昇降体24が障害物に接触することを適切に回避できる。この場合、スタッカークレーン20の近くに作業者が存在した場合、当該作業者も障害物OBとして検出される可能性がある。しかし、自動運転モードでは、作業者もスタッカークレーン20の動きを把握しているとは限らないため、第1センサ11及び第2センサ12により作業者を含めて障害物OBが検出されることで物品搬送設備100の安全な運用が実現できる。
【0043】
一方、手動モードでは、第1センサ11及び第2センサ12を無効にすることにより、第1センサ11又は第2センサ12が受付部29を操作するユーザを含む作業者等を検出することでユーザの指令に応じて走行台車21が走行できなくなることを回避することができる。また、この場合においても、第3センサ13は有効であるから、昇降体24がユーザを含む障害物OBに誤って接触することは適切に回避できる。人間は、自分の目の高さよりも上方からの物体の接近を視認することが容易ではないから、手動モードにおいても、ユーザが昇降体24の下降を見逃す可能性がある。しかし、手動モードにおいても第3センサ13を有効とすることで、手動モードにおいても物品搬送設備100の安全な運用が実現できる。
【0044】
また、制御装置1は、自動モード及び手動モードの2つのモードにのみ、制御モードを切り替え可能であってもよいが、これらに加えて、さらに、別の制御モードにも切り替え可能であってもよい。本実施形態では、制御装置1は、スタッカークレーン20の点検中に実行される強制動作モードにもモード切り替え可能である。制御装置1は、下記表3に示すように、強制動作モードでは、第1センサ11、第2センサ12、及び第3センサ13の全てを無効にする。
【0045】
【表3】
【0046】
スタッカークレーン20の点検では、例えば作業者が昇降体24を注視した状態で昇降体24を昇降させる場合がある。このような場合に、第3センサ13が有効であると、点検中に、第3センサ13が作業者を検出してしまい、昇降体24が停止して点検ができなくなる可能性がある。第3センサ13を無効とすることによって、このように点検ができなくなるようなことを回避できる。強制動作モードでは、第1センサ11、第2センサ12、及び第3センサ13が作業者等を検出することで作業者の指令に応じた走行台車21及び昇降体24の動作ができなくなることを回避できるため、適切に点検や調整を行うことが可能となる。
【0047】
即ち、本実施形態のスタッカークレーン20は、スタッカークレーン20の作動を妨げる被検出物を障害物OBとして適切に検出しつつ、作業者などの障害物OBではない被検出物を障害物OBとして検出しないようにすることができる。
【0048】
尚、走行台車21が走行方向第1側L1に向かって走行している場合には、障害物OBが走行台車21の走行方向第2側L2に存在していたとしても当該障害物OBと走行台車21とが接触することはない。同様に、走行台車21が走行方向第2側L2に向かって走行している場合には、障害物OBが走行台車21の走行方向第1側L1に存在していたとしても当該障害物OBと走行台車21とが接触することはない。従って、制御装置1は、自動モードにおいて、走行台車21が走行方向第1側L1へ向かって走行している場合に第2センサ12を無効にし、走行台車21が走行方向第2側L2へ向かって走行している場合に第1センサ11を無効にしてもよい(下記の表4参照。)。
【0049】
また、昇降体24が上昇している場合には、障害物OBが昇降体24の下側Z2に存在していたとしても当該障害物OBと昇降体24とが接触することはない。従って、制御装置1は、自動モードにおいて、昇降体24が上昇している場合には第3センサ13を無効にしてもよい。即ち、上記表1を参照して自動モードにおける各センサの被制御状態を例示したが、自動モードでは、制御装置1は下記表4のように各センサを制御してもよい。
【0050】
【表4】
【0051】
同様に、制御装置1は、手動モードにおいて、昇降体24が上昇している場合には第3センサ13を無効にしてもよい。即ち、制御装置1は、自動モード及び手動モードの双方において、昇降体24が上昇している場合には第3センサ13を無効にしてもよい。表2及び表4から容易に理解可能であるから、手動モードにおける表の例示は省略する。
【0052】
当然ながら、制御装置1による各センサの制御を簡潔にするために、自動モードにおいて、走行台車21の走行方向に拘わらず、第1センサ11及び第2センサ12の双方が常に有効状態とされることを妨げるものではない(表1において第1センサ11及び第2センサ12に関して「任意」の箇所が「有効」となる形態である。)。同様に、自動モード及び手動モードにおいて、昇降体24の昇降方向に拘わらず、第3センサ13が有効状態とされることを妨げるものではない(表1及び表2において第3センサ13に関して「任意」の箇所が「有効」となる形態である。)。
【0053】
また、走行台車21が停止中(停車中)においては、制御装置1は、第1センサ11及び第2センサ12の双方を無効にしても良い。或いは、走行開始後の走行台車21の進行方向が走行方向第1側L1であるか走行方向第2側L2であるかが決まっている場合には、制御装置1は、第1センサ11及び第2センサ12の内、当該走行方向Lの側のセンサを有効にしてもよい。第3センサ13についても、昇降体24が停止中においては、制御装置1は、第3センサ13を無効にしても良いし、その後の昇降方向に応じて有効にしてもよい。
【0054】
ところで、例えば、第1センサ11、第2センサ12、第3センサ13が検出範囲内に障害物OBを検出した場合、制御装置1は、走行台車21や昇降体24を停止させる。また、障害物OBが検出されたことを音声、表示(ランプ等の点灯も含む)、メッセージの送信等の少なくとも1つにより、作業者に報知する。ここで、走行台車21の走行速度が高いほど、障害物OBの検出から走行台車21が停止するまでに走行台車21が走行する距離が長くなる。同様に、昇降体24の下降速度が高いほど、障害物OBの検出から昇降体24が停止するまでに昇降体24が下降する距離が長くなる。従って、制御装置1は、走行台車21の走行速度が高くなるに従って、図6に実線で示すように連続的に、又は、図6に破線で示すように段階的に、第1検出範囲S1及び第2検出範囲S2の走行方向Lの長さを大きくするとよい。また、制御装置1は昇降体24の昇降速度(特に下降速度)が高くなるに従って、図6に実線で示すように、連続的に、又は、図6に破線で示すように段階的に、第3検出範囲S3の上下方向Zの長さを大きくするとよい。
【0055】
走行台車21と障害物OBとの距離が同じ場合、走行台車21の走行速度が高くなるに従って走行台車21が障害物OBに接触するまでの時間が短くなる。走行台車21の走行速度が高くなるに従って第1検出範囲S1及び第2検出範囲S2を大きくすると、走行速度が高くなるに従って遠くの障害物OBを検出できる。従って、例えば、走行台車21が障害物OBに接触する前に適切に走行台車21を停止させるように制御装置1が走行台車21を制御するなどの対処も行い易い。
【0056】
同様に、昇降体24と障害物OBとの距離が同じ場合、昇降体24の昇降速度(特に下降速度)が高くなるに従って昇降体24が障害物OBに接触するまでの時間が短くなる。昇降体24の昇降速度が高くなるに従って第3検出範囲S3を大きくすると、昇降速度が高くなるに従って遠くの障害物OBを検出できる。従って、例えば、昇降体24が障害物OBに接触する前に適切に昇降体24を停止させるように制御装置1が昇降体24を制御するなどの対処も行い易い。
【0057】
尚、規定された走行速度の上限で走行台車21が走行しているときに、進行方向において障害物OBが検出された場合に、走行台車21が当該障害物OBに接触することなく停止可能であるような場合、即ち、第1検出範囲S1及び第2検出範囲S2が十分に確保できている場合には、上記のように走行台車21の走行速度に応じて検出範囲が可変でなく、一定であってもよい。同様に、規定された昇降速度(特に下降速度)の上限で昇降体24が昇降(ここでは下降)しているときに、昇降体24の進行方向において障害物OBが検出された場合に、昇降体24が当該障害物OBに接触することなく停止可能であるような場合、即ち、第3検出範囲S3が十分に確保できている場合には、上記のように昇降体24の昇降速度(下降速度)に応じて第3検出範囲が可変ではなく、一定であってもよい。
【0058】
また、上述したように、本実施形態では、走行経路4は有端の経路である。従って、走行台車21が走行方向第1側L1に走行すると、次第に走行方向Lにおける走行方向第1側L1の端部4eに近づく。同様に、走行台車21が走行方向第2側L2に走行すると、次第に走行方向Lにおける走行方向第2側L2の端部4eに近づく。このような走行経路4の端部4e、即ち走行レール7の端部7eには、しばしば走行台車21が走行レール7を越えて走行しないように、車止めなどが設置されている。また、例えば走行方向第1側L1の端部4eよりも走行方向第1側L1、及び、走行方向第2側L2の端部4eよりも走行方向第2側L2には、走行台車21が走行してこないため、しばしば物品搬送設備100の他の構成物(例えば、入出庫用の物品2が載置される入出庫ステーションや、設備制御装置の入出力装置、光通信・ワイヤレス通信などの通信設備、電力設備など)が設置される場合がある。以下、これらの構成物を適宜「アクセサリー」と称する。
【0059】
通常、走行台車21は、車止めなどには接触しないように、走行経路4の端部4eで停止するように制御される。従って、車止めは、走行台車21の走行を妨げる障害物ではない。また、それぞれ、走行経路4の端部4eよりも走行方向側に存在するアクセサリーも、走行経路4がなくなるため、走行台車21に接触することはない。このような物体を第1センサ11や第2センサ12が検出すると、走行台車21の円滑な走行が妨げられる場合がある。
【0060】
このため、制御装置1は、第1検出範囲S1及び第2検出範囲S2の走行方向Lの長さを、走行台車21が走行経路4の端部4eに近づくに従って、図7に実線で示すように連続的に、又は、図7に破線で示すように段階的に小さくすると好適である。つまり、制御装置1は、走行経路4における走行台車21の位置に応じて、検出範囲を可変設定すると好適である。これにより、上述したように、走行台車21の障害物OBとはならない物体を障害物OBとして検出しまうことを回避することができる。
【0061】
尚、走行経路4は、有端の経路ではなく、例えば循環経路であってもよい。その場合には、端部4eが存在しないため、走行台車21に応じて検出範囲が可変設定されなくてもよい。また、走行経路4が有端の経路の場合であっても、制御装置1は、走行台車21の位置を把握して自律制御しており、第1センサ11又は第2センサ12が検出した障害物OBが、走行経路4上に存在しているか、走行経路4の端部4eよりも進行方向側に存在しているかを判定することができる。従って、第1センサ11及び第2センサ12の検出範囲が一定であることを妨げるものではない。
【0062】
また、昇降体24は、通常、床面5や走行台車21に衝突しないように、マスト22に予め規定された下端位置P1で停止するように制御される。従って、走行台車21そのものも含めて、下端位置よりも下方Z2に存在する物体は、昇降体24の下降を妨げる障害物OBではない。当該物体を第3センサ13が検出すると、昇降体24の円滑な昇降が妨げられる場合がある。そこで、制御装置1は、第3検出範囲S3の上下方向Zの長さを、昇降体24が床面5に近づくに従って、図7に示すように連続的に、又は図7に示すように段階的に小さくすると好適である。これにより、昇降体24の昇降の妨げとはならない物体を障害物OBとして検出しまうことを回避することができる。
【0063】
尚、図7では、下端位置P1において第3検出範囲S3がゼロとなるような形態を例示している。しかし、下端位置P1よりも下側Z2であって、昇降体24が接触しない位置であっても、走行台車21の走行を妨げる可能性がある障害物OBが床面5に存在している可能性もある。例えば、その時点においては、走行台車21の走行を妨げなくても、姿勢が変わる(例えば走行レール7の側に倒れる)ことによって、走行台車21の走行を妨げるようになる場合もある。従って、第3検出範囲S3は、下端位置P1においても、下端位置P1から床面までの範囲が検出範囲に含まれるように設定されていると好適である。
【0064】
例えば、図7に例示されるグラフを床面5との距離としてもよい。下端位置P1は、床面5とは一致しないため、第3センサ13の第3検出範囲S3の長さは、実質的に横軸と交差するまでは低下しないように設定されることになる。このように、実現方法は種々選択可能であるが、何れにしても、制御装置1は、第3検出範囲S3の上下方向Zの長さを、昇降体24が床面5に近づくに従って、図7に示すように連続的に、又は図7に示すように段階的に小さくすると好適である。
【0065】
尚、第1センサ11及び第2センサ12と同様に、制御装置1は、昇降体24の位置を把握して自律制御している。つまり、制御装置1は、第3センサ13が検出した障害物OBが、昇降体24の下端位置P1よりも上側Z1に位置しているか、下側Z2に位置しているかを判定することができる。従って、第3センサ13の第3検出範囲S3が、昇降体24の高差に拘わらず一定であることを妨げるものではない。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のスタッカークレーン20は、スタッカークレーン20の作動を妨げる被検出物を障害物OBとして適切に検出しつつ、作業者などの障害物OBではない被検出物を障害物として検出しないように構成されている。上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0067】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明したスタッカークレーンの概要について簡単に説明する。
【0068】
1つの態様として、スタッカークレーンは、走行経路に沿って走行する走行台車と、前記走行台車に固定され、上下方向に沿うように設けられたマストと、前記マストに沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に支持されて、搬送対象の物品を保持すると共に移載対象箇所との間で前記物品の移載を行う移載装置と、を備えたスタッカークレーンであって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、前記走行方向の一方側を走行方向第1側とし、前記走行方向の他方側を走行方向第2側として、前記走行経路上であって前記走行台車に対して前記走行方向第1側に設定された第1検出範囲に存在する障害物を検出する第1センサと、前記走行経路上であって前記走行台車に対して前記走行方向第2側に設定された第2検出範囲に存在する障害物を検出する第2センサと、前記昇降体に対して下側に設定された第3検出範囲に存在する障害物を検出する第3センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記物品を搬送する動作を自動的に実行する自動モードと、ユーザの操作を受け付ける受付部からの信号に応じて前記走行台車及び前記昇降体を動作させる手動モードと、にモード切り替え可能であり、前記自動モードでは、前記走行台車が前記走行方向第1側へ向かって走行している場合に前記第1センサを有効にし、前記走行台車が前記走行方向第2側へ向かって走行している場合に前記第2センサを有効にし、前記昇降体が下降している場合に前記第3センサを有効にするように、前記第1センサ、前記第2センサ、及び、前記第3センサを制御し、前記手動モードでは、前記第1センサ及び前記第2センサを無効にし、前記昇降体が下降している場合に前記第3センサを有効にするように、前記第1センサ、前記第2センサ、及び、前記第3センサを制御する。
【0069】
この構成によれば、自動モードでは、走行台車の進行方向に存在する障害物を検出することにより走行台車が障害物に衝突することを適切に回避できる。また、自動モードでは、昇降体の下側に存在する障害物を検出することにより昇降体が障害物に接触することを適切に回避できる。一方、手動モードでは、第1センサ及び第2センサを無効にすることにより、第1センサ又は第2センサが受付部を操作するユーザを含む作業者等を検出することでユーザの指令に応じて走行台車が走行できなくなることを回避することができる。この場合においても、第3センサは有効であるから、昇降体がユーザを含む障害物に誤って接触することは適切に回避できる。このように、本構成によれば、障害物を検出するセンサを備えたスタッカークレーンにおいて、スタッカークレーンの作動を妨げる被検出物を障害物として適切に検出しつつ、作業者などの障害物ではない被検出物を障害物として検出しないようにすることができる。
【0070】
ここで、前記制御装置が、点検中に実行される強制動作モードにもモード切り替え可能であり、前記強制動作モードでは、前記第1センサ、前記第2センサ、及び前記第3センサを無効にすると好適である。
【0071】
この構成によれば、例えば作業者(ユーザ)が昇降体を注視した状態で昇降体を昇降させるなどの、スタッカークレーンの点検中に、第3センサが当該作業者を検出して昇降体が停止するようなことを回避できる。つまり、第1センサ、第2センサ、及び第3センサが作業者等を検出することで作業者の指令に応じた走行台車及び昇降体の動作ができなくなることを回避できるため、適切に点検や調整を行うことが可能となる。
【0072】
また、前記制御装置は、前記自動モードでは、前記走行台車が前記走行方向第1側へ向かって走行している場合に前記第2センサを無効にし、前記走行台車が前記走行方向第2側へ向かって走行している場合に前記第1センサを無効にし、前記昇降体が上昇している場合に前記第3センサを無効にすると好適である。
【0073】
走行台車や昇降体の移動方向とは逆の方向に障害物が存在したとしても、その移動に伴って走行台車や昇降体が障害物に接触することはない。この構成によれば、走行台車及び昇降体の移動方向に応じて、これらが障害物に接触することがない側のセンサを無効にするので、各センサが接触することがない障害物を検出したことによって走行台車又は昇降体が停止することを回避できる。また、無効にしたセンサについては考慮する必要がないため、制御装置において処理が必要な信号の数を少なく抑えることができ、制御装置の演算負荷を低減することができる。
【0074】
また、前記制御装置は、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲の前記走行方向の長さを、前記走行台車の走行速度が高くなるに従って連続的又は段階的に大きくすると好適である。
【0075】
走行台車と障害物との距離が同じ場合、走行台車の走行速度が高くなるに従って走行台車が障害物に接触するまでの時間が短くなる。本構成のように、走行台車の走行速度が高くなるに従って検出範囲を大きくすると、走行速度が高くなるに従って遠くの障害物を検出できる。従って、例えば、走行台車が障害物に接触する前に適切に走行台車を停止させるように制御装置が走行台車を制御するなどの対処も行い易い。
【0076】
また、前記走行経路が有端の経路である場合、前記制御装置が、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲の前記走行方向の長さを、前記走行台車が前記走行経路の端部に近づくに従って連続的又は段階的に小さくすると好適である。
【0077】
走行経路が有端の経路である場合、その端部には車止めなどが設置されている場合がある。通常、走行台車は、当該車止めなどには接触しないように、走行経路の端部で停止するように制御される。従って、この車止めのような物体は、走行台車の走行を妨げる障害物ではない。また、走行経路の端部よりも走行方向側に存在する物体も、走行経路がなくなるため、走行台車に接触することはない。このような物体を第1センサや第2センサが検出すると、走行台車の円滑な走行が妨げられる場合がある。本構成によれば、このように走行台車の障害物とはならない物体を障害物として検出しまうことを回避することができる。
【0078】
また、前記制御装置は、前記第3検出範囲の前記上下方向の長さを、前記昇降体の昇降速度が高くなるに従って連続的又は段階的に大きくすると好適である。
【0079】
昇降体と障害物との距離が同じ場合、昇降体の昇降速度が高くなるに従って昇降体が障害物に接触するまでの時間が短くなる。本構成のように、昇降体の昇降速度が高くなるに従って検出範囲を大きくすると、昇降速度が高くなるに従って遠くの障害物を検出できる。従って、例えば、昇降体が障害物に接触する前に適切に昇降体を停止させるように制御装置が昇降体を制御するなどの対処も行い易い。
【0080】
また、前記制御装置は、前記第3検出範囲の前記上下方向の長さを、前記昇降体が床面に近づくに従って連続的又は段階的に小さくすると好適である。
【0081】
通常、昇降体は、床面や走行台車に衝突しないように、マストに予め規定された下端位置で停止するように制御される。従って、走行台車そのものも含めて、下端位置よりも下方に存在する物体は、昇降体の下降を妨げる障害物ではない。当該物体を第3センサが検出すると、昇降体の円滑な昇降が妨げられる場合がある。本構成によれば、このように昇降体の昇降の妨げとはならない物体を障害物として検出しまうことを回避することができる。
【0082】
また、スタッカークレーンが、前記走行方向の少なくとも一方側に向けてレーザ光を照射し、前記走行台車の前記走行方向の位置を検出するレーザ距離センサを備え、前記第1センサ及び前記第2センサが、超音波センサであると好適である。
【0083】
レーザ距離センサと、第1センサ及び第2センサの少なくとも一方は、検出範囲が重複する場合がある。レーザ距離センサと、第1センサ及び第2センサの検出方式が同じ場合、干渉によってレーザ距離センサ、第1センサ、第2センサの少なくとも1つの検出精度が低下するおそれがある。しかし、第1センサ及び第2センサを、検出方式がレーザ距離センサとは異なる超音波センサとすることによって、センサ同士の干渉を回避することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :制御装置
2 :物品
3 :移載対象箇所
4 :走行経路
4e :端部
5 :床面
7e :端部
10 :位置検出センサ(レーザ距離センサ)
11 :第1センサ
12 :第2センサ
13 :第3センサ
20 :スタッカークレーン
21 :走行台車
22 :マスト
24 :昇降体
26 :移載装置
29 :受付部
L :走行方向
L1 :走行方向第1側
L2 :走行方向第2側
OB :障害物
S1 :第1検出範囲
S2 :第2検出範囲
S3 :第3検出範囲
Z :上下方向
Z2 :下側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7