(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】タンクの製造方法、および、タンク製造用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 70/46 20060101AFI20241119BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20241119BHJP
B29C 70/48 20060101ALI20241119BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20241119BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B29C70/46
B29C70/32
B29C70/48
F17C1/06
F16J12/00 A
(21)【出願番号】P 2022079335
(22)【出願日】2022-05-13
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤井 統
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-118288(JP,A)
【文献】特開2021-167653(JP,A)
【文献】特開2019-142118(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013137(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/46
B29C 70/32
B29C 70/48
F17C 1/06
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの製造方法であって、
タンクの内部空間を形成するライナの外表面に、複数層の繊維束が巻き付けられたプリフォームと、金型と、を準備する準備工程と、
前記金型内に前記プリフォームを配置した配置状態において、前記金型内に樹脂を注入して、前記繊維束に前記樹脂を含浸させる含浸工程と、を備え、
前記金型は、
金型本体部と、
前記金型本体部の内表面から突出し、前記配置状態において最外層の前記繊維束と対向する複数のリブと、
互いに隣り合う前記リブとしての第1リブと第2リブとの間に形成された流路部であって、前記樹脂が流通する流路部と、を備え、
前記配置状態において、前記最外層における前記繊維束の延びる繊維方向は、前記流路部の延びる流路方向とは異なる、タンクの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクの製造方法であって、
前記第1リブと前記第2リブとの間隔を前記流路部の流路幅とし、前記繊維束の幅を繊維幅とした場合に、
前記準備工程は、前記最外層を形成するために、前記流路幅よりも大きい前記繊維幅を有する前記繊維束を前記プリフォームに巻き付ける工程を含む、タンクの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のタンクの製造方法であって、
前記金型本体部は、
円筒形状の胴部と、
前記胴部の両端に設けられ、前記胴部から離れるに従い径が縮小する2つのドーム部と、を有し、
前記リブは、前記胴部の前記内表面に形成されている、タンクの製造方法。
【請求項4】
タンク製造用金型であって、
金型本体部と、
前記金型本体部の内表面から突出し、タンクの内部空間を形成するライナの外表面に複数層の繊維束が巻き付けられたプリフォームを前記金型内に配置した配置状態において、最外層の前記繊維束と対向する複数のリブと、
互いに隣り合う前記リブとしての第1リブと第2リブとの間に形成された流路部であって、前記配置状態において前記繊維束に含浸させる樹脂が流通する流路部と、を備え、
前記配置状態において、前記最外層における前記繊維束の延びる繊維方向は、前記流路部の延びる流路方向とは異なる、タンク製造用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンクの製造方法、および、タンク製造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンクの製造方法において、RTM(Resin Transfer Molding)法により、ライナの外周部に繊維強化樹脂層と樹脂層とを形成する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライナの外表面に繊維を巻き付けることで形成されるタンクの中間製品に生じた形状のばらつきによって、金型と中間製品とが接触した場合、接触部分における繊維に対して樹脂を十分に含浸できない場合が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、タンクの製造方法が提供される。タンクの製造方法は、タンクの内部空間を形成するライナの外表面に、複数層の繊維束が巻き付けられたプリフォームと、金型と、を準備する準備工程と、前記金型内に前記プリフォームを配置した配置状態において、前記金型内に樹脂を注入して、前記繊維束に前記樹脂を含浸させる含浸工程と、を備え、前記金型は、金型本体部と、前記金型本体部の内表面から突出し、前記配置状態において最外層の前記繊維束と対向する複数のリブと、互いに隣り合う前記リブとしての第1リブと第2リブとの間に形成された流路部であって、前記樹脂が流通する流路部と、を備え、前記配置状態において、前記最外層における前記繊維束の延びる繊維方向は、前記流路部の延びる流路方向とは異なる。この形態によれば、タンクは、金型本体部の内表面から突出する複数のリブと、互いに隣り合うリブによって形成される流路部と、を有する金型を用いて製造される。このとき、プリフォームの配置状態において、繊維方向と流路方向とは異なるため、流路部に繊維束が埋没することを抑制できる。これにより、プリフォームに生じた形状のばらつきによって、金型の内表面とプリフォームとが接触した場合でも、流路部に樹脂を流通させることで、接触部分における繊維束に対して、樹脂を十分に含浸させることができる。
(2)上記形態であって、前記第1リブと前記第2リブとの間隔を前記流路部の流路幅とし、前記繊維束の幅を繊維幅とした場合に、前記準備工程は、前記最外層を形成するために、前記流路幅よりも大きい前記繊維幅を有する前記繊維束を前記プリフォームに巻き付ける工程を含んでもよい。この形態によれば、含浸工程において、繊維幅を流路幅よりも大きくすることができる。これにより、最外層を形成する繊維束が流路部に埋没することをさらに抑制できる。
(3)上記形態であって、前記金型本体部は、円筒形状の胴部と、前記胴部の両端に設けられ、前記胴部から離れるに従い径が縮小する2つのドーム部と、を有し、前記リブは、前記胴部の前記内表面に形成されていてもよい。この形態によれば、プリフォームの配置状態において、胴部は、円筒部と比べて、プリフォームと金型の内表面との間に形成される隙間が小さい。そのため、リブを胴部の内表面に形成することによって、流路部を用いて樹脂の流路をより確実に確保することができる。よって、胴部において、繊維束に樹脂を含浸させやすくできる。
(4)本開示の他の形態によれば、タンク製造用金型が提供される。タンク製造用金型は、金型本体部と、前記金型本体部の内表面から突出し、タンクの内部空間を形成するライナの外表面に複数層の繊維束が巻き付けられたプリフォームを前記金型内に配置した配置状態において、最外層の前記繊維束と対向する複数のリブと、互いに隣り合う前記リブとしての第1リブと第2リブとの間に形成された流路部であって、前記配置状態において前記繊維束に含浸させる樹脂が流通する流路部と、を備え、前記配置状態において、前記最外層における前記繊維束の延びる繊維方向は、前記流路部の延びる流路方向とは異なる。この形態によれば、タンク製造用金型は、金型本体部の内表面から突出する複数のリブと、互いに隣り合うリブによって形成される流路部と、を備える。プリフォームの配置状態において、繊維方向と流路方向とは異なるため、流路部に繊維束が埋没することを抑制できる。これにより、プリフォームに生じた形状のばらつきによって、金型の内表面とプリフォームとが接触した場合でも、流路部に樹脂を流通させることで、接触部分における繊維束に対して、樹脂を十分に含浸させることができる。
本開示は、上記のタンクの製造方法、および、タンク製造用金型以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、タンク製造用金型を備えたタンクの製造装置などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プリフォームおよびタンクの概略構成を説明するための図。
【
図2】タンクの製造装置の概略構成を模式的に示した図。
【
図3】製造装置を用いたタンクの製造方法を示すフローチャート。
【
図4】第1実施形態におけるタンク製造用金型の内部を外側から透視した透視図。
【
図7】第1実施形態におけるリブの外形を模式的に示した図。
【
図8】第1実施形態における繊維方向と流路方向との関係性を示す図。
【
図11】第2実施形態におけるタンク製造用金型の内部を外側から透視した透視図。
【
図12】第2実施形態における繊維方向と流路方向との関係性を示す図。
【
図13】第3実施形態におけるタンク製造用金型の内部を外側から透視した透視図。
【
図14】第3実施形態における繊維方向と流路方向との関係性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A-1.プリフォームおよびタンクの構成:
図1は、プリフォーム120およびタンク100の概略構成を説明するための図である。
図1の右図に示すタンク100は、
図1の左図に示すプリフォーム120を加工することによって製造される。
図1には、タンク100の製造方法(後述の
図3)における各工程(ステップS1~ステップS8)に対応するステップ番号を付している。
【0009】
図1では、プリフォーム120とタンク100とをそれぞれ、中心軸Oに沿って断面視した状態を示している。
図1には、互いに直交する軸としてのX軸、Y軸、およびZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向と呼ぶ。
【0010】
本実施形態では、X方向は、タンク100の中心軸Oに沿った方向である。Y方向は、後述するタンク100の配置姿勢において、重力方向に沿った方向である。-Y方向は、配置姿勢において、重力方向と一致する。また、Y方向およびZ方向は、タンク100の径方向CDと一致する。これ以降に示す図および説明については、タンク100の径方向CDにおいて、中心軸Oに近づく側を径方向内側とし、中心軸Oから離れる側を径方向外側とする。
【0011】
タンク100は、例えば、燃料電池車両に搭載され、燃料電池に供給される水素ガスを高圧の状態で貯留するために用いられる。タンク100は、
図1の右図に示すように、ライナ10と、補強層90と、バルブ側口金181と、エンド側口金182とを備える。
【0012】
ライナ10は、水素ガスなどの流体を貯留するための内部空間10pを形成する中空容器である。ライナ10は、例えば、ポリアミド樹脂などのガスバリア性を有する樹脂によって形成される。ライナ10の中心軸は、タンク100の中心軸Oと同一である。
【0013】
補強層90は、ライナ10を補強するための層である。補強層90は、ライナ10の外周を覆う。補強層90は、繊維強化樹脂層15と、樹脂層17とを備える。
【0014】
繊維強化樹脂層15は、ライナ10の外表面10bを覆う。繊維強化樹脂層15を形成する材料は、例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化樹脂)などの繊維強化樹脂である。CFRPは、炭素繊維にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた後に、熱硬化することで形成される。
【0015】
樹脂層17は、繊維強化樹脂層15の外表面15bの少なくとも一部を覆う。樹脂層17は、繊維強化樹脂層15を形成する過程において、繊維に含浸させる樹脂と同一の樹脂によって形成される。本実施形態では、繊維強化樹脂層15および樹脂層17は、タンク製造用金型2(後述の
図2)を用いて、樹脂注入成形(RTM:Resin Transfer Molding)法(以下、RTM法)によって形成される。RTM法による繊維強化樹脂層15および樹脂層17の形成方法の詳細は、後述する。樹脂層17は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔170を有する。貫通孔170の詳細は、後述する。なお、補強層90を形成する材料としての繊維材料および熱硬化性樹脂の種類は、これに限られるものではない。補強層90を形成するために用いられる繊維材料は、例えば、ガラス繊維を含んでいてもよい。
【0016】
タンク100の容器本体95は、ライナ10と補強層90とによって構成される。容器本体95は、円筒部950と、第1球面部951と、第2球面部952とを有する。円筒部950は、ライナ10と補強層90との一部によって形成される。円筒部950の形状は、円筒形状である。
【0017】
第1球面部951と第2球面部952とはそれぞれ、容器本体95のうちで円筒部950以外の部分であり、円筒部950の両端に設けられる。具体的には、第1球面部951は、円筒部950のうちで、中心軸Oに沿った軸方向ODにおける一端部950rに連続して設けられる。第1球面部951の形状は、円筒部950の一端部950rからバルブ側口金181に向かって突出するドーム形状(球面形状)である。第1球面部951は、円筒部950から離れるに従い径が縮小する。第1球面部951におけるライナ10の先端部10rは、内部空間10p側に入り込むように湾曲している。湾曲したライナ10の先端部10rによって、開口部10dが形成される。
【0018】
第2球面部952は、円筒部950のうちで、一端部950rとは反対側の端部である他端部950sに連続して設けられる。第2球面部952の形状は、円筒部950の他端部950sからエンド側口金182に向かって突出するドーム形状(球面形状)である。第2球面部952は、円筒部950から離れるに従い径が縮小する。
【0019】
バルブ側口金181は、開口部10dに取り付けられている。バルブ側口金181の形状は、ライナ10の内部空間10pを外部と連通させるために、概ね円筒形状である。バルブ側口金181は、内部空間10pに貯留される水素ガスなどの流体の出入口として機能する。
【0020】
エンド側口金182は、他端部950s側において、ライナ10の内部空間10pを閉塞させるための部材である。エンド側口金182は、タンク100の内部と外部との両方に露出するように、第2球面部952に設けられている。エンド側口金182の形状は、ライナ10の内部空間10pを閉塞するために、円筒形状の一部が閉塞された形状である。
【0021】
一方で、プリフォーム120は、
図1の左図に示すように、ライナ10と、ライナ10の外表面10bに複数層の繊維束12が巻き付けられた繊維層121と、バルブ側口金181と、エンド側口金182とを備える。ライナ10、バルブ側口金181、および、エンド側口金182の構成は、
図1の右図に示すタンク100と同一である。つまり、プリフォーム120は、タンク100の製造過程における中間製品である。
【0022】
繊維層121は、繊維束12を、ヘリカル巻きとフープ巻きとの少なくとも一方によって、ライナ10の外表面10bを覆うように、複数層に亘って巻き付けることで形成される。ここで言う「繊維束12」とは、直径が数マイクロメートル程度の単繊維を多数束ねた繊維の集合体を指す。また、ここで言う「ヘリカル巻き」とは、中心軸Oに対する繊維束12の巻角度(繊維配向)が0度よりも大きく90度よりも小さくなるように、繊維束12をライナ10に巻き付ける方法を指す。ヘリカル巻きでは、例えば、ライナ10の一方の球面部(例えば、第1球面部951)から円筒部950を通って他方の球面部(例えば、第2球面部952)に亘るように、繊維束12が巻き付けられる。また、「フープ巻き」とは、中心軸Oに対する繊維束12の巻角度が概ね90度となるように、繊維束12をライナ10に巻き付ける方法を指す。フープ巻きでは、中心軸Oと平行に巻き付け位置を移動させながら繊維束12が円筒部950に巻き付けられる。繊維層121の最内層12aとライナ10の外表面10bとは接触している。繊維層121の最外層12bは、プリフォーム120の外表面を形成する。
【0023】
A-2.タンクの製造装置の構成:
図2は、タンク100の製造装置1の概略構成を模式的に示した図である。
図2では、プリフォーム120がタンク製造用金型2内に配置された状態を図示している。製造装置1は、RTM法によって、
図1の左図に示すプリフォーム120から、
図1の右図に示すタンク100を製造するための装置である。具体的には、製造装置1は、RTM法により、プリフォーム120の繊維層121に樹脂を含浸させた後に、樹脂を硬化させることによって、ライナ10の外周側に補強層90が形成されたタンク100を製造する。なお、本実施形態では、熱硬化性樹脂を用いて補強層90を形成する。
【0024】
製造装置1は、タンク製造用金型2と、支持機構208と、温度調節装置40と、真空ポンプ50と、樹脂溜まり64と、加圧装置60と、バルブ62と、制御装置70と、駆動機構80とを備える。
【0025】
タンク製造用金型2は、金型本体部20を形成する一対の第1型21および第2型22と、プリフォーム120を配置する配置室200と、複数のリブ23(図示せず)と、流路部27(図示せず)とを備える。図示しないリブ23および流路部27の詳細は、後述する。
【0026】
第1型21と第2型22とは対向している。第1型21は、第2型22よりも重力方向における下側(-Y方向側)に配置されている。よって、本実施形態では、第1型21は下型であり、第2型22は上型である。なお、以下において、第1型21と第2型22とを区別する必要がない場合には、単に「金型本体部20」と呼ぶ。
【0027】
第1型21は、台座などに設置された固定型である。第1型21は、第1型対向壁211と、第1型底壁212と、第1型凹部215と、第1型管部218と、第1ゲート219とを有する。第1型対向壁211は、第2型22と対向する壁面である。第1型底壁212は、第1型対向壁211と間隔を空けて平行に対向する壁面である。第1型底壁212は、例えば、図示しない台座などに固定される。第1型凹部215は、第1型対向壁211の一部が、第1型底壁212側に窪んだ窪みである。第1型凹部215は、第1型底面216と、2つの第1型接続面217m,217nとを有し、第2型22が位置する+Y方向側が開口した形状である。第1型接続面217は、第1型底面216の両端側にそれぞれ位置する。第1型管部218は、真空ポンプ50によって配置室200を真空脱気するために、第1型21の内部に形成された気体流路である。第1ゲート219は、第1型凹部215の第1型底面216に形成された開口である。つまり、第1型管部218は、第1ゲート219を介して、真空ポンプ50による真空脱気を可能とする。
【0028】
第2型22は、第1型21に向けて押圧可能に構成された可動型である。第2型22は、第2型対向壁221と、第2型頂壁222と、第2型凹部225と、第2型管部228と、第2ゲート229とを有する。第2型対向壁221は、第1型対向壁211と対向する壁面である。第2型頂壁222は、第2型対向壁221と間隔を空けて平行に対向する面である。第2型凹部225は、第2型対向壁221の一部が、第2型頂壁222側に窪んだ窪みである。第2型凹部225は、第2型頂面226と、2つの第2型接続面227m,227nとを有し、第1型21が位置する-Y方向側が開口した形状である。第2型接続面227は、第2型頂面226の両端側に位置する。つまり、金型本体部20の内表面20aは、第1型凹部215の第1型底面216および第1型接続面217と、第2型凹部225の第2型頂面226および第2型接続面227と、によって形成される。第2型管部228は、樹脂溜まり64から供給される樹脂を配置室200へと流通させるために、第2型22の内部に形成された流路である。第2ゲート229は、第2型凹部225の第2型頂面226に形成された開口である。つまり、第2型管部228は、第2ゲート229を介して、バルブ62および樹脂溜まり64側と配置室200側とを連通させる。
図2では、樹脂が流れる方向(以下、流通方向)を矢印で示している。
【0029】
配置室200は、第1型21と第2型22との間にプリフォーム120を配置するための空間である。配置室200は、第1型21と第2型22とを型締めした状態(以下、型締状態)において、第1型凹部215と第2型凹部225とによって形成される、タンク製造用金型2の内部空間である。つまり、配置室200は、金型本体部20の型締状態において、金型本体部20内に形成される。
【0030】
第1型凹部215と第2型凹部225とはそれぞれ、プリフォーム120の形状に沿った形状となるように形成されている。具体的には、タンク製造用金型2は、円筒形状の胴部205と、胴部205の両端に設けられ、胴部205から離れるに従い形が縮小する2つのドーム部201,202とを備える。
【0031】
胴部205は、プリフォーム120の円筒部950を収容する。胴部205は、金型本体部20のうち、第1型底面216と第2型頂面226とを含む部分である。よって、配置室200にプリフォーム120を配置した状態(以下、配置状態)、かつ、型締状態において、第1型底面216と第2型頂面226とはいずれも、プリフォーム120の円筒部950と対向する。
【0032】
第1ドーム部201は、プリフォーム120の第1球面部951を収容する。第1ドーム部201は、金型本体部20のうち、第1型接続面217mと第2型接続面227mとを含む部分である。よって、プリフォーム120の配置状態、かつ、金型本体部20の型締状態において、第1型接続面217mと第2型接続面227mとはいずれも、プリフォーム120の第1球面部951と対向する。
【0033】
第2ドーム部202は、プリフォーム120の第2球面部952を収容する。第2ドーム部202は、金型本体部20のうち、第1型接続面217nと第2型接続面227nとを含む部分である。よって、プリフォーム120の配置状態、かつ、金型本体部20の型締状態において、第1型接続面217nと第2型接続面227nとはいずれも、プリフォーム120の第2球面部952と対向する。
【0034】
配置室200にプリフォーム120を配置した状態(以下、配置状態)、かつ、型締状態において、第1型底面216と第2型頂面226とはいずれも、プリフォーム120の円筒部950と対向する。また、プリフォーム120の配置状態において、第1型接続面217と第2型接続面227とはいずれも球面部951,952と対向する。
【0035】
支持機構208は、プリフォーム120の配置状態において、バルブ側口金181が位置する一端側120rと、エンド側口金182が位置する他端側120sとの両端側からプリフォーム120を支持する。
【0036】
温度調節装置40は、タンク製造用金型2の温度を制御する。温度調節装置40は、制御装置70の指令に応じて、例えば、繊維層121への樹脂の含浸が完了するまでの間において、金型本体部20の温度を樹脂の硬化温度未満に設定する。そして、温度調節装置40は、繊維層121への樹脂の含浸が完了した後に、金型本体部20の温度を、樹脂の硬化温度以上の温度に設定する。なお、熱硬化性樹脂以外の樹脂によって補強層90を形成する場合には、製造装置1は、温度調節装置40に代えて、樹脂を硬化させるための硬化装置および硬化装置の制御装置を備えてもよい。紫外線などにより硬化する光硬化性樹脂によって補強層90を形成する場合には、製造装置1は、例えば、硬化装置として紫外線を照射する光源および光源の点灯を制御する制御装置とを備える。
【0037】
真空ポンプ50は、プリフォーム120の配置状態、かつ、金型本体部20の型締状態において、配置室200を真空脱気するための脱気装置である。真空ポンプ50の駆動は、制御装置70によって制御される。
【0038】
樹脂溜まり64は、配置室200に供給する樹脂を貯留する貯留室である。樹脂溜まり64は、バルブ62を介して、第2型管部228に接続されている。また、樹脂溜まり64は、加圧装置60に接続されている。
【0039】
加圧装置60は、樹脂溜まり64に貯留された樹脂を加圧することで、樹脂溜まり64から配置室200側へと樹脂を流通させる。加圧装置60は、樹脂溜まり64よりも流通方向における上流側に配置されている。加圧装置60の駆動は、制御装置70によって制御される。
【0040】
バルブ62は、樹脂溜まり64から第2型管部228へと樹脂を流通させる流通状態と、樹脂溜まり64から第2型管部228へと樹脂を流通させない非流通状態と、を切り替えるための開閉バルブである。バルブ62は、樹脂溜まり64よりも流通方向における下流側に配置されている。バルブ62の開閉は、制御装置70によって制御される。
【0041】
駆動機構80は、可動型である第2型22を可動させる装置である。本実施形態では、駆動機構80は、第2型22を昇降させて金型本体部20の開閉を行う昇降装置である。駆動機構80は、金型本体部20を型締めする場合に、制御装置70の指令に応じて、第2型22を第1型21側へと近づく-Y方向に下降させる。これに対して、駆動機構80は、第1型21から第2型22を離型する場合に、制御装置70の指令に応じて、第2型22が第1型21から離間する+Y方向に上昇させる。
【0042】
制御装置70は、以上において説明した製造装置1の各構成要素40,50,60,62,80に対して、駆動力を与えて制御する。
図2では、制御装置70と電気的に接続されて制御される製造装置1の各構成要素40,50,60,62,80について、電気的な接続態様を破線により模式的に図示している。
【0043】
A-3.タンクの製造方法:
図3は、製造装置1を用いたタンク100の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態では、ステップS1の後に、製造装置1が
図3に示すステップS2~ステップS8を実行する。これにより、プリフォーム120からタンク100が製造される。
【0044】
まず、準備工程(ステップS1)が実行される。準備工程(ステップS1)は、プリフォーム120と、タンク製造用金型2とを準備する工程である。
【0045】
準備工程(ステップS1)の後に、配置工程(ステップS2)が実行される。配置工程(ステップS2)は、タンク製造用金型2の配置室200にプリフォーム120を配置して、第1型21と第2型22とを型締めする工程である。具体的には、まず、駆動機構80によって第2型22を上昇させた状態で、作業者が、プリフォーム120を支持機構208に取り付けることで、プリフォーム120を支持機構208に支持させる。これにより、プリフォーム120が第1型21の第1型凹部215内に収容された状態となる。次に、駆動機構80が、制御装置70の指令に従って、第2型22を第1型21に向けて下降させて、第1型対向壁211と第2型対向壁221とを接触させる。これにより、
図2に示すように、第1型21と第2型22とが型締めされ、プリフォーム120が配置室200に収容された状態となる。なお、配置工程(ステップS2)における作業の少なくとも一部は、機械的に実行されてもよい。
【0046】
図3に示すように、配置工程(ステップS2)の後に、脱気工程(ステップS4)が実行される。脱気工程(ステップS4)は、配置室200内を真空脱気する工程である。具体的には、真空ポンプ50が、制御装置70の指令に従って、真空脱気を開始する。そして、真空ポンプ50は、例えば、後の注入工程(ステップS5)において樹脂の注入が完了する完了時点まで、真空脱気を継続させる。
【0047】
脱気工程(ステップS4)の後に、注入工程(ステップS5)が実行される。注入工程(ステップS5)は、プリフォーム120の繊維層121に樹脂を含浸させるために、樹脂溜まり64に貯留された樹脂を配置室200側に注入する工程である。具体的には、制御装置70の指令に従って、バルブ62が開放されると共に、加圧装置60による樹脂溜まり64への加圧が開始される。これにより、第2型22に設けられた第2型管部228内を樹脂が流通して、第2ゲート229からプリフォーム120に向けて樹脂が射出される。このとき、金型本体部20の温度が樹脂の硬化温度未満となるように、金型本体部20の温度が温度調節装置40によって調節される。
【0048】
注入工程(ステップS5)の後に、含浸工程(ステップS6)が実行される。含浸工程(ステップS6)は、プリフォーム120の繊維層121を形成する繊維束12に、樹脂を含浸させる工程である。プリフォーム120に向けて注入された樹脂は、徐々に繊維層121の最外層12b側から最内層12a側に向けて含浸していく。よって、含浸工程(ステップS6)の少なくとも一部は、注入工程(ステップS5)が開始された後の時点において、注入工程(ステップS5)と同時並行的に実行される。
【0049】
含浸工程(ステップS6)の後に、硬化工程(ステップS7)が実行される。硬化工程(ステップS7)は、含浸工程(ステップS6)において、繊維束12に含浸させた樹脂を硬化させる工程である。本実施形態では、補強層90を形成する樹脂として熱硬化性樹脂を用いている。そのため、製造装置1は、硬化工程(ステップS7)において、加熱により樹脂を硬化させる。具体的には、温度調節装置40が、金型本体部20の温度を樹脂の硬化温度以上となるように調節する。これにより、樹脂が硬化して、繊維強化樹脂層15が形成される。
【0050】
このとき、プリフォーム120に向けて射出された樹脂の一部は、繊維層121の内部に含浸する一方で、残りの樹脂は、プリフォーム120と金型本体部20の内表面20aとの間を流動している。そのため、硬化工程(ステップS7)において、繊維層121に含浸されなかった樹脂が、繊維強化樹脂層15の外周側において硬化する。これにより、
図1の右図に示すように、繊維強化樹脂層15の径方向外側に、樹脂のみによって構成される樹脂層17が形成される。
【0051】
硬化工程(ステップS7)の後に、離型工程(ステップS8)が実行される。離型工程(ステップS8)は、第1型21と第2型22とを離間させて、タンク100を金型本体部20から離型する工程である。具体的には、駆動機構80が、制御装置70の指令に従って、第2型22を第1型21から離間する+Y方向に上昇させる。これにより、第1型21と第2型22とが離間して、
図1の右図に示すタンク100が金型本体部20から取り出し可能な状態となる。
図3に示す離型工程(ステップS8)までの各工程(ステップS1~ステップS8)の実行により、タンク100の製造方法は終了する。
【0052】
A-4.タンク製造用金型の詳細構成:
プリフォーム120の形状は、ライナ10の外表面10bへの繊維束12の巻き付け具合に応じてばらつく場合がある。換言すると、プリフォーム120における繊維層121の最外層12bの一部に、予め定められた形状(以下、基準形状)とは異なる凹凸が生じる場合がある。このとき、プリフォーム120に生じた形状のばらつきによって、タンク製造用金型2とプリフォーム120とが接触すると、接触部分Tにおける繊維に対して樹脂を十分に含浸できない場合が生じ得る。よって、繊維層121の繊維に樹脂をより確実に含浸させるために、金型本体部20とプリフォーム120との間に樹脂を流通させるための流路(隙間)が形成されることが好ましい。さらに、RTM法によるタンク100の製造過程において、プリフォーム120の形状を基準形状に近づけるように、プリフォーム120に生じた形状のばらつきを矯正できることがより一層好ましい。そこで、本実施形態では、複数のリブ23と、流路部27と、を備えたタンク製造用金型2を用いて、タンク100を製造する。なお、本実施形態では、以下において、繊維層121における最外層12bがヘリカル巻きによって形成されたプリフォーム120を用いてタンク100を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0053】
図4は、第1実施形態におけるタンク製造用金型2の内部を外側から透視した透視図である。
図4では、配置室200にプリフォーム120を配置して、金型本体部20を型締めした状態のタンク製造用金型2を示している。また、
図4では、配置室200の構成およびタンク製造用金型2とプリフォーム120との位置関係を視認しやすくするために、タンク製造用金型2およびプリフォーム120の一部を抜粋すると共に、タンク製造用金型2の内部を透視している。なお、
図4では、プリフォーム120の外形を破線によって示している。
【0054】
図5は、
図4の5-5断面図である。
図5は、含浸工程(ステップS6)におけるタンク製造用金型2およびプリフォーム120のYZ断面を模式的に示している。
【0055】
複数のリブ23は、プリフォーム120に生じた形状のばらつきを矯正すると共に、樹脂を流通させるための流路部27を形成する。
図5に示すように、複数のリブ23はそれぞれ、金型本体部20の内表面20aから径方向内側に向けて突出し、プリフォーム120の配置状態において、繊維層121における最外層12bの繊維束12と対向する。
【0056】
リブ23は、
図4に示すように、底面230と、対向面231と、側面235とを有する。底面230は、金型本体部20の内表面20aによって形成される。側面235は、底面230と対向面231とを接続する。
【0057】
図6は、
図5の第1領域R1を拡大した拡大図である。対向面231は、プリフォーム120の配置状態において、繊維層121の最外層12bと対向する。プリフォーム120の最外層12bにおける繊維束12の一部が径方向外側に突出して、プリフォーム120の一部が基準形状とは異なる形状となっている場合に、対向面231は、第1型21と第2型22とを型締めする過程において、突出部分12Tと接触する。そして、金型本体部20を型締状態とすることで、突出部分12Tは、対向面231によって、基準形状に近づくように径方向内側に押し込まれる。このように、金型本体部20の内表面20aに複数のリブ23を形成することで、
図3に示す配置工程(ステップS2)において、プリフォーム120に生じた形状のばらつきを矯正することができる。
図6では、プリフォーム120のうち、リブ23によって形状が矯正された部分を矯正領域Aとして図示している。
【0058】
なお、最外層12bの繊維束12に概ね点で接触するピン状の突起を金型本体部20の内表面20aに設けた場合に、最外層12bの繊維束12との接触面積は、リブ23を設けた場合よりも小さい。そのため、金型本体部20の内表面20aにピン状の突起を設けた場合には、樹脂Jが流通する流路を確保できる一方で、ピン状の突起がプリフォーム120の繊維束12に突き刺さる可能性がある。ピン状の突起がプリフォーム120の繊維束12に突き刺さった場合、プリフォーム120の形状のばらつきを矯正できない。これに対して、本実施形態では、リブ23の対向面231と最外層12bの繊維束12とは、互いに面で接触する。これにより、プリフォーム120の形状に生じたばらつきをより確実に矯正することができる。
【0059】
図7は、第1実施形態におけるリブ23の外形を模式的に示した図である。本実施形態では、リブ23の形状は、金型本体部20の内表面20aを底面230とした四角錐台形状である。よって、対向面231と底面230としての金型本体部20の内表面20aとは、概ね平行となっている。対向面231の面積は、底面230の面積よりも小さい。また、底面230と対向面231とは、4つの側面235によって接続されている。本実施形態では、対向面231の形状は、概ね正方形状である。なお、リブ23の形状は、これに限られるものではない。リブ23の形状は、例えば、円錐台形状や、底面230および対向面231が五角形以上となる多角錐台形状であってもよい。
【0060】
図8は、流路部27の詳細構成および繊維方向FD1,FD2と流路方向GD1,GD2との関係性を示す図である。
図8では、
図4の一部を拡大すると共に、繊維層121の最外層12bにおける繊維束12の一部を代表して図示している。具体的には、
図8では、巻角度αがそれぞれ55度となるようにヘリカル巻きによって巻き付けられた2つの繊維束12であって、予め定められた折り返し位置によって折り返されたことにより、互いに交差する2つの繊維束12を模式的に図示している。なお、実際には、繊維層121の最外層12bにおいて、多数の繊維束12が互いに近接ないし接触した状態で、プリフォーム120の周方向LDに予め定められた巻角度α(本実施形態では、55度)で螺旋状に巻き付けられている。
【0061】
流路部27は、プリフォーム120に向けて射出された樹脂Jを、含浸工程(ステップS6)において繊維層121の繊維束12に含浸させるために形成される。具体的には、流路部27は、
図8に示すように、互いに隣り合うリブ23としての第1リブ23mと第2リブ23nとの間に形成される。つまり、流路部27は、
図8に示すように、互いに隣り合うのリブ23m,23nの側面235m,235nと金型本体部20の内表面20aとによって形成される。
【0062】
本実施形態では、複数のリブ23は、
図4に示すように、軸方向ODに沿ってリブ23が複数配置された第1リブ群238として形成されている。
図4では、第1リブ群238の一部を二点鎖線により囲むことで示している。第1リブ群238は、中心軸Oを中心とした周方向LDに沿って繰り返し並ぶように配置されている。つまり、複数のリブ23は、金型本体部20の内表面20aにおいて、予め定められた距離だけ互いに離間した状態で、格子状に配置されている。これにより、本実施形態では、
図8に示すように、流路部27は、軸方向ODに沿って延びる第1流路部271と、周方向LDに沿って延びる第2流路部272と、によって構成される。第1流路部271の延びる方向である第1流路方向GD1は、軸方向ODに沿った方向である。第2流路部272の延びる方向である第2流路方向GD2は、中心軸Oを中心とした周方向LDに沿った方向である。
【0063】
プリフォーム120の配置状態において、流路部271,272の延びる流路方向GD1,GD2は、繊維層121の最外層12bにおける繊維束12の延びる方向である繊維方向FD1,FD2とは異なる。
図8に示す例では、流路方向GD1,GD2が軸方向ODと周方向LDとに沿った方向である一方で、繊維方向FD1,FD2は、中心軸Oに対して巻角度αだけ傾斜した方向である。このようにすると、繊維方向FD1,FD2と流路方向GD1,GD2とは異なるため、最外層12bを形成する繊維束12が流路部27に埋没することを抑制できる。これにより、金型本体部20の内表面20aとプリフォーム120とが接触した場合でも、接触部分Tの近傍に流路部27が存在するため、流路部27に樹脂Jを流通させることで、樹脂Jを十分に含浸させることができる。換言すると、接触部分Tの近傍に、樹脂Jを流通させるための空隙部分Bを確保することができる。これにより、流路部27を用いて、樹脂Jの流路をより確実に形成することができるため、
図3に示す含浸工程(ステップS6)において、流路部27における樹脂Jの流通が妨げられる可能性を低減できる。
【0064】
さらに、本実施形態では、
図8に示すように、流路部27の幅である流路幅L1,L2は、繊維束12の幅である繊維幅L12よりも小さい。つまり、
図3に示す準備工程(ステップS1)では、繊維層121の最外層12bを形成するために、流路幅L1,L2よりも大きい繊維幅L12を有する繊維束12をプリフォーム120に巻き付ける工程を含む。なお、ここで言う「流路幅L1,L2」とは、
図8に示すように、互いに隣り合う第1リブ23mと第2リブ23nとの間隔を指す。換言すると、流路幅L1,L2は、互いに隣り合う第1リブ23mと第2リブ23nとの最短距離、かつ、直線的な離間距離である。このようにすることで、最外層12bを形成する繊維束12が流路部27に埋没する可能性をさらに低減できる。
【0065】
また、本実施形態では、タンク製造用金型2からタンク100を離型させやすくするため、
図5に示すように、中心軸Oを中心とした周方向LDにおける形成位置に応じて、リブ23の側面235の勾配を変化させている。以下において、
図6における側面235の勾配を基準勾配とし、
図6におけるリブ23を基準リブ23sとも呼ぶ。
【0066】
図9は、
図5の第2領域R2を拡大した拡大図である。
図9では、リブ23の側面235における勾配を、基準勾配に対して予め定められた角度だけ変化させた勾配リブ23tを実線で示している。また、
図9では、第2領域R2におけるリブ23を、基準リブ23sにする場合と、勾配リブ23tにする場合と、を比較しやすくするために、基準リブ23sを点線で併せて図示している。
【0067】
例えば、第1型21を離間方向RD(
図5)に移動させることによって、タンク100の上方側(本実施形態では、+Y方向側)を離型する際に、
図6に示す第1領域R1では、樹脂層17の外表面17bとタンク製造用金型2の内表面20aとが干渉しづらい。一方、第1領域R1と第2領域R2とでリブ23の形状を同一とした場合、すなわち、第2領域R2に基準リブ23sを設けた場合、離型する際に、特に、角部291において、樹脂層17の外表面17bとタンク製造用金型2の内表面20aとが干渉しやすい。ここで言う「角部291」とは、リブ23の側面235と金型本体部20の内表面20aとが接続する接続部分と、接続部分の周辺部分とを指す。そこで、第2領域R2のように、離型時に樹脂層17と金型本体部20とが干渉しやすい領域については、抜き勾配(抜き角)として、金型本体部20の内表面20aに対して基準勾配よりも大きな勾配を設けた勾配リブ23tを形成している。このようにすると、タンク製造用金型2からタンク100を離型しやすくできる。
【0068】
また、本実施形態では、
図1に示すように、プリフォーム120において、円筒部950の外径は、球面部951,952の外径よりも大きい。そして、
図4に示すように、プリフォーム120の配置状態において、円筒部950と胴部205との間に形成される空間部B1は、第2球面部952と第2ドーム部202との間に形成される空間部B2よりも小さい。そのため、円筒部950に巻き付けられた繊維束12は、球面部951,952に巻き付けられた繊維束12と比べて、樹脂Jを含浸させにくい。そこで、本実施形態では、
図4に示すように、複数のリブ23は、金型本体部20のうち、胴部205の内表面200aに形成されている一方で、第2ドーム部202の内表面202aには形成されていない。
図4では、図示を省略しているが、第1ドーム部201の内表面についても、第2ドーム部202と同様に、複数のリブ23は形成されていない。このようにすると、球面部951,952よりも樹脂を含浸させにくい円筒部950において、繊維束12に樹脂Jを含浸させやすくできる。
【0069】
A-5.貫通孔170の詳細構成:
図10は、貫通孔170の詳細構成を説明するための図である。
図10では、
図1の第3領域R3を拡大して示している。
【0070】
貫通孔170は、RTM法によって樹脂層17を形成する過程で形成される。具体的には、含浸工程(ステップS6)において、
図8に示すように、金型本体部20の内表面20aに設けられた複数のリブ23が、プリフォーム120と金型本体部20の内表面20aとの間に流通する樹脂Jの流れを局所的に遮断する。一方で、リブ23が形成されていない部分、すなわち、流路部27には樹脂Jが流通する。これにより、樹脂層17には、
図10に示すように、複数の貫通孔170が形成される。つまり、貫通孔170は、リブ23の形状に沿った形状を成す空洞部である。
【0071】
ここで、タンク100の内部空間10pに貯留された水素ガスなどの流体G1は、微量ではあるものの、ライナ10および繊維強化樹脂層15を透過して、繊維強化樹脂層15と樹脂層17との間に進入する場合がある。このとき、樹脂層17は、タンク強度を確保するために、繊維強化樹脂層15と比べて、ガスバリア性が高く、かつ、強度が低い材料によって形成されている。ここで言う「強度」とは、例えば、破断ひずみの大小を指し、「強度が低い」とは、例えば、破断ひずみが大きいことを指す。そのため、繊維強化樹脂層15と樹脂層17との間に進入した流体G2は、樹脂層17を透過することなく、繊維強化樹脂層15と樹脂層17との間に溜まる。そして、流体G2の蓄積量に応じて樹脂層17は徐々に伸びていき、繊維強化樹脂層15と樹脂層17との間に溜まった流体G2が予め定められた量を超えた場合に、樹脂層17が破断する。樹脂層17が破断すると、樹脂層17が白濁したり、異音が発生したりする。例えば、樹脂層17が白濁すると、タンク100の外観を損ねる場合がある。
【0072】
そこで、本実施形態では、樹脂層17に複数の貫通孔170を形成して、繊維強化樹脂層15と外部とを連通させている。これにより、繊維強化樹脂層15と樹脂層17との間に進入した流体G2を、樹脂層17に形成された貫通孔170を通って大気中に放出することができる。つまり、繊維強化樹脂層15と樹脂層17との間に進入した流体G2が、繊維強化樹脂層15と樹脂層17との間に溜まることを抑制できる。これにより、樹脂層17が破断する可能性を低減させることができる。そして、樹脂層17が白濁したり、異音が発生したりすることを抑制できるため、タンク100の品質が低下する可能性を低減できる。
【0073】
なお、リブ23の突出方向におけるリブ23の寸法LJ(
図6)は、樹脂層17の厚さL17(
図10)と同程度であることが好ましい。ここで言う「リブ23の突出方向」とは、金型本体部20の内表面20aから径方向内側に向かう方向である。このようにすると、貫通孔170が形成された部分において、繊維強化樹脂層15と外部とをより確実に連通させることができる。
【0074】
上記第1実施形態によれば、
図2および
図4に示すように、タンク100は、複数のリブ23と流路部27とを有するタンク製造用金型2を用いて、RTM法により製造される。このとき、
図8に示すように、プリフォーム120の配置状態において、繊維方向FD1,FD2と流路方向GD1,GD2とは異なるため、流路部27に繊維束12が埋没することを抑制できる。これにより、金型本体部20の内表面20aとプリフォーム120とが接触した場合でも、流路部27に樹脂Jを流通させることで、接触部分Tにおける繊維束12に対して樹脂Jを十分に含浸させることができる。
【0075】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態におけるタンク製造用金型24の内部を外側から透視した透視図である。
図11では、
図4と同様に、配置室200にプリフォーム120を配置して、金型本体部240を型締めした状態のタンク製造用金型24を図示している。また、
図11では、配置室200の構成およびタンク製造用金型24とプリフォーム120との位置関係を視認しやすくするために、タンク製造用金型24およびプリフォーム120の一部を抜粋すると共に、タンク製造用金型24の内部を透視している。なお、
図11では、プリフォーム120の外形を破線によって示している。
【0076】
本実施形態においても、複数のリブ234は、金型本体部240の内表面240aから径方向内側に向けて突出し、プリフォーム120の配置状態において、繊維層121の最外層12bにおける最外層12bの繊維束12と対向する。リブ234の機能は、第1実施形態と同様である。これに対して、本実施形態では、リブ234の形状および金型本体部240の内表面240aにおける複数のリブ234の配置が第1実施形態(
図4)とは異なる。他の構成およびタンク100の製造方法については、第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に、説明を省略する。なお、本実施形態においても、繊維層121における最外層12bが巻角度αを55度としたヘリカル巻きによって形成されたプリフォーム120を用いて、タンク100を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0077】
本実施形態では、複数のリブ234は、軸方向ODに沿ってリブ234が複数配置された第2リブ群248として形成されている。
図11では、第2リブ群248の一部を二点鎖線により囲むことで示している。そして、金型本体部240の内表面240aには、中心軸Oを中心とした周方向LDにおいて、第2リブ群248が繰り返し並ぶように配置されている。このとき、互いに隣り合う第2リブ群248m,248nのそれぞれの形成位置は、軸方向ODにおいて予め定められた距離の分だけずれている。つまり、本実施形態では、複数のリブ234は、金型本体部240の内表面240aにおいて、予め定められた距離だけ離間した状態で、互い違いとなるように配置されている。
【0078】
図12は、第2実施形態における流路部27の構成および繊維方向FD1,FD2と流路方向GD1,GD3との関係性を示す図である。
図12では、
図11の一部を拡大すると共に、繊維層121の最外層12bにおける繊維束12の一部を代表して図示している。また、
図12では、予め定められた折り返し位置によって折り返されたことにより、互いに交差する2つの繊維束12を模式的に図示している。
【0079】
本実施形態では、流路部27は、軸方向ODに沿って延びる第1流路部271と、周方向LDに沿って延びる複数の第3流路部273と、によって構成される。よって、第1流路部271の延びる方向である第1流路方向GD1は、軸方向ODに沿った方向である。また、第3流路部273の延びる方向である第3流路方向GD3はそれぞれ、周方向LDに沿った方向である。これに対して、繊維方向FD1,FD2は、中心軸Oに対して巻角度α(本実施形態では、55度)だけ傾斜した方向である。つまり、本実施形態においても、繊維方向FD1,FD2と流路方向GD1,GD3とは異なる。これにより、最外層12bを形成する繊維束12が流路部27に埋没する可能性を低減することができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、リブ234の形状は、金型本体部240の内表面240aによって形成される底面242と、長方形状の対向面241と、底面242と対向面241とを接続する4つの側面245と、によって形成される四角錐台形状である。具体的には、対向面241について、プリフォーム120の周方向LDにおけるリブ234の寸法LR1は第1実施形態(
図4)と同一であり、プリフォーム120の軸方向ODにおけるリブ234の寸法LR2は第1実施形態よりも大きい。このようにすると、プリフォーム120の最外層12bにおける繊維束12の一部が径方向外側に突出している場合に、繊維束12と対向面231とが接触する可能性を高めることができる。これにより、プリフォーム120に生じた形状のばらつきをより確実に矯正することができる。
【0081】
上記第2実施形態によれば、
図12に示すように、タンク100の製造過程において、繊維方向FD1,FD2と流路方向GD1,GD2とを異ならせることができる。これにより、最外層12bを形成する繊維束12が流路部27に埋没することを抑制できるため、繊維束12に対して樹脂Jを十分に含浸させることができる。
【0082】
C.第3実施形態:
図13は、第3実施形態におけるタンク製造用金型26の内部を外側から透視した透視図である。
図13では、
図4と同様に、配置室200にプリフォーム126を配置して、金型本体部260を型締めした状態のタンク製造用金型26を図示している。また、
図13では、配置室200の構成およびタンク製造用金型26とプリフォーム126との位置関係を視認しやすくするために、タンク製造用金型26およびプリフォーム126の一部を抜粋すると共に、タンク製造用金型26の内部を透視している。なお、
図13では、プリフォーム120の外形を破線によって示している。
【0083】
本実施形態においても、複数のリブ23は、金型本体部260の内表面260aから径方向内側に向けて突出し、プリフォーム120の配置状態において、繊維層121の最外層12bにおける最外層12bの繊維束12と対向する。リブ23の形状および機能は、第1実施形態と同様である。これに対して、本実施形態では、最外層12bにおける繊維束12の巻角度βと、金型本体部260の内表面260aにおける複数のリブ23の配置と、が第1実施形態(
図4)とは異なる。他の構成およびタンク100の製造方法については、第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に、説明を省略する。
【0084】
本実施形態では、複数のリブ23は、軸方向ODに対して予め定められた角度だけ傾斜した傾斜方向IDに沿ってリブ23が複数配置された第3リブ群268として形成されている。
図13では、第3リブ群268の一部を二点鎖線により囲むことで示している。
図13に示す例では、傾斜方向IDは、軸方向ODに対して45度だけ傾斜した方向である。つまり、本実施形態における第3リブ群268は、第1実施形態における第1リブ群238(
図4)を、中心軸Oを中心として45度回転させた位置に配置されている。なお、軸方向ODに対する傾斜方向IDの傾斜角度は、これに限られるものではなく、他の角度であってもよい。
【0085】
図14は、第3実施形態における流路部27の構成および繊維方向FD3と流路方向GD4,GD5との関係性を示す図である。
図14では、
図13の一部を拡大すると共に、繊維層121の最外層12bにおける繊維束12の一部を代表して図示している。
【0086】
本実施形態では、流路部27は、傾斜方向IDに沿って延びる第4流路部274と、傾斜方向IDに直交する方向に延びる第5流路部275と、によって構成される。よって、第4流路部274の延びる方向である第4流路方向GD4は、傾斜方向IDに沿った方向である。また、第5流路部275の延びる方向である第5流路方向GD5は、傾斜方向IDに直交する方向である。これに対して、本実施形態では、繊維層121における最外層12bは、巻角度βを90度としたフープ巻きによって形成されている。つまり、繊維方向FD3は、中心軸Oに対して巻角度β(90度)だけ傾斜した方向である。よって、本実施形態においても、繊維方向FD3と流路方向GD4,GD5とは異なる。
【0087】
上記第3実施形態によれば、
図14に示すように、最外層12bをフープ巻きにより形成したプリフォーム126を用いたタンク100の製造過程において、繊維方向FD3と流路方向GD4,GD5とを異ならせることができる。これにより、最外層12bを形成する繊維束12が流路部27に埋没することを抑制できる。よって、金型本体部20の内表面20aとプリフォーム120とが接触した場合でも、流路部27に樹脂Jを流通させることで、繊維束12に対して樹脂Jを十分に含浸させることができる。
【0088】
D.他の実施形態:
D-1.他の実施形態1:
上記実施形態では、リブ23は、金型本体部20のうちで、胴部205の内表面200aのみに形成されていた。しかし、本開示は、これに限られるものではない。リブ23は、金型本体部20のうちで、胴部205の内表面200aと、2つのドーム部201,202の内表面202aとの両方に形成されていてもよい。このような形態であれば、リブ23は、プリフォーム120の球面部951,952における形状のばらつきを矯正することができる。
【0089】
D-2.他の実施形態2:
上記実施形態では、流路幅L1,L2は、繊維幅L12よりも小さくなるように形成されていた。しかし、本開示は、これに限られるものではない。流路幅L1,L2と繊維幅L12とは同一であってもよく、流路幅L1,L2が繊維幅L12よりも大きくなるように形成されてもよい。このような形態であっても、プリフォーム120の配置状態において、繊維方向FD1~FD3と流路方向GD1~GD5とが異なるため、最外層12bを形成する繊維束12が流路部27に埋没することを抑制できる。
【0090】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…製造装置、2,24,26…タンク製造用金型、10…ライナ、10b…ライナの外表面、10d…開口部、10p…内部空間、10r…先端部、12…繊維束、12T…突出部分、12a…最内層、12b…最外層、15…繊維強化樹脂層、15b…繊維強化樹脂層の外表面、17…樹脂層、17b…樹脂層の外表面、20,240,260…金型本体部、20a,240a,260a…内表面、21…第1型、22…第2型、23,234,236…リブ、23m…第1リブ、23n…第2リブ、23s…基準リブ、23t…勾配リブ、27…流路部、40…温度調節装置、50…真空ポンプ、60…加圧装置、62…バルブ、64…樹脂溜まり、70…制御装置、80…駆動機構、90…補強層、95…容器本体、100…タンク、120,126…プリフォーム、120r…一端側、120s…他端側、121…繊維層、170…貫通孔、181…バルブ側口金、182…エンド側口金、200…配置室、201…第1ドーム部、202…第2ドーム部、202a…第2ドーム部の内表面、205…胴部、205a…胴部の内表面、208…支持機構、211…第1型対向壁、212…第1型底壁、215…第1型凹部、216…第1型底面、217,217m,217n…第1型接続面、218…第1型管部、219…第1ゲート、221…第2型対向壁、222…第2型頂壁、225…第2型凹部、226…第2型頂面、227,227m,227n…第2型接続面、228…第2型管部、229…第2ゲート、230,242…底面、231,241…対向面、235,235m,235n,245…側面、238…第1リブ群、248,248m,248n…第2リブ群、268…第3リブ群、271…第1流路部、272…第2流路部、273…第3流路部、274…第4流路部、275…第5流路部、291…角部、950…円筒部、950r…一端部、950s…他端部、951…第1球面部、952…第2球面部、A…矯正領域、B…空隙部分、B1,B2…空間部、CD…径方向、FD1~FD3…繊維方向、G1,G2…流体、GD1…第1流路方向、GD2…第2流路方向、GD3…第3流路方向、GD4…第4流路方向、GD5…第5流路方向、ID…傾斜方向、J…樹脂、L1,L2…流路幅、L12…繊維幅、L17…樹脂層の厚さ、LD…周方向、LJ…突出方向におけるリブの寸法、LR1…周方向におけるリブの寸法、LR2…軸方向におけるリブの寸法、O…中心軸、OD…軸方向、R1…第1領域、R2…第2領域、R3…第3領域、RD…離間方向、T…接触部分、α,β…巻角度